ザ・グレート・展開予測ショー

動き出した歯車〜第一話〜


投稿者名:アハト
投稿日時:(05/ 5/ 5)

動き出した歯車
第一話『始まりの原因』

横島からの電話が途中で途切れておよそ五時間が経った時。
美神一行は、ようやく妙神山の門をくぐった。
横島がここにいるとわかって緊張の抜けた一行のうち、美神以外は初めて見る妙神山内部をものめずらしげに眺めていた。

「美神殿。小竜姫様は、本堂にいる。」
「くれぐれも粗相の無い様に。」
「それぐらいわきまえてるわよ。」

美神は、門の向こうからそういってきた鬼二匹を振り返らずそう言えばさっさと本堂へと歩き始めた。
それに気がついた他三名も美神に続いて本堂へと向かった。

「小竜姫様いる〜?」
「あ、美神さんこちらにどうぞ。」

ふすまを開けて美神の姿を確認した小竜姫は本堂へと美神一行を通した。
中に入るとそこは、和室で10畳ほどの広さであった。
美神たちは、小竜姫が座ったのを見て小竜姫の前に座った。
小竜姫は美神たちが座ったのを見るとおもむろに口を開いた。

「美神さん。今回のこと横島さんから聞いていますか?」
「……何のこと?」

小竜姫からの問いに対して瞬時に表情を固めた美神は、小竜姫に問いで返した。
そんな美神のただならぬ気配を感じた他三名も表情を硬くして二人の話を聞いた。

「……もしやと思いましたが……まさか伝えていないとは。」
「……だから何なのよ!一体!」

小竜姫が早く話さないことに苛立ち声を荒げる美神。
さすがにそれはまずいと思ったのかおキヌが美神に落ち着くように言った。
その一言に美神は、多少落ち着きを取り戻して小竜姫に話の続きを促した。
小竜姫は、その促しに答えて話を始めた。

「横島さんは怪我こそひどくないですが意識不明の状態で、今パピリオが看病をしています。」
「横島君が……意識不明?」

あまりのことに言葉を失った一行は、横島のことだから無傷だと思い込んでいたのだ。

「とりあえず命に別状はありません。そのうち目を覚ますでしょう。」
「そう……」

とりあえず死ぬ心配はしなくて良いとわかり安堵の溜息を漏らした。

「横島君は一体何に襲われたの?」
「考えられるのは、魔族の襲撃もしくは、神族の襲撃です。」

小竜姫の思わぬ台詞に一同は声を失った。
それと同時に頭の中で何でそんなことになったのか考え始めた。
結局考えはまとまらずすぐに小竜姫に問いかけた。

「どうしてそんなことが考えられるの?」
「これから詳しくお話します……」

小竜姫は苦しい表情になり重々しく語り始めた。
まず、アシュタロス一派であった魔族の集団の残党が、最近になって急に力を増大させたこと。
そして、その一派の狙いが横島が作る、文珠の力だということが判明したこと。
次に、神界の強硬派の一部が、横島の力を奪われるくらいなら殺してしまえと発言したこと。
また、神魔界の勢力がアシュタロス派・神族強硬派・そして神魔の最高指導者が指導する一派に分かれてしまったということ。
小竜姫はそれらのことを語り終え美神たちの表情を見た。
それぞれが怒りとも取れる表情をして体を震わせていた。

「何で、横島さんがそんな目に遭わなくちゃいけないんですか!?あんなに……あんなに頑張ったじゃないですか!それなのに…」
「おキヌちゃん。」

おキヌは、心のそこから湧き出してくる感情に堪えられなくなり美神に泣き付いた。
美神もそんなおキヌの心情が読めたのか慰めるようにしている。
一方、シロとタマモの二人は話が見えてこないようで戸惑いを見せていた。

「ねぇ、美神。横島は一体何をしたの?」
「拙者もそれが知りたいでござる。」

タマモがそう切り出したのでシロもそれに続いた。
美神は、少し悩んでからアシュタロス戦のことを話した。
ただ、ルシオラの部分は伏せて話したため二人の反応は怪訝なものだった。
美神は、そんな二人を見て、詳しいことは横島が目覚めてから聞きなさいと言っておいた。

「小竜姫様。横島君には会えるの?」
「ええ、会うだけでしたら。」

小竜姫はそういうと、おもむろに立ち上がり美神たちについてくるように言うと、奥の部屋に向かった。

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小竜姫の案内で横島が寝ているという部屋の前まで来た美神たち。

「皆さん。中では静かにお願いします。横島さんの傷に障りますから。」

小竜姫の言葉に一同は頷いて、横島の寝る部屋のふすまをくぐった。

「……何か、見慣れた光景よね。」
「あははははは……」

包帯でぐるぐる巻きにされている横島の姿を見て、美神がそう呟くと他の面々は、ただ苦笑いを上げるしかなかった。

「小竜姫様。パピリオちゃんは……」
「多分、代えの包帯でも取りに行ってるんでしょう。」

散乱していた包帯や代えの包帯が見当たらないので、おキヌの問いにそう答えた。
しかし、しばらくすると、どたどたとやかましい足音が廊下から聞こえてきた。

「まったく、何時もあれほど廊下は走るなって言ってるのに……」

小竜姫は溜息混じりにそう呟くようにいうと、勢いよくふすまを開いて

「パピリオ!廊下を走るんじゃありません!」
「うっ、わかったでちゅ。」

小竜姫の一喝によりパピリオは、走るのをやめとぼとぼと部屋の前まで歩いてやってきた。
部屋の前まで来てパピリオは、美神たちのことに気がついて

「あ。美神、何しにきたでちゅか!?」
「お客様に何しにきたはないでしょう!?」

パピリオの言葉を聞いた小竜姫は、パピリオの脳天にゲンコツを一発はなった。
パピリオは、そのゲンコツを受けて頭を抱えてしゃがみこんでしまった。

「い、痛いでちゅ。」
「すいません。美神さん。」
「い、いいのよ別に。」

小竜姫の行動に驚いた一同だがあえて突っ込むような言動はしなかった。
そして、パピリオがやってきてから少し経ち。

「美神さんちょっといいですか?」
「なに?」

美神は、小竜姫につれられるまま廊下へとでた。
そこには、斉天大聖こと猿神がいた。

「……何のよう?」

軽い気持ちで出てきたが猿神がいたことにより気分を引き締めた。
神界から、帰ってきたものだと思ったからだ。

「相変わらずいい勘をしとるようじゃのう。ここではなんじゃ。着いて来い。」

美神は、猿神に連れられるまま本堂の外へとでた。

「……皆には聞かせれない内容なの?」
「いや、大勢いると話がなかなか進みそうに無いと思うただけじゃ。」

猿神は、そういうとおもむろに話を始めた。
それは、神魔界に関することではなく横島自身のことだった。
横島に魔族からのコンタクトがあったこと。
横島の霊力減退の理由などなど
それらを聞いた美神は、信じられないと目を見開き黙り込んでいた。

「このことを何で、お前さんに黙っておったのかわしにはわからん。だが……」
「それくらいわかってるわよ。」

猿神の言葉をさえぎって美神は、声を上げた。
表情は重く硬いものでゆっくりと呟くように

「ただ、あいつが私に隠し事をするってこと自体が気に食わないのよ。」
「…………」

横島に対する詮索の単なる理由付け。
猿神にとっては、そう聞こえたが横島の身をあんじて追及はしなかった。
もっとも、血を見そうなことには変わりないが。
話も一段落着いたところで本堂に戻ろうとしたとき、美神たちの元におキヌが走ってきた。

「美神さん!横島さんが!横島さんが目を覚ましました!」
「わかったわ、すぐ行く。」

おキヌの言葉を聞いて、美神は小走りで横島の元へと急いだ。

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横島が目を覚ましてから早10分横島は今無言の攻めを受けていた。
(因みに小竜姫とパピリオは、場の雰囲気に耐えられず退室した)

「……(まずい、非常にまずい。何か知らんがまずいと思う!)」

今回の事件の件を隠していたことに負い目を感じている横島は冷や汗をだらだら流していた。

「横島君。」
「はっはひ。何でしょう。」

いきなり美神に呼ばれて横島は痛む体を無視して背を伸ばしてそう答えた。

「何で黙ってたの?」
「いや……それはその……(やっぱり怒ってる。このままじゃあかん!)」

横島が言葉に詰まっていると美神が目を吊り上げてにじり寄った。

「なに?」
「いや、その美神さんたちに迷惑がかかると思って……」

横島がそういった瞬間美神は、横島の襟首を引っつかんだ。

「あんたがそういうこと言う!?あんたが今まで私たちにどれだけ迷惑かけてきたと思ってんのよ!!」
「ああっ!すんません!すんません!すんません!」

美神が横島の襟首を引っつかんで横島の頭を前後にシェイクする。
何度も何度も繰り返していると、さすがに止めに入った。

「美神さん!流石にそれ以上やったら横島さん死んじゃいますよ!」
「そうでござるよ。流石に先生でも死んでしまうでござる。」
「横島も悪気があったわけじゃないんだし、許してあげたら?」

三人に止められて流石に横島を揺さぶるのをやめた美神は横島をじっと見つめて
タマモの言葉に対して返答を返した。

「問題はそこじゃないのよ。」
「え?」

美神の言葉に一同が声を上げると美神は目を見開き横島の頬を左右につねり上げた。

「問題は、こいつが私に対して隠し事をしていたってことよ!」
「結局、本音はそこですかっ!!」

頬をつねりあげられたままそう言ったのはいいがもっとつねり方がひどくなった。

「美神さん!夫婦生活だって、多少の隠し事は……」
「黙れ!」

横島が変なたとえを出したとたん美神は横島を殴りつけた。

「た、単なる例えじゃないっすか。」
「たとえ方が悪いのよ!」

そんな一連のやり取りがあって、このままでは延々と続くと思ったタマモは二人の会話に割って入った。

「ところで、横島。どんな奴に襲われたの?大抵の奴なら無傷で逃げれると思うんだけど。」

無理やりではあったが、二人のやり取りを終わらせることはできたようで

「う〜ん。暗かったしどんな奴かわかんねぇな。それに、美神さんとの電話の最中に出てきていきなり文珠を出してきやがったし。」

横島は、事細かに昨晩のことを語った。
美神との電話の最中に出現した陰のこと。
その影が、文珠を出して部屋を爆破したこと。
その後、『移』の文珠を使って妙神山に逃げたことを語った。

「その話の内容からじゃ、襲ってきたのが何者なのかもわからないわね。」
「すんまへん。」
「とりあえず無事だったんだから、それでいいか。それにそのうち相手からやって来るでしょ。」

話も一段落ついたところで、シロとタマモとおキヌが欠伸を上げた。
それもそのはず。もう太陽が顔を覗かせているような時間だったからだ。
そんな時折り合いよく小竜姫が顔を出してきた。

「お話は終わりましたか?」
「ええ、一応ね。ところで、寝るところ貸してくれない?おきっぱなしだったから眠くて。」

美神が欠伸をかみ殺しながら小竜姫に願い出ると小竜姫は、快く引き受けて床の用意をしてくれた。
一方横島は

「…………(美神さんの寝床にもぐりこむチャンスだが、シロにタマモさらにおキヌちゃんまでいる!行くべきか行かぬべきか)」

邪なことをこりもせず考えていたのだが、その目論見はあっさりと看破されていて

「横島さんは、十分寝てますからパピリオの相手をお願いしますね。」
「えっ!」

こうして、美神たちが安眠を貪っている中横島は……

「ヨコシマこれを食べて早く元気になるでちゅ。」
「いや〜!!タマネギとヤモリは嫌いだ〜!!!」

パピリオに看病という名の拘束を受けていた。

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あとがき
どうも、早速二話目の投稿をさせていただきました。
ご期待に添えているのかはわかりませんが、感想をお待ちしています。
では、これにて

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