ザ・グレート・展開予測ショー

雨音。


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(02/ 5/ 6)

『雨上がりがが―似合うひと』
ゆっくりと―意識が浮上するのと同時に耳に薄くなりつつある雨音を感じる。
―朝か?
そう思いながら雪之丞は瞼を開けた。
目がまるで鉛かなにか仕込んだように重く、目を開けるということがひどく重労働のように感じる―昨日までのあの気だるい感覚は皆無だ。
頭のほうもすっきりしている。
1週間ぶりの睡眠のおかげだろう。
部屋の中は既にかなり雨音はもう小雨に近い。
雲からかすかに除く太陽の光が眩しい。
身体をおこそうとすると、ぎしぎしと全身の筋肉が軋んでいた。
どうやら肉体のほうも過重労働に悲鳴をあげていたらしい。
―するとぱさりとなにかが体の上から落ちた。
毛布である。
それが誰の手によってもたらせたものなのか―おそらくはあいつだろう。―。
雪之丞はぎゅっとその毛布の端を握った。
その表情は―やや自虐的で、だけどいとおしげで―。
この男にしては、めったに見れることのない苦味の有る表情。
次いでその表情は微笑みのようなものへと変わる。

このままじゃ駄目だろうな、と思う。
この心遣いはみんなに平等に与えられたものなのに誤解してしまいそうになる。
自分は―彼女に特別な人思われてるんじゃねぇだろうか?と
まったくわからねぇのに。
―第一こんな俺に―そんな感情など持ってもらう資格はねぇ。
まだ、忘れられねぇひとがいるというのに。
―いや、忘れる事はもう絶対ぇきないであろう。
それについては・・もういちど合いたぇ―もうこの感情を俺は一生背負う、亡くなったママ。
だが、しかたがないと、やっとそう思えるようになってきた。
眠れない夜を重ねて―眠ったとしても何度も何度も繰り返し同じ―『あの時』の夢にうなされ、飛び起き、―そんな時間を重ねてやっと。
区切りがついてきた、って所かな?
そして気付ちまったんだ。
俺が誰を好きになっちまってるのを―。
思えば一緒に仕事をやった時に、ちゃんと俺をたててくれた。
最悪の状況になったも、―大丈夫ですわって言いやがった。
何も聞かず―いや、気が付いてるのかもしれねけどな、一匹狼風体の俺に同士の境界線ぎりぎりで気遣っていやがる。
多分―訳知り顔で言われでもしたらきっともっと傷ついていただろうぜ。
こんな風に思うことは、ちょっと前なら考えられねぇぜ。
だけど弓の奴は俺が―誰の手もかりたくないことをしって―そのぎりぎりのところにいつでもいてくれた。
『同士』として。
―ずんと胸が痛んだ。
まるで、棍棒で殴られたかのように。
同士―それは、きっと俺とあおつにとって悪くないの距離だぜ。
だけど・・よ、もっと傍にきてほしいと思っちまったんだ。
傍にきて馬鹿話して―その存在を確かめてぇと―。
これはいままで誰にも感じたことの無い感情。
―そうして弓だけに感じちまうこころ。
でも、駄目だろうな―と考える。
あいるの態度は、信頼する同士に対するものである。
それに、こんなこころに別のひとを残したままで、―そんな都合のいい事を言えるわけも無ぇ。
雨上がりや曇りが似合うこの俺に、こんな正直なこころは伝えきれねぇ。
きっと―彼女ならば、彼女だけにこころをむけれるひとを見つけられるのだから
―否。今は伝えてはいけない。

雪之丞はそっとぎゅうと毛布をつかみ頬にひきよせ声を震わせそして
全ての感情をこめて
「有難よ」
と小声。

FIN

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