ザ・グレート・展開予測ショー

GS版・・・黄泉がえり


投稿者名:Hittar
投稿日時:(03/ 1/18)


人は蘇る・・・儚く切ない想いのもとに・・・


その日は朝から何かがおかしかった
目が覚めてもまだ、夢の中のようだった
なぜか、外は霧がかかったように幻想的だった


―――オカルトGメン本部―――

 その異変にいち早く気づいたのは、オカルトGメンに早朝勤務していた西条だった。
「都内に霊的反応が急増中!!」
 霊波ナビゲーターを見ていた西条はそう叫ぶ。
 寝ぼけていた頭はすでに覚醒していた。
「どうしたの!?」
 西条の起動したナビゲーターをのぞき込む美智恵。
 その画面には霊的反応を示す赤い点が都内のいたるところで点滅し、増え続けていた。
「これはいったい・・・死者が・・・死者が蘇っているとでもいうの!?」
ピーーーッ・・ピーーーッ 
 警告音と共に、画面の点はいぜんとして、増え続けていた・・・。



―――美神除霊事務所――――

「・・・と言うわけで、亡くなった方たちが蘇っているんです。」
 一通り説明を終える小竜姫様。
「じゃあ、日没になれば元の世界に戻っていくわけですね?」
 と美智恵。
 死んだ者が蘇っても動じないのはさすがこの業界の人間だ・・・
(あ〜あ、西条も大変だな・・・いつも大事なときに隊長さんにぬけられて・・)
 横島の脳裏にクマができて疲れ果てた西条の姿が浮かぶ。
「はい、そういうことです。」
「悪霊とかが復活する可能性はないんすか?」
 俺は小竜姫様に聞いてみる。
「全くないとは言い切れませんが、その可能性はほぼないですね。蘇ることのできる人々 の条件は、現世でその人に会いたいと心から強く思う人がいることですから。悪霊に会 いたいなんて人はそうそういないでしょうし。」
「で、わたしたちはどうすればいいの?」
 美神さんが小竜姫様に聞く。
 目がお金になってるような・・・(¥Δ¥)
「先ほど横島さんが言われたように、もしも悪霊が復活したときにその除霊をお願いした いんです。お礼もちゃんと・・・」
 机の上に置かれる大判小判の山。
「のった!」
 即座に契約は結ばれた・・・




 俺は小竜姫様たちを見送り部屋に戻ってくる。
「そういえば、おキヌちゃんはどうしたんですか?」
「ああ、昨日から臨海学校に行ってるわよ。」
「なぬーーーっ!俺に秘密で・・・くそっ!!水着の花園が・・・」
 血の涙を流す横島・・・
バキッ!
「変なこと考えてないで、あんたも帰ったら?」
 しばき倒される横島。
「帰るって?除霊するんじゃないんすか?」
「今回は私だけでやるからいいわ。わたしには死んだ人で会いたい人なんかいないしね。 シロやタマモにもそう言っておいて。」
 その意味をくみ取り、先程までとは別人のような表情の横島。
「ありがとうございます!失礼します!」
 深々とお辞儀をし出ていく横島。
「今日だけなんだからね・・・。」
 横島の遠ざかる足音を聞きながら、美神はそうつぶやいていた・・・。



 屋根裏部屋に続く階段の途中で、俺はタマモとすれ違った。
「ん、どこ行くんだタマモ?今日、美神さんが仕事休みでいいってさ。」
「うん、どこに行くって分けでもないんだけどね。ただ、バカ犬の邪魔になりたくないか ら。」
 なぜか、寂しそうな表情のタマモ。
「ちょっと、うらやましいのかな・・・。」
 そう言い残し、タマモは事務所から出ていった。



「父上!母上!!会いたかったでござるよ〜」
 ドアの外に立っている俺の耳にその声ははっきり聞こえていた。
 泣きじゃくるシロの声、それを慰める優しい両親であろう人の声・・・。
(あいつ、強がってもまだガキだもんな・・・。)
 俺は邪魔にならないようにそっとその場を後にした。
(ガキで強がってるのは俺も同じか・・・。)
 俺は手を強く握った・・・。



「やっぱり、ここだよな・・・」
 俺は目の前にそびえる赤い塔を見上げる。
 手のふるえが収まらなかった・・・。
“翔”文珠にそれを込め、一般入場できそうもないところへ飛ぶ。
(蘇ることのできる人々の条件は、現世でその人に会いたいと心から強く思う人がいるこ とですから。)
 先程の小竜姫様の言葉が頭の中を駆けめぐる。
 一握りの不安・・・
「何、弱気になってんだ俺は。俺があいつに会いたくない分けないだろ。」
 自分に言い聞かす。

 そこは鉄で無骨に作られた塔の上部・・・二人の思い出の場所・・・。
 そこにたたずむ彼女の姿・・・。
 
「よっ・・・」
 これといって言葉が見つからず、曖昧な挨拶をしてしまう。
「ヨコシマ、会いたかったよ・・・。」
 振り向いた彼女は、変わらない笑顔で俺を迎えてくれた。
「今日は、たくさん思い出を作ろう。」
 それがそのとき俺に言えた精一杯のことだった。
 涙が止まらなくなりそうだったから・・・。


 その後、2人で都内を歩いた。
 今日しか着られない服を買いに、店をまわった・・・
「どう?似合うかな・・・」
 照れている彼女を見て、俺は悲しみと喜びでとまどった
 二人で一緒に食事をとった・・・
 ゲームセンターで俺のバカを見て笑ってくれた・・・
 楽しい時はすぐに過ぎていってしまった・・・

 
 太陽が赤みを増す頃、俺たちは再び塔にきていた・・・
「今日はありがとね。ヨコシマ・・・」
 夕日を見つめている
「なあ、ルシオラ・・・」
「ん?何?」
 俺をのぞき込むその笑顔・・・
「あれから数年経ったけど俺は・・・俺はお前が命をかけて守ってくれたほどの価値のあ る男になれたのかな?」
 不意にそんなことを聞かれキョトンとしているルシオラ・・・
「時々、思うんだよ。俺はそんなに価値のある人間なのかって・・・」
(やばい・・・泣きそうだ・・・)
「そんなこと言わないで。ヨコシマがいてくれるから私は今、ここにいれるの。ううん、 私だけじゃない。きっとあなたの周りにいる人すべてがあなたを必要としているの。」
「でも!俺はルシオラを守りたかった!!」
 俺はルシオラに抱きついた・・・
 涙はもう、止まる術をなくしていた・・・
「泣かないで。私はヨコシマにいっぱい貰ったよ。幸せになれたよ・・・」
 彼女は俺を包み慰めてくれた・・・






「ヨコシマは私が一番頼れて、一番好きな人だから・・・」
 日が半分地面に消えていた・・・
 涙が止まりやっと平常心を取り戻した俺・・・
「だったらさ、ルシオラ・・・」
「ん?」
 俺には分かっていた。こいつが今どんな気持ちかが・・・



「今回は・・・我慢しなくていいんだぞ・・・」
 あの時見せた悲しみを秘めた笑顔・・・
「ヨコシマ・・・」
 うつむいていた彼女・・・
 俺の方を見た表情は、先程の聖母のような大人ではなく儚い少女のようだった・・・
「はなれたくないよ!ヨコシマの側にずっといたいよ!今日みたいに一緒に楽しく生きて 笑って、泣いて、怒って、愛し合って・・・なんで・・・なんでそれがわたしには許さ れないの・・・」
 その後は声にもならなかった・・・
 俺はルシオラを強く抱きしめていたんだと思う・・・


「じゃあ、また会おうね・・・」
 これ以上ない笑顔ルシオラ。
「ああ、やっぱり最期は笑顔で・・・だよな?」
「うん」
「絶対に会おうな!!」
「うん」
 二人の陰がそっと、1つに重なる・・・
 同時にルシオラの体が透き通り始める・・・
「ん、んん・・・!!」
 俺は声を上げようとした・・・
 でも、彼女は首を横に振った・・・
 彼女の声が心に響く・・・
(このままでいいよね?今度くらいはヨコシマの腕の中で眠らせて・・・)
 





「消えていくわね・・・」
 事務所の窓から外を見る美神・・・。
 霊魂たちが、天に昇っていく・・・。




翌日・・・

「ちぃぃーーーーっす!おはようございまーーーす!」
「横島さん、おはようございます。」
「せんせぇ、散歩にいくでござるよ〜」
「うるさい!バカ犬、朝はしずかにしなさいよっ」
「横島君、今日は昨日休んだ分きっちり働いて貰うからね!!」
「そんな、せっしょうな・・・」

 いつもと変わらぬ風景が動き出す・・・





 会いたい、伝えたいって気持ちがあれば・・・
 いつかきっと・・・会える・・・・


 人々は蘇る・・・

 自分が生前愛した者の心から

 悲しみや、戸惑いを取り除くために・・・



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