ザ・グレート・展開予測ショー

スコールのような。 中編


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(02/ 5/ 6)

レコードから流れるは何処かで聞いた事の有るような古い映画曲と、
「凄い雨だったですね。美神さん」
とスコールのような雨が一寸前。
寄せては打ち返す波が静かに思える夕刻。
太陽は残念ながら曇空見えない。
「そういえば」
とレコードの傍で若かりし頃を思い出していた美智恵隊長が、
「ねぇ令子。あんたが小さい頃、どーして雨があるのってママに聞いてきたの覚えてる」
令子と横島はひのめの遊び相手をしていたのだが、その手を止めて、
「えっ、何それ全然覚えてないわよ」
公彦はアンティークチェアに身を委ね、小難しい外国小説の影で、何か思い出したのか。
「そう、でもなかなか面白かったのよ。横島クン?」
「はっ?」
振られて怪訝な顔である。
「私がね、どーしてだと思う?って令子に聞いたのよそしたらね」
すると、何か思い出したのか令子、
「あっ!やめてよぉ、ママー」
制止を試みるが、無駄という奴で。
「『えとね。太陽とおつきさまがキスしてるんやと、れーこ思うのー』ですって」
声に出すのを我慢していた公彦の口から途切れた苦笑。
はぁ、と吐息を吐いた美智恵。
信じられないと、横島の顔に、
「もぉ、恥ずかしいじゃないのよぉ」
母親にくってかかりそうな、令子に。
「まー」
我関せずのひのめである。
見た目がウッド色調のコテージだが、作りはしっかりしている。
奥にはそこそこ大きな風呂場がある。水周りを近くにとキッチンがある。
キッチンシンクに水を張り、中に皿があるところを見ると食事は終了したようである。
そしてトイレが有る。
ダイニングに大きな絨毯がひのめの遊び場である。
もうひとつひのめが興味をしめしてるのが、柵の向うにある、暖炉である。
冬も使う人がいるのか。
そこで問題がある。
ベット付の個室が二つしかないのだ。しかも、
「そうよねー。ダブルベットしかないのよねー」
そういう美智恵の口調は笑いを含んでいる。
父親としては複雑な面持ちではある。
最もダイニングのソファーなら睡眠が可能である事は先刻御承知であるが。
もう一度小説を読んでいた公彦が顔をあげた。
「風呂が沸いたようだな」
特殊能力上、あまり外出しなかった公彦は存外に耳がよい。
なにがしの音を確認したのであろう。
「そうなの・・。うーん、誰が一番に入る?」
このままいたら、子供の頃の話しに発展しそうだと感じたのか令子が、
「じゃ、最初にはいりたいんだけど、いいかしら?」
年頃の女の子なら尚更、利に叶った申告である。
別段文句もないし、
「それじゃあ令子、ひのめも連れて御風呂、入ってくれる?」
美智恵の言う事がとりあえず絶対であるし、文句も無い
「いいわよ。おいで、ひのめ」
「・・?」
抱きかかえられた時、やや不安そうな顔をしたであろうか。
そして横島に向って、
「横島クン、除くんじゃないよ。今日は親父もいるんだし」
おちゃらけて言う。
「た、たりめーじゃないっすか!」
柄にも無く、否定して顔を赤くする。
幾分かかかって風呂の用意した時、公彦も小説が丁度よい所終わったのであろう。
小難しい外国の本を閉じで、
「さて、洗い物でもするか」
アンティークチェアから身を起した。
「あっ。じゃあ俺も手伝いますよ」
遊び相手がいなくなった横島が手伝います、と腰をあげた。
以外に食器が多い。和食の絶対である。
それらを洗いながら男親としては、どうしても聞きたい事を言葉少なく語り出す。
「横島クンはどうして令子の下についたんだい?」
から始って、それからの動向を聞いている。
直接娘から聞けない親なのだ。
そのつど、律儀に答えていた横島であった。
「そういえば・・」
と、公彦が言い出した時、風呂場から悲鳴があがる。
決して赤ん坊の泣き声ではない。
「どうした令子!?おい、美智恵」
様子を見に行けと、言うところであったが、
「美神さん!」
体を拭かずにバスタオルを巻きつけてキッチンに逃げてきた。
「ど、どうしたんすか?美神さん」
息があがっている。そこに、美智恵もやってくる。
「ご、ご、ゴキブリ!ゴキブリがーいるのよぉー!」
金切り声である。その声にびっくりしたのであろう。
ひのめは下に下して欲しいと、美智恵に頼んでいるようである。
「令子ねぇ、ごきぶりぐらいで死にそうな声ださないでよぉ」
呆れ顔の美智恵である。
「なによ、ぐらいって、わたしにとっては大問題なの!」
と、手を体から離して力説している。
バスタオルが緩む。
そして、そのバスタオルの端をつかむのはひのめである。
どこか子悪魔的な顔をで。
一瞬の間。
又美神令子から悲鳴があがる。
横島もこの時ばかりは、父親と一緒に後を向く。
「・・・・。見たかね?」
「はい、ばっちりじゃないっすけどぉ」
「しょうがない。事故だ、事故」
男としてはいたたまれない空気が流れた。
美智恵は、
「こらっ。悪戯しないの。ひのめ」
怒っている風体ではなかった。
急いで部屋にもどる令子の目に恥ずかしいさからか、かすかな涙があったとか。
寄せては返す波が静かに思える小さな島である。
洗い物が終わっていたのが幸いといえるか。
「しょうがない子ねぇ」
という美智恵の一言はどちらの物なのか、誰にもわからないであろう。
着替えを済ました美神が、ひのめに文句の一つでもと思い、キッチンに戻って来た。
その悪戯の当事者は、窓から見える月をみていたという。

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