ザ・グレート・展開予測ショー

夕日の下で


投稿者名:TK-PO
投稿日時:(05/ 5/22)


魔神アシュタロスが引き起こした動乱。通称アシュタロス事変が集結してから早5年の月日が過ぎていた。

 動乱集結直後は渦中にいた人。そこから離れていた人々も含め、神魔界すべてが後始末のために大混乱になっていたが、それもまた様々な分野で火消しに、復興に尽力した人々のおかげでうまく収まったといえる。

 この事変で、神魔族がアシュタロス一党に見事に出し抜かれたこともあり、直接的にこの事変に関わり、それを見事に納めることに成功した民間GSおよびオカルトGメンは多くの人々の注目を浴び、結果としてGSはただの高給取りの職業としてだけではなく、英雄的な存在としても見られるようになった。

 しかし、光さすところには影がある。英雄的な戦果の影には、多くの苦労が。そして、犠牲もあったのであった。


 民間GSとして最高の名誉を持つ若きGS、美神令子。5年の月日がたっても、彼女はいまだ現役GSとして一線で活躍し、相も変わらずその強欲振りとGSとしての優秀さで知られていた。

 が、今の彼女がかつてと違うところが一つある。それは、美神の隣に立ってたたかうもう一人のGS、横島忠夫の姿であろう。

 かつては丁稚として。言語道断に近い給料体制で働いていた彼だったが、高校卒業と同時に美神は彼をアルバイトの立場から正社員に格上げし(それでも当初は給料を渋っていたが)、今では美神の右腕として副所長の立場で美神除霊事務所を支える大黒柱の一人として活躍していた。

 
 南下する海沿いの国道。右手の西の空に夕日が差しかかろうというそんな時間に、一台の車が走っていた。

 日産製のスポーツカー。Z33フェアレディZロードスター。オープンカーらしく速さを追及したモデルではなく、走ることを楽しむような、そんな車に乗るのは、ステアリングを握るオーナーである横島と、助手席に座る美神である。

 横島としては車にこだわる気はなかったのだが、美神に色々と勧められ、結局フェアレディZロードスターにしたのである。ちなみに、美神としては本当は外国産のオープンスポーツを買わせるつもりだったのだが、「俺にはそんなの似合わないッスよ」の横島の一言に妥協(本人の主観)して決定した車である。

 
 現在二人はデート中、と言うわけではなく、実のところ仕事帰りである。少し離れたところの除霊の依頼を受け、それがややてこずりそうだ、ということで美神除霊事務所の主力二人であたることにしたのである。

 そしてその依頼をあっという間にこなし、現在事務所に帰還中。というわけだ。

 ステアリングを握る横島はかつての高校生のころから5年の月日を重ねてきただけあり、ちょっとした貫禄さえも感じさせる「いい男」になりつつあった。

 はじめは「着られている」風であった高級スーツも、だんだん体になじんできているため、違和感がなくなってきている。かつて愛用していたバンダナも今はもう
つけてはおらず、すでに「少年」の面影はなくなっているといえた。

 そして、その隣にいる美神もまた、5年の月日がたちその姿も様変わりしている。若々しさは消えず、相も変わらず美女であることは変わりないが、着ている服はかつてのボディコン服ではなく、動きやすいパンツスーツ姿である。

 この姿になった最大の理由は、単純に言えば本人の意識の変化……ではなく、母親である美神美智絵に言われた一言が原因である。

「令子……肌ってね。知らず知らずのうちに紫外線なんかの影響を受けるのよ。とくに、二十歳を過ぎていつの間にか迎えるお肌の曲がり角を越えたら、ね」

 自分自身が迎えたその体験をしみじみと語った母親の重い一言を聞いた令子は、その翌日から露出の多い服を着るのをやめたのである。それはもう、綺麗さっぱりと。そのあまりの様子に、横島が。

「美神さん!? どういう心境の変化ッスか!? 美神さんがそんなふうじゃ俺はどうやって目の保養をすればいいんスか! は! これはつまり身を固める準備が整ったってことッスね! じゃあ美神さん! 今すぐ俺とベッドイン……」
 
 そこまでいったところで美神の右ストレートが横島の顔面に炸裂し、いつものように沈黙したのだった。


 それはおいておいて。

 仕事を終えた二人は横島が運転するフェアレディに乗って事務所に帰る途中なのである。傷一つない車のボディに、そしてそこにいる二人に西から照らされる夕日の光が当たる。美神はぼんやりとした様子で助手席に座り、横島はステアリングを小刻みに切りながら運転に精を出していた。が、

 そのフェアレディが路肩によって停車する。それに美神は意外そうな顔をし、横島のほうに目を向けた。

「どうしたの、横島クン。疲れたの?」

「まあ、そうッスね。朝早くから出て、速攻で仕事を片付けてとんぼ返りッスよ? そりゃ疲れますって」

「あのね。だから一泊位していったら? っていったでしょうが」

 横島の言葉に呆れる美神。何とか日帰りで往復できる場所だから、という理由で行ったこの強行軍。横島が買って出たから運転も任せたものの、横島にたまった疲れはかなりのものであろう。

 そして、そう言ったものを気遣える程度には、美神は成長したといえる。いや、余裕を持てるようになったというべきか。

「いやー。そりゃそうなんですけどね。ほら。この時間帯だと、すごく綺麗な夕日が見られるじゃないッスか」

 そう言いながら横島は車から降りると、西の方角に目を向けて大きく伸びをする。そんな横島を見て、美神は軽くため息をつきながら続いて車を降りる。そうして二人は車を停車させたまま、車道を渡って西側の路肩に移動した。

 二人の視界の先に、広がる太平洋と、そこに沈もうとする夕日の姿が映った。赤い光が海を照らし、それはまさに絶景といえる。それを見た美神は、横島がこの光景を自分と見るために色々と無理をしたのだと気付く。

 だから苦笑しながら、横島に語りかける。

「ほんとに綺麗な夕日ね。あんたにしちゃ気が利くじゃない」

「そうっすか?」

 美神の軽口に横島は苦笑。それから再度夕日のほうに目をやって、目を細めた。しばらくの間。二人のもとに沈黙が舞い降りる。そして、それを破ったのは横島だった。

「……ルシオラは」

 その言葉に、美神は一瞬だけ体をこわばらせた。ルシオラ。魔神アシュタロスに生み出された女魔族の一人で、かつての横島の恋人だった女性。あの事件のときに横島の命を救うためにすべてを投げ出した彼女のことは、未だに関係者一同の間では癒えきらぬ古傷であった。

「夕日が、好きだったんですよ。昼と夜の狭間の一瞬の輝き。わずかな時間しか見られない。だからこそ美しい、ってね」

 その頃のルシオラは、おのれの短い寿命を悲観していたこともあった。そのせいでよりわずかな時間しか見られない夕暮れの時間を愛したのだろう。

 皮肉なことに、その寿命のことが解決した、と思った矢先。彼女は命を落とすことになったのだが。ホタルの化身にふさわしい、儚くも美しい生であった、と横島は思う。

「横島クン。あなた、やっぱり彼女のことを……」

「引きずってますね。やっぱ。俺はなんだかんだいってルシオラを救えなかったし、彼女の愛にこたえていたとは思えないッスからね」

「そう……」

 横島の言葉に美神は沈んだ表情をした。ルシオラは横島を救うためにためらうことなくその身をささげた。自己犠牲。無償の愛ともいえるそれは、最高の愛である、と人はいうだろう。が、残されたものにとっては、それは時に重みになる。

 横島にとっては、それが重みになったのだろうか、と美神は考え、そしてすぐに馬鹿馬鹿しいと思い直した。

 当時の横島はたかだか17歳の高校生。そんな少年が自己犠牲という最高の愛をささげられ、それに応えられなかったと泣いていたのに。その重みを背負いきれるはずがない。自分たちは気を使ってきたつもりだったが、きっとそれは自分たちを傷つけないためのただの自己欺瞞なのだろう、と美神は自嘲した。

「俺は……やっぱりルシオラを救えなかったことは今でも苦しいって思いますよ。あんなに一途に俺のことを思ってくれたのに……守ることも出来なかったんスから」

「……」

 それに美神は返す言葉を思いつかなかった。かつては、己の子として転生したルシオラに愛情を注げばいい、そう言ったことがあった。しかし、思い返せばなんと残酷な言葉なんだろうか。可能であれば(時間移動をすれば出来ないわけではないが)その時の自分を殴りつけたいと美神は思う。

「けど……」

「?」

「あのままルシオラが生きてたとしたら、どうなったんだろうなって。そう思うこともあるんスよね」

 その言葉に、美神は眉をひそめた。その未来予想図は簡単に予想がつく。一途なルシオラに、横島は……

「それを考えたら、俺。ルシオラに申し訳なくて」

「え?」

 その言葉に耳を疑う美神。なぜそこで横島がそういうのか。美神には理解できなかったのである。

「あいつ、分かってたんですよ。ほんとは。俺のほんとの気持ち。だから、最後にこういってました。「今回は千年待った人に譲ってあげる」って」

「な! 何言ってんのよ!」

 そう言って顔を真っ赤に染める美神。千年待った人。それは言うまでもなく自分のことだ。美神とは違いストレートに高島に好意を寄せていた魔族・メフィスト。長いときを経て、千年という時間を越えて魔族メフィストは美神令子として、高島。いや、横島忠夫という相手にめぐり合った。

 それは、まさに奇跡といえる。

「今にして思えば俺はルシオラの想いを壊したくない、大切にしたいって、それが第一だったんじゃないかなっておもうんすよ。……ルシオラを、傷つけたくないって。そう思っていたんだな、って」

 そう続けた横島の言葉に、ある意味美神は納得する。セクハラ行為の多い横島の行動を見ていれば信じがたい話だが、横島は女性の心をひどく大切にする。

 例えば、覗き行為やセクハラなどの場合、それを受けても心に深く傷が残る相手には決して行いはしない。

 それは、おキヌであり小鳩であったりした。

 そして煩悩が霊力の源であると言われている横島であるが、実際にはその煩悩の赴くままに突っ走ることはさほどない。覗き、セクハラを行ったことはあっても、それ以上先は一度もないのだ。

 傍から見たら誰でも先程出たおキヌ、小鳩の横島への慕情は一目瞭然だ。が、横島はそれに応えたことはほぼなかったといえる。

 それを、多くの人は横島が鈍感だから気付かなかったと思っていた。しかし、それは違っていた。横島は実際には彼女たちの思いに気付いてはいたのだ。が、それに応えはしなかった。それは、応えることによって彼女たちを傷つけることを無意識のうちに避けていたからである。

 人の心はたやすく傷つく。心無い罵声を浴びせられたり、他人に裏切られたり、そして失恋したときなどにも。思春期の少女であれば、それはひとしおであろう。

 特に、300年間の孤独を味わい、そして生まれてはじめて抱いた恋心をとても大切に思っていたおキヌや、貧乏神という災厄のせいで人々から疎まれ、そのせいで人間不信に陥りかけていたのに、それをものともせずに横島が普通に接したことによって心の壁を乗り越え、改めて人を信じ、好きになることが出来た小鳩の思いに。

 横島は、気付かない振りをして逃げていた。それは、卑怯ともいえる。が、あまりにも繊細な彼女たちの心が十分に成長するまでのモラトリアムを与えていた、というのは確かであった。

「ルシオラだけは、違ってたわね」

「ええ。あいつは本当に俺のことを愛してくれてました。他の誰のことよりも、俺のことを。二度も、命を投げ出そうとするくらい」

「二度?」

「……あれ? 言ってませんでしたっけ? 一度目のこと。えーと、山荘で……」

 簡単に事情を説明する横島。短い寿命であることを熟知していたルシオラが、その短い寿命をせめて惚れた男と添い遂げて散っていこうとした。そのことを。

 それを聞いた美神は、苦笑した。ルシオラの覚悟に対してもそうだが、それに対する横島の対応に、だ。いくらルシオラが望んでいるからといって彼女の命を奪うことを知って抱ける男ではないだろう。

「たく。ほんとにあんたらしいわよ」

「そういわれると思ってたッスよ」

 照れ笑いする横島。しかし、すぐにまじめな顔になると、

「でもね、美神さん。南極のことがあってからしばらく。ルシオラたちと一緒にいたでしょう? あの時、どうしても俺はルシオラに手を出せなかったんすよね」

 その言葉にはっとする美神。あの時、西条が横島とルシオラを煽っていたこともあり、二人はかなり「その気」になっていたはずだ。まあ、ルシオラのそばには妹であるパピリオがいたためそう簡単に、というわけにはいかなかったが、それでも横島とルシオラが結ばれる機会はいくらでもあったはずだ。

 なのに、横島は一線を越えることはなかった。その時にはすでに抱いたらルシオラが命を落とす、という制約はなかったにもかかわらず。

「俺、自分でもずっと不思議だったんスよ。俺、スケベだしルシオラだってOKしてくれるはずだったんですよ?だけど、どうしても駄目だった。そん時は時間があるからだって。これからいつだって機会があるんだから、焦らなくてもいいからだって思ってたんですよね」

 横島はそういう。だが、当時の横島のスケベっぷりを見ていた人間なら、とても信じられない話だ。覗きをし、美神にセクハラを働くその姿は性欲をろくに抑えられない煩悩少年である。

 いや、横島でなくても、昨今の高校生ならば性交に強く興味を示すだろうし、機会があれば迷わずにするだろう。それが、思春期の性である。

 だが、横島は違っていた。ルシオラに手を出せたにもかかわらず、出さなかった。

 そして、それはおキヌや小鳩といった魅力的な少女に思いを寄せられていたにもかかわらず手を出さなかった。思いに応えなかったことにも通じている。

 それは何故か?

 それは、傷つけたくなかったからだ。横島は自分に思いを寄せる女性たちを傷つけたくなかったから、手を出さなかったのである。

 ならば、なぜ横島は自分が手を出したら彼女たちが傷つくと思ったのだろうか。

 美神は、ふとそのあたりに疑問を抱いた。単純に、彼女たちの思いに応え、添い遂げるのならば傷つけることにはならない。そのはずである。

「でも、今なら分かるんです。何で俺がルシオラに手を出せなかったのかが。どうしても一線を越えられなかったのかが」

 そう言って、横島は向き直った。美神のほうに目を向け、一切の妥協を許さぬまじめな顔つきになる。それを見た美神は思わず気圧された。

 まじめな顔をする横島。極まれにしか見られない、しかし確実に「いい男」の階段を上る男の証である、その表情。それを目の当たりにした美神は、思わず胸が高鳴る。顔がわずかに朱に染まるが、それは夕日のおかげで目立ちはしない。それが、今の美神にはありがたかった。

「美神さん。……俺、美神さんのことが好きです」

「ぇ……」

 キッパリと言った横島の言葉。その言葉が、美神の意識に浸透するまでにわずかな時間が必要だった。そして、それを理解した途端、美神の頭は沸騰する。

「ちょ、何言ってんのよ! こんなときに冗談なんか……」

「冗談じゃないです。俺は本気ですよ、美神さん」

「け、けど……こ、心の準備とか、そーゆーモノが」

 真っ赤になってしどろもどろになる美神。そんな美神に、横島は続けて言った。

「昔も言いましたっけね、この言葉。……もう一度、言わせてもらっていいッスか?」

「え、ええ? な、なにを?」

 美神の反応に横島は楽しげに笑い、

「ずっと前から愛してました。美神さん。貴女の事を」

 その言葉に、美神は言葉を失う。「ずっと前から愛してました」その言葉は、二人が初めて出会ったときの言葉だ。アルバイト募集の張り紙を貼ろうとしていた美神に、横島がそう叫びながらしがみついてきたのである。

 あの時はただ、無意識のうちに言った言葉であった。しかし、思い返せばアレは本心であったと横島は思う。前世の因縁。高島とメフィスト。それがいわせた言葉。きっと、そうだったに違いない。

 しかし、今言った言葉はそれとは意味合いが異なる。

 「横島忠夫」が「美神令子」と出会い、重ねてきた時間。ただの丁稚としてともにおり、その後色々とあってGSの助手として。そして、今のような対等な存在として支えあうパートナーになるまでの間重ねてきた時間。

 その時間の積み重ねすべてをあわせての言葉である。それらを踏まえて、横島は美神を愛した。だからこそ、おキヌにも。小鳩にも。そして、何よりもルシオラにさえ、応えることが出来なかったのである。

 それを理解した美神は、混乱する頭を何とか動かし、

「いつからなの?」

 そう聞いた。聞かなくてはならないことだった。「美神令子」として。

 美神の葛藤を理解した横島は苦笑して、

「自分でも分かりません。多分、初めてであったときから、前世の記憶とかのせいで惹かれてたと思います。それを下地にして、今の俺として、ずっと美神さんの事を好きだったと思います」

 前世の因縁だけで惹かれあい、結ばれるというのはひどく残酷なことだ。それは「過去」であり、現在を否定することだから。だが、過去を下地にして、今の自分が本当に好きであるならば問題はない。横島はそう思う。 
 
 そして、それは美神も同様であった。かつて、ヒャクメは前世の記憶を封印している美神を「意地っ張り」と評した。それは間違ってはいない。だが、その方向性は間違っていた。

 美神は、「美神令子」が「横島忠夫」を見るために、過去に引きずられないために前世の記憶を封じていたのだ。

 それは確かに意地っ張りであろう。過去の、前世の自分に負けず、自分自身であろうとする意地なのだから。そして、彼女はそれに勝ったのだ。

 だから、その目から涙がこぼれる。喜びの涙が。

「美神さん。あなたはどうですか?」

 その言葉に、美神は一瞬だけ言葉を止め、

「……そうね。わたしも好きよ、横島クンのこと。他の誰にも渡したくないほどに」

 と、宣言した。認めざるをえなかった。はじめはどうしようもない男としては眼中にも入らない、そんな存在だったのに。なのに、どんどんと大きくなっていって。今ではいなくてはならない相手になっていた。

 だけど、心にあったしこりゆえに美神からは決して口も、手も出せない。そんな関係だった。特に、横島の子がルシオラとして転生する可能性がある、と言ってしまったために。お互いに、一歩を踏み出せない、そんな関係だったのだ。

 横島の顔を見て、美神は思った。「ああ、わたしはこいつには勝てないんだろうな」と。その敗北感は、かすかな悔しさをもたらしたが、同時に心地よさももたらした。

 笑顔になる美神。そんな美神に、

「じゃあ美神さん。……俺と結婚、してくれますか?」

「いきなりね……そうね。条件があるわ」

「条件ッスか?」

 そう言った横島の口に、美神は人差し指を当てる。そしてウインク一つ。

「それよ、それ。いつまでも丁稚気分じゃ困るわ。わたしの旦那になるんなら、私のことを「令子」と呼びなさい」

「れ、令子……?」

 言いづらそうにする横島。そんな横島に、美神は続ける。

「それともう一つ」

「ええ!?」

「このわたしにふさわしい、とびっきりのいい男になること。いいわね?」

 そう言い放った美神は、先程までの赤くなっていた姿とは打って変わり、悪霊を前にした不敵な姿そのものだった。その姿を見た横島は、

「了解。任せてくれ」

 全身に夕日の光を浴び、この世の誰よりも美しく見える自分の愛している女性の姿に、そう応えるのだった。




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あとがき

ええっと、初めて投稿させていただくTK-POといいます。
拙作を読んでいただき、まことにありがとうございます。なんというか、微妙に考察チックになっているので不快感をもたれた方もいらっしゃるかもしれませんがそのあたり、ご容赦ください。

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