ザ・グレート・展開予測ショー

横島君的復讐―0


投稿者名:丸々
投稿日時:(05/ 5/28)

今回の仕事は大仕事だった。彼が勤めている事務所は所長がかなりの凄腕なのと、
高額の除霊を優先して引き受けるので、大きな仕事はそれほど珍しくは無いのだが
今回の仕事はいつもの悪霊シバいて解決という仕事と比べるとスケールが大きかった。


今回の仕事は何やらメドーサの陰謀が関わっていたり、
ブルース・リーみたいな鳥の人造魔族に襲われたりと実に危険な仕事だったが、
彼が最近手に入れた新しい能力の『文殊』の応用性の一端を垣間見る事もでき、
彼にとってなかなか実入りの有る仕事だった。(金銭的な実入りは皆無だが・・・)


夕方、仕事を終えて事務所の二人と別れ彼の安アパートに帰ると、珍しい相手から電話がかかってきた。


「おー、忠雄ー、久しぶりだなー。元気にやってるかー?。」


彼の父親からだった。彼の両親は遠くナルニアの地で働いている。
最後に彼が父親と顔を合わせたのは、父親が本社への報告にためナルニアから帰国した時である。
その時は、彼の雇い主に彼の父親が手を出そうとして大騒動を巻き起こしていた。


今回も本社に報告するための一時帰国らしいのだが、彼の今の状況を知るためにもアパートに泊まるつもりらしい。


「ホテルを取ってもいいんだが、わざわざ親父様が顔を見てやるんだからありがたく思えい」


前回の帰国での騒動を思い出して、ふざけんな、報告だけしてさっさと帰りやがれ!と
突っぱねようとして、思いとどまる。


(待てよ・・・この前は親父のくせに美神さんに手ぇ出そうとした挙句、俺を騙して悪霊の群れの中に引きずりこもうとした。
っつーか、そもそも俺が邪魔しなかったら最後まで突き進んでたんじゃね―のか?
いや、それ以外にも目の前で浮気しまくってたのを見せ付けられたしな。
何で俺の親父のくせにあんなにもてるんだ?ちょっとはこっちにまわせっちゅーんじゃ!
正直あの時はこの親父に勝てる気がせんかったが、今の俺には霊能力がある。
それに最近使えるようになった『文殊』なら今までの恨みも解消できるんじゃねーか!?)


私的制裁のために霊能力を使っては、下手をすれば苦労して手に入れたGS資格を剥奪されかねないが、
彼の雇い主の影響か、彼にはその辺りのモラルが皆無だった。
というか、GS見習い(ほとんど丁稚)の彼には職業倫理など考えたことも無かった。


「でな、土産も持って帰ってやるから、三日ほどそっちでやっかいになるぞ」


彼の考えていることなど露知らず父親はいつもの調子で、用件を伝えている。
もはや彼の頭の中ではどうやってこの父親に復讐してやるかで、大忙しなのだが。
しかしたったの三日というのは不味い。そんなに短い日数では積年の恨みは晴らせない。
どうすれば、もっと父親を引き止めておけるかを考える。
それにはこの父親が長期間日本に滞在する理由が必要になる。
今まで親に甘えるような言動を取ったことが無く、下手すれば罵詈雑言を浴びせるような自分が
急に長期滞在を希望するのはあまりに不自然。気付かれる可能性がある。
ならば息子の成長を示し親の好奇心を刺激し、向こうに滞在したいと思わせるのがベスト。



「あ、そうだ。親父たちにはまだ言ってなかったよな?。実は俺今GSの見習いやってるんだ。」


別に隠していたわけではなく、独立したわけでもないしやってることも
今までとあまり変わらないから別に必要ないと考えていただけなのだが。


「・・・おいおいGSってゴーストスイーパーだろ?。何の取り柄も能力も無いお前が何を言ってんだ?。」


親から子への言葉にしては随分な言いようだが、確かに急にそんな話をしても普通は信用しない。


「嘘じゃないって(ったく、ひでー言われようやな)
それが急に霊能力に目覚めちゃってさあ。
まだ半人前だから一人前になるまでわざわざ言うこと無いかなーって思ってさ。
美神さんのトコで見習いやってるから今までとやってることもかわらんしな。」


はははと笑いながらも彼の頭の中は復讐の方法について高速回転していた。


「・・・・・・・」


父親が急に黙り込んだので、思考を中断して声をかける。


「あれ?親父?」








「・・・忠雄。お前が美神さんに憧れるのはわかるが・・・。
なんと言うか、もう小さな子どもじゃないんだから、妄想と現実は区別しないと
ちょっとイタい人だと思われるぞ・・・?」














「ってちょっと待てェェェーーーーー!!
嘘とちゃうわァァァァァーーーーーーーーーーーー!!!!」


妄想と現実の区別がついてないのはちょっと自覚してるだけに、
心底哀れむような声をかけられた少年の魂の雄叫びが、夕日が沈みゆく街に響き渡った。







結局その後、半信半疑ながら彼の父親がGS協会のホームページを確認し、
合格者履歴で息子の名前を発見するまで息子への哀れみの口調は変わることは無かった。


両親で相談した結果、GS見習いとしての現状査察の時間も含め
父親が一週間日本に滞在するこことなった。







(くっそォォーーーー、あのクソ親父!!。
息子をかわいそうな人扱いしやァがって!!
 一週間ありゃあ充分じゃ!!今までの悪行の数々を後悔させたらァ!!
 このGS見習い横島忠雄が極楽に逝かせてやるぜ!!!!)


周りから見れば、実際彼は(色んな意味で)かわいそうな人なのだが本人としては
自分で言う分には良いのだが、それ以外の人間、特にあの父親には言われたくなかったようだ。






(あの何の取り柄の無い忠雄が霊能力に目覚めるとはな。いまだに信じられんなあ。
 まあいいさ、実際にこの目で確かめるまでよ。そもそも息子の現状などどうでもいいしな。
 そんなことより、百合子の目から一週間も逃れることができるとはな。運が良い。
 一週間もあれば・・・ふふふ。よーーし、久しぶりに羽根を伸ばすかあ!!)


親子の気持ちは全く交錯することなく、父親は日本への飛行機に乗り込んだ。



父親は息子の殺意に気が付かず――恨まれようと息子相手に不覚を取るわけも無し



息子は父親の目的に気が付かず――まさか長期滞在の本心が浮気のためだけとは考えず



似たもの同士の親子の対決が迫る。













―後書き―
初投稿になります。拙い部分が多いでしょうが。楽しんでいただけたら幸いです。
アシュ編のシリアス横島君もいいのですが、個人的には何の悩みも無い横島君が好きなので時期的にはガルーダと一戦やらかした直後の話です。
もちろんルシオラとも出会ってないので彼の煩悩は傷一つありません(笑)

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa