雪之丞の秘密
投稿者名:コピーキャット
投稿日時:(05/ 5/29)
「けっ、おもしろくねぇ」
横島忠夫は空港からアパートに帰ってきた。
先ほど父親の大樹を空港まで送ったのだ。
会社の方に顔を出すために日本に帰ってきたのに、本当は愛人達と会うために帰ってきたんじゃなかと思うぐらい、女に手を出していた。
そのうち刺されるな、ありゃ。
というより、さっさと刺されちまえ。
いや、それよりも、どっかで隠し子でもいるんじゃねぇか。
「ん?」
鍵を開けようとして、ドアが開いているのに気が付いた。
誰かいるのか?おキヌちゃんか小鳩ちゃんが留守の間に合い鍵で入ってきたのかな。
「よお、勝手に入ってるぜ」
そいつは他人の家に堂々と入り込み、おまけに他人の買い置きのカップ麺を喰っていやがった。
「どうした。自分の家だろ。遠慮する必要はねぇぜ」
あぐらをかいて、麺をすする雪之丞は俺を一瞥するとこうのたまわった。
「つーか、お前にいわれたくねぇよ」
「ま、俺とお前の仲じゃねぇか。堅いこと言いっこなしだぜ」
いつから、そんな仲になったんだよ。
「そうだ、お前に見せてやろうと思ってたものがあったんだ」
言いつつ懐から写真を一枚取り出す。
「俺のママだ。きれいだろ」
「へぇ、お前に似合わずきれいじゃ……」
俺はその写真を見た瞬間、背筋が粟立つのを覚えた。死の恐怖と言ってもいいだろう。
「あまりの美しさに声も出なくなったか?」
確かにその写真に写っている女性は、きれいだった。どこか雪之丞の面影をたたえた顔立ちだ。思わず魅入ってしまいそうな笑顔でこちらを見ている。そして、いつも聞かされていたように、人間としても、かなりの部類に入ると一目でわかった。
しかし、問題はそこではなく……
俺は雪之丞の得意げな顔をまじまじと眺めた。
もし、こいつが本当の事を知ったら、俺の命は無いだろうな。確実に……
さっき見たばかりの、殴りたくなるようなにやけた笑いを浮かべた横島大樹が、その美しい女性の肩を抱いてそこに写っていた。
今までの
コメント:
- 「横島君的復讐」と「ゆっきー いんたーもっしょん」「とつきとうか うらおもて」を読んで、電波を受信して思わず書いてしまいました。
(コピーキャット)
- 可能性1)ツーショットの写真しか残っていなかった:この場合、親しい友人だったという可能性(逃げ場)がある。
可能性2)横島の推測が正しい場合:グレート(サスペンス劇場仕様)マザー襲来。
……おお、なんて(悪)夢の広がるストーリィ!
これは続きを作って欲しいかも?! (ふらいんぐそーさー)
- うぉっっ!?なんて続きが気になる話なんだ!!
あの父親ならありえそうで怖いな(汗)
真相はなんでしょうね。 (法師陰陽師)
- 短いけど上手いなぁ、これ。
確かに、雪之丞の父親に関しては一切触れられていなかったし、年齢を考えたら十分にありえる話です。
いやがうえにも様々な想像が拡がるのですが、あえてここで終わらせているのが実にもどかしくていいです。
続きを希望するのは野暮、てなものですよね。 (赤蛇)
- 真相が知れ渡ったとき、横島一家&雪之丞の間におびただしい血が流されそうな気がします…ああ、雪之丞の立場が切ねぇよ……でも面白いです!! (ちくわぶ)
- いいパンチ持ってますねーw
受信元は黙っといてもいいと思いますよ。てゆーか『もっしょん』は触れんといてください… (MAGIふぁ)
- この場合、ユッキーは私生児?認知のみの…。伊達姓は母親のほうですか。怒りの矛先は横島だけでなくて大樹にもいくかと。史上最強の兄弟を産ませた大樹、これでタイガーや、小鳩・エミ・冥子などの父親であった日には…。 (藤龍)
- あははは・・・・
いや、心の底から脱帽しました。
言われてみれば二人とも似てるかも。
二人が妙に気が合うのはこれが理由か・・・・?。
最初の死闘も兄弟喧嘩と思えば微笑ましいですよね(笑) (丸々)
- 見事な着眼点に脱帽です。
笑わせていただきました。 (キリュウ)
- 久方振りにお名前を拝見しました。コピーキャットさん。
掌篇の命であるネタの良さはもちろん、効果的な伏線がきっちりと張ってあるのが心ニクい(笑)。
敢えて重箱の隅をツツくとすれば、冒頭の状況説明が『父帰る!!』篇の状況にもほぼ該当するので、小鳩や雪之丞の名前が登場した時点で時系列上の混乱を引き起こす懸念が少々あるくらいでしょうか。ま、些細な所です。
ま、それはそうと……いくら人の縁が主題になる作品とは謂え、さすがにこんな縁は欲しくないわなあ(苦笑)。では。 (Iholi)
- はじめまして、すがたけと申します。
「先越された!」これが第一印象でした。
……いや、危険極まりない、血を見るネタで、という訳ではなくて、『ユッキーの父親像』を書こうとしていた矢先だというのにこんな面白いものを見せ付けられてしまっては……ユッキーパパが大樹にしか思えなくなりました。お陰で暫く伸びそうです(超ド級の言いがかり)。
ま、拙作の方はどうでもいいとして、感想としては……素手でも対霊戦闘がいけるというあの戦闘能力から鑑みると、無きにしも非ず――賛成に一票投じます。 (すがたけ)
- 真相を知った雪之丞がどうなるのか…見たい様な見たく無い様な…w (偽バルタン)
- 短いながらも見事なオチのつけ方、脱帽ものです。ああ、お腹が痛いw (kurage)
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