ザ・グレート・展開予測ショー

月夜。


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 5/ 2)

―『つきのひかりにてらされた、ひと』
その日はつきの綺麗な夜だった―。
三日月が頼りなげなすがたで―だけど、煌々と輝く夜。
事務所のソファーで疲れ果てたのか、身じろぎもせずに昏々と深く横島が眠っている。
それもそうだろう、今日は1週間かけて大きなしごとをやっとの事で片付けたのだ。
メンバー全員でしかも、ほとんど不眠不休と言っても過言でもない極限状態でなんとか終えたのだ。
横島も自分のアパートまで帰る気力はなく、事務所につくなりソファーに倒れこんだ。
他のメンバーも同様でなんとか意識を保っていられたのも自分の部屋につくまでで、今は皆泥のように眠っている。
そう、おきぬただひとりを除いて。
おきぬは疲れが残る身体をひきずって、皆が寝ている部屋をひとつひとつわたり歩いた。
そして、部屋で倒れている美神をベットまでひきずりそっと毛布をかぶせる。
いつもよりも、―無防備な顔にそっと微笑み
「おつかれさまでした」
といい部屋を後にする。
タマモ、シロも、部屋の入口付近で倒れこんでいる。
それらもひとりづつベットまで運びそして―毛布をかぶせた。
疲れきった―だけどあどけない寝顔にくすりと微笑し―
「頑張ったね」
といいそして部屋をあとにする

そして、毛布をもっておきぬは事務所へと向かった。
きいっと
音をたててドアを開く
事務所は電気もつけていないのに明るかった。
もちろんそれは、人工的なものではない。
窓からのぞく美しい―煌々と光る月のためだ。
そして、月に照らされた部屋で、微動だにせず眠る横島。
おきぬは近づき、そっと毛布をかける。
その寝顔は濃い疲労に彩られている。そして静かだ
あまりの静かさに眠っているのか息をしているのかわからなくなるほどに―
―ふとその頬にふれ疲れを癒したいという思いにかられる。
このひとの辛さもなにもかも癒したい―と。
無意識のうちに伸びていた腕を戻し、ぐっと手のひらを握る。
ただの仲間でしかない自分が何を言うんだろうと―自嘲する。
いや、仲間だからこそだろうか?
きり、と音をたてて胸が軋む。
いっそのこと目の前のひとを恋愛対象としてのみ好意をもっていたらと思う。
だが違う。
自分は、この目の前で眠るひとを恋愛対象の前に『仲間』として『ひと』として好きなのだ。
そしてこのひとがいま彼女以外の誰にも癒されることを望んでないことも知っている
―そしてその彼女がどこにもいないことも
だから、今このひとは誰にも癒される事を否定しているのだ。
治るのならば自分の力で―疲れ、傷つきそれでも、誰の手もかりずに―立ち上がろうとしている。
それを『仲間』としてならば見守る事しかできない。
大丈夫なんとかなると―信じて。
だが、仲間には自分はなりきれていないのだ。
(―だって―)
こんなに好きなのだ。
こころがあふれそうなほど。
それが全部恋愛感情だとは言う事はできない。
だけど仲間としてだけの感情でもない。
中途半端なこころ。

―だけど、ただひとつ間違え様もないことがあるのだ
自分はこの目の前にいるひとがとても、大切だということ。
早く傷から立ち直ってほしいと思うこと。
横島はただ昏々と眠っている。
おきぬはくっと唇をかみ締め―音をたてずに軋む胸の痛みに耐えそして
「―頑張ってください」
そう呟き―ふわりと笑った。
そして祈った。
このつきの光が少しでも―癒してくれるように、と。
おわり

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