ザ・グレート・展開予測ショー

狐と少年の結末。


投稿者名:NAVA
投稿日時:(03/ 1/12)





とある国。
とある土地。
とある時。

とある狐がおりました。
狐はとっても人が嫌い。
昔から人は狐を苛めていたのです。


ある日、狐は一人の少年に出会いました。
そして狐は少年の姉になりました。
平穏な生活。
慕ってくれる弟。
優しい家族。
人間に心を開き出した狐。



だけど、悪い大人達が狐を取り囲む。
狐は家族に迷惑をかけないように家を出る。
寂しがる少年。
未練が残る狐。





今回はそんなお話の最終話。










あ、これは『狐と少年。』と『狐と少年の日常。』と『狐と少年と大人のお仕事。』の続編なんで、そこんところヨロシク。

ちなみに今回はシリアスです。









―――――――― 狐と少年の結末。 ――――――――









ハァッハァッハァッハァッ……。




狐は逃げる。
人間から逃げる。
街から、自分のホーム――山へ戻った狐。
そこで待ち構えていたのはGS達。


「お疲れ様。
 ま、アンタの帰りそうな所なんて、かつて封印されていたこの山しかないわよね」


露出の激しいGSが冷ややかに言う。


「……るさい……うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!」


激昂する狐。
沈着冷静が売り物だった狐が激怒している。


「私の……私を大事な弟から引き離しやがって!!!
 私を家族から引き離しやがって!!!
 私が何をしたって言うんだ!!!」

「言い訳はしないわ。
 憎まれるのも仕事のうちですもの」

「そんなの知ったことか!!
 私の知ったことか!!」

そこでリーダーらしき女――――美智恵が号令をかける。

一斉に捕獲ネットが投じられる。

狐はその怒りのままに紅蓮を放つ。

「い、いかん!先生!!」

男のGS――――西条が美智恵を庇う。

捕獲ネットが紅蓮に包まれ、消し炭となる。

それを見た他のGS達が一斉に飛び道具――――霊体ボーガンを狐に放つ。

狐の幻術によって一切命中しない。


森が、草原が、狐の怒りを具現化した炎で燃え盛る。


狐は激怒していた。
酷く興奮していた。
周りが見えない。








「敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。敵。テキ!!
 私から絆を奪った奴は全て敵だ!!!!!」








そしてそれは一つの光景を目撃した瞬間―――敵が一人の少年を連れ出した瞬間に、冷水を浴びせられたかのように鎮まる。









「た……忠夫……」



声の震えが止められない。











「こんにちわ」

いきなり知らないオジさんが話し掛けてくる。

「横島忠夫君だね?」

「オっさん誰や?
 誘拐?」

「グッ……オっさん……誘拐……。
 僕はオカルトGメンの者だ。
 出来れば西条さんって呼んでくれないかい?」

「西条さん……?」

「よろしい。
 ところで、君の大事なお姉ちゃんに会いたくないかい?」











「た……忠夫!!!!!」

「お姉ちゃん!!!!」


走り寄ろうとする少年。
それを遮る露出の激しい女GS――――美神令子。

「ストッープ!!
 ちょっとだけ待ってね?」

少年に優しく語りかけ、次に狐へ視線を向ける。



「私達から、優しい優しいお姉ちゃんにお願いがあるんだけど良いかしら?」


狐は一歩も動けない。
少年は……弟は気付いていない。
自分に後ろから武器を突きつけられていることに。


「……………………弟には手を出さないで」


「契約成立ね♪」


ジャキンッ!!!


令子が神通棍を構える。


「え?」


少年には事態が理解出来ない。

――――話が済んだのか?

そう思って姉に近寄ろうとすると急に大人達――――西条に腕を掴まれる。

「な、何するんや!!!
 こら!離さんか!」

じたばた暴れるが、子供の力などたかが知れている。
問いに対しても、西条は厳しい顔で答えない。
それを尻目に令子が狐の前に立つ。


「何か言い残すことは?」

「……アンタには無いわ。
 忠夫に一言」

「どうぞ?」

令子が鷹揚に頷く。

「ごめんね!!!
 大好きだよ忠夫!!!」

少し距離を置いて、自分を包囲する敵の中へ。
一言一言に思いのたけを乗せて。
少年の心にこそ届けと大声で呼びかける狐。

ただならぬ雰囲気を感じ取る少年。


「お、お姉ちゃん!!!!!」


それには答えず、令子に話し掛ける。


「それと1つお願い。
 あの子には見せないで」

「……そうね」


令子の指示でその場から連れ去られる少年。
泣き声と暴れている音が聞こえる。
それを聞くと狐の心は乱れる。



ごめんね。
私は一人で生きてるべきだったね。
悪いお姉ちゃんだったね。




「さぁ、心の準備は良いかしら?」

努めて冷酷に告げる令子。

「ええ……」

そう言って目を閉じる狐。
その目から一筋の涙が流れる。




次の瞬間、神通棍が唸った。











































「何故……?」

目を開けると神通棍が狐の足元に炸裂していた。

「フーッ。
 私の負け……か。
 良かったわね?
 ママ、おキヌちゃん?」

「どういうこと?」

「賭けよ。
 私の依頼人の要望とオカルトGメン……そこにいる連中の望みのどちらを優先するかのね」

神通棍を仕舞い、美智恵達が来るのを待つ。

「私の依頼人の要望は九尾の狐の抹殺。最悪として封印。
 そうなるとギャラが10分の1に減額」

さも残念そうに、しかし、さっぱり晴れ晴れとした表情で令子が言う。

「そして私達の目的は貴女の保護よ」

美智恵が言葉を継いだ。

「私達オカルトGメンは決して妖怪や霊を祓うことを前提に動いてるわけではありません。
 まずは、共存への道を模索しています。
 今回、貴女は弟――――横島忠夫君のために死を甘受しました。
 よって、九尾の狐は人に害悪を齎す存在ではないと認定します」

「そ、それじゃあ?!」

「最後まで聞いて。
 それでも貴女は恐れられています。
 主にこの国の為政者達に。
 貴女は自分がどんな風に呼ばれているか知ってるかしら?」

「傾国の美女とか色々ね。
 国を滅ぼすって言われてるんでしょ?
 言っておくけど、私がそんなことをしたことは一度もないわ!」

「我々の調査でそのことも判っています。
 今回の茶番はそれを証明するためのモノだったの」

「……」

「だけど彼らの根拠の無い疑惑を晴らしきることは出来ないでしょう。
 そこで貴女には再び封印されてもらいます。
 それが妥協点よ」

「そっちの派手な女の依頼人は……国ってわけね」

「そういうこと。
 どうする?
 このまま封印されるか。
 それともここで殺されるか」

「随分、勝手な言い草ね」

忌々しげに令子を睨むタマモ。
そして諦めの表情へ変わり、力なく懇願する。

「忠夫にもう一度会わせて。
 きちんと事情を説明してやりたいの。
 このままじゃあの子……」















狐と少年が抱き合っている。
少年が涙ながらに何かを言っているようだ。
それを見ながら西条は美智恵に話し掛ける。

「元気の良い……勇気ある少年でしたよ。
 見てくださいよ、これ」

苦笑しながら服の袖を捲る。
そこにはくっきりと歯型がついている。

「あらあら。
 それだけ元気なら大丈夫ね」

「しかし……本当ですか?
 九尾の狐の妖気を浴び続けたために、一時的に影響を受けているだけではありませんか?」

「本当よ。
 連れて来る間に私が直接確かめました。
 彼にはGSの才能があります。
 この場合の影響は、眠っていた本来の力――――彼自身の霊力を刺激したと判断しています。
 そして何よりこの体験が、妖怪との共存を図るという目的意識を彼に植え付けることになるでしょう」

「九尾の狐を優秀なGSにより保護観察……か」


目をやると狐が少年の頬にキスをしている。


「神魔・妖怪が人間と結ばれる例は少なくないわ。
 私達の目指す、人と妖の共存の良いテストケースになってくれたら良いのだけれど」

「それまでは封印して我々が管理ですか。
 頑張れよ……少年」














6年後。






「「「「横島(クーン)!頑張れー!」」」」

某修業場の山に住む竜の神様や、袴姿の某巫女さん、シックに決めたダンディーな英国紳士風の男性に、いつまで経ってもボディコン服の辣腕GSとその母と妹などが応援する中、少年が戦っている。



「ハンズ・オブ・グローリー!!!」


横島が気合の入った声とともに一撃を見舞う。
対戦相手はすでにボロボロだ。


場所はGS試験会場。
時は既に決勝戦。

6年の歳月は少年を大人にし、一流と呼べるだけのGSへ成長させていた。

対戦相手が最後の力を込めて霊波砲を撃ってくる。


――――小竜姫さまに比べれば温い!!


サイキックソーサーで弾き返し、一気に間合いを詰めて霊波刀を首元に突きつける。



『勝者!横島!!優勝は横島選手です!!!』


大歓声の中、横島は師である小竜姫を、美智恵達の方を振り向く。
誰もが祝福の、歓喜の表情を浮かべている。













――――同日深夜。オカルトGメン本部、B2F特殊封印室にて。




ここに至るまで、親身になって協力してくれた人々の見守る中。

ついに横島の念願が叶う瞬間が訪れる。

狐の、お姉ちゃんの封印が、横島の手によって解かれていく。

封印が解かれてキョトンっとした表情のタマモ。

6年前に凍りついた時間が流れ出す。

そして横島が最初に口にした言葉は……


































「おかえり!!お姉ちゃん!!!!!」















fin









thanx to menbers of GTY & Maria's antenna.

and

special thanx to Maria's Crisis


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