ザ・グレート・展開予測ショー

FORCES(16)―陥穽―


投稿者名:ニエー
投稿日時:(02/ 2/18)

門へと繋がる石段を駈け上がる。
早く、早くあの場所に・・・小竜姫様の所に・・・時間が・・無い。

後少しだ・・・ルシオラ。
後少しでお前を取り戻せる。
理不尽な運命から。
突然の死から。

だが、もし小竜姫様でも知らなかったらどうするんだ?それに・・・ベヘリットの使い方を聞けたところでその後どうする?美神さん達からベヘリットを奪い取る・・なんてことが出来るのか?俺?

石段の途中で足が止まる。

いや・・出来る。今の俺なら・・なんだってやれる筈だ。
それにもう今更、引き返せねえ。
俺は改めてだいぶ近くなった門を見上げ、気合をいれる。

(キタ・・・)
(キタヨ・・・赦サレザル者達ノ・・ワタシタチノあるじガ・・)
(あるじヨ・・ゴ尊顔ヲ拝謁サセテイタダキタク・・・)

!!??

「だ、誰だ!!」
当りを見回しても・・・だれもいない・・・よな。
ヌルッとした感触が足の当りに走る。
思わずその場に硬直し、感触がある部分をそっと見る。

何だ・・・こいつら。

俺の足首に取り付いていたのは。黒いヘドロに目口が付き、何とか人間のような形を取ろうとしている物だった。そいつらがまるで太陽を避けるかのように石段の影から足首を掴み、俺を見上げている。

「・・・!!」
咄嗟に影から足を離し、這うように石段をよじ登る。

(アア・・イッテシマワレル・・)
(イズレ・・・マタ・・カノ地・・・デ)
(・・あるじヨ・・我ラガあるじヨ・・)

ハアッ・・ハアッ・・・
石段を上がりきった所で後ろを振り返る。

そこにはもう、何も無かった。

やっぱりあの薬の所為だな・・・急がないと次はどんな副作用があるか解らねえ。
俺は立ち上がり、二人の鬼門までの短い距離をまた走る。

「左と右の鬼門!!ここを開けろ!!俺は小竜姫様に・・・??」

逸る俺の気持ちに答えるように目の前で門が開いていく。何だ、ずいぶんあっさり通してくれるな?・・・じゃあご好意に甘えて、通らせていただきます。

「いつも何だかんだとイチャモン付けてくるお前らが・・珍しいな。」

右の鬼門も、左の鬼門も俺の軽口に答えてくる様子は無い。まるで本当にただの門になっちまったみてえだ。

『あの修行場へ行け、横島。小竜姫様がお待ちだ。』

やっと口聞きやがった。修行場・・・地平線が360度見えるあそこか。


・・・僅か数日の出来事のはずが・・あのベヘリットを手に入れてからここに来るまでの時間がとてつもなく永く感じる。そう、まるで夢のなかのような・・だが、この扉を開ければ俺が求めているものの答えが・・出る気がする。

俺は運命の扉と言うには違和感のある風呂場そっくりな引き戸を横に引いて開ける。
何回見てもすげえ景色だ・・・果てが見えねえ。

!?・・・誰だ?・・あれは。
何物かが中国風の鎧を着こみ、こちらに背を向けて立っている。
それにその側にデケエ壷が置いてあってそれに何本も入ってるのは・・剣・・か?

とてつもなくヤバイ予感がする、が、もうすぐ願いが叶うという気もする。
何故こんな相反する感情が並立するのかは・・・解らない。
舞台に上がった俺にその鎧が振り向く。

小竜姫様・・・なのか?

「来て・・しまいましたね・・横島さん、」

またあの目だ・・おキヌちゃんと同じ・・何でそんな憐れむような目で俺を。

「小竜姫様、俺は今日聞きたい事があって・・・」

「『ベヘリット』の事ですね。私も詳しくは知りませんが。」

「し、知ってるんですね!!お願いします!・・・あれは何なのか、どうやって使うのか俺に教えてください!!」

「あれは・・ボイド、スラン、ユービック、コンラッド・・4人の『天使』を呼び出す鍵です。」

4人の・・・天使?
何故か、頭に思い浮かんだのはここに来る前日の夜に見た・・あの悪魔にしか見えない4人組だった。

「じゃあ・・小竜姫様と同じ神族を呼び出すんですか?」

俺の言葉を聞いた小竜姫様がおぞ気をふるう。
「冗談じゃありません・・・あんな・・・あんなおぞましいものは神でもなければ・・ましてや悪魔でもありません。」

「でも『天使』って・・・」

「確かに・・・天使です・・願いを叶えてもらう人間にとってはね。・・・多くの人間が変える事の出来ない運命に絶望し、悲憤して流す涙・・その結晶がベヘリットです。そしてその叶わぬ思いが、果てしない絶望があの「天使」達を生み出した・・運命を歪んだ方向にねじ曲げ、その願いを、思いを叶える為に」

「良く解りませんが・・それじゃあまるで・・」

「そうです、あれは貴方達人間が生んだんです・・こんなに歪なものでも、未だ使いたいと思いますか?・・横島さん?」

・・・・・・

「最高じゃあないですか・・運命をねじ曲げてくれるなんて・・ますますあきらめる訳には行かなくなりましたよ、小竜姫様。」
今、俺はどんな顔をしているのか・・・あまり考えたくは無い。

「やっぱり・・あの卵に惹かれたものはみんな同じ表情をする・・今の貴方のように」

「いや、俺のことはどうでも良いですから、ベヘリットの使い方を・・・」

「それは・・私にも解りません。ただ、こんな人間をどうすれば良いかは知ってます。」

小竜姫さまがパチン、と指を鳴らす。と同時に石柱の影から見知った顔が幾つも現れる。

ピート、雪ノ丞、タイガー、マリア、ジーク、ワルキューレ。
人の名前を挙げただけでこんなに疲れたのは始めてだ。
もちろん全員が各々に会わせた装備で身を固めている。
どう良い方向に考えても旧交を暖めにきたようには・・・見えない。

追い討ちを駈けるように後ろの引き戸が開く。入ってきたのは・・やっぱり。
隊長・・・それと、美神さん・・おキヌちゃんはGメンの連中と一緒に西条の治療でもしてるのか・・・姿が見えない。そして俺は、追い立てられて、落とし穴に飛びこんだノラ犬・・後は保健所に行くか撲殺されるかを選ぶだけ。

どちらも御免だ。

「そう、ここが終点よ、横島クン。」
確かに・・こっから先は無いな。

「どう?自分が何をしようとしているのか解った?・・・残念だけどね、そんな歪んだ願いを聞き届けてくれる神様なんていやしないのよ!!」

「いるさ・・美神さんも解ってるんでしょう?」
俺の返事は、短かった。

「・・・私が、アンタをその悪い夢から覚ましてあげるわ。・・あんたから魔物になる『理由』を奪ってね」
美神さんが神通鞭を構える。
「横島君・・・ここまで来たらもう、降伏しろ。とは言わないわ。」
隊長が最後通牒を付きつける・・拳銃と一緒に。

「美神さん・・もう一度確認しますが、ベヘリットの色は「緑」で、この場所には持ってきていませんね?」

「ええ、始めからここに持ってくる気も無かったし、卵の色は『緑』よ。」

やっぱり、持ってきてる訳ねえか・・元から俺をハメるつもりだったんだから・・当然か・・・しかし小竜姫様、なんであれの『色』なんか・・・

「ではよこ・・いや、世を乱す者よ!我々が相手です!」
小竜姫様が剣を掲げる、と同時に唯一の出入り口の引き戸が消える。

つまり、出られるのは残った方・・いや、俺が残ったとして、ここから出れるのか?

今までの コメント:
[ 前の展開予想へ ] [ 次の展開予想へ ] [ 戻る ]

管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa