ザ・グレート・展開予測ショー

横島君的復讐―5日目 後半


投稿者名:丸々
投稿日時:(05/ 6/ 4)

「横島君、今日はそんなに悪くなかったわよ」

上機嫌の雇い主。その言葉の通り、除霊後だというのに少年の体は傷ついていない。
途中何度か雇い主に喝を入れられる事はあったが、おおむね問題無かったという事だろう。

「そうッスかー、いやぁー頑張った甲斐がありましたー。」

いつものように軽く答えている少年だが、その胸中は複雑だった。
父親に仕組んだ罠が、気に入らない知り合いによって、あっさり見破られてしまった事で
かなりの窮地に追い込まれていたのだ。
頼りになる雇い主に相談しようにも、客観的に見れば明らかに自分に非があるので相談できない。
そもそも、あれだけ『文珠』を無駄使い(少年にとっては意義のあることだが)したことがバレれば、
父親の手にかかる前に雇い主に殺されかねない。
恐ろしく高額な精霊石以上に、『文珠』は貴重な霊具なのだ。

「なによ、あんまり嬉しそうじゃないわね。
さては、また何かやらかしたんじゃないでしょうね?」

少年の雰囲気から何か気付いたのか、少年を問い詰める雇い主。
付き合いが長いので少年が何かを隠している事を感じ取ったのだろうか。

(ア、アカン、下手な事を言ったらバレそうや・・・・。こういう時は・・・・)

「い、いや、ちょっと昨日親父と喧嘩しちゃいまして・・・・。」

言える範囲の情報を明かして目をくらます。全くの嘘じゃない分、説得力はある。


「はー・・・・アンタ達って相変わらず仲悪いのねー・・・・」

呆れたようにため息をつく雇い主。
一応納得はしたようだが、呟いた後なにやら考え込んでいる。
少年も曖昧に笑い、その場をごまかす事にした。

「まあいいわ、除霊はもう終わりだからさっさと帰るわよ。」

いつまでも除霊現場に居ても仕方がないので事務所に帰ることにしたらしい。
それを聞き、少年と少女も後片付けを始める。

その後は特に何事も無く現場を後にする。
もちろん事務所へ帰る車の中で、人知れず少年がこれからの自分の行く末を考え
憂鬱になっていたのは言うまでも無い。


事務所で後片付けをすませ、逃げるように少年は事務所から帰っていった。

「あの、美神さん。今日の横島さん変じゃなかったですか?」

「あー、あのバカ、大樹さんとまた喧嘩したらしいのよ・・・・。」

少女も少年の様子がおかしい事に気付いていたらしく、雇い主と話していた。

「そうだったんですか・・・・横島さん、なんだか元気が無かったですよね・・・・。」

「まったく、あのバカ、落ち込むくらいなら最初から喧嘩しなきゃいいのに・・・・。」

なにやら勘違いしているようだが、彼女達も少年の様子がおかしい事を心配しているようだ。
少女が何とか元気付けてあげられないかと、雇い主に何やら相談し始めた。
素直じゃない雇い主も少女の邪気の無い瞳には弱いらしく、渋々ながらも自分からも意見を出す。
色々と意見を交換し合い、『何か上手い物』でも食べさせようかという案に落ち着こうとした頃、
それまで黙っていた、もう一人の事務所のメンバーが口を開いた。

『美神オーナー、こういうのはどうでしょうか――――――』









事務所の皆が心配してくれている間、少年がどうしていたかというと。




(あれ?ここどこだ?っつーかこの目隠しはなに??)





既に拉致されていた。









少年は事務所を出た瞬間、尻に痛みを感じたかと思うと、
次に気が付いた時には誰かの車で運ばれていた。
御丁寧に、目隠しに手錠に足枷つきの状態だ。

(何か知らんが、さっさと逃げるとするか)

霊気を集中させて『文珠』を精製しようとした瞬間、耳元で話し掛けられた。

「目が覚めたようですね。悪いのですが手は開いたままにしておいてもらいます。
あなたの能力は素人の手に負えるものではなさそうですからね。」

言いながら少年の手首に冷たい感触がする。どうやらナイフを押し付けているらしい。

(・・・・この声は・・・・あの眼鏡のにーちゃんか?。
ってことは親父に拉致されたって事か!?。
い・・・・嫌やァァァーーーーー!!!まだ死にとうないーーーーーー!!!!)

パニックに陥る少年。
少年の考えている事が伝わったのか、

「安心してください。何も始末して山に埋めようという訳ではありませんよ。
同行して頂こうにも、恐らく抵抗されると思ったので眠ってもらっただけです。」

恐らく、さっき尻に感じた痛みは麻酔銃か何かだったのだろう。
どうやら手荒な事は無さそうだと思い、少年にも余裕ができてきた。

「えーと・・・・クロサキさん、だったっけ?。
手錠くらい外してもらえないッスか、どうせ走ってる車の中から逃げるなんて無理だし。」

(『文珠』さえ使えりゃー、例え飛行機の中からでも逃げられるからな・・・・)

相変わらず悪知恵を働かす少年だったが、返って来た返事は予想外のものだった。

「残念ですが、手錠は外す訳には行きませんよ。
どうやらあなたの『文珠』という能力は、かなりの非常識な代物らしいですからね。
当然、手の平を閉じる事も禁止です。精製されたら危険極まりないのでね・・・・。」

(んなッ!?。
何で『文珠』がバレてるんだ!?親父達には秘密にしておいたのに・・・・・!!!)

『文珠』の存在がバレているどころか、精製する方法まで知られてしまっているようだ。
手の内を読まれている事に焦るが、何故バレているのかがわからない。少し考え込む少年。

(・・・・・・西条か!!西条の野郎が情報をリークしやがったんだな!!。
ヤ、ヤバイ、これはマジで逃げられそうにないかも・・・・・。)

嬉々として自分の能力の特性や、弱点をリークする道楽公務員が頭に浮かぶ。
想像以上に追い込まれている事に気付き焦りまくる少年をよそに、
車はどうやら目的地へと到着したようだ。

「着きましたよ」

喋りかけられながら、目隠しが外される。手錠や足枷も順に外されていく。
全ての枷を外された少年が車から降りると、そこは暗く茂った森の中だった。
周囲から聞こえる鳥や獣の鳴き声を聞き、本当に日本かここは?などと考えていると、
背後から、よく見知った、そして最も聞きたくない声に話し掛けられた。


「よお、忠夫ぉ・・・・。昨日は世話んなったなあ・・・・・。」


そこには、ニヤニヤ笑いながら特殊部隊並みの装備を身に付けた父親が立っていた。












森の中、向かい合う少年と父。

「お、親父・・・・。」

とりあえず声をかけながらも謝るべきか、開き直るべきかを思案する少年。
少年にとって予想外なのは、意外と父親が上機嫌に見えることだった。
あれだけの事をした以上、問答無用で鉄拳制裁でもおかしくはない。

「はっはっは、そんなにビビるなよ。意外と腹は立ってないんだ。
どっちかっつーとな、お前が予想より成長してたから嬉しいくらいなんだよ。
俺もまさかお前に一杯食わされるとは思ってなかったからなあ。
お前が俺にした事も俺が騒がなければ法的には問題ないらしいしな。」

信じられないが、どうやらそれほど怒ってないらしい。だがそれにしては準備が大掛かり過ぎる。
相手の出方を窺っていた少年だが、何か行動を起こす事にした。

「いやー、誉めてもらえるとは思わんかったけどな。
じゃ、俺はそろそろ帰っても――――」

「ただし!」

無理と思いつつも虫の良い事を言おうとした瞬間、父親の怒声で遮られる。

「イタズラがバレた以上は、それ相応の罰を受けてもらおうじゃないか・・・・。」

やっぱりタダでは済まんかと諦めつつ問い返す。

「何するつもりだよ?。ケツ百叩きくらいなら我慢してもいいけどな。」

「なあに、ちょっとしたゲームをしようと思ってな。
『鬼ごっこ』だ。簡単だろう?。
今から2時間、お前が俺から逃げ続けたら勝ちだ。
もし俺から逃げきれた時は賞品として何でも好きなものを食わしてやろう。」

気味が悪いくらい好条件な話だと思いながらも考える。

(『鬼ごっこ』だと?
ガチの殴り合いなら勝てなくても、これなら勝てるんじゃねーか?。)

「んで、俺が捕まったらどうなるんだ?。」

何となく無茶な事を言いそうだと思いながらも、一番重要な事を確認する。

「ん、別に無茶な事は言わんさ。昨日の俺の気分を味わってもらうだけだ。
ただし、俺には霊能力はないからな。物理的な手段でやる事になるが、仕方ないよな?。」

言いながら、嬉しそうな顔でナイフを取り出す。御丁寧に針と糸も用意してくれているらしい。
止血の心配ならしなくて良いぞ、などと付け加えている。

予想以上に無茶な罰ゲームに引きまくる少年。

「そ、そ、それは・・・・・い、いくらなんでも無茶苦茶すぎないか・・・・・?」

冷や汗を流しながら別の条件を希望する少年。
あまりのショックで突っ込む事すら出来なかったようだ。

「はっはっは、別に使う相手もいないんだろう?だったら良いじゃねーか。」

無茶な理屈をこねる。どうやら妥協の余地は残されていないらしい。

「(こ、この外道は・・・・!!)
よ、よーしわかった、それで相手になろうじゃねーか!。」

それを聞き、満足そうに微笑む父親。

「ちなみに空中は禁止だぞ。
もし『飛』んで逃げようとしたらクロサキ君が狙撃するからな。
それ以外はどこに逃げても構わんぞ、どうせこの辺り一帯は森だしな。」

(ぐッ・・・・・・・・!!読まれてたか・・・・・!)

少年の反応を満足そうに見やりながら、時計を投げ渡す。

「その時計で9時半までがゲームの時間だ。
10分経ったら追いかけるからな。
・・・・・・・・じゃ、スタートだ。」

父親が手を叩くと少年は猛然と走り出した。










5分後、ある程度距離を取った少年が『文珠』を取り出した。

「俺の予想では・・・・・恐らく・・・・・。」

何事か呟きながら『文珠』に文字を込める。浮かび上がる文字は『探』。
『文珠』が宙に浮き、一瞬激しく輝いたかと思うと、少年の体が光に包まれた。

すぐに少年の体から光が収まるが、光っている部分も残っている。
さっき渡された時計、ズボンのポケット、ジージャンのボタン、
などなど、数箇所が淡い光を放っている。

少年が光のもとを探ると、小さなチップのようなものが仕込まれていた。


「・・・・あ、あんの親父ィィーーーー!!。
人が寝てる間に発信機仕込んでやがったなァァァーーーー!!」

少年は何かが仕込まれているとするならさっき渡された時計だろうと予想していた。

相手が相手だけにフェアプレーは最初から期待してなかったが、
まさか人の体にまで発信機を仕込むほどの外道だとは思ってなかった。

(だが、この発信機さえ無けりゃー条件は五分の筈・・・・・!
この広い森の中で俺を見っけるのは不可能じゃーーーー!!)

どんな高級料理を奢らせるか考えながら、少年はまたもや走り出した。













開始から10分後。
小型の液晶のようなものを取り出す大樹。
そこにはまるでカー・ナビゲーションのような画面が表示されていた。

「くっくっく・・・・では狩りを始めるとするか・・・・。」

それは過去に幾人ものゲリラ達を狩り、今では『黄色い悪魔』とまで恐れられている男の顔だった。



油断なく辺りに気を配りながら、画像の指示通りに進んでいく。
周囲の木の折れた枝や、地面のくぼみ具合などから、その方向に息子が向かった事を確信していた。

「・・・・む、移動していない・・・・?」

しばらくすると違和感に気付く。
息子の位置がさっきから全く移動していないのだ。
発信機がばれた事を想定し、注意を払いながら距離を詰めていく。

「・・・・ふふ、少しは楽しめそうだな。」

ナビの表示されている地点にあったのは、脱ぎ捨てられた少年の上着の上に
無造作にばら撒かれた発信機だった。
手がかりを探すために少年の服を拾い上げると、袖の中から何かが転げ落ちた。

「ッ!!」

――――転げ落ちたものは小さな球体、浮かび上がる文字は『爆』。

暗い森に爆音が鳴り響いた。










「よっしゃ!。かかった!!」

離れた場所では少年が爆音を聞いてガッツポーズをしていた。
少年も捕まった時の罰が罰だけに手段を選ぶ気は無いようだ。

「これで悪は滅んだと思うが、一応逃げといた方が良いな。」

笑顔を浮かべて走り出す。
どうやら相手が死のうと構わないつもりのようだ。









「あんのガキャアー・・・・・。」

爆心地で一つの塊が動きだす。
泥だらけになっているが、何故か傷は負っていない。
よく見ると全身が淡い光に覆われている。

(西条君のおかげで命拾いしたな・・・・・。)

この計画を立てるのに協力してくれた男を思い出す。



『横島君の『文珠』を完全に防ぐのは恐らく困難でしょう。
これを身に付けて行って下さい。これは霊力に反応して発動する強力な結界札です。
これなら横島君の『文珠』や霊波刀にも耐えられる筈です。
――――え、これの出所?。
はっはっは、聞かないで下さいよ。』

オカルトGメンの倉庫にある最も協力な結界札を数枚手渡し、さらに自分の霊力も注ぎ強化する。



(どうやら、キツイお仕置きが必要みたいだな・・・・)

バカ息子に折檻するべく、父親は走り出した。





その頃少年は罠に掛かっていた。

「チクショーーー!!またかーーーーー!!」

父親が事前に設置しておいたのだろう。
さっきから何度も足止めを食らいつづけ、なかなか距離を稼ぐ事が出来ない。
今も、突然足首が蔓に絡み取られたかと思うと、宙吊りになっていた。

霊波刀で切るのは簡単だが、結構な高さから頭から落ちるかと思うと、なかなか勇気が出なかった。

高いところから周りを見渡すと、暗いため見えにくいが、数百メートル向こうで何かが動いていた。
なんだろうと思った瞬間、向こうと目が合う。
ニヤリと笑う泥だらけの父親。

「やっべーーーーー!!もう追いついて来やがった!!!」


頭から落ちるのも構わず、足首に絡まった蔓を切る。
当然地面に落下するが、痛みも構わず飛び起きる。

「くっそ!!親父だからって手加減したのがマズかったか!!
だったら今度はこれで――――――」

どの辺を手加減していたのかは謎だが、少年が次の『文珠』を精製する。
『滅』の字を込めようとした瞬間、銃声が鳴り響くと同時に、手に持っていた文珠が弾かれる。
手には全く傷つけず、『文珠』だけを弾き飛ばす。
いまだに相手からは300メートルは離れているはず。しかもここは森の中で、辺りは暗闇・・・・。

「ありえねェェーーーーー!!!!」

信じられずにもう一つ『文珠』を精製し、同じように字を込めようとするが、またもや弾かれる。

(ヤ、ヤバイ、まぐれじゃない・・・・!!しかもこれで文珠は打ち止め・・・・・!!
後はさっき逃げながら作っておいた3個しかない・・・・!!)

頼みの綱である『文珠』の打ち止めが近付き、激しく動揺する少年。

(いや、この距離ならまだサイキック・ソーサーで・・・・・!!)

気を取り直し、サイキック・ソーサーを投げつける。
コントロール可能なので外す心配は無い。
だが、父親は避けようともせずに直進してくる。

(よしッ!!殺(と)った!!)

寸分違わず、父親の顔に命中するサイキック・ソーサー。
派手な爆音が響き勝利を確信する少年。しかし、父親は何事もなかったかのように直進してくる。
顔には焦げ後一つついていない。

(んなッ!!てめーはター○ネーターか!?)

動揺しつつも、もう一度ソーサーを投げつける。
しかし、またもや命中すれども効果なし。
気が付けば父親との距離が50メートルを切っていた。

(しまった!近付かれすぎた!!
もっと早く逃げるんやったァァァァーーーーーー!!!
えェェい、こうなったらァァァァーーーーー!!)

今さら逃げても逃げられない距離まで近付かれている事を悟った少年が打って出る。
霊波刀を腰の高さで構え突進する。

無防備に歩いてくる父親を霊波刀がつらぬく瞬間―――――

(さ、刺さらない!?
って、これ、結界か!?)

ようやく父親の体を包む結界の存在に気がついたようだ。



「タァァァダァァァオォォォォ。」

霊波刀を出している少年の右手首を左手で掴む。
そして、空いている右手で少年の腹を打ち抜く。

「グエッ・・・・」

内臓が揺さぶられ、うずくまる少年。
追撃をかわすために尻餅をついたまま後ずさり、少しでも距離をとる。

何とかして逃げる時間を稼ぐために話し掛ける。

「お、親父、そんな強力な結界なんかどこで手に入れたんだ・・・・?」

「んー?これか?
最近知り合った友人が用意してくれてなあ・・・・。
想像以上に強力だったようでさっきは命拾いしたよ」

さっき仕掛けてきた『文珠』『爆』のことを言ってるのだろう。
顔は笑っているが目は全く笑っていない。
息子の動きの一つ一つに注意を払いながら距離を詰めていく。

(ぐ!用意したのは西条の野郎だな・・・・・。
まさかGメンの装備の横流しまでしやがるとは・・・・・!!)

「おっと、妙な動きはやめとけよ。
おめーの『文珠』とやらだけを打ち抜くのは簡単だが、
あんまり抵抗すると指ごとふっ飛ばしちまうかもなあ。」

(ググッ・・・・!!なにか、なにか良い方法はないのか・・・・。
親父に気付かれないように文珠を発動する方法は・・・・・!!)

自分の『男』の命運が掛かっているので必死に頭を働かす。
もしもちょん切られると煩悩を源とする霊能力まで失いかねない。

(ハッ・・・・!さっき吹っ飛ばされた文珠・・・・あれを使えば!!)

少年の頭脳に稲妻が走る。どうやら何か思いついたようだ。

「さーて、忠夫ー。
覚悟は良いかァァーーーー?。
良くなくても待つ気は無いけどなァァーーーーー。」

ナイフを抜きながら近付いてくる父。
もはや完全に目がイッちゃっている。

ナイフを振り上げ、殺気を放ちながら振り下ろ――――――

「何っ・・・・・!!」

振り下ろす瞬間、体の違和感に気付く。振り下ろそうとした腕が全く動かないのだ。
息子の方に目をやると、立ち上がってこちらを見てニヤニヤしている。

「はっはっは、初めてやったから上手く行くかわからんかったけど。
大成功みたいやなァー。」

(馬鹿な、こいつに何かやる余裕など無かったはずだ・・・・
『文珠』とやらも取り出してすらなかったぞ・・・・!!
・・・む、・・・あれは!?)

目だけ動かして周囲を確認すると、少し離れたところに光るものが2個転がっている。
光に浮かび上がる文字は『糸』『専』、確かに二つくっつけると『縛』になる。
しかし・・・・『点』が足りないはず。
・・・・・・・・・・・・まさか!!。

「お、気付いたか?。
そ、あんたが『点』なんだよ。
流石に強力な結界でも『縛』りあげることくらいは出来るみてーだなー。
ま、結界が解除されてる訳じゃないから、このまま攻撃しても意味ないんだろうけど。」

霊能力が無い大樹には見えていないが、横島の目には大樹の結界ごと
『縛』られている姿が見えていた。


まったく身動きが取れないことがわかったのか、父親は大人しくなっている。

「・・・・ははは、どうやらゲームは俺の負けみたいだな。
ってことで、開放してもらえんかな?」

今までと打って変わって下手に出る父親。
何も答えずニヤニヤする息子の手には最後の『文珠』が3個握られている。

「まあ、その、なんだ。
お互い擦れ違いもあったが、これでおあいこという事にしようや、な。」

相変わらず何も答えずニヤニヤしている息子。
握られていた『文珠』の一つが輝きだす。浮かぶ文字は『爆』。
父親の後ろに回りこみ何やら財布を抜き取っている。

「そういえば、まだ小遣いをやってなかったっけな。
ああ、財布ごとやるとも、持っていけ。」

やはり何も答えず、ニヤニヤ笑っている少年。
全ての『文珠』に『爆』を込め父親の足元に埋めていく。

「じゃあな、グッバイ親父、楽しかったぜ!」

極上の笑みを浮かべながら父親に別れを告げる少年。
父親に背を向けると歩き出した。

「お、おいおい、忠夫。父さんとお前は親子じゃないか。
こ、これはちょっとやり過ぎじゃないか?」

冷や汗を浮かべながら息子を引き止める。『親子』と言った瞬間、
少年が立ち止まる。



思い出す今週の日々――――――



月曜日―――――息子の事を放ッぽっといて浮気に精を出す父。

火曜日―――――車の中でナイフを突きつけられ、その後は『使用済み吸引札』をけしかけられる。

水曜日―――――人に嘘ついた挙句、息子の事など忘れて浮気に励む父。

木曜日―――――『文珠』で妨害してやったがそれさえなければ、やっぱり浮気しまくりの父。

そして今日―――いきなり麻酔銃打ち込まれて眠らされ拉致され、挙句去勢されそうになる。





振り返り、父親に向かい合う息子。
その顔は穏やかなものに包まれていた。

にっこりと笑うと、父親に向けて親指を突き出す。





そして――――――



「このGS見習い、横島忠夫が!!
極楽に逝かせてやるぜェェェ!!!!」





――――――親指を振り下ろした。


ドゴォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!






「てめェェェーーーーー忠夫ォォォーーーーー!!
覚えてろよォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」








足元で巻き起こった『文珠』『爆』3個分の爆発に巻き上げられ、
捨て台詞をはきながら外道な父親は空高く舞い上がっていった。















「さてと、んじゃ、道路まで出れりゃー何とかなるだろ。
軍資金は大漁だしな、タクシーでも捕まえれば帰れるだろう。」






意気揚々と引き揚げていく横島忠夫。
彼の瞳は少年のように輝いていた。

























―後書き―

5日目がこれにて終了です。

遥か彼方に飛ばされてしまった大樹氏、生きているのでしょうか・・・・。




ちなみに、忘れてる方も多いかと思いますが、
このストーリーはガルーダ戦直後のお話です。
月でメドーサ相手に使った『縛』のトリックは、大樹氏に追い込まれた横島君が
ここで思いついた、という設定です。



書き溜めていた分が前回で尽きてしまったので少々時間がかかってしまいました。
ストーリーは最初に全て組み立てておいたので後は打つだけなんですが・・・・・。
ちょっと時間かかりそうです(汗)



終了まで後2日。エンディング目指して頑張ります(゚▽゚)/~~



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