ザ・グレート・展開予測ショー

そして長くて短い眠りへ


投稿者名:まぐまっぐ
投稿日時:(05/ 6/ 3)


ちちちちち・・・

鳥のさえずりと風によって葉がこすれる音がよく聞こえる。

周りには人気も霊気もなく、周りにはうっそうと草木が生い茂っているだけだ。

その様子はこの世のものとは思えないほど神秘的なものであり、私はそんな中道なき道をただひたすら歩き続けている。

私・・・金毛白面九尾であるタマモと私の夫だったヨコシマと初めて出会った場所に向かって・・・





最初、私はあいつには何も興味がなかった。

ただおせっかいであり、スケベであり、いつも煩悩全開であり、ただそれだけであると思っていた。

だから、あの馬鹿犬を初め、多くの女性があいつに惹かれる理由が全く分からなかった。

でも、ある時の出来事で私の気持ちを全く反対方向に変えてしまった。

夕日がすごく綺麗だったとある日の夕方、その夕日を見るあいつが今まで見たことがない表情だったのを見たことによって私の心はわしづかみにされた。

最初は自分の気持ちが嫌だった。

金毛白面九尾である私がなんであんなスケベで馬鹿なやつに惹かれるのかとひたすら自分の気持ちを欺き隠し続けようとしたけど無理だった。

あいつのそばにいる時間が多くなればなるほど、心の傷を持っているのにもかかわらず周りに心配をかけないように必死で振舞っているあいつの強さと私のことを九尾ではなく一人の女性としてみてくれるやさしさにどんどん惹かれていって、気がつけばあいつの虜となっていた。

そして、気がつけばシロと共にヨコシマと結ばれていた。

もちろん日本は一夫多妻制は認められていないので形式上では私達は結婚は出来なかったが、それでも毎日をあいつや馬鹿犬と過ごしてられて前世とは思えないくらいに楽しくて幸せな毎日だった・・・





山に入って小一時間くらいたっただろうか。

私は目的の場所についた。

見た目は周りとは全く変わらないが私にとってはもっとも重要な場所・・・

ここで私はあいつと出会い、そして私の運命がすべて変わっていった。

もし、私がここで会ったのがあいつじゃなくて別の誰かだったらどうなっていただろう?

ふと頭にそんな疑問がよぎるが、すぐに頭を振りその考えを追い払った。

私にとってあいつと出会わない世界は考えられないし、今の私以上に幸せなことなんてありえない。

そんなことを考えながらも回りを見回したがあたりはあの時とはうってかわって明るく、清々しい空気が漂っている。

あの時は確かに追われており死と隣りあわせだったためにそのようなことは一切感じずにむしろ禍々しい雰囲気を感じていたために少し驚いてしまう。

でも、そのほうが好都合だ。

私は今からここで何百年も眠りにつかないといけないのだから・・・





ヨコシマとシロはつい先日、この世を去った。

死因は高齢による老衰死。

二人とも同じ日の同じ時間に息を引き取ったのだ。

私はその様子をずっと見守っていた。

うっすらと前世のことが記憶にあったが、これほど悲しかった別れは一度もなかった。

心から本当に愛した人と心を許し会った友が自分を置いて逝ってしまうのを見守らなければならなかったことは今までなかったからだ。

涙を一杯ためながら必死に声をかける私に二人がかけてくれた最期の言葉・・・それは「おやすみ(でござる)」だった。

最初は悲しみのせいでその言葉の重要性に気づかなかったが、落ち着くにつれてあいつが何を言いたかったのかがだんだんと分かってきたのだった・・・





最期のあいつの言葉を思い返しながら私は自分の寝床を作っていた。

誰にも邪魔されずに、それでいていつでもあいつと馬鹿犬が還って来たときにすぐに分かる場所を作るのには苦労はかからなかった。

周りに結界を張り、私は狐の姿になる。

これで準備は整った。

あとは以前と同じように殺生石となりあいつらが還ってくるまで眠り続けるだけだ。

そのときは今度は私があんたを惚れさせるんだから覚悟しなさいよ、ヨコシマ!

そう思いつつ私は寝床に体を横たえて目を閉じ、自らの体に封印をかけていく。

段々と体が石になっていくのを感じながら私は心の中でつぶやいた。

おやすみ・・・ヨコシマ、シロ・・・

そうして、私の体は完全に石になり、長い眠りについたのであった。






あとがき

初めまして。まぐまっぐと申します。
久しぶりに文章を書いたので不自然なところがあるかもしれませんが、そこは厳しく指摘してやってください^^;
シロタマスキーな私ですがこれからもよろしくお願いします。

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