ザ・グレート・展開予測ショー

九尾物語 <4ページ目>


投稿者名:まぐまっぐ
投稿日時:(05/ 6/13)






私達三人は今、古ぼけた洋館の前にいる。

ここが今回ヨコシマ達が除霊を任された場所である。

今回の仕事の内容はこの館に住む地縛霊を除霊することであり、霊気をみるところそれほど大した霊じゃないようである。

「このくらいだったらそんなに心配する必要もないみたいね」

「拙者と先生がいればこれくらいは余裕でござるよ」

ハクも同様に霊気を感じたのか、いつも以上に張り切っていて尻尾を激しく振っている。

ちなみに、ハクの服装は昨日とは違いところどころ破れているジーパンにノースリーブのシャツを着ており動きやすい服装をしている。

服装や髪を見ているとシロとそっくりなのであるが、肩幅が広く、腕の筋肉のつき具合を見るとやはり、男であることを実感させられる。

「お前ら、油断は禁物だぞ?いくら弱いといっても何が起こるかわからないからな。ちょっとした油断でも命を落すということはざらにあるんだからな」

以前と違いちゃんと私達を注意してくるヨコシマは以前とほとんど変わらなく、ジーパンにシャツ、ジャケットという格好であるが、全体的に丸くなり女性特有の二つの盛り上がりが目に付く。

「・・・意外にまともなことを言うじゃない。これで昨日の夜に私を襲ってこなかったら文句なしなんだけどね」

そういう私は以前ヨコシマと初めてあったときと同様の服装でミニスカートに長袖のポロシャツ、ブレザーを着ている。

「え!?先生、昨日の夜にタマモを襲ったのでござるか!?」

しっかりと私の言葉を聞いていたらしく、ハクは私とヨコシマを交互に見やりながらも動揺している。

「そうよ。ヨコシマったら私が寝ている布団に入ってきて襲おうとしたのよ?ちゃんと撃退しておいたけどね」

「やっぱり拙者が泊まってしっかりと監視をしておいたほうがよかったでござる・・・」

そう離しながらもじ〜っと私とハクはヨコシマを見る。

「だぁぁぁぁっ!仕方がないだろう!?タマモを見ているとなんだかいつも以上に理性の押さえがきかなくなるんだよ!」

先ほどから会話を聞いていたヨコシマはとうとう我慢できなくなったらしく開き直ってとんでもないことを言ってのける。

正直その言葉はうれしかったのだが、今はまだ心の整理がついていないから置いておくことにした。

「・・・先生。やっぱり拙者も来週から先生の家にお邪魔させてもらうでござるよ」

ヨコシマの言葉を聞いてハクは今まで以上に決心をして言い放った。

「だ、だからハクは自分の家があるだろう!?」

「大丈夫でござるよ。父上も母上もよく話せば分かってくれるでござるし、先生のことを気に入っているでござるからな」

「う・・・だ、だからといってもな・・・」

「それはまた後ででいいじゃない。今はここの除霊をするのが先でしょ?」

今までにないくらいの気迫で詰め寄られていたヨコシマだったが、このままだといつまでたっても先に進めないから私が助け舟を出した。

もちろん、私を泊めてくれるということに対してのお礼でもあるけどね。

「そ、そうだぞ。今はちゃんと除霊を先決しないといけないだろう?」

「確かにそうでござるが・・・ちゃんと後でそこは決着するでござるよ?」

何とかごまかそうとしているヨコシマに追撃の一言を放つハク。

これは一騒動が起こると確信しながらも私達はその古ぼけた洋館の中へと入っていった。





館の中は外見と同じく散々に荒廃しており、あたりには割れたガラスや破れた絨毯などが散乱してた。

「うわ・・・まさしく典型的な地縛霊のすみかって感じね」

「確かにそうでござるな。しかも、あたりに霊気がぷんぷんと匂っているでござるよ」

「まるでオレ達の様子を見ているような視線を感じるな・・・気をつけたほうがいいかもしれないぞ。今回のはいつものと違う地縛霊みたいだ。それに、それに引かれて浮遊霊のやつらも集まってきてるな」

あたりの異様な雰囲気を察知して私達はいつでも動けるように戦闘態勢にはいる。

ヨコシマとハクは手から霊波刀を出し、私は狐火を周りに出して周囲に注意をめぐらす。

しかし、ヨコシマとハクの霊波刀は以前と比べてかなり粗く、威力も下であるようだ。

「ハク、タマモ。さっきも言ったとおり油断は禁物だからな。それに、なるべく怪我をしないように気をつけろ」

「怪我をしたとしても文珠を使えばすぐに治せるんじゃないの?」

「文珠・・・?文珠って・・・何だ?」

「へ・・・!?」

いつもどおりの感覚で文珠のことを言ったがヨコシマはまったく初めて聞くもののような顔で聞き返してくる。

「何って・・・あんた、いつも使ってたでしょう?もしかして・・・使えないの・・・?」

「使えないというか、使ったこともないし聞いたこともないぞ?」

ヨコシマは首をかしげながらも不思議そうな顔をしている。

今までは文珠を使っているヨコシマが当たり前であり、その中で除霊をするのが当たり前だったために私は思わず動揺してしまった。

「だったら、今までどうやって除霊してきたの・・・?」

「どうやってって、こうやって霊波刀を使ってハクと除霊していたんだが・・・」

「先生!タマモ!くるでござるよ!!」

あまりのできことであるために中々冷静さを取り戻せていなかったが、ハクのその一言で我に戻る。

気がつけば先ほどまで様子見をしていた浮遊霊たちが一斉に動き出したところだった。

「くっ・・・タマモ、その話は後だ。今はこいつらを何とかするからな!」

「わかったわ。後でちゃんと話してあげるからね!」

「行くでござるよ!先生には指一本触れさせないでござるからな!!」

私達は気を取り直してから私達に襲い掛かってくる浮遊霊達に向かっていく。

真正面からやってくる浮遊霊をヨコシマとハクが霊波刀できりつけていきつつも、私は二人が処理しきれない浮遊霊や横から襲ってくるのを狐火で焼き払っていく。

三人の息はぴったりと合い、瞬く間に浮遊霊の数は減少していく。

それを見た浮遊霊たちが再び襲い掛かるのをとめて一定の間合いを開けながらもこちらの様子を見てくる。

「タマモと三人でやるのは初めてだというのにかなり気があっているんじゃないか?これだったら何でも怖いものなしだな」

「当たり前じゃない。私達の気が合うのは前世からの縁なんだからね」

「いわゆる宿縁というやつでござるな。これなら楽勝で終わりそうでござる」

周りの浮遊霊に注意を向けつつも、一体感を共有することに喜びを覚えて私達はつい笑みをこぼしてしまう。

「でも、見たところこいつらは親玉の地縛霊を倒さない限りどんどんと集まってくるみたいだな」

「そうね・・・さっさと親玉を倒したほうがはやそうね」

「だな。ちょっと強引だがそこまで突っ切るか。ハク、タマモ、いけるか?」

「もちろんでござるよ。一気に突っ走るでござるよ!」

「サポートは任せて。あんた達を霊になんかさわらせはしないからね」

「よし、それじゃあ行くぞ!」

ヨコシマの声と共に私達はより強い霊気を放っている地縛霊のほうへとむかって同時に走りだした。

周りの浮遊霊を私達の動きを見てすかさず襲い掛かってくるが、先ほどと同じ要領で浮遊霊を消滅させていき目的の場所へと進んでいく。

「先生!あそこでござる!」

しばらく進んだところでハクがひとつの扉を指差す。

その扉はほかのとは違い大きく装飾もいきわたっており、向こう側からいっそう強い霊気が溢れている。

「そのようだな。よし、一気に行くぞ!」

まだしつこく追ってくる浮遊霊に特大の狐火をお見舞いしてほとんどを消滅させてから、私達はその扉を勢いよく開けて部屋の中へと踊りこんだ。

その刹那、


ごぉぉぉっ!!


「きゃっ!」

「うわっ!」

「くぅっ!」

とてつもない霊気の塊が押し寄せて私たち三人は吹っ飛ばされてしまった。

なんとか受身を取りつつもその霊気の出所を見やるとそこには・・・

「な、なんでござるか!?あの大きいのは・・・」

「くっ・・・あれが親玉か・・・いったいどうなっているんだ!?」

「あいつ・・・自分が呼び寄せた浮遊霊を吸収してどんどん大きくなっていっているわよ。はっきりいって、今のあいつはそんじょそこらの霊の比にならないくらい強いわよ!」

そこには、多数の浮遊霊を今もなお吸収して大きくなり続けているひとつの球状の地縛霊がいた。

吸収されていく浮遊霊の叫び声がこだまし吸収されていくこの世のものとは思えない状況に加え、ありえないくらいの強力な霊気を放ち続ける地縛霊を目の前に私でさえ悪寒を覚え、恐怖を感じていた。

おそらく、並みのGSではあまりの霊気にショックで意識が飛んでしまうだろう。

「せ、先生・・・こ、怖いでござる・・・」

「こ、こんなの聞いてないぞ・・・派遣会社のやつ・・・絶対に間違えやがったな・・・」

それはヨコシマもハクも同様であり、お互いあまりの恐怖に体を震わせて動けない様子である。

「よ、ヨコシマ・・・ここは一旦引くわよ・・・こんなの・・・今の私達じゃ絶対に無理よ!」

私はハクとヨコシマとは離れたところに吹っ飛ばされたために、なんとか霊気に耐えながらもヨコシマのところに行こうとした。

「それもそうだな・・・これはちゃんとしたGSに頼んだほうが・・・」

「先生!危ないでござる!!」

私の意見を聞いて撤退をしようといいかけたヨコシマだったが、それに向かって地縛霊から霊気の衝撃が繰り出される。

いきなりのことで完全に対応が遅れてしまい、その衝撃がヨコシマに届きそうになったその瞬間、

「ぎゃんっっ!!」

ヨコシマをかばうために持ち前の反射神経で前に飛び出てきたハクがその衝撃をモロにくらって吹き飛ばされ、後ろの壁に激突して動かなくなる。

「ハク!!」

あわてて私は様子を見るが、かすかに脈動が聞こえてきて息をしているのがわかる。

まだ生きていることがわかり少しほっとしつつもそれをヨコシマに伝えようとヨコシマのほうを見るが、そのときのヨコシマを見て私は再び固まってしまった。

「貴様・・・よくも・・・よくもハクを!!」

ヨコシマは誰が見ても明らかなくらいの怒気を含んだ霊気を放っており、私は今度はそのために動けなくなってしまった。

地縛霊のほうも同様らしく必死の抵抗で同じように霊気を放ってくるがヨコシマに届く前に霧散してしまうために、ヨコシマをとめることはできない。

ヨコシマはゆっくりと立ち上がり手に再び霊波刀を出すが、それはかつてのヨコシマとは比べ物にならないほど密度が濃く非常に威力を持ったものである。

「貴様だけは許さない・・・貴様だけはオレのこの手によって滅ぼす!」

それだけうと先ほどとは比べ物にならないくらいの速さで間合いをつめ一瞬で地縛霊のそばまで来る。

「でやぁぁぁぁぁっ!!」

そして、地縛霊が反応する前にその霊波刀を振り下ろし、地縛霊に一撃を加える。

その瞬間、地縛霊は耳を覆いたくなるような声を上げて今までに吸収した浮遊霊を大量に放出させながらも滅びていく。

さらに、放出された浮遊霊どころかこの館に集まってきていた浮遊霊がヨコシマの出す霊気に触れるだけによって消滅していく。

しばらくすると周りから霊の気配はなくなり、ヨコシマの霊気もだんだんと治まっていった。

私は、その様子をただ腰を抜かしてみることしかできなかった。

「ヨコ・・・シマ・・・?」

ヨコシマの霊気が治まったところで私はようやく声を出すことができた。

ヨコシマはその声を聞いて我に返り、あわててぐったりとして動かないハクの元へと駆け寄っていった。

「ハク!ハク、しっかりしろ!」

ヨコシマはハクを抱き起こし体を揺さぶるようにして呼びかける。

「駄目!ヨコシマ、ハクを安静にさせて!ハクは重症だけどちゃんと生きているから安心して!」

私もその様子を見て我に返ってからハクの元へと近寄り、動揺しているヨコシマを落ち着かせながらもハクの様子を調べてみる。

ヨコシマは私の隣で自分を責めつつもその様子を見ている。

「あばらが数本折れて肺に刺さっているみたいね・・・早く病院に連れて行かないと命にかかわるわね」

思っていた以上にハクの様態は悪く、一刻を争う事態となっていた。

「オレのせいだ・・・オレが油断をしなかったらハクはこんなことには・・・」

「過ぎたことをどうこう言っても仕方がないでしょ?今はハクを助けるために早く病院へ行くのよ」

自分を責めているヨコシマを何とか言い聞かせようとするが、ヨコシマは一向に動こうとはしないで自分を責め続けている。

「ヨコシマ!早くしてよ!そうしないと本当に間に合わなくなるのよ!?」

「ハクがいなくなる・・・嫌だ。もうオレのせいで誰かを失うなんて嫌だ!!もうルシオラみたいに誰かを失うのは嫌だ!!!」

その様子を見てやりきれなくなり私は叫びつつもヨコシマを動かそうとする。

すると、私の言葉に反応してヨコシマのは大きく叫び、絶叫する。

その瞬間、ヨコシマの手から光が溢れてきて、まぶしく輝きだす。

私はそのまぶしさに思わず目をつぶる。

しばらくして光が収まり、ようやく目が元に戻りヨコシマのほうを見ると、ヨコシマの手のひらの上にはひとつの小さな珠があった。

「これは・・・?」

「文珠よ・・・それが文珠なのよ!ヨコシマ、それにハクを治すことだけを考えて念じてみて!早く!」

「あ、ああ・・・わかった」

ヨコシマは何が起こったのかわからないような顔をしていたが、私の言葉を聞いてあわてていわれたとおりにしていく。

すると、何も書かれていなかった文珠に『治』『癒』の二文字が浮かび上がる。

そして、その文珠が作用していきハクの傷がどんどん癒されていく。

「ん・・・あれ?拙者はどうしたでござるか・・・?」

文珠の効果が切れた直後、今まで動かなかったハクが目を覚ました。

「ハク・・・よかった・・・傷が治ったんだ・・・」

「うわ!せ、先生!?い、いきなり抱きつれるのは困るでござるよ。それにまだ拙者は心の準備が・・・って、そういえば拙者、死んだのではなかったでござるか?」

「死んでないわよ。ただ、大怪我をして気を失っていたけどヨコシマの文珠で怪我が治ったということよ」

ハクが目を覚ました瞬間ヨコシマが抱きついてきたために状況が理解できていないハクに事情を話す。

「そうだったんでござるか。さすがは先生でござ・・・先生・・・?」

ハクはいつもどおりうれしそうにヨコシマを尊敬しようとしたが、ずっとハクを抱きしめてひそかに涙を流しているヨコシマを見てさすがに心配そうにヨコシマを見る。

「ヨコシマは自分のせいでハクが死んでしまったと思って自分を責めていたのよ」

「そうだったでござるか・・・先生。先生のせいではないでござるし、現にこうして拙者は生きているから安心するでござるよ」

事情を理解したハクはやさしく微笑みながらもヨコシマを落ち着かせるように頭をなでていく。

その様子を見ながらも私はルシオラさんことを思い出していた。

直接会ったわけではないけど、ヨコシマ本人からすべてを聞いていたためにルシオラさんのことはよく知っていた。

それと同時に、どれだけヨコシマがルシオラさんのことについて後悔していたのかも知っていた。

だからこそ、ハクが自分をかばって倒れたことにあれほど同様していたヨコシマを見てもすぐに理由がわかった。

私は静かにハクの胸で泣くヨコシマを見ながら、静かに涙を流した。

しかし、この時はいろいろなことで頭が一杯である重要なことを逃してしまっていた。

そして、その重要なことが今後おこっていく事件の鍵となることはこのときは誰も気づかなかったのであった。









あとがき

戦闘シーンというのは初めて書きましたがやはり一筋縄ではいかないものですね(苦笑)
自分で書いてみると改めにほかの作家様の技術のすごさを実感しました。
私ももっと読みやすくて迫力があるように欠けるようにがんばっていきたいと思います。
では、いつもどおり返信返しをします。

>>Iholi様
>ただ、性が変わった事の影響がはっきりと表れるのはこれからでしょうか。
影響については中々うまく書けない私の技術の問題もありますが、次回かその次くらいからはっきりと現れてくると思います。
ですが、実際ヨコシマもハクも口調はあまり変わっていないのでできるだけわかりやすいようにかけるようにがんばります(苦笑)

それでは失礼します。

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