勇気の剣(終)
投稿者名:tea
投稿日時:(02/ 3/ 4)
オレハマタマモレナイノカ?
イトシイヒトヲ・・・タイセツナヒトヲ
「先生は、必ず守ってみせる!」
ゲートキーパーの様に、凛とした風情で紅蛇の前に立ち塞がるシロ。だが、紅蛇は嘲うこともなく無表情に近づいてきた。余裕のあるなし以前に、既に完全な自然体なのである。
精神論だけでは絶対に埋まらない確たる差は存在する。先刻背中から急襲して返り討ちにあったのがいい証拠だ。
即ち、真正面から闘り合えばほぼ間違いなく殺される。だが、シロは決してその場を退こうとはしなかった。横島を守る、それだけが今の彼女の原動力だった。
草を踏む音が聞こえてくる。紅蛇の足音が、段々と大きくなってくる。
いつ仕掛けてくる?・・・
動悸が速くなっていくのが自分でもわかる。額を、一筋の汗が伝っていく。
紅蛇が、近づいてくる。無機的に、無表情に。
そして−−−
ビュオッ!!
紅蛇が、一瞬姿が消えるほどの勢いで突進してくる。トップスピードのままで、音速も超えようかというほどの突きを打ち出してきた。
シロの動体視力を以てしてもかわしきれる代物ではない。勘半分に身体を逸らすと、空圧がロケット弾のように耳を掠めていった。
かわした、と思う間もなく第二撃が右肩に来た。辛うじてそれをかわすも、紅蛇は腕が四本あるかのように容赦なく次々と攻撃を繰り出してきた。
オレハ・・・
シロは何とか致命傷は避けているが、とてもではないが反撃を試みられる状況ではない。シロの全身は無数の傷に刻まれ、スクリューに飲まれたかのようにボロボロになった。既に息も上がっている。かわすのも、後二、三発が限度だろう。
ゼロコンマ何秒かで反応がシロの遅れた。と同時に、左足に激痛が走った。脛の部分がパックリと斬られ、シロはその場に片膝をついた。
「くっ・・・そ」
マタウシナウノカ?
紅蛇が紅雫をすうっと後ろに引いた。今までに見たことの無い構えだ。
シロの中で悪い予感が湧き上がってきた。だが、だからといって自分に何ができる?紅蛇の技の破壊力を受けきれるほどタフではないし、両足をやられてしまってはかわすのは事実上不可能だ。
詰み、という言葉が相応しく思えてくる。シロは未知の攻撃に備えて霊波刀を構えたが、それが気休め程度にしかならないことはシロ自身が一番よく分かっていた。
頭の上まで紅雫を振りかぶった紅蛇は、そのまま半円を描くように紅雫を強振した。すると、紅雫から紅色をしたブーメラン上の気弾がシロに向けて発せられた。
ブーメラン、といっても遊戯用のちっぽけなものではなく、縦横共軽くシロを飲み込み、消滅させ得るほどのものだ。迎撃は無理、回避も不可能。となれば−−−
シロは霊波刀をしまうと、その分の霊力を全身に回した。そして、足の激痛に耐えつつもその場に仁王立ちした。
このままでは気弾は自分を貫き後ろの先生にまで届いてしまう。そう判断したシロは、全身を「壁」として横島を守る決断をした。シロが穏やかな顔で、未だ動かない横島にぽつりと言った。
「先生・・・後を頼むでござる」
タイセツナ・・・イトシイヒトヲ
−−−ジョウダンジャネエ!!!
シロの背後から、突然霊力を凝縮したボール状の気弾が放たれた。それは紅蛇の紅い気弾とぶつかり合い、双方共に泡が消えるように跡形なく相殺された。
風が起こるほどの勢いでシロが後ろを振り向く。そこには、自分が後を託そうと思っていた愛すべき師匠が立っていた。
「先生!!無事だったのでござるな!!」
無事、というのは多少語弊がある気がするが、シロにとっては枝葉の事だ。だが、横島は喜んでいるシロを無造作に手で押しやると、そのまま紅蛇と対峙した。
「せ・・・先生?」
何かが違う。いつもなら一声掛けたり笑いかけたりするはずなのに、妙に無愛想である。というより、彼特有の暖かさが感じられない。まるでそれ自体を忘れてしまった様に。
シロは、あることに思い当たった。そして、次の瞬間青くなった。
要するに、横島は先刻の紅蛇と同様切れてしまったのである。となれば、今の横島に勝ち目はない。見境の無くなった状態で勝てるほど、甘い相手ではない。
慌てて横島を止めようとするシロ。だが、腕をすり抜けるように、横島は紅蛇に突進していった。腕に霊波刀を出すのも忘れて。
「先生ー!!」
シロの悲痛な叫びが轟いた。だが、横島はスピードを緩めようとはしなかった。
リーチの差がある分間合いも広い。先に仕掛けたのは紅蛇だった。猪の如く突っ込んでくる横島に、実に正確に紅雫を薙ぎ払った。
ドガアァッ!!
だが、当たると思われた紅蛇の紅雫は、横島の手前で止まっていた。そして、紅蛇の脇腹には直前でギアを上げ、紅雫をかわした横島の拳がめり込んでいた。
霊力を十二分に込め、トップスピードから撃った一撃。紅蛇の動きが一瞬滞る。横島は、野獣の如き気迫で一気に紅蛇に拳の弾幕を浴びせた。
右に左にと、次第に紅蛇の身体がサンドバッグと化していく。アッパーを顎に撃ち紅蛇を身体ごと打ち上げた横島は、右腕に空気が震えるほどの霊力を収束させた。
「俺の・・・俺の大切なシロに手ぇだすんじゃねぇーっ!!」
引力に従い落ちてくる紅蛇の身体を、横島のストレートが貫いた。そして、紅蛇の体内で今しがた作った「浄」の文殊を発動した。
「グ・・・アアアアァァッ!!!」
断末魔の叫びを上げ、紅蛇の肉体とその手に持つ紅雫はこの世から完全に消滅した。
今までの
コメント:
- おぉおぉおぉおおぉおおおぉおおおおぉおおおおおぉおおおおおおっっ!!!
最高です!! 最高のシロで!! 最高の横島です!!
強さを得、少年から男になった横島!!
一人の女性として、侍として成長したシロ!!
その全てがこの終章で結実する様を見せて頂きました!!!
凄いです! 素晴らしいです!! マーベラスです!!!
勿論、この後にはエピローグがあると思いますが、魂を賭けて心待ちしております!!! (黒犬)
- …えぇっと(汗) 『以下同文』(爆)
自分でも何言ってるか、何やってるか分かってない時の横島くんが好きです。なんか魂の叫びみたいな。
どんなときも横島第一で考えるシロが好きです。横島のために自分の身も投げ出してしまうようなひたむきさが好きです。
え〜、コホン。 わんだふるです! ぐれーとです!! とれめんだすです!!!
名残惜しい気もしますが、エピローグも心して読みます! (斑駒)
- ↑×2 魂を賭ける!?ぐ〜っど!
勝負の方法は?表面張力とコイン?ポーカー?
じゃんけんも良いですね〜。
…最後は予想できませんでした。
てっきり、自害かと…(爆) (魚高@僕ってばいつも観点がずれてるなぁ)
- 「俺の・・・俺の大切なシロに手ぇだすんじゃねぇーっ!!」
も、萌え尽きました………。 (猫姫)
- 横島がかっこいい、かっこう良すぎる。ゆえに反対なんです(血涙)
teaさんがこの作品で書きたかったことは解っているつもりです。
でも原作至上主義のJIANGとしてはこの横島は終始違和感が有りまくりなんです。
シロや長老、雫たちオリキャラはシックリといっていたのでよけいそう感じてしまいました。
すんません。 (JIANG)
- かけがえの無い大切なモノを守る為に強くなる横島はアシュ編の終盤の彼を思い出しますね。ただ、ルシオラとシロを「イトシイヒト」として同列の存在と認識したと云う事は、ここに至る迄にもそれなりのドラマが在った事を予感させますね。 (Iholi)
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