ザ・グレート・展開予測ショー

目覚めて見れば…13


投稿者名:K.M
投稿日時:(05/ 4/18)

昨日の夜また文珠が警告音を発した。

そして先ほど、唐巣神父から事件が起きたから手伝って欲しいとの連絡が入った。

今度の事件の発生場所は教会だ間違いなく原始風水盤の事件でありメドーサとカチ合う可能性が高い。

メドーサには俺の実力がばれているので、

前のハーピーの時の様に楽勝(精神的には辛勝だったが)って訳には行かないだろう…

辛い戦いになりそうそうだ…ハァー


目覚めて見れば…13


「金目の物なんてあるはずないのに、随分派手にやられたわね」

美神の言うとおり、協会内は酷く荒らされていた。

荒らした相手はご丁寧にも協会内の全ての椅子に机を破壊している。

虱潰しという言葉がピッタリだろう。

横島の予想通り原始風水盤絡みで間違いなさそうだ。

「警察には?」

「普通の相手じゃなさそうなんでね。まだ通報していないよ」

「なるほどね」

「今日呼んだのは皆にも霊視を手伝って貰いたいからなんだ。なにか手がかりがあるかもしれないからね」

「確かに二人じゃ厳しい広さね……わかったわ。横島くん、あんたもやるのよ」

(二人って…俺って唐巣神父の弟子なんだけど…しかも何故美神さんに命令されるんだ?)

そう思いながらもワザワザ美神の機嫌を損ねるような事は口には出さず、差し出された霊視ゴーグルを横島は丁重に断った。

「大丈夫です美神さん。最近唐巣神父との訓練のためか簡単な霊視なら出来るようになったんです」

流石に何時までも『何も出来ない横島』では困るので少しは成長したことを皆にアピールするためだ。

そんな横島を美神は目を丸くしてバッ!と確認するように唐巣神父の方を向くと神父を『本当だよ美神君』と答えてくれた。

「美神さん…俺だって少しは成長しているんです。そんなに胡散臭そうに見ないでください」

「ぐ…横島の分際で生意気な…」

「そんな殺生な…」

そんなやり取りをしていると『ごめんくださ〜い』と言う声と共に来客があった。

一番ドア口にいたおキヌが訪問してきたお隣さんと二三言交わし戻ってきた。

「何かしら…?」

「何かの部品のようだが…」

そう言う美神と唐巣神父の前には今しがたおキヌが預かってきた荷があった。

その中身は長さは2M近くあり、形状としては時計台等に使われる針に似ているだろう。

「宛先が僕になってる……一体だれからだろう?」

「俺だ」

荷札を見ていたピートの声に絶妙なタイミングで入り口から声がする。

『伊達 雪之丞!!』

「ちょっとワケありでな。

お前なら奴らにそいつを渡すようなヘマしないと思ってたんだが…

まさか俺がヘマしちまうとはな」

そう言って前のめりにぶっ倒れる。

「唐巣殿!敵だ!!」

倒れた雪之丞に駆け寄ろうとする唐巣神父に向けて心眼が警告を発する。

見ると教会の外に何とも言えない怪しい連中がこちらを見ている。

その中から見たことのある人物が進み出る。

『鎌田 勘九朗!!』

「つまんないことに巻き込んじゃって悪かったわね…そのブツと雪之丞を頂戴。そうすれば私達は大人しく引き下がるわ」

「事情はわからんが、メドーサの手下の言うことはきけないね。

我々を頼ってきた以上、雪之丞くんは友人だ!お引取り願おう!」

「あら?下手な正義感は寿命を縮めるわよ?」

自分の優位を確信しているのだろう魔装術も纏わずそう言い放つ。

『どうするのだ?』

その様子を見ていた心眼がどう対応を思念で横島に尋ねてくる。

『雪之丞は渡せない…戦う!』

『了解した…ならばお主は下がって居てくれ』

『…またかよ…』

『今お主の力量を示す意味があるのか?』

『そりゃ無いけどさ…』

『ならば諦めよ』

仕方が無いとは分かってはいるし、心眼の力量も信頼しているが横島としては心眼を戦わせて自分だけ安全なところから見ているのが歯がゆかった。

横島が少し後ろに下がると同時に勘九朗の声が響く。

「交渉決裂ね…となると、神父と吸血鬼のボーヤは敵ね。後はそちらのボーヤはどうするの?」

「えっ…お俺?」

まさか自分に話が振られるとは思って居なかった横島が間抜けな声を上げる。

まあ、メドーサの手下なのだもしかしたら案外要注意人物として教えられていたのかもしれない。

だがそれでは収まらない人がいる。

「ちょっと!待ちなさいよ!!先生、ピートと来てなんで横島君なわけ?普通は私でしょ!?」

「あら?貴方が雪之丞を庇うの?そいつを庇ったって一文の得にはならないのよ?」

「ぐっ…」

「でしょ?」

「ふ、ふざけんじゃ無いわよ!私はGSよ!アンタ見たいな悪党をほっとける分けないでしょ!!」

どうやら美神の中で利益より自分の傷つけられたプライドの方が勝ったようだ。

「そう…残念ね。行け!!」

勘九朗の命令と共に怪しい取り巻き達が一斉に動き出す。

「アーメン!!」

先頭に突っ込んできた敵に唐巣神父の術が炸裂し顔の半分を吹き飛ばすが倒れることは無い。

「こいつらゾンビか!」

「そうよ!メドー様が御作りになったモノだから中々強力でしょ?」

『おい!心眼!気を付けろよ!』

心眼が強いのは前回身を持って(?)知っているがそれでも今回の相手は分が悪いだろう。

横島の得意な戦い方は持ち前の大きな霊力をふんだんに使い高出力の霊波刀や文珠等強力な術をぶつけ火力で圧倒する戦い方だが、

心眼にはそれ程の霊力が無いため、高い身体能力と技を生かし絞り込んだ霊波刀等鋭い攻撃で敵を倒すと言った戦い方だ。

したがって今回のようなゾンビなどのダメージに鈍感な相手とわ相性が悪い。

『分かっている!!』

そう返事をしながゾンビの腕を切り飛ばすが切り口が鋭いためかゾンビは倒れることは無い。

『心眼!』

『なめるな!!』

倒れなかったゾンビに向かって飛刀型霊波刀を投げつけ止めをさした。

『我は大丈夫だ…それよりお主こそ戦わないととわ言え油断するなよ!』

『了解』

流石に勘九朗が自慢するだけあって雑魚敵としてはかなり強いほうだが、美神達4人を敵に回すには力量不足だ。

「あーもう!一円にもなら無いって言うのに!!」

そう言って美神が左耳に付けている精霊石をゾンビ達にぶつける。

ここの一撃が決めてとなり勘九朗に残されたゾンビが一気に減る。

「このあいだのケリを付けてもいいんだけど、今はちょっといそいでるのよね」

追い詰められている筈にも関わらずそういうと勘九朗は将棋の駒のような物を数個放り投げる。

ボッボボボン!

鈍い音と共に将棋の駒が割れおキヌと雪之丞以外の足元が岩のように固められる。

「これは!?」

「これ?メドーサ様からいただいた結界兵器土角結界よ!」

ピートの声に律儀に答えた勘九朗が自分の目の前の出てきた岩に手を置く。

「本当だったら前のカリを返したたかったんだけど…ごめんなさい…ブツは手に入った引き上げよ!」

その言葉にゾンビの一人が鉄心を掴み離脱する。

「くそ!抜けられん!拙い…」

せり上がってくる岩に霊波刀を振り下ろしつつ呟く心眼の声にも焦りがにじみ出ている。

他のみんなも何とか抜け出そうとするが成功するものは居ない。

『…くっ…これを文珠で何とか出来んのか!?』

『今文珠を使ったら皆にバレる』

『馬鹿な!何を言っておる!?'目的'のために力を隠しているのは我も重々承知している!だがこのままでは目的どころでは無くってしまうぞ!』

『…大丈夫なはず』

『何!?』

心眼の驚きと同時に唐巣が決断をする。

「美神くん!精霊石を私に!早く!!」

「どうする気!?」

「結界を破ることは出来なくとも、流れを少しかえてやることは出来ると思う!」

「まさか!先生っ!!」

「止めろ!唐巣殿!!」

唐巣のしようとしている事に気がついたのだろう…ピートと心眼が悲鳴のような声を上げるが唐巣は止まらない。

「精霊石よ!!私に力を貸せ!!あとを頼むよ美神君…」

呟きのような唐巣の声と共に他の皆の石の戒めが一斉に解ける。

「先生ーーー!!」

「何してるのっ!皆すぐにここを離れて!!」

美神の警告横島達が一斉に飛びのくと同時に唐巣が光に包まれたかと思うと石版のような物に封印される。

「先生!ーーッ!」

「あ…あわてるな……元に戻す方法はある……」

横島に抱えられていた雪之丞が目を覚ましそう言った。

「どうやるんだ!?早く言え!!僕たちをこんなことに巻き込みやがって…!!

先生が元に戻らない時は貴様を殺してやる!!」

「ピートさん、この人ケガしてるみたいだから…」

思いっきり締め上げようとするピートをおキヌが止めるが、雪之丞の『は、腹減った…』と言う呟きが全てを台無しにする。

そんなコントのようなピート達を他所に心眼が横島に近づいてきた。

「心眼?」

何時もと雰囲気が違うのに気がついた横島が問い掛けるがそれには答えず、心眼は行き成り横島を殴りつけた。

前にも記したが心眼の力はかなり強い…その心眼に力任せに思い切り殴られた横島は教会の外近くまでも吹っ飛ばされる。

横島は突然の出来事に何が起きたのか把握出来ていない。

そんな横島に心眼はツカツカと近づいて行き襟首を引っつかみ強引に引き寄せる。

「…なぜなのだ…」

「…えっ?」

「なぜ…お主は唐巣殿がこうするのが分かっていたのだろ?なのに何故見捨てた…」

小さく搾り出すようなその声には怒りのためか震えている。

「我にはお主の目的は知らんがとても大切な事なのは知っている心算だし、そのために'力'を隠さねばならぬのも知っておる…だが、唐巣殿…いや、仲間を見捨ててまで隠さねばならぬ事なのか?」

「でも、助ける方法は…」

「確かにあるかもしれない…だがそれは結果ではないのか?もしかしたら岩のように固まるのではなく砂のように崩れ落ちてしまったかもこしれない」

「そりゃ…」

横島は確かに死なないという事実として知ってはいたが今回もそうなるとは限らない。

特にメドーサに横島が火角結界を無効化したのを知っているのだから見た目は一緒でももっと強力な術に変わっている可能性限りなく低いが否定もできない。

「…お主、前に大切な者と友のどちらを助けるかを我に問うたことがあったな?これがお主の答え…不確定な両方よりも大切な者を選んだのだな…本当に残念だ」

「ち、ちが「ちょ、ちょっと二人ともどうしたの!?」

横島が今の言葉に反論しようとしたとき、

心眼の行き成りの行動に固まっていた美神達が遅ればせながら二人の所に駆けてきた。

何か話しているのは分かっただろうが内容までは聞こえなかったのだろう。

「何でもない…心配無用だ美神殿…それより如何するのだ?」

「何でもないって…」

「大丈夫…本当に何でもないのだ」

「…ふぅ…取り合えず雪之丞から事情を聞いてから行動するつもりよチラっと聞いた感じじゃ場所が香港らしいがら具体的に動くのはお昼過ぎ過ぎぐらいだと思うわ」

心眼の様子がおかしいのは美神とて分かっているが今問いただしても無駄だと思ったのだろう。

簡潔に予定だけを述べる。

「…そうか…その位になっらた美神殿の事務所に行こう…」

そう短く言い残すと心眼は背を向け教会を後にした。

「ふ〜…全くこんな時に…で…何があった…って、あれ?横島君は?」

キョロキョロと辺りを見回すが先ほどから倒れていたはずの横島は影も形も無い。

心眼を見送り何があったのか横島に問いただそうとした美神だが、倒れていたはずの横島が何時の間にか居なくなっていたのだ。

「…あの餓鬼…逃げやがったな…」

怒りに満ちた美神の声も今の横島に届くことは無かった…

………
……


「…泣いてたな…」

横島は大の字の寝転がりポツリと呟いた。

場所は変わって東京タワーの特別展望台の上だ。

先ほど、声とは裏腹に心眼は確実に泣いていた。

他の人が聞けば怒った声に聞こえたかもしれないが、横島ははっきりと分かった。

意識せずとも心眼のラインから流れてきた強い感情は言葉に含まれていたような怒気ではなく大きな悲しみだったのだ。

やったことは無いがあの時、横島が文珠を使えば土角結界を無効化に出来た可能性は高い。

だがそれは美神達に自分の実力を示すことに他ならないばかりか、

メドーサ達にも自分の危険性を再認識させるだけで益はないと思っていた。

正直なところ横島は心眼の言ったことは未来を知らない奴の戯言だと思う気持ちが無いわけではない。

唐巣の事はメドーサ達を倒せばまず間違いなく直せるだろうし、場合によっては妙神山でも直せるだろう。

そこまで分かっているのなら心眼の言った言葉を戯言と断言しても良い様な気もするがそれが出来ないで居る。

何故断言出来ないのか…それを先ほどからずっと考えているのだがどうしても答えが出ないでいた。

「時間…か…」

下の方から響く鐘の音を聞きゆっくりと身を起こす。

答えの出ないすっきりとしない気持ちのまま横島は美神の事務所に向かうことになった。

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