GSまにゅある
投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(05/ 5/18)
――某月某日――
「くっ……油断したっ…!!」
「美神さーーん!!」
――美神令子――負傷――
「あ〜…こりゃしばらくは動くのは無理ですな」
「そんなっ!弱い割には報酬がケタ違いのボロい仕事が入ってるのにっ!!」
――入院生活に突入――
「まー、しゃーないじゃないっスか。健康第一ですよ、美神さん」
「と言いつつ、動けないのをいい事に…とか考えてない?」
「まさかぁ〜。今の美神さんにセクハラしたら、俺ただの悪者じゃないですか」
「普段だと違うのかっ!?ったくもー、こうなったら横島!あんただけであの依頼やっときなさい!」
――自らの代理に助手の横島忠夫を指名――
「そ、そんなん無理!無理っスよ!!ムチャ言わんで下さい!」
「あんたもこないだ、マグレとは言えGS免許取ったんでしょーが!いーからやれっ!!」
「い、いやでも…誰か、助っ人呼んでもいいですか?」
「ダメよ!その代わりと言っちゃーなんだけど、事務所の所長室にある虎の巻持ってっていいわ。あれを読んで除霊したら、間違いなく実力は上がるから」
――その際、手引書を横島忠夫に貸与――
「虎の巻にあった通り、何か良く解らんほど色々持ったし!よーーっし!行くぞおキヌちゃん!」
「はいっ!死なない程度に頑張りましょう!でも、もし死んじゃったら一緒に迷いましょうねっ!」
――横島忠夫とおキヌによる除霊作業が決定――
――以降は、彼ら2人の作業の様子を記録したものである――
「………………ダカラ…イッタノニ…ソウ…ソウダヨ」
机という机はひっくり返り、棚もいくつかは倒れ、床に物が散乱した荒れ果てたオフィスの中。
ブツブツと何かを呟く、陰と影を纏った幽霊がそこにいた。
この幽霊。生前はここに勤めるダメ社員だったが、彼は他の社員への見せしめとして皆の前で激しく怒られ、罵られ続けていた。
その恨みが相当に溜まっていたのだろう。不慮の事故で死亡したのだが、幽霊になるや職場へとやってきて、溜まったものを吐き出すかのように暴れ始めたのだ。
そして暴れるうちに理性をなくしてゆき、周囲に動くものが無くなった現在、大人しくはなったがまだ成仏しないので祓ってくれ。というのが今回の依頼なのだが…
横島はのっけからビビっていた。
「帰っちゃダメかな、おキヌちゃん」
「ダメですよー。美神さんに怒られちゃいますよ」
「ううっ、確かに悪霊より美神さんの方が怖いっ…」
壁の陰から相手を伺い、おキヌに促されてようやく横島は覚悟を決めた。
腰は引けているが、拳を固めてバンダナを強く締めなおす。
「だいじょーぶですよ、横島さん!ほら、美神さんが虎の巻を持たせてくれたじゃないですか!」
「おお、そーだったっけ!」
現金なまでに態度を変えて、嬉々として背負ってきた荷物から虎の巻を取り出す横島。
虎の巻、というだけあって古めかしい巻き物で、なにやらいかにも凄い事が書いてありそうだ。
これなら俺でも何とかなるかも。そう思って巻物を紐解いた横島だったが、開けた途端にその期待は裏切られた。
「ってなんじゃこりゃー!」
そこに書かれていたのは、古めかしい巻き物という外見に相応しい古めかしい文字。当然ながら現代の普通の高校生に読めるものではなく、ましてや普通の高校生の知識すら怪しい横島に読めるはずは無い。
しかし、救いの神は彼を見放さなかった。
「あ、だいじょーぶです。これなら私が読めますよ」
「マジで!?」
当時、姫の友人だったというコネからか、それとも孤児として預けられた先で教育を受けられたのか、300年の幽霊ライフで学んだか。
理由は定かではないが、おキヌは文字の読み書きが出来た。その300年のキャリアは伊達ではないらしく、彼女は古文書…と言うほどでもないかもしれないが、巻き物の文字を読み取る事が出来た。
「よし。だったらおキヌちゃんがそれを読んでくれ。俺はその通りにやるから!」
「はい!頑張ってくださいね横島さん!」
即席ながらも、役割分担が出来てコンビ結成。彼らはようやく本格的に除霊に取り掛かった。
そして――
「え〜っと、まずはお札を用意してください」
「いくらくらいの?」
「う〜ん…50万円くらいでいいんじゃないですか?」
ふと、頭の隅に安いお札で退治して、差額をポッケに…というヨコシマな思考が頭をよぎるが、つい先日50円のお札を始め、安い札から使っていってかえって赤字になった経験を思い出して45万円のお札を用意する横島。
それでも微妙に額が減っている辺り、彼の小心かつヨコシマな性格が出ているようで微笑ましい。
「ん。用意したよ」
「それでそれを額に当てて、霊力を込めて――」
「霊力だね」
おキヌの言に従ってお札に霊力を込める横島。しかしおキヌの言葉には続きがあった。
「――込めてはいけません」
「へ?」
BOM!!
横島のマヌケな一言と同時に、霊力が込められたお札が爆発する。
そもそもお札とは霊力でもって起爆する、霊的な爆弾のようなもの。この結果は当たり前と言えた。
「お、オキヌちゃん〜!?」
「ち、違いますよ!?わたしは書いてあった事を読んだだけで…」
「いや、そんなはずは…ってしまった!?」
これまでも充分騒がしかったが、お札の爆発が致命的だったらしい。興味を持ったらしい悪霊が、2人の方を向いて、歩き出したのだ。
「…モカ……モカ……オマエタチモカ……」
俯き加減にブツブツ言いながらゆっくりと歩いてくるその様には、不気味な怖さがある。
それにあっさりパニックを起こし、焦ったドラ○もんの如く道具を荷物から次々取り出しながら、おキヌを促す横島。
「おキヌちゃん!!おキヌちゃん!!次!次の読んで早くー!」
「え、え〜っとえっと〜…精霊石を飲みこんで――」
「精霊石だねっ!?」
「――はイケマセン」
「イカンのかいっ!!次!」
「あ、今度のは何か良さそうですよ!値段の違うお札を3種類以上混ぜて使うと――」
「破魔札、吸引札と…結界札!くらえ悪霊〜!!」
「――大爆発を起こすので、絶対にやってはいけません」
………………………………
「そ、そーゆー事は早く言ってくれー!!」
「横島さんこそ、最後まで聞いてください!!」
後ろを向き、階段目掛けて一目散に駆け出す横島とおキヌ。
そしてその場にはゆっくりと歩く悪霊と、光りを放ち始めたお札だけが残され…
DGOOOOOONNNN!!!!
どこぞの暴走プリンセスよりは小規模ながら、大爆発を起こしたのだった。
そして事後処理が出来るわけでもなく、美神のいる病院へと逃げ帰った横島とおキヌは、美神へ虎の巻の事を叫んでいた。
「なんなんスか!このふざけた虎の巻はっ!」
「そーですよ!全然役に立ちませんでしたよ!」
「あ〜、やっぱアンタたちもそう思う?」
だがそれを受けた美神は苦笑してそう返すと、こんな事を語りだす。
「霊能者に代々伝わってる物なんだけどね…いや〜、最初は弟子に対する師匠の冗談として作られたらしいのよね、これ。でも、それをやられた側からするとさ〜。やっぱり自分だけやられっぱなしってのは、イヤじゃない?で…」
「代々、弟子に対する嫌がらせとして受け継がれてきた、と。なんか体育会系のイヤな伝統儀式みたいっスね…」
「ま、似たよーなもんよ。で、おキヌちゃん、こいつの様子がどんなだったか、聞かせてくんない?」
ニヤニヤしながら、美神はおキヌにそう言った。
どうやら自分の入院中の退屈しのぎに、横島にこの儀式をやらせたらしい。
「え〜っとですね。まず悪霊さんを見て、逃げようとしましたね。でも私が美神さんに怒られますよって諭したら――」
語りだすおキヌを他所に、横島は出来うる限り気配を消し、息を殺して部屋から抜け出した。
今回美神も多少の赤字は覚悟しているだろうが、さすがにビルを半壊させたとまでは予想していまい。
バレたら殺される。その前に逃げねば。
部屋を出た横島は、自分のアパートへと全速力で駆け出した。
後日。
実は依頼の条件にビルなどの被害は保障しなくて良い、というものが今回は入れてあり、赤字どころか黒字までしっかり出ていて逃げなくても良かったのだ、と知るまで横島の逃亡は続いたという。
しかも、逃げたのが気に入らない、という理由でやはりお仕置きはしっかりとされたらしい。
一応儀式は達成したのだから、と美神からもらった虎の巻を握り締め、横島は誓った。
「絶対、俺もこの儀式を誰かにやらしてやる――!!」
と。
それを受ける事になるかもしれない、人狼の少女との出会いは――
もう、しばらく先の事である。
<完>
今までの
コメント:
- さぁ、さっそく見に来ました!正直に面白かったです。
シロと横島の今後の展開にも期待できます。
おキヌと横島のやり取りもうまく書けていてすごいなぁと思いました。
に、してもMAGIふぁさんの作品はおもしろいなぁ。その、パワーを是非私にください(笑。 (never green)
- かくして、伝統は受け継がれる……か。
でも、古文書に頼るかどーか、人狼族の娘さんは?
霊波刀一辺倒で頼りそーにないんですが。
はう!そー言えば、美神の師匠って……唐巣神父!
神父のイメージがー(笑)! (すがたけ)
- どうも〜おやじと言います。
なんか嫌な伝統だなぁ……俺も覚えがあるけど…(←体育部所属)
かなりおもしろかったです。言うことを最後まで聞かないのが横島らしい(笑)
逃げたのが気に入らないってのは理不尽で美神らしいですね〜 (おやじの戯言)
- いえいえすがたけ様、一概にそうとは言えませんよ!
霊波刀一辺倒だからこそ普通のやり方も学ばなければいけない、という流れになった時ニヤリと笑う横島!とかなら充分いけます(笑)!
時期的にはGS試験後香港前ですね。単行本にして一刊半分しかないという、まるで大正時代のようにあっという間のあの時期。まがいなりにも免許を取ったり除霊委員になったりしてる以上、色々あったのかもしれませんね〜。 (九尾)
- シロなら簡単に古文文章を読めるんじゃないかな?
「何をいうで御座るか?先生、精霊石は使ってはいかんで・・・って、せんせー!」
『BOMB!!!』 みたいな (トンプソン)
- >never greenさん
ありがとうございます。しかしシロだとあっさり天然ガードで回避しそうで、オチが見当たらず、続きは書けなかったり。
>すがたけさん
神父……そこまで考えてませんでしたが、言われてみれば。
若い頃に六道家からでもやらされて、巻き物しまったまま忘れてて、で、ある日出て来て「懐かしいなぁ…」「先生、なんですかそれ?」「うん?これはね…」と美神とやり取りしながらふとイタズラ心が、というあたりでどうでしょう。
>おやじの戯言さん
あ、やっぱりあるんですかw>体育会系の伝統
>九尾さん
あったんでしょうねぇ。色々。でないと香港の栄光の手が唐突すぎw
>トンプソンさん
それだとまた横島が引っ掛かってませんか?w (MAGIふぁ)
- 初めまして。
原作みたいなのりでおもしろかったです。 (たてじま)
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