動き出した歯車〜第八話〜
投稿者名:アハト
投稿日時:(05/ 5/29)
動き出した歯車
第八話『ラグナロク〜神々の黄昏〜・5』
敵基地の場所が明らかになった翌日。
美神たちGSは、戦闘準備を終えていた。
周囲30kmに及ぶ人民の退去。
一般兵の自衛隊からの徴発。
一般兵に渡す銀の弾丸とそれ専用の銃火器。
一日で、できるものではないので、前々から根回ししていたのだろうが。
よくもまあここまでやるものである。
「皆さん。ようやく敵基地に攻め込むときが来ました 」
そう、マイクによって喋るのは、基地総司令のような美知恵であり。
演説の相手は、一般兵と美神たちだ。
「ただ、忘れてはいけないのは我々の目的は、あくまで横島忠夫の保護です。
敵の撲滅など考えないようにお願いします 」
美知恵の演説に一般兵たちは、神妙な顔で聞いている。
美神たちは、事前に聞いているだけに退屈なだけであるが、
士気に問題が出るかもしれないので神妙に聞いている振りを敢行していた。
「敵のリーダー格が出てきた場合は、即座に退避してください。
まともに戦うと、多くの怪我人が出る恐れがあるので 」
しばらくして、一般兵の士気を高める為の演説が終わると、
いよいよ本格的な戦闘準備が始まる。
物資の運搬、自分の待機場所への移動などだ。
美神一行も車に乗り込んで、各自自分の持ち場へと向かっていく。
「美神殿、先生は無事でござろうか 」
「無事に決まってるでしょ?そうでなきゃこんなことしないわよ 」
美神は、横島が絶対に生きていると疑っていない瞳で、シロに返す。
シロは、なぜそんな風に思えるのかわからず、質問を重ねた。
「なんで、そういいきれるんでござるか ? 」
「経験よ。それに、アイツはゴキブリ並みの生命力と適応力だしね 」
シロの不安を散らすとともに、一緒に居るタマモとおキヌの激励も兼ねた言葉だった。
その言葉の効果は、在った様でシロ・タマモ・おキヌの三名は、少なからず活気を取り戻した。
横島は、無事だから太助に行くんだとゆう決意とともに。
一方、横島が捕まっている
いや、生活している基地では、いろいろあわただしく人員が動いていた。
「な、何が起こってんだ ? 」
「戦闘準備だとよ。もう少しは、ゆっくりできると思ってたんだけどな 」
横島が質問をすると、そんな答えが返って来た。
戦闘準備ということは、戦いが始まるということ、
つまり自分の助けがくる、ということは横島もすぐに気がついた。
「じゃあな。俺は、奥でおとなしくしてるよ 」
「おお、逃げんなよ 」
横島は、そんなことを話しながら、混乱に乗じて逃げる算段を考えていた。
そして、会話が終わりいざ歩み出すと、不意に肩をつかまれた。
その肩を掴んだのは、ヘルであった。
「横島、ロキ様がお呼びだ。こい 」
「へーい 」
出鼻をくじかれたような感じの横島。
ヘルに連れられるがままやってきたのは、いつぞやの部屋。
シギュンと初めて対面した、あの部屋だ。
「横島、朗報だ。貴様の助けが、もうすぐ此処に踏み込んでくるらしい 」
横島は、ロキを睨みつけたまま無言を保つ。
ロキは、そんな横島を歯牙にもかけず嬉々として話を続ける。
横島は、そんなロキを訝しく思う。
「それにしても、人間は愚かで馬鹿な生き物だな 」
「どういう意味だ!? 」
笑いを押し殺し、話すロキを見て横島は、不安を感じた。
そこで、思わずロキに問いかけた。
ロキは、横島を見下ろしニタリと笑う。
「あいつらは、俺の思うとおりに動いてくれるよ 」
「!!! 」
横島は、その言葉に驚いた。
今度のことは、ロキが仕組んだことだとわかってしまったのだから。
ロキは、面白そうに笑みを浮かべながらそう横島へと語りかける。
横島は、苦虫を噛み潰したような顔になる。
「お前は、あいつらの打ちひしがれるところを見物するといい。
お前には駒として、活躍してもらうことにしようか ? 」
「な、何するつもりだ !? 」
横島の近くまで歩み寄ると、横島の眼前に手のひらを構えるロキ。
そして、ロキの手のひらから火花が散る。
横島の意識は、そこで絶たれ糸が切れた人形のように動かなくなった。
☆★☆★☆
「いいか、敵を中に入れるなよ ! 」
敵拠点へのゲート前
其処は、すでに敵の軍勢が銃火器を構えて美神一行が入ってくるのを待っている。
のこのこ入ってきたところを、蜂の巣にという算段なのだろう。
そして、引き金に指をかけて待つこと十数分。
ついに、扉は開かれた。
「総員、一斉射撃はじめ !! 」
現場指揮官の掛け声とともに、けたたましい銃声が当たりに響き渡った。
その銃声は、緩むことなく続けられていたのだが、断末魔は聞こえてこない。
現場指揮官が、訝しく思ったそのとき。
爆音と爆炎が一平卒に襲い掛かった。
扉の向こうから飛んでくるもの、それは対戦車ミサイルもとい、パンツァーファウストの弾頭。
それは、容赦無く敵陣に叩き込まれた。
そして、美神一行率いるチームが現れた。
「この場をなんとしても死守するのよ ! 私たちは、横島君の保護に向かうわ ! 」
「了解です」
美神は、現場指揮官のその頼もしい一言に背中を預けようと思ったのだが、
一人”うははははは、銃を乱射できるなんて軍に入っててよかったー !!!”
などと、叫んでいる自衛官が居た為少し不安になった。
それは、ともかくとしてこの場にエミ・タイガー・ピート・冥子・唐巣の五人を裂き。
他の美神・おキヌ・シロ・タマモ・雪之丞・西条が、横島救出に向かった。
「エミ、しくじるんじゃないわよ ! 」
「言われなくても、わかってるワケ ! 」
美神たちが、敵地の奥に進行して行ったあと、そこは、ほとんど鎮圧されたような形になった。
奇襲の爆撃により、大半の戦力をそがれていた相手側は、戦略的撤退と称して逃げていったのだから。
「なんか、暇」
「もっと、緊張感を持ったらどうだね ? エミ君」
エミが、率直的な感想を述べると、それを唐巣が、たしなめる。
しかし、他の面々も大方エミと同じようなものだった。
第一、こちらに配置されたのは出口を奪われないための保険。
戦いに巻き込まれる可能性は、少し低い。
もっとも、強い敵に出くわす可能性は、必然的に高くなるが。
「どうやら、来た様だね」
先ほどまでいた雑兵とは違い、高い霊格を持っている存在が近づいてきた。
姿こそ見えないものの、それなりのプレッシャーがある。
唐巣は一般兵を下がらせて、GSメンバーがオフェンスになるように、配置を決める。
一般兵の役割は、援護射撃による敵の隙を誘うこと。
霊能の無い人間ができる最大の事だ。
「おおきいへびさんね〜。サンチラよりもずっとおおきいわ〜」
冥子の感想どおり普通では、考えられないような大きさの蛇が頭を出てきた。
その大きさは、起き上がったときの頭の位置が、大体成人男性と同じ程度である。
もっとも、その蛇は蛇らしからぬ格好で現れたのだが……
「……蛇人 ? ヨルムンガンドか」
唐巣の感想でわかるであろうその姿は、二足歩行で手が二本あり尻尾もちゃんとはえている。
蛇というよりは、トカゲに近いというのはおそらく気のせいだ。
「招かれざる人間どもよ。早々に立ち去るがよい」
「そういわれて、退くようなら最初から来てないワケ」
人間代表として、エミがそう返した。
そして、各々が即座に戦闘に移れるように身構える。
それを爬虫類らしい気持ちの悪い瞳で、睨みつけると拳を構えた。
「立ち去らぬというのであれば、此処に骸をうずめることになるぞ」
再度の忠告を蛇人が、エミたちに告知する。
もちろん、エミたちはそれに頷かない。
そして、いよいよ戦いの火蓋は切って落とされる。
「御託はいいから、さっさとかかってきなッ !! 」
エミの言葉が、きっかけとなり蛇人が、一気に相対距離縮めるために、地面を蹴った。
その蛇人を迎え撃つのは、このメンバーで唯一、近接格闘を主体とするピート。
その援護に、唐巣が控えエミが、一撃必殺のために力を蓄える。
タイガーは、獣人化し北極の時と同じように、精神をリンクさせ連携のとりやすいように心がけ。
冥子は、クビラを使い敵の急所を探すとともに、メキラを待機させ緊急退避の準備をする。
「うおおおおっ !!」
「甘い !!」
流石に、実力の差があるのかピートの方が劣勢の色が濃い。
唐巣の援護もあって何とか、均衡を保っているといった感じだ。
エミもエミで、相手に攻撃を確実に当てる隙を探しているのだが、その隙がなかなか無い。
メキラの瞬間移動で一気に距離を詰め、攻撃するのもいいのだがその場合外れると……
こちら側には、死が待ち受けている。
そのため、慎重にならざるを得ない。
「ちぃッ !!」
「っく、ヴァンパイアか !?」
激しい拳の応酬によって、ピートのほうに拳が入ったのだが、手ごたえの無さから蛇人は、ピートの正体に気がつく。
気がつかれても、なんら支障は無いが敵が攻撃目標を変える恐れが出てきた。
ヴァンパイアハーフであるピートのスタミナは、人間の比ではないのだから。
「っく、このままじゃ、ジリ貧なワケ」
「とりあえず弱点は、胸の真ん中あたりよ〜」
「弱点がわかっても、其処を叩けないと意味が無いのー」
ピートと唐巣がまじめに戦闘をしているにも関わらず、そんな話をし始める。
ピートと唐巣の耳には届いていないのが、不幸中の幸いといったところかもしれない。
そんな中、戦闘は急に動きを見せる。
「うぐぁッ !!」
そう、ピートが敵の攻撃を受け吹き飛ばされたのだ。
動けないほどのダメージではないにしろ、その隙は致命的であった。
その隙を突いて、蛇人は味方陣地へ飛び込むために、また地面を蹴る。
蛇人の拳が冥子に向けられ、その拳は寸分たがわず冥子へと向かっていく。
そんな中、一つの雄たけびが上がった。
「うおおおおおおッ !!!」
その雄たけびは、GSメンバーの者ではなく他者のもの。
そう、それは、後ろに控えているはずの一般兵の一人が上げた物。
その一般兵は、ちょうど蛇人の死角になるところから飛び出し、方で体当たりをかました。
霊力の篭っていない攻撃の為反応が遅れたのか、蛇人はその攻撃の直撃を受けた。
もっとも、霊力の篭っていない攻撃など、蚊に刺されたほども感じないダメージなのだが
その攻撃は、バランスを崩させるには十分すぎるもの。
つまり、蛇人にとって絶好のチャンスが、絶体絶命のピンチに移ったのだ。
そんな好機を見逃すはずも無く、エミは即座に動く。
霊的急所に、全力で攻撃を仕掛ける為に。
唐巣もピートも同様で即座に行動を起こした。
「喰らいなッ ! 霊体貫通波ッ !!」
エミの攻撃が、見事に霊的急所へと突き刺さる。
続いて、唐巣。そして、ピートの攻撃も続けざまに入った。
それだけで終わったようなものなのだが、エミは
「冥子 !最後の仕上げをするワケ !!」
「わかったわ〜」
冥子を呼び出し
「皆〜でてきて〜」
冥子はエミに言われるがまま、式神を十二体すべて呼び出した。
その後は、言わずもがなと言うものであろう。
式神が、すべて影に帰った時には、少しばかり大きい蛇の骸があったとか。
☆★☆★☆
エミたちが、蛇人を撃退したころ。
美神たちもまた敵と対峙していた。
「一筋縄じゃいかないようね。このまま突破できるのが、一番よかったんだけど」
「言っても始まらないでござる」
「おう、撃退あるのみだッ !」
美神たちが、対峙しているのは犬飼を思わせる人狼のようなフォルム。
持っているのは、日本刀。
美神とシロ、そしておキヌは息をのんだ。
「覚悟は、いいな? では、参るッ !!!」
「雪之丞とシロで、迎え撃って !」
美神の号令を聞いてか聞かずか、二人はほぼ同時に走り出した。
人狼……フェンリルは、手にする霊刀で二人を迎え撃つ。
美神と西条は、シロと雪之丞が相手に隙を作った際の、止め役兼、二人のバックアップ。
タマモは、狐火で後方支援、隙があれば幻覚を見せるという役割。
ただ、おキヌは何もできずただ後ろに下がり呆然と見守るしかなかった。
「っく、手強いッ !!」
喋る余裕すらない雪之丞とシロを尻目に敵は、ポツリとそう漏らす。
雪之丞とシロは、歯がゆさゆえに歯噛みする。
そして、それが次第に焦りを生む。
「其処だッ !!」
「くそッ !!!」
ほんの少しの隙を突いた必殺の攻撃。
それは、雪之丞の魔装術の装甲を切り裂く。
しかし、肉まで刃は届くことは無かった。
後方に待機していた美神、西条の両名が挟撃を叩きつけたからだ。
両脇からの攻撃を受け、傷を負ったフェンリルは、後ろに跳び退く。
そこに、西条が銃撃をお見舞いする。
思わぬ深手を負ってしまったフェンリルは、目に見えて動きが鈍った。
そこで、疲弊したシロと雪之丞に代わり、美神と西条による攻撃が始まった。
即席のコンビではなく、息のあった二人の連携は、しだいに人狼を追い詰めていく。
「ぐっ」
「極楽に行かせてあげるわ !!!」
神通棍での一撃は、日本刀を根元から折りフェンリルの体を貫いた。
フェンリルは、そのまま神通棍の先を握り美神を引っ張った。
美神の体は、逆らうことなくそのままフェンリルの元へ飛んでいく。
それに反応した西条が、フェンリルに向け銃弾を放つ。
フェンリルは、それをまともに喰らい、美神を攻撃しようとする腕を止めてしまう。
美神は、そんな隙を逃さず精霊石を一つ掴むと、拳を握り締め
フェンリルの顎に霊気を纏わせ、叩き込んだ。
フェンリルは、そのまま仰向けに倒れていき動かなくなった。
「はぁはぁはぁ。ったく、しぶとかったわね」
「仮にも、魔獣の類に入るんだ。倒せただけで、上出来だよ」
物も言わぬ骸となったフェンリルを眺めそう呟いた。
一方で、おキヌは沈んだ顔をしているが、誰も気にかけている余裕は無く
誰もおキヌに気がついてあげることができなかった。
「ところでよ。横島の場所はわかってんのか ?」
「ああ、これのとおり行けば問題は無いだろう」
そういって西条が取り出したのは、受信機。
それには、一つだけ光っている点がある。
それが、横島なのだろうが、その光っている点は
「それ、すごい近くで光ってねぇか ?」
「そういわれてみれば」
「それじゃ、横島君はこの近くに ?」
雪之丞の一言に、色めき立つ一同。
先ほどまで、沈んだ顔をしていたおキヌも顔色が幾分よくなった。
そして、そんななか少し離れたところから足音が聞こえてきた。
「!!!!」
一同は、それに気がつき足音の方を凝視する。
ただ、西条は受信機の方を見て
「もしかしたら、横島君かもしれない」
近づいてくる方向とレーダーの点の方向が完全に一致しているのだから。
そう思うのは普通だ。
そして、足音とともに姿を現したのは
「美神さんッ !!」
「横島君 !?」
紛れも無い、横島忠夫そのものの姿であった。
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あとがき
ネタが……トイレのように詰まる詰まる。
連載作家ってこんな感じなんですかねぇ。
それは、ともかくようやく第八話までこぎつけたわけですが。
構想だけ膨らんできています……まぁ二十行くことは、おそらくないでしょう。
書いてる自分がそう思いたいんです。
では、またお会いしましょー
今までの
コメント:
- >連載作家ってこんな感じなんですかねぇ。
連載してなくても困っちゃうくらい詰まってます(笑もとい挨拶)。ラバーカップはどうでせう?(滝汗)
最後の一文の横島忠夫そのものの姿であったはあやしいですね・・・。
ロキが仕組んだことと関係してそうです。実は私ロキの事全然知らないんですよね。
それでもロキがいい味出してますよ。この後の展開にも十分期待が持てます! (never green)
- 魔物に好かれ、馴染みやすい横島の性質を調べた上で逆用し、獅子心中の虫となる駒を作る……流石は謀略の神――といったところですね。
ロキのお手並み拝見、と行きましょう。
あと、おキニスタ(造語)としては、おキヌちゃんがかなりのウェイトを占めるような予感も感じます……そちらにも大期待です。
>”うははははは、銃を乱射できるなんて軍に入っててよかったー !!!”
最大のツボでした(笑)。きっと、精霊獣目掛けてミサイルぶっ放した人と何らかの関わりがあるかと (すがたけ)
- never greenさん、コメントありがとうございます。
ラバーカップは、笑わせてもらいましたよw(まだ、コメント書いてなかったような気もするけど……)
横島云々については……言及しないでおきましょう。
ではまた!
すがたけさん、コメントありがとうございます。
おキヌちゃんが重要なのかどうかはいえませんが、主戦力にはなるかもしれませんね。(笑)ちなみに、銃乱射してる人は、精霊獣にミサイル発射した人のはとこです。あと、ご先祖様にも危ない人がいるとかいないとか……
では、また! (アハト)
- おおっ、息子さんたちとは戦いが始まったと想いきや……一話で決着となっ? GS側の健闘も、やはりアシュタロス戦などでの経験値のなせる業でしょうか。それともこれも罠?
特に驚いたのは、一般人の一発で形勢が逆転した対ヘビさん
戦。この人、ひょっとしてタダ者で非いな?……と勘ぐってみたり。それともアレかっ、改造で人間型パワード・スーツの慣性制御能力を強化した総長@『一番湯のカナタ』(憶えてるカナー?)かっ!(デマ)
あとは美智恵を正しく表記していただければっ! 次回も楽しみにしています。 (Iholi)
- Iholiさん、コメントありがとうございます。
実際、息子たちの戦いを綿密に書いてもよかったんですが……どうにも話が盛り上がらず断念してしまいました。そのぶんは、メインの戦いで取り戻すことに……(できるかな?) (アハト)
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