ザ・グレート・展開予測ショー

帰り道に一人


投稿者名:ギーガp
投稿日時:(05/ 5/23)


「いっ……てぇ〜。てかあの人、何時もより本気でしばいてたよな?」

暗い帰り道を、一人歩く。
横島忠夫の一日の中で、最も静かな時間だ。

体の節々が痛む。今日も今日とて煩悩魔人としての本領を発揮した結果である事は、もはや言うまでもない


ただ、今日は何時もより雇用主からの修正が激しく、彼のギャグ領域に於ける回復能力すら追い付かないほ

どのダメージを負ったのは誤算だった。

「あ〜いう時に限って他の皆が居ないんだからな、ったく」

愚痴をこぼすが、そういう彼にも、氷室キヌら「他の皆」が雇用主の修正を抑えられないと分かっている。
そして自身の独り言の多さに苦笑し、周りを見やる。ここは暗く、誰も居ない。
















―――突然、彼女の顔が思い浮かんだ。最初は敵であったが……自分を好いてくれた彼女。蛍の化身。

逢いたくても逢えない彼女。近くて遠い所へ消えた彼女。

「―――ルシオラ」

誰よりも夕日を愛し―――夕日と共に消えていった彼女との甘く、そして辛い記憶を横島は克明に思い出せ

る。乗り越えたのは間違いない。たくさんの人から励まされ、それで立ち直った。ウジウジしていても、彼

女は喜ばないと、自分でそう結論付けた。

それでも、逢えない寂しさは募る。

「ヤりたい」―――そんな理由だけで彼女を望んだ事を、嘗ては後悔した物だった。そんな下らない理由で

、彼女を振り回し、傷つけたりもして、最後は切り捨てた。















けれどもそんな考えは、彼の雇用主に砕かれる。





「愛のカタチに決まりなんて無い」「自分らしく愛すれば良い」

受け売りだそうだが、それでも顔を真っ赤にしてそんな言葉を口にした彼女に、考えるよりまずルパンダイ

ブをかまして血の池を作る事になったのはご愛嬌だ―――。

とにかく、その言葉で彼は完全に開き直った。「ヤりたい」だけだったかもしれない。けど、愛している。
愛しているのだ。全身全霊で、浮気もするけれど、とにかく全力で愛している。

そう、例え……娘として生まれてきても。―――いやいや、妻だって愛するよ? っていうか全ての女は俺

の物じゃー!!……と言ったその場で雇用主だけでなく「他の皆」からも修正を受けた。流石に彼もあの時

は死にかけたが、それでもどうにか生きている。



考えてみれば、逢えるチャンスはちゃんとあるのだ。何を悲しむ必要がある? 固よりモラルなど捨て去っ

ている―――といいなあ。なんてやや弱気な気分にはなるけど、とにかくまた会えるのだ。他の、恋人と死

別したカップルよりかは、もう二度と会えないカップルよりかは、何倍もマシだ。―――その時はきっと、

お前と同じくらいに大事な奴らがたくさん居るけど、その辺は、ホラ。俺だから、かんべんな? 

―――そう考えるようになるほど成長して、彼は完全に立ち直る事に成功したのだった。












「それでもやっぱ……な」

逢いたくても逢えないもどかしさ。一人になると、そんな感情が過ぎる。……何年経っても、この感情は辛

い。
でも、向こうもそんな感情を持ってくれてると嬉しいなあ……なんて、何時も考えてしまう。



そんな時は決まって、こう言うのだ。居るはずも無い彼女へ向けて。

「絶対、また、逢おうな。できれば笑い合ってさ。そんで、そん時―――」

気付かなかった、気付けなかった想い。伝えるわ。―――だから、またな。








居るはずの無い彼女が、居る気がした。ニッコリと、笑ってくれた気がした―――。

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