ザ・グレート・展開予測ショー

娘と恋人の境界線


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 1/10)

 
 朝の通学ってのは、よほど学校が好きでない限りは憂鬱なもんだと思う。何でこんな朝っぱらから勉強をする為だけの学校なんかに行かなければならないのかと。行かない日のほうが多いかもしれない・・・なんて思ってしまうくらい、普段行ってない俺は、それに漏れることはなく憂鬱な朝を迎えていた。玄関から出る瞬間まで、布団の誘惑から抜け出すことにためらいを覚えていた。が、冬の冷気は、俺の寝ぼけ眼を開くには十分すぎる程の衝撃があった。思わず身震いした俺を、くすくすと、二人が笑う。
 俺は横島忠夫、高校三年生。そして、俺の後ろをピッタリとくっついているのはルシオラ、俺の戸籍上では十七歳年下の・・・
 
 「パパっ」
 
 「ぐふっ!!」
 
 ・・・俺は明らかにパパと呼ばれるような年齢じゃない。そして、俺をパパと呼んでくるこの娘もまた、パパ、と俺を呼んでも年齢はともかくとして、いい外見じゃない。ないのだが、呼ばれれば答えなければならない。何故なら・・・納得はいかんところだが、彼女は俺の娘なのだ。
 
 「・・・ルシオラ。・・・朝っぱらから・・・パパはよしてくれないか?」
 
 苦笑いを浮かべながら(鼻から溢れ出る赤い液体をティッシュでおさえつつ)、俺。いつもは、横島、と呼んでくるというのに、何故こんな風に呼ぶのかと聞けばきっとこう答えるだろう、皮肉、だと。
 
 「・・・横島、私と言うものがありながら、『私が生まれる過程』を行ったこと、許されると思ってるの?」
 
 彼女は満面の笑みを浮かべていた。が、その目は笑ってなかった。額にはうっすらと血管が浮き出ていて、何というか、セクシー?・・・つまりは、そう、怒っていた。そして、その顔が、唐突に陰り、俯く。
 
 「別に・・・まぁ、その、あなたにも、あなたの相手(怒)に関しても怒ってはいないわ。うん。でもね、やっぱり、こういうのは・・・嫌じゃない?自分の好きな人が誰かのものになってるなんて・・・。心の中では許してあげたいと思っても・・・感情では、認められないのよ」
 
 そんな彼女の仕草が、とても儚げで・・・。俺は、俺は・・・。
 
 「・・・ルシオラ・・・。お前は俺の娘に・・・戸籍上ではなっちまったけど・・・。でも、でも・・・だ。俺がお前を愛してるのには変わりはないし・・・というか、今でもお前が・・・」
 
 「横島・・・」
 
 ルシオラが、顔をあげる。その目に、うっすらと浮かんだ涙。潤む瞳、そして、俺は、彼女をそっと抱き寄せる。目をすっと瞑り、唇をそっと突き出すようにする彼女。その唇に・・・俺は・・・
 
 「・・・忠夫さん?」
 
 ・・・俺は。
 
 「何をしようとしてるんですか?天下の往来で・・・。衆人環視のもとで・・・、何より、私の目の前で」
 
 ・・・俺は、そのままジルバを踊った。気付けば俺の周りには通学途中の学生、通勤途中のサラリーマン、OLが地面に突っ伏していた。そして、青筋を立てた俺の妻―――うん、いつものことながら可愛いぞっ―――に軽いキスをする。まぁ、俗に言う、行ってきますのあれだ。
 そして、俺の腕の中でいまだに目を瞑り、待っている愛娘に・・・。うむ(謎)。

 十八歳になった時、俺は彼女と結婚した。出来ちゃった結婚と言う当人達としては複雑な、けれど、責任どうこうじゃなく、本気で思いあった結果のことだということ―――それは間違いない。

 そんで、まぁ・・・何というか、妊娠した彼女の体から出産された赤子は、信じられない程に急激な成長を遂げた。それは魔族の因子をもつもの(というか、ベースが身体的な人間であるだけで、殆どは魔族のものといっても過言ではない)だから、とかそういうことなのかは分からないが。たった一年で、彼女は高校生と変わらない姿になったのだ。あのルシオラを少し幼くしたような姿。記憶の方も、魂が受け継いだらしい。よくわからない話だが、魂の中にも僅かに記憶を保存しておく余地はあるらしい。ある意味ではおキヌちゃんが記憶を取り戻せたのも奇跡ではなく、これと同じ事なのかもしれない。―――俺にとっては嬉しいのだが、複雑な気持ちでもある。妊娠させた、ということは・・・つまり、ルシオラ以外の女と・・・まぁ、深い関係になったってことだ。もちろん、俺はいい加減な気持ちでそんなことをしたんじゃない。・・・ないのだ。
 つまり、本気になった、というわけだ。そして、今でも。
 んで、そのことがルシオラにとっては大いに不快なことだったらしく―――まぁ、当たり前のことだが。ことあるごとにそれを突っつくのだ。その上、誘惑もしてくる。立場をフィフティーフィフティー(気持ちの面では、もちろんフィフティーフィフティーだ。俺は)にして置きたいとかで。嫉妬してくれている、というのはすごく嬉しいのだが(いろんな意味で)、相手がまずい。実質的に、彼女の母なのだから。そんで、俺の妻。
 んで、母娘の争いと言うのもまた、父親にとっては難しい立場に置かれるわけなのだ。
 ・・・って言うか、恋人が二人で言い争っている最中の彼氏って言う状況だろう。二股なんかじゃない・・・んだけど。多分。


 「1−Cに入った可愛い子、誰かの妹らしいぜ・・・噂では横島の・・・らしいけどな」
 
 教室内に入ると聞こえてくる喧騒を半ば無視して、俺は自分の席に着く。どこそこのクラスの女の子が可愛い、とかそう言う会話は日常茶飯事、いつもなら俺ものっていく話題ではあるのだが、その内容の中に聞き捨てならない言葉があったので、参加するのはやめておく。1−C、ルシオラのいるクラスだ。そして、俺は彼女を一応自分の妹と言うことにしている。ルシオラと俺のことがばれたらろくでもないことになるだろう。関わらないように、そのまま机に突っ伏す。入ってから感じられる敵意と媚の入り混じる視線、本当に、どうしてこいつらはこんなに器用な視線を送れるんだろう?感じる側の俺の誇大妄想ってのは抜きにしても、だ。
 
 「横島っ!!あの娘、お前の妹って本当か?」
 
 クラスメートの声に、俺は少し顔を上げ、苦笑いを返す。肯定の意でとるかどうかは、相手の判断に任せている。相手の選択肢の中に娘ってのが出てくるのはありえないだろうが・・・。すると、聞いてきた男の顔が、歪む。笑みを形作るものじゃない。苦々しい、とか、怒りを表すときに生まれる、歪み。何か悪いことでも言っただろうか?
 
 「・・・つまり、あれは俺の彼女だから、手は出すな、と」
 
 「何ぃ!!」
 
 どうすればそうなる?つうか、何でこんな小さな呟きがお前らには聞こえるんだ?←言ってた。
 
 「横島ぁ!!お前、嫁さんいるんだろうがっ!!しかも美人の」
 
 「彼女だけでは飽き足らず・・・、新しい女にまで手ぇ出しおって!!」
 
 「この女の・・・同族の敵めっ!!くたばれっ!!」

 ぎゃーぎゃーわめく男達。女子は俺を見ながらひそひそとあまり聞きたくない話をしている。ピートは苦笑いを浮かべながら、俺の災難を見ないフリをしている。タイガーは泣きながら早弁をしている、朝なのに。あまりにも薄情な友の態度に心の中で涙を流すフリをしながら、耳と目を塞いで、嵐が過ぎるのを待つ。が、授業のチャイムが鳴っても、嵐は過ぎる気配がなかった。
 ―――新しくない、んだけどな。
 そんなことを思いながら、生徒よりも遥かに騒がしい教師の怒声を受け流しつつ、そんなことを思っていた。




 昼休みに入って弁当を持って訪れたルシオラは男共からぶつけられた質問に、顔を真っ赤にしながら答えていた。質問に答える前に蛍光灯につるし上げられている俺を助けてくれてもいいと思うんだが・・・。

 そんで、まぁ、ルシオラよ、言っておきたいんだが・・・。





















 


 


 俺はそんなこと(謎)までしてないぞぉぉぉ!!(泣)

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