ザ・グレート・展開予測ショー

横島君が逆行するお話です。 -第3.1話-


投稿者名:目玉焼き
投稿日時:(02/10/11)

 逢魔が時・・・その災いが起こる時と言われる日の光も月の光も無い暗闇の中を、何かに追われているかの様に必死の形相で男が駆け抜けている。滝の様に流れる汗と繰り返される荒い呼吸が、如何程の距離を走り抜けて来たのかを窺わせる。その時、走る事が天啓とでも言うかの様にその足をただひたすらに前へと進ませている男が咆哮を上げる。





「お仕置きはいやじゃー―−−−っ。」

 バイトの時間は四時から、今の時刻は五時半、どれだけ急ごうと既に手遅れのような気がしつつも、遅刻した場合に雇い主である「美神令子」から与えられるであろうペナルティを思い浮かべると、どうしても急がずには居られない、シバキ倒される程度ならばそれほど問題は無いが給料のカットなどと言われた日には命に関わる。
・・・彼、「横島忠夫」の命は結構風前の灯なのかもしれない。





「・・・・・・いやあ、来る途中で凶悪な悪霊に襲われましてね―、やっつけるのに時間が掛かってしまったんですよ・・・・・・。



・・・・・・・・・アカン、腹が減っとる所為か碌な考えが浮かばん。」

 全力疾走しながら器用に身振り手振りまで付けて言い訳の言葉を考えるが、どうやらうまく行って無いらしい。

「あああ、そうこうやっとるうちにもう事務所が・・・って、あれっ?」

 事務所の前に見覚えの無い車が止まっているのを見て、横島が走るのをやめる。

「ん?、お前ら、・・・鬼門?」

「おお、横島。」

「実は今な、・・・

 右の鬼門が横島に気づき挨拶をし、続けて左の鬼門が事の次第を説明しようとするが、

(鬼門が居る・・・と言う事は!!。)

 「小竜姫さまー―−−−。」

 横島は、二人の上司である「小竜姫」の名を叫びながら一瞬で鬼門の脇を通り過ぎていった。

 「・・・相変わらずか。」

 「・・・相変わらずだな。」

 横島に完璧に無視された二人は呆れたようにそう呟く。





バタンッ。

ガバァッ

「小竜姫さまー―−−−っ、今日こそは僕と目眩く一夜を共にー―−−

 そう叫びながら小竜姫めがけて見事なルパンダイブを敢行するが、

ガンッ。

ゴスッ。

 小竜姫と美神の、これまた見事なツープラトン攻撃の前に敢え無く撃沈する。

「遅刻して来た挙句に、詫びも無しでいきなりセクハラとは良い度胸じゃない。」

 横島の雇い主であり、この事務所の社長である「美神令子」が横島の頭に足を乗せながらそう凄む。

「かんにんや―、しかたなかったんやー、青い性の暴走なんやーっ。」

「取り敢えず、遅刻して来た事の弁明から聞いてあげましょうか?。」

 言い訳になってるのかなってないのか今いち不明な横島の戯言をあっさり無視して、ヒールの底で横島の頭をぐりぐりしながらそう言い放つ。

「そ、それは・・・、つまりですね、・・・

「・・・何かしら?。」

 弁明しろと言っておきながら、「端っから言い訳なんぞ聞く気無し」と言った風で横島の頭をヒールの足で抉りながら再度そう問い返す。

「あああ―っ、すんません、すんません、すんません。」

「・・・ふうっ、まあいいわ、別に今日は除霊の仕事が有った訳でもないし。」

「・・・えっ?、ほんとっすか?」

 以外にもあっさりと開放され喜ぶ横島だが、

「ええ、1ヶ月間給料20%カットで許して上げるわ。」

「・・・え゛っ・・・。」

 次の瞬間、ぎしっと音がするような勢いで石化する。そんな横島を余所に、美神は小竜姫との会話を再会した。




「じゃあ私は、普通に受験生として参加して怪しい奴を見つければ良いのね。」

「ええ、メドーサの思い通りにさせる訳には行きませんから。」

「でも、・・・もしもメドーサ自身が試験会場に現れたりしたらどうするの、はっきり言ってあいつの相手をする自信は無いわよ。」

「その時は・・・、メドーサは私が押さえます。」

「それじゃあ、あのおばはんを見かけたら大至急小竜姫さまに連絡すれば良いわけね。」

「ええ、お願いします。」



 美神と小竜姫がそんな会話をしている横で、石となっていた横島がようやく再起動に成功した。

「そ、そんなーーー―っ、あんた俺に死ねと言うのかー―ーーっ。」

「煩いわね、男の子でしょ、過ぎた事を何時までもうだうだ言ってんじゃないの。」

 横島にとってはまさに今この時の問題なのだが、美神の中では既に過去の事にされてしまっているらしい。

「そ、そんなー・・・、・・・ううっ、ちくしょう・・・。」

 横島は更に何か言おうとするが、美神のその態度にこれ以上はさらに状況を悪化される恐れがあると判断して泣く泣く引き下がり、部屋の隅でいじけ始める。

「あ、あのー、元気出してください、少しだったら私もお金持ってますし。」

「お、おキヌちゃん・・・、おキヌちゃんはええ娘やなー。」

 そのうしろ姿に哀れを感じたのか、この事務所の居候兼従業員である「おキヌ」が声を掛けると、横島は感動したようにそう言い、ちらりと横目で部屋の中央を見やりながら、

「・・・それに比べて誰かさんは・・・。」

 ぼそっと呟く。

「ナニか、言いたい事でもある訳。」 

「あああっ、ないっす、全然ないっす。」





「・・・横島さん。」

「はいっ、なんすか?。」

 目の前で繰り広げられる阿鼻叫喚の地獄絵図を見かねた訳でも有るまいが、今まで何か考え込んでいた小竜気がポツリと呟くと、美神にシバキ倒されながらも間髪入れずに横島が返事をする。 

「・・・横島さんもGS試験、・・・受けてみませんか?。」

「・・・えっ!?」

 小竜姫のその言葉に反応したのは当人である横島ではなく、今までその彼をシバキ倒すのに夢中になっていた美神であった。

「な、何考えてるんですか小竜姫様!?、こんなアホにそんな才能あるはず無いじゃないですか。」

「・・・そうですか?、私は結構良い線行くと思うんですけど。」

「この馬鹿の何処をどう見たらそんな風に思うんですか?。」

「んー、最初に明神山で会った時から思ってたんですよ、ひょっとしたら横島さんって隠れた才能が有るかもしれないって。」

「で、でも・・・」

「横島さんはどうですか?、GS試験、受けてみませんか?」

「お、俺っすか?」

 いきなり話を振られて驚く横島だが、少し思案した後その問いに対する答えを返す。



「・・・・・・GS試験・・・・・・って何ですか?。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 その答えは二人を沈黙させる十分な威力を持っていた。




 つづく・・・送信しようとしたら長すぎるって怒られてしまった物ですから二つに分けます。
 ・・・不精物で申し訳ありません、後書きは次回で。

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