横島君的復讐―4日目 Side横島君
投稿者名:丸々
投稿日時:(05/ 6/ 1)
―木曜日―
「おはよう父さん!」
息子の明るい声で目が覚める。
男の声で目が覚めるとは、相手は息子とはいえ、なんとなく不快だった。
やはり寝覚めに聞くのは女性の声がいい。
「おお、忠夫・・・。
今朝も早いんだな・・・。
お前いっつも朝は早いのか・・・?。」
「・・・・・・さあ、父さん!
ご飯が出来てるよ!」
微妙に反応がおかしかったが、寝起きのためかまだ頭がはっきりしない。
(しかし、ちょっと小遣いやっただけでこの変わり様とは・・・・。
普段どんだけ貧乏なんだ、こいつは?。
っつーか、急に懐かれても訳が分からんのだがな・・・・・。)
父親が小遣いをやったためか、3日前と比べると妙に少年の愛想が良い。
むしろ、良すぎるような気さえする。
(しかし、この様子だと昨日の違和感の原因はこいつでは無さそうだな。
クロサキ君の調査によるとちゃんと登校していたらしいしな・・・。
まあいい、貴重なバカンスをわざわざ息子相手に無駄にする事も無い。)
どうやら、父親の今日の予定は昨日とあんまり変わらないようだ。
まあ、一言で説明するなら『浮気』とだけで片がつく。
朝食を食べ終わった少年が、後片付けをしながら話し掛ける。
「父さん、今日は日直だから先に出るね。」
「?。
お前がそんなもんを律儀に守るとは意外だな。
っつーか、今日は無駄に元気だな。
なんかあったのか?」
「・・・・・じゃあ、行ってくるね父さん!!」
さっきからどうも会話が噛み合っていないような気がする。
よく考えるとさっきから、こっちの問いに息子が答えていない。
「・・・・?。
何か企んでいるのか?。
ふん、別にどうでも良いか。
あいつが何か企んだ所でどおッて事無いしな。」
逃げるように出て行った息子を見ながら
父親はふと呟いていた。
『・・・・・・いつが何か企んだ所でどおッて事無いしな。』
「くっくっく、その自信が命取りだぜ、クソ親父・・・!。
貴様の人生は今日で終わるのだ!!」
昨日と同様、父親が起きる前に『文珠』『耳』を上着に仕込んでいたようで、
少年の耳には父親の呟きが聞こえていた。
(すでに仕込みは完璧よ!後は自滅するのを待つだけってな!!
『文珠』使いの本領を見せてやるぜ!!)
暗い笑みを浮かべ、父親の泣きっ面を想像しながら少年は登校して行った。
「おはようございます横島さん!
今日も随分ご機嫌ですね、またお小遣いもらったんですか?」
教室に入ったところで
親友のヴァンパイア・ハーフに声を掛けられる。
少年の顔に浮かんでいる笑みを勘違いしているようだ。
「くっくっく・・・ピートよ。
やはり世の中信じるものは馬鹿を見るようだぜ・・・・。」
「よ、横島さん??」
これが本当に、昨日の朝顔を合わせるなり、何かの宗教にはまったかの如く
『世界は光に満ちている!!』
『持つべきものは親だよな!!』
『ビバ諭吉!これで一ヶ月は余裕だぜ!!』
などと、異常なハイテンションで話し掛けてきた少年と同一人物なのだろうか。
今朝はやけにローテンションだ。
だが、思い返せば昨日も朝はご機嫌だったのだが、時間がたつにつれ不機嫌になっていき、
時折、授業中にも関わらず何やら呟きながら血の涙を流していたような気がする。
それが余りにも鬼気迫る姿だったので、教師を始め誰も近寄ろうとしなかったのだが。
(僕の父もろくでもないけど、横島さんも大変なんだなあ・・・・)
自分の問題がありすぎる父親を思い出し頭痛がするヴァンパイア・ハーフの少年。
彼の父親とはまた違った問題がある父親を持ってしまった少年の苦労を察する。
「元気出してくださいよ横島さん。
またお父さんと喧嘩でもしたんですか?」
違うとも思えないが一応確認する。
「まあ、な。
けどな・・・・・・。
くっくっくっく・・・・・。」
「横島さん?」
いきなり目を伏せ何やら歪んだ笑みを浮かべる少年にひくヴァンパイア・ハーフ。
「いやいや、怒ってなんかないんだ。
どっちかっつーと、むしろ哀れやな。
なんせ親父は今日で死んだも同然なんだからな!!
いやー、サルのところで修行した甲斐があったぜ!。」
あっはっはっは、と大笑いする少年。
どう見ても情緒不安定な上に言ってる事も支離滅裂だ。
「は、はあ・・・・・
(サルってなんだろう?)」
何を言えば良いかわからず生返事で返すしかなかった。
余談だが、妙神山では斉天大聖の暮らしぶりについて、機密扱いになっている。
西遊記のおかげで知らない人間の方が珍しい、大神・斉天大聖が実際は
『ゲーム大好きなお猿さん』だなどと口が裂けてもいう訳にはいかないためである。
このため、ピートは横島と雪乃丞が修業をしたということは知っているが
小龍姫から口止めされた二人からは、修行の内容までは教えてもらっていない。
――二人が話している少し前、少年のアパート。
そろそろ出るか、と父親が会社に行く準備をする。
鞄を持ち、上着を着、靴を履こうとする。
「ん、ゴミか?」
靴の中に異物が入っていたような気がし、靴を脱いで覗き込む。
が、別に何も入っていない。
もう一度履こうとすると今度はすんなりとつま先が入った。
気のせいか、と思い父親は家を後にした。
午前9時少し回った頃、学校では一時限目が始まっていた。
珍しく登校してきた横島が、さらに珍しい事に居眠りもせずに真剣な目で黒板を見つめていた。
『・・・で今日のホテルはどうなっているのかな?』
『は、昨日と同様、足がつかないことを優先に選びました。』
『耳』は完全に違う方に向けられているが。
(ちっ!!性懲りもなくあの畜生は・・・!!
てめェーの頭ん中はそれしか入ってないんか!!)
少年の頭の中も煩悩しか入ってないが、自分では気付かないものらしい。
(まあいいや、そもそも浮気をしてくれなきゃ意味がないんだからな。
靴に仕込んどいた『文珠』も上手く吸収されたみたいだし、後は時間の問題だな。
あの親父の泣きっ面がこの目で見れないのは残念だけどあの二人に近付くのは
流石に危険すぎるもんな。昨日もいろいろ手を打ってたみたいだし・・・。)
下手に証拠でも取ろうとして近寄れば本気で亡き者にされかねない。
浮気の打ち合わせの後は仕事の話に入ったため、途端に興味が失せ眠くなってきた。
寝るわけにはいかないと授業の方に耳を傾けたが、こちらもやっぱり眠くなる。
(ショウタイムまではまだ時間有りそうだし、ちょっと眠っとこうかな・・・・)
そう判断した瞬間少年は眠りに落ちていた。
『・・・ん・・・・んん・・・ぃ・・・あ・・・ぁぁ・・』
甘く、そして切ない声で、少年は目を覚ました。
(・・・はっ!あっぶねぇ、寝過ごすところだったぜ!)
自分がいる教室とは別の空間から聞こえる声は、行為特有のものだった。
経験がない少年でもビデオでなら何度も聞いたことがある馴染みのあるものだ。
(今は・・・・まだ11時じゃねーか!
昨日といい、陽も昇りきらんうちから何やってんだ、あの野郎は!!)
今まで寝っ放しだった少年も、学校に来てる意味がまるでない。
向こうはまだ始まったばかりらしく、準備段階に入って10分位といった所か。
盛り上がってゆく『向こう』をよそに少年の目は冷静だ。何かを測っているように見える。
(・・・・向こうはそろそろ本番に突入だな)
『ねえ・・・・大樹さん、もう・・・・』
『・・・・ああ・・・・』
・
・
・
・
・
・
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・
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・
『―――!?
――今――!?
―もう――度―?
――――な―馬鹿―――。
・・・・・・・』
『―に―――――
―――もう―――――。
―いう――――――すよ・・・・。』
『向こう』でなにやら問題が発生した様子だ
「ぃぃぃよっしゃァァァァァァァァァァーーーーーーー!!!!!!」
自分の仕込みが上手く発動したのを確信し、少年は勝利の雄叫びを上げた。
「やかましいぞ横島!!いきなり叫ぶんじゃない!!廊下に立ってろ!!」
当然授業中だったので教室から追い出される少年。怒られたにしてはその表情は清々しい。
よっぽど嬉しい事があったのか廊下に出るや腹を抱えて大笑いしている。
最も、何も知らない級友からは、『横島の奇行ここに極まれり』といった目で見られていたが。
「ひーーっ!!腹がよじれる・・・・!!
思い知ったかクソ親父め!上手くいくかどうか不安だったが大成功だ!!
いやぁー『文珠』最高!!斉天大聖老師ありがとォォーーー!!!」
この日、何時間かおきに謎の奇声上げる少年が校内で目撃されていた。
親友のヴァンパイア・ハーフや大男が尋ねても、笑い続けるだけでまともな答えは返ってこなかった。
しかし、その時の様子を後に彼らはこう語る
――あれは緩みきってはいたが、間違いなく何かをやり遂げた『漢』の顔であった――と。
――深夜、少年のアパート――
何故か音を立てないように、父親がそっと室内に入る。何か後ろめたい事でもあるのだろうか。
「父さんお帰り!!遅かったね!!」
何故か満面の笑顔で迎える少年。ちなみに只今の時刻は深夜3時。
「た、忠夫。まだ起きてたのか?」
妙にばつが悪そうな父親。
1日会わなかった間に10歳以上老け込んだように見える。
顔色も悪く、普段の溢れんばかりの活力は見る影もない。
「なんだか眠れなくてね!!
父さんどうしたの?なんだか元気がないね?
もう歳なんだから無理しない方がいいんじゃないのか?」
すでにだいぶ遅い時間なのだが少年の方は無駄に元気いっぱいだ。
父親が帰国して以来最もハイテンションのような気がする。
何か聞きたくないことを言われてしまったのか、激しく動揺する父。
「な、何を言ってるんだ、父さんはまだまだ若いぞ!
こ、こ、これくらい無理でも何でもないんだからな!
そ、そ、そうとも父さんはまだまだ若い、若いんだ!」
少年に言うより、むしろ自分へ言い聞かせているように見える。
焦りまくった姿に、もはや辣腕企業戦士の見る影もない。
(頼んだぞクロサキ君・・・・!!
君が最後の頼みなんだ・・・・・!!
何としてでも早急に『彼』と連絡をつけてくれ・・・・!!
くっ、何でこんな事に・・・・!!。)
例え自分の会社がゲリラに占拠されても動じない程の男がここまで憔悴しきる事態。
よほどの事が起こったのだろうか。
今回ばかりは彼の手にも負えないらしく外部の人間に頼るしかないようだ。
いつものようにやっかいな事を頼まれた彼の懐刀が方々に手を回し、何やら動き回っている。
ついに復讐(?)を果たしたらしい少年。
彼はこのまま逃げ切る事ができるのだろうか。
(ああ・・・!!ついに俺はやったぞ!!
今日はいい夢が見れそうや・・・・!!)
―後書き―
う・・・・大樹さんのベッドシーン難しい・・・(゚゚;
あんまり細かく描写すると引っかかりそうだし・・・。
削りすぎると訳わかんないだろうし・・・・・。
使う単語にも注意しないといけないし・・・・。
というわけで、今まで結果だけ書いて中身には触れなかったんです(汗)
何があったのが急に老け込んでしまった大樹氏。
よっぽどでかい精神的ダメージがあったのでしょうか?。
えーと、横島君の使った『文珠』については、
次の『Side・大樹氏』で明らかになります。
まあ、分かる人には分かると思いますが。
もし分かってもコメントでは流してくれると嬉しいです(^^;
今までの
コメント:
- またもや一番乗り?!
ナニが起きたのかは判りませんが……まだまだ生ぬるい!外道にはそれに見合った絶望を徹底的に味あわせてやってくれ!と、爽やかに、尚且つ激しくエールを送ります。
でも……やっぱりオチは相打ちなのかなぁ、と言う不安も(笑)。 (すがたけ)
- >すがたけさん
いつも素早いコメントありがとうございます(゚▽゚)/~~
>ナニが起きたのかは判りませんが
あ、分からない方もいらっしゃったみたいでちょっと安心しました。
バレバレじゃないかと不安だったもので・・・(^^;
実はさっき雑談掲示板の『個人的質問なアンケートにご協力お願いします』
を見てたのですが、この作品(特に今回の話)も充分ひっかかるのではと悩んでます。
何と言うか大樹氏の存在自体が18禁な所があるので・・・・掘り下げると問題が出まくるんじゃないかと。
(すでに出てそうな気も・・・・)
しばかれて終わりというオチにするなら何も問題ないんだと思いますが、
ちょっと下ネタなオチにするのなら、これってどうなんでしょうか。
いえ、もちろん限度があるということは理解してるんですが、
今回のはオチがオチだけに・・・・
(オチの予想がついている人にはこの不安は感じてもらえると)
とりあえず、投稿してみてアウトだったら削除なりの処分をもらおうと思います。 (丸々)
- 二文字なら『不』『能』だけど・・・ああ、『萎』かな?
『老』とか使っても良いかもしれませんが、あの大樹さんだと・・
大変楽しく読ませてもらってます。このままラストに向かって突っ走ってください (alc)
- え〜っと、もしかしたらコメントが途轍もないものになってしますかもしれないんで名無しで^^;
・・・・・・・・・・・・イヤ、マァ賛成って言えば賛成なんですけど久しぶりに小説読んでてキャラクターに殺意が沸きましたよw
原作ぐらいのならまだ笑ってられますが帰ってくるといいながらナンパした女性の所で一晩すごして、あまつさえ息子の通ってる学校の生徒にまで手を出す(未確認)って・・・・・・・・・・・・
横島忠夫ぉぉぉお〜〜〜〜!!!!世界は今お前に味方をしている!!!思う存分そのクソ親父を殺れ!!(親指で首を掻っ切るジェスチャー付w) (通りすがり)
- 何が起こったんだーーーーーーー!!!
早く読みたいぃぃぃぃぃーーーーーーーー!!!
それに、もっと、もっと、もっと奴を追い詰めて、一気に叩き潰せ、滅ぼせーーーー!!、忠夫!!!!
最後に一言、最後の最後でヘマすんなよ、忠夫 (太った将軍)
- >alcさん
『文珠』の文字については・・・・・
まあ、後編のコメントで触れてますけど、正直具体的には言えませんよ(汗)
だって、単語だからボカしようがないし・・・・(泣)
>通りすがりさん
>帰ってくるといいながらナンパした女性の所で一晩すごして、あまつさえ息子の通ってる学校の生徒にまで手を出す
大樹さん『らしさ』を出そうとすればするほど18禁に近付いていく・・・・(汗)
なんて(ちょっと違う意味で)難しいキャラなんだ、と実感しましたね(笑)
>太った将軍さん
いつもコメントありがたいです。(^^
>最後に一言、最後の最後でヘマすんなよ、忠夫
基本的には彼は詰めの甘いとこがありますけど、たまにやり遂げる事もありますからね。
さて、今回はどうなるのでしょうか・・・・?。 (丸々)
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