ザ・グレート・展開予測ショー

血塗られた2月14日(一)


投稿者名:AS
投稿日時:(02/ 2/28)




「この2月も、終わりなんだな・・・」


 場所は教会にある『彼』の部屋。
 
「きっと・・・これからどんなに永く生きても・・・」

 その自分の部屋にあるベッドに腰かけながら、彼は憂鬱という言葉よりも沈痛という言葉が当てはまる表情で・・・

「今年の2月、あの日を忘れる事は無いんだろうな・・・」

 そう・・・ピエトロ・ド・ブラドーは呟いた。



 思い起こせば、あの時点で妙だと気が付くべきだったのだ。



「さて今日はどんな郵便物が・・・あれ?」
 
 毎朝繰り返している事。
 新聞やら手紙やらが届いてるかを、ピートはまめに確認しており、当然この日もそうしたのだ。

「何だろう・・・あ、あぁ!」

 最初は本気で気が付かなかったのだ。
 ピートにとって日本のバレンタインでチョコレートを渡す、という風習にはどうにも馴染めない部分があった。それにも関わらず同じ学校に通う女生徒達は皆、我先にと血走った眼で競うように自分にチョコを渡しにくる為だ。
「そっか・・・今日だったっけ」
 自分の手の内にある『ソレ』を、まじまじと見つめる。
 典型的なハート型のチョコ。リボンや包装も可愛く、これを送ってきた娘はどんな娘なんだろう・・・と、ピートもそんな思いをつい抱いてしまう。
 しかし。
「そうなんだよな・・・今年も来ちゃったんだなぁ」
 浮かれた気分もそこまで。
 何せ・・・これから学校へ行こうものなら、女生徒達の過激なプレゼント攻勢が待ち受けてるのだ。
 しかも・・・それだけに限らずに、あの男子生徒達の敵意に満ち満ちたあの眼。吸血鬼のこの自分の生命力を脅かさんとする程の、凍えるが如き寒さを抱かせる眼。
 どうして?何故?ホワイ?一体彼らはこの日に何を賭けてるというのだろう?
 ピートには解らない。自分がどうしてこの日に限り、校内の嫉妬や羨望、注目や話題とされねばならないのか。
(・・・・・・)
 ピートはそう物思いにふけりながら、部屋に戻ってきた。
 日本に馴れてしまった為、祖国ではそれ程肌寒く感じない日本の冬の寒さも今は少し厳しい。部屋の暖炉の前で温まりつつ、ピートは壁に掛けられた鏡を見た。
 美形。
 自分でもそれは理解出来る。鼻にかけるつもりは無いが、自分が世間一般の標準よりも抜きん出ている事も解る。
 しかしピートにはそれでも解せない。
 あの学校にはそれなりにハンサムな男子生徒も、渋い魅力を持つ生徒だって数多くいる。だのに何故自分にここまでの注目がされるのだろう?
 白い肌に輝く純粋な金髪、そして時折覗かせるバンパイアの牙、それらが神秘性となって女生徒達にとっての自分を『ただの美形』では無くしてるのにピートは気がつけない。そういう世事に疎い純朴な部分が彼にはあった。(そこが一層がつがつした男子生徒達よりも女生徒達の目を集めてしまうのだが)
「・・・あ」
 そうこう思索してる内に、登校時間が迫ってきていた。
(・・・・・・)
 やはり駄目だ。
 こんな事で学校を休み、Gメンとなる夢の障害を作ってはいけない。
 ピートは手早く支度を済ますと、先に届けられたチョコを朝食代わりに頂いてから、神父に挨拶し学校へ向かったーーー


 良い天気だった。


 雲一つない空。だからこそ風も気温も冷たくなるのだが、その代わり、こうして太陽の温もりと暖かさを全身で感じる事が出来る。
 ピートは今更ながら、自分がハーフである事に感謝を・・・
 ドン!
 誰かとぶつかった。
 感触からして華奢な感じだ。恐らく女性。視線を向ける前にそう直感し、ピートは路面に膝をついた女性に慌てて手を差しのべた。
「大丈夫ですか!?」
 よそ見していて申し訳ない気持ちから、語気荒くそう言った自分の顔を見て、女性がハッと息を呑む。
 まずい。少しばかり自意識過剰に、ピートは自分の顔立ちがこの初対面の女性の目をひいてしまったものとーー・・・

 ・・・『勘違い』していた。

『何じっと人の顔見つめてんのよ!この変態ーーーー!!!』

 ーーー閃光を見た。

 それが吐かれた言葉から、脳裏に疾け抜けた閃光の為なのか? はたまた頬に感じたジンとくる痛みの所為なのか?


 それに答えを出す暇(いとま)も無く、ピートは仰向けに倒れこんだーーー




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