ザ・グレート・展開予測ショー

動き出した歯車〜第七話〜


投稿者名:アハト
投稿日時:(05/ 5/22)

動き出した歯車
第七話『ラグナロク〜神々の黄昏〜・4』

横島が、攫われてから早三日。
地下基地に、人間界GSの主戦力が集まった。

「で、さっさと状況を説明してほしいワケ 」
「わかってるわよ 」

エミの言葉に、美神が不機嫌そうに返す。
一同は、ピンと張り詰めた雰囲気の中、美神の説明を待った。
美神は、自分が知ることをすべて話す。
敵の初期目的が横島誘拐であること、
敵の大体の主戦力のこと、
敵の拠点と思しきものがある地点など、そんなことを話した。

「戦力規模は、アシュタロスよりも大きそうだけどよ。
 実際の話、どっちのほうが強いんだ? 」
「純粋な、パワーで言えばアシュタロスの方が圧倒的に強いはずよ。
 ロキは、古き神だから、それなりに力は落ちてるはず 」

力は落ちてる。
その言葉に秘められているのは、力以外のものをロキが持っているということを示すもの。
美神の返答を聞いた一同は、息をのんだ。

「私たちが、正面からぶつかっても、勝機は薄いわ 」
「逃げの一手ということだね? 」

唐巣の言葉に、美神は頷く。
美神は、美知恵と話し合った結果、導き出した答えを発表する。

「横島君の身柄を確保そして、敵にいると思われる文珠使いを、撃破すること。
 これが、私たちの目標よ」

妥当だと思われる作戦を聞き、一同は頷いたのだが。
美神に、当然な質問を投げかけるものが。

「美神さん。具体的には、敵の要塞をどう攻略していくんですか? 」
「今は、情報が少ないのよ。当面は、情報収集になるでしょうね 」

ピートの問いへの答え、それに不満の声を上げるのは、雪之丞。
ただ、その理由は面倒だ、とかそういうものではなく。
敵地につかまっている横島を、案じたものである。
美神は、そんな雪之丞の心情を知ってか知らずか、”目的達成のためよ。我慢なさい”とたしなめた。
横島救出作戦及び、敵文珠使い撃破へ向けての具体的なことが、決まっていっていくとき、横島はというと……

「おばちゃん!今日は、B定食ね 」
「あいよ 」

敵拠点の食堂にて、昼飯を取っていた。
給仕のおばちゃんからB定食を受け取ると、横島は席を探して歩き始めた。
今は、昼飯時……つまり空いている席は少なく、当然相席になるわけで。

「ここいいか? 」
「おう、いいぞ 」

……横島は、違和感なく食卓へと着いた。
そして、横島はまた違和感なく周りの人と話し出す。
この拠点の色にすっかり染まっている。

「そういや、ふと思ったんだがよ。ロキって、何考えてんだ? 」
「俺たちは、よく知らないな。多分ラグナレクでも、起こすんじゃないの? 」

横島は、周りの連中と親睦を深めつつ、情報収集をしているらしい。
敵と行動を共にするという経験を前にしているので、心情は至って落ち着いているはず。
横島は、普通な答えに少しがっかりしたがこの後は、怪しまれないように取り留めのない話をするのだった。

「ふぅ、収穫はなしだな 」

食事を終え食器を返すと横島は、食堂を後にし一息つくとふとそう漏らす。
ここ三日、情報収集に励んでいるのだが、思った以上に難航している。
実際の話、敵の主戦力になりうるのが、ヘル・ヨルムンガンド・フェンリル・シギュン・ロキだということ。
それに、一般兵がシギュンの存在自体を知らないので、シギュンが重要な鍵を握っているかもしれない、という憶測ぐらいしか情報を集めれていない。
後は、地道に基地内MAPでも作成しようかと、考えているところ。
もっとも、そんなものを作ったのがばれたら、即洗脳という嫌な結末が見えてくるのだが。

「それにしても、美神さん。いつになったら着てくれんのかなぁ 」

横島は、手すりにひじを置くと、少し涙ぐんでそうぼやく。
しばらく、あたりの風景を眺めていると不意に声をかけられた。

「美神が、迎えに来ると思うのか? 」
「ん?ああ、きっと……いや、絶対くるさ 」

声をかけてきたのがヘルであった為、多少緊張を感じたが顔には出さずそう返す。
ヘルは、横島から返って来た答えが意外だったのか、また質問を重ねる。

「なんで、そう信じられる?敵の本拠地に、ただの人間が乗り込んでくるなど、笑い種にもならぬというのに 」
「そりゃぁ、美神さんだからとしか、言いようがないんだよな 」

横島は、苦笑いを浮かべてそう答え、心の中で”あのヒト受けた借りは、割り増しして返すからなぁ”とも考えていた。
ヘルの深く被ったフードの上からでも、呆れた表情を浮かべたのが感じ取れるほど、露骨に溜息をついた。

「まぁ、勝手に信じてるがいい。結果は、わかりきってるがな 」

ヘルが、踵を返し横島に背を向けた。
横島は、内心で毒づいたのだが、流石に声には出せない。
静かにヘルの背中を見送る横島。

「う〜む。こりゃちゃっちゃと逃げ出したほうがいいのかもな。
 逃げ出せるかどうかは、わかんねぇけど…… 」

横島は、ヘルが来る前と同じ体勢になり、また同じ風景を眺める。
そして、今は会うことができない仲間たちに思いを馳せるのであった。


「こちらA班。目標発見できず 」
「こちらB班。発見できません 」
「ご苦労様、捜索範囲を拡大して、引き続き捜索をお願いします 」

集会があった翌日から連日、異界へのゲートの探索が行われている。
今の所まったく成果はない。
現在は、現場復帰してきた美知恵が、指揮をとっている。
探索を始めて二日がたっているが、横島がロストした地点が結構あいまいであった為、手間取り。
結局のところ、人海戦術に頼ることとなった。

「ふぅ。今日も収穫は、見込めないか…… 」
「いつになく弱気じゃないか。美知恵君 」

目頭を押さえて言葉を漏らした美知恵に、唐巣が声をかける。
美知恵は、声をかけられて初めて唐巣の存在に気がつき。
声が聞こえたほうを振り向く。

「唐巣神父…… 」
「一生懸命なのはいいが、根を詰めすぎるとよくないよ? 」

此処しばらく、働き詰めの美知恵を心配する唐巣。
美知恵は、唐巣の言葉に生返事を返す。
一刻も早く横島を見つけなければという焦燥からだろう。

「敵拠点の場所の割り出しに、思ったより苦戦しているのはわかるがね。
 焦燥は、失敗を促す元だ。少し頭を冷やしなさい 」
「・・・・・・・・・ 」

唐巣は、美知恵に諭すように言った。
美知恵も、その言葉を聴き冷静になったのか、唐巣の言葉に頷き。

「そう……ですね 」
「わかったら、少し休みなさい 」

美知恵は、探索班に探索の終了を告げると退室していった。
唐巣は、美知恵を見送ると一人溜息を漏らす。
そして、部屋を見回した後、無言で退室しいていく。


「……ねぇシロ。目障りだからじっとしててくれる? 」

敵拠点探索に参加していない面々は、地下基地で休息中。
ただ、精神的な疲れが出てきたのか、狐と狼の喧嘩は多発している。

「横島先生が、攫われたんでござるよ!?これが、じっとしていられるか!
 お前みたいに、冷淡でいられないんでござるよ! 」
「……聞き捨てならないわね。横島が攫われてピリピリしてんのは、あんただけじゃないのよ!? 」

何時もならこの辺で、おキヌちゃんの制止が入るのだが、現在はそんな気力が沸いて来ないのか、私室にこもりっきりだ。
故に、留めに入るのは……

「二人とも、いい加減になさい 」
「「だって、こいつが 」」

二人そろって、美神に反論するのだが美神の眼光を前にひるむ。
美神も、最近はピリピリしているので、気迫が通常の当社比三割り増し程度はある。
ただでさえ、仕事がないというストレスがあるというのに、こう頻繁に喧嘩をされては溜まったものじゃないと、美神はぶつぶつと漏らす。
美神が、喧嘩をたしなめたのもつかの間……
今度は、互いに睨み合い”ウ゛−”っとうなり声を上げて威嚇を始めた。
これに、美神は我慢の限界を迎えたのか……

「喧嘩すんなら表でやってきなさい! 」

美神は、そういうと二人を自分たちが使用している、溜まり場から締め出した。
流石に、二人もおとなしくなるかと思いきや。

「お前の所為でござるぞ!? 」
「なによ!あんたが先にいちゃもんつけてきたんでしょーが!! 」

先ほどよりも激しく喧嘩をする始末。
美神は、そんな状況に頭を抱えた。

「はぁ、何で横島クンが居ないだけで、皆いらつくのかしら 」

美神は、今は居ない助手……丁稚を思い浮かべていた。
そして、ぼぉっと呆けていると、一つの知らせが緊急で届いてきた。

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