ザ・グレート・展開予測ショー

じーえすよいこのえほん・第二回


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(03/ 1/15)

『三人のおんな』

むかしむかしあるところに、女系家族がおりました。
あるときおかあさんが、子供たちに自立するように言ったので、姉妹は家をでました。
長女のおきぬちゃんは、ちからしごとがにがてなので、わらのおうちをつくりました。
ほんらいがんばりやさんのおきぬちゃんですが、
「おうちはべつにがんじょうじゃなくても、元気に生きてくらせればじゅーぶんです」
と、そうおもったのです。それに、少しのんびりやさんでもありました。
わらのおうちはおきぬちゃんににて、ふかふかでほのぼのしててあたたかでした。
次女の、いつもは長女のるしおらは、きのおうちをつくりました。
るしおらはほたるのまものなので、おうちなどいらなかったのですが、
しょうらいをちかいあったおむこさんがらくできるようにと、
がんばってがんじょうなきのおうちをつくったのです。
そのためなら、おとうさんのしょゆうしてるぞうきばやしのばっさいなど、
ざいあくかんのかけらもありませんでした。
どうせおとうさんはせかいせいふくをたくらむごくあくにんなので
るしおらのおむこさんにぼこぼこにたいじされてしまえばいいのです。
きのおうちはるしおらににて、あたたかさもあるけれどしっかりしてもいました。
末っ子なのにいちばん年増なみかみさんは、持てる才知と財力をフルに使って
レンガのオバケみたいなとてつもないお城を建ててしまいました。
「今の世の中物騒だし、このぐらいはないとね」
でも、はらのそこではじこけんじよくが、たいぜいをしめていました。
レンガのおうちは、みかみさんににて、がーどがかたくてりっぱですがひんやりでした。

さて、ここでオオカミのとうじょうです。
あたまにぼろいまっかなぬのをまいたひんそうなおとこで、なまえはよこしまです。
オオカミというのは、ぺんねーむみたいなものです。
オオカミはなまつばをぐびび、と飲み込みました。
おんなのこがだいこうぶつのオオカミでしたが、うまれてこのかた
いちどもおんなのこをたべたことがありません。
それでもおんなのこがおいしいことはわかるのです。
オオカミは自称けんぜんなだんしこうこうせいだったからです。
「みかみさんをたべたいな。まあ、レンガのいえはがんじょうだけれど」
オオカミは、こういったしょうもないところでは、ちゃれんじゃーでした。
「のにくだったちくしょうではやぶれなかったろうが、
ぶんめいてきかつちてきなせんじゅつでもってこうりゃくしてみせるぜ」
そう言ってオオカミがえらんださくせんは、はんずおぶぐろーりーでほりまくるという、
げんしてききわまりないちからわざでした。
みかみさんあいてでは、どうせげせんなでっちのかんがえなどつうようしないのです。
おかしな風にあたまをつかうよりは、よほどけんめいだったかもしれません。
バチンッ
「わぎゃああああああああああっ!?」
オオカミはひめいをあげて、あわててほりすすんだかべからてをぬきました。
てにはきょうあくなとらばさみがくいついています。
「ふふふふふ。かかったわねオオカミ!」
みかみさんが四階のベランダからオオカミをあざけりました。
「あなたがやりそうなてぐち、めをつけそうなポイント、すべておみとおしよ」
あくにんには、あくにんのかんがえがてにとるよーにわかるのです。
それで、みかみさんはおうちをつくるときにあぶないばしょのかべに
とらばさみをうめておいたのでした。
「冗談じゃないッスよ! こんな殺傷能力高いトラップ、シャレじゃすみませんよ?」
オオカミはすにもどってうったえました。
とらばさみのははつぶしてありましたが、てからちょっとちがにじんでいます。
たしかにあぶないですが、オオカミのへこたれかたもおおげさでした。
「あんたがこの城壁突破したら、シャレですまないことをするんじゃないの?」
みかみさんにイタいところをつかれ、けっきょくオオカミはすごすごひきさがりました。

だきょうしたオオカミは、こんどはきのおうちにやってきました。
「こんどはあんぜんだ。なにしろ、おれとるしおらにはあいのきずながあるからな」
オオカミにとってのあいのきずなは、よそのおんなにてをだしても
そこなわれないようでした。ほんもののろくでなしです。
「ヨコシマ、まってたわ♪」
てりょうりをつくってまっていたらしく、かっぽうぎのるしおらがげんかんにでました。
「役名で呼べ、役名で。あー、こほん…おれはオオカミだ。いえにいれてくれ」
「うん♪」
オオカミがみかみさんにあぷろーちしたことをしらないるしおらは、
しあわせそうにうなづくのでした。
「え?」
「なんでもないなんでもない! おい、ナレーター、余計なことは言わなくていい」
オオカミは迫力ない目でこちらを睨みつけました。
「さぁさ、ゆうごはんができてるわよ」
そう言って、るしおらはごはんをよそってオオカミに出しました。
オオカミはおんなのこも食べるけど、ごはんも食べるのです。
「お、海苔の佃煮だ。甘くてうまいな」
「それから昆布巻きと甘露煮と干瓢の甘く煮たのもあるわよ」
「え゛」
オオカミはすこしなやみました。おかずが甘い物ばっかりなのです。
これでは食が進みません。そういえばるしおらはほたるのけしんですから、
さとう水ばかりちょうみに使うのは自明の理でした。
「るしおら、ごはんはもういいから、ねよう」
オオカミはだいほんめいのようきゅうをしましたが、るしおらはくちをとがらせました。
「ムードを考えてよ! 手料理食べてくれないでそんなことばっかり。
恋人に対してもう少し優しくなれないの?」
なれます。オオカミは答えたかったのです。
いっしょにねてくれるならどんなせめくにもたえられるつもりできました。
けれど、あまいごはんはおいしくありません。こればかりはどうにもなりません。
「た、食べるよ。るしおら、それより、おみずもってきて」
オオカミの言葉を聞き、るしおらはにっこりほほえんで、だいどころにひっこみました。
オオカミのするべきことは一つです。ちゃぶだいのごはんをまどからすてようとします。
そこでオオカミは目が合ってしまいました。そとのいどでみずをくむ、るしおらです。
それからオオカミはいちもくさんにきのおうちから逃げ出し、
『隠』の文珠などを駆使してあおいきといきでるしおらをふりきりました。
「かんにんやーっ! 人と虫とは一緒に暮らせんのやー!!」

しんしんともにぼろぼろになったオオカミの目の前に、わらのおうちがありました。
おきぬちゃんのおうちです。みかみさんほどスタイルもよくないし、
るしおらとちがって、ほうっておいてもむこうからあいしてくれるわけでもないので
ずっとノーマークでした。そんなおきぬちゃんがすんでいるのです。
「もう、ほかにみちはないな」
オオカミは腹を決め、わらのおうちのしきいをまたぎました。
「あら、オオカミさん、ようこそいらっしゃいました」
おきぬちゃんは、やぶんおそくにやってきたオオカミも、
むじゃきにほほえんででむかえてくれます。
「おなかすいたな…るしおらのところでたべなかったから」
「そうですか。じゃあすぐにありあわせでなにかつくりますね」
オオカミは、ようやくひとここちつけたおもいでした。
ほんとうのしあわせをみつけたきもちでした。
だいどころにたつおきぬちゃんのせなかに、
オオカミのべつのいぶくろが、ぐう、となったようでした。
「おきぬちゃんならぜったい食べられる…ふふ…ふふふふふふ……」
ふいに、オオカミのむねにみえないはりが、ちくん、とささりました。
それはほんとうは無い、オオカミのこころのなかのはりです。
よこしまで、おうぼうで、みがってなオオカミでした。
それでも、やさしいおきぬちゃんをたべることはできません。
「それをやったら、ほんとにすくえなくなっちゃうな、おれ…。ファンも減るし」
少し本音を出しつつ、オオカミは、居間に座りなおしました。
あたたかくて、ふかふかしていて、ほのぼのとしたへやでした。
おなかいっぱいごちそうを食べたオオカミは、お風呂までいただいて、
しあわせいっぱいにわらのおうちをでていきました。
けっきょく、おんなのこはたべられませんでしたが、
オオカミはそれでよかったんだとおもうことにしました。

「めでたしめでたし……」
横島が涙混じりに寝言を呟く様を、キヌはニコニコしながら眺めていた。
毎度のことながらやってきて、家事をし終わったところである。
「やっぱ無理強いはよくないんだって。うん」
なおもぶつぶつと、横島は一人で悟っていた。
キヌはきりがいいところと見切って立ち上がり、帰り支度をはじめた。
「やっぱフェアに――ナンパして同意を得ないとなあ」
ひく
彼女の前髪が微かに揺れた。その程度の、小さな反応だった。
しかし彼女は反応した。確かに、聞いたのだった。
どうやら二人の一日は、これから長くなりそうである。

――あの…?――はい?――なんでついて来てるの?――いけませんか?――いや、ナンパの邪…――はいッ!?――あの、ナン…――なんですか!?――なんか、怒ってる?――私が?なににです?――えー、と――

今までの コメント:
[ 前の展開予想へ ] [ 次の展開予想へ ] [ 戻る ]
管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa