ザ・グレート・展開予測ショー

ふれんち きす(4)


投稿者名:みみかき
投稿日時:(02/ 6/18)





  「だから〜、なんでコレで行くわけ?」

  「そんなに遠くじゃないだろ。俺、キライなんだよ。
  天気いいのに電車に乗るの。虫かごに突っ込まれたみたいでさ」

  自分の背中よりやや大きめのリュックを担いで、タマモが少しばかりの
 不平を鳴らす。
  彼女も電車は好きではないが、装備を携行するのはタルい。
  普段横島が担いでる量に比べればたいしたモノではけど。

  横島が裏から自分のマウンテン・バイクを押して来た。
  「今日は装備も少なくていいし、節約した分は俺らの取り分になるしな。
  お前もウメバーサン・スタジオに行き損ねた分、スカッとしたいやろ?」

  「あたし、そんなに単純じゃ無いんだけど」
  「ま、少しはラクに仕事しよ〜と工夫してるつもりなんですが、
 ・・・・お気に召しませんか、隊長?」

  はー、と短くためいき。
  ま、悪かないか。自転車って乗ってみたかったし。

  「いーわよ、承認。そのかわりコケないでよね」






  秋口の風が皮膚の表面を流れてゆく。
  先週までの熱気を含んだ湿った空気が、高くなった空のむこうに
  飛び去ったようだ。
  それよりも空気そのものが、滞留して身体に纏わり着いてたものが、
  生命を与えられたように動きを取り戻してるみたい。

  タマモは後輪のステップに立って、横島の肩を彼のリュックごしに
  つかまっている。
  このチャリンコの後部にはキャリアは無い。
  申し訳程度の泥除けがあるだけで、しかもあまり役に立っているとは思えず、
 時々雨上がりにやって来た横島は、背中に泥のラインをつけている事がある。
  したがってタマモは後輪をまたぐかんじで立ち乗りをしている。

  意外と広い肩だな、と彼女は思う。
  流れる空気の中、手のひらから温もりが伝わってくる。
  体重を傾けても、構わず肩は交互に揺らしてペダルを回している。

  ふと、顔を上げてみる。
  小高い丘の住宅地の道路を下ろうとしている。
  澄み始めた秋の空気が、市街地のわりに遠くの景色を写し出す。
  タマモの黄金色の豊かな髪が、大きく波打って空気の中を
  泳いでいるようだ。

  ちょっとしゃくな気がする。
  このちょっとしたサイクリングで、すっとしてる自分が。
  でも、この泳ぐような、空を飛ぶような感覚と風が
  自分を洗ってくれている感覚がする。

  「タマモぉ、少し飛ばすぞぉ」

  視線が空から地上へと降りる。
  耳に当たる風がまわりの音をかき消してゆく。

  「ちょっ、ちょっと、ねぇっ!」
  落下する感覚がタマモを戸惑わせる。
  実はそんなにスピードは出ていない。
  下り坂に入ると、横島は微妙にブレーキをかけて加速を
  制御している。
  視点が高く、操縦を他人に任せてるタマモには十分に怖いが。

  「ブレーキ、ブレーキ掛けてってば!こらっ!」
  「そんなに飛ばしてねーだろ?大丈夫だって」
  「大丈夫じゃないわ!ブレーキっ!」
  タマモが首にしがみ付く。
  装備のリュックが横島に押し込まれる。

  「首が絞まるだろっ?落ち着けって」
  「やっ!ゆっくり、お・り・ろ〜〜〜〜!!」


  自転車は坂下の町に吸い込まれてゆく。




  最初の目的地は現場ではなく、依頼者の事務所だ。
  契約の確認を済ませなければならないし、通報時以降の現場の情報も
  確保しなければならない。
  あれから、お馬鹿2人はジャッキー先生の映画ばりのアクションで坂下の
  自動車と通行人をかわして、透明なゴミ袋2つと黒いゴミ袋1つを弾き飛ばし
  互いに、こいつとだけは自転車に乗るまい!などと決心していた。


「除霊事務所の方ですね?御連絡は受けておりますわ。どうぞ」

  きらびやかなビルのロビーで待っていたのは、秘書とおぼしき女性。
  身長はヒールを履けば横島より少し高いくらい。
  漆黒のどストレートの髪は腰に近い。
  ほんわりとした笑顔はド○ベンの微笑三太郎(by巨人)をイメージさせる。
  そして、そしてスタイルはっ!

  ・・・いいよ。

  最高だよ!!
  スーツの布の継ぎ目が富士スピードウェイの様な曲線美を明瞭にしている。
  匂う様な色気の中にも、上品でかつ温かみ感じるこの雰囲気はどうだっ!
  その仕草の一つ一つが意識を集めているとわっ!
  そう、これはっ!!

  のけぞる様な”色気”だっ!!(by焼きたて!!ジャぱん)

  まあ、筆者の妄想はコレくらいにして。
  とにかくいい女なんだ。
  ご飯をこぼすと、床に落ちなくて胸に乗っかりそうなくらいの
  いい女なんだ!

  「社長も応接室で待っております。こちらへ」
  「この度のご利用、ありがとうございます。私、こちらの担当の
  金狐(かねこ)タマモと申します」
  「宜しくお願いします。お若いのにしっかりしてますのね」
  「いえいえ、あなたも十分お若い!はっはっはっ、私、……」
  「この不自然に前歯光らせてる失礼なヤツが、従業員の横島です。
  変態ですが腕は確かですのでお許しください」
  「まあ、洒落にならないストレートをもらったのに元気ですのね。
  頼もしいですわ」
  「い〜や〜ぁ、身体だけは自身がありますから、いつでもどこでも…」
  「ところで問題の物件はこちらでは無いようですね」
  「ええ、この本館は問題ないのですが、少し離れた別館の方が」
  「あなたのような方がホテルの事務なんて、美の損失だっ!
  ああ、このボクが独り占めしたい」
  「他の業者にご依頼されたと伺いましたが?」
  「ええ、ご同業の方も処理されたのですが、1週間ともたずに…。
  根本的な解決になりませんでした」
  「いえっ!きっと満足させてみせますっ! この横島、あなたを一睡たりとも……」



  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・てへ?」



  (過激かつ残酷なシーンにつき、しばらくミニミニマリアのかわいいダンスをお楽しみ下さい)





  「すごいですわ!その攻撃力。 これなら期待できますっ!」
  「いえ、秘書さんの華麗な脚技こそっ! あなた素人ではありませんねっ?」



  「・・・・・・・せんせ?」

  全力疾走で美神の魔の手から逃れようとしていたシロは、ふいに立ち止まった。
  愛する師匠に呼ばれた気がしたのだ。
  または、どこかに行ってしまったかのように。




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