ザ・グレート・展開予測ショー

横島君的復讐―2日目 前半


投稿者名:丸々
投稿日時:(05/ 5/29)

※この話はガルーダ戦直後のお話です。
仕事から帰った横島君のもとに一本の電話がかかってきます。
今はナルニアの地にて働いている父親、横島大樹氏からでした。
どうやら報告のために一時帰国するとのことなので、前回の帰国時の借りを返すために
横島君は色々企んでいるようです。
期限は1週間。横島君は父親を超える事ができるのでしょうか・・・・。





―火曜日―

朝7時。


「忠夫ー、いつまで寝てんだー!?
さっさと学校の用意しろよー?」


前日の『文珠』を使った食事トラップに自分で引っかかったため、
少年は床に仰向けに倒れたまま動く気配が無い。
大樹は事前に買って来ておいたのだろう、スポーツドリンクの
2リットルのペットボトルを息子の口に突っ込んだ


「!?
ッゴボッ・・!?ゴバッ・・・!!ゴブッ!!・・・・ゴブッ!!・・・ゴブッ!!」


意識が無い状態でいきなり液体が注ぎ込まれたため、少年は溺れかけている。


「はっはっは。二日酔いには水分補給が一番なんだぞッ!」


真実は酒など飲んでいないのだが、昨晩便所で嘔吐していたのを見ていたので、
大樹は息子が二日酔いだと思っているようだ。
多少周りにこぼれてしまったが、2リットルの液体は全て少年の体内に注ぎ込まれた。

少年の腹が妙に膨らんできているのは気のせいではないだろう。

「ゲホッ・・!!ゲホッ・・!!
てめぇー息子を殺す気かァァーーーーー!!!!」

少年も目が覚めたようだ。

「学校があるのに二日酔いになるほど酒を飲むからだろうが。
目ぇ覚めたんならさっさと用意するんだな!!」

息子を溺死させかけた事など全く気にしていない様子。

「酒なんぞ飲んどらんわァァァーーー!!!!
っつーかそもそも酒買う余裕なんかないわァァァーーー!!」

確かに少年なら酒を買うくらいなら米を買うだろう。

「ん?そうなのか?
そういえば確かに酒のにおいはしなかったな・・・」

父親も、息子が二日酔いではなかった事に気が付いたようだ。
『そうだよ、人を殺しかけやがって、さあ謝りやがれ!!』
といった感じで父親を睨みつける少年。

父親も悪いと思ったのか哀しそうな目で息子を見ている。


「・・・・忠夫。」


いつになく神妙な様子だ。


「な、なんだよ・・・」


予想外の反応に少年も戸惑っている様子。









「・・・いくら腹がへってるからって、拾い食いはさすがにマズイと思うぞ・・・・?」











「っするかァァァァァァァァァァーーーーーーーーーー!!!!!!!」


魂の雄叫びが早朝の街に響き渡った。


その後も罵りあいながらも、父親は会社へ行く用意を、息子は学校へ行く用意をする。

少年は『文珠』で作った料理という『みょうなもの』を食べたために倒れていたので、
実際のところ、「拾い食い」は当たらずとも遠からずといったところなのだが。
昨晩に大量に吐き出した胃液やら腸液のおかげで脱水症状気味だったため、
水分補給のおかげで少年の体調はすでに回復しているようだ。

「あ、そうそう、お前が使えるようになったとか言ってた霊能力だけどな。
仕事早めに切り上げて見せてもらうからな。
準備が必要なら準備しとけよ?。」

少年のGSとしての目覚めが、父親の帰国の理由の一つである。
父親にとっては非常に小さな理由だが。

「へっ!俺の霊能力を見て腰を抜かすなよ!!」

少年の、霊力を具現化できる力は霊能力者の中でも珍しい部類に入る。
少年の雇い主である美神令子ですら、何の霊具も持たずに除霊を行うことなどできない。
彼の親友の操る魔装術ほどの具現化はできないが、一般人にとっては充分驚愕の能力だろう。

「ほぉー・・・・・。
楽しみにしとくぜ。」

特にからかうことなく父親も素直に応じている。
この父親も父親なりに息子の才能の発現に興味があるのだろうか。



(ふっふっふ!。
隙があれば霊波刀で真っ二つにしてやるぜ!!

・・・でもなあ、いきなり切りかかるのはちょっと不自然だよなあ・・・。
・・・襲いかかっても良いような理由を考えとかなきゃな。)

少年の目的は今までの借りを返す事なのだが、
何の理由もなしに霊波刀で切りかかるのは気が引けるようだ。



(霊能力か・・・。
実際に見た事はないからな。いい話のネタになりそうだ。
女は占いとかオカルトに興味を持ちやすいからな。
口説くときにでも使えるかもな・・・。)

・・・やはりこの父親にとって息子の成長など二の次らしい。
少年が父親が何を考えていたか知れば、背後からでも襲いかかっていただろうが。



相変わらず思惑が噛み合わぬまま、二人はそれぞれの場所へ向かって行った



「あれ?横島さんじゃないですか!!
学校に来るのも久しぶりですね!。
今日は美神さんの所じゃないんですか?」


校門をくぐった時、親友の一人であるヴァンパイア・ハーフのピートが話しかけて来た。

金髪碧眼でさわやかな笑顔の似合う美少年、といった感じのピートは当然のことながら女性にもてる。
今日もピートの登校する姿に見とれている女生徒が周りに何人もいた。
普段ならピートの人気を見せ付けられて不機嫌になるところだが、
女性に言い寄られても決して手を出さないピートに何やら思う所があったようだ。

教室に向かいながらピートに尋ねる。


「なあ、ピート・・・。
お前って、もてるよな・・・。
しかも何百年も生きてるんだろ?。

・・・今まで何人くらいに手ェ出してきた?。」


普段の横島ならこういう話題の時はピートへの嫉妬の炎が燃え盛っていたはずなのだが、
今日は単純な質問、むしろ確認といった様子だ。
嫉妬心どころか、哀愁すらただよっている。


「横島さん・・・・?」


女性の話題には固いところがあるピートだが、今日の横島の雰囲気のためか、
少し話すつもりになったようだ。


「僕も生まれて数十年くらいの時は普通の女性との寿命の違いに気付かず、
恋人を作ったりもしましたが・・・・。
100歳を過ぎる頃には寿命が理由で別れを経験する事が多くなったので・・・・。
それ以降はほとんど女性と付き合うことはなかったんですよ・・・。

・・・急にどうしたんですか?。何かあったんですか、横島さん?。」


「・・・いや、ちょっと色々あってな。

・・・ありがとう、やっぱりお前はいいやつだなピート!!。」


何がそんなに嬉しかったのが、いきなりピートの肩を組み微笑を浮かべる横島。

「!?」

女は全部自分のものと声に出して叫ぶほどの煩悩少年が、
過去の話とはいえ自分に女性関係があった事を知った後の反応として、
あまりに異質だった。


(ま、まさか横島さん!?)


「い、いえ!、確かに今は女性と付き合ってませんけど、やっぱり僕も男なので・・・!!。
そ、そうだ!!。寿命だって魔族の女性と付き合うなら問題ない訳だし!!。

よ、横島さんだって、女性から好かれてますって!!。
そ、それに横島さんは親友ですけど、そ、そういう関係にはちょっと・・・・」

激しく動揺しながら自分の女性好きをアピールしている親友。
はっきり言って今までと180度逆の行動だ。

不思議に感じた次の瞬間、少年は全てを理解した。

『突然哀愁を漂わせながら女性関係についてたずねる自分』

『女性関係がないと知った途端に上機嫌になる自分』

『いきなり肩を組み親友に微笑みかける自分』
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
「俺はホモじゃねェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!」




父親に『拾い食い』呼ばわりされた時以上の魂の叫びが校内に響き渡った。


その後ピートに父親の事を話し、父親の生き方に比べてピートの真面目な生き方に感動し
ああいう行動を取った事を説明すると、やっと納得させる事ができた。

昼休み。


「そんな事があったんですか。
しかし、すごいお父さんですね。」


「まったくじゃノー、とても横島さんの父親とは思えんですノー。」


一緒に昼飯を食べているもう一人の親友、タイガー・寅吉も話に加わる。
ピートは薔薇の花から栄養分を摂取している。


「あんな畜生を親父とは思いたくねーけどな。」


少年もやはり認めたくないようだ。


(女好きなのはそっくりなんですね・・・。)


(親子揃って女好きなんじゃノー・・・。)


口には出さないが少年の親友二人は同じことを考えていた。


「でもこうして三人が揃うなんて珍しいですよね。」


会話の雰囲気を変えるためにピートが話し掛ける。


「ん、そういやそーだよなー。
たいてい俺かタイガーが休みだもんな。」


「そうですノー。」


タイガーも続ける。


横島とタイガーの雇い主兼師匠は厳しいので学業の時間だろうと関係なしに、二人は仕事にかりだされている。
ピートの師匠は二人と違い弟子の生活も考えてくれているので、たいていはピートは学校に通うことができる。


「明日と明後日は仕事ねーから学校行けると思うぜ。
休みの時くらい学校に行くように美神さんに言われてるからなー。」


「わっしも何日かは登校できそうじゃノー。
エミさんが一人で仕事に行ってしまったからノー。」


「へー、珍しいな、タイガーはついて行かんでよかったのか?」


「はー、それが『今回の仕事にうってつけのパートナーを借りてきたから、おたくはいいワケ』
って言われましてノー。
しばらくは休みなんジャー。
エミさんも妙に機嫌良かったからノー。
せっかくだから休みをもらったんジャー。」


(あれ、そう言えば空港でおキヌちゃんがエミさんがどうとか言っていたような・・・?)


気になったのでさりげなくタイガーに尋ねてみる。


「なあ、エミさんの仕事って海外なのか?」


「いや、聞いとらんけど多分日本だと思うノー。
飛行機の予約もしてなかったはずじゃしノー。」


「ふーん、そうなのか・・・。
近場なのにタイガーを使わないなんて珍しいよな。

(ってことはおキヌちゃんが見たのはその相棒を迎えに行ったときかな・・・。
海外からの助っ人かぁー、なんかまた美神さんとやらかすつもりなのかなぁ・・・)」

巻き込まれる事を考えると少年は気が滅入った。
何せあの二人に巻き込まれたらいつも少年がひどい目にあっているのだ。


「それもそうですノー。
普段は特にする事がなくても荷物持ちをさせられる事が多いケンノー。」


縦にも横にも大きいタイガーは荷物持ちや力仕事には最適なのだ。


(でも、よく考えてみりゃ、タイガー抜きで美神さんとやりあうわけないよな。
うんうん。
きっと俺達には関係ないな。)


一応納得したのか、その話はそこまでだった。


眠りながらも授業が終わり、家に帰るために学校を出ようとすると
女生徒の話し声が聞こえてきた。


「ねぇねぇ!、あそこにいる人って新しい先生かなー!?」


「あんな人が先生だったらなー!。」


「見て見て!、あの人かなり良くない!?」


女生徒の黄色い囁きにつられて目をやると、校門で少年の父親が待っていた。
上等なスーツに身を包み、大人の魅力を振り撒いている。
新しい教師だと思われたのか、すでに女生徒に囲まれて質問されている。

穏やかに微笑みながら丁寧に質問に返しつつも、一人一人の顔やスタイルをチェックするのを忘れていない。
女生徒たちは気付いてないが、父親と同類の少年が見逃すわけがなかった。
スーツのポケットに自分のアドレスをこっそり忍ばせている女生徒すら出てきていた。


(あ・・・・あ、の、親父はなにをやっとんじゃァァァァァァァァーーーーーー!!!!

てめぇーの歳で女子高生は流石に犯罪だろうがァァァァァァーーーーー!!!!)


流石に大勢に囲まれているので口説こうとはしていないが、
アドレスを渡した女生徒の身の安全は保障できない。

どうやって妨害しようかとか考えていると、先に父親が少年に気付いたようだ。

「おーー!忠夫ーーー!!
授業は終わったみたいだな!!
じゃあ、そろそろ行くとするか!?」


いきなり声をかけられたため思わず少年は素で対応してしまった。


「あ、ああ、行こうか、親父」

『親父』と言った瞬間、周りの雰囲気が変化するのを少年は感じた。

(はっ!そうか!相手がおっさんとわかってみんな引いてるんだな!?
はっはっは!ざまぁーみやがれクソ親父!!。
どう頑張ろうとてめぇーがおっさんなのは変わらないんだよぉぉーーー!!!)

そう考えながら父親の方を見ると、少年の考えを読み取ったのだろう
「何もわかってないんだな、お前は・・・」といった哀れむような目で少年を見つめている。

父親の反応に戸惑っていると、周りの囁きが耳に入ってきた。


「お父様、かわいそうに・・・。きっと母親似になってしまったのね・・・」
「こんなに似てない親子なんて、犯罪よ・・・」
「きっと橋の下に捨てられていた子を拾ってあげたのね・・・優しいお父様・・・。」
「私だったらもっといい子を産んであげられるのに・・・・」(?)


もう言いたい放題である。
とはいえ見た目や第一印象にとらわれるのが人間である以上、
この反応は仕方がないだろう。
少年の魅力は内面や、意外なところで発揮する強さなのだが
内面の輝きに反比例するかのように彼の外面はくすんでいた。
きっと成長すれば内面と外面が釣り合う、なかなかの男前になるはずなのだが・・・・。

父親の明らかに『できる大人』といった姿に比べ、少年はいかにも『ぼんくら』なのだから、
思春期真っ盛りで年上に憧れる女子高生の反応としては当然のことなのかもしれない。


もはやこの父親と再会して以来恒例となっている、圧倒的な敗北感を味わいながら
少年と父親は車に乗り込んだ。


「クロサキ君、出してくれ」


女子高生相手とはいえ気分が良かったのだろう、上機嫌で
運転席に座っている男に声をかける。


「はっ」


運転席の男は短く答えると、車を出した。
女生徒たちは名残惜しそうな目で車を見送っていた。

当番の掃除を終わらせ下校しようとしていたタイガーとピートが
異様な雰囲気の校門で首を傾げていた。



車の中、立ち直った少年が父親のスーツのポケットから
さっき渡されていたアドレスを盗み取ろうとしていた。


(てめぇーばっかりいい思いさせてたまるかってぇーの!!
よし・・・気付いてないな・・・・もうちょい・・・・もうちょい・・・・!!)




ドスッ・・・・・・・・・・・!!!!



いつの間に抜いたのか、父親は刃渡り20センチ以上のナイフを逆手に構え、少年の頬にあてている。
刃渡りが長すぎたためか、刃の半分ほどが車のシートに突き刺さっている。


「タァァァァァァ、ダァァァァァ、オォォォォォォォ・・・・・・。
父さんのポケットをあさるとは、いい度胸じゃないかァ・・。

父さんはそんな教育をした覚えはないんだがなァァァァ・・・・・・?。」


完全に目がすわっている。最早さっきまでの『できる大人の男』の雰囲気は微塵もない。
かつて幾人ものゲリラ達を狩り、いつしかゲリラ達から『黄色い悪魔』と呼ばれ
恐れられるようになった男のそれであった。


「は、はい、お父様・・・・!!。
(こ、怖いッ・・・・!!これがサラリーマンの目か!?
そこらの悪霊よりイッちゃってるじゃねぇーか!!!)」

完全に闘志の失せた少年を見て満足したのか、ニカッと笑い

「女ぐれーは自分で捕まえるんだなッ!
なぁーに、おめぇーが一人前のGSになりゃあ向こうから寄ってくるって!!」

珍しく慰めているのか、まともな事を言っている。
とはいえしっかりポケットをガードしている以上、
何人かには手を出すつもりのようだが。


(あ、あかん・・・・・・!!!!!
霊能力に目覚めたくらいじゃ、この親父には勝てんのか!?

い、いや、大丈夫だ!俺にはまだ『文珠』がある!!!
あの反則技なら、この親父にも勝てるはず・・・・・!!!!
まだや・・・!!まだ俺は負けとらんぞォォ・・・・・・!!!!!)


どう考えても負けっぱなしなのだが、少年の闘志はまだ折れてはいないようだ。


少年と父親ともう一人の男を乗せ、車は何処かへと走っていった。










―後書き―
横島君の扱いについて横島君のファンの方はお怒りだと思いますが、
まだ彼は成長途中なんです!!。

冒頭で時期の説明してるのは、そのためなんです!。
この横島君はまだまだ未熟な横島君であって、
間違ってもアシュ編が終わって成長した横島君ではないのです!!。

彼の外見について悪く書きすぎかもしれないですが、あれだけ女性に声をかけてるのに
一度としてナンパが成功しないのは、よっぽど彼の外見が・・・・・・(略)。

もちろん、彼の内面がピカイチなのは言うまでもないですが。


恥ずかしい事に恒例になりつつある固有名詞の間違いですが、
また発見された方は教えていただけるとありがたいです。
注意してたはずなのに今まで全部どっかでミスしてるので・・・・(泣)

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