ザ・グレート・展開予測ショー

ネクロマンサーとGS試験


投稿者名:kort
投稿日時:(02/ 6/18)

開いた窓から、音楽が聞こえてくる。
金管楽器の力強い音。きっと管弦楽部の昼練だろう。そして教室の中は昼休みの話し声。
しかしおキヌたち三人は思わず沈黙していた。原因は、かおりのこの一言。
「今回は――、合格のために受けるのではないわ。」
この言葉に、おキヌと魔理は「…?」という表情を見せていた。
なぜといって、資格試験を受ける目的が『合格』以外にあるだろうか。
大体、あのプライドの高いかおりが合格を問題にしないとは…。

「弓、お前熱でもあるんじゃ…、」
「どーいう意味よ!?」
心配げに聞く魔理に、思わず言い返すかおり。
「いや、だってなぁ、おキヌちゃん、」
「そ、そうですよね、」
「あの弓が合格にこだわらないなんて…」
なんだかえらい言われようである。
「……ちょっと、あなたがた…!?」
怒気を含んだかおりの声に、「す、すいません」と謝るおキヌ。
そして、真面目な顔のまま聞き返す。
「…でも、どういうことなんです?合格じゃない目的なんて、GS試験にあるんですか?」
もっともな質問に、2個目のパンを食べ始めた魔理がうんうんと頷いている。

かおりは箸を止めると、「そうですわね…」と呟き、
「平たく言えば、『レベルアップのため』…ということになるかしら。」
………レベルアップ?
再び、「…?」という表情を見せる二人。
そもそも自分たちは、その『レベルアップ』のためにこの学校に通っているのではないだろうか。
それを、わざわざGS試験で行うということは―――

「――ちょっと待て、それは、もう私らじゃ相手にならないってことか…!?」
「――そうではないわ。」
かすかに怒りを孕んでいる魔理の言葉を、かおりはあっさり否定した。
拍子抜けする魔理。かおりは続ける。
「レベルアップにも二つあるでしょう。この学校で行うのは、地道なレベルアップ。
私がしたいのは、飛躍的なレべルアップなの。」
「飛躍的な、ですか…?」

「GS資格試験の試合方法を知っていて?」
かおりの質問に、おキヌが「えっと…」と呟いた。資格試験なら一度応援に行ったことがある。確か…
「一対一の、けーおー制…。」
加えて、一つだけならどんな武器でも携帯可である。
ただし日本で行われるGS試験では法律に従い、銃や刀の類は許可証がなければ持ち込めない。
マリアを「武器」と称して持ち込んだカオスはこれに引っかかり、見事に失格になっている。

「そう。学校の模擬戦や、クラス対抗試合とはルールからして違うのよ。」
それは、下手をすると命を賭ける戦いになる問答無用のルールだ。
もちろん、国家試験であるし、KO制でもあるから、ちゃんとした審判がいる。
だが、放たれた一撃がまさしく「必殺」のものであったとき、
彼らにそれを止める事は恐らく出来ない。

「そ……そんなに恐い試験だったんですか…!?」
おキヌが青い顔をして呟く。
彼女が応援に行ったときはかなりの大波乱で、会場ごと吹き飛びかねない状況だったのだが、
それは魔族が関わっていたせいであって、普段はもっとまともな試験だと思っていた。
「それで死なせちゃったら……訴えられるんじゃないのか…!?」
魔理も青い顔で言う。
「いや、それに…失格になるだろ!?」

かおりは、そら豆をきちんとかんで飲み込むと、ふっ、と息をついた。
「『下手をしたら』と言ったでしょ。今までそんなこと一度も起こってないわ。」
もし一度でも起こっていたら―――
日本国家試験としてのGS資格試験は、多分廃止されているだろう。

「そうならないように、試験会場や試合場は何重もの結界が施されています。」
「あ…そっか、そうですよね。」
心底ホッとするおキヌ。
「変なこと言っておどかすなよ…!?」
「私はちゃんと『下手したら』って言っておいたわ。」
「フツーびびるだろっ!?それでも!」
「一文字さんっ、まーまー!」
椅子から立たんばかりの勢いで言い返す魔理と、そんな彼女をなだめるおキヌである。

「それで、その事が『飛躍的なレベルアップ』とどうつながるんです?」
魔理を落ち着かせてから聞くおキヌに、
「つまり、極限に近い状況で戦ったとき、人はその時点での限界以上の力を発揮する―――
そのお膳立てがGS資格試験では整えられているの。」
「…よーするに、火事場の馬鹿力が出やすいってことか。」
そういうことですわね、と魔理の言葉にうなづくかおり。

「現に、二次試験の試合を通して霊力のキャパシティが増大したという人は何人もいるらしいわ。
少数だけれど、新しい能力が開花したという人もいます。」
続けるかおりの言葉に、おキヌははっとした。そうだ、
(横島さんも…そうだった。)

『谷崎・旬のパン祭り』の点数シールをはがそうとした手を止めて、魔理はかおりに尋ねた。
「それが、お前が試験を受ける理由ってわけか?」
「…ええ。そうよ。」
その答えに、魔理は小さく眉をひそめてみせる。かおりはそれに気づいたが……特に何も言わず、里芋の煮っ転がしを口に運んだ。

遠く聴こえていた管弦楽部の演奏は、いつのまにやら止んでいる。
ふとおキヌが振り向いた窓の向こう、青空の高いところで、風を受けて雲が流れている。

―――――………。

「おキヌちゃん、どうしたんだよ?」
魔理の声に、おキヌは我に返った。そして、
「弓さん、その試験……私も一緒に受けていいですか?」
「……な…っ!?」
「――氷室さん…!?」
真面目な顔で、そう言ったのだった。



ところで、一方その頃 横島は!!
……………!
…………!
………!
……!
…!
!!
がつがつがつがつがつがつっ
「タンパク質ーっ!!ビタミンーっ!!」
「持つべきものは友達ジャのー!!!」
物語とは全く無関係に、ピートへの差し入れ弁当にタイガーとがっついていた。

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