ザ・グレート・展開予測ショー

がんばっ!現代医学


投稿者名:never green
投稿日時:(05/ 4/22)



   ダムッ  ダムッ   ダムッ


ドリブルをしながら僕は少しカッコつけてバスケットゴールへ向かう。
ここで得意のレイアップを決める・・・・・・筈だった。


   ぐきっ


うわぁああぁ、足がぁ−ッ!!



       =  がんばっ!現代医学  =



「骨折だな・・・」

僕の目の前に座っている先生は、この病院では有名らしい。
白髪混じりの髪で、ヒゲを生やし、眼鏡をかけてかなり優秀な医者に見える。

「二、三日は入院して安静だ」

レントゲン写真を見て先生は呟く。はっきりと骨の折れた部分が分かった。
僕はこれまで一度も骨折をしたことがなかったので、骨折という事実を聞かされたときは正直驚いた。


だけどこの入院でそれよりも凄い出来事を僕は目の当たりにする。



この病院にはいくつかの噂話がある。
ブタみたいな鳴き声をした馬が出たとか、幽霊が医療用レーザーを撃ったとか。
なんか学校の七不思議とは違うなぁ・・・。

そもそも幽霊なんか居るワケな・・・



・・・居た。




ちょうどそんなくだらない思いに耽っていたとき、20代前半くらいのめっちゃ乳のでかい女性と、バンダナをつけた僕くらいの少年、そして紛れも無くそこに浮いている幽霊。その三人は・・・いや、その2人と1仏は先ほど僕を診察してくれた先生に連れられている。
浮いてるし、人魂が付いてるし、なにより後ろ姿が可愛い。
そんな姿が僕のマニアック魂に火をつけた。



さわりたい・・・



はっ。

いや、ちがうぞ、けっして幽霊に欲情したんじゃない!
人魂にさわりたいんだ!そうに違いない。

そう自分に言い聞かせ、僕はマニアックな壁を今ぶち破ろうとしている。
七分のマニアック心と三分の火傷の恐怖。
僕がそぉーと人魂にさわろうとした・・・と、同時に先生はドアを開いた。

『クキェーッ!』

気になってドアの隙間から見たその光景は・・・。
うぐぅ・・・少し自分の頭の中を整理してもう一度その隙間から眺めてみる。


ぶんぶんぶん!うごごごーっ!


・・・と壮大な音を出しながら、部屋はあのかつての台風18号を思わせる程の嵐。

「ま、このよーにちょっと変わった発作を起こしていて・・・」

先生は冷静に少年に説明をしている。
僕はやっぱり医者はすげーなと心の底から思う。

「誰が見ても怪奇現象じゃねーか!」

あっ、やっぱり怪奇現象か。
少し喘息かなんかの類かと思った自分。
さっきの幽霊の事や、病室でベッドやテレビ等といった家電用品が遠慮無しに飛び交うのを見たのだから、もう有りのままの全てを受け入れようと誓った。

病室を出た先生はバンダナをつけた少年のツッコミを入れられて子供みたいに暴れている。
診察とはあまりにも豹変した性格の先生も、もちろん僕は有りのままで受け止めた。すると何か難し〜話をしだす女性・・・うおっ!
やっぱり幽霊って壁抜け出来るんだ!しかもけっこ〜可愛ええ・・・。

とか思っているうちに笑気ガスボンベを繋いだマスクで呼吸をしながら

「現代医学はああ〜っ」

とか言っている。先生、笑気ガスですよ?正気の間違いかなぁ・・・。
あれっ?今、後ろに○ラック・ジャックが居たような・・・(汗)。

その後、患者は運ばれて行き、僕は何事もなかったように自分の病院へ向かう。
窓越しに見えるきれいな景色を見ながら、僕の心の中は何の根拠のない満足感で満たされていた。
けどそんな余韻から抜け出すと、急に寒気が襲ってきて僕は夜眠れなかった。
次の日に僕は両親に無理を言って、その日で退院する。
もちろんその理由は、あんな発作がうつるのが怖いからだ。


そして、また味気ない学校生活を送る。

数ヶ月経った。学校の終わりのチャイムが鳴り響き靴箱から普段靴を取り出す。
すると我が親友、山田に声をかけられる。こいつには後輩の彼女がいる。
このやろう・・・。

「久しぶりだな山田。インフルエンザは治ったのか?」

山田は運動神経がとてもいい。しかし昨日インフルエンザにかかり大会前なのである有名な病院に行ったらしい。

「あぁ、病院が怖くて治っちまった」

怖い理由を聞いてみると、山田は顔を真っ青にして何かを言い付けるように話しかけた。僕は冷静に話に耳を傾ける。



ふ〜ん。


怖かった理由はこうだった。
山田は病院で寝ていて、何気なく窓の先の景色を眺めると、コスプレをした美少女三人組がバンダナを付けた少年を連れて空を飛んでブラックホールみたいなのに吸い込まれていった・・・らしい。

「へ〜」

と僕が一応返事をすると、その反応が気に入らないのか、なおも突っ掛かってくる。

「はいはい」

と、ぶっきらぼうな返事をして、僕は今度こそ山田と別れる。

言っておくが別に疑っているワケじゃない。山田はくだらない事では嘘をつかない。
それに僕は山田が話した事は本当だと信じている。
驚かなかった理由は、あの体験があったからかもしれない。
だけどそんな事はどうでもいいと思う。
少なくともそんな“怪奇現象”に自分が巻き込まれなくて、いつまでも家族や友達、そしてこれから出来るであろう友達といつまでもバカなことをやっていければそれでいい。
平和に暮らせばそれでいいのだ。







しかし数年後に僕はあの日以来にすごく驚いた。

その日の夜、見る番組がなかったので何気なくプロレスのチャンネルに変えてみることにした。別にプロレスなんかには興味はなかったのだが、他局の番組もプロレス以下に面白くなかったのでリモコンの19を押す。


「!!!!!?」


テレビ画面に映る赤コーナーからは、あの病院の先生が立っていた。
右上の文字板には“世紀の大決戦”と書かれていて、相手はなんとバブ・サップだった。今やバブ・サップはプロレスだけではなく、お笑い番組にも積極的に出演している。コングが、かぁ〜んと鳴るとあっという間の出来事だった。

『現代医学チョ〜ップ!現代医学ドロップキ〜ック!』

とか現代医学〜(なんたら)系の技を次々と繰り出した。試合は始まって新記録の19秒で終了した。ほんのちょっと携帯に目がいってた隙に終わってた。これではラウンドガールの出番がない・・・。








記録と言うのは、もちろんバブ・サップの対戦相手をKOさせた最速タイム。



先生はプロレスの門を閉じ再び医者に復帰し、それからバブ・サップから受けた傷を二日で治したらしい。現代医学は確かに負けてはいなかった。
ただ学生プロレスでは現代プロレスに通用しなかっただけだ。
僕はやっぱり先生には医者として頑張ってほしい。なんせあの山田のインフルエンザを一日で治したのだから。少し非科学的な気もするが、あの病院で治ったのは事実だ。だから先生の喚きの通り現代医学はまだまだ負けていない。そしてきっと先生はどんな病気や発作も治せる名医になる。少なくとも僕はそう信じてる。




余談だが、山田は“コスプレ美少女出現事件”がきっかけで、彼女によく甘えるようになった。そして近々結婚するらしい。僕も彼女がほしいなぁ・・・。

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