ザ・グレート・展開予測ショー

GS美神if極楽大混戦「エピソード0(その5)


投稿者名:野見山
投稿日時:(02/ 8/14)

(?)
何か爆発音が聞こえたような気がして、ルシオラははっとあたりを見渡した。
正面には、正体を知らなければ美しいオブジェのようなコスモプロセッサが見えるが、気を凝らしても特に気になるような変化は感じられない。
しかし妙な胸騒ぎが消えない。
やっぱり無理をしてでも一緒に付いていったほうが良かったのではないか、そんな気がしてくる。
だが、そこでルシオラはかぶりを振った。
「ダメね、今の私じゃ何の役にも立たない、かえってヨコシマを危険にさらすだけだわ」
だが、動くことが出来ずとも何か手を打つことが出来るはずだと思案する。
「そうだ、パピリオと連絡を取れれば」
思い付きに顔を上げたルシオラの触覚がぴんと立ち上がった。
特にテレパシー能力を持つわけでもないルシオラだが、自分と同じ霊基を持っている相手−−すなわち三姉妹の間であれば、精神を一点に集中し指向性をもたせることで意識を繋げることが出来た。
ただ相手の存在を探り当てさらに意識を繋げるためには大変な精神集中が必要であり、相手の精神状態次第でそれも無駄になる場合が有るなど、使えないことの方が多かったりするのだが。
だが今はそんなことを考えてる場合ではなかった、ルシオラはゆっくりと意識を集中して周囲を探り始める。
高まる霊波に触覚がぽうっと光を放つ。
ノイズがひどく、今の彼女にとって大変に疲れる仕事だったが、ようやく一つの霊波を探り当てた。
(居た!)
今度はその霊波に向かって意識を集中し呼びかける。
《パピリオ、パピリオ、聞こえる? これを感じたら返事をして、パピリオ!》

べスパの死に呆然としていたパピリオの力なくうなだれていた触覚が、帽子をはね飛ばさんばかりにぴんと伸びた。
《ルシオラちゃん!?ルシオラちゃんなんでちゅか!?》
そして、突然立ち上がった彼女にGSチームは何事かと振り返る。
何せ現状での最大戦力が役立たずになっていたため、かなり困った状態になりかけていたのだ。
「どうしたんだ?」
そうかけられる声に対し一言。
「ちょっと黙ってるでちゅ」
言うなり、何かに意識を集中させるパピリオに、こりゃ様子を見た方がいいわいと再び向かってくる悪霊の群れに対峙する面々。
一人この場ではやることが無いカオスだけが、彼女の様子をじっと見守っていた。
てゆーか破魔札の一枚ぐらい使えんのか、カオス?

《ルシオラちゃん、べスパちゃんが!》
パピリオは、まっ先に気になっていた姉妹のことを話した、何か知っているんでは無いかと言う期待を込めて。
《!……それは……私が……》
だが、そこから返ってきたのは、最も知りたくなかった現実だった。
《…………》
意識を繋いでいるためか、言葉の向こうにいったい何があったのか朧げに感じ取れてしまい、パピリオはなにも言うことができない。
また、彼女の目に涙が沸き上がる。
そしてルシオラはそれ以上何も言わなかった。
どう言葉を紡ごうと、妹殺しの事実は変わらないのだから。
たとえそれがお互いの信念のぶつかり合いの果てでも、承知の上で命をかけた死合の末だとしても。
だからルシオラは、切り捨てるかのように話を変え現状を尋ねた。
《今どこにいるの?皆と一緒?》
(ルシオラちゃん………)
パピリオはそれを薄情、と言う気にはなれなかった。ルシオラから伝わってきたのは押さえきれない感情も一緒だったから。
簡単に割り切れるわけではないが話は会ってからでもできると、今は素直に問い掛けに応じてパピリオは周囲を見回す。
そこにいるのは、名前はほとんど知らないが顔は良く知ってる人間ばかりだ。もっとも、あまり良い記憶ではないが。
更に見上げんばかりに迫ったコスモプロセッサがすぐ正面にある。
《ん、今南極に来てた人たちと一緒でちゅ。マンションの近くまでは来てるんでちゅけど……、なんか進むのに苦労してまちゅね》
苦労することになっている一因にもかかわらず、他人事のようにのたまうパピリオ。
周りでは、群れで迫ってくる悪霊に防戦一方の面々の姿が見える。
(ならそこに西条さんもいるはずね)
ルシオラは、彼なら一応リーダー格でもあるし、的確な行動を取ってくれるだろうと判断する。
《パピリオ、そこにいる西条さんに伝えて欲しいの、“美神さんが作った隠し通路が、マンションから下水に通じてる”って》
パピリオにも西条の名前は判った、すぐ目の前で悪霊相手に奮闘している。
《西条は居まちゅけど、隠し通路って……》
《あの美神さんよ?》
《…納得でちゅ》
これで通じてしまうのだから、美神がつきあいの浅いものにさえどう捉えられているのか良く判る。
クスリと二人して笑い合う、だが無理をしていたルシオラにそこで限界が来た。
《っ……ごめん、ちょっとこれ以上無理みたい》
《ルシオラちゃん!?》
《大丈夫よ、ちょっと疲れただけ。……後のこと頼むわね、ヨコシマの力になってあげて》
ふっ
そこで、二人の繋がりが解けた。
パピリオは、しばらく俯いたままだったが、やがてきっと顔を上げると西条のもとへ駆け寄っていった。
「なんとか話はついたようじゃの」
パピリオの表情を見て、ちょっと心配していたカオスは、西条と話をする彼女の姿を見て、安心したように呟いた。

「――――そうか、判った」
パピリオの話を聞いた西条は、すぐに周囲を確認した。
幸い近くにマンホールの蓋が見えたのを確認すると、すぐさま大声で全員に呼び掛ける。
「みんな、聞いてくれ! いま情報が入った。マンションに通じる隠し通路が下水に繋がっているらしい。このままじゃらちがあかない以上、そこを試してみようと思う。エミ君、霊体撃滅波は使えるかい?」
「任せるワケ」
「よし、霊体撃滅波で隙を作ってそこのマンホールを確保。ピート君、先頭で露払いを。後は戦闘力の低いものから順次突入、しんがりは僕が勤める。いいかい?」
一拍おいて、全員の意志を確かめる。
余計な言葉は無しに肯定の意を表わす面々。
西条は即座に号令をかけた。
「エミ君、頼む!!」

カッ

霊体撃滅波の閃光が、周囲を照らす。
霊光が収まると、間もなくそこは悪霊の群れが闊歩するだけとなった。
そしてついに誰も気付かなかった、先ほどから砕けた霊体に飛びかかりどこかに運び去っていく、蜂の存在には。


(続く)

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