ザ・グレート・展開予測ショー

ちょっとノスタルジックに。


投稿者名:Arih
投稿日時:(05/ 4/24)

 一人暮らしを始めてからもう随分経つ。

 最初はせいせいする、とまではいかなくとも解放感めいたものや近い将来への期待感なんかを感じていた。彼女を連れてしけ込むとか。……いやいないんだけね。……いいだろ!! 期待するくらいっ!! ……誰に言っているんだ?
 エロビを見るのにも不自由しないし。実際、エロビの視聴頻度は上がったし。それはもうすんごく。正にうなぎのぼりっ!!
 ……とにかく、最初はそんなものだった。一人暮らしのメリットばかり見ていた。

 けれども、それなりの月日を過ごせば他の事にも気が付いてくる。




「横島さん、いらっしゃいますか?」

 小鳩ちゃんか。どうしたの?

「いえ、お夕飯を一緒にどうかと」

 マジ? うん、行く行く。

「では、どうぞ。ウチのほうで用意は出来てますから」

 ああ、すぐ行くから小鳩ちゃんは先に戻っててよ。

「はい。じゃあ、また後で」



 いくら春だと言っても夜はそこそこ寒いので、上着を羽織って部屋を出る。このアパート通気性パツグンだし。

 彼女の家は、先祖の悪行がたたって貧乏神にとり憑かれてしまい、ド貧乏だった。いや、人のこと言えないんだけどさ。
 些細な切欠が元でそれを知った俺は除霊を申し出て、紆余曲折の末(擬似とは言え、結婚式を挙げたりもした)に祓うのではなく、その貧乏神を福の神に転じさせるのに成功し、彼女の家の財政はようやく上向きになった。

 だけどしばらくはキツめの生活が続いていたので、米を貸したりそのお返しにメシをご馳走になったりしていた。

 その付き合いが今も続いている。



 ちはーす。

「よう、相変わらずシケた顔しとんな、お前さん」

「「いらっしゃい、横島さん」…こら貧ちゃん! そういうこと言っちゃだめでしょ!!」

 余計なお世話じゃ!! 貧乏神っ!!

「ワイは貧乏神やないっ! 福の神やっ!!」


 …おばさんは相変わらずだ。
 だいぶ良くはなったものの、何不自由なく身体を動かしたり出来るほど回復したわけではない。…まあ、病人のわりにはやたら元気なので心配はしていないが。

 だから、小鳩ちゃんは今でもバイトを続けているし、家事とかも一人でやっている。


 オカン、何してっかなぁ……


「「「いただきます」」」

 うまい!! こらうまいっ!!

「ふふ、ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです」

 いや、ホントーにうまいっ!! お世辞でなく。

「……はい、ありがとうございます」

 ん? どうしたの? 俺、なんか変なこと言った?

「……いえ、違うんです。今日、ちょっとアルバイトで失敗しちゃって……」

 そんなん気にすることないって! 俺なんかしょっちゅうミスして美神さんにしばかれてっけど、それでもやってけてるんだから!

「……はい……」

 ……フォロー失敗。泣きそうになってる。

「小鳩、泣くんやない! 泣いたらあかんで! 泣いたら福が逃げていってまう!!」

「小鳩……済まないねぇ。私がもっとしっかりしてれば……」

「…貧ちゃん! お母さんっ!」

 ……なんか『お○ん空間』が広がっていってるし……

 居づらいので、食べ終わるなり二言三言残して家族水入らずにするために去る。




 帰るなり上着も脱がずに敷きっぱなしの布団へと寝転がる。
 普段なら安物なりに暖かいそれも、どこか冷たい。



 もう三年、か。

 ……家族、ねぇ……






 手紙でも、書いてみようか。

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