ザ・グレート・展開予測ショー

livelymotion〜プログラムEND:再会のリヴリィ “エ”モーション〜


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(02/ 8/14)

「除霊が終ってない?まさか…まだ霊が残って……?」
「なんだよ。もったいぶらずに本題にいけよ」
「円満というのは・おかしいのです。報酬は・この中の・一名にしか・支払われませんから」
「は…なんだよそんな事か。それならもう迷う必要はねーだろ」
「へ?それって……」
バカにしたように肩をすくめる雪之丞に、キヌが問いかける。
「今回除霊に一番貢献したのは、誰の目にも一人しかいねーハズだ」
言って、ひたと、キヌを見つめる雪之丞。
「あ、あの…ありが――」
「あんなサイコ女と再三殴りあった俺が一番苦労してるはずだろ?今日は俺の手柄だ」
「……………!?」
言葉を失って、信じられない目つきでひたすら雪之丞を見やる。
そしてやがて、一つの結論に至る。
「マリア、雪之丞さんここに置いといて、報酬受け取ってから拾いに来ましょ」
「なんだとッ!?テメー莫迦コラふざけんなッ!!」
マリアはしばらく沈思黙考するが、そこへキヌが囁きかける。
「お金は半分こにしましょうよ」
「イエス」
「コ、コラーッ!?せっかく美しくまとまりかけてたのになんじゃそりゃぁぁぁッ!!?」
「それはこっちの科白ですッッ!!!」
その場を立ち去るキヌとマリア。
誰もいない旧墓地に、雪之丞のすすり泣きがこだました。
「ママ、他人なんて信じらんないよ…」

翌日――
そこそこ雰囲気のあるカフェテリア。ブルマンすすり上機嫌の横島。
「いやぁ、おキヌちゃんが付き合ってくれてホント助かったよ」
「いえ…」
応えるキヌは、なぜか浮かぬ顔。
「美神さんが毎度毎度ストッキングで騒いだりしたらこっちの身がもたないもんな」
言ってチラリ、と買い物袋を見やる。
「ようはパンツルックならストッキングはかんわけだよ。
女物のオシャレなんて俺にはわかんないけど、おキヌちゃんが見立ててくれてよかった」
「そーですねー」
やはり、気のない返事を返す。
――外食したし買い物もしたけど、これって絶対デート違う……
「カオスと半々に分けなかったら映画も見れたんだけど、ま、これだけリッチなら充分か」

「ちっくしょーあのアマ……大人しいツラしてマジわけまえよこしやがらねェ。死ぬぞ俺」
いつもの公園で、立ち上がる元気も無く、ベンチに沈み込んでいる雪之丞。
そこに、まさに唐突に声をかけられる。
「依頼を持ってきたわよ。モグリのスイーパーさん」
「モグリぃ?そりゃ確かに俺は悪党面だが、いきなりアウトロー呼ばわりはねーだろ」
昨日と同じような問答だったが、今度は教訓を踏まえてソフトに応える。
なにしろ、協会の下っ端が探りを入れているのかもしれないのだ。
確かに彼は、香港での活躍で指名手配は取り下げられた。
だが、無免許で除霊活動している以上、協会に見つけられたら面倒事は不可避である。
「そ。人違いだったらよろしくてよ。次会う時まで生きてらしたら、褒めてさしあげますわ」
――よろしくて?ますわ?
「おい、お前…」
雪之丞は、そこでようやく、頭を持ち上げる。
「なんですの?
言っておきますけど、私は見ず知らずの人にお前呼ばわりさせたりしませんわ、雪之丞さん」
「弓か。今日は約束なんかなかったろ。仮にあっても今は素寒貧だから…」
「昨夜遅くに氷室さんからお電話いただいて知ってますわ。報酬とり損ねたんですってね」
特にからかう風でもなく、事実を述べるだけ、という口調の弓。
「チッ……だったらどーした。笑いに来たんじゃねーみてーだが…そういや依頼ってのは?」
弓は、ブスッ、っと渋面つくり、ぶっきらぼうに小さな手作りの布袋を突き出す。
そうするとちょうど、クマさんのアップリケが雪之丞に笑いかけている。
「これが依頼ですわ。私が餓えさせている、みたいな噂になったらメーワクですし。
ちゃんと栄養のバランス考えてるんだから、残さないようにね」
「あ?」
袋から出てきたのは、プラスチックの弁当箱。
少々小ぶりなサイズが、「チビには相応な分量だ」と言われてる気がして気に入らない。
真相は、弓が男物の弁当箱を買うのを躊躇しただけのことだが。
「んで、報酬は?」
「明日の分のお弁当ですわ」
「あっそ」
投げやりな心地で応える。
「返答は?」
雪之丞は、ふ、と弛緩して、ゆったり口を開く。
「引き受けた。元々俺が現金受け取っても飯代にしかならねーんだしな」
二人は不器用に笑うのだった。
――悪ィが、俺にはこういう生き方もあるみたいだ...

こんこん
「カオスさーん」
夕刻。今回最も大きなダメージだったマリアの見舞いに、キヌは来ていた。
「なんだ?もうとっくに来てるのかと思ったら、お前もこの時間か」
「雪之丞さん!?」
「俺が怪我人見舞うのがそんなおもしれーか?」
「いえ、そんな…」
「因みに俺自身はとっても不気味だと思うぜ」
雪之丞はせせら笑った。気のせいか、血色が良く見える。
「ジーサン、雪之丞だ!入るぜ!!」
殴り込みだ、とか冗談を言おうかとも思ったが、相手がカオスでは
シャレが通じない恐れもあったので、とりあえず無難に名乗ってドアを開ける。
ガチャ
「なんじゃ」
「ご挨拶だな。一晩組んで戦った相棒の怪我の具合見にきちゃ悪ィかよ」
「あぁ、おかげで収支計算するのが怖いわい。とりあえず今から動かすとこじゃ。
メタ・ソウルをいちから造り直すのは赤字じゃから、バグった現行の魂を潰してな」
『魂を、潰す!?』
二人が魂消て大声で聞き返す。
「あぁん?なにおどろいとる。マリアの魂に問題が発生したから造り直す。
その素材として再利用するために、一時スクラップにしただけじゃ」
「ちょっと待てジジイ。それじゃあロボットをぶっ殺したのか?」
「そんな!エラーって悪霊に取り憑かれた後遺症でしょう?殺すほどのことじゃ…」
「おぬしらなぁ、たかが人工魂換装するぐらいでガチャガチャとやかましいぞ」
「で、でも…」
「魂なんだろ?ンなもんとっかえたら、ロボット別人になっちまうんじゃ…?」
その言葉を、カオスは鼻で笑う。
「ネジをとっかえてもマリアはマリアだった。ボディをスペアのあり合わせにした時だってのぉ」
「魂とネジを一緒にしないで下さいよ!」
「一緒じゃよ。少なくとも構成物の一部という側面は、同等じゃ。
ただ、おぬしらは魂に一つの仮説をたて、そいつを盲信しとるな。
ズバリ…心はそこにある。そうおもっとるじゃろう」
「でもよ、幽霊も心があるんだぜ?魂が心なんじゃねーか?」
雪之丞が言い返す。
「それが凡人の発想よ。いいか小僧?科学者の発想はこうだ!幽霊も心がある。
このことから導き出される答えは、魂に心が宿るとは限らん。
心が宿るのは肉体“ではない”ことが判明しただけじゃ」
『………はぁ?』
「えーい!比較実験というものは、対象の相違点でしか測れんものなのだ。
つまり幽霊と生者の相違点は肉体がないことだから、肉体に心がないと結論付けるんじゃ。
このことは魂は心が宿ることとはイコールでは結べん」
言いながら、カオスはなぜか小さいホワイトボードを持ってきて書き込む。
「違いは、心が肉体にも魂にも入っていない可能性の存在じゃ。
いくつか挙げてみようか?肉体でも魂でもない、人知の及ばない三番目の次元がある可能性。
心とは、特定の容器を必要としない可能性。心とはどこにも存在しない可能性など…」
一気にまくしたてられ、二人は黙って見つめる。
「これらを結論しない限り、魂に固執するのは科学的とは言えん」
「なんか、字面的にバカでも知ってることのような気がするが…」
「劣化した部品は交換するのがマリアのため。ならば汚染を受けた魂は交換する」
「カオスさんは…カオスさんは心はどこにあると思いますか?」
「ふむ…ワシの仮説は――おぬしら、宇宙意志の存在をどうとる?
この、生命を内包する空間にさえ心が宿っておる。
しかし考えてみればそもそも、生物にせよ、ただの元素の塊であることに違いない。
だが、肉体という元素の集合には心が宿ってないことがわかっている。
ワシは、心とは並行世界を漂う一塊のエネルギーのような物と仮定する。
心が別の心を求めることが、思いついた発端じゃ。
電気などのエネルギーには引力がある。心が心を呼べば、必ず応えが返ってくる。
宇宙意志さえも、どこかの誰かの心が望んだから誕生したのかもしれん。
宇宙創生の時代から意志が存在していることは否定材料にはならん。
人間でも時間移動ができるのだからな。宇宙意志にできん可能性は極端に低い。
ワシらが望むこと。それこそが、マリアの心を不滅のものとすると、ワシは思う。
心が心を補填するからじゃ。そして今、証明実験にちょうどよい機会を得た。
ワシは、できることを放棄するのは怠惰だと思う。
それになにより、マリアが心を宿した以上、限界まで稼動し続けるべきだと、そう思う。
だから、ワシは劣化した部品は必ず手直しして、マリアを長保ちさせる。それだけじゃ」
早口で述べて、がひょん、とマリア起動の手順を仕上げる。
ゆっくりとマリアが立ち上がる。
「システムオールグリーン。
おはようございます・ドクターカオス・ミスおキヌ・雪之丞サン」
その場にいた誰もが想像し得なかったように、マリアではないマリアなど、存在するわけがなかった――。

終幕

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