ザ・グレート・展開予測ショー

なんか眩しい場所での崇高な会話


投稿者名:湊柴舟
投稿日時:(05/ 6/ 5)




「暇や」
「…………………開口一番にそれですか」
「だってホンマに暇なんやもん。人間の誘惑はとっくの大昔に飽きてもうたし、わいの場合、立場上フラフラするわけにもイカンし。反デタント派の連中はわいの子飼いの上位魔族が抑えとるし、そんなことせんでもデッカイ事件の後やし、今のこの時期に一悶着起こそいうんはおらんしな」
「アシュタロスの件の事後処理はどうしたのです?」
「デミアンの本体が全部持っていきよった。『分身が迷惑掛けたから』ぬかしとったわ」
「―――ふう。彼も立場というものがありますから簡単に動けませんし、分身を使って遊ぶのは構わないのですが……」
「増え過ぎるからな。最初の分身が魔力を掻き集めて成長して、そこから更に……。全部ひっくるめて管理なんぞできやせんわな」
「何せ本体以外に、第一次分身の本体から、二千を越す分身派生の本体がいますからね」
「そこから更に……頭痛くなるわ」
「そういえばこの間、彼の分身が大挙して人間界に行こうとしていましたね。規定人数オーバーだったので半分程しか許可が出なかったようですが」
「ああ、もうすぐ夏やからな」
「……成る程、流石『蠅の王』」
「あいつスイカ好きやしな」



「最近アッちゃん達見ぃひんけど、どないしたんや?」
「彼らは里帰りですよ。このところ中東辺りが物騒なようなので」
「あー、そうかそうか、ウチらは和んでるからピンとこんけど、人間達はまだ和解しとらんかったもんな」
「ええ。長い年月が経ち過ぎているせいか、私達の教えが正しく伝えられなかったようで…」
「誰も他所様否定してまで教え守れゆうとらんもんなあ。そもそも他人の命奪ってしもたら宗教成り立たんわ。本末転倒やろうに」
「あの辺りだけ今迄の十倍以上の人間の魂が成仏できないでいるようなんですよ」
「ああ、人手が足りんようなら後でウチからも幾らか使い出したろか?」
「………………地獄行きが決定してしまうではないですか」



「彼らのことはいいとして、貴方はどうなんです」
「いや、だから暇やねん」
「いえ、そうではなくて……噂では近頃欧州の魔物達と仲が良いらしいではないですか」
「なんや、その話か。なに、大した事やないねん。最近人間界ではちょっとした神話ブームらしくてな、ネタ切れのせいかあっちの神話や伝承を基にした映画が続いててな」
「…………(ギリギリの発言ですね…)」
「でな、その映画にわいらも登場しとんねん。いや、勿論CGとか人間が化けとるヤツやけどな。で、せっかくやから撮影現場見に来いって言うもんやから、まあ、向こうの連中とは滅多に顔合せんし、折角やからっちゅうて招待されてたんや」
「よく向こうの神々が貴方の来るのを許しましたね」
「ま、向こうの化生どもは元々連中の兄弟や子孫やからな。……大体、マズイことっていえば行きよりも帰りのほうや」
「?……何故です?」
「いや、帰りにな、映画の撮影スタッフと一緒の飛行機乗ってハリウッドまで"憑"いてったんけど…」
「………………」
「日本のホラー映画の撮影スタジオに紛れ込んでもうてな、少しばかり『厄』を撒いてしもうて……まあ、ホラー映画撮影に不吉な出来事は付き物やから構へんやろ」
「…………『立場上フラフラするわけにもいかない』のではなかったんですか?」



「そういえば……あなたとの付き合いも随分長くなりますね」
「ああ、そうやな。キーやんやブッちゃん、アッちゃんみたいに元々人間やった高位の神族は、大抵死んでから初顔合わせやったけど、わいの場合……」
「いろいろな所に顔を出してましたからね」
「そやそや。確かキーやんと初めて会ったのも"仕事"でやったな」
「ええ」
「いや〜、あん時は"仕事"そっちのけで、ようも意気投合したなぁ」
「人間界の伝承では、私を誘惑しようとしたあなたを退けたことになっているようですが……」
「事実はナントカよりも奇也ってな。まあ、わいもまだ若かったからな」
「………………」
「ん、どうしたキーやん?」
「……いえ、確か当時既にあなたが誕生してから五千に近い年月が過ぎていたような…」
「わはは、歳のことは置いといてや。わいらにそれは禁句やで、別の意味で。大体、宗教的概念の発生以前からわいの大元は存在しとったんやから」
「確かに」




  
  
  オチなし!
          
                        ―――のまま続く


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