ザ・グレート・展開予測ショー

ルシオラの命日。前編


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 8/17)

太陽が、別れを惜しむかののように、全てを赤く染め上げながら消えてゆく時間。
夜でもない、かといって昼ともいえない曖昧な、だけど美しい時間。

窓枠に座り、頬ずえをつき、横島はそれを見ていた。
びんやりと、空を染め上げる夕日を見て

(そういえば明日はあいつの…命日だったな…)

そんなことを、思う。
自分のことを、誰よりも好きだといった─
そして、惚れていたのに、守れなかった女の─
最期の時を思い出し、じわりと、目頭に熱いものが込みあげる。
ごしごしと、袖で涙を拭うが、なかなか止まらない。
もう、日は落ちている。

もう、日も暮れているというのに、まだいる横島を不思議に思ったのだろうか?
暗がりの中から
『横島さんそんな所でどーしたんですか?』
という心配そうな声がきた。
びくっと横島の肩が揺れる
横島は、一瞬後ごしごしと顔をこすり、不自然なほどの明るい声で

『いやなんでもないよ!俺もう帰るから美神さんに宜しく!!じゃあね!!』

と言った。横島が事務所を飛び出す
やたらと元気な様子に不自然なものを感じ、おきぬは眉を潜める。
─が、ふと壁にかけられたカレンダーをみつけると
はっと息を呑んだ。
横島のおかしい理由がわかったのだ

(そうか…明日はあの人の…)
暮れなずむ空をみながらおきぬがひとりごちる。

どたどたどたっ
切なげな、なにやら苦しい感情におきぬがひたっていると
まったく逆さわがしい声が…いや、文句の押収が聞こえてきた。
もちろん、誰か聞くまでもない。
日常の、当たり前の喧騒が聞こえてきたことが、嬉しく思え口元が軽く緩む

『あれおキヌ殿先生は…』
ドアをあけ開口一番にシロ。
きょろきょろと横島の姿を探しながら聞く。
『横島さんならもう帰ったわよ。シロちゃん。』
一足違いだったわねと笑い、言う。
その笑みに、なにか暗い影を感じ─そうして、その理由に思い至り
ああ、と何か思い出したように、言葉を発した。

『おキヌちゃんあいつに明日は来なくてもいいって伝えといて。』
とことさら事務的な口調で。
表情というものがないその顔で言う。
そこに、確かな美神の優しさが見えおきぬは微笑み
―が一瞬後にはほんの少し表情を曇らせ

『分かりました…でも…』

とうーんと頭をうなりつつ言った。

『どうしたの?』
きょとっと首を傾げタマモ。
するとおきぬは、なにやら困ったような表情で
『横島さん昨日電話止められたって言ってたんですけど…』
と言った。

電話代払うかねもないのか。あの馬鹿は…
と眉間に皺を寄せバイト代を払う本人が、言う。
この発言を本人が聞いていたら、もっとバイト代を払えと言われるだろう。
美神は、ちょっと考えたがぴしっとシロを指差し

『しょうがない…シロ!!伝えてきなさい。』
と言った。
その美神の言葉にシロは満面の笑みで

『分かったでござる!!』
といい
ものすごい勢いで、走っていった。
途中曲がりきれずぶつかったりしないで走れるか非常に心配である。


つづく

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