ある初夏の話 前編
投稿者名:スイカ
投稿日時:(02/ 4/27)
ある初夏の昼下がり。
大通りの脇にある喫茶店。
店内は静寂に包まれている。
窓際の一番奥に一人の少年が座っていた。
年は・・・そう17、8というところか。
目の前のテーブルに置かれたミルクティーをじっと見ている。
だれかと待ち合わせのようだ。
少し窓の外を気にしている。
チリンチリン・・
喫茶店の入り口が鈴の音を響かせた。
「よう!ここだ、ここ!」
少年はたった今入ってきた、同い年ぐらいの男に呼びかけた。
「おう」
入ってきた男は少し背が小さい。
白のワイシャツにネクタイを締めている。
男は黙って向かいの席に座り、ウェイトレスの女性に注文をした。
「・・んで、どうしたんだ?急に呼び出したりして」
ネクタイを少し緩めながら男は少年に尋ねた。
「ん?・・ああ、ちょっとな・・話したくなったんだよ」
「そうか」
少年の曖昧な答えにも男はただうなずいただけだった。
「お待たせしました」
男が注文したアイスコーヒーがテーブルに置かれた。
二人はなにもしゃべらず、ただ外の景色と行き交う人々を見ていた。
カラン・・
と、ふいに少年は飲み物を一口飲んだ。
氷の音がなんとも涼しげだった。
「なあ、雪之丞」
雪之丞・・男の名は雪之丞。
「なんだ?」
雪之丞は少年を見た。
少年はうつむいていた。
「おれってどうなのかな?」
少年は曖昧な質問を投げかける。
「なにがだ?」
「うん・・・おれの生活について」
「よく意味がわからないな」
雪之丞も答えようがない。
「おれの運勢について」
「運勢?」
少年はなにか言いたいようだ。
「・・・おれのまわりの人達について」
「美神の旦那達?」
「ああ・・」
少年はゆっくり顔を上げた。
「おれって、最近モテてるかな?」
少年は真面目な顔で言った。
「モテてるんじゃないか?」
雪之丞も真面目な顔で答えた。
「そっか・・モテてるのか、おれ」
「なんで?」
「んー、なんでだろ。そうだな・・おれのまわりに美女美少女が多いから」
「・・・」
雪之丞は少し考えた。
「・・確かに美女揃いだな」
「だろ?」
少年は少し笑いながら答えた。
「しかも、お前に好意を持ってる女が多いときてる」
「やっぱり?」
「羨ましいかぎりだな」
「羨ましい・・・か」
雪之丞の顔を見るかぎり、羨ましそうには見えない。
「素直に喜べないな」
少年は苦笑した。
「だろうな」
雪之丞も苦笑した。
「お前は人を引きつける魅力を持っている」
雪之丞は外を見ながら言った。
「おれが?」
「ああ」
「バカでも?」
「ああ」
「スケベでも?」
「ああ」
「ふ〜ん」
「だから、お前のまわりはいつもにぎやかだ」
雪之丞は淡々と言葉をはいている。
少年は普段の生活を思い浮かべる。
「・・騒がしいほどだよ」
「お前はイイ奴だよ、横島」
横島・・少年の名は横島。
横島はかすかに微笑んで外を見た。
雪之丞もアイスコーヒーに手を伸ばした。
店内にまた静寂が訪れた。
〜つづく〜
今までの
コメント:
- はじめまして。
ギャグでもシリアスでもない話を書きたくて書き込みしました。
特になんでもない会話です。
どうぞ、よろしく。 (スイカ)
- はじめまして。
横島が【少年】で頭がいくらか良さそうに見えるところから推測しても、近未来のお話でしょうか?
次回が楽しみなのと、雰囲気がツボにはまりました。
ギャグでもシリアスでもない新ジャンルに期待しています。 (魚高@このコンビ好きだーーーっ!)
- はじめまして!!
…この展開は非常にいいですねッッ!!何かほのぼのしてるみたいで!!(笑)
たしかにギャグでもシリアスでもなかったけどスゴイ引きつけられるお話でした。
次回作にも期待させていただきますッッ♪ (みっちー(一応女ですよ〜))
- 珍しく、大人な二人。 (トンプソン)
- スイカさん、はじめまして。コメントオンリー&文章力ゼロのkitchensink(キッチンシンク)と申します。以後よろしくお願いします♪ 珍しく(珍しく?)女性問題について、考えているらしい横島クンと、それにぶっきらぼうながらも真摯に受け止めて答えている雪の丞がよかったです。横島クンは具体的に何を悩んでいるのか、次回以降が楽しみです。 (kitchensink)
- はじめまして。
原作中では鈍感な横島クンがこんなことを・・・。確かにいつかはこんなことを考えれるようになってほしいですね。あと、ギャグでもシリアスでもないとなると難しくなるものなんでしょうか?(今までにかなり書いているくせに) (マサ)
- 賛成です。 (マサ)
- みなさん、コメントありがとうございます。
こちらこそよろしくお願いします。
ギャグでもシリアスでもない話というか、ギャグにもシリアスにもならない話なんです。
頭の中で言葉を選ばなくてイイほどの二人の親友同士の
ちょっとした世間話的な語り合いの感じです。
二人とも信じあってるから会話の内容を深く考えてないし、
問いかけてないし、答えてないんです。
横島は悩みの相談をしにきたのではなく、ただ雪之丞と話したくなったんです。
おれはそのつもりで書いています。
すいません、うまく説明できません・・・ (スイカ)
- ↑大丈夫、みんなきっと分かりますよ……オっと。
はじめまして。申し遅れましたが、ふちこまと言います。
横島くんは口頭上では否定するでしょうが良きとも(親友?好敵手?)である雪之条。
その友を呼び出しての特に目的があるわけでもない会話。それでも意味が無いのとは違う、実りのある時間。
誰もが共感し得るところだと思います。
次回、横島くん暴走の予感……ワクワク♪ (斑駒)
- 男二人のまったりとした時間が何とも(笑)
おっと、申し遅れました。展開予測(希に煩悩の部屋)に棲息してる駄文書き、ロックンロールと申します。ヨロシクお願いします〜。 (ロックンロール)
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