ザ・グレート・展開予測ショー

再建!妙神山


投稿者名:コピーキャット
投稿日時:(05/ 6/ 3)


「 小竜姫様!今こそ神と人との合体に挑む時ですッ!!心だけでなく、体の方も」

横島忠夫が事務所に現れた小竜姫に対して、果敢なダイブを決行。あと十pと言うところで、美神令子の神通棍がうなりを上げ、事務所の床を熱く抱擁することになった。



「新しい修行所を?」
「ええ、アシュタロス戦の際に妙神山が逆天号に破壊されましたから」
「でも、前にも焼け落ちたけど、すぐに修復したじゃない」

さらりと言う令子の言葉に、小竜姫は頬をひくつかせた。
心の傷にさわる事を言われたからだ。
前回焼け落ちたのは、小竜姫が暴走したためである。彼女はそのことを結構気にしていたのだ。
もっとも、暴走の原因が横島にあった訳なのだから、間接的にでも、雇い主の令子に責任がある訳なのだが。
そう思いつつも、小竜姫は反論を心の奥底にとどめる。

「建築資材と建築機械なら、オカルトGメンの方で手配してもらったんじゃないの?」
「たしかにそれで鬼門と居住空間だけは何とか修復できたのですが……」
「肝心の修行所が復元出来ないのよ」
「ママ」

声の方を振り向くと、娘のひのめを抱いたオカルトGメンの参謀、美神美智恵が立っていた。

「修行所は他の設備とは違って、霊的建築資材が必要になるわ。霊的戦闘に耐えられるだけの強力な結界が必要なの」
「この前の時も、修行所は修復したんじゃなかったんスか?でないと、俺たちが『でんじゃらすコース』を受ける事が出来なかった訳だし」

横島が疑問を差し挟む。

「ええ、前回破壊されたのは妙神山だけでしたけど、今回は世界中の霊的拠点108カ所も破壊されました。そのために、霊的建築資材の供給が追いつかないのです」

小竜姫は「前回破壊『された』」の部分を強調して説明する。
どうやら自分のせいだと思いたくないらしい。

「つまり、代替施設を探しているわけね」
令子は頷いた。


筋肉○付のように、「霊能番付」をやってもいいわね。
司会はもちろんイチローで。

『おおっと、今大会の希望、横島忠夫選手登場です。
ポテンシャルだけは超一流。
霊波刀!文殊!ハンズ・オブ・グローリーとまさに霊能の百貨店!まさに、霊能界の東○ハンズ!
期待通りの活躍を見せることで、「軟弱な坊や」の二つ名返上なるか!!』


それで、スポンサー収入をがっぽり……

令子の考えを、美智恵は鋭い視線を送って、遮る。
「神様相手に不動産業も始めるつもり?」
「い、いやだな、ママ……そんな、あはははは……」
「あたしに思い当たる場所があるわ」
美智恵は小竜姫に微笑んだ。





事務所のメンバーと小竜姫が美智恵に連れられてやってきたのは、東京都庁地下。
先のアシュタロス戦の際、戦略拠点となった場所である。
ここには魔物や妖怪達の霊波動をシュミレートし、訓練を行うことが出来る、霊動実験室もある。妙神山の修行所としては最適な場所と言えよう。

「とりあえず、妙神山の方が再建出来るまで、と言うことになるわね」
「ありがとうございます」
美智恵の取り計らいに感謝する小竜姫。

「神様にお礼を言われる程ではないわ」
「何しろ、GS育成にも関わってくる問題だしね」

「なんだか、ずいぶん昔のような気がしますね」

おキヌが感慨深そうに設備を見回す。
令子も激闘を繰り返した霊動実験室を見回した。
本当にあれから平和な時がきたんだ。そう実感する事務所メンバーである。


「でも、一つ問題があります」
「なにが?」
「交通の便が良すぎるのです」
「確かに、あの妙神山と比べればね」

令子よりも、美智恵の方が先に小竜姫の思ったことを理解する。

「新宿って、一等地じゃない。ここよりもいい場所なんてあるわけ無いわ」
「妙神山は人外魔境にあるために、あそこまでたどり着くこと自体、一つの試練になるのよ」

自分の娘にため息をつく母親。
必要ならどんな犠牲も払うが、逆に最小限の犠牲で最大の成果を上げようとするのも令子の性格である。楽をすることばかり考えると、将来ろくな事にならない。苦労性の美智恵には、令子の将来が危なげに映る。

「確かに、ここじゃ、パピリオと猿の師匠は喜びそうだな。秋葉原が近いから新作ゲームを買いに行く手間が省ける」
「妙神山管理人はそのような浮ついた任ではありません」
多少語気を強めるお堅い管理人。

「こうも簡単に来る事が出来るのだったら、修行希望者が殺到するわね。それをどう選別すべきか……こうなったら、あたしが一肌脱ぐしかないわ」
「ふぅん、具体的に?」
「あたしが妙神山修行所修行資格検定試験を行うの」
「そして、高額な検定料を全部自分の懐に収めるつもり?」
「そう、採点が手軽な筆記テストだけにして、検定料は……って冗談よ、冗談。あははは……」
母親のじと目に見つめられて、思わず声がうわずってしまう令子。





……修行の試練に合格するたびに、力を一つずつ得ることが出来る。

しかし、それだけでいいのだろうか。やはり、試練にはゴールがあり、そこには、たくさんの美女が――バニーガール、または水着であればなおOK――がシャンパンを持って待っている、と言うのが本当の姿ではないだろうか。
そして、試練の合格者には熱い口づけが……

そうなると小竜姫様では役不足と言わざるを得まい。
やはり、こう、ぼんっ!きゅっ!ぼんっ!としたグラマラスな方達が必要になるだろう……

「横島さん!」
小竜姫が涙目になって横島をにらんでいる。
やはり体型にコンプレックスがあるのだろう。
「ああ、しまった、いつものクセで口にだしてしもうた」
「あんたは人が真剣に悩んでいる時に!!」


令子にしばき倒される横島を見ながら、それまで成り行きを見ていたおキヌちゃんは一つのアイデアを思いついた。





その日、GS達が都庁にある一室に集められていた。
オカルトGメンの主催する妙神山修行希望者参加申し込み会に参加するためである。
それまでのように、わざわざ人外魔境まで行く必要が無いというのでトレーニングジムに通うような気軽な気持ちでやってきた人ばかりである。

とはいえ、悪霊を百鬼以上殲滅した経験を持つ猛者ばかりだ。筋肉も桁外れに盛り上がり、目つきも常人の者とはかけ離れて鋭く、まさに、戦士と勇士の見本市と言った風情である。

会場は試写室である。

場内が暗くなり、
                            『妙神山修行のすすめ  
       
                             妙神山修行所作成
        
                               映倫未登録』
        
とタイトルに続いて、映像が流れる。
上映されるのは修行内容の一部。


この世の者とは思えない叫び声に続いて、悲鳴が続き、まさにスプラッタホラー。
もちろん特撮もSFXも使われていない無添加新鮮第一の生ものである。

食い入るように見つめる参加者。
誰もが声を失ってしまう。

血しぶきが飛び、肉がつぶれる音が響く。

「こ、これが、修行なのか?」
「すさまじい……」
「こんなのやられたら、死んでしまうぞ」
「いや、これはほんの序の口だそうだぞ……」        
        
上映が終わり、場内が明るくなると、そこには誰もいなかった。
全員逃げ出した後だった。

「……今日も参加者はゼロなのね〜」
受付担当のヒャクメが嘆く。

「やはり……こんなもの、普通の感覚では刺激が強すぎるのではないでしょうか、先生……」
画面に映る惨状を見ながら、西条はつぶやいた。

「全く、あの娘は……」
ひのめを抱いた美神隊長がため息をつく。

画面には、美神令子除霊事務所の様子が写されていた。
横島忠夫を神通棍でしばき倒す美神令子のごく日常的な光景を。


















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