ザ・グレート・展開予測ショー

残された物――前編――


投稿者名:マサ
投稿日時:(02/ 8/25)

都心からやや離れた所に位置する小高い丘の上に作られた比較的管理の行き届いた墓地。
此処からは下界の町並みを見晴らすことが出来る。
盆も過ぎ、客足など当に消えてしまっていた或る日、普段は閑散としている筈のこの場所が本日は妙に騒がしい一団にその静けさを破られていた。
この様な時期に珍しいと言うべきなのだろうが、どうやら墓参りではないらしい。

「本当に貴方って子は、私が生きていることが分かったのにまだお墓を残しとくなんて…もうっ…何を考えているんですか!!?」(ぶちぶち)
「だって忘れてたんだもん!」
「『忘れた』ではすみません!!」(怒)
口論を繰り広げているよく似た二人の女性は騒ぎの元凶、美神親子。
巨大化させた顔に青筋を浮かべて相手を威嚇しているのは日本のゴーストスイーパーチームの隊長こと美智恵で、思いっきり子供のような甘え口調なのに見た目は大人なという一見格好のつかないほうがその娘・令子である。(苦笑)
「こら作者ーっ!うっさいわよ!!」
す、すんませんっっっ。
「まーまー、こんな所で騒いだら幽霊さんが可哀相ですよ」(汗)
必死に止めようとするは、そう言いながらも気迫に負けている我等がおキヌちゃん。
しかし、彼女の健闘も空しく、歩きながらの口論は激しさを増すばかりである。
「……おキヌちゃん、俺達があの二人の最強タッグを止めるのは無理だと思うぞー…」(苦笑)
どうしようもないといった様子で言うのは頭にバンダナを巻いた少年。そう、横島だ。
「で、でも〜…やっぱりぃぃぃ……(うううう…)」
目にちびっと涙を浮かばせるおキヌを見て、≪この優しさが空回りするのもそれはそれで可哀相だな…≫などと思う横島。だからと言って行動を起こすわけではないが。

立ち並ぶ墓石はどれも此れも凝っている上に敷地の大きな物が多い。
球形ならまだ珍しくないが、矢印や手を模った物まで様々な形がある。
多分、比較的裕福な家の物なのだろう。
そんな中で、やはり(やはり?)一際目立つ大きなものが美智恵の墓(仮)だったりする。
本当にGSの収入って凄い。(自分で書いていて感心する作者)
それが見えて来たところで、おキヌが何かに気付く。
「あれ?あそこに誰かいますよ」
彼女が指差したのは例の美智恵の墓だ。
この時期に、他の客はいないはずなのだが…。
「本当ねー。誰かしら?」
と美智恵。口論は一時中断したらしい。
疑問に思いながら、四人は駆け足で近づく。
そして、そこにいたのは…。
「え!?…親父?!」
「パパ!?」
美智恵の夫であり、令子の父・公彦だったりする。
「義父さぁぁぁん!!!!…ぶぐはっ!!」
何時もの如く、美神の親類に飛び付こうとした横島は令子の肘鉄によって敢無く撃墜された。
「この少年が横島クンかい?」
公彦もアシュタロスの件の話は聞いている。
「ええ。…ところでパパ、何時帰国したの?」
「今日だよ」
「ふ〜ん、妻に何も言わずに?連絡くらいしても良くありません?」
「い、いいじゃないか。後で驚かせようかと…」
どうやら、一人で隠れて来たかったらしい。
何時も帰国する時は美智恵が付いているのだから、仕方の無いことではあるのだが。
「あらあら、やっぱり娘の顔がちゃんと見たかったのね♪」
「べ、別にそういう理由じゃないんだけどね……」
軽く指差しながら言った美智恵の言葉に少々顔を赤くする公彦。
「私は別に無理に会ってくれなくても良いんだけど?」
「い、いや、そういう意味じゃないんだよ。令子…」
令子お得意の意地っ張りが炸裂するも、父の方は面識が無さ過ぎるためか気付かずに『弱った』と顔に書いた状態で発言をするのであった。
この家系では男は負ける宿命にあるのかも知れない。
既に魔の三角形の一部に取り込まれた公彦は妻と娘から集中砲火を受ける。

「あああああっ」(汗)
「なんだか、哀れに思えるのは俺だけか?」(こちらも汗)
あとの二人にはどうしようもない領域に達しているため、横島とおキヌは傍観の姿勢でいる。

「ま、そんな事は良いとして……親父も暫く見ないうちに老けたわねー」
親子の会話というのは意外とネタが変わり易い物かも知れない。
「ほっといてくれっ!ママが若すぎるんだよっ!」
創作者も全くの同感である。
「あら、私はまだまだ老ける気は無いのよ。ほほほほほほほほほっ!」
妙に納得してしまう所は美智恵は流石と言って良いだろう。

「あの〜、結局は墓石はどうするんでしょうか?」
公彦を脱出させる意味も有り、おキヌは思い切って話を元に戻す。
それに対して美智恵は一言。
「撤去します」
「え〜!!?」
「無くしちゃうんですか?」
その言葉に妙に驚く令子が気になるが、美智恵は話を進める。
「私はまだちゃんと生きているんです!ごく普通の物ならいざ知らず、こんな大きな物を立てられた身にもなってみなさい!!」
「ちょ、ちょっと…そんなに急ぐこと無いじゃない」
「そうですよ。人間何時ぽっくり逝くか分かりませんし。念のために残しておいた方が良いですよ。生きている内に自分のお墓を立てておく人だっているんですから」
「…おキヌちゃん、フォローになってないよ。その台詞をおキヌちゃんに言われると妙に説得力あるし」(汗)
焦り気味にツッコミを入れる横島。
「じゃあ、折角建てたんですから、どこかの公園に飾って…」
「名前が書いてあるんですからいけません!!」
「そんじゃー、文字の所を削るってのはどうっスか?」
「…今何か言いましたか?…横島クン…?」 ギロッ
美智恵の絶対零度の視線が横島を捉える。
目が笑っていない。
これ以上刺激しては命に関わる―横島の本能がそう告げていた。
「な、何でもないっス」
横島は両手を何度も横に振る。汗だくで。
「兎に角、このような物は直ぐに撤去します!業者に話は付けてあります。直に来るでしょう」
美智恵の方は其れで良いらしく、其の話題からは離れる。
「ちょっとママ、そんな事は後で私がやっておくから、別に今日じゃなくても……」
「……さっきから気になってたんだけど、令子…あなた、何か隠し事でもあるの?」
「そ、そんな事ないわよ。やーねっ…ほほほほほほほほっ」
確実にそうと分かる作り笑いを浮かべ、令子は何でもないと繕うが、端から見てかなり動揺しているのが分かる。顔色が真っ青だ。


          ―続く―

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