眠り姫
投稿者名:豪
投稿日時:(05/ 5/ 8)
彼女は姫 眠り姫
氷の寝床で眠り続ける
王子を夢見るお姫様
寝坊を続けて幾百年
心が体を離れては、ふらりふらりと迷子を続け
そんなある日、導かれるように出会ったのは
厳しい魔法使いと情けない王子様
泣いて、笑って、驚いて
そこから始まる彼女の時間
そこから始まる彼女の夢
けれど、彼女は気付かない
それが終わりの始まりと
魔法使いはとっても厳しい
お姫様でもこき使う、それも格安賃金で
けれど、不満を抱きはしない
お姫様は知っている、魔法使いの優しさを
影でこっそり守ってくれる
危ない事はさせたりしない
天邪鬼な彼女らしい、気付かれ難い優しさを
王子はとっても情けない
お姫様にも縋りつく、泣き言だって吐き捲る
けれど、馬鹿にしたりはしない
お姫様は知っている、王子様の暖かさ
自分にちゃんと気付いてくれる
怯えながらも庇ってくれる
鈍感な彼らしい、解り辛い暖かさ
厳しい魔法使いが王子を叱り
情けない王子様は笑って誤魔化し
そして二人は、お姫様に手を伸ばす
お姫様は両の手で、二人の家族の手を握る
やっと出来た自分の居場所
此処はまるで日溜りのよう
暖かな日々に微笑み浮かべ
そして続く、幸せな時間
日々を重ねて、絆は増えて
想いは深まり、思いは募り
――――――――――そして終わりの時が来る
激しい戦いも全てを終えて
敵の悪魔も打ち倒し
あとは、お姫様が目覚めるばかり
物語的にはハッピーエンド
御伽噺ならめでたしめでたし
けれど、誰も笑えていない
夢の時は、今こそ終る
それを皆が知っていたから
あるいは、続けられたのかもしれない
お姫様が眠り続けていたのなら
お姫様が起きたりなんてしなければ
また同じように、三人の幸せな日々が
だけど、魔法使いは許さない
起きられる可能性を捨て去るなんて
手に出来る幸せを捨て去るなんて
そんな選択、厳しい彼女は許さない
そして彼女よりも、誰よりも
彼が、それを許さなかった
頑張ってきたお姫様が、自分の幸せを掴めない
そんな結末、許せる筈がないだろう?
情けない王子様は、情けなく泣きながら
けれど一言だって、弱音も泣き言も吐いたりせずに
氷を壊す一撃を放ちつつ、ただ叫ぶように口にしたのは
――――――――――生きてくれ
泣くお姫様と 泣かない魔法使いと
ぐしゃぐしゃに崩れた笑みを浮かべる王子様
想いは互いに重なりながら、訪れるのは別れの時
彼女は姫 眠り姫
王子を夢見たお姫様
けれどもう、夢は覚め――――――――――
ようやく目覚めたお姫様
新たな幸せを掴んだお姫様
けれど、呼ばれたように振り返り
その目が映すは遠ざかる車、過ぎ去る時間
頬を流れる雫の故は、彼女自身にすら解りはせずに
そんな彼女を見送ったのは
厳しい魔法使いと、情けない王子様
きっとまた会える
そんな不確かな思いを、確かに感じながら
だから、さよならは言わない
だから、さよならなんて言わせない
だから声は掛けぬまま、そっと其処から立ち去った
夢の時間は終わりを告げた
でも、そのことに後悔なんて無い
お姫様も、魔法使いも、王子様も
想う気持ちが涙を流させるけれど
何も失くしたりなんかしないから
今までの
コメント:
- どうも、おやじです。
とても良いと思います!
けれど文才のない私にはこれをどう表したらいいのかわかりません…(泣
幽霊の時の記憶が夢に例えられたことからこんな表現ができるんだ…と、とても勉強になりました。 (おやじの戯言)
- 改めて、GSの本来のヒロインはおキヌちゃんだったのだと実感します。
生き返ったら記憶が消える。別れないようにすると死んだまま。これはすごいよくできた設定でした。
よくある長編ものの結末で別れがあるキャラは死んだから別れるわけです。なら死ななければもっとハッピーエンドじゃないかって批判が来る(どこぞの蛍娘みたいに)。
でもおキヌちゃんは生き返って別れる。死んでるより生きてるほうがいいに決まってます。文句言いようがない。
まして自力で思い出しますからねこの子。ほんとにいい子ですよ。あの時の選択は正しかったと証明してくれてるわけです。
それが実感できました。いい話読ませてもらいましたです。 (九尾)
- 『夢』の次は『詩』で表現してきましたか―――どっちも特に不得意分野……あっさり敗北を認めます。
むっちゃくちゃ巧いですね。秀麗、という表現はこれのためにある、といってもいいかと思うくらいに……。
おキヌちゃんを描くには、絶対にこんな綺麗な文章が必要なんだな、と実感しました。まだまだ修行が足りんぞ、俺は!! (すがたけ)
- 絵本のような語りで、儚い出会いと別れを見事に表現しておられます。
すごいです。うらやましいです。尊敬します。本当に。
「忘れてしまう」という事は別れそのものであると同時に「もう一つの死」を意味していると思っているのですが、そういった事を含めておキヌとは「生きる事の素晴らしさ」を体現しているんだなぁ、と深く感じました。
本当に、本当に素晴らしいお話でした。 (ちくわぶ)
- 泣けます。
おキヌちゃんは原作の中で最も非の打ち所のないヒロインだったと思います。悲しみはあるけどそれは一時で、何も無くさない。全編を通じて「陽」のヒロインといえるのではないでしょうか。対する「陰」のヒロインのルシオラ、原作にあった「何もなくしてない」の科白は余りに皮肉でした。
眠り姫は王子様と結ばれるでしょうか?もう一人のヒロインを亡くして失意のどん底にある王子様を慰める舞台はそろってます。がんばれ、おキヌちゃん。
・・・え、美神さんは?
彼女はヒロインではなくヒーローだから無理ですね。 (橋本心臓)
- すばらしい、と言わせてください。
上でも言われていましたが、まさに詩、ですね。
こういう切り口は才能がいると思います。うらやましいなぁ…… (TK-PO)
- 流れるように書かれた文章を見て、思わず原作を読み返したくなりました。
GS美神はやはり、この三人が揃ってこその物語なんだなぁと感じました。
良いお話をありがとうございました。 (一見)
- 初めまして、初レスになります。
綺麗な韻を踏んでいますねぇ。
普段は詩など殆ど読まないのですが、たまにこういう綺麗なリズム感の言葉の流れを読むと、登山の最中に綺麗な景色を見ながら休憩しているようでなんとなくほっとした気分になりますね。
「一服の清涼剤」素晴らしかったです。 (なま)
- おキヌちゃんに相応しい、奇麗で、そして少し哀しい…でもちゃんと最後はハッピーエンドなお話…
ただただ”良かった”としか言い様がありません。
ホントにいいお話でした。 (偽バルタン)
- 『……いやしかしだな、実際にキヌを眠らせて地脈に固定したわたしの方が、良い魔法使いに相応しかろう?』
「あのね道士さま、その理屈なら地脈から解放したわたしが王子さま役になるわよ? 横島クンは……そうね、荷物運びだし、白馬役で。」
「み、美神さんが王子さまですかっ!?(何故かどきどきっ)
……あ、ああでもそれじゃ、あの色気の無い解放の儀式が『王子さまのキス』になるって事で……。(るーるるー)」
「は、白馬……はいっ、解りましたっ。それでは王子さま、早速その高貴かつやーらかくて安産型なお尻をどうぞ、この哀れな裸馬どもの背中にぶひょひひーんっ!!」
「やめんか変態種馬!!(ぷるぷるぷる)」
「……ひひーん。(るーるるー)」
「……こほん。
んじゃあ道士さまは、お姫さまに死の呪いをかけた悪い魔法使い役はどう? あんたのせいだし、服もペタ一色だし。」
『ベタ一色って……あの時は他に打つ手が無かったのであるし、第一そもそもの原因を作った死津喪比女の方が、悪い魔法使いっぽくはないか?』
「あーはいはい解ったわ。じゃああんたは悪い魔法使いの手下Aで。再反論は認めないわよ。」
『……せめて女華姫と一緒に王さま夫婦をやりかった……。(るーるるー)』(←一応負い目が有るので反論できず)
「「……わ、悪い魔法使いだ、絶対。(るーるるー)」」
さて。姫、魔法使い、王子ときて魔法使いが一番の権力者なのに微笑まざるを得ない反面、後半、疑似家族的な彼らの絆にホロリとさせられちゃいました。 (Iholi)
- ネタさえ思いつけば、こういう形が一番書きやすかったり
ただ思いつくのが難しかったりするので、ままならないものです(何
>おやじの戯言様
原作タイトル『スリーピングビューティ』が発想の元
彼女を姫に据えると、王子様や魔法使いは自然と思い浮かびました(笑
>九尾様
GS全体を通して、まさしくヒロインを張るに相応しいかと>おキヌちゃん
ただ、彼女が立ち止まってしまったら、誰か背中を押して挙げられる人が必要なんでしょうね
>すがたけ様
自分としては、詩の方が書きやすかったり(笑
おキヌちゃんの描写には、優しい感じが必要なのかなー、と思ってたりします
>ちくわぶ様
人の夢と書いて『儚い』、まさしく当て嵌まります。
出会いと別れ、そして新しい始まり。それが生きるという事なのかもしれません
>橋本心臓様
美神さんは確かにヒーローですな(笑
心優しいおキヌちゃんは、皆にとってのヒロインなのでしょうねー (豪)
- >TK-PO様
書き慣れてる事もありますので(照
『継続は力なり』を胸に、これからも頑張ります
>一見様
二次書きとして一番の褒め言葉かもしれません(嬉>原作を読み返したくなる
GSは三人の出会いから始まり、ある意味三人によって締められましたかねー
>なま様
特にテンポには気をつけてたり
これからも、ほっと一息つけるようなものを書いていきたいです
>偽バルタン様
全体として静かに、何処かほのぼのと、けれど何か寂しく
出会いが別れの始まりなら、別れはきっと再会の始まりなのでしょう
>Iholi様
うむ、悪い魔法使いですな(笑
姫や王子と魔法使いとのギャップは狙ってたり。お后様というのも考えましたが(マテ (豪)
- ども、遅レスすみません。
フロム新木場〜。
おキヌファンとしてはたまらないものがあります。
…早く次の作品がよみたいです(え。 (とおり)
- ども、遅レスすみません。
フロム新木場〜。
おキヌファンとしてはたまらないものがあります。
詩形式ってのはあまり読んだことがないのですが、おキヌのイメージにはぴったりですね。
…早く次の作品がよみたいです(え。 (とおり)
- >とおり様
電波がやってこない限り次は無理です(笑
個人的に詩の形式は、大本のネタさえ思いつければ結構楽に書けるんですよ
キャラクターのイメージさえ掴めていれば、比喩を絡めながら楽しく書けますし (豪)
- 私のつたない言葉ではうまく感想すら言えませんが、最高でした。 (ゴマ)
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