ザ・グレート・展開予測ショー

LONG TIME NO SEE (弱いゆえに) 


投稿者名:人生前向き
投稿日時:(02/ 5/ 2)

 
壁にかかっている時計の音がやたらに鬱陶しい。小竜姫さまはあれ以来黙りこくってしまった。突然たたきつけられたものは、意外にも想像以上に厳しいもので、俺は自分自身を落ち着かせることで精一杯だった。



 どれだけ時間がたったのだろうか、気づかぬうちに雨音はうせていた。俺はゆっくりとカーテンを窓の端に寄せた。外は晴れており、窓から差す陽は刻一刻と色を変え始めている。いつになく悲しさをそそる色へと。
 「短い時間しか見れないからよけいに美しいかぁ。」
 「えっ!!」
 小竜姫さまは顔をこちらに向けた。彼女の目は赤く腫れ上がっており、まだ目尻から涙がでている。彼女は彼女で辛いのだろう。そんなことは分かり切っている。そう分かり切っているんだが俺は・・・・



 「なにが正義ですか?」 
 「なにって?」 
 唐突だったからかもしれない。彼女は不思議そうに俺の顔を見ている。
 「俺たちは正しかったんですか?」
 質問の内容を理解したらしく、勢いよく立ち上がると、彼女は即答した。
 「あたりまえです!何をいっているんですか。」
 古びたパイプ椅子が後ろへ倒れ、騒音をつくりだした。彼女はあわてて椅子を元に戻すと、再び腰をかけた。
 「俺も俺たちが正しかったと思いたいっすよ!でもアシュタロスが・・・・アシュタロスはメチャクチャ苦しんでたんですよ、永遠に変わることのできない絶対悪という存在っていう代名詞を背負いながら・・・そして永久に解き放たれないっていう『魂の牢獄』ってやつに・・・。俺だってあいつは憎いですよ、いや憎かったです。 だけど今は、死ぬことさえ奪われていたあいつに・・・。 もともとは誰も死にたいやつなんていないんだ!!でも自分が生きていることで、自分が大切にしていたものが壊されるのならって・・・。だから・・・だから・・・」
 

  ・・・でも俺はあいつにとどめをさした・・・
 
 
 小竜姫は戸惑っていた。
 何故私たちはこんな子を戦場へと送ってしまったのだろう。駆り出してしまったのだろう。彼一人だけに辛いことを押し付けて、どんどんと彼の手を汚していってしまってる。


 「じゃぁどうするべきだったんですか?」

 気持ちとは裏腹に無意識のうちに出てきた彼女の言葉に、彼女は芋虫を噛締めた顔をし、自分の発言を呪った。
 
 
 「横島さん。夕食お持ちしました。」
 看護婦が入ってきたのを見計らい、小竜姫はその場をあとにした。
 「三日後また来ます。」と一言残して。


 他に人影が見当たらない帰路を急ぎながら小竜姫は後悔していた、彼に言った言葉を。
 《私は彼を傷つけることしかできない。彼が私にすがりついてきたその手を、私は助けるどころか振り払ってしまった。なんであんなことを・・・》
 街灯がつきはじめ、彼女は足を止め、歩道の横にたたずんでいる木にもたれかかった。



 看護婦は夕食をベッドの横にある机に置くとそそくさ出ていった。
 俺はただジ―ッっと時間の流れを感じながら、焦点の合わない目で運ばれてきた夕食を眺めていた。

 





 

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