ザ・グレート・展開予測ショー

夏まつり


投稿者名:アフロマシーン改
投稿日時:(02/ 9/16)








どんどんどんどん、てんつくてん

どんどんどんどん、てんつくてん





こんな夢をみた。

とっちゃも、かあちゃも地震で死んだ。
預けられた親戚の家がいやで逃げ出した。
無我夢中で飛び出してみたものの、ゆくあてがない。

山道に迷い
夜の中
名の知れぬものが哂っている。
草木の間から
風が鳴いている。
ずいぶんこわくなって、泣きながら道を探す。
夜の闇に閉ざされて何も見えないのに。

最後にかあちゃが縫ってくれたきたきりの着物は、
ころげてとうに裂けてしまった。

ひもじくて、疲れ果ててしゃがみこむ。



……どん……どん……、……てん…

かすかな音に気がついた。

人のつくった音がする。

聞き逃さないように、何度も耳を傾けて歩き出す。




どんどんどんどん、てんつくてん

どんどんどんどん、てんつくてん



ひなびた村のまつりだった。
炎の周辺や、近くの木立でときおり、くすくす声やささやき
声が聞こえる。
炎とともにおどる黒い影が自分を拒絶しているように見える。
自分は輪に入れない。
そうっと食べ物をあさりに民家に忍び込む。

「そこに誰かいるわね!?わかってるのよ、ちゃーんと!」

女の声がふいにした。
逃げ出そうとするも不思議と身体が動かない。





自分は今、寺にやっかいになっている。
あの日、私を捕まえたのは一人の少女だった。
その少女も孤児だった。
彼女は慕われていた。
同様の境遇の子どもたちから、
村中の人たちから、
お城の人たちまで。
私も好きだった。

彼女は15の年に、化け物退治のため進んで、身をささげた。

彼女が消えた日から3日後
孤児がひとり、村から消えた。







どんどんどんどん、てんつくてん

どんどんどんどん、てんつくてん



祭りの音が、屋敷の外から聞こえてくる。
昔聞いた音とは比べにならないほどにぎやかな
子や孫、友人たちが私の部屋に集まっている。
みんな笑ったり泣きながら、私を囲んでいる。
村を飛び出してから50数余年。
江戸のそこそこ知れた店の主となり、無事に子どもに譲って隠居した。

彼女の歌ってくれた子守唄は、私のひそかな命の杖


この子の可愛さ限りない、

星の数よりまだ可愛、

ねんねやねんねや

おねんねやあ

ねんねんころりや…





意識が遠のいていく。









がさっ!


目が覚めて起き上がる。
あたりはほの暗い。
傍らのぬくもりに自らの動きが伝わる。

「ん〜〜〜〜〜、……どうしたの忠夫さん?むにゃむにゃ……」

「ごめん、おキヌちゃん……、なんでもないんだよ。」


寝がえりをうつ白い肩をぼうとながめる。
そうっと、そのカタチに指がふれる。
輪郭にそって指を、走らせていく。




しばらくのち、私はふたたび眠りについた。





夢は泡のように溶け、



二度とあらわれることはなかった。










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