GS新時代 【鉄】 其の五 プロローグ
投稿者名:ヤタ烏
投稿日時:(05/ 5/10)
ただ今の気温3℃
平日の早朝、季節は既に春を迎えているが、早朝ともなれば若干の寒さは仕方がない。
だがこの気温はどうだろうか?春の奴が未練がましく、冬を引っ張り戻したとでもいうのだろうか・・・
当然外に出るには、それなりの防寒対策を必要となってくる。
それも汰壱がいるのは河川敷の川原であり。終始強い風が吹き荒れている。
少なくともタンクトップのシャツにハーフパンツで外に出る気温ではない。
そんな格好で出るのは間違いなく阿呆であろう。
「もう一度やるから、今度こそよーく見て奥でござるよ」
「はあー」
シロは半ば呆れながら、タマモは完全に呆れながら・・・・、
ブォン!!
掌に霊気を収束させる
シロは何十回目判らないサイキック・ソーサーを展開させた。
「ほらっ、やってみるでござる」
グレイの色のタンクトップは既に大量の汗で黒ずんでおり
身体からはモウモウと白い靄(汗)が立ち上り
構えた指先からはポタリ・ポタリ大粒の汗が落ちていた。
マッチョ・オブ・マッチョが汗だくなのは絵的にきつい。
そして心なしかスッパイ匂いが漂う。
「ぬっひうううふああおおおお!!」
へんてこな奇声を上げながら、汰壱(アホ)は全霊力を開放させる。
陽炎のように立ち上る霊気。
其の力はお世辞にも力強いとは言い難かった。
それもそのはず・・・既に何十回か判らない全力開放に体は疲労困憊である。
疲労した体に鞭と尻バットをぶち込みながら、自分の利き手である右手に開放した霊力の全てを集中させる。
「ぬぅうううううう!!」
右手が鈍色の光に包まれる。
前はこの局所集中すらろくに出来なかったが、今ではなんとか出来るようにはなっていた。
だがここらが問題である。
「はいそっから盾をイメージ!!」
気のせいかと思いたいがタマモ声が投げやりっぽい。
「がああああああ!!」
野獣のような咆哮をあげながら、脳内活動を総動員して【盾】をイメージする。
コメカミには血管がピクピクと浮かび上がり、腕は小刻み震えている。
目が血走り、歯をむき出して、口を開き必死に酸素取り込む・・・・・
子供が見たら胃やたぶん泣く、いやきっと泣く。
ようはそれぐらい気合が入ってるわけだ。
だが悲しいかな、右手に光る霊気の塊は、うんともすんとも反応しない。
「ダメよっそれじゃ、ただ集中して拳に集めてるだけ!
シロを良く見て、何処にソーサーは出てるの?」
(んなことわかってるよ掌だろ)
返事をすると気が散りそうなので、無言のままに実行する。
ほかの事を考えるとすぐにでも霊気の集中が途切れてしまう。
そうなれば、また一から練り直しである。
ボクシングのグローブの様に手を覆う霊力の塊を、少しずつ掌に押し固めていく
手の平を自分に向けて強く強く念じる。
「手の平の中心に押し固めるようにするでござる。」
(こっからだ)
ゆっくりゆっくりと霊気を手の平の中心に収束を始めるが
手の平に集まり始めた霊気が途端に不安定に歪み始める。
「くっそがぁっ」
搾り出すような声で悪態をつく
(いい加減に安定しろや、今日で2週間だぞ)
半ばヤケクソのような精神状態で圧縮を維持しようとるが・・・・・
ポフン
情けない音を立てて霊力は四散した。
「あっ!!」
今日で十数回目、トータル自分達が見てるだけでも百回以上
汰壱の性格からしてもっとやっているだろうが。
それでも全く出来る兆しは見えなかった。
「「はぁー」」
早朝の川原に溜息が重なる。
まさか、ここまで酷いとは・・・
二人の考えは、自然と同じになった。
シロとタマモが汰壱の修行に付き合い始めて、今日で2週間になる。
前回の事件で助けられた借りを返すために、シロとタマモは汰壱に何がいいか聞いてみた。
最初、汰壱は断った。
汰壱からすれば、助けられたのは自分であり、借りなど作った覚えは無い。
仮にもし、封印を解いて助けたことが借りになるのであれば、それは後で自分を助けてくれたのだから
それで貸し借りはチャラになっているのだ。
だからそれの礼などは受け取るわけにはいかなかった。
汰壱からすれば、「足手纏い」と文句を言われても、感謝される覚えはない
そう言って断ろうとしたが
「馬鹿者が!!美人の好意は素直に受け取らんかい!」
と横島にケツを蹴られて促されたので、渋々ながらも好意に甘える事にした。
では何を頼むか?
服とか 別にいらん・・・
靴とか 今の靴も買ったばっかだし、予備のランニングシューズも二・三足あるし、いらん
アクセサリー 金物はいらん・・・
武器&霊具 任侠道あるしな・・・いらん
お金 いらん
トレーニング用品 足りてる
タマモさんとデート いらん
(本人より提案)
およびシロさん いらん
(同上)
「あんた最後の二つは何?」
「はっ?」
何が気に障ったのか首をギリギリと締め付けられた。
(そんなに、怒らんでもええでっしゃろ)
すったもんだの末、汰壱が希望したのは霊力の訓練だった。
別段、格闘術でもよかったのだが、今現在最も自分に足りてなく、尚且つGS目指す人間としては霊力不足は最大級のネックだった。
ちなみに今現在の汰壱の霊力は六道学園の入学規定値にギリギリ届くかどうかというところだ。
入学当初はそれ以下のであったが、不断の鍛錬と鬼道の熱心なレクチャーでどうにかこうにか、僅かづつ上げていた。
しかし、ここ最近の授業(霊能関係)にだんだん汰壱はついていくのだが辛くなり始めた。
それもそのはず、汰壱の霊力は六道でもかなり下になるのだ。
普通の授業で遅れをとることなど無いが、霊能はそうはいかなかった。
周りは霊的成長を迎えてる者が多く、日に日に霊力の上昇を感じる。
特に蛍花は既に一年の中では最高クラスの霊力を持っているほどだ。
生来の霊能力も無く、潜在的な霊的能力も無い汰壱には、霊的成長は訪れないものだった。
そもそも、今現在の汰壱は霊気をある程度操る事はできても、それを霊視や霊聴、式神の使役、特殊霊具の使用、契約儀式、霊術式、呪式
等における、【霊能力】の使用は出来なかった。
となれば、汰壱が二人に見てもらうのは自然と基礎のみになる。
霊的スタミナ・操作能力・具現イメージ・出力強化・最効率化・大雑把に挙げてこの五項目
を二人は重点的に鍛えることにした。
基礎の部分がしっかりと確立されていれば、後でいかようにも応用が効く。
たとえ応用が出来なくても、基礎を高い水準で修めていればそれだけでも十分な武器なりえる。
まあ最も・・・・
「・・・はぁ・・はぁ・・・はぁはあ・・・ちくしょうめ・・・・・全然できん!」
応用は無理そうであるが。
「どうしたもんかねぇ・・・・」
タマモは額に手を当てて呆れていた。
ちなみにそれらの訓練として、二人が教えたのはシロの得意とする霊気の収束系の技サイキック・ソーサーだ。
全身の霊力を盾状に凝縮するもので、盾以外の場所の防御力は極端に下がるものの
それ自体の防御力は非常に強固であり、同時に盾自身をぶつけることにより高い攻撃力を誇る。
彼女の周りの人間には割とポピュラーな技であり、非常に使い勝手がよい。
しかしそれらのことは、すべて覚えれればという前提があって成り立つのだが。
荒く息をつきながら地面に座り込んだ。
二人に見てもらって、今日で2週間・・・成果は芳しくなかった。
自分才能が無いことなど、とうの昔に判っていたことであったが、それでもこうしてなんだかんだ言いながら
世話を焼いてくれる二人に、何の成果見せられないのは少しばかり辛かった。
だが俯いていて一体何が出来るのか?
嘆く事を考える暇が有るのならば、少しでも進むことを考えろ。
座り込んでいる暇が有るのなら、なぜ自分がうまくいかないのかしっかりと考え直せ
才能が無いなら、努力しろ
頭の中で檄を飛ばし、もう一度立ち上がる。
(うーん霊力が低いのは確かに問題だけど、それより問題なのが燃費が滅茶苦茶が悪いわね
総量が少なくて、すぐ使い切って、尚且つ威力不足・・・短時間行動・低出力・高燃費
・・・・・うあー・・最悪)
非の打ち所の無い完全無欠な駄目っぷりである。
(真呼吸で回復は結構早いでござるが、如何せん効率が悪すぎるでござるな、
それに操作性も悪い、これではソーサーを創るのは無理でござるな
このレベルでは満足に戦うこともできまいて・・・しかし本当に)
「「全然才能が無いわね(ござるな)」」
思わず声をそろえてしまうへボっぷり。
「悪うございましたね」
口を尖らせながらもう一度初めからやり直す。
「ぬがあああああ!!」
実際問題、二人とも完全に霊能の才能のない汰壱に、いったいどうして教えればいいか
なかなか大変そうである。
正直な話二人にしても、そう簡単に出来るとは思っていなかった。
ソーサーを生成するのは無理でも最悪、霊気圧縮のコツ位は掴んでもらうつもりだったが
ものも見事に当てが外れていた。
汰壱は霊気の極点的な集中はできるのだ。現に汰壱が戦闘時に使う【霊攻拳】は拳に霊気を集中して攻撃する
霊的格闘術の最も基礎だったりする。
だが収束や圧縮といった。集中した霊気の質を変えたりすることが出来なかった。
加えて別系統の照射、放出などはさらに判らなかった。
つまるところ、汰壱の最大のネックは判らないという点である。
汰壱は先天的な霊能力者でもなければ、潜在的な力を持ってもいない。
汰壱はただの普通の人間である。
要するに普通の人間である汰壱には、霊能の使役する感覚が非情に理解し辛いのだ。
だから判らない。
シロやタマモがいくら説明しても、それは猿に因数分解を教えるようなものであり
目の見えない者に風景の説明をしているようなものだ。
もはやGSに成れる成れないの問題ではなかった。
だが
「そいやああああ」
空しいほどにデカイ声が響く。
今度こそ・・・・
今度こそ・・・・・
なんどなく思う心
常人離れした身体能力と耐久力は、血の滲む様な努力と山の様な研鑽の日々でようやく身に着けたものだ。
僅かばかり操ることが霊気は、半年間ろくに眠らずにを【真呼吸】を使い続けようやく覚醒した。
初めて霊気を発生出来る様になったのが9歳のとき、以来6年間一日も休まず全力開放を繰り返し、僅かづつ力を上げた。
初めは数秒で枯渇した。三ヶ月で10秒持つようになった。半年で30秒、最初の年は1分持たすのが精一杯だった。
2年目も同じ様なペースで続けた。
3年目で少しコツを掴んだ。 4分持った
4年目一気に倍になった 8分
5年目急に下がった 7分
6年目六道学園の入試時 9分
今現在 10分
暖かい日差しの春も・・・・
照りつける日差しの夏も・・・
木枯らしが吹く秋も・・・・・
身を凍らす冬も・・・・・
雨の日も、風の日も、晴れの日も、曇りの日も、雪の日も
毎日 毎日 毎日 毎日 毎日
繰り返した。
それは天を突くほど高い山を登るに等しかった。
断崖絶壁の崖をよじ登る。
僅かな油断と慢心がたやすく奈落へと誘う。
数センチ上るのに数日を掛けるが、奈落まで落ちるのには数秒だ。
だがきっとこの頂には自分の求めるものがあるだろう。
自分が欲してやまないものがあるだろう。
だから昇る。
龍のように雄雄しくは昇れない
鳥のように軽やかには飛び上がれない
自分に出来るのは
這い蹲るように
両手両足踏ん張って
よじ登る。
ただ頂上を目指して。
それだけだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「おらあああああああ」
プスン!
また失敗。
「・・・・・なぜだー!!」
ちょぴり凹む
「うっさいでござる」
怒られた。
「収束系のソーサーが出来ないなんてね。あんた根っから近接タイプだからあるいは可能性が有るかと思ったけど・・
こりゃいよいよ基本のみでいかないとねー」
「放出・照射系もさっぱりでござったな」
少し遠い目をして思いだした。
同時進行で教えてみた霊波砲も【砲】はおろか霊波の放出も満足にできなかった。
「霊具使役はどうでござるか?」
「神通棍とかはだめっすね。霊気の維持が続かないし威力も全然低い、良くてひのめ姉の十分の一ぐらいっす。」
それは既に学校で試していた
「あんたそれ道具の半分の力も出せてないじゃない」
道具使役の強みは、常にムラ無く少ない力でも一定の力の維持が出来るところにあるのだ。
それが大量に力を使い、それでも本来の力も出せないとなると、使うメリットは無い。
「となると霊刀の類も無理でござるな」
「当然でしょ」
「破魔札は?」
「使えんことないっすけど、効果が出るまで時間が・・・」
「どのぐらい?」
ろくでもない答えが帰ってくるのは判っている。
ちなみに破魔札の発動は早い人で一秒、なれない者でも10秒程度である。
(いくらなんでも発動に30秒以上は掛かることはないと思うけど)
予想は悪くしておくものだ。そうすれば最悪の事態でも・・・・・・
「10分」(最短)
「「帰れ!!」」(即答)
「うぁーひでぇや、グラスハートな10代に何言うんすか」
「大丈夫ルックス的には30代よ」
「おれはまだ15ですよ何で二倍にする」
「髭とすね毛の生えた15歳なんて私認めない」
認める認めないの問題ではないと思うが、タマモには譲れない物らしい。
「男性ホルモンが活発で悪いか」
「あんたは判ってないわ!今の世界にはそんなモノ(髭とすね毛)は必要ないのよ!!」
ガッと拳を突き上げ力説が始まる。なんかのスイッチが入ったようだ。
「あんたね普通15っていったら、中性的な魅力を残しつつ、ほんのちょっと男性的で
声とかも力強くて透き通るような声で、身体もまだ細さを残しつつ確りとした身体つきで・・・・・・
・・・・・・・・・アレとか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コレとか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・以下略」
声高に15歳の理想像を延々と語り続ける、クールビューティーを見て汰壱は
(タマモさんが壊れた)
とだけ思った。
とりあえずタマモは置いといて今後どういう修行がいいのかシロに聞いてみた。
錯乱し始めているタマモをよそにシロは神妙な顔で考えていた。
そんな顔を見て、ああやっぱりシロさんは真面目だなーと深く感謝した。
「どんな方針でやったらいいっすかね?」
「やはり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・拙者も髭とすね毛は無用と思うでござるよ」
ああこのひと天然だった。
古牙 汰壱 15歳
六道学園 高等部 一年D組
出席番号 9番
将来の野望「最強のGS」への道は限りなく遠い・・・・・・
最近の悩み自分はこの二人にボケればいいのか?ツッコミに行くべきなのか?それとも放置か?だそうだ。
今までの
コメント:
- こんばんはヤタ烏です。
エー皆様、髭とすね毛は生えますよね。普通さ・・・
別におかしくはないっすよね。主人公が無精髭生えてもさ
別にいいですよね?こないな主人公でも。
タマモとシロはこんな感じはどうでしょう?
いやこの二人が一番動かし易い。
汰壱よりも(笑)
それでは新章行きます。
よろしくお願いします。 (ヤタ烏)
- お初です、すがたけと申します。
生えてくるのはその辺りだから……夢見がちな女性陣に理想と現実を見せ付けるにはまぁもってこい!――もちろん、髭や脛毛の話ですよ、ええ(微笑み)。
霊能なしに等しい主人公……新鮮でした。なので賛成です。
ちなみに、こうまでなったらツッコミで……理不尽に反撃されて沈む、という線で(笑)。 (すがたけ)
- すがたけ様始めまして
そうっすかツッコミですか。
これはまたおいしいポジションですなおいしい・・・どこまでもおいしい。
すばらしきツッコミ。
実を言います今回の話シリアス路線で行くつもりでしたが、
何を間違えたのかギャグになってました。
イヤホント自分の計画性の無さにあきれます。(泣)
感想有難うございます。次もよろしくお願いします。 (ヤタ烏)
- とりあえずここは意表をついて更にぼける。3連ぼけによる氷河期のような盛り下げを求む!!!・・・て、違うか。
髭とすね毛っていつからシロとタマモはそういう趣味になったんだろうか。幾多のSSで横島LOVEの二人組なのに、横島が結婚して壊れたのかなあ・・・て、これも違うか。
前途多難な主人公ですね。持ち前の才能は鉄の意志だけ、どうやればこれで最強のGSになれるのかつっこむ気にもなれません。面白いんですけど、ストーリー的に難しそうですね。応援してます。 (橋本心臓)
- 初です。
実は初めから読ませていただいてはいたのですが、コメントは今回が初と言うことで・・・。
シロタマが最高です。特にタマモのひと味違ったキャラにはツボにはまりました。
汰壱の成長にはやはりこの二人がカギになるんでしょうか・・?
とにかく、今後の展開がただただ待ち遠しいです。
最後に、タマモのあの偏った好みはいったい誰の影響なのかと気になりました。とゆーかシロも・・・
そんなわけでこれからもがんばってくださいね!次回にも期待!! (桜庭ハル)
- 橋本心臓様始めまして、コメントありがとうございます。
ボケ倒し!、おいしい捨てがたい、やってみてぇぁあ!
でも収集つけるのが大変そうですわ(笑)
ご指摘の通りです。キャラとしてはすごく動かしやすいのですが・・・
今現在の状態では正直に言って強くなる余地も無いという状態です。
ここら先にストーリー展開は、はっきり言って今まで以上の難物さを感じます。
しかし皆様の応援に答えられますように、誠心誠意頑張ります。 (ヤタ烏)
- 桜庭ハル様、お初でございます。
初めから全て読んでもらえるなんて・・・・うれしすぎる。
本当にありがとうございます。
タマモは自分の中では基本的にああいう性格かな?と考えてました。
普段はクールだが何か絡むと、途端にいろんな意味で豹変する。
遊園地に始めて行った時のアノ表情・・・・・あそこから来ています。
シロの場合は趣味というより、まあ地が天然なので決して○○○
ではないですよ。いやホント(笑) (ヤタ烏)
[ 戻る ]
管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa