静粛に!横島只今勉強中!その2
投稿者名:A.S
投稿日時:(02/ 7/ 4)
「いややー!やめてくれー!!死にたないー!!!」
厄珍堂の裏手にある実験室に、横島のひっくり返ったわめき声が響き渡る。しかし歯医者の治療椅子の如き物体に拘束されてしまっている横島は、もはや身動きさえ出来ない状態であった。
「毎度の事ながら往生際の悪いボウズあるなー。馬鹿を直してやろうと言ってるのにどうしてそう抵抗するある。」
横でニヤニヤ笑って話すのは厄珍である。
「頭良うなるまえに死んでまうわー!!やめろー!!!」
「この偉大なる天才、ヨーロッパの魔王とまで呼ばれたワシがそんな失敗をするわけ無かろうが。」
Drカオスがいそいそと実験の準備をしている。
「このカオス式知識記憶注入装置は画期的大発明なんじゃぞ。その最初の被験者に選ばれたというのは実に名誉な事なんじゃ。この装置の原理を説明するとじゃな…」
「んな拷問機械のの原理なんか聞きたないー!!やめ…モガガッ」
マリアに猿轡をかまされ、もはや言葉の抵抗さえ出来なくなってしまった横島であった。
「説明するとだな、人間の記憶をつかさどっておるのは脳髄の中でも間脳と呼ばれる部分なのじゃ。この間脳は人間以外の動物にも存在する。人間やサルになって急速に進化した大脳とちがって、この間脳は脊椎動物の霊的進化とともに発達してきたのじゃ。すなわち間脳は人間のもっとも古く重要なチャクラの結節点であり、霊力は心臓に血液が流れ込むように間脳へ流れ込んでおる。この事実から天才であるワシは考えた。脳の記憶作用は電気的な連絡によっておこなわれる。そして霊力も電子に変換が可能じゃ。ということは体内のチャクラを通じて脳に直接記憶を書きこむことができるのではないか?かくして偉大なる発明は形となりはじめたというわけじゃ。そして…」
「能書きはもういいからとっとと実験を始めるあるよ。」
「そ、そうじゃな、では始めるとするか…。」
カオスが横島の頭に無闇に配線のついたヘルメット様のものをかぶせた。配線はマリアに接続され、さらにパソコンへつながっている。
「この脳天のチャクラからマリアで霊化処理した電子情報を流し込み、椅子に取り付けられた尾骨接続の電極へ抜ける間に脳へ記憶を書きこむ。まったくもってカンペキなシステムじゃ。」
「…でもなんか、これって電気椅子に似てるあるなあ…。」
しばし沈黙。
突然大笑い。
ひたすら悲惨なのは抵抗不能の横島である。
「それでは、大儲けに向けて世紀の実験を開始するある!」
「よし、たまった家賃を払うため、偉大な実験を開始するぞ、スイッチオン!!」
んぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……・。
おキヌは、事務所の中を際限なく行ったり来たりしていた。横島が連れて行かれたのが昨日の夕方だから、もう丸1日になる。今朝も一応登校はしたものの、横島の事が心配で授業に身が入らなかった。もう戻っているかもしれない思い、あわてて事務所へ帰ってきてみたが、横島はいなかった。美神も仕事に行って留守である。
一度厄珍堂へいってみようかしら…。そこに居なければカオスさんのアパートへ…。
そう思いはじめた頃、一階から声がした。
「おーい、美神さーん、おキヌちゃーん、帰ってきたんですけど…。」
おキヌは転がる様に階段をおりて横島の所へ駆け寄った。
「おかえりなさいっ!大丈夫ですかっ!?」
「大丈夫なような…大丈夫でないような…なんかよくわからん…。」
当惑気味の横島の後ろで、厄珍とカオスが誇らしげに笑っている。
「大丈夫に決まっとるじゃろうが。実験は大成功だったんじゃぞ。」
「人間性の問題はともかく、オカルト知識に関する限り、今のボーズは昨日のボーズとはもう別人ある。なんでも質問してみるよろし。」
おキヌはなおもしばらくの間横島の顔をまじまじとみていたが、やがて恐る恐る言った。
「それじゃあ…ネクロマンサーとスキオマンサーの違いを教えてもらえますか?」
横島はなんて事もないといったふうに頭を掻きながら答えた。
「えーっと…ネクロマンサーとスキオマンサーは本来よく似たものなんだけど、日本語では死霊使いと影使いに言い分けられる。最初は占いとして発達したもので、死者の魂を呼び出して予言させる技術だったんだけど、的中率が低くて答えがいいかげんなんで廃れてしまった。その後霊魂の操作術として発達する過程で二つに分化したんだ。ネクロマンサーは主に悪霊や自縛霊などの自我の形骸化したものをあやつるけど、スキオマンサーはシャドウや低級な鬼神などの自我の無いエネルギー体的なものを操る。式神使いや屍鬼使いもスキオマンサーの一種だ。でも二つの差はかなりあいまいで、影使いが悪霊を操作したり死霊使いが屍鬼を操ったりすることもある…。こんなもんかな…?」
「・……!!」
おキヌは目を丸くしてますますまじまじと横島の顔を見た。
「横島さん、ほんとに横島さんですか…?」
「そ、それって物知りな俺は俺に見えないってこと…?」
「いえ、…そんな…。」
「ま、とにかく成功したのには違いないんじゃ。小僧はこれから歩くオカルト辞典じゃよ。ところで美神令子はおるか?」
「いえ、今はお仕事に行ってて留守ですけど…。」
「早く装置の量産化に着手したいあるのに…。これが量産できればまさしく教育改革あるよ!世界中から買いにきて大儲けある。プロジェクトXの取材も来るかもしれないあるなあ…。」
「じゃ、じゃあ俺もテレビにでられるのか?」
横島の目が俄然輝き出す。
「もちろんある!人類の英知のために身をささげた勇気ある少年として世界中でモテモテあるよ!!」
「おおおおおお!!!ついに、ついに俺の苦しい人生にも報われる時が来たのかっ…!春…いつの季節でもモテモテになるその時が人生の春…。」
狂喜する横島の頭のまわりに花が咲いている。
苦笑いしながら思わずおキヌがつぶやいた。
「やっぱり横島さんだ…。」
そのころ、美神は仕事をおえて厄珍堂の前にコブラで乗り付けていた。
様子見方々立ち寄ったのだが、店には横島も厄珍もカオスもおらず、マリアがぽつねんと店番をしている。
「あれ、3人はどうしたの?」
「実験・成功しました。Drカオスと・厄珍さん・横島さん・連れて・事務所へ・行きました。」
「ふーん…あの3人でやった実験が成功するなんて…世の中わかんない事もあるもんね。まあいいわ。ちょっと見せてもらうわよ。」
美神は一応マリアにことわると、勝手知ったる他人の家とばかりに店の奥にずかずか入って行く。
実験室はご多分に漏れず散らかりまくっていた。機械部品やら呪具の類やらがごちゃごちゃに転がっている。しかし実験に使用したとおぼしき拘束椅子とヘルメット様の物、それに浮かれて切り忘れたらしいパソコンは見つける事ができた。プログラムまで開けっ放しである。美神は椅子を引っ張ってきてパソコンの前に陣取ると、プログラムの内容を検分し始めた。
しばらくすると、美神の顔からこういう事をする時特有の悪戯っぽい笑みが消えた。
「これって…もしかしてとんでもない事になるんじゃ…!?」
今までの
コメント:
- 前回に引き続き、非常に豊富な情報がお話に深みを出していると思います。
そして横島のことを心から心配するおキヌちゃんが、僕をドキドキさせてくれますぅ・・・(悶絶) (ヨハン・リーヴァ)
- 「ニセモノよ!! こんなの本物の横島クンじゃないわっ!!」(by令子←笑) おキヌちゃんが心配するほどもなく一応実験は成功したようですね;どうもオカルト博士な横島クンには違和感を覚えてしまいますが(爆)。どこまでも調子のいいカオス&厄珍、そしておだてられると彼ら以上にお調子者の横島クンなどの描写が「らしい」ですね。さて、令子が発見した「とんでもない事」とは何なのでしょうか? 次回が気になります♪ (kitchensink)
- おお、物知りな横島くんがいる!(驚)
・・・論理については・・・・・・ぐう(寝)だって理数系は苦手なんです(そういう問題じゃない)
でもやっぱり欠陥品だったようで、次が楽しみです♪ (けい)
- 途中に挟み込まれる解説に舌を巻いてます。すごい…。
それにしてもやっぱり欠陥品だったんですね(笑)。次回も楽しみです。 (kort)
- ああ…豊富な知識に感服、おキヌちゃんの「やっぱり横島さんだ…。」に思わず頷き、話全体の流れの自然さに敬服いたしました。でも、やっぱり物知りな横島は横島と違うべさ(訛)。なまら面白かったべ(また訛)。 (マサ)
- たしかにおキヌちゃんが心配するのも無理ないですよね…
僕も本当に横島くんなのか疑っちゃいました。(笑い)
とてもおもしろかったです。 (3A)
- 自分に素直すぎるね。 (トンプソン)
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