ザ・グレート・展開予測ショー

動き出した歯車〜第二話


投稿者名:アハト
投稿日時:(05/ 5/ 7)

動き出した歯車
第二話『波乱の幕開け』

某所

薄暗い一室に二つの人影がゆらゆらと蠢いている。

「計画の進み具合は?」
「彼の者の思念を手に入れたことにより最終段階まで進んでおります。」

明るく無邪気な声に対して無機質で冷淡な声が返してくる。

「そうか。しかし、あいつ自身が手に入れば言うことは無いんだが。」
「確かに……アレではどうしても出力が下がってしまいますしね。」

そこまで話が進んだとき不意にドアの開けられる音がした。
その音に内部の二人は、ドアに視線を向ける。

「……こんなに暗くして何してるんですか?」
「いや、この方が雰囲気が出るかなとかおもって」

部下と思しき者の問いかけに悪びれた様子も無くそう答える。

「では、彼の者には、もう一度説得を試みましょう。それでいいですね?」
「ああ、それでいい。後はよろしく。」


閑話休題


横島が襲撃を受けて早一ヶ月が経っていた。
この一ヶ月、何事も怒らず日々安穏と美神たちはすごしていた。

「…………」
「……何いらついてるの?」

今は、真昼間。なぜこんな時間に美神が、仕事にも行かず事務所にいるのかというと。

「この一ヶ月、一件も仕事が無いのよ!?きぃぃぃぃっ!!!」
「ちょ!私に当たらないでよ!」

横島が襲撃を受けてから一ヶ月の間ずっと開店休業が続いているのだ。
すでに予約が入っていた仕事も問題が解決したのでキャンセルされたりと……
まるでこの世から霊というものが消えうせたかのように……

「令子。見苦しいわよ。」
「ママ!」

突然、美智恵がドアをくぐってやってきた。
もちろん、腕の中ではひのめが寝ている。

「もう少し気を引き締めたらどうなの?」
「だって、仕事がしたいんだもの!」

欲求のはけ口が無くなってフラストレーションになっているので在ろう、ついつい大声になってしまっている。
そんな美神に、美智恵はこめかみを押さえて”育て方を間違ったかしら”などと考えていた。

「今回のような異常現象は、今までに類を見ないわ。」

美神の軽い発作が収まるとともにそう話を始める。
Gメンの方でいろいろ調査をしているのだが、世界各国で、同じようなことが起こっていて
人に害をなすような悪霊は検出できず、人畜無害な霊ばかりになっているという調査結果は、いくら繰り返しても変わることは無かった

「絶対に、何かが起こるはずなのよ。そう、アシュタロスが現れたときのように。」
「…………」

アシュタロスと聞けば流石に顔の表情も引き締まる。
しかし、それも少しだけで

「そんなこと言われてもぱっとしないのよ。こう何も起こらないんじゃ。」
「令子!いい加減にしなさい!」

本日一発目の雷を落とされた美神は、げんなりとし神妙になった。



一方そのころ横島は……

「あっ!?タイガーそれは俺んじゃー!!!」
「早いもの勝ちじゃけんの〜♪」
「それ、一応僕の昼ごはんなんですけど……」

学校の屋上で、ピートとタイガーとともに昼食に励んでいた。
何時も通りピートが貰った多くの弁当をタイガーと取り合っているだけなのだが。

「ふう、食った食った。」
「うう〜満腹じゃ〜」
「……本当によく食べますねぇ。」

満足顔の横島とタイガーの前に積まれているたくさんの弁当の空を見てピートは苦笑いでそう呟くように言った。

「何、言ってんだ。食えるときに食うそれが常識だろ?」
「そう、そのとおりじゃの〜」

さも当たり前というようにそういう横島とタイガーに溜息をつきつつ一つづつ丁寧に弁当を包んでいく。

「そう言えば、横島さん最近はどうなんですか?」
「何のことだ?」
「魔族のことですよ。」

不意にそんな話を振られた横島だが、最近は音沙汰も何も無いので正直に何も無いと答えた。
しかし、そんな時横島たちは、ある異変に気がついた。
不自然なほど高い霊気があたりに立ち込めてきたのだ。

「何か来るの〜」
「横島さん!」
「うう、何かやばいような気がする。」

各々が身構えたとき、突如異変が起きた。
何か、光ったかと思うと、人らしきものが屋上に張ってあるフェンスにぶつかって来て、フェンスを突き破り横島たちの近くまで転がってきた。

「くぅ……」
「おっ、おい大丈夫か!?」

横島が、転がってきた人に声をかけた。
そのとき横島の目には、人とは異なる部分が映った。

「て、天使!?」
「何でこんなところに……」

その転がってきた人(天使)には翼が生えていたのだ。
もっとも純白であるはずの羽は、己の流した血で赤い斑点がついていたが。

「横島さん。まだ何か来るんじゃの〜」
「なに!?」

タイガーが横島にそのことを告げた直後横島に向けていきなり霊波砲が飛んできた。
横島たちは、かろうじで何とか避ける事ができた。(霊波砲は校舎には当たらず遥か空のかなたに飛んでいった)

「ピート!タイガー!そこの奴連れて早く逃げろ!」
「どうしてじゃ!わしも戦うけ〜」
「僕だって一緒に……」

横島は、ピートの言葉をさえぎってさっさと逃げるように促した。
ピートたちは、なおも反論するが……

「あいつらの狙いは俺だ。だから生徒の皆の避難を頼む!」
「……わかりました。死なないでくださいね。横島さん。」
「避難させるほうは、任せんしゃい!」

横島は、ピートとタイガーが屋上から降りていくのを振り返らなかった。
いや、振り返れなかった。思わずとんでもないことを口走ってしまったからだ。

「…………(やばい、格好つけすぎたー!!)」

横島が、後悔のどん底にいるとき屋上に三体の天使が降りて来た。
三体の天使たちはどれも仮面をつけていて顔はわからなかったが、霊力は横島とは比べ物にもならなかった。

「情報より、ずいぶん気概があるじゃないか。横島忠男。」
「……(さ……三対一……生きて帰れるかな俺」

横島は、何とか逃げれないかと考えようとすると、相手はいきなり襲い掛かってきた。
手に持つ神剣らしきもので横島に二人が左右から切りかかった。

「うわっ!!」

横島は飛びのいてかろうじで交わしたのだが、すぐさまもう一人が霊波砲を放ち追い討ちをかける。
横島は、それを横に転がって逃げる。

「し、死ぬ!これ以上はあかんっ!!」

転がって避けたところに向かって斬撃が二つ放たれた。
それを奇跡的に薄皮一枚斬られただけで交わすも続いてまた放たれた霊波砲は、横島を完全に捕らえていた。

「も、文珠〜ッ!!!」

ぎりぎりのタイミングで結界を張るも結界は、その一撃で消失してしまった。
横島は、何とか距離をとり体制を立て直すことに成功したが、そう長く続かないことは明白であった。

「はぁはぁ……(あっあかんッ!!霊力の桁が違いすぎる!!)」
「人間にしては、粘るな。流石は、英雄というべきか。」
「しかし、ここで殺さねば厄介なことになる。」
「怨むなら、お前を利用しようとする魔族を怨め!」

とどめとばかりに一斉に襲い掛かってくる三対の天使。
横島は、その光景を見て思わず文殊を精製し結界を張った。
しかし、結界は一人の天使の初撃により消失し他二人の天使が間髪いれず攻撃を仕掛けた。

「(やられる!?)」

横島は、最後の瞬間に目を見開いた。
すると、横島の目には自分の前に踊り出た黒い影が映った。

「勝手に殺されたら困るんだ。」

横島の耳にそんな声が聞こえたのとほぼ同時に二つの断末魔が上がった。
そう、横島に攻撃を仕掛けてきた天使たちだ。

「……貴様。邪魔をするな!!」
「去ね。」

最後に残った天使は、怒りとともに舞い降りてきた者へと攻撃を仕掛けていった。
しかし最後の天使も、無造作に繰り出された一撃によって断末魔をあげた。
横島は、一体何が起こったのかもよくわからずにその場にへたり込んでいた。

「久しぶりだな。一ヶ月ほどか?」
「……何しにきた。」

横島は、声をかけられ目の前にいる黒ローブを被っている者が誰なのかを理解した。
横島に交渉を持ちかけてきた魔族だということに。

「いつまで経っても答えは変わらない……」
「頑固な奴だ。折角、お前の恋人を復活させてやろうというのに。」

横島は、一ヶ月前と同じ返答を魔族へと返す。
魔族は、やれやれといった感じで一ヶ月前と同じ反応を示した。

「そこまで、言うなら仕方ない。好きにするがいい。」
「……(やけにあっさり引き下がるな……何かあるのか?)」

あっさりと引き下がった魔族に横島は、警戒心を抱き身構えた。

「我々は、お前の思念の一部分を手に入れることができた。そう、お前の霊力源の一部をな。」
「……じゃあ、あの夜の奴は……」
「思っていたより察しがいい。そのとおり、貴様の思念体だ。」

魔族は、そこまで言うと黒ローブを翻して消えた。
ただ一言を残して……

「じきに、会うことになるだろうが……まぁ楽しみにしておくことだな。」

ただ一人残された横島は、どさっと力が抜けたように地べたに座り込んでしまった。

「疲れた〜……でも、一体どういう意味なんだ?」

横島は、一角の不安よりも命が助かったことへの安心が勝ってしまったので、そこで思考をとめてしまった。

--------------------------------------------------------------------------
あとがき
今回の話は、少し短いと思います……詰め込む要素があんまり思い浮かばなかったんで……それはそうと、何か天使が出てきたところは、いまいちうまくかけなかった気がします。見苦しいかもしれませんが、よろしくお願いします。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa