La Follia_2
投稿者名:アシル
投稿日時:(03/ 1/ 6)
横島忠夫の異変には、周囲の誰もが気がついていた。
昔の彼を知っている者ならば、おそらく誰もが気がついていただろう。
態度自体は変わらない。
ただ女性に前ほど興味を持たなくなった。
それを良いことだと判断するか悪いと思うかは個人によって違った。
付き合いの浅いモノならば、彼もいい加減大人になったのだろうと思ったに違いない。
しかし、美神令子を始めとしたアシュタロス事件の真相をしる者達は違う。
心優しい者達は、病気ではないかと心配した。
比較的冷たい連中は、天変地異の前触れだと思った。
超現実主義の美神令子は、夢に違いないと言ってもう一度寝室に引き返していった。
彼等はみんな、横島忠夫という人間を良く知っていた。
彼が誰と付き合っていて、その相手を失ったことも、そのことで彼が自分を責めていることも知っていた。
「俺はルシオラを見殺しにしたんだ」
あのとき彼はそう言った。
おキヌと令子は間違いなくそう聞いた。
真相は違う。
けれどもそれは、彼にとって真実だった。
以前と同じように振る舞ってはいたけれども、その思いは確実に彼の心を蝕んでいただろう。
だから、彼に比較的親しい人々はなるべく彼を一人にしないようにしていた。
そう心がけていた筈だった。
あまりに日常に埋没しすぎていて、そのことをすっかり忘れていたことを令子は悔やんだ。
「アイツが自殺しようとするなんてね……」
可能性を考えなかったわけではない。
だからこそ、一人にしないように見張っていたのだから。
彼の性格は把握して居るつもりだった。
自ら死ぬ事なんて考える人間じゃない。
だが、実際彼は死にかけた。
彼女の事務所の中で。
人工幽霊一号が知らせてくれなかった、『死にかけた』では済まなかっただろう。
その事実に少しだけ身震いする。
前触れは、或いはあったのかも知れない。
今日の彼は静かすぎた。
何か思い悩んでいる風だった。
それを見過ごした自分が悪い。
母、美智恵から再三注意するように言われていただけに悔いが残った。
怒り狂う母の姿が目に浮かぶようだった。
今までの
コメント:
- 賛成する気にはなれないんですが。―――ただ、何ともいえない衝撃を受けました。恐ろしく自虐的な・・・横島くんですね。しかも恐ろしく冷たく、まるで心が凍ってしまったような。鋭い刃で胸を突かれたような話でした。彼を動かしているものが、ルシオラへの愛であるとすれば、それはいったいどこへ向かうのでしょう? (veld)
- 連続して申し訳ないのですが、今回も中立でございます。原作では後半になりますと殆ど存在すらアヤシイ感じになってしまった人工幽霊壱号ですが、このアシルさんのストーリーではまだまだ健在らしいですね;ですので、人工幽霊が横島クンが余りに危険な真似をしてる時に止められないにしても騒がないのには少々違和感を感じました。それにしても、ここまで横島クンが滅入ってると周りとしてはどうしようにも救うことは難しくなりますね。果たして彼は今の状況から脱出することが出来るのでしょうか? 次回も期待しております。 (kitchensink)
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