ザ・グレート・展開予測ショー

吟詠公爵と文珠使い 番外編 from a firefly girl to the moon lady(中編)


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 4/11)

「横島君が独立?」
「ああ、ついこの間かな・・・・」
自らの本体でもある机に腰掛けている愛子の問いに、ピートは自分の席に着きながらは答えた。
横島が高い実力と類まれなる美貌、さらには守銭奴ぶりでも有名な雇い主の美神から独立して、二、三日経過したある日のこと。今日、横島本人が独立の準備に奔走し、机妖怪の愛子はその事実を今まで知る術が無かったのだ。
「それだったら、私を事務員にしてくれても・・・・」
「いや・・・・実を言うと、小鳩ちゃんが事務員になりたいって・・・」

ピシャーーーーン!!!
愛子の中に雷が落ちた。
「え・・・・そうなの?」
「うん、そうだけど」
呆然自失気味の愛子の問いに律儀に答えるピート。

(く・・・・先を越されたわ!! 何てこと・・・・・)
愛子は内心の呟きを口には出さず、舌打ちした。
横島に好意を抱く女性の一人として、小鳩の行動は大いに危機感を煽るものだった。

「小鳩ちゃんって、一年の子よね? ほ、他には新しい横島君の事務所に女の人は・・・・・いるの?」
「えーと、小鳩ちゃんの他には・・・・マリア、それと砂川さん、かな」

「その砂川さんって、どんな人? 美人?」
ピートの言葉の中に聞き慣れない名前を耳にした愛子は、明らかに動揺している。

「うん、文句無しの美人だね。口調は男っぽいけど・・・・・」
「・・・・・・・・・」
愛子完全沈黙。口癖であるはずの「青春よね〜」すら出てこない。

そして、ピートと愛子の話にクラスメートの大半が聞き耳を立てていたのは言うまでも無い。
その後、登校し、席に着いた横島が彼らの視線を受け、意味不明の重圧に晒されることになった。


不気味な沈黙と緊張感の中、授業が進められていった。なお余談だが、このクラスの担任は生徒達が放つ不気味なオーラに圧倒され、胃痙攣を起こし、白井総合病院へ運ばれていった。

(「現代医学は敗北など・・・・シュコー、パー」「あの学校は人外の連中の巣窟か!?」)


「ねえ・・・えーと、横島君、独立おめでとう・・・・・」
その後、昼休みになり愛子がやや、戸惑い気味に横島にまずは祝いの言葉を述べた。

タイミングが掴めずに言い出せなかったらしい。
「それはさておき・・・・・・横島、砂川という女性のことについて聞きたいんだが・・・・・」
愛子にお礼の言葉を返した横島に、メガネをかけた級友の一人(以下メガネ君)が話を切り出した。

「砂川の? まあ、俺が話せる範囲のことなら・・・・・・」
「じゃあ、彼女とお前の関係は?」
横島の言葉に切っ掛けを掴んだメガネ君は内心でガッツポーズを取りながら、話の本題に入った。横島にマイク代わりに丸めた教科書を突きつけ、自らもインタビュアーを演じるという念の入れ様だ。

そんな彼らの一挙一動をクラス全員が見守っている。



「ああ、あいつは事務所の同僚で、俺の相棒でもあるけど・・・・・・」
周囲の視線に晒されながらも、横島は冷静な口調で答えた。

「お、俺の相棒!?」
「あいつって、そんな打ち解けた呼び方を!!?」
「しかも、ピートの話じゃ美人らしいぞ!!!」
「うおおおおお―――――!!!  No------―!!!」
一方、冷静な横島とは対照的に、いい感じでヒートアップしていくクラスメート達。
横島に美人の同僚が居るということに驚天動地の衝撃を受けたらしい。

ルシオラや美神が以前、学校に来たことでで耐性が出来たのでは無かったのだろうか?

横島はそんな級友達に冷めた視線を送り、溜息をついた。
そして、教室のドアのところで、病院に送られた担任の代行を務める副担任が自分を手招きしていることに気付いた。おまけに、その副担任の後ろには見知った『彼女』の気配を感じる。

(それにしても、あいつが学校に来るなんて、緊急の用件か?)「
横島は話の内容に見当をつけながら、そちらの方へ足を向けた。

「何ですか、先生?」
ドアの方まで来た彼に副担任は頷き、口を開いた。
「それがな、横島。お前の事務所の同僚の方がな、ちょっと連絡事項があると・・・・・」
副担任の言葉と同時に、彼の後ろの人影が書類を片手に前へ出た。

「横島か、済まんな。呼び立てて」
その人影の主は、先程から話題に上っていた女性―砂川であった。



「ねえ、ピート君。あの女の人・・・・・誰?」
横島と何やら話している女性に、半ば呆然とした視線を向けながら愛子は呟いた。恐らくは女性が何者かということに気がついているのだろう。彼女の声は、明らかに震えていた。

「ああ、彼女がさっき話題に上っていた横島さんの新しいパートナー、砂川志保さんだよ」
彼女の心情を察しながらも、隠しても仕方の無いことなので、ピートは事実を告げた。

「そう・・・・・・」
対する彼女の声は余りにも静かだった。だが、それがかえって、ピートに言い知れぬ重圧を感じさせる。

そして、彼の勘は見事に的中した。


「ねえ、ピート君、私、砂川さんに勝てるかな?」
凄まじいオーラを放ちながら愛子は、ピートに返答に困る疑問をぶつけて来た。



(ど、どうしよう・・・・・・なんて答えれば・・・・・)
疑問をぶつけられたピートは当然のことながら、困惑していた。

(勝てるかって・・・・・・)
学校に棲みついた単なる一妖怪と七十二柱の女公爵の魔神。
戦闘能力の面から見れば、初めから勝負は見えている。
だが、愛子の「勝てるかな?」といった言葉に込められた意味は違うもののはずだ。

愛子のオーラに圧倒されて、思考が変な方向に飛んでしまったようだ。


「うーん、あれ愛子君?」
頭を振って、辺りを見渡してみると、質問してきた当の愛子が居ない。
どうやら考え込んで、沈黙したピートに痺れを切らしたらしく、砂川と横島のほうへズンズンと進んでいく。

その姿は恋する清純派乙女というよりは、むしろ合戦に赴く女武者だ。




「愛子君、彼女は強敵だよ・・・・・」
そんな彼女の姿を見つめながら、漏らしたピートの呟きは当然の如く、愛子の耳に届いては居なかった。





一方、こちらは連絡事項についての用事が終わった砂川と横島。書類に記載された内容は、どうということは無く、依頼された除霊の日程を早めて、今日か明日にして欲しいとの用件だった。買い物ついでに近くに寄ったので、直接伝えに来たのだろう。幸いな事に除霊するのは、学校が終わってからの時間帯で良いとの事だったが。


そんな彼らを最初は遠くから眺めていた級友達だったが、その中の何人かの男子は、砂川とお近づきになろうと砂糖に群がる蟻のように纏わりついてきた。中には目がちょっと据わっている奴や、何故かハアハアと息が荒い奴まで居る。
まさに変質者集団そのものだ。当然のことながら、女子達は一歩どころか十歩ばかり引いていた。



極めつけは・・・・・・
「犬と呼んで下さい!!」
「そうか、お前は犬というのか。それは苗字か?」
「はい、私達は卑しい犬にございます!!!」
「・・そうか、では犬」
何故か、平然と受け答えをする砂川。微妙に会話が噛み合っていないような気がするが。


双方とも天然か、それとも、わざとか。
砂川のほうはいつものポーカーフェイスなので判断は難しい。



「「「はああああああ・・・・・・」」」
そして、ビクビクと打ち震え、悶える男子達。その中に先程のメガネ君が混じっていたのが実に驚きである。こいつらの行くべき場所は保健所か、それとも精神病院か、こちらも判断に悩むところだ。

流石は横島のクラスメート、特に男連中。まともな奴のほうが少ないような気さえしてきてしまう。
クラスはある意味、バイオハザード状態だった。


「ちょっと、皆どいてくれない?」
そんな異常な状況下の中で、突然、かけられた少女の声に、野生の本能からか絶対的な圧力を感じ取り、砂川を取り巻いていた男子達が、一斉に道を開けた。さながら、その様子はモーゼの十戒の如く。


そして、少女は一瞬で開けられた道を進み、砂川と対峙した。背中に背負われた机が何とも微妙だが、そこはご愛敬だ。



「初めまして、私は横島君のクラスメートで、彼と同じ除霊委員で机妖怪の愛子といいます」
「そうか、私は横島の事務所の同僚の砂川という。横島が世話になっている」
こうして、机妖怪と魔神の(ある意味、一方的な)戦いのゴングが鳴った。



その頃、犬から人間に戻ったメガネ君を筆頭とする男子数名。
「ふふふ、横島、許すまじ・・・・!!!」
「やはり、お前は人類の敵だったな・・・・・制裁を加えねば・・・・!!!」
「仲間だと思っていたのに・・・・・僕は悲しいよ・・・・!!」
「僕という者がありながら・・・・・酷いよ・・・横島君・・・・」(おい、ちょっと待て)



凄まじく危ない笑顔を浮かべながら、横島の机をカッターやスプレーなどを用いて、大いに間違った装飾を加えようとしていた。



後書き  またもや話が長くなってしまいました。砂川対愛子の戦いのゴングが鳴りました。だけど、勝負になるのかなー。男子生徒の危ないこと。だけど、横島のクラスメートですから・・・・・
次回、あるキャラが登場します。原作の女性キャラです。(愛子と小鳩ちゃんじゃ無くて)

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