風。
投稿者名:Arih
投稿日時:(05/ 5/22)
「風。」
少し陽射しの厳しい時間帯もようやく終わりを告げ、街は夜を迎えようとしている。
風はない。このくらいならそれでちょうど良い。
道行く人の足がどこか浮ついている。今日はこの後なにをしようか。晩御飯は何かな。そんな声が聞こえてくるようだ。
大抵の人はこの後にあるプライベート・タイムが楽しみで仕方が無い、この夕方と言う時間が、私は嫌い。
アイツの悲しそうな顔が嫌い。懐かしむような顔が嫌い。悩む姿が嫌い。なにより、なんでもないと装うのが嫌い。
――ナンデコンナニサムイノダロウ――
……やめよう。その先にまで進んでしまうと、きっと大切な何かが失われる。
振り切るために書類に没頭する。
「美神さん」
……ようやく追い出せたのに。不機嫌さを隠しもせずに応える。
「(ビクッ)……折り入ってお話があるんスけど」
その言葉に先ほど想像してしまった未来が脳裏に浮かんでしまう。呼吸が止まる。喉が引きつる。声が出ない。
風が吹いた。
さらっていくかのように。
凍えさせるかのように。
「実は」
嫌。駄目。待って。
「俺、真剣に考えたんですけど」
言わないで。
「やっぱりその方がいいと思いまして、だから……」
行かないで……!
「結婚して下さい」
……へ?
「いえ、もう俺たちも付き合ってだいぶ経ちますし、アイツのこともちゃんと踏ん切りがつきました。何より俺は美神さんとのことを真剣に考えています」
一際大きな風が吹く。
何かをもたらすために。
「今ならハッキリと言えます。俺は、あなたが、す、す、す、好きですっ!」
…………なんだ、そうだったのか。
「美神さん?」
もう風は止んでいて。
赤い陽射しが暖かい。
「あのぅ? 美か」
「良いわよ」
そいうことなら……
「え?」
鳩が豆鉄砲、と言うやつだろうか。驚きしか表せていない彼の顔にチョットだけムッとしたので、イジワルをすることにした。
「でも、今すぐはダメ。少なくとも、アンタがGSとしてもっとしっかり……最低でも私と肩を並べるくらいになったら、結婚してあげるわ」
「……はいっ! がんばりますっ!!」
『クスッ』
人口幽霊壱号、あんたうるさいっ!
―おしまい―
後書けば後書くとき(五段活用中途半端)
これは某氏の発案、「美神ツンデレ祭り」参加作品です。
では次の人、わたしのフォロー頼みますっ!(←最悪)
今までの
コメント:
- ツンデレ祭り第二弾……てか、次鋒(挨拶)!
『心に吹く寂寥の風、止めるは太陽のその言なり』てな感じでしたね。文章も柔らかく、素直に浸透する感じで……良かったです。 (すがたけ)
- 寒い風が吹いていた美神の心も、今ではすっかり温かい風が吹いているんですねぇ。
イジワルをする美神さんがかわいいですw
ツンデレ美神祭り〜/・∀・)/ バンザイ! (ちくわぶ)
- キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ツンデレ美神祭り!
相変わらず文の流れがうまいですね。
最後の人口幽霊壱号がいい味だしてます。
では次回作に期待しています。 (never green)
- ↑あぁぁ、すいません。賛成票入れ忘れました。
さて第三弾は誰になることやら・・・。 (never green)
- こんばんは。甘甘モノ初書きのため顔から火の出る思いのArihです。ではレスを。
>すがたけさん
未発表にしておいたものを大幅に改訂して投稿したのですが、こっちのほうが変化球っぽくなってます。それが功を奏したようなので良かったです。いや本当に。
>ちくわぶさん
実は順番的にツンデレでなくてデレツンになってたり(汗
私の中の美神さんはこんなキャラなので甘いままでは終わりません。というか笑いの要素を入れようとするのは私の悪い癖になってる気がしてなりませんが(笑
>never greenさん
まだまだ上手い人は上にたくさんいるのでこれからも頑張ります。never greenさんがよければこれからもお付き合い下さい。
人工幽霊壱号はオチに困って強引にひねり出したものなので好評価は意外だったりして(笑 (Arih)
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