ザ・グレート・展開予測ショー

吟詠公爵と文珠使い 番外編 a sweet and long night with her(前編)


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 4/16)

「何だよ、話ってのは・・・」
「ええ、実は・・・・」
場所はとある公園。そこに配置されたベンチに並んで腰掛け、若い一組の男女が初々しい空気を醸し出し、何やら話し込んでいた。

読者諸兄もご存知の通り、男は生粋の戦闘狂こと伊達雪之丞。もう一人はそんな彼の恋人、弓かおりの二人であった。

そして、彼女は雪之丞に、突然呼び出した理由を告げた。

「父に会って欲しいんですの・・・・・」
どうやら、この前、贈った耳飾りが弓の父の目に留まったらしい。それで「この耳飾りの贈り主の男を連れて来い」と弓は言われたのだった。

それを聞いた雪之丞の脳内劇場。
『御義父さん!! 娘さんを僕に下さい!!』
『戯言を抜かすで無いわ!! 貴様のような青二才に娘はやれんわ、娘が欲しくばこのわしを倒していけい!!』
『いいだろう。その言葉、後悔するなよ!!』
『せええええい!!!』
『甘いわ!! 小僧、渇――――――ッ!!』


・・・・・・・・・・・・・・・・・

以下略


「雪之丞?」
「はッ!? 悪い、思考が可笑しな方向へ飛んでいたらしい」

「まあ、それはそれとして・・・・・このこと、心に留めておくように、いいですわね?」
弓の言葉に雪之丞は、戸惑いながらもしっかりと頷いた。



場所は変わって、横島の屋敷兼事務所。
「というわけなんだが・・・・・」
「何が、というわけだよ・・・・」
何処か浮ついた様子の雪之丞に相槌を打ちながら、横島は溜息をついた。弓に呼び出されたかと思えば、今度は血相を変えて、帰って来たので何事かと、話を聞いてみれば何の事は無い。

単に「恋人の父親に会って欲しい」と言われただけではないか。

もっとも当事者である雪之丞にとっては、一生の一大事かもしれないが。

「それで・・・・弓さんの親父さんというのは、どんな感じの人だ?」
「ああ、それなら弓から貰った家族写真に写ってるぜ、ほら此処に・・・・」
そう言って雪之丞は、懐から取り出した写真の真ん中辺りを指差した。
「どれどれ、あー、成程・・・・・これはいかにもって感じだな・・・」

写真に写っていた弓の父親は横島の言葉どおり、如何にも頑固そうな人物だった。

わかりやすく言うならば『現代に蘇った武蔵坊弁慶』または『比叡山の僧兵』という言葉がピッタリと当てはまる。長刀片手の筋骨隆々の屈強な僧侶であった。これからも解るとおり、弓は間違いなく、母親似だ。

「それで・・・・おれにどうしろと?」
「頼む!! 弓の実家に付き添いで来てくれ!!」

「無理だ」
「何故だ!! 戦友を見捨てるのか!?」
半泣きで横島に詰め寄る雪之丞。普段の覇気に溢れた姿はイスカンダルの彼方にすっ飛ばしてしまったらしい。無論、某バンパイア・ハーフや某オカマと違って、横島にその気は無いので、男に泣きつかれても嬉しくもなんとも無い。

「その日は、お袋と親父に会わなきゃならないんだよ」
実をいうと、横島はナルニアに勤務する両親――百合子と大樹に美神の事務所から独立したことなどについては連絡したのだが、特に新しい事務所のメンバーなどについては電話や手紙などでは上手く伝わらなかったらしい。

おまけにナルニアの方でも先日の世界規模での異変の数々により、お互いに連絡がとれなくなってしまった。そのため、百合子達は横島が魔神としての覚醒を遂げたことについても具体的には知らない筈だ。

「この前、国際電話で連絡してきたんだよ。お互いの近況について、情報交換しようとさ」
雪之丞自身、その様子は目にしていたがそういうことだったとは。

魔神として覚醒したかについては話すかどうかは、神魔上層部からは、ある程度横島自身の意思に任されていた。今の所、横島の正体を知っているのは神魔界はともかくとして、人界の中ではほんの一握りなのだ。肉親であるということから大樹と百合子は知る資格があるといえる。

「じゃあ、俺も会わないと不味いんじゃねえか?」
「いや、会うのは俺と砂川だけで十分だし・・・・・お前は弓家に行ったほうがいいだろうからな」
横島の話では、会うのは事務所のオーナーの自分と副所長である砂川だけでいいらしい。正確には新しい横島のパートナーである砂川に会いたいとのこと。残りのメンバーはまた今度でいいそうだ。

ちなみに、当日は小鳩は学校。横島自身学生ではあるが、その日は学校を休んで、両親と会うことを優先することにした。
当然の如く、マリアとカオスは屋敷で留守番である。

「そうか、俺もついて行きたかったんだけどな・・・・」
残念そうに呟く雪之丞。どうやら、横島にとり憑いておけば、弓の父親に会わなくてすむと踏んでいたようだが、世の中そう上手くいく物ではない。

「まあ、お前も頑張って来いよ。取って食われるわけじゃないし。もし・・・・最悪の結果になったら自棄酒には付き合ってやるから・・・・」苦笑交じりに横島は雪之丞の肩を叩いた。

「お、おう・・・・・・」
友の気遣いに励まされ、雪之丞は最後にはキチンと覚悟を決め、頷いた。




そんなこんなでやって来た当日。
「じゃあ、逝って来るぜ!!」
ビシッとした黒いスーツに身を包んだ雪之丞が、真剣な表情で玄関に向かっていく。出かける時の挨拶が何故か最敬礼で、言葉の表現も何処か可笑しかいような感じだったが、その辺は突っ込んではいけない。彼はこれから戦場に向かうのだ。「闘竜寺」という戦場へ。


「それにしても雪之丞の奴・・・・大丈夫か? 何だか微妙におかしいぞ」
「まあ、心配ないだろう。あいつは性根がしっかりしているからな・・・おっと、ネクタイが曲がっているぞ」
居間のほうで服装の確認をしながら、雪之丞の奇行を観察していた横島に、砂川がそれについての不安を払拭するかのように微笑み、さらに横島のネクタイを甲斐甲斐しく直す。

(お前さんら、やっとることはまるで、新婚夫婦だということに気付いとらんのかのう・・・・)
そんな彼らの様子をお茶を啜りながら、微笑ましげに眺めるのは(一応)偉大な錬金術師のドクター・カオス。その様子は偉大な錬金術師というよりは、むしろ余生を楽しむ普通の老人といったほうがしっくりくる。

オプションとして、膝の上の猫や縁側もあると完璧だろう。

ちなみに、小鳩は既に朝食を食べ終え、学校へ向かっている。

そして間も無くして、横島と砂川も屋敷を出て、横島の両親―――百合子と大樹との待ち合わせ場所―空港に向かう。




何にせよ、少なくとも表向き世界は平和だった。



その頃
闘竜寺。
「さて、魔装術とかいう術を使うその小僧・・・・・お前の婿に相応しいか、否か・・・・」
寺の奥まった一室にどっしりと腰掛け、重々しく呟く弓の父。側には『何故か』長刀が置かれていた。無銘だが相当な業物であることは素人目にも明らかだ。
何の為にそんな物を側に置いてあるのかと突っ込んではいけない。

(ああ・・・・雪之丞・・・・・)
そんな父の様子に弓は、此処に来るであろう恋人から贈られた耳飾りをグッと握り締めた。
果たして雪之丞は五体満足で帰れるのか? それ以前に弓かおりの恋人として、認められるのか?

その様子は喜劇か、それとも悲劇か。その結末は誰にも予測できない。



一方、某夫婦が乗った国際線の飛行機内。
「さて、家の馬鹿息子はどうなっているか・・・・楽しみだな」
「ええ、そうね。美神さんのところから独立したって聞いていたけど・・・相棒の砂川って人も気になるわね・・・どんな人かしら」
「ああ、そうだな・・・・」
(もし、美人でフリーなら百合子の目を盗んで、食事に誘って・・・・グフフ)
(あーあ、何考えているか。丸解りだわ・・・・変なことしたら、ただじゃ置かないわよ)

もっとも、某親父の企みは色々な意味で阻まれそうだが。





何はともあれ、それぞれにとっての長い一日が始まったのだった。



後書き ユッキーにとっての試練の時です。といっても彼はサブなんですが。それよりも重要なのはグレートマザー対ゴモリーの対面。余り、火花バチバチといった展開にはならないですが。大樹は相変わらずってことで。(美神にも同じようなことしてましたし。百合子さんの目を盗めるかは疑問ですが)
さらに、副題が示すとおり、横島と砂川が一夜を共に・・・・・(18禁な展開にはなりませんが、結構、凄い描写になるかも・・・・・)
耳を噛む、首筋を舐める、頬擦りする、など←やるのは砂川で、相手は当然横島。どうやら砂川は攻めのようです。

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