ザ・グレート・展開予測ショー

九尾物語 <2ページ目>


投稿者名:まぐまっぐ
投稿日時:(05/ 6/ 7)




「な、なんであんたが女装しているの!?」



二人の姿を見て思わず叫んでしまった私に当然二人は気がついたらしい。

今まで楽しく会話していたのをやめて少し不思議そうに私のほうを見てきた。

「いや・・・なんでって言われてもオレはもともと女性だからな。」

「確かに先生は見た目は女性でも口調とか態度とかはまるっきり男でござるからな〜。でも、そういうのが先生のいいところでもあるんでござるけどな」

横島は少し困ったように、しかしなんだか慣れているように率直にいう。

それを横目にシロがなぜか胸を張っていっているがそれはあえて無視する。

しかしこうして聞いてみるとヨコシマはいつもより声が高く女性っぽくなっているのにたいしてシロの声は少し低く男らしくなっているのに気がついた。

普段の冷静な私ならここで落ち着くのだが、いかんせん『男の』横島と『女の』シロとの再開ばかりを想像していたために頭が混乱し終始がつかなくなってしまった。

「あのね・・・さすがの私でもそこまで見抜けない馬鹿じゃないわよ。なんで女性が自分のことを『オレ』なんていうのよ!」

さながら某縮んだ名探偵のようにヨコシマを指差しながら一番違和感があるところを指摘する。

「ああ・・・これか。何でって言われてもクセだから仕方がないんだけどな・・・」

「拙者はそういう先生でもいいと思うでござるよ」

とりあえず馬鹿犬の言うことは聞かないことにしてヨコシマに対してまくし立てていく。

「クセなわけないでしょ!どこにそんな口癖の女性がいるのよ!もういいわ。手っ取り早くその正体を暴いてやるわよ!」

別の意味で頭に血が上ってしまった私は周りの事なんか見えていないできっぱりと言い放っていってからヨコシマへと近づいていく。

そして、男には決してありえないだろうその胸のふくらみをわしづかみにした。

私のその考えが正しければその感触は人工的なもので一発で違うと分かる。

「ほら、やっぱりね。このとおり胸はさすがにかた・・・くない?うそ・・・でしょ・・・」

しかし、その感触はどう考えてもまぎれもない本物だった。

私はかつてない裏切りに頭が真っ白になった。

それはきつねうどんを頼んだはずなのにたぬきそばが運ばれてきた時と同じくらいにショックだった。

そんな私の行動をみて今まで黙っていたヨコシマがとうとう動き出してしまった。

「ちょ、ちょっと、いきなり何を・・・はっ・・・まさか、この狐の少女をオレの魅力に引かれて禁断の道を一緒に歩んでくれる決意をしてくれたんだな!くぅぅ〜オレってばなんて罪作りなんだ」

かつて体験したことがあるような暴走ぶりを発揮しながらもヨコシマは私をいわゆるお姫様抱っこで抱き上げてしまう。

「きゃっ!ちょ、ちょっと何をするつもりなのよ!?」

真っ白になっていた私だがそれにはさすがに驚きつつ少し懐かしく思いながらもばたばたと暴れだす。

「怖がることはないぞ。おねーさんがイロイロと優しく教えてあげるからな。さあ、禁断の道へ・・・」

「いい加減にするでござるよ!」


ぱーん!


小気味がいい音とともにひたすら煩悩満点で暴走をしていたヨコシマの動きがとまる。

このままされるとどうなるものか分かったものじゃないから私は少し名残惜しいけどヨコシマの手から逃れて地面に降りる。

どうやらさっきから蚊帳の外だったらシロが痺れを切らしてどこからか取り出したハリセンでヨコシマの頭をはたいたみたいだ。

「拙者というものがいながらもどうして先生はそうやってほかの女性に手を出そうとするのでござるか!?拙者じゃ物足りないというのでござるか!?」

ハリセンを手に握りつつも少し涙目で見つめるシロ。

昔ならそれは普通の光景であったが最初に会ったように性別が逆転しているのですごく奇妙に見える。

「いててて・・・おい!いくらなんでもやりすぎじゃないか!?かなり痛かったぞ!?」

「ふん!これでもまだ足りないくらいでござるよ。拙者を見てくれない先生がいけないんでざるよ!」

その様子を見ながらも私は段々と冷静になっていき、ふとあることに気づいてしまった。

よくよく考えればここは学校の正門前でピークは過ぎたといえまだ校門を出る生徒は多いはずだ。

そこで騒ぎを起こしているのだ。当然どうなるかは火を見るより明らかである。

実際、そこにはかなりの人だかりが出来ていた。

いまだに言い合っている二人は気づいていないようだが、羨望や妬み、あきれや興味の視線がかなり集まってきている。

正直、かなり恥ずかしかった。

「ね、ねえ・・・私がこういうのもなんだけどかなり注目を集めているわよ・・・」

「大体お前はだな・・・って、今はそれどころじゃ・・・」

「そうでござるよ。今こそ決着をつけ・・・」

私が恥ずかしさに耐え切れずに声をかけると最初は頭に血が上っていた二人だったがすぐに周りの状況が分かりそのままの格好で固まってしまう。

周りのギャラリーは自分らの存在を気づかれるや否や何もなかったかのようにその場を離れていく。

三人の間に気まずい雰囲気が流れる。

「・・・とりあえず、オレの家で詳しいこと話すか・・・」

ようやく硬直から戻ってきたヨコシマの一言でその雰囲気はなんとかなくなり、私とシロは無言で頷いたのであった。





「ほら、ここがオレの部屋だ。汚いけどあがってくれ」

「お邪魔するでござる」

「お邪魔するわ」

そういわれて通されたのは学校から歩いて7分程度のところにたっているアパートの一室である。

そのアパートは前世にヨコシマが住んでいたのと同じくらい古く構造もすごく似通っているために少し懐かしさが感じられた。

部屋の中はさすがに前世までとは行かないが少々散らかっており、よりいっそう親しみを感じる。

そのため、私は無意識のうちに行動を起こしてしまった。

「・・・おい、布団をめくったりしていったい何をしているんだ?」

当然のごとくヨコシマはそれに気づく。

シロも首をかしげて興味深そうに様子を見ている。

「決まっているじゃない。こういうところにあるものを探しているのよ」

そういって私は今度は本棚の方を調べてみる。

どうやらここもはずれのようだ。

「あるものって・・・ちなみに聞くが何のことだ?」

私の行動を見て大体察しはついたらしくジト目で見ながらも聞いてくる。

「もちろんヨコシマの秘蔵の本に決まっているじゃない。大体こういうところにあるんでしょ?」

「あのな・・・あんたはまだ信じてないようだけどオレは女だからそんなものは・・・」

「それは拙者が前に捨てたでござるよ。」

私の言葉を聞いてあきれたように言い返してきたヨコシマだけど、それはシロの言葉によってむなしく否定されてしまった。

「へぇ・・・女とか言いつつもやっぱりそういう本を持っていたんだ」

「そうでござるよ。もう、これでもかというくらい隠し持っていて捨てるのが精一杯だったでござるよ」

「だからなんでお前はそう口が軽いんだ!」


ぱーん!


今度はヨコシマがどこからともなくハリセンを取り出し思いっきりシロの頭をたたく。

「痛いでござるよ!」

「うるさい!大体なんでお前がそれを捨てるんだよ。普通女性がそういうのを見つけて捨てるのは分かるが男が見つけたらパクルか借りるとかそういう風にするだろう!?」

「そんなことないでござるよ!拙者は先生以外は眼中にないでござるからな!」

「うそをつけ。そういいつつも絶対に興味があるんだろう?本当のことを言ったら楽だぞ?」

「そんなことは絶対にありえないでござる!大体先生は・・・」

再びヨコシマとシロのいいあいが始まってしまい、私はすっかり蚊帳の外になってしまった。

私の知らないヨコシマとシロが私の知らない付き合いをしてきて私の知らない絆を持っている・・・

二人の様子を見ているとそう思うようになり、ふとすごく不安な気分にさいなまれてしまう。

私はもうこの二人の間には入れないのではないだろうか・・・

前世のことを忘れて私のことなんてすっかり忘れ去られてただのお邪魔虫になっているのではないだろうか・・・

私の安らぎの場所はもうないのではないのか・・・

そんな考えばかりが頭にわいてきてしまい、私はどうしてもやるせない気分になってしまった。

「おい・・・どうしたんだ?」

そんな私の変化に気づいたのだろうか、ヨコシマがシロとのいいあいを中断して私に声をかけてきてくれた。

「そうでござる。なんだか顔色が悪いしさびしそうな顔をしているでござるが・・・何かあったのでござるか?」

シロも同じく気づいたらしく心配そうに声をかけてきてくれる。

「うるさいわね・・・別になんでもないわよ・・・」

しかし、それだけでは私の気分は戻らずについそっぽを向いてぶっきらぼうに言ってしまった。

終わった・・・そういう思いが私の中に渦巻きどうしようもない悲しみだけがとりとめがなくあふれ出してくる。

突然そんな私の頭にヨコシマの手が置かれる。

「何でもない分けないだろう?そんなに悲しい顔をしているんだからな。タマモ、お前は一人じゃないからな。ずっと三人一緒って約束しただろう?」

私の頭を優しくなでながらも優しく落ち着かせるようにヨコシマが言う。

その手から伝わるぬくもりは私がたった一人愛した人のものであり、何よりも私が欲しかった物であった。

そして、私が教えていないにもかかわらずに私の名前を呼んでくれ前世でした約束をいってくれた事は私から一切の悩みを取り払ってくれた。

自然と涙がこぼれた。

「ありがとう・・・ヨコシマ・・・でも、本当に何でもないから。もう、大丈夫だから・・・」

その涙を気づかれないようにぬぐいつつも私はヨコシマに微笑みかけた。

「そ、そうか。それならいいんだがな。」

それを見たヨコシマは少し照れたらしくぶっきらぼうに言いつつもそっぽを向いてしまった。

その様子がおかしくくすくすと微笑みながらシロを見るとシロも同様に微笑んでいた。

「そ、それにしてもなんでオレの名前を知っているんだ?それに、オレも名前を自然といってしまったみたいだけど間違ってるよな?」

その雰囲気が恥ずかしいらしく、ヨコシマはいまだにそっぽを向きつつも聞いてきた。

「間違っていないわよ。私の名前はタマモ・・・金毛白面九尾のタマモだからね。」

私は微笑みながらも自分の正体を明かすと、二人ともはっとした表情で私を見た。

二人が記憶がないと分かっていたが、私は自分の正体・・・金毛白面九尾のことを言うことには戸惑いを感じなかった。

例え記憶が失われていようと、この二人がそんなことで私の見る目を変えたりしないことは分かりきったことだったからだ。

「タマモ・・・どこかで聞いたことがあるような・・・それにすごく懐かしいような・・・」

「本当でござる。なんだか小憎たらしいようで本当に信じあっていたような気がするでござる・・・」

シロの場合は一言多い気がするが、二人ともやはり記憶の片隅に残っているようである。

「多分それは間違ってないと思うわよ。だって・・・」

だって、前世で契りを結び約束をしあった仲だから・・・

「だって・・・?」

「・・・ううん。なんでもないわよ。」

私はそれ以上はいえなかった。

いずれは分かることだろうし、それにやはり二人に自力で思い出してもらいたいのだ。

何故かは分からないが、そうすれば二人との絆が再び結ばれるようなな気がしたからだ。

「なんだよ。そういわれると気になるじゃないか。」

「だめよ。ここでいったら意味がないからね。」

「けちでござるな。」

「けちで結構よ。それで、あんたたちの名前は詳しくはなんていうのか教えてくれないかしら?」

心地よかった。

再びこうしてヨコシマとシロと絆で結ばれその中で楽しく過ごしていけることが。

「全く・・・オレは横島忠代(ただよ)だ。まあ、なにかとよろしくな。」

「拙者は犬塚ハクでござるよ。これもおそらく前世の縁でござろうからよろしくするでござる。」

こうして、私とヨコシマとシロ・・・ハクとの奇妙な生活が再び始まったのであった。









あとがき

この一話はどうしても一まとめにしたかったのでなんとかまとめようとしたのですがそれでもかなりの量になってしまいました。
ここまで読んでくださった方、どうもお疲れ様でした^^;
タダヨとハクの詳しい説明は次回になると思うので少々お待ちください。
これから、三人の奇妙な物語が続くと思いますが生暖かい目で見ていただければ幸いと思います。
ここで、1ページ目にて返事をかけなかった分をば・・・

>>コバト様
コバト様の予想通りタダヨものになってしまいました(笑)
ご期待にそえたかどうか分かりませんがどうでしょうか?
これからも私めの作品を呼んでやってください^^;

それでは失礼します。

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