ザ・グレート・展開予測ショー

横島君的復讐―4日目 Side大樹氏&クロサキ君


投稿者名:丸々」
投稿日時:(05/ 6/ 2)

昨日と同じように私室へ向かう大樹、その途中以前に手をつけた相手と擦れ違う事もあったが
「君とはもう終わったはずだよ・・・・」と軽く流していた。

決してバレる訳には行かない今回の浮気、会社の監視カメラのある場所で妙な真似は出来ない。

私室に入ると昨日と同じようにクロサキが既に待機していた。

「おはようございます大樹さん。」

「やあ、おはようクロサキ君。」

互いに挨拶を交わす。
昨日と同じように上着をソファーに放り投げ、デスクに着く。

「大樹さん、昨日の件ですが…。」

クロサキが切り出す。

「ん、何かわかったのかい?。」

答えながらも予想はついていた。この部下の能力の高さは疑う余地もないが、
昨日の違和感は自分達二人でも突き止めることが出来なかったのだ。
僅か半日程度で、何とかなるはずがない。

となると、感じた違和感を理由に浮気の中止を求めるつもりだろう。
無理やり巻き込んだ形になった今回の件だが、基本的に彼は中立なのだから。
何らかの影がちらつき始めたことを考えると彼が浮気の中止を求めるのも当然のことだ。

しかし、今回の件に百合子が絡んでいる確証はない。
原因不明の違和感を無理やり百合子と結びつけるのはまだ早すぎる。

『杞憂』など横島大樹の辞書には登録されていなかった。


「原因を突き止めることは出来ませんでした。
しかし、第三者の存在を感じる以上は今日予定されている浮気は――――」

「昨日も言っただろう、クロサキ君?
『浮気は障害があるほど燃える』ってな。」

昨日と同じように途中で言葉を遮る。
部下の呆れたような視線にもどこ吹く風である。

「君の気持ちはありがたいがね、危険は最初から承知の上じゃないか。
それに、もし何かあっても君に責任はないよ。」

例え何があっても、この浮気癖だけは一生治らないであろう事は、自分が誰よりも知っている。

「……わかりました。
ですが、注意は怠らないで下さい。」

「すまないね。・・・で今日のホテルはどうなっているのかな?」

「は、昨日と同様、足がつかないことを優先に選びました。」

殊勝な顔から一変、いつもの調子に戻る上司に苦笑しながら、
クロサキは事前に予約しておいたホテルの説明に移った。

色々と問題のある上司だが、それを補って余りあるほどの大器を備えている。
だからこそ、浮気の協力などという下世話な役割にも甘んじる事が出来た。
恐らくこれからも、影に日向にと仕える事になるのだろうが、今度こそしくじりはしない。
自分が仕えていながら守れなかった、かつての上司を思い出し、心に誓う。



(昨日の段階で営業3課のサエコ君を落とす事が出来たし・・・・
今日は総務課のミサ君に手を出す事にするか。
安全牌は無駄には出来んしな。)

うんうん、と心の中で頷きながら総務課の内線に繋ぐ。
総務課まで足を運んでもいいのだが、
その際に社内のカメラに証拠が残るため内線電話を使う事にした。
村枝商事では内線の録音まではやっていないのだ。

内線が繋がると、用件を伝える。

「はい、総務課です。」

「ナルニア支社から一時帰国している横島だが、
先月作ってもらった書類について確認したいので
担当者をお願いできるかな?」

書類の番号を伝える。
当然彼女が作成した書類なので、これなら自然に連絡をとることが出来る。
さすがにいきなり名指しで女性を呼び出したりしたのでは噂の種になる。

少し待たされたが、1分もしない内に相手が出た

「(大樹さん、おひさしぶりです♪)
先月お送りした書類の事ですね。」

「やあ、ミサ君ひさしぶりだね。また会えて嬉しいよ。
今から少し出て来れるかな?
あ、いつものように適当に話を作ってくれてかまわないよ。
どうせ来週にはまたナルニアだからね。」

「(はい、もちろんです♪)
え、この間の書類を紛失してしまったのですか!?
そうですか・・・・え、急いでもう一枚必要・・・・!?
ではすぐにお持ちしますね・・・・え、書類の説明にしばらくかかるかもしれない?
仕方ないですね・・・・ではすぐに書類を用意してそちらに向かいます。」

総務課の同僚に向けて小芝居を演じる。
この手馴れた感じからすると、大樹との浮気はいつもの事のようだ。

「ああ、お願いするよ。
そうそう、今は『緊急事態対策室』を使ってるんだ。
場所がわからなければクロサキ君に聞くといい。」

内線を切りしばらくすると、扉がノックされた。

「どうぞ。」

扉が開くと、20代半ば程の鮮やかなライトブラウンの髪の女性が入ってきた。
肩にかかるくらいの長さの髪を自然に後ろに流している。
真面目そうな黒ぶちの眼鏡をかけているが、実は度は入っていない。
顔付きが幼いため、スーツに身を包み、伊達眼鏡でもしていなければ
すぐに学生と間違えられてしまうからだ。

「大樹さん、おひさしぶりですね♪
相変わらず火遊びはやめられないみたいですね。」

「はは、君には隠せないな。
言うまでもないけど、証拠は残してないよ。」

「ふふ、大樹さんの用心深さは充分知ってますよ。
だからこそ私も安心して火遊びができるんですから♪」

「ふう、君も相変わらずだね。
ところで、近くのホテルを予約しているんだが
これから出かけないかい?
勿論仕事は気にしなくていいよ。」

誘い文句にしては直球もいいとこだろう。
全く変化なしの、小細工無しの一球勝負といったとこか。

「ええ、勿論ご一緒しますわ。」

それにしっかり喰いつくあたり、相手も只者ではない。

長年連れ添った夫婦並みに呼吸の合った二人は、
あっさり仕事を放り投げ、会社を後にした。





二人が会社を抜け出す前に、
会社の周りの張り込みポイントを潰したクロサキが
ホテルの方に移動しようとしていた。

「・・・・またこの違和感。
やはり・・・・何かある、のか?」

昨日の廃ビルで感じた気配をまたもや感じたクロサキが立ち止まる。
今の場所は会社からホテルの間にある公園。
予定では大樹がホテルに行くときに通るルートである。

(・・・・何かが潜んでいる?
 ・・・・しかし、いったい何が?
 ・・・・まあいい、試してみるか・・・・。)

そこそこ広い公園のため、そこかしこに茂みが生い茂っている。
昨日と同様、茂みの中に人の気配は感じない。

この違和感の正体を突き止めるべく、クロサキは目を瞑り心を落ち着ける。
そして、過去の映像を心に映し出す。

徐々に気を高めながら、自分の最も辛い記憶を呼び起こす。

――空港でナイフで刺される元上司――
――近くにいた自分は何も出来ず――

目を見開きあの時の激情を一気に吐き出す。
爆発的な殺気を放出する、あたかも突然吹き上がる間欠泉のように。



(そこか・・・・・!!)



殺気に反応し慌てて飛び立つ、鳩や雀とは別の気配を茂みから感じる。

街中のため銃は使わない。
背広からナイフを抜き、茂みに飛び込む。

ナイフを構えたまま油断なく辺りを見回すが、そこには誰もいない。

(たしかに、何かが殺気に反応したはずだ・・・・・。
 どういう事だ・・・・?
 ・・・・・ん、あれは。)

クロサキの殺気にあてられてのか、一匹の黒猫が茂みの奥で気絶していた。

(ふう、この猫か。
 ・・・・紛らわしい。
だが、他に何者かが潜んでいる可能性も捨てきれないが・・・・)

迷っている間にも時間は過ぎる。下手に時間を掛けて
時間までに張り込みを潰せなければそれこそ本末転倒だ。
行くしかないと判断し立ち去ろうとするも、
最後にもう一度周囲を確認する事を忘れない。


少し時間が経ち、大樹とミサが公園に立ち寄っていた。

(む、この違和感。
昨日のものと同じか・・・・?。
そうか、クロサキ君もこれを感じたのか。
恐らく潜んでいるものをいぶりだそうとしたのだろうな。)

さっき感じた部下の殺気を思い出す。
あの彼がそこまでやって見つけられなかったという事は、
今、自分が出切る事もないということだ。

「大樹さん?どうかしたんですか??」

一般人のミサは違和感など感じていないようだ。

「・・・・ん、いや、なんでもないよ。」

大樹もそう答えるしかなかった。



その後は何事も無く、ホテルに到着した。

取っておいた部屋にはいるなり、情熱的な口付けを交わす。

「相変わらず、キス上手いんですね・・・・。
シャワー・・・・浴びてきますね・・・・。」

既に蕩けるようになっているミサが浴室に向かう。

大樹もさっきの違和感の事は忘れ、今この瞬間を楽しむ事にした。
ミサが浴室から出てくると、大樹も浴室でシャワーを浴びる。

シャワーを浴び、無言で重なり合う二人。
激しくキスをし、大樹の指が―――――――――
      ・
      ・
(途中省略。準備をすすめてると思ってください)
      ・
      ・
      ・
ミサが耐えきれなくなったのか、切ない声を上げる。

「ねえ・・・・大樹さん・・・・もう」

「・・・・ああ・・・・」

これからが本番のようだ。


本番に突入しようとした時、ふと大樹が気付くと自分の方が準備できていない。
それを見た彼女が、準備を手伝ってくれたが、全く効果が無い。

何となくばつが悪い大樹と彼女の目が合う。
その目には、はっきりした失望とちょっとした哀れみの光が浮かんでいた。
まるでこう言わんとしているかのように


『仕方ないですよね、もう大樹さんも若くないんですから
歳を取って来るとそういう事ってあるんでしょう?』


視線にこめられた感情を察した大樹が慌てる。

「馬、馬鹿な!!
そんなはずが無い!今は少し疲れているだけなんだ!!
もう少し休めば今度は上手く行くとも!!
そ、そうとも少し休めば・・・・

(馬鹿な・・・・私がもう歳・・・・!?
そんな馬鹿な・・・・!!)。」

最後はもはや呟きに変わっていた。

「別にそんなに気にすること無いですよ?
確かにもう若くないかもしれないけど、絶対に実年齢よりも若く見えますもん♪。
たまにはそういうことありますよ・・・・。」

自分が老けて見えるとかそういう問題ではない。外見的な年齢には無頓着な方だ。
これはむしろ自分の男としての尊厳に関わる問題なのだ、このままでは再起不能になりかねない。

「すまない、ミサ君!
急な用事を思い出したのでこれで失礼するよ!!」

まるで逃げるように服を着、出て行く。
ホテルに女性を一人残して出るなど、大樹らしくないが余程の緊急事態のようだ。

「あらー・・・・やっぱり男の人ってそういうの気にするんですねー・・・・」

一人残されたミサは暢気に呟いていた。
女性にはわからない悩みだったようだ。


当の大樹本人は今までの人生で最大級のパニックに襲われていた。
なんせ自分の体のことは自分が一番わかっている。
疲れている、と言い訳したが実際はそんな事は無かった。
この3日間精力的に活動していた自分が急にこんな・・・・。

大樹は突然断崖絶壁の上に追い込まれてしまったように感じていた。

急いでクロサキと連絡をとる。

「クロサキ君、大至急頼みたい事がある!!」

「大樹さん?
随分早いですね、まだ予定では1時間ありますが・・・・。
まさか、何かトラブルでも?。」

「ああ、非常事態だ。
しっかり聞いてくれ。
この時間帯でも営業していて、安全な風俗店を手配してくれ!!
できれば10分以内に頼む!!」






「・・・・・・・・・・・・は?
 ・・・・大樹さん、今はまだ昼前なんですが・・・・
 ・・・・いったい何があったんですか?。」


「頼むから理由は聞かないでくれ。
これは私の尊厳に関わる大問題なんだ!。
クロサキ君も男ならわかるだろう!?」

「は、はあ・・・・
急いで手配します・・・・。」

「わかるだろう!?」などと急に言われてもさっぱりわからなかったが
上司の余りに切羽詰った様子に思わず頷いてしまった。

きっちり10分以内に店を手配し、大樹がいるホテルまで車をまわす。

「すまないクロサキ君!!
大急ぎで行ってくれ!!」

「は、はい。」

相変わらず切羽詰った上司に困惑しながら部下は車を出した。




ちなみにいまのやりとりを『耳』で聞いていた上司の息子が、笑い転げていた。

「だっはっはっは・・・・!!
玄人の手を借りても無駄だっつーの・・・・!
親父ィ、てめーはもう死んでいる!!
は、腹いてぇー・・・・笑いすぎて死にそう・・・・!。」

正直なところ生命には全く悪影響は無いが、
あの父親にとっては死よりも恐ろしいのは間違いない。




上司と部下を乗せた車は一見ただの雑居ビルに見える建物の前に到着していた。

「ここかね?」

それっぽい雰囲気の建物が無かったので大樹が確認する。

「は。
このビルの地下がそうです。
一般人は立ち入る事さえ出来ないタイプの店で
口の堅さや従業員の質もかなり高いランクです。
政界の大物や一流企業の重役などもよく利用するそうです。」

満足したのか、部下に礼を言い駆け足で乗り込んでいった。

「いったいなんなんだ・・・・?」

まだ何があったかわかってない部下であった。


数時間後、さっきよりもさらに追い詰められた表情の上司が車に戻ってきた。

「・・・・つ、次だクロサキ君。」

「は、はあ。」

クロサキにしては珍しく歯切れが悪い。
何がなんだかさっぱり理解できないのだ。

結局その後も4店ほどまわる事になる。



流石にここまで来るとクロサキにも事態が見え始めていた。

(まさか大樹さん・・・・EDなのか?
しかし、この人ほどEDに縁が無さそうな人もいないが・・・・。
そもそも、おさまらないというのならわかるが、反応しないというのは妙だ)

ある意味結構ヒドい事を考えながら、クロサキは考えを巡らす。
昨日の今日で突然発症するというのも、おかしな話のような気がする。
しかし、クロサキ自身それほど詳しい訳ではない。

今まで浮気してきた女性に呪われて役に立たなくなるというのなら理解できるのだが。
急に自然発症―しかもかなり重症のようだ―するというのはどこか辻褄が合わないと感じていた。

「ん・・・・?呪い・・・・?」

冗談交じりに思いついた可能性だったが、よく考えれば一番ありえそうだ。
あれだけ女性に手を出しているのだ、怨まれない方がおかしい。
実際、何度か誤って地雷に手を出して後ろから刺されかけていた。
その都度、クロサキが人知れず始末しているのだが・・・・。

「ク、ク、クロサキ君・・・・つ、つ、次だ・・・・」

一体これが何軒目かわからなくなるほど既にまわっているが、まだ効果が無いようだ。
肉体的疲労は皆無のようだが、精神的疲労は限界に近付いているようだ。
ほんの一日の間に、10歳以上老け込んで見える。
目の下には隈が出来、顔色は土気色、心なしか白髪も増えているような気がする。
流石にこれ以上は限界と判断し、さっき考えていた事を切り出す。

「待っている間に大樹さんのEDについて考えてみたのですが・・・・。」

「!?
な、何の事だい!?
私はただ、たまには玄人も良いと思ってだね・・・・」

「いえ、流石にそれは無理がありますよ」

冷静に突っ込まれるとどうしようもない。

「く・・・・!
恥をしのんで言うよ・・・・
ああ、その通りさ!!
今朝から全く反応なし!!
薬を使おうと何人を相手にしようと効果なし!!
・・・・ああ、もう私は終わりだ・・・・。」

一体ナニが終わりなのか、いつもの活力はどこへやら、といった様子。
EDは病の一種なのだから恥でも何でもないと言おうと思ったが、
そんな事はこの上司にはどうでもいい事だ。
使い物にならないという事実のみが彼の心を蝕んでいるのだから。
だからこそ、さっき思いついた仮説を提案してみる。
何の証拠も無いが、少しはこの上司の負担を減らせるのなら言う価値はあるだろう。

「ですが、それは本当にEDなんでしょうか?」

「・・・・?」

ようやく落ち着き、耳を傾けてくれる状態になったと判断し、さっきの仮説を話してみる。


「な、なるほど・・・・呪い、か。
確かに身に覚えが無いとは言いきれないな・・・・。」

「専門医に診てもらう前に、可能性は全て探ってみてはどうでしょうか?
幸い、この間のオカルトGメンの研修の際に知り合った男がいます。
彼に一度話をしてみてはいかがでしょう。上手く行けば解決するかもしれません。」

「あ、ああ、そうだね。
なら、その『彼』と話をつけてもらえるかな。
幸い明日からは休暇だからね、時間ならある訳だし・・・・。」

当初の来日理由の、本社への報告は今日で全て終了していたので、
明日からは日本での休暇に当てるつもりだったのだ。

「は。
では家までお送りします。」






上司を家まで送った後、名刺入れから一枚の名刺を取り出す。

「有能そうな男だったからな・・・・。
彼なら何らかの力になってくれるはずだ・・・・。」

最初に見た時は公務員に見えなかった、
なかなか銃の扱いが上手かったあの男を思い出す。
性格の方も上司と気が合いそうな感じがした。
もしもこれが霊的なものが原因という事なら、彼が見極めてくれるだろう・・・・。


クロサキは名刺を見つめると、携帯電話を取り出し
記載されている連絡先へとかけはじめた。

『オカルトGメン 日本支部勤務 西条輝彦  連絡先――――』



















―後書き―

なんとか4日目も終了しました。

できるだけ露骨な表現は避け、上手くボカせたと思うのですが、どうでしょう?。

大樹氏のダメージを表現するにはある程度書き込まなきゃだし、
書き込みすぎるとやり過ぎになるしで、
ある意味今までで一番、書くのに神経使いました

幸い、これ以降の大樹氏の絡みは無いはずなので安心して突っ走れます。
うん、無いはず・・・・多分無いと思う・・・・。



横島君が発動した『文珠』の文字ですが、具体的に挙げようかと悩んだのですが、
どの字を使っても露骨になるので・・・・・(単語なのでボカしようがありません(汗))
皆さんの想像にお任せします。

効果はもうおわかりですよね(笑)。
「なえる」とか「しぼむ」とか「いしゅく」するとかそんな感じで(゚゚;

ではまた。

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