横島君的復讐―6日目 後半
投稿者名:丸々
投稿日時:(05/ 6/10)
「西条!手を貸してくれ!!」
オカルトGメンの一室に、突如ドアを蹴破って少年が突入してきた。
その部屋の主―西条輝彦は騒音に顔をしかめている。
「横島君・・・・。いきなり何なんだい?
なんにせよ僕が君に手を貸すことは無い。
さっさと出て行ってくれたまえ。」
話も聞かずさっさと少年を追い出そうとする。
「おい!そんな事言ってる場合じゃねーんだよ!!
美神さんのピンチなんだ!つべこべ言わずに話を聞け!!」
苛立ちながら相手に詰め寄る少年。
その剣幕に押されたのか、自分の妹分の彼女のピンチという言葉が気にかかったのか
話を続けるように無言で促す西条。
「お前も知ってる、最低最悪の色魔が美神さんを毒牙にかけようとしてるんだよ!!。
精霊石弾頭ミサイルでも、ジャスティスでも何でもいいから早く奴を抹殺してくれ!!」
言外にお前なら何やっても揉み消せるんだろ?という期待が見え隠れしている。
以前雇い主を巡っての争いで、聖剣は振り回す銃は撃つわの好き勝手をした事を指しているのだろう。
普通ならとっくにクビになっててもおかしくない。
「色魔・・・・?。もしや大樹さんのことか?」
父親の名前を知っていることから、やはり親父の影の協力者はこいつかと確信しながらも
それは顔には出さない。気に入らないが、何とかしてこの男を抱きこむ必要があった。
「別に構わないさ。」
「よし!じゃあすぐに一発ミサイルでもブチ込んでこの世から―――
・・・・って、今何つった!?」
あまりにも予想外な返事が信じられず、思わず聞き返す少年。
「構わない、と言ったんだ。毒牙と言ってもせいぜいディナーに誘ったくらいだろう?
そんな事わざわざ騒ぎ立てる必要は無いじゃないか。」
平然とした様子だ。
むしろ少年の反応の方が信じられないといった感じである。
「おい!あの親父がディナーに誘うって事がどういうことかくらい、
同類のお前がわからない訳ないだろーが!!」
食ってかかる少年、だが西条の対応は変わらない。
「ふう、何か失礼な事を言われている様な気がするが、僕は何も心配などしていないよ。
あの人は君と違って『紳士』だからね、いきなり女性に飛びつくようなセクハラはする訳無いさ。
確か君は実際に捕まったこともあるそうじゃないか?」
「あ、あれは本当に事故だったんだよ!!」
急に攻撃の矛先を向けられた少年が慌てる。
確かに以前雇い主に警察に突き出されたことがあった。
その時は間違いなく『事故』だったのだ。給料日だと言うのに雇い主が外国に出かけてしまい
気が動転していたのに加え、空腹で心身ともに限界だった。
「ま、それはともかくとしてだ。
僕は何も邪魔をするつもりなど無いよ。
これでも忙しい身でね、そろそろお引取り願おうか。」
立ち上がり、少年をドアに向かわせる。
つまりは出て行け、ということなのだろう。
歯軋りしながら恨めしそうにこちらを睨みつけ部屋から出て行く少年を一瞥し、仕事に戻る。
(やれやれ・・・・どれほど頑張ろうと、『あの人』ならすぐに気付くさ・・・・)
彼には彼なりの思惑があるのだろう。
結局その話は頭から追い出し、溜まっていた仕事を片付け始めた。
(チクショォォォーーーーー!!
人の時は邪魔しまくるくせに、何で今回だけ動かねーんだよ・・・・!!)
Gメンのビルから出た後も内心愚痴り続ける。
只今の時刻は午後6時、少女と約束した時間まで後1時間しかない。
自分の代わりに父親の妨害をしてくれる人を探しているのだが、
大本命にあっさり断られたので途方に暮れていた。
親友の大男やヴァンパイア・ハーフに頼もうかとも考えたが、下手すれば美神の怒りを招きかねない
今回の妨害作戦を引き受けてくれるとは思えなかった。
荒事に向いている友人は行方知れずで、頼み事をする以前の問題だった。
(エミさんは見返りで無茶なこと要求されそうだし
冥子ちゃんはプッツンが怖いからあんまり関わりたくないし
唐巣神父はデートの邪魔なんて絶対引き受けてくれないだろうし
カオスのジーさんは不老不死らしいけど結構ガタが来てるみたいだからな
美神さんにシバかれたらぽっくり逝っちゃいそうだし
小龍姫様は美神さんに弱み握られてるからなー、引き受けちゃくれんだろうな。
ジークとワルキューレは・・・・・連絡先すら知らねーや。)
自分の頼りになりそうな知り合いを思い出しても、この業界に悪名を轟かしている雇い主に
進んで関わりあいになってくれそうな安全な人物は思いつかなかった。
悩む少年をよそに時間は過ぎて行く。
雇い主に直談判も試しては見たがあっさり却下。
行き先する教えてくれなかった。
それどころか逆に「おキヌちゃんに手ぇ出したりしたら明日の朝日は拝めないわよ」
と釘を刺される始末。
遂に何も考えつかないまま、時刻は約束の時間に近づいていた。
一応10分前行動を心がけ、事務所に少女を迎えに行く。
「あ、横島さん、早かったですね。」
少女の方も準備を済ませていたようで直ぐに出られそうだった。
少年が普段の格好で来る事を見越していたのだろう、デートの割には普段の私服に近い。
それでもいつもより少し気合が入っている辺り、少女の意気込みが感じられる。
しかし残念ながら少年の方は普段との違いなど気付いてもいなかった。
いつも通りの対応の少年に少しがっかりしながらも、
それはそれで少年らしいと思い心の中で苦笑していた
「じゃ、行こっかおキヌちゃん。」
魔鈴さんの店を予約していると言う少年に驚く少女。
「え、横島さんお金は大丈夫なんですか?
まだお給料日までだいぶありますけど・・・・」
連れの女性に金銭の心配をされるのは、男としてどうなんだろうと内心ヘコみながら説明しておく。
少女としては悪気が有ったわけではなく、あまりに意外だったのでつい聞いてしまっただけなのだが。
そもそも少年が貧乏なのは今さら隠す事でもない
「いや、親父に小遣いもらってさ。
だから今は金銭的には余裕なんだよ。」
言いながら父親から昨夜抜き取った財布を見せびらかす。
「わー、お財布ごとくれるなんて太っ腹なんですねー」
「あ、そ、そう言えばそうだね。きっと新しい財布を買ったから
古い方をくれたんだと思うよ。」
よく考えてみれば子どもの小遣いで財布ごと渡す親はそうはいない。
慌てて誤魔化そうとする少年。流石に動けなくして抜き取ったとは言えない。
その後は今日の仕事の話や、少年の学校の話などおしゃべりしながら歩いていると
気付けば店まで着いてしまっていた。
「こんばんわ魔鈴さん、横島ッスけど」
「あら、横島さん、いらっしゃい♪」
レジにいた店主の女性と互いに挨拶しあう。もちろん少女も同様だ。
「こんばんわ、魔鈴さん」
「おキヌちゃんもいらっしゃい♪
前のお祝いの時以来かしら?」
少女が生き返ったときにお祝いパーティーとしてこの店を利用していたのだ。
「席は準備できてるから案内するわね」
使い魔の黒猫ではなく店主自ら席へ案内する。
やはりただのお客ではなく知人として扱ってくれているのだろう。
ゆっくりしていってね、と告げレジへ戻っていく。
この店は普通の店と違い厨房で働く人間は一人もいない。
店主であり魔女でもある魔鈴が、魔法で食材や調理道具を自在に動かし料理しているのである。
自分の手足を使っていないからといって、それは手を抜いている訳ではない。
現に評判は上々でいつも店は盛況に賑わっていた。
少年と少女も運ばれてくる料理に舌鼓を打ちつつ、会話を楽しむ。
二人きりで外で食事をするなど初めてのはずだが変に緊張する事も無く
楽しい時間を過ごすことが出来た。
しかし、楽しい時間を過ごしているのにも関わらず頭をよぎる父親の顔。
気にしないようにはしているが、それでも少し顔に出てしまったのか、少女に問い掛けられる。
「・・・・横島さん、やっぱり美神さん達が気になるんですか?」
見透かされた事に動揺しながらも、何でも無いように装う。
「え、いや、別に気になんかしてないよ?」
「うそです!絶対気になってるはずです!」
珍しく強い調子で遮る少女。
周囲にも響いてしまったのか視線が二人に集まる。
「ご、ごめんなさい・・・・。」
周囲の視線が集まっている事に気づいた少女が赤くなってうつむく。
少年は何と言っていいかわからず、ただうろたえるしか出来ない。
(女の子と一緒にいるのに他の事考えてたらそりゃ怒るよなー・・・・
おキヌちゃんを怒らせるつもりなんか無かったのに、機嫌直してくれないかなあ・・・・)
「あ、その、怒ってる訳じゃないんです!
ただ・・・・その・・・・横島さんらしくないなって・・・・。」
(うッ!声かけたのが親父から守るためってのがバレてたのか・・・・!?)
さすがに親への反抗心から声をかけたのは、今考えれば不味かったと思う。
デートに誘うならもう少しちゃんとした理由を作るべきだっただろう。
しかし全てはおキヌちゃんを父親の毒牙から守るためにした事なのだ。理解して欲しいと思う。
そう思う一方、それって自分の独善じゃないのか、とも思う。
結局どう転んでいたとしても最終的な決定権はおキヌちゃんにあったのではないか。
自分がやったのは只の父親への憂さ晴らしで、少女を自分の都合のために
利用しただけなのではないか?。
なんだかんだ言っても根が優しいので色々考えて焦りまくる少年。
「美神さんとお父さんが一緒にいるのに邪魔しないなんて、
そんなの横島さんじゃないです!」
(そっちかい!!)
どうやら二人の考えている事は大幅にずれていたようだ。
椅子からずり落ちそうになる少年。
「ホントは邪魔したいんじゃないんですか!?
自分のやりたい事を我慢する横島さんなんておかしいです!
いつもいつも酷い目にあってるのに、懲りずに美神さんに抱きついてるじゃないですか!
何回怒られてもお風呂とか着替えを覗くのも辞めないし
初対面の女の人にも飛びつくし――――――」
「ちょ、ちょっと待って!
おキヌちゃん、ストップ!ストップ!!」
公共の場で普段の自分の行動を力説され、慌てて遮る少年。
しかし時すでに遅し、周囲の冷たい目が少年に注がれていた。
「警察に通報した方が・・・・」
「痴漢の常習犯か・・・・」
ひそひそと周囲が囁いているのが針のむしろといった感じである。
「そ、そろそろ出ようかおキヌちゃん!」
いたたまれなくなったのか、そそくさと店を出ようとする少年。
会計を済ませると言って、先にレジに向かう。
「せっかく良い雰囲気だったのにニャー」
「きゃッ!?」
いつの間にかテーブルの下に黒猫が潜り込んでいた。
「二人きりだったのに、これで良かったのかニャー?」
良くも悪くも好奇心旺盛なこの黒猫は、興味を惹かれたら行動せずに入られない。
遠慮も無しに聞いてくる黒猫を自分の膝の上に抱き上げる。
「うん・・・・これでいいの。
横島さんはちょっとスケベで抜けてる所もあるけど、いっつも明るくて・・・・」
膝の上で丸くなる黒猫を優しく撫ぜてやりながら続ける。
「それにすっごく優しいのよ。
横島さんは横島さんらしくしてくれるのが、私は一番嬉しいの。」
(ふーん、そういうもんニャのかニャ―・・・・。
でもあいつのスケベはちょっとどころじゃニャいと思うけどニャー。)
心の中で突っ込みつつもさすがに声には出さない。
一応好奇心を満たせて満足したのか、膝の上から降り店内をうろつき始める。
(ふふ、それに私が大好きなのはそういう横島さんなんですから♪)
心の中で呟き、少女はレジで待つ少年のもとへ向かった。
「じゃ、じゃあ魔鈴さんご馳走様でした!」
「はい、また来てくださいね〜♪」
挨拶を交わし店を出る。
さっきの周囲からの冷たい視線を思い出し
やっぱセクハラってマズいんだなあ、などと思っているが明日には忘れてるだろう。
時刻を確認すると午後9時を回ろうとしている。あまり時間の猶予は無い。
「さてと・・・・おキヌちゃんは美神さんの行き先って聞いてる?」
自分には教えてくれなかったが、きっとおキヌちゃんには言ってるだろうと期待を込める。
「えっと・・・・その、聞いたと思うんですけど・・・・
ご、ごめんなさい、忘れちゃいました!」
確かに雇い主は自分に行き先を告げた筈なのだが、自分は自分で少年との食事の事が頭が一杯で
記憶に全く残っていなかった。
「そっかー。おキヌちゃんも知らないんなら、どうしようも無いかなあ・・・・。」
うーんと唸り頭を抱える。『文珠』は今切らしているし何か方法はないものか。
「あ、そうだ!。
色んな人に聞いてみましょうよ!」
何やらアイデアを思いつき少女が顔を輝かす。
「い、いや、さすがに聞き込みじゃ何ともならないんじゃないかな・・・・?」
そもそもどうやって聞き込みをしたらいいのか。
そこら辺を歩いている人に聞いてみた所で、砂漠で米粒を探すようなものだ。
そうそう都合良く美神さんの情報が手に入るとは期待できない
「大丈夫ですよ、さあ行きましょう!」
言うや否や、少年を引っ張りどこかへ向かう。
しばらく歩くと近くの公園に辿り着く。
「ちょっと待っててくださいね♪」
いつも持ち歩いているネクロマンサーの笛を取り出す。
雇い主が常に神通棍を肌身離さないように、少女もこの笛だけは常に携帯していた。
夜の公園に笛の音が鳴り響く。
しばらくすると少女の幽霊時代からの知り合い達が続々と集まってきた。
『やあ、おキヌちゃん久しぶりだねー。』
『お仕事頑張っとるんかね?』
『久しぶりだねぇ、新入りが入ったんで挨拶させようと思ってたんだよ』
『あ、あなたがおキヌボスですか!?新入りですが宜しくお願いします!!』
今も昔も変わらぬ少女の人望に、あっという間に浮遊霊たちが公園に集結した。
中には以前少女に負けた石神も混ざっている。
何人かおかしなノリが混じっているがこの石神の影響だろう。
「あの、今日は皆さんにお願いしたい事があるんですけど・・・・」
自分の都合で突然呼び出してしまったので、申し訳無さそうな態度の少女。
実際は忙しい浮遊霊など、以前の少女くらいだろう。普通は年中うろついてるだけだ。
『おキヌちゃんのお願いなら一肌脱がねーとな!』
『あー、まったくだ!』
皆、そうだそうだと囃し立てている。
浮遊霊達の気の良さに感謝しながら、頼み事を告げる。
「美神さんを探してるんですけど、手伝ってもらえませんか?
もうあんまり時間が無いんです・・・・!」
切羽詰った様子にただ事ではないと感じ、急いで情報を交換し確認しあう。
残念ながら見かけた霊も何人かいたが、全て移動の途中だったらしく現在地は不明だった。
とりあえず探してみようという事で、皆散り散りに飛んで行ってしまった。
(くぅーーーーー・・・・・!!
こうしてる間にも時間が過ぎて行く・・・・!!
無事でいて下さいよ美神さーーーん!!)
只今の時刻午後10時。
夜はまだまだこれからである。
その頃、とあるホテル。
食事を終えた二人の男女がスカイバーで酒をかわしていた。
「ふふ、今日はご馳走様でした大樹さん。」
「いえいえ、忠夫の日常を教えていただいて、こちらが感謝したいくらいですよ。」
はははと穏やかに笑う男。その瞳は穏やかで柔らかい。
二人は少し歳が離れている位にしか見えないが、実際は親子程の年齢差があった。
「今日は大樹さんの機転のおかげで随分助かりました。
まるで一流のGSみたいでしたよ♪。」
「はは、素人の私が口出しするのは失礼かと思いましたが、お役に立てたようですね。
忠夫の奴もなかなかしっかり働いているようで安心しましたよ。」
目の前の女性と話をしながら、昨日、新しい友人と交わした言葉を思い出していた
『そう言えば、君は美神さんに気があるようだが、私が声をかけても構わないかな?。
前回の帰国時にも誘ったんだが、明日食事に誘おうかと思ってね』
『え、令子ちゃんを誘うんですか!?』
『ああ、だが君を蔑ろにしてまで誘うつもりではないからね。
君が反対するのなら諦める事にするよ。』
『・・・・・・』
なにやら考え込む長髪の男性。
『・・・・いえ、構いませんよ。』
『それはありがたいが、本当に構わないのかい、西条君?
無理をしているのなら遠慮する必要は無いよ。
一人の女性のためにせっかく出来た新しい友人を失いたくないからね。』
『はは、無理をしている訳ではありませんよ、大樹さん。
ただ、きっとあなたでは彼女を振り向かせる事は難しいと思うんです。
恐らくあなたならすぐに気付く筈ですよ・・・・。』
(ふむ・・・・あの言葉の真意はいったい何だったのだろうか・・・・。
嫌味や負け惜しみといった雰囲気ではなかったからな、何かあるのだろうが・・・・。)
「―――ん、大樹さん、聞いてくれてるんですか?」
ハッと我に返る。どうやら思索に没頭していて話し掛けられたことに気が付かなかったようだ
「失礼、少し考え事をしてしまいました。」
素直に謝る。下手に取り繕うより潔く非を認めるほうが相手も気にしないものだ。
「もう・・・。
あ、それでおキヌちゃんが急にいなくなったから―――」
少し不満気になったがすぐに機嫌を直して話の続きを始める。
今は以前幽霊だった少女が生き返った事件について話していた。
(GSという常識外の仕事の話が聞けるのは非常に面白いのだが・・・・。
ふむ、それにしてもよく喋るなあ。)
食事中も今もひたすら話しつづける目の前の女性を見て、少々意外に感じていた。
仕事中の姿を見ていたが、その時とはまるで別人だ。
しかし、大樹にはこの感覚に覚えがあった。
(うん?・・・・この感覚、以前にどこかで・・・・。
しかし随分懐かしい気がする・・・・どういう事だ?)
目を輝かせて話をする女性を見つめ、記憶を探る。
そういえば以前来日した際に食事に誘った時も、同じ感覚を覚えたような気がする。
その時は直後に馬鹿息子が乱入してきたので、今この時まですっかり忘れていたが・・・・。
息子の事を思い出した時、ようやくこの感覚の正体を思い出した。
(ああ、そういう事か・・・・。
西条君・・・・君の言ってた通りのようだね・・・・。
ふふ、こんな簡単な事をなかなか思い出せなかったとは・・・・私も、もう歳なのかもな・・・・。)
何かを思い出したようで心の内で安堵の吐息を洩らす。
楽しげに話しかける女性と、それに微笑みながら耳を傾ける男性。
二人の空間は柔らかな空気に包まれていた。
「ヤ、ヤバイーーーーー!!
もう11時じゃねぇか!!もう時間がないィィィーーーーー!!」
少年は焦りまくっていた。
父親と雇い主の携帯電話にかけてみたが両方とも電源が切られている。
探しにいった浮遊霊たちもまだ見つけることが出来ていなかった。
何か他に方法がないかと必死に頭を働かす。
(くっそォォォーーーー!何かあの二人の居場所を知る方法はないのか!?
おキヌちゃん以外で他に行き先を知ってそうな人は・・・・・・)
すぐに思いつくのは父親の片腕の眼鏡の男だが、残念ながら連絡先を知らなかった。
せめて名刺でももらっておけば、と考えた瞬間強奪した父親の財布を思い出す。
(もしかしたらこの中に・・・・・・・・・・あった!!)
父親の財布の中からクロサキの名刺を見つけ、取り出す。
少年は携帯電話を持っていないので公衆電話から電話をかける。
「はい、クロサキです・・・・。」
「もしもし、クロサキさんッスか!?
親父が今どこか知りたいんスけど、クロサキさんなら知ってますよね?」
電話に出た男に詰め寄る。
どことなく疲れたような声なのは気のせいだろうか。
「親父?・・・・ああ、忠夫君か。
大樹さんなら帝国ホテルですよ・・・・。」
すんなり教えてもらえたが、何か引っかかる。
そう言えばこの男は父親の浮気の共犯ではなかったか。
「・・・・クロサキさん、嘘じゃないッスよね?」
もし嘘をついているのなら本当の事を話す訳がない。
しかしそれでも確認せずにはいられない。
「・・・・ふう・・・・嘘ではないですよ・・・・。
それに・・・・今となっては、もはや隠しても意味のない事ですし・・・・。
ホテルの受付で・・・・私の名前を出せば・・・・部屋を教えてくれるはずです・・・・。」
何があったのか消耗しきっているようだ。
少し会っただけだが、そう簡単に動揺したりするタイプには見えなかったが。
多分本当なのだろうと思い電話を切る。
「おキヌちゃん!美神さんたちは帝国ホテルにいるらしいんだけど
一応、誰かに確認してもらえるかな?」
少年の言葉に頷き笛で浮遊霊たちに伝える。
しばらく報告を待つ少女。
「横島さん!美神さんたちはホテルの一番上の階でお酒を飲んでるみたいです!!」
浮遊霊たちが確認してくれた内容を少年に伝える。
「よしッ!すぐに向かおう!!
こっからならタクシー使えば30分位で着くはずだ!!」
浮遊霊たちに礼を言い、タクシーを拾うため急いで公園から立ち去る少年達。
二人の邪魔をするためなら貴重な臨時収入を使い切ることになっても悔いは無いのだろう。
すぐにタクシーを拾い、行き先を告げる。
父と子の最後の戦いが始まろうとしていた。
タクシーを降りホテルに突入を試みたが、あっさり失敗した。
入り口の回転ドアをくぐろうとした丁度その時、雇い主と父親がホテルから出てきたのだ。
「あ!美神さ―――」
「こんガキャァァーーーーー!!」
声をかけようとした瞬間、雇い主の右ストレートが少年の顔面に突き刺さる。
突然の衝撃に訳もわからず吹き飛ばされる少年。
「・・・・み、美神さん?」
息も絶え絶えに雇い主に問い掛ける少年。
いつもの事とはいえ見事に流血している。
「行く前に釘刺しといたにも関わらず、おキヌちゃんをホテルに連れ込もうなんて
良い度胸してるじゃないの・・・・・!!」
神通棍を取り出し霊力を込める。
彼女から放たれる霊圧は昼間の除霊のときよりも凄まじいかもしれない。
「ハッ!
ち、違うんやァァァーーーー!!
これはそういう事やないんやァァァァーーーーーー!!!!」
言われて初めて気が付いたが、確かにそう思われてもおかしくない。
目的はともかく一緒にホテルに入ろうとしていたのは事実なのだから。
「問答無用!!」
「いやァァァァーーーーーー!!!!」
大樹は自分の息子がボロ雑巾のようになったのを見届けると、何故か満足そうな顔をしていた。
うんうんと何度か頷いてすらいる。
「さてと、タクシー乗り場までお送りしようと思ったのですが、どうしますか?」
すっかり大樹の存在を忘れて、少年を殴り倒していたのだが、親の目の前で息子を撲殺しかけたので
さすがの美神も焦りを隠せない。
いつもの事とはいっても親の前でやっていい事ではないだろう。
「あ、い、今のはその・・・・」
謝るべきか怒られるべきかどうして良いかわからず珍しくオロオロしている。
「ん?
ああ、私の事は気にしなくて構いませんよ。
私も以前は馬鹿をやって、よく妻に説教されたものですしね」
昔を思い出したのか、楽しげな大樹。
予想外の反応にどうしていいかわからずポカンとしている
美神とおキヌをタクシー乗り場まで案内する。
「それでは美神さん、今日は楽しいお話をありがとうございます。
ああ、それと、忠夫は私が拾っておきますので気にしないで下さい。」
それでは良い夜を、と女性二人を送り出し、息子を拾いに戻る。
戻ってみるともう殆ど回復しており、普通に動けるようになっていた。
「やれやれ、あれだけボロボロだったのにもう治ったのか。
GSってのは皆そんなに頑丈なのか?」
呆れながら息子に問い掛ける。
「へん、美神さんと付き合うんなら
これくらい出来なきゃとっくに死んどるわ。」
納得できるような納得できないような良くわからない理屈である。
「そんなことより、てめェー美神さんに手ェ出しやが―――」
「安心しろ。食事して酒呑んだだけだ。」
あっさり否定するが、そんな事を信じられる筈も無い。
噛み付こうと父親の方に向き直るが、その表情は嘘をついているとは思えなかった。
父親の表情はいつもの小馬鹿にしたようなものではなく、むしろ真面目な雰囲気の方が強い。
今まで滅多に見た事が無かったので少年は気がついていないが、それは紛れも無く『親』の顔だった。
「まあ、座れや」
突然近くの段差に腰をおろす父。
スーツで地べたに座り込むなど普段の父なら絶対やらない筈だ。
いつもとあまりにかけ離れた雰囲気に戸惑い、反抗するでもなく一緒に腰をおろす。
「お前、美神さんとおキヌちゃん、どっちが好きなんだ?」
いきなり真面目な顔でそんな事を言われてもどう反応すれば良いかわからない。
ここはとりあえず――――――
「もちろん、俺の理想は両手に花に決まってるぜ!」
いつものようにギャグで答える事にした。
が、父親はじっと少年の顔を見つめている。
「・・・・それはどっちも選べないってことじゃないのか?」
「いや、俺はどっちも欲しいんだよ・・・・。」
父親の態度がいつもと違いすぎるのでどうにもやりにくい。
急に真面目な話をするなんてどういう風の吹き回しだろうか。
「忠夫・・・・一つだけ覚えておいてくれ・・・。
欲しいもの、大事なものをいつでも全て手に入れる事が出来るとは限らないんだ。
時には一つだけしか選べない事もある・・・・。
そういった状況に追い込まれてしまった時に、後悔しないためにも
自分は今、何が一番大切なのか、答えられる様にしとくんだな・・・・。」
遠い目で何かを思い出すかのような父親に、少年は何も言えなかった。
心の中でさっきの質問を真面目に考えてみたが答えはすぐには出せなかった。
冗談で答えたさっきの答えは間違いなく少年の本心でもあったのだから。
「さて、じゃあ俺はこれから約束があるからな
これで家まで帰るんだな。」
立ち上がり、少年に紙幣を渡す。
家まで帰るにしては余裕で釣りがでる。
「けッ、また浮気か?」
つい3日ほど前に、金で浮気を誤魔化されたので思わず噛み付く少年。
言われた父親は困った顔で首を横にふる。
「はは、信用無いんだな。
これから新しく出来た友人と飲む予定なんだよ。
お前も顔見知りだろうし、一緒に来るか?」
未成年だから酒は出してもらえないだろうけどな、と付け足す。
「西条と飲むくらいなら、家で一人で
ゴロゴロしといた方がましだっつーの」
浮気じゃないなら邪魔する必要も無いので、
あっさり興味を失い自分もタクシー乗り場に向かう。
(・・・・ま、今更父親ぶったところで、聞くわけないよな)
息子の後姿を見送りつつ、さっきの会話を思い出す。
恐らくあの子は優しすぎる・・・・。それこそ危ういほどに。
さっきの台詞もふざけている風に装っていたが、限りなく本心に近いだろう。
昼間の除霊を思い出しても、一番危険な役割は最終的には自分で志願していた。
ただの臆病者なら上司がやると言ったときにあっさり任せていたはずだ。
親としては危険にも怯まず立ち向かう姿勢は喜ばしいが、どことなく危うく感じた。
何より、自分が傷つく事にもあまり頓着していないようだったが、果たしてそれで大丈夫なのか。
周囲を守ろうとして、いつか取り返しのつかない傷を負うことにはならないだろうか。
もしそうなった時にあの子は乗り越える事ができるのか・・・・。
そこまで考えた時、息子の事務所の仲間を思い浮かべる。
美神令子・・・息子の雇い主で凄腕のGS。息子の師匠として文句など有る訳が無い。
氷室キヌ・・・息子の同僚の元幽霊の少女。その特殊な前歴からか、誰よりも慈愛に満ちている。
二人を思い出し、穏やかな笑みを浮かべる。
彼女達なら大丈夫だろう。いつかあの子がつまずいて、立ち止まるような事があっても
あの厳しい雇い主があの子の尻を蹴飛ばして前に進ませてくれるだろう。
あの優しい少女があの子の手を引いて立ち上がらせてくれるだろう。
そばで我が子を見守る事さえ出来ない情けない父親の代わりに、きっと彼女達が息子を守ってくれる。
自分にできるのは彼女達を信じ、そして息子の成長を信じる事くらいだろう。
何年ぶりか本心から我が子の身を案じる自分を自覚し、身勝手なものだと呆れる一方
この程度のことが自然に出来なかった自分が情けなくなる。
無性に酒を飲みたくなり、足が自然と約束の店のほうに向かう。
きっと彼はもう来ているだろう。たまには男同士で酒を飲むのも悪くない・・・・。
特に今のような気持ちの時は・・・・。
男は複雑な感情を上手く処理できないまま、待ち合わせの店へ向かった。
BARのカウンター、二人の男が隣り合い座っていた。
一人は眼鏡をかけたサラリーマン風の中年の男、漂う雰囲気からか只のサラリーマンには見えない。
もう一人は腰まで届く長髪の若い男、サラリーマン風の男に比べれば遥かに若かった。
「君の言うとおりだったよ西条君・・・・。」
中年の男がウイスキーが注がれたグラスを傾ける。
グラスには氷が浮かんでいた。
「あなたならすぐに気付かれると思いましたよ・・・・。」
若い方の男も同じようにウイスキーをロックで傾けている。
「ああ、すぐに気が付かなかったのが情けない限りさ。
彼女が私に見ていたのは『父親』の影だった・・・・。」
やれやれと頭を振りながらうなだれる。
「彼女の話す様子はまるで・・・・
その日の学校であった事を話す、子どものようだったな・・・・。
まだ日本にいた頃、学校から帰った息子が無邪気にはしゃいでいた姿を思い出したよ・・・・。」
(おかげで久しぶりに柄でもないのに父親みたいに振舞ってしまった。
正直そのような資格が自分にあるとも思わないが・・・・。)
「彼女の家庭は色々と事情が込み入った家庭なので・・・・。
令子ちゃんは愛情に・・・・特に家族の愛情に飢えているんですよ・・・・。」
若い男がグラスをあおる。
喉を焼く感覚に顔をしかめる。
「僕は彼女にとってはいつになっても『兄』なんですよ・・・・。
『男』としては・・・・正直、見られていないのでしょうね・・・・。」
自嘲気味に笑うとまたグラスをあおる。
グラスにはすでに氷しか残っていない。
「それでは振られたもの同士、今夜はとことん飲むとしようか・・・・。」
気が付けば二人ともグラスが空になっていたので追加を注文する。
「ふふ・・・・そうですね・・・・。
でも僕はまだ、諦めた訳じゃないですよ・・・・。」
いつかきっと、と呟くが力が無かった。
(西条君には悪いが・・・・今彼女が『男』として見ているのは、忠夫だけのようだな・・・・。
それを彼も自覚しているからこそ、忠夫と反りが合わないのだろうが・・・・。)
息子が一人前の男になったと彼女に認められるまでは、彼は諦めないのだろう。
例え自分の勝ち目が薄くとも、最後まで諦めようとしないこの新しい友のひたむきさに胸を打たれる。
(決して諦めない、か・・・・これが若さだろうな・・・・)
自分が失ってしまったものを感じながら、
大樹の日本での最後の夜がふけていった。
―後書き―
6日目が終了しました。
残るは7日目、大樹氏の帰国です。
次回でエンディングとなります。
ちなみに今回で父と子がやんわりと和解しています。
※西条さんが邪魔しなかったのは、大樹が自分を『男』として見ていない相手には
手を出さないという確信があったからです。
確信した理由は同類故のポリシーを感じ取ったのでしょう。
今までの
コメント:
- ああっ!!大樹がいい人になってる
話自体は面白いが、この胸に溜まった鬱憤はどこにぶつければいいのかぁっ!
てなわけで中立 (alc)
- 大樹の場合西条以上に手が出せないかもしれないですね。大樹と百合子さんの関係は美神さんが話を聞いて自分と照らし合わせてしまうくらいそっくりなもの。妻そっくりの相手に父親として見られちゃなあ。まだ部下や丁稚として見られてるほうが認めさせるってことでやる気がわきますよ。すでに認められてるのにそれが望んだ認められ方じゃなかった場合どうすりゃいいんだ。
余談ですが、邪魔しにいくのを勧めてしまうおキヌちゃんはほんとに横島の理解者だなあ、と感じました。横島に負けず劣らず優しすぎる子だよ。 (九尾)
- な、なんやーーーーーー!!
あ奴が、横島大樹がなんかいい奴になっとるーーーーーーー!!
こんなことがあっていいのかぁ〜〜〜〜!?
って、いいのか (太った将軍)
- 外道親父が突如いい人に!?(びっくり)
前話を踏まえての心情の変化で和解に持っていった手腕と、結局痛い目見る横島に芸人魂を感じたので……賛成(笑)。
でも、ロンゲとジゴロには、もうちょっと痛い目を見てもいいような気がするなぁ……(笑)。 (すがたけ)
- >alc
>この胸に溜まった鬱憤はどこにぶつければいいのかぁっ!
安心してください。基本的にギャグなんで次回に期待してください。
例え良い人になってもすでに犯してしまった過ちはなくなりませんからねぇ(笑)
>九尾さん
>邪魔しにいくのを勧めてしまうおキヌちゃんはほんとに横島の理解者だなあ、と感じました。
やっぱりおキヌちゃんに謀略や駆け引きは向いてなさそうですからね。
何よりも横島君を一番に考えて行動してる感じですね。
>太った将軍さん
あれで大樹氏も能力のある人ですから・・・・。
煩悩を取り除けば良い親になると思うのですよ。
横島君も煩悩を削ればシリアスになりますからね。
まあ、その辺もよく似た親子だと思っていただければ・・・・(笑)
>すがたけさん
>ロンゲとジゴロには、もうちょっと痛い目を見てもいいような気がするなぁ……(笑)。
ロンゲはまだ未定ですが、ジゴロの方は次回『あの人』が降臨する予定です。
っていうか大樹氏が出てるのに『あの人』が出てこないなんてあり得ないですよね(汗) (丸々)
- ↑ごめんなさい
alcさんだけ「さん」が抜けていました(汗) (丸々)
- 再度の書き込みで申し訳ありません。
クロサキ君という『耳』や『眼』を持たない百合子さんがどうやってヤツの行状を知るか、と思ってたけど……思い出して、もう一回読み返しました。もしかして『ピ――――!』さんが絡んでくるですか?!
だとしたら、最初からの伏線をここで炸裂させる、ということですか!?すげぇ……すげぇよ、丸々さん! (すがたけ)
- 遅レス失礼します。
さて、横島親子が無事和解したようで、兎に角にもよかったです。ただ、まだ最終日が残ってるとなると、何やらどんでん返しがありそうで怖いですが……。
西条さんも、そう言う事だったんですね。美神さんが可愛かったです。何気に横島くんの自慢をしてるとことか、気を使ってたりとか……。
本当に楽しめました。と言う訳で、賛成票を。 (竹)
- >竹さん
>まだ最終日が残ってるとなると、何やらどんでん返しがありそうで怖いですが……。
最終日はエンディングの予定なので、あんまりどんでん返しはないかと(笑)。
色々まいた種を回収しないといけないので、その辺を楽しんでいただければ嬉しいです(^^ (丸々)
- 今回は大樹は勿論の事、終始沈ち着いた対応を見せる輝彦が印象的でした。
原作では登場以来の扱い(笑)からつい忘れがちですが……忠夫との年齢差はざっと11年、社会人であるのみならず第一線で陣頭指揮を取るほどの人物なのですから、人間に対する観察眼という物も忠夫のそれとは比較にならないくらいに養われてきているのでしょうね。更に経験豊富な大樹の厳しい評価もありますが、それでも「お兄ちゃん、がんばって!」と声をかけてあげたくなりましたね。
さて、最終日?は果たしてどーなる? 楽しみ楽しみっ。 (Iholi)
- >Iholiさん
今回の主役は実は最後の二人だったりします(笑)。
結局美神さんが欲しがっているのは「家族」ということを表現したかったのですが。
上手くいったかどうか不安……。
彼女の仕事の性質が原因なのか、それとも性格が原因なのかは謎ですが、友達も少ないですからねえ。
美智恵さんもまだ死んだ事になってるので、やっぱり家庭に憧れているのではないかと思いました。 (丸々)
- こちらでは久しぶりにコメントさせて頂きます。親父が、「父親」っぽい!
しかしおキヌちゃんの反応が・・・。よく理解されてるじゃないか横島くんw。
>安心してください。基本的にギャグなんで次回に期待してください。
安心しましたw。 (GAULOISES46)
- >GAULOISES46さん
たまには『父親』な大樹さんでした(笑)。
最終話はそろそろ詰めの段階なんで、もう少しで完成しそうです。
ちょっと長めなので時間掛かっちゃってます(汗)。 (丸々)
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