ザ・グレート・展開予測ショー

夕焼け


投稿者名:おやじの戯言
投稿日時:(05/ 4/29)

夕焼けを、見たい








珍しく仕事が無く、
珍しく学校に行った帰り道に急にそんな気持ちになった。
家に帰っても別にすることもないし、
どこかで見ていこうと思い、気の向くまま歩いていたら、
何時の間にかあの場所に来ていた。



そこは東京タワーの展望台の上
アイツと一緒に夕焼けを見て、
アイツが俺に最初で最後の嘘をついて
謝りもせずにいなくなってしまった場所だった
そこは、夕焼けの赤色で一面が染まっていた。



何でここに来たんだろう?
ここは俺にとって一番嫌な思い出の場所
最愛の女性を死なせてしまった場所だ。
太陽が地平線に吸い込まれるのを見ながら俺は
ぼうっと考えた。










そういえば、アシュタロス戦からもうどれくらいの時間がたったんだろう?
アイツが死んでから俺は今まで以上に仕事に取り組み、今まで以上に皆とバカやってきた。









何故なら、そうでもしないと俺は自分を保っていられなかったからだ。
独りでいるといつまでも泣いていた。
自分に対する嫌悪感に飲み込まれてしまい、
「俺なんか、死んでしまえばいいんだ。」
そんな考えが何度も俺の頭にうかんだ。
けど、そんなくだらない考えと一緒に、こんな考えもうかんできた
「俺が死んだら、アイツのしたことが無駄になっちまうじゃねーか。」






そんな考えが頭のなかをめまぐるしく回り、
そのたびに胸が痛んだ。
俺はアイツのことを考えるのを避け始めた。
そして俺はいつもの俺を演じた、
そうすることで俺はアイツ忘れようとした。





………できる訳ねーよなぁ
アイツを忘れちまうなんてよ
結局俺は、いつのまにかアイツの考えている
そしてそのたびに胸に痛みが走る
今度はそのことを受け入れようと思った。
この痛みは、一人の女も守れなかった俺への罰なんだと。






そんな痛みが最近薄れてきた
それと同時に俺は、アイツのことをハッキリ思い出せなくなってきた。
そりゃあアイツとしたことなら全部覚えてるさ
行動、言動、どんな場所でどんな事をしたか
全てだ………
薄れてきたってのはアイツの……


声…


顔の表情…



そして手の暖かさ





そんな記憶が時と共に無くなっていった。
俺はまた自己嫌悪にかられた、
自分勝手な奴だよな?
一度は忘れようとしたアイツのことを、
忘れていく自分を嫌になるなんてよ。









アイツのことを忘れてしまう時の胸の痛みは、
思うときとは比べ物にならなかった。









「俺はアイツのことを忘れてしまうのか?
 あんなに好きだったのに?
 それとも俺の気持ちはそんなもんだったのか?」



無意識に叫んでいる自分がいた。




夕焼けがぼやける……なんて思っていたら、
いつのまにか泣いていた。
涙は止まらなかった。





涙が止まった時は、夕日は沈んでいて、とっくに暗くなっていた。
「帰ろう……」
そうつぶやいた。











































ボロアパートに帰りついたら、
しきっぱなしの布団に倒れ付した。
また目頭が熱くなってきたのを感じながら
カレンダーに目をやった




目が点になった。
今日はアシュタロス戦からちょうど1年だった
……アイツの命日じゃねーか。







「……墓参りぐらい来いっていうことか?」






俺は勘違いをしていないか?
ふと思った。
アイツはそんなことで怒るような奴だったか?
そしてこうも思った。
そうだよ、忘れても良いじゃねーか。
それぐらいでアイツは怒らねぇ、
俺がアイツのことが好きだったことを、
アイツが確かに存在して、俺のことを好きになってくれたことを、
それさえ覚えとけばアイツは怒らねぇ





「毎年欠かさず行ってやるよ、花も持ってな。それでいいか……ルシオラ?」





ああ、この名を呼ばなくなってどれくらいたっただろう?
さっき以上に目頭が熱くなった。
俺は枕に突っ伏して泣いた。












その涙には今までのような痛みは無かった。

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