ザ・グレート・展開予測ショー

僕らの日曜日_3(La Follia_7)


投稿者名:アシル
投稿日時:(03/ 1/10)


「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」

「……5人」

 出迎えた店員が男だったことに、些か気分を悪くする横島。
 その後ろではおキヌたちが呆れた笑いを浮かべている。

「――? 畏まりました。奥の席へどうぞ」

 客の態度に不審なモノを覚えながらも、店員は自分の仕事をこなす。
 横島たちが通されたのは、8人掛けの巨大な丸テーブルだった。
 どちらかというと、レストランよりも本格中華料理屋にあるような代物である。
 それぞれ思い思いの席に着く。
 横島の隣におキヌと冥子。冥子の横にカオスで、その向こうがマリアだ。

「なんだか外食ってドキドキしますよね」

「わたしも〜」

「そうかな?」

 自分を挟んで繰り広げられる会話に首を傾げる横島。
 答えたのはおキヌだった。

「だって、知らない人と一緒の席で食事するんですよ。もしかしたらそれがきっかけでお友達になれたりするかも知れないじゃないですか」

「……そんなの、考えたこともなかったな」

 確かにおキヌの言うとおりかもしれないと、横島は思った。
 そう言う身近なところから、彼女は友人知人を増やしていくのだろう。
 幽霊も人間も併せたら、おキヌの交友関係は相当広い。
 おまけに、令子のソレのようにビジネスライクな付き合いではなく、もっとフランクな友達という形である。

「だから、外食するときは、わたしいつもドキドキしてるんですよ」

「へぇ……」

「素敵ね〜」

「ふむ、良い話じゃな。マリア」

「イエス、ドクター・カオス。私も・そう・思います」

 口々に賛辞を寄せられて、おキヌは照れたように頭を掻いた。

「はん。確かに良い話だが、そいつは悪かったな」

「え?」

「隣、失礼するぜ」

 そう言って、滑り込むようにおキヌの横に腰かけたのは黒いコートの小柄な男――伊達雪之丞。

「雪之丞! お前、なんでここに」

「私とピートもいるんだがね」

「お久しぶりです。皆さん」

 雪之丞の横の席に座ったのは、唐巣神父とヴァンパイア・ハーフのピート。
 皆、もちろん顔見知りである。

「しかし、こりゃまた一風変わった組合せだな」

「そりゃこっちの台詞だぜ。横島」

「僕らはさっき、この店の前でたまたま出会ったんですよ」

「ここで会ったのも、神のお導きだろう」

 聖職者らしい台詞を吐いて、唐巣はニコリと笑った。

「まあ、この店はお代わり自由らしいからね。横島くんにドクター・カオス、雪之丞君がいる時点でそれほど不思議でもない」

 先の台詞は一体何だったのだろうかと思えるほど、あっさりと言い放つ。
 聞きようによっては嫌味ともとれたかもしれないが、言われた横島たちは食べることに夢中でまるで聞いていなかった。
 ははっと乾いた笑いを浮かべるおキヌたちである。



「あぁ、食った食った。これで三日は大丈夫だな」

「そうじゃのう……」

「ああ。飯も食ったし、これからどうする? おキヌちゃん」

 実に満足げな表情をして店を出るのは、いろんな意味で人類の規格外な横島、雪之丞、カオスの三人であった。

「横島さん達があんなに食べるから、お店の人たち呆れてましたよ」

「あれだけ食べればね。そりゃ誰だって驚くさ」

「済まないね、冥子くん。私達の分まで奢って貰って」

「いーですよ〜。それにしても〜、3人ともホントにお腹が減ってたのね〜〜」

 愛想笑いのおキヌ、ピート、唐巣が続き、会計を終えた冥子が最後に店を出る。

「しかし、これだけゴースト・スイーパーが集まって美神のだんながいないってのも珍しいな」

「あ、ホントですね。何かあったんですか?」

「さあ? なんかオカルトGメンに呼び出されたとか言ってたけど……」
 
 首を傾げるピートに、肩を竦めながら答える横島。
 ふと、二人は何かを感じて同時に横を向いた。
 十字路の向こうから、ドドドドドッともの凄い勢いで何かが突っ込んでくる。

「せんせーっ!!」

「ピートーっ!!」

 悲鳴をあげる暇もなく、横島とピートは地面に押し倒された。
 受け身とかそんなことを言ってる暇すらない速度である。
 二人の後ろを歩いていたおキヌたちにしてみれば、何が起こったのか分からないうちに、目の前から横島とピートが消えたような感じだ。

「ぐ……、いったい何のつもりだ。シロ……」

「え、エミさん。ちょっと、止めて下さい!」

 ムクリと起きあがり、乱暴さの程度の違いはあれど、自分の上にのっかってきた相手を振り払う横島とピート。
 言わずもがな犬塚シロと、小笠原エミである。

「大丈夫? 横島」

「おおっ、タマモか。お前ら散歩に行ったんじゃなかったのか?」

「エミさんと私が買い物してたら、途中でお二人に会ったので昼食をご一緒にって誘ったんです」

「魔鈴さん……」

 ニッコリと微笑みかけるのは見た目も実際も魔女という、魔鈴めぐみ。
 九尾の狐――タマモは、居合わす顔ぶれに思わず肩を竦める。

「しかし、よくもまあ、示し合わせもせずにこれだけ揃ったものね」

「ホント、……でも美神さんがいないのはなんだか寂しいですね」

 タマモの言葉に頷くおキヌ。
 しかも、そろいも揃って暇人だらけである。

「なに? 令子の奴、どうかしたワケ?」

「ああ。オカルトGメンに呼び出されたんだって」

「西条先輩なら、さっき向こうで見かけましたよ?」

「西条?」

 めぐみの言葉に、あからさまに嫌そうな顔をする横島。
 どうやら名前を聞くのも嫌ならしい。
 変わりに訊ねたのは雪之丞。

「へえ、なにやってたんだ?」

「ええ。何か、お仕事とか仰有ってましたけど」

「とくにやることもないし、取りあえず冷やかしてみようぜ?」

 ニヤリと、口の端だけを歪ませて笑う。
 そんな彼の言葉に、一人として異論を挟む者はいなかった。

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