ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫奮闘記 84〜スタート失敗〜


投稿者名:ぽんた
投稿日時:(05/ 5/13)

「ねえヨコシマ? 随分深い処から知らない女の匂いがプンプンするんだけど一体誰なのかしら?」

それは静かな一言、到って平静な声音。
だが発言者の表情がそれを裏切っている、猜疑心に満ちた、誤魔化しは許さないという顔。

「え? 女の匂いって……妙神山に寄って来たんだからそりゃするだろ?」
「違うわよ、“知らない”女の匂いって言ったでしょ?」

惚けようとはしてみたものの、全く通用する気配すら無く正直に話すしか無さそうだった。



「ただいま〜、今そこで雪之丞と……ってアレ? 横っち?」
「おう、横島帰ったのか」

「ああ、さっき帰ったばっかだ。久し振りやな銀ちゃん」

どう話そうかと思案している時に帰って来たのは同居人、と言うか居候と半居候の同僚と幼馴染。
最近地方へのロケが続いていた為東京には殆どいなかった銀一も一段落ついたのか珍しくこちらに来ていた。
帰って来た処をマンションの前辺りで雪之丞とばったり会ったのだろう。

「ちょうど良かったわ、雪兄ぃと銀兄ぃも手伝って。ヨコシマから知らない女の匂いがするの」

タマモの発言を受けて二人が訝しそうな表情になる。

「タマモが知らない女?」
「なんや横っち、彼女でも出来たんか?」
「そんなんちゃうわアホッ! 彼女やのうて師匠や」

「「「師匠?」」」

横島の交友関係はタマモはほぼ総て把握している。
そのタマモが知らないという以上は高確率で今回の魔界訪問で出会った相手という事になる。
別に横島が彼女を作った処で構わないのだが、師匠というのは予想外だった。

「オメェ何人目の師匠だよ? これ以上何を教わるつもりだ?」
「しゃーないやろ、俺には足りない物が多過ぎるんだよ。まだ弱いんだ」

今迄の横島の師匠は三名、斉天大聖からは体術を含めた様々な術を、小竜姫からは体術と剣術。
かなり畑違いにはなるが、魔鈴からは料理を。この上何を修めるつもりなのか。
だいたい“まだ弱い”などと言われては、その横島に負けた雪之丞の立つ瀬が無い。

「弱い? オメェが? どこが?」
「“俺の”魂が」

半ばカラむような問いに対して間髪を入れずに返って来たのは明快な答。
明快ではあるがサッパリ訳が解らない、“魂”が弱いなどと言われたら霊的虚弱児のような印象を受ける。

「横っちってプロのGSやろ? 強そうやけどな〜」
「ヨコシマの魂が誰に劣るというの?」

そんな意見の数々にも横島の表情は変わらない。

「誰かと較べてどうこうって物じゃない、絶対的に足りてないんだ」
「そんでその修行を積めばどれくらい強くなるんだ?」

雪之丞がいかにも彼らしい事を尋ねて来る、これ以上差を付けられてたまるか、と言う処か。

「いや、多分戦闘に関しては変わらんと思うぞ?」
「はぁ?」

それでは修行をする事に何の意味があるのか解らない。
強くならない修行など何の為に行うというのか。

「まぁ俺なりの理由があるんだよ、大事なね」
「もしかして“アイツ”絡みか?」

横島は何よりも自分の身内を大切にする。
それを護る為に力を欲したこの男が強さ以外に興味を示す理由など一つしか思いつかない。
明確な返事こそ無いが、今の表情を見れば雪之丞の問いが正鵠を射ているのは自明の理。

何となくこれで追求は止むだろうかと横島が期待した頃に、それを打ち砕く声がした。

「それでどんな内容の修行なの? 相手は一人?」

タマモのその質問に対し、どう答えれば最も誤解を招かずに済むのかで悩んでしまう。
誤解も何もヤる事はヤっているのだが、そもそもの動機は決して不純な物では無い。
だが余りにも都合の良過ぎる言い訳だと解釈される可能性は非常に高い。

「え? う〜ん、相手は一人っちゅうか一柱って言うか……うん、とにかく一人だぞ、うん一人だけ」

いきなり初っ端から都合五名の相手を昇天させましたとは流石に言い出し難くドモリながの返事だが
その様子が怪しい事この上無い。まるで追求して下さいと言わんばかりに怪しさ大爆発である。

「ふ〜ん、一人じゃないんだ? 何人? 三人? 四人? 五人? 六人?」
「ナンノコトダカワカリマセン」

人数を例えに出しながら問い詰めると“四人”の部分で僅かにだがピクリと肩が動いた。
何とも解り易い反応である。恐らく“師匠”を除いての人数だろうから計五名という事だ。

例え女性の躯に精通し、色香に惑わされる事が無くなったと言っても所詮は横島である。
相手が元々性愛の対象では無く、純粋な愛情と保護の対象の場合は心の鎧など紙の如し。
言わば横島が最もポーカーフェイスを保てない相手がタマモである。

「へ〜、四人も相手にナニをしたのかしら? 教えてくれる?」
「えっ? いや、ほら、別にそれは、その……接待だよ接待!」

まるでスーツのポケットから風俗店のマッチが出て来たのを妻に見られて必死に言い訳している夫の姿。
タマモの額には青筋が浮き、横島の額には冷や汗が浮く。タマモは横島にとっては“妹”であり
厳密に言えば言い訳する必要性も怪しいのだが、それでもアタフタとなるのが横島である。

「おいおい接待って事は相手は魔界の綺麗ドコロか? かーっ羨まし「ふ〜ん羨ましいんだ雪兄ぃ?」い…」

雪之丞から思わず洩れた言葉に対して割り込むのはタマモの口から放たれた氷弾。
まるで雪合戦の雪玉の如く、大して固くも無く痛みも無い、だがもたらす温度は氷点下。

「羨ましいって事は自分もそんな目に会いたいって事よね? 今度弓さんに言ってやろ」

その後に放たれたのは氷柱を銃弾にしたスナイパ−ライフル。
さながら50口径の対物ライフル、バーレットM99-1。
人体に命中すれば紙のように千切るが如く、雪之丞の軽薄な気持ちをブチ砕いた。

「バババカ野郎、んな訳無ぇだろ? 俺は全っ然そんな事思って無ぇぞ? 本当だぞ? 本当の本当に」

焦りまくった挙句にドモリながらそんな事を言って来るが実際にどうかは解らない。

「だから弓の奴に言わないでくれると嬉しいぞ、全身全霊で感謝したくなるくらいに」

胸を張って情無い事を堂々と言い張るのは誰に対する遠慮なのか、可愛い妹分なのか大事な彼女か。

「じゃあ雪兄ぃも協力してね」
「おう勿論だとも。横島、お前は全くなって無ぇ!」

その掌を返す速さは音速を超えるのではないか、と思える程の速さで友を売る雪之丞。

「テッテメェ、前に依頼主からバニーちゃんの店で接待しようかって誘われた時は嬉しそうにしてただろうが!?」
「ばっ馬鹿野郎! 俺は速攻で断っただろうが、お前は未練がありそうなツラしてたがな」

横島達は現在格安の値段で除霊依頼を受けている為にその余りの安さに逆に申し訳無く思った依頼主から
せめてものお礼にとそのような誘いを受ける事も珍しくない。依頼主のオッサン連中からすれば
若い男が喜びそうな店という発想でそのような誘いをして来るのだろうが、六道除霊事務所の構成員は
男だけではない。所長たる冥子が女性である以上はその手の誘いは総て謝絶している。
その時に断った理由もそのような物であり、別に他の理由など無いのだが現在は横島の立場が弱過ぎる。
どうしても話の流れ上雪之丞の方に軍配が上がってしまう。

「ふ〜ん、ヨコシマは未練があったんだ?」
「ちっ違うぞタマモ、なぁ銀ちゃんならそんなお誘いも多そうやから解るやろ?」

なんとか味方を増やそうと悪足掻きをする横島だが幼馴染の返事はツレナイ物だった。

「阿呆かっ、こちとら人気商売やのにそんな誘い受けられる訳無いやろ?」
「やっぱ銀兄ぃはそうよね〜、ヨコシマと違って」

呆気無く見捨てられた挙句にタマモの更なる追い討ちが続く。正に四面楚歌。

「ううっ、俺は悪者なのか? 駄目な奴なのか? ドちくしょーっ!」

泣き真似をしながら雄叫びを上げつつ部屋から飛び出して行く横島を見遣りつつ。

「あ、逃げた」

冷静に現状を受け止めるタマモだった。



「ねえ二人共どう思う?」

その問い掛けは勿論横島に関しての事。
結局白状しないままこの場から逃げ出した。
いったい彼は魔界でナニをしたと言うのか。

「どうって言われてもな、接待役でおねーちゃんが付いて」
「あのヤローがそれに手ぇ出したかどうかってこったろ?」

怒っているのかと思いきや、思いの外冷静なタマモの様子に意外そうな男二人。
不機嫌になられるよりもこちらの方が歓迎すべき状況ではあるのだが予想外ではある。

「手出したと思う?」
「「…………」」

ある意味非常に答え難い質問である。ここで横島の株をドン底まで下落させておけば可愛い妹分からの
好意の自分達への分量が増えそうだという見込みはあるがタマモを落ち込ませるのは本意ではない。

「私…ヨコシマって女のヒトを深い処では避けてるのかと思ってたんだけど」
「あ〜そんな感じあったな〜。綺麗処の女優がコナ掛けてもスルーしとったしな〜」
「何かフッ切れるような切欠でもあったのか? すんげぇイイ女に出くわしたとかよ」

タマモが出会ってからの横島は女性と接触したがらないような処があった。何かを恐れるように。
銀一が二度目の再会を果たした後の横島の女性への態度は幼い頃とは別人のように消極的だった。
まぁあの年になってまでスカートめくりなどに興じていたら、それはそれで問題だが。
雪之丞の知る横島は“ある時”を境に女性への過度の積極性が反転していた。
そりゃもう劇的ビフォーアフターってなくらいに変わっていた。
男として正面から女性と向き合う気になれたのならそれはそれで目出度い事だと思う。

「って事は雪兄ぃは手を出したと思ってるんだ?」
「出せるようになったんなら良いなと思うぜ」
「それって前に聞いた“死に別れた彼女”に関係してるんかいな?」

無論銀一はアシュタロス戦役に関する総てを知っている訳では無い。
唯横島がその時に辛い別れを経験したという事を知っているだけであり、それで充分だった。

「確かに“ルシオラ”ってのはイイ女だったんだろうしアイツが忘れられないのも解る。
 だがアイツが囚われ続ける必要が何処にある? 新しい出会いを得て何が悪い?」

雪之丞自身は彼女持ちだし誰か一人特別に大切な女性がいる事による幸福感を味わっている。
中々くすぐったいような感覚だが決して不快な物でもない。
そんなささやかな幸福感を横島が味わってはいけない理由など無い。
そう思っていたのは当の本人だけだ。
その横島が自らに掛けた制約を外して誰かと恋愛出来るようになったのであれば喜ばしい事だ。

「いやまぁ、俺は横っちがどんだけモテても不思議には思わんけどな」


小学校時代の少々苦い思い出を紐解くと、目立ってでは無いが横島はモテていた。
今でも美神事務所のおキヌという少女は明らかに横島に対して好意を持っているようだし、
横島の彼女の有無を聞いてきたり、紹介しろと言って来たりする女優もいる。
本人さえその気になれば幾らでも潤いのある生活を送れるはずなのだ。

「じゃあ二人はヨコシマが彼女を作るのは賛成なの?」
「「まあな」」


そう問い掛けて来るタマモの真意は解らないが取り敢えず正直に答えておく。

「その“彼女”が別に私でも可笑しくは無いわよね?」
「「…………」」

それは一種の爆弾発言、一瞬何を言われたのか二人共把握出来なかった。
横島に彼女が出来る事とタマモに“彼氏”が出来る事は全く別の話である。
ましてや両者がくっつく必然性など世界の果てまで探しても微塵も見当たらない。
無論タマモとて成長して思春期を迎えれば恋愛もするだろうし、将来は誰かと結婚するだろう。
だが今はまだ中学一年、そういう話は後ほんのもう少し先の事として考えたかった。
この辺りが微妙に兄バカなバカ兄二人である。

「可笑しくは無いけど無理にそうならなアカンちゅう訳でも無いやろ?」
「やっぱ中学生は中学生同士の方が話しとかも合いそうだしな?」

タマモが通うのが女子校なのは百も承知で白々しい事を言っている男がいる。
そして当然の如くそれは相手に何の感慨も与えない。

「勿論二人共協力してくれるのよね?」

ニッコリとそれはそれは可愛らしい笑顔でそんな事を聞いて来る妹分に対し否定の言葉など返し様も無い。
さりとてハイ解りました、と言うには内容に抵抗が有り過ぎる。

「あ〜そりゃ勿論構わんが、横島の様子を見る為にも少し時間を置いた方が良いんじゃ無ぇか?」
「せやせや雪之丞の言う通りやで、後10年か20年か30年か40年か……」

「協力するつもりが無いならハッキリと言ってくれて良いのよ?」


思いっきり気乗りしない様子の二人にタマモが軽く返す。
別にそれぐらいの事で二人に対して不興を覚える事など在り得ない。
そもそもタマモ自身に焦るつもりなど無い。
横島が女性に対しての垣根を取り払ったのだとしても、その後の“最初の彼女”になる必要など無い。
大事なのは“最後の彼女”になる事だ、それには10年以上掛けた処で問題無い。

例え“彼女”が出来たからと言って“妹”を蔑ろにするような男でも無い。
寧ろ妹を大切に思う男に不満を感じる女の方が多いだろう。
そしてそんな相手にはコブとして相応しい嫌がらせをする気は満々である。
だとしたら何れ破局する可能性も高いし焦る必要も無い。その間に女を磨けば良いのだ。
逆に妹を大切にする男に余計に好意を持つような女性、例えばおキヌのような、が相手なら
時期を見て“共有”を申し出ても良い。強い男が複数の女性を庇護するのは珍しくも無い
事であり、一夫多妻の考え方に抵抗を感じる事も無い。ちなみにパピリオとは既にある程度
談合が成立している。要は横島の真価を理解し心から大切に思ってくれる女性とであれば
彼の事をシェアリングしても構わない、とタマモ側は思っている。相手が承諾しなければ排除するのみ。


「まあ今のアイツの好みも解らねぇし当面様子見で良いじゃねぇか」
「うん取り敢えず横っちの傾向と対策が掴めるまでは静観しようや」

苦し紛れの時間稼ぎの提案なのはミエミエだったが別に焦るでもないタマモには丁度良い。
ようやく横島が正常に、と言うか少しづつ歪みが解消されて普通の人々のようになるのを
傍らで見ているのもそう悪くない。                     だが、


(おい銀一、その間に誰かアイツに紹介するオンナとかいねぇのか?)
(任せぇ、横っちの事ぉ紹介せぇ言う業界人はなんぼでもおるわ、そっから厳選するでぇ〜)

横島は以前ハリウッド女優との仲をデッチ上げ報道された事も手伝いそれなりに業界内で名を知られている。
その彼の“次”の相手として認知されれば売名出来る、と考える今イチ芸能人。
彼のTV局や映画の時の仕事振りを間近に見て好意を持つ者、軽いモノから真面目なモノまで。
彼と接触を持ちたがっている者は意外と多く、銀一は普段からその橋渡しを頼まれる事も
少なくなかった。その総てをやんわりと断ってはいたが。

だがこうなってくると話は別、是非幼馴染にとって良縁となるような相手を探し出すつもりだ。
これはひとえに親友の幸せを願っての事であり、それ以外の目的など無い。 と、銀一は思い込むだろう。
横島の気など知らぬ気に男達が何やら黒っぽい事を考えているが流石に深い処まではタマモにも推察出来ない。


「ねぇヨコシマの心の壁を壊したヒトってどんな女だと思う?」

余り兄貴分達を追い詰めるのも気の毒と思ったのか、タマモが話題を転換する。
そしてそれは男達にとってもありがたい事だった。

「そう言や気になる事言ってたな、一人じゃなくて一柱とかなんとか」

雪之丞はメドーサに師事していた事もあり、魔界の有名処に関してはある程度は知っている。
少なくとも横島と違い六大魔王ぐらいは。

「なあ、俺はそんな詳しゅうないけど一柱ちゅう呼び方すんのって大物ちゃうん?」

銀一はGS役を演じるに当り、役作りの為に基礎知識程度は叩き込んでいた。
当然六大魔王やソロモン72柱の中のメジャー処ぐらいは知っている。

「一柱って数えられるような存在で女性体って言ったら限られるわよね?」

霊能科で有名な六女だが中等部の段階では霊力の目覚めに差が有り、大部分が座学になる。
当然基礎教養として有名な魔神クラスは教えられる。半ば伝説としてではあるが。

「そん中でも一番有名なヤツっちゅうたら…」

「「「夜魔の女王リリス?」」」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「まさか…ね……」
「幾ら何でもそれは……」
「何ぼ何でもなぁ〜」

(((いや、でも意外と……)))

半ば当てずっぽうな割に正鵠を射た推測を展開されているとも知らず当事者は出て行ったきりだった。
















「はぁ〜どうしたモンやろなぁ〜」

取り敢えず自宅から戦術的撤退を果たし、態勢の建て直しを図るべく考えを巡らすが
直ぐに名案が浮かぶようなら誰も苦労などしないだろう。
妙神山の面々はリリス本人の言葉もあったからか、比較的短時間で納得してくれた。
だが悠久の時を過ごして来た神族と思春期の少女を同列に扱ってよいものやら見当がつかない。
迷いの晴れないまま、今夜の時間潰しをどうしようかと考えながら歩いていると灯りが目に入った。

「あ〜ゲーセンか〜、久々に何かやるかな」

そう呟きながら中に入って行くと、やはり最初に目に付くのはクレーンゲーム。
なにやら可愛らしいヌイグルミが景品になっている。
高校生くらいの外見の少女がムキになって何かを獲ろうとしているが中々思い通りにならないようだ。
やがてお金も尽きたのか悔しそうにゲームから離れるのを見届けてから硬貨を投入する。

実際にやるのは久し振りだが過去に散々遣り込んだタイプであり不安は無い。
中を見ると可愛らしくデフォルトされたキツネのヌイグルミがあり目標は定まった。
手土産にもならないだろうが無いよりはマシかも知れない。
手前の方にあった邪魔な物も含めて、500円入れて6回やって4個取得、好成績である。
とは言え目当てのキツネ以外の三個、クマ、ネコ、イヌは邪魔なだけ、捨てる訳にもいかない。
ゲーム機の上にでも置いてバックレようかと思っている時に先程諦めた少女が近寄って来た。

「ずっと見てたけど巧いんだね、ひょっとして要らないヤツまで獲ったの?」
「ん? ああ、俺が欲しかったのはキツネだけだから、良かったら貰ってくんない?」

横島にとっては嵩張る物を手放せるし、相手は欲しい物を手に入れる。
双方利が在り良い事尽くめである。相手も喜んで三つ共手に取り万事解決だ。

「じゃ、俺はこれで」
「あ、ちょっと待ってよ、貰いっ放しって訳にもいかないよ」

横島にとっては邪魔な物を片付けただけ、獲り易い物から獲るという鉄則に従った結果
背負い込んでしまった余分な物を処分しただけでこちらが礼を言いたいぐらいなのだ。
なのでそのままを伝えると相手は微妙に不機嫌になってしまった。

「悪かったね、“獲り易い物”すら獲れない下手糞で」
「あ、いや、そんなつもりで言ったんじゃないんだ」

こうなると何となく横島の方が立場が弱くなってしまう。
結局相手の女性が横島にファーストフードで食事を奢る事になり、それでチャラという事にした。

「それで? 名前もまだ聞いてなかったね、何て言うのさ」
「あ〜俺は横島……まぁ謎の遊び人って事で…」

答える声にも力が無い、さっさと帰りたい気もするが、帰った後の方策は何も無い。
自分は一体何をしているんだろうか、というのが正直な処だ。

「“謎の”っつっといて横島って名乗ったら何にもならないんじゃないの?」
「そっか……でもなぁ〜俺遊び人にならなアカンみたいやしな〜」


妙な事を呟く男を前に女の瞳に怖い光が宿った。
まぁ遊び人になるなどとフザケた事を言う男に対して好意的になれる女性は少ないだろう。
黒のセミロングの髪に小作りな顔、派手ではないが化粧はきちんとしている。
横島が最初見た時に見積もった高校生ぐらい、という年齢よりは上そうだ。

「“遊び人”になって何がしたいのさボウヤ?」
「女心を知らにゃならんから……躯の事だけ知り尽くしても駄目だって言われてさ」

いったい初対面の相手に何を言っているのやら。弱気が招いた失言という奴か。
言ってる当人は大真面目なのだが、女の身として聞けばこれ程フザケた台詞も無い。
遊び人を名乗りたがるようなボウヤが女の躯をさも知っているような事を言うなど笑止千万。
ここまで女を軽く見るような男には相応の報いが有って然るべきだろう。

「何なら私が遊んであげようか? 色々と教えてあげても良いんだよボウヤ?」
「あ〜どうでも良いや……あと俺はボウヤじゃねぇよ」

正に失言中の失言、自分で死刑執行書にサインしたようなものである。
形だけ上辺だけとは言え、女からの誘いを“どうでも良い”扱いした挙句に呼称の訂正だけを
求めて来る。こんな態度を取られた女がどう思うか。相手への興味が一切無く、自分の事のみ大切。
傍若無人傲岸不遜男尊女卑……ナルシー風味も少々添加、正に女の敵。


現在の横島の状態は、心ここに在らず。タマモへの対応とリリスからの課題で頭が一杯になっている。
その為目の前の女性の心理状態に全く気付いていない、というか興味すら無い。名前さえ聞いていない。
魔界から戻って来た以上は既にリリスの修行は始まっているのだがそれを自覚していない大馬鹿者一人。
一人目の女性を目の前にしていながら、相手の心理を慮る事もせず自分一人の思考に沈んでいる、正にダメ男。
何の進歩も見られない劣悪改訂版365歩のマーチ、一日一歩三日で三歩、三歩下がって二歩下がる。
タマモにきちんと説明して納得してもらわなければスタート出来ないと思いつつも現状既にフライング。

目の前の女性はほんの一瞬般若の如き形相になりながら、直ぐにそれを納めると
含みのある笑みを浮かべつつ横島を促し席を立つ。
沈思黙考している男はボケボケ状態のまま腕を掴まれ店の外に連れ出される。
さながら介護されるボケ老人が外出した時の如く、言われるがままに外を歩き、
何時の間にやら特定目的の宿泊施設に連れ込まれる、御休憩のみも可という処。
部屋の中に連れ込まれた時点でようやく現世復帰を果たしたボケダメ男。
バスルームに押し込まれた状態で初めて現状を把握出来た。

「何してんだ俺?」

現実に戻って来た時点から記憶を遡ると、朧気ながら頼り無い物が甦って来る。
何やら誘われたような気がするが、“こういう場所”にいるという事は“そういう事”なのだろうか。
横島にとってはまるで予想外の事態だが、事此処に到っては逃げようとしたり断ろうとするのは
却って失礼に当る事ぐらいは解っている。完全にタイミングを失した状態での気配り復活だった。
大体女性と相対している時に別の女性の事で頭が一杯だった時点で失格である。
こういう男こそが“こうなったらもー”とか“で”などの枕詞や助詞で女性の心を疵付けるのである。
通常こういう男には相応しい天罰が下るものであり、以前の彼には必要充分以上の罰が下っていた。

流されるままにシャワーを浴び始めた時点でようやく事態の異様さに気がついた。
こちらから口説いた訳ではないし特に会話が盛り上がった訳でもない。
そんな状態でホテルへ行こうなどという流れになるだろうか。
そう都合良く思い込むには彼のモテない君歴は永過ぎた。
中にはそういうお手軽お気楽な女性に出くわす事もある、という怪しげな記事を真に受けて
夜の街にナンパに繰り出し連戦連敗を喫しただけに留まらず、大上段からの憐れみの視線や
イタい人を見るような冷たい眼つきは苦い思い出として今も尚深い部分に沈殿している。

シャワーを出しっ放しにした状態で水音を派手に立て、一面に湯気が立ち込めた状態で
手早く服を身に着け身支度を整える。完全に気を引き締めた状態でバスルームを出ると
大体予想通りの光景が横島を出迎えてくれた。


部屋の中で待っていたのはスキンヘッドの厳つい二人組み、ご丁寧に眉まで剃り上げた
完全無欠の強面。如何にも腕っ節の強そうな、脳みそまで筋肉で出来ていそうなマッチョ体型。
口をついて出て来る言葉は、ウチの身内に何してくれとんじゃこのオトシマエはどうしてくれる
覚悟は出来とるんやろうなゴラァ、とドスの効いた声が見事に揃ったユニゾン。
一点の曇りも無い日本古来の伝統文化、かどうかは知らないが、美人局というヤツ奴である。

その“身内”とやらはベッドの上で嘲るような笑みを浮かべている。
全裸に精々タオル一枚を巻いて鼻の下を伸ばした状態で出て来た男のだらしない顔が困惑し
恐怖に引き歪む様を見ようと待ち構えていたのだろうが、今日の獲物は少々様子が違っていた。
きちんとスーツを着た、一分の隙も無い状態で表情は平静そのもの。
以前の彼であれば既にパニック状態に陥り、正に天罰覿面だったのだろうが今の彼は並居る魔神闘神武神と
渡り合い(最終的に色々な意味で叩きのめされているが)生き残っている、ある意味常識の外にいる存在だ。

「はぁ〜これが噂の美人局か〜、実際に見るのは初めてやな〜」

珍しがりながらも観察する余裕すらあった。
察する処、自分がボケボケしている間に女から誘われて美人局に引っ掛かったのかと推測する横島。
それ以前の段階で自分がヤバ目の女の怒りを買ったという事に気付けない辺りがやはりダメダメである。
あまりに平然とした横島の様子に最初は戸惑うが反応のバリエーションに乏しい人種の事、
通常通りの慣れた展開に持ち込むべく凄もうとするが、相手の様子が普段と違う為、初手から
刃物を出して威嚇しようとした。これこそが失策で、自分を“殺せる”道具を出された以上は
対応は一つしか無い。ただいきなり叩きのめすのもどうか、と思い刃の部分を掴みへし折るだけに
留めた。これで引いてくれたら穏やかに済んだのだが状況分析能力に乏しい連中の事、彼我の戦力差も
理解せずに無謀にも素手で殴り掛った。攻撃されれば自然に体が反応する。ヤクザ二匹を瞬殺
(充分手加減済み)した段階でそれから先の対応に困ってしまった。残った女性をどうすれば良いのか。

手荒な真似は当然NG、さっさと逃げ出したいのだが相手がそれを許してくれるかは解らない。
単純な美人局に引っ掛かったとしか思っていない横島は取り敢えず逃げる事を選択しようとしたが
女の声がそれを思い止まらせる。

「見かけによらず大した腕っ節だね。力に自信があるからあそこまで女を蔑ろにしたような態度が
 取れたって訳だ。いざとなったら力づくでどうにでもするつもりだったんだね? これだから男ってヤツは!」

何か果てし無く理不尽な言い掛かりをつけられたような気がする。最初に力づくで略奪を働こう
としたのは相手なのだが、スレた口調の中に横島を責めるような響きがあったのが気になった。
単に美人局の獲物として引っ掛かったのではなく、何か相手を怒らせた報復としての手段だったのだろうか。

「え〜と、もしかして何か俺が怒らせるような事をしたんやろか?」

念の為にと聞いてみるが更なる怒りを買うだけだった。

「“怒らせる”? 散々ヒトの事無視しといてどの口がそんな事を言う?」

自分の容姿にそれなりに自信が在り、プライドもある女性が大した事も無いような男に軽く
扱われれば腹も立つだろう。普通はビンタの一つも見舞ってお終いなのだが、偶々この女性は
それ以外の些かエゲツない方法を持っていたというだけの事。互いにとっての不幸だった訳だ。

「え? いや、無視してた訳じゃなくて他に考え事があっただけで…」

それを無視したと言うのだが、それ以上の指摘は無駄に思えたのか何も言わなかった。
代わりにポケットに手を入れながら近寄って来た。先程の目の前での荒事を気にした様子もなく、
どう考えてもカタギの女性では無さそうである。

「とことんこの私をナメてくれたもんだね」

そう言いながら立つ位置は指呼の間である。
ポケットから何かを取り出しざま押し付けようとして来るの見て、押し退けようと
肩の辺りを掌で押そうとする。そして相手の手の中にスタンガンを視認した瞬間、

「くらえっ!」
「避雷っ!」

電気の衝撃が迸る瞬間、その力の大半を散らし残りはそのまま相手に返る。
即ち体が痺れて自由に動けなくなったのは相手の方だった。
憎々しげにこちらを見遣る表情には悔しさと、僅かな怯えが混じっている。
敵を目前にして体が動かないなど正に俎板の鯉、何をされても防ぎようが無い。
しかもそれがカモにしようとしていた相手なのだ。不本意さも一塩だろう。

当然横島に動けない女性をどうこうしようとするつもりなど皆無だ。
唯女性が床に崩れ落ちたままというのは拙いと思い、横抱きにしてベッドまで運んだ。
その際に相手の体に怯えが走ったのは良く解ったので苦笑が零れてしまう。
この状態で手を出せば完全無欠の性犯罪者だ、相手の振る舞いを差し引いたとしても。
複雑そうな表情をした女から離れて壁際まで下がり、改めて話し掛ける。

「え〜と、重ね重ねゴメンナサイ。女のヒトを怒らせるつもりなんか無かったし
 手荒い真似をするつもりも無かったんや、どうすれば許してくれるかな?」

既に倒れ伏しているヤクザ共の事など頭の中から消え去っている。あんなモノはどうでも良い。
問題なのは、女心を学べと言われた初っ端から大失敗をしてしまったらしい事だ。
何とか赦して貰わない事にはスタート台に上る前に蹴躓いたままである。

「何バカな事言ってんのさ? 今ならしたい放題なんだよ?」


目の前の男が何を言っているのか、信じ難い心地で女が口を開く。
刃物を向けられスタンガンを向けられ、その両方を無効化した以上後は好き放題のはずだ。
ヤクザ相手に後難を恐れているのかとも思ったが、それならそもそもブッ飛ばしたりしないだろう。
ヤクザの怖さを知らない素人なら調子に乗るだろうし、逆に良く知る者、例えば同業者なら
トラブルに出くわせば金に換えようとするはずだ。相手の態度からカタギとも思えないが
さりとてヤクザの臭いもしない。大体この期に及んで謝ろうとする事からして奇妙極まりない。

「いやその、アンタの女心ってヤツ? それを疵付けたんなら悪い事したな〜と思ってさ。
 なあ、俺に出来る事なら何でもするからさ、機嫌直してくんないかな?」

相手の身分がカタギじゃなさそうな事など問題ではない。ヤクザの組の一つや二つなど
いつでも殲滅出来る。だがいきなり失敗して女性を疵付けましたなどと言おうものなら
いったい師匠からどのような目に会わされるか、その方が余程恐ろしい。

「何だか本気で言ってるみたいだけど……アンタって本物のバカか?」
「そうかも知れん」

エライ言われようだがこんな現状に陥ってる以上はどう評されても仕方が無い。
総ての行動の選択肢を悪い方へ悪い方へと間違えた結果入り込んだ袋小路の中。
どうすれば抜け出せるか、相手の返答待ちな辺りは紛れも無いバカだろう。

「取り敢えず、私と二人でいる時に何考えてたのか正直に話してみな」

そう言われて正直に答えてみた。実に情無い内容なのだがその辺のプライドと横島は無縁だ。
ヤバイ部分は伏せて、師匠に言われた事やその際の移り香の説明に窮して家を飛び出し、今後の
対応に悩んでいた事など一通りの事情を、魔界絡みと解る部分を除いて、打ち明けた。
大体の事情を聞き終えた後に女の顔に浮かんでいたのは、怒りや憎しみではなく呆れたような表情のみ。

「どうやら正真正銘のバカだったらしいね…」
「やっぱそうかな〜」

心底呆れ果てたような口調だったが、それでも一応助言らしいものはしてくれた。
ようするに周囲が思っているよりも遥かに中学生女子というものは大人びており、
変に子供扱いして内容を伏せるより、事実をありのまま伝えた方が丸く収まるだろう事。

「後、女の事なんざ知りもしないくせに女の躯を知り尽くしてるような見え透いた法螺も止めるんだね」

最初にカチンと来たのがその言い草だったので女にすれば当然の発言だったのだが生憎横島に
してみれば嘘でも法螺でもなく単なる事実に過ぎない。だが幾ら言葉を費やしても無駄だろう。
そう思いながら相手に一言断ってから近付き、手を取ると軽く霊波を流してツボを刺激する。

「ひゃうっ!?」


女の背筋を妖しげな快感が這い上がり、口から可愛い悲鳴が洩れる。
強烈過ぎて怖くなる程の感覚だったが何か変な真似をされた訳ではない。
怪しい性感マッサージのようだが、触られたのは手だけだ。

「これは特殊技能みたいなもんでな、技術はあってもそれだけなんだよ」

俄かには信じ難い事だが仮にそれが事実だと仮定するとある程度の筋が通る部分もある。
単純な技術として特定の相手と訓練を積み、女体を研究し研鑚を重ねた、ある意味での技術屋。
性別を逆転させて考えれば、一昔前のその手の商売では普通に行われていた事。
現代にそういう事が無いとは言い切れない。ただし長年の経験による物では無く、恐らくは
短期間偏った相手に得たものだろう。例えは変だが経験の足りない頭でっかちタイプと言った処か。

女はある種の男性不信だった、夜の街で酔いに任せていきなり幾らだ? と聞いてくるような助平親父。
街中で制服姿の中高生に2万でどうだ? 3万まで出すぞ? と恥も知らずに話し掛けるエンコー親父。
女に酒を無理に進めて酔わせ、あるいはバー等で酔い潰れ掛けた女を連れ出し事に及ぼうとするクサレ男共。
それ等すらまだマシに思えるような、力づくで殴れば女は言う事を聞かせられると思い込んでる鬼畜共。

彼女自身色々と嫌な体験をしてきたので、その手の勘違い男は大嫌いだった。特殊な職業に
従事している連中に伝手があったので男への復讐と副収入を兼ねた物として美人局を選んだ。
偉そうな能書きを垂れたり調子の良い事を言っていた男もどれも大した事は無かった。
有り金全部とカードの限度額まで引き出した後は身元を確認して、その後は組の連中に任せる。
ルーティンな繰り返しに慣れ、誰もが同じような物だと思い始めた。
力を誇示する安いチンピラは本職の圧倒的な暴力の前には従順な猫になり卑屈に謝る。
この世に“イイ男”などいない、そう思いかけて頃に目の前の妙な男に出会った。
“イイ男”ではなさそうだが“珍しい男”ではある。

女の脳裏に高速で計算式が構築される、曰く、この男は金になる。後はどうすれば組めるかだ。
腕っ節の強さは常軌を逸しているので力づくは無意味。
だが圧倒的有利な状況から無条件で謝ってくる辺り、つけこむ隙はありそうだ。
相手にも相応の利益がありそうな話なら尚更だ。

「アンタ女心が解るようになりたいって言ってたね? 楽に解るようなモンじゃないよ?」
「それでも解るようになりたいんだ、大概の事は苦労とも思わねぇよ」

世に寂しい想いや辛い気持ちを抱え込んで他人に言えないでいる女は多い。
その手の女が集まるサイトを覗けば直ぐに解る、どうにもならない悩みをメーリングリストを
通じて相談したりブチまけているケースなどザラにある。
そんな女達に、絶対に反抗されない“男”へ恨みつらみをブツける機会を与えたらどうか。

「アンタ女の愚痴や不満や恨みなんかを無抵抗でブチまけられるのに耐えられるかい?」
「はぁ? そんなん屁でもねぇよ」


横島にとって、女からの理不尽な罵詈雑言など慣れたモノ。
そんな事で一々傷付くような神経など持ち合わせていない。
言わば世の男共に対する負の情念を一身に受ける事になる訳だが、逆ベクトルとは言え女心に変わりはない。
不特定多数の女性心理のサンプリングをすると思えば格好の機会と言える。


女から見て横島は女の躯に執着しているようには見えない。要望があれば応えるだろうが。
女心を解るようになりたいというのも本音臭い。変な下心を出す可能性は低そうだ。
後はどれだけ“女達”が本音をブチまけられるかがキモになる。
その旨を言われて横島が一つ思案する。

「なあ、アンタ好きなタレントっているか?」
「はぁ? 何だい急に、まぁ無難な処で近畿剛一かね」

その返事を聞くや相手の目の部分を掌で隠し、静かな声で話し掛ける。

「ちょっとした手品を見せてやるよ、目の前に近畿剛一が現れる。3・2・1ハイッ」


その言葉と共に掌をどけられると目の前にいるのは紛れも無い近畿剛一。
今の今迄掌を置いていた相手が別人に変わっている。

「ど、どういう事?」
「特殊技能その2ってとこかな」

そう答えるのは間違い無く先程と同じ声、顔だけが変わっている。
もう一度目隠しをされて3秒数えると元通りになっていた。
仕組みは解らないが催眠術のようなものなのか。だがこれはとんでもないウリになる。
これなら恨み重なる相手の顔に向かって思いの丈をブチまけられる。
横島にとっては単なる授けられた特殊能力、魔眼の応用に過ぎない。
口説く為にではなく、罵られる為に使うのであればお咎めも無しで済みそうだ。

更に細部を詰める必要はあるが大体の骨格の絵図は出来た。
これから大して日を置かずに一風変わった商売、“罵られ屋”が成立する。





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(あとがき)
難産でした……
“罵られ屋”が成立して真逆のアプローチから女心の勉強をするように
なるって書きたかっただけなのになんでこんなに長くなったんだろう(TT)

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