ザ・グレート・展開予測ショー

動き出した歯車(プロローグ)


投稿者名:アハト
投稿日時:(05/ 5/ 4)

動き出した歯車
プロローグ


「おっはようございま〜す!!」

無駄に元気な声とともに扉を開けて入ってくるバンダナを巻いた男。
ぱっとしない風貌の彼は、横島忠男。ここ美神除霊事務所のアルバイターである。

「おはよう、横島君。」

書類に目を通しながらそう挨拶を返すのは所長の美神令子。

「あっ、おはようございます。横島さん。」

美神にコーヒーを運んでいる最中で挨拶を返すのは氷室おキヌ。

「おはようございます。横島さん。」

最後に横島に声をかけたのは、事務所自身でもある人工幽霊一号。

「さて、さっさと仕事に行くわよ。」
「あれ? シロとタマモはどうしたんっすか?」

仕事に向かおうとする美神に横島が居候の二人はどうしたのかと尋ねる。
美神は、少し不機嫌な顔をしつつも横島の問いに答える。

「シロとタマモは、ひのめの子守よ。」

そう言うと小声で”ママにも困ったもんだわ”などと不平を漏らしていた。
そんな美神の台詞に続いておキヌが補足説明のように続けて言った。

「今朝早くに、用事ができたとかで美神さんのお母さんがこられたんですよ。」
「ふ〜ん。隊長もいろいろ大変なんすね〜」

横島がそんな感想を漏らしていると、人工幽霊一号が仕事の予定時間が迫ってきていることを告げてきた。

「さっさと行くわよ!」

美神は、そういうと二人の返事も聞かずに部屋を出て行った。一方残された二人は……

「怒られない様に、早目にいこうか。」
「そうですね。」

そんな会話をしつつ部屋を出て行った。

-------------------------------------------------------------------------

「横島君。そっちに行ったわよ!」
「了解っす!」

最後の除霊の仕事も佳境に入っていた。
最後の霊にとどめを差して仕事も終わり、報酬を受け取って帰るだけになったのだが、美神が釈然としない顔をして横島を見ていた。
それに気が付いたおキヌは、小声で美神にたずねてみた。

「美神さん。横島さんがどうかしたんですか?」
「……いえ。なんでもないわ。」

美神は、おキヌの問いをはぐらかす様に答えた。おキヌは、釈然としない何かを感じつつもその場での追求は控えることにした。

--------------------------------------------------------------------------

その日の晩、横島が帰った後おキヌは、やはり釈然としない顔をしている美神に再びたずねてみることにした。

「あの……美神さん。どうかしたんですか?仕事のときにもそんな顔をされてましたけど。」

美神は、おキヌの顔をしばらく見つめた後話を切り出した。

「おキヌちゃん。最近、横島君が変わったと思わない?」
「横島さん……ですか?」

おキヌはしばらく考えるような仕草をすると、はっとした顔つきになって狼狽し始めた。
「まさか、横島さんを首にするつもりなんですか!?」
「そ、そういうんじゃないわよ。」

いきなりのことに多少驚いた美神はおキヌにそう返答する。
そして、落ち着いて咳払いをしてから話を切り出した。

「何か最近横島君が、がつがつしてない気がするのよね。」
「がつがつ……ああ、そう言えば確かに勢いが無くなったような……」

横島の美神へ対するセクハラの回数もやり方も不変なのだが、当事者や何時も見ている者からすれば、勢いが無くなったと感じている様だ。

「それだけならいいんだけど……あいつ、霊力まで落ちてきてるのよ。」
「……横島さんは、気づいてるんでしょうか。」
「当事者だもの、気づかないはず無いわ。」

少しの間二人の間に重い沈黙が広がった。

「あの……」
「今日はもう寝なさい。」

おキヌが美神に何か言おうとしたが美神は、それを遮って自分の寝室に行ってしまった。
一人残されたおキヌは、力が抜けたように椅子に座り込んでしまった。

--------------------------------------------------------------------------

夜も更けて辺りが真っ暗になったころ……
美神は、未だに寝付けづにいた。

「……霊感が騒ぐわね。何かよくないことでも起こるのかしら。」

美神がそんなことをつぶやいていると突然電話が鳴った。
突然の電話に美神は、誰だろうと思いながらも受話器を手に取った。

「……も、もしもし、横島ですけど。」
「こんな時間に何のよう?」

眠気をこらえている所為か多少怒気の混じった声になった。
横島は、そんな美神に怯えつつも、話を切り出した。

「あの俺、事務所をやめたいんすけど……」
「……いきなりなに言い出すのよ。」

美神は、悪い予感は、このことかと思いつつ横島にそう返した。
おそらくは、横島の霊力低下に関連しているのだろうと予想を立てて話を切り出した。

「最近、あんたの霊力が、下がって来てるのはわかってるわ。でも……」
「違うんです。俺が、やめたいって言う理由は……」

横島が、美神の台詞に割って入ったかと思うと、いきなり横島の台詞が切れた。
そして、ツーツーという電子音だけが響くだけだった。

「…………」

美神は、しばらく手にした受話器を見つめていた。
しかし、すぐに身支度を整え始めた。

「あの馬鹿……今度は一体なにに巻き込まれたのよ……」

身支度を急いで整えると急いで外に出ようと扉をくぐった。
すると、そこには三つの人影があった。

「美神殿。拙者も行かせて欲しいでござる。」
「美神さん。」
「・・・・・・」

おキヌ・シロ・タマモの三名は美神が出てくるのを身支度を整えて待っていた。
美神は、そんな三人に向かって……

「じゃあ、すぐに横島君のところに行くわよ!」
「はい!!」
「わかったでござる!」
「了解……」

号令とともに、外に出ると車に飛び乗り横島が住んでいるアパートに、全速力で向かった。

--------------------------------------------------------------------------

横島の住んでいるアパートに着くとそこは、パトカーと消防車が止まっており。消防士と警察官そして野次馬が群がっていた。
照明により明るく照らされたアパートからは、少量の煙が出ている。
美神は、とりあえず近くにいた警察官に事情を聞くことにした。

「突然爆発が起きたかと思うと、突然火の手が上がったって話ですよ。とりあえず死傷者はいないみたいですよ。」
「ありがと。」

死傷者がいないと聞いて、ほっと胸をなでおろす美神だが、おキヌとシロは蒼白な顔をしていた。

「美神さん。あそこ……横島さんの部屋じゃ在りませんよね?」
「え?」

おキヌが指差した場所は、横島の部屋だった場所であった。
横島の部屋があった場所は、吹き飛んでいて向こう側の風景が見えるほどだった。
美神は、そこを見て一瞬顔色を変えたが……

「おキヌちゃん。死傷者はいないって話だから。きっと横島君も無事なはずよ。」
「……本当ですか?」

美神は、自分に言い聞かせるようにそういいおキヌの問いに頷いた。
しかし、タマモがそこに水を差した。

「跡形も無く消し飛んだんじゃないの?」
「女狐!!なんてことを言うでござるか!!」

タマモの一言にシロが食って掛かりおキヌは、また顔色を悪くした。
美神もタマモを睨みつけて一言。

「タマモ。冗談は言って良い冗談だけにしなさい。」
「……ごめんなさい。」

美神とシロにたしなめられたというよりは、おキヌの反応にまずいことをいったと思ったのだろう。
覇気無く三人に頭を下げて謝罪をした。

「霊波も残ってないみたいだし……これ以上ここにいても無駄なようね。」

美神の判断により一同は、車に乗り込むとまた事務所へと戻ることにした。



事務所に戻った一行は、何をするでも無く悶々とすごしていた。

「美神さん!何で、横島さんを探さないんですか!?」
「手がかりがまったく無いんじゃ探しようが無いじゃない!」

こんなやり取りが、何回か続いたとき人工幽霊一号が警報を発した。

「オーナー。霊体が二体近づいてきています。」
「二体?」
「おそらくは、鬼だと思われます。」

一同が、鬼と聞いて戦えるように身構えると人工幽霊がまた報告をする。

「目標、結界との接触まで、10・9・8・……・3・2・1」

カウントダウンが終わるとともに事務所全体が少し揺らいだ。

「人工幽霊一号!状況を報告!」
「目標は、結界に弾かれたようです。」
「・・・・・・・・・・・・」

人工幽霊一号の報告の後、長い沈黙が流れた。
そして、その沈黙を破ったのは外からの声だった。

「右の大丈夫か?」
「おお、左のこそ大丈夫か?」

どこかで聞いた声だと思った事務所一同は、ぞろぞろと外へと出て行った。
一同が外へ出てみるとそこには、妙神山の門番の左右の鬼がいた。

「あんたたち。なんか用?」
「おお、美神どの至急妙神山へ来てほしいんだが。」

左右の鬼がそう言えば美神は……

「何でよ。私たちは、今忙しいのよ。」

美神がそう言えば、そのとおりだとシロとおキヌが頷く。
タマモは、タマモで何か気になるのか鼻をヒクヒクと動かしていた。
そんな美神たちを見て鬼は……

「緊急事態なんだぞ!?」
「と・も・か・く妙神山に来てくれ!」
「そんなこといわれても、行く暇がないのよ!」

美神と鬼二匹が言い争いをしているころタマモが何かの匂いを嗅ぎ付けた。
ただ、言い争いがどんどんヒートアップしていったため、タマモは美神に話しかけることができずにいた。

「タマモちゃん。どうしたの?」
「えっと、あれから横島の霊気の匂いがするんだけど。」

タマモが鬼を指差してそういうと。
美神が他のメンバーがたじろぐ程の勢いで左右の鬼に詰め寄った。

「妙神山に横島君はいるの!?」
「よ、横島なら確かにいる。」
「そ、そのことで呼びに来たんだ!」

一同は、その返答を聞くと安堵の声を上げた。
二匹の鬼も、とりあえず来てくれそうだと安堵した。

「さ、そうと決まれば、妙神山に行くわよ!」
「はい!」
「わかったでござる!」
「は〜い」

美神が号令をかけると各々が返事を返す。

「じゃ、ワシ等はこれで」
「待ちなさい。」

二匹の鬼は、帰ろうとしたが美神に呼び止められ振り返った。
そこには、笑顔を浮かべた美神が立っていた。

「普通に行くよりあんた等で行った方が早いでしょ?」
「……どうする?左の」
「いや……どうするも何も。」

美神の性格の一端を知っている二匹の鬼は、泣く泣く少ない神通力を使って、一同を妙神山へとテレポートで連れて行ったのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
どうも初めまして。まだ、書きなれていないのですがよろしくお願いいたします。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa