ザ・グレート・展開予測ショー

misson:7thH`EVE`N「ファイルNo02:エネミー<遭遇>」


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(02/ 4/22)

ここは妖怪変化や死人が暮すホシ――。今は人が神に近い時代――。
美神ひのめは極端に怪談が苦手な性格にして、優れた念発火能力の持ち主である。
この物語は、この過激な新時代を駆け抜ける彼女の激動のエピソード――かもしれない。

「む、うーん………あぁ…時が見える……」
「その台詞はホントに助かりませんよ?」
ひのめの意味不明なうわ言に、高位魔族だったと自称する幽霊が
これまた意味不明な合いの手を入れる。
「うどわッ!?」
ひのめは目を覚ますや、傍らの幽霊からがさがさとはいつくばって離れる。
「なにもそこまで邪険にしなくとも……」
「うっさい!オバケの分際で口利くな、寄るな、居るな!!」
呆れた口調の幽霊とは対照的に、怒涛の勢いで言いたい放題言うひのめ。
「うぅぅ……ヒドイぃ…一昔前は幽霊だってアイドルになれたのに………」
「なんの話よ…ってそうだ!あのコは!?」
と、ひのめはその会話を無理矢理打ち切る。するとひのめのすぐ横で彼女が動く。
「あの、ここにいます。そのぉ…先程はご心配おかけ……」
バチンッ
「キャッ!」
少女の鼻先で空気が弾けたのだ。無論、ひのめがやったのである。
ストレスを溜めとくとデカイ暴発が起こりうる。
ムカついたら我慢しないで小出しにするのが、ひのめオリジナルの念火制御法だった。
「心配とかじゃないでしょー!?よくも人様の首ギュってしてくれたわねーッ!!」
「気が短い方ですねぇ……」
「冗談じゃないわッ!仏様と息がかかるくらいの距離でお話したんだからね!!」
幽霊の呟きに、ひのめは怒りで顔を真っ赤に染めて怒鳴り散らす。
「すっごぉい!それって臨死体験ってやつですよね」
これは少女の言葉である。
「言わないでよッ!あたしはそーゆーのダメなの!!だいたいあんたのせーでしょ!!!」
言われて少女はきょとんとして
「ダメ……?って、お姉さんGSじゃないんですか?」
「は…?」
「だって、幽霊さんがあたしを捜してきてくれたみたいに言ってたから……
お巡りさんなわけはないし…そーしたらGSなのかなぁ、って」
「ん…いや、まぁそれは……成り行きというかなんというか……」
口篭もるひのめ。
彼女を勝手に連れ込んだ幽霊ほどではないにせよ、
知らなかったとはいえ勝手に暴れて彼女を置き去りにしたのが
後ろめたかったからだとは、本人を前にしては言いづらい。
その様子を見てとった幽霊が的確なフォローを入れる。
「まぁ、この女性はバーサーカーですから」
「違うわよッ!親切心ッ!!」
「自分で仰られると物凄く胡散臭いんですが……」
「いーから黙ってて!」
言って幽霊に手で「しっしっ」という仕種をするひのめ。
「これで親切とかいう言葉が出てくるんだから、笑っちゃいますよね…」
幽霊はそう言った直後に、ひのめの凄絶な眼差しに射すくめられてようやく口をつぐむ。
「なんにせよヤバイ事に巻き込まれちゃったね、お互いに。あなた名前は?」
「あ、その……」
「貴女がのんびり寝ている間に、私が聞き出しておきましたよ。ねぇルーちゃん?」
「えへへへへ…」
少女が、やはり気恥ずかしかったのだろう、照れたように笑う。
本名にしては不自然だし、この反応からすれば適当につけた愛称というところか。
ひのめとしては「のんびり」がやけに耳に残り、不快でそれどころではないのだが。
「ルーちゃん?…まー、呼べればなんでもいーか…」
「そういえば…幽霊さんはなんて呼べばいいんです?」
「私ですか?それはですねぇ…」
「オバケでじゅーぶんでしょ」
オバケ(決定)の名乗りにさらりと割り込むひのめ。
「ダメです!ちゃんと名乗らせてくださいよー」
「うっさいなー。だいたい死んだ分際で喋らないで動かないで居ないで。不健全よ」
早口にまくしたてる。とも違う、一息に呟く感じで言う。
「うぅぅ…人種差別よ…幽霊だって生きてるんだから……」
「うぅ...泣かないでください、オバケさん。貴女が泣くと私までぇ……」
「そんなわけないし……いや、両方ね…」
ひのめは噎び泣くオバケとルーを冷ややかに眺める。
なんとなくだが、二人の性格が解ってきたような気がした。
「そんであたしは美神って名前だけど、そっちの身体が透けてるのは気安く呼ばないで」
きっちり釘をさしておく。
「じゃー用がある時は肩叩いて呼んでいいですか?」
くすくす笑いを伴って、幽霊が言った。ひのめはそれを聞いてうつむき、低い声で言う。
「半径十メートル以内に侵入したら……泣くからね!?」
最後の言葉とともに顔を上げたひのめは、涙を溜めていた。
「…ご……ごめんなさい………」
幽霊は冷汗たらして謝った。得体の知れないプレッシャーが彼女に迫ったのだ。
が。それは彼女――オバケに向けられたものではなかった。
「――来たッ!」
ひのめは部屋の中央から飛び退きざまに、抑制していた気持ちを解く。
世界はすぐにそれに応えた。
バグォォォン
「ちょっとおおッ!?なんてことするんですか美神さーーーん!!」
チカラは、自分特有の能力に変異させる前のチカラを壁にして防御できる。
それはチカラが、人間に内在された未知のエナジーという正体で統一されているためだ。
誰かが確かめたわけではなく、むしろ結果からの推測でしかないのが心許無いが。
とにかく過去の統計を信じるなら、能力を持つ者は炎を防御できた筈なのだ。
だが、まぁ、イレギュラーというものはどんな事象にもつきものなのだろうか。
悲鳴雑じりに苦情を言うルーはあっちこっちが焦げて、煤まみれになっていた。
彼女の防御が失敗したことを認めざるえない。
いや、失敗したならそもそも彼女の悲鳴は聞こえてこないはずなので
失敗しなかったが防ぎきれなかった、という解釈が適当だろうか。
「なにって……ここは悪の巣窟なのよ!人が入ってきそうになったら遠慮なく撃って」
さすがに、人が向こう側に立てば解るほど薄い扉なら逆もまた然りで
紅蓮のカーテンの向こうから、完璧に炎をガードしたらしい男が現れる。
「なぁんだ…やってきたのは一人?それとも、お仲間は燻製にでもなっちゃった?」
ひのめは軽口叩いて適当に身構えた。その視界へ、更にもう一つの影が浮かぶ。
「…ふぅん……二人…二対二なら五分の勝負ができるとでも?」
僅かに躊躇してから、なおも言うひのめにルーが抗議する。
「わ…私ですか?ダダダ、ダメですよ!?私は全然……」
男達は無言。そして更にもう一人。
「………ふん!あたし達三人と本格的にやろうってのね!!」
「死んでる私まで勘定に入れないでください!!」
更にもう一人入ってくる。
「あー、えーと……女の子相手に多勢に無勢とか恥じる気持ちが…」
五人目がやってきて、
ひのめはようやく「言葉で圧倒して精神的優位に立つ」作戦を諦めた。
なんとなく、喋れば喋るほど状況が悪化してる気がしたからだった。
「てや」
ドゴォォォォォォン
軽い掛け声と裏腹に、リミッター付きで一度に出せる最大の火力を解き放つ。
部屋全体が深紅に染まり、視界の隅ではやはりルーが中途半端に炎を浴びていた。
その彼女の手を掴み、ひのめはまっすぐに男達の方向へ駆ける。
ゅぉ
世界が、不可思議な「歪み方」をして、部屋の炎は消えた。
その時には、ひのめ達の姿はなかった。炎は男達には到達しえない。が、部屋は別だ。
ひのめは部屋に火を点け、彼らの視覚と聴覚を封じて
彼らの背後の出口に駆け込んだのだ。
「…クールだね。しかも大胆。天性のセンスなのか、そういう師匠を持ったのか……」
――あるいは、その両方か?
まぁ、どちらにせよ…いや、どれにせよ侵入者は排除せねばならない。
男達の中でも、頭一つ抜けて背の高い細身の男が静かに呟いた。
「………」
細身の男は、返事を待ったのだろう。仲間の内の最年少に視線を送っていた。
少年は無言で、自分の前髪を整え直しているだけだった。
「ま、結局のところ、君に任せておけばなにも問題はないだろうね」
「あぁ、もう追っていいのか?」
少年の興味とはそれだけらしく、返事も待たずに退室した。
その後に続いて二人、やはり無駄のない足取りで退室する。
最初に倒された二人を含めた彼ら五人が番犬役なのである。
残る二人はいつまでもネズミ捕りなどに加わっているべきではなかった。
が。
「気になるね…術の精度や身のこなし……妙なクセがあるというか……」
能力に正規も外法もない。もって生まれついた能力なのだから。
そして子供が数を数え始めるように、環境に適応するように術の抑止法は身につく。
だが戦闘レベルの制御をするとなると、それなりの学習が必要になる。
そして、そういう目的で技術を学ぶということはそれ自体が外法になる。
つまり、合法的にはこのテの訓練は受けられない。
独学で身につけるか、武道の鍛錬に託けるか、個人的な知り合いに教えを授かるか。
独学なら、だいたいみんな端的に相手を倒すようにしかしない。
武道の心得があるようなら、目暗ましの最中に仕掛けてくるだろう。
個人的な知り合いにしても、突き詰めれば前者二つに大別されるに違いない。
つまり、炎使いの彼女の戦術パターンはいかにも非人間的なのだ。
それに加えて術は大雑把で、なのに無音で自分達の横を駆け抜けている。
ゴガァァァァァン
どこか、屋敷の別の場所で爆発音と振動が起こって、男に決意を促した。

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