ザ・グレート・展開予測ショー

MY SPIRIT LIVES ON


投稿者名:ヨハン・リーヴァ
投稿日時:(02/ 8/15)

降り注ぐ蝉時雨。
それはまるで、短い命の嘆くかのように。






一人の少女が、真新しい墓の前に佇んでいる。手にした籠には、色とりどりの花。



―――――父上、帰ってきたでござる。









                          MY SPIRIT LIVES ON









「お盆って、なんでござるか?」

「お盆の間にはね、亡くなった人がこの世に帰ってくるのよ」

いつもの事務所のいつもの会話。しかし、おキヌの言葉はシロの胸に何か言いようのないつかえを残した。
タマモにそんなことも知らないのと冷やかされても、美神にお盆には地縛霊や浮遊霊も活発になるから気を引き締めなさいとハッパをかけられても、シロは上の空だった。



父上も、帰ってくるのでござろうか?



そして遂にいても立ってもいられなくなり、こつこつ貯めた「おこづかい」を手に事務所を後にし、慣れない「電車」に乗ってはるばる父の眠る故郷まで帰ってきたのだった。

しかし、いざ父の墓を前にすると、言いようのない空しさが湧き上がってきた。
そこにあったのは、土を盛り葬られたものの名前を記した卒塔婆が立っているだけの人狼特有の墓であり、父の姿ではなかったのだから。
空しさを振り払うように、事務所のそばの花屋で買った花を供え、おキヌが餞別にと持たせてくれた線香に火をつける。
細い煙をたなびかせる線香を墓の前に並べながら、シロは呟いた。



もう、会えないでござるか?



久々の故郷で過ごす一日は、それなりに楽しいものだった。
しばらく会っていなかった友と旧交を温め合い、夕食では久しく口にしていなかった懐かしい味を楽しんだ。
しかし、決定的に何かが足りない。
長老の家に泊まらせてもらえることになったが、シロは夜中を過ぎても眠れなかった。



父上、もう一度だけでも・・・



シロのほほを涙が伝う。
寂しさから目をそらすかのように、シロは嗚咽を噛み殺した。
その時だった。



「シロ・・・シロ・・・」



父上!?父上でござるか!?



聞こえてきたのは紛れもなく、懐かしい父の声。暖かくて、それでいて強い父の声。



「大きくなったな・・・」



父上!!拙者は・・・拙者は・・・



思いが涙となり、堰を切ったように溢れ出す。



「シロよ、父はいつでもお前のことを見守っている・・・」



父上!!姿を見せて欲しいでござる!!



「強く生きろ、シロ。お前がいる限り父はいつでも側にいる。わが魂は、お前と共に・・・生き続ける」



優しい父の声が遠ざかっていく。遠くへ――――手の届かないほど遠くへ。



父上――――!!






翌朝シロが目を覚ますと、そこに父の姿はなかった。



でも、でも・・・父上は拙者を見守っていてくれるでござる!



父の言葉を胸に、長老や友やこの故郷に別れを告げシロは走り出した。信頼できる仲間たちの元へ向かって。振り返らずに。



「シロは立派に育ちおった。まるで若い頃のおぬしを見とるようじゃ。のう、犬塚・・・」



シロの背中を見つめ、長老が呟く。その表情は、限りなく優しい。






一段と強くなる蝉の声。
それはまるで、短い命を燃やし尽くすかのように。





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