ザ・グレート・展開予測ショー

横島君的復讐―1 前半


投稿者名:丸々
投稿日時:(05/ 5/28)

―月曜日 午前―

安アパートの一室で額に赤いバンダナをした少年が仕事に行く準備をしながら、それよりも重要なこれからの一週間のことを考えていた。


(久しぶりに親父が日本に帰国することになった。この前親父が帰国した時は、美神さんは

 親父の毒牙から守る事が出来たが、それ以外はほぼ完敗だろう。気に入らないけど。

 そもそも飛行機から降りてきた時から周りに口説いたスッチーはべらせやがって。

 小遣いせびろうとしてたのがいきなりカウンターパンチくらったようなもんだ。

 しかも文句の一つもつけようとしたらナイフちらつかせやがって。ここは日本やっちゅーねん!!。

 どっかの道楽公務員じゃあるまいし、堂々とそんなもん持ち歩いてんじゃねー!!。

 清掃員に変装して会社に潜り込んだ時も、親父とすれちがうOLのほとんどが反応してたじゃねーか!!全員美人だったし!!。

 ホントに俺って一人っ子なのか!?。どっか探せば腹違いの兄弟の20人や30人はいるんじゃねーのか!?。

 美神さんだって俺が捨て身の妨害工作しなけりゃ、危なかったんじゃないのか!?殴られそうだから本人には確認してないけど!!。

 バーテンに変装してた時に見てた感じじゃ、かなりイイ雰囲気だったし!!。
      ・
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 て、思い出せば思い出すほど人の目の前で女捕まえまくりやがって、それでも妻帯者か!?。
 一人くらいこっちに回しやがれコンチクショォォォー―――!!!!)


横島忠夫の主張、というか魂の叫びはこういうことだそうだが、彼自身実際も似たようなことをしている。

勿論人間の女性に対してはいまだに成功したことは無いが、人外の女性に対するナンパ成功率は、

おそらく父親大樹さえも上回るだろう。そもそも人外の女性で横島に対する嫌悪感を持っているものがいるのだろうか?。

敵であるメドーサは除外するとしても、最低の第一印象だったワルキューレでさえ別れ際にはまんざらでもなさそうだった。

最も横島忠夫が今のところ望むのは人間の女性との付き合いのようなので、これは彼にとってはあまり重要ではないようだ。


「この間の仕事の時、オキヌちゃんと良い感じになったのになあ・・・。結局怒らせちゃったもんなあ・・・。

いや!!そんな事ぐらいでは俺は諦めんぞ!!この世の女は全て俺のモンじゃァァァーーーー!!!

そもそもそれくらいで諦めてたら、最初っから美神さんなんか狙えるかって―の!!!!

今日の仕事で好感度アップして、二人ともゲットじゃァァーーー!!!」


やはり煩悩が霊力の源だけある。とても現実的ではない妄想を膨らませることにより自分を高める。

霊力で生活費を稼いでいる彼にとって、霊力=煩悩なので、最早煩悩で生きていると言っても過言ではないだろう。


「今日の仕事が終われば3日間、仕事はオフだ!!。3日もあれば、じっくり外道親父を除霊できるぜ!!」


父親がナルニアを出国する前に連絡を取り合った際、父親を空港まで迎えに行かなくてもいいのかと聞くと、


「直接タクシーで本社に向かうからな、今回は別に出迎えはいらんぞ。

何、お前も仕事があるのか?ならそっちを優先するといい。

なんせショウライユウボウナ、ゴースト・スイーパーノタマゴなんだろ?」


後半を思いっきり棒読みな父親の口調に、電話じゃなけりゃあ『文殊』かましてやんのに、と思いつつも

それは後の楽しみとして置いておくことにし、とりあえず夕食はアパートで一緒に食べる事になった。

電話を置くと同時に少年が


「くくく、あのクソ親父が。ナルニアの大地に帰れると思うなよ?

日本での食事がてめぇの最後の晩餐じゃァァーーー!!!」

決意も新たに雄叫びを上げていた。


先日の父親とのやり取りを思い返し、昂ぶった彼の掌の中に丸い硝子球のようなものが顕れる。


「ふっふっふ。順調に『文殊』のストックも増えてるしな。どうやって使おうかな。

おっと、これは大事な復讐の道具だからな。美神さんには見つからんようにせんと。」


「漢字字典」を抱えながら少年は邪な笑みを浮かべていた。仕事の準備は終わったようだ。




その日の除霊は空港の倉庫に出る悪霊の排除で、ネクロマンサーの笛を操るオキヌにしてみれば、笛の練習程度にしかならなかったようだ。

所長の美神令子も楽に仕事を終えれたので、上機嫌だ。除霊を終えたオキヌに何か話しかけている。

横島忠夫としても何もしなかったような物で、当然『文殊』を巻き上げられずにすんだため、内心胸を撫で下ろしていた。


(よし、除霊も終了だ。今日は美神さんに殴られなかったし幸先良いな。一発セクハラかまして煩悩を充填したいけど、我慢我慢。

親父とやりあうのに、体力が無いのは流石に危険だからな。血液は大事にせんと。

おっともう11時か、そろそろ空港に親父が到着する頃だろうな。そういや俺の昼飯どうしよう。

それにしても、今回は迎えに来なくていいだァ?どーせスッチ―をナンパするつもりなんだろうが!!。

お袋にチクられないようにする為に俺を遠ざけたってのがホントのトコだろうな。

ふふふ、まあいいさナンパくらい好きにしやがれ。どうせ今週いっぱいの命じゃーー!!

何人の電話番号をゲットしようが、デートできなきゃ意味がねーしな!!


あ、しまった!!今日の除霊の目標はイメージアップして二人の美女をゲットだ!!が目標だったのに、俺何もしてねェェーーー!!!

いや、大丈夫だ、仕事はこれからもいくらでもあるさ!!。

世界最高峰の守銭奴の美神さんの事だし、大きな仕事はこれからも困らないはず!!。

その時に俺のイメージアップを成功させれば、両手に花のハーレムも夢じゃないぜ!!!!」



「周りに人がいないからって、ふざけた妄想を叫んでんじゃないわよ!!!!」


女所長の飛び膝蹴りが少年の頭部に叩き込まれ、流血しながらも何故か平気そうな少年。


「ああ、しまった!!。またいつものお約束を!!!!」


空港の倉庫からの関係者用の通路のため周りに人はいない。ガラス窓の向こうは駐車場だが、そこにも誰もいない。


「人の事を世界最高峰の守銭奴だとか、両手に花でハーレムだとか好き勝手言ってくれたわねェェ・・・」


どうやら妄想の前半部分は声に出していなかったらしい。


「除霊も完璧だったし昼食くらい御馳走してやろうかと思ったけど、あんたには飴よりも鞭が必要みたいね!!!」


常に持ち歩いている美神の神通棍が霊圧に耐え切れずに歪み始める。


「オキヌちゃんは先にレストランに行ってもらってるし、心置きなく躾てあげるわ・・・!!」


最早、神通「根」というよりも神通「鞭」となった得物を構え、霊力を高める。


「か、堪忍やァァァァーーーーー!!!!

今日だけは見逃してくださいぃぃぃ!!!」



「問答・・・・・・無用!!!!」


30分後、ようやく機嫌のおさまった雇い主が立ち去る頃、関係者通路は血に染まっていた。除霊現場よりも凄惨なのは言うまでも無い。


「あ、あかん・・・今日だけは大人しくしようと思っとったのに・・・。

憎い・・・!!今はこの人並みはずれた煩悩(と妄想力)が憎い・・・・!!」


横島は何とか立ち上がり、近くの窓にもたれかかる。

除霊でやることが無かったため、力が有り余っていた彼女の全力の折檻を受けたためか、普段のようにすぐには回復しないようだ。流血もまだ止まっていない。

ふと窓の外の駐車場に目をやると若いスチュワーデスが、その娘のものだと思われる、小型の国産車に向かって歩いていた。サラリーマン風の男と腕を組みながら。


「・・・・・・・はぃ!?」


サラリーマン風の男が視界に入った途端、横島の流血がピタリとおさまった。

次の瞬間さっきまでの流血ですら使わなかった『文殊』を取り出す。

こめる文字は『視』

まだまだ文殊を使った経験が少ない横島だが、ある程度の法則は理解しかけていた。

『文殊』も霊力である以上、抵抗力の低い非霊能者(一般人)に使用した場合効果が大きいという程度のものだが。

そして彼が使用した『視・文殊』は抵抗力の無い彼らの様子を『視』ることができた。

遠視的な効果で、彼らの容姿を読み取る。若いスチュワーデスは黒髪を肩辺りで切りそろえた目鼻立ちの通った美人。知的なお姉さんといった雰囲気だ。横島の目から見てもなかなかの美人だ。

サラリーマン風の男は、もはや言うまでもないかも知れないが、横島大樹。

横島忠夫の父である。

そしてより深く観察すると、スチュワーデスの大樹に向ける目は妙に艶っぽい。そして彼女を見る大樹も同じ目をしている。『文殊』の効果で二人がどういうことを考えてるかも何となくわかる。というか『視』えると言うべきか。

さらに、何よりも濃い血の繋がりのおかげか、忠夫には大樹の頭の中が手に取るようにわかった。

それはあたかも、以前の帰国時に父・大樹が美神をホテルのレストランに誘ったという、それだけの情報からその日のデートの全予定を詳細に読み取ったかのごとく。

@飛行機の中で出会い、口説く。

A昼食を一緒に取り、情報収集と、性格把握。

Bこれから非番だと言う彼女にホテルまで送ってもらう(恐らく事前に予約しているのだろう)

Cホテルに着いたら「部屋で少し話でもしないか・・・」とか言って部屋に招き・・・

D・・・御馳走様でした。


「・・・いきなりお持ち帰りって・・・・!!!

畜生かあの親父は・・・・・!!!

日本について半日もせんうちにいきなり手ぇつけやがった・・・!!

しかもあんな美人を簡単に・・・!!!!」


先ほどの上司からの折檻の傷がほとんど治り、出血も止まっていたはずなのだが
よほど目の前であっさりお持ち帰りされたのが悔しかったのだろう。滝のような血の涙を流しつつ、父親の抹殺に決意を新たにしたのだった。




一方的に敵意を抱く息子が、外道な父親に再会するまで。




あと半日。

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