魂の機械 電脳編 後
投稿者名:斑駒
投稿日時:(02/ 2/18)
「やったー! また勝ちまちたね! これで20連勝でちゅ!!」
「うう。なぜじゃ…たかがゲームごときで何故このワシが1勝もできんのじゃ…!!」
1勝どころか、ほとんどは私のパーフェクト勝ち(ダメージを受けずに相手を倒す事)でちた。
「おまえ弱すぎまちゅね。ハナシにならないでちゅ」
ずっとゲームできても、これじゃあホネがなさすぎてつまらないでちゅね。
「もう1勝負じゃ! 今度こそは勝つ!!」
「……こりない奴でちゅね。いいでちゅ。相手してやりまちゅよ」
ふふふ。今度もパーフェクト勝ちしてやりまちゅ……
―GET READY…GO!―
試合開始でちゅ。ジジイは隣でコントローラー持ってガチャガチャやってまちゅね。コイツ、システム分かってんでちゅか?
ドゴッ ゲシゲシゲシ バキッ
画面の中ではジジイのキャラが一方的にボコボコになってまちゅ。今回も楽勝でちゅね。
「ドクター・カオス!」
ん? 部屋の戸を開けて誰か入って来まちたね。ジジイを呼んでまちゅが……
「クソッ! コノッ! なんでワシの思い通りに動かんのだ!?」
…聞こえてまちぇんね。まあ、いいでちゅ。
ドガッ ベキィ ドガガガガ 「うわ〜〜〜!」
―RED TEAM WIN PERFECT!―
「これで21勝目でちゅ。いいかげん諦めたらどうでちゅか?」
どこまで弱いんでちゅかね。このジジイ。何回やっても全然強くならないでちゅ。
「ぐぬうう。なぜじゃ。なぜ勝てんのじゃ!」
さっきも同じようなこと言ってまちたね。ひょっとしてボケ老人というやつでちゅか。
「ドクター・カオス!」
女が呼んでも気付きまちぇんし…
「そうじゃ! きっとコントローラーが悪いんじゃ! オヌシのと取っ換えてくれ!」
…そう来まちたか。敗者は哀れでちゅね。
「ドクター・カオスッッ!!」
女がジジイの耳を引っ張って大声で呼びまちた。音波で部屋中がビリビリ振動しまちゅ。うぅ…耳がキーンとしまちゅ。
「ぐぅっ。 ん? おお! マリアか!」
「ドクター・カオス! 命令どおり・鬼門2鬼・倒して・来ました!」
この女、鬼門を倒して来たでちゅか!? GSの類でちゅかね。
「おおっ。ご苦労だったなマリア! よくここが判ったな」
「小竜姫さまに・教わり・ました」
ああ。小竜姫が見に行ったジジイの連れがコイツでちゅか。また鬼門の奴が入場資格とかふっかけたんでちゅね。ヤレヤレでちゅ。
「……!! そうじゃ! マリア! 良いところに来た! このゲームでこやつに勝ってくれ!」
「……イエス・ドクター・カオス!」
この女はわりとゲームのことも知ってそうでちゅね。少しはホネがありそう。でも…
「何でおまえ以外の奴と勝負しなきゃいけないんでちゅか?」
「マリアはワシが造ったアンドロイドじゃ! マリアの実力は造ったワシの実力じゃ!」
…なんか無茶苦茶な論理でちゅね…それより、この女も人間じゃなかったでちゅか。でもアンドロイドってなんでちゅかね。
「なんじゃ? 負けるのが恐いのか? 無理もない。オヌシではワシのマリアの足元にも及ばんじゃろうて」
言わせておけば、このジジイは。所詮はこのジジイが造ったものじゃないでちゅか。どうせ大したこと無いに決まってまちゅ。
「いいでちゅよ! 誰だろうと相手になりまちゅ!!」
「ようし! 言うたな! …マリア! さっきの対戦は見ていたな? それと、説明書とやらも読んでおけ!」
…なんだ。コイツも素人でちたか。警戒して損しまちたね。
Dr.カオスの命令が下りました。マリアはゲームでパピリオさんに勝ちます。
相手の攻撃パターンを予想。効果的な防御を選択。可能な反撃を実行。
ドンッ ドガッ バシィ
「う……うぅ…?」
攻撃時のタイムラグを計算。連続技のつながりをシミュレート。必殺技によるダメージ計算。
ビシバシ ドッカーン 「きゃぁ〜〜」
「あ…………」
―WHITE TEAM WIN PERFECT―
命令完遂。マリア、ゲームで勝ちました。
「さすがマリア! ワシが造っただけはある!」
「イエス・ドクター・カオス!」
「う……」
ところでこれは何の勝負だったのでしょうか。
「どうじゃ、チビスケ。思い知ったか! さあ『魂探査機』を貸してもらおうか」
「!!」
理解しました。『魂探査機』については小竜姫さまから聞いています。ゲームで勝てば貸してもらえるという条件ですね。
「まだでちゅ! 私はジジイに21勝してるからあと21回勝たない限り貸してあげまちぇんよ!!」
「なんじゃ? まだ負けを認めんのか?」
Dr.カオスはなんだか興奮しています。
「今のはマグレでちゅ! 次は絶対負けないでちゅよ!!」
パピリオさんもなんだか興奮しています。
「しょうがない。マリア! 相手をしてやれ!」
「イエス・ドクター・カオス!」
「マリア・22勝目。目標を・クリアしました!」
「よっしゃ! でかしたぞ! マリア! …やはりオヌシではマリアの相手にならなかったのう」
Dr.カオスはなんだかとても嬉しそうです。マリアも嬉しい。
「う…………」
パピリオさんはコントローラーを握り締めたまま動きません。
「とは言え年端も行かぬガキに本気を出すのは少々大人気なかったかのう」
「うう………」
Dr.カオスがパピリオさんの顔を覗き込んで声をかけます。でもパピリオさんは微動だにしません。
「で、ホレ! 例のものを……」
「うわぁ〜〜〜〜〜〜〜ん!!」
「……!! な、なんじゃ?」
パピリオさんが泣き出しました。口元はへの字に曲がり、目からは涙が流れます。
「うぞぉ! うぞでぢゅぅ! あああああぁん!!」
「どうしたんじゃ? 何も泣く事はなかろうが」
Dr.カオスは慌てています。
「そんなにイヤなら何もムリヤリ取って行ったりせんわい。姉の形見なんじゃろ?」
そうか! 大事なものを手離すのが悲しかったのですね。さすがドクター・カオス!
「うああぁぁあん!!」
でもパピリオさんは泣きやみません。涙が鼻からも抜けて垂れ、顔も真っ赤です。
「負げるばず、負げるばずないもん!」
負ける…? 勝負に負けたのが悲しくて泣いているのでしょうか。
「ぞうでぢゅ! コントローラーが悪いんでぢゅよ! 換えるでぢゅ! 取っ換えで勝負でぢゅよ!」
泣き声を抑えてそこまで言うとマリアを睨んで自分のコントローラーを突きつけてきます。見たところマリアのものとの違いは無いようですが…。
「おい…そんな言いがかりを……」
「うええぇぇえん!!」
Dr.カオスが言い切る前にまた泣き始めてしまいました。目に手を当てて思う様に泣き声をあげます。
パピリオさんの様子を見ていてマリアはふいに不快感を感じます。今日2度目の不快感。今回は音によるものではなさそうです。
「取り換え・ましょう」
マリアは思索する前に口を開いていました。
「お…おい! マリア!?」
「ひぐっ……!?」
パピリオさんが泣きやみました。真っ赤な目でマリアを見つめてきます。
「コントローラー・取り換えて・もう一度・勝負・です」
「ヒック…もういちど…ヒック…しょうぶ…!?」
マリアはしゃくりあげるパピリオさんの手からコントローラーを取り、マリアが持っていたのを渡します。
「マリア…コントローラーなんぞ換えても結果は……」
「ノー! ドクター・カオス!!」
すみません。ドクター・カオス。
「全ての・可能性の・検証・必要・です」
「すみませんでした・ドクター・カオス」
マリアはDr.カオスを乗せて下山する途中です。
「何がじゃ? 目的のものは手に入ったぞ? 何か問題があったか?」
Dr.カオスは懐からリング状の『魂探査機』を出して見せます。帰り際にパピリオさんが『楽しかったから』といって渡してくれたものです。
そのあと『貸すだけでちゅよ』とか『分解したりしたらタダじゃ済みまちぇんよ』などと言ってDr.カオスを焦らせていましたが…。
「ドクター・カオス! マリアは……」
「マリア!!」
マリアの発言はDr.カオスに遮られました。
「なぜ…ワザと負けたのじゃ?」
やはりDr.カオスは気づいていました。マリアが最後の勝負で故意に敗れた事に。
「…………」
でも何故でしょう? Dr.カオスに従わずにあんな行動をとってしまったのは?
命令違反に対する罪悪感は感じていますが、不思議と今の気分は悪くありません。
Dr.カオスもマリアを責めているような感じではありません。
「…………」
マリアの意識に別れ際のパピリオさんの笑顔と、横島さんのいつもの笑顔のイメージが浮かびます。
思索はまとまりませんでしたが、言葉は口をついて出てきました。
「表情…笑顔が・一番・です」
ドクター・カオスは何も言わずにマリアの頭に片手を乗せ、髪を軽く押さえつけてきました。
今までの
コメント:
- またまた長いマリア話を読んでくださってありがとうございました。
今回のテーマは……ひ…ゲフン。筆者が多くを語ってはいけませんね。
ところで自分では覚えていないのですが、小さい頃の私は酷く負けず嫌いだったらしく、ゲームに負けただけで泣いたりしては勝つまで再戦を訴え、周りの人をひどく困らせたそうです。
いえ、今は全然記憶にないんですよ。ホント。 (斑駒)
- ぼくも、小さい頃すごく負けずぎらいで、とてもわがままでした。いま思うとはずかしいな〜。 (3A)
- コ、コントローラーを取り替える…(汗)
ぬぅぅ…発想が私と一緒とは、流石ヨーロッパの魔王。 (魚高)
- パピちゃんの泣きじゃくる姿に萌えてしまった私は悪いコです…(ぽっ)
ああっ!!泣いてるパピちゃん!!抱きしめたい〜!! (猫姫@誰か叱ってください)
- 3Aさん。
3Aさんは記憶がある分だけ私より良心的だと思います。かすかに記憶に残っているのは『自分が他人に負けるはずが無い』という自惚れMAXな発想…子供ってコワイ。
魚高さん。
そしてパピちゃんもです。で、実は私もです。嗚呼、敗者の貧困なる発想よ!
猫姫さん。
私はパピちゃんを泣かせて物語を作る悪い作者です…(ゾクゥ)←背筋に殺気を感じた
ああっ!!雪玉投げないで〜! 中に石を仕込まないで〜! (斑駒)
- 大人気無いぞ、ドクター・カオス1051歳(笑)。
機械口調に拘らず「気分」と云う言葉で表現されるこころの動き、それ故の命令違反……彼女は人工でありながらも立派な一つの魂を有する独立した存在なのですね。
嘗ての自分が意図的に自身から排除した筈の「笑顔」を、その尊さを識るが故に他者の顔に甦らせようとする、そう信じて「全ての可能性の検証」する試みこそが、彼女の活動の原点なのかもしれません。彼女に関してはまだまだ、面白いアプロウチが出来る物なんですね。 (Iholi)
- カオスの意図ではなく、自発的にパピリオの笑顔を望んだマリア。
彼女の心が、人間の都合と独善でプログラミングされたものではなく、自然に生まれ出たものである事の証明のような気がします。
追伸:斑駒さん。姫がマヂで小躍りするSSを書いて頂き、ありがとうございました。パソコンの前で嬉しそうに身悶えするアレの姿を、俺はきっと生涯――忘れたくても――忘れられないでしょう。(しかし、そんなにパピリオが好きか、姫よ) (黒犬)
- Iholiさん。
1051歳…だったんですか? まあカオスさんもいくつになっても男は男ですのでオモチャの知能レベルが違っても…。
今回は散漫な展開でマリアのテーマがうまく引き出せなかったかもしれません。
テーマを『読みとってもらう』のではなく『読み取れる』話作りに努めたいです。
なんだかIholiさんにはお世話になりっぱなしでスイマセン。 (斑駒)
- ………(滝汗)……黒犬さん。
なんか妹さんが大変なことになってしまったみたいで……。ええと……どういたしまして(確信を得られぬ対応)
あの〜〜これはあくまでもマリア話……いえ、なんでもないです。
どんなふーでも楽しんでいただければそれに勝る喜びは…(既に逃げ腰)
私もマリアの魂は自然より生じた自由なものだと思います。テレサもそうみたいでしたし。ただ人工物の不完全さとボディから来る論理性が……はぅっ。ヤバイ。ちょーしに乗ってしゃべりすぎて……!! (斑駒)
- なんかマリアとパピリオのやり取りを見て、
マリアはいいお姉さんしているなーと思いました。
やっぱり子供相手にゲームに本気になったらあかんね。
次のマリアの話も楽しみにしております。 (NGK)
- NGKさん。
おお、まだマリア話を望んでくださる! お、お、お、おぉお…!! 死ぬ気でがんばります!
カオスだけ悪役ですか? 真剣勝負なのですが…いや、しかし…だが、しかし…まあ、世界はマリア中心に…(滅) (斑駒)
- ↑×5 お兄ちゃん、なに書いてるですかーっ(赤っ) (猫姫)
- 泣いたね。 (トンプソン)
- ↑×6 『誰が為に鐘は鳴る!!』(9)でカオスが引っ捕らえられた場面参照です。 (Iholi)
- あ、こちらこそ様様な視点でマリアを見詰め続けるふちこまさんには、とってもお世話になってますよ。
これからもどうぞ宜しくです! (Iholi)
- トンプソンさん。
というか、泣かせました。悪者は実は私です(爆)
遥かに遅ればせ(←私が)ながら、読んでいただけた事に感謝いたします。 (斑駒@拭汗)
- 猫姫さん。
あれ? ひょっとして黒犬さんのは狂言だったんですか? なんだ、焦ってソンしたかな?(やはり確信ナシ)
Iholiさん。
ここにコメントを書いてくださった過去のIholiさんにも、私の作品にコメントを書いてくださる現在のIholiさんにも、感謝すると共に更なるマリアの活躍を約束いたします! (斑駒)
- ↑いえ、事実です。(きっぱり)
事実だからこそ、きゃつはあれほどまでに慌てたのです。(どきっぱり) (黒犬)
- ↑なんとっ! 見つかるとはっ(焦っ)
イエ、けっして黒犬さんを疑ったわけではないのです。ただ…なんと言うか…そのぅ……
ああっ、私はどうすれば!?(←黙るのが一番!) (斑駒@しゃべりすぎる馬)
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