ザ・グレート・展開予測ショー

静粛に!横島只今勉強中!その 4


投稿者名:A.SE
投稿日時:(02/ 7/ 5)

 花嵐はますます激しさを増していた。花嵐なんて言うと聞こえは良いが、エクトプラズムの破片が強力な念波で竜巻の様に渦巻いているのである。幸い軟質のエクトプラズムだったから最悪の事態にはなっていないものの、事務所内の備品やインテリアなどはことごとく跳ね飛ばされていた。
「ちょ、ちょっとばかり凄まじい事になったあるな。」
「ほ、ほんの少し予想外の事態じゃな。」
 厄珍もカオスも逃げ腰になりつつ、それでも失敗だと認めるのを拒んで無理矢理笑っている。
 一人悲愴なのはおキヌである。
「これ、どうやったら止まるんですかっ!?」
「り、理屈としてはほっときゃ止まるある。エクトプラズムは空気中へ飛散して徐々に減って行くあるから、ボーズがエクトプラズムを造るエネルギーを使い果たせばそのうち無くなるある。ただ…」
「ただ、何なんですっ!?」
「つまり…消えて行くエクトプラズムより小僧の造るエクトプラズムの方が多かった場合、エネルギーが切れる前に小僧がエクトプラズムに捲かれて死んでしまうかもしれん…。」
「そ、そんなっ…何とかできないんですか!?」
「た、多分この花びらはボーズの中の心象風景が実体化したものあるから、ボーズが正気に戻れば少なくともそれ以上はエクトプラズムを造らなくなるはずある…。」
「正気に…!」
 渦巻く花びらの真中で、横島はなおもあらぬ方向を向いてぶつぶついっているが、それもだんだんと見えなくなってきていた。
「花びらがどんどん増えてきてる…。このままだとほんとに横島さんは…!」
 おキヌは一度強く目をつぶってから、再び大きく見開いた。
 そしてしっかりと横島の居る方向を見据えて身構え、吹き荒れるエクトプラズムの中へ飛び込んだ。
 無数の花びらが体中に吹き付けてきた。あたってもそれほど痛くはなかったが、呼吸が苦しかった。それに、嵐を起こしている念波を浴びるせいか体が異常に重い。
 それでもおキヌはとにかく横島のいる方向へむかってエクトプラズムの中を突っ切っていった。
「横島さん!横島さん!!」
 おキヌはなんとか横島の所へたどり着くと、肩をつかんでゆすりながら何度も呼びかけた。しかし相変わらず横島はあらぬ事を口走り、頭から花びらを噴出している。
やっぱりこんな事じゃ正気に戻せないんだ。そうだ、美神さんがいつもやってるみたいに…。
「ごめんなさいっ!」
 そう言いながらおキヌは横島を思いきり突き飛ばした。
「いでっ!!」
 横島が後ろへ倒れこんで後頭部を床で打つと同時に、エクトプラズムはぴたりと回転を停止し、一斉に床へはらはらと舞い落ちた。
「いてて…あれ…?なんだこりゃ…??」
 一応正気に返ったらしい横島がゆっくり起き上がった。
「よかった…。」
「どうなってんだ…?おキヌちゃ…」
 横島の視線が、力抜けして床にすわりこんだおキヌの胸元で停止している。いつのまにか制服の前がはだけてしまっていた。
「あ、やだ…」
 あわてて制服を直そうとするおキヌの背後から、いきなり声がした。
「おっキヌちゃぁぁーん!!」
 思わず振り向くと…あれ?そこには今にも飛びついてこようとしている横島がいる。混乱したおキヌがとっさに体を逸らせると、飛びついてきた横島はおキヌの横を通って床にへたっている横島に激突した。
 へたっていた横島は再度後頭部を強打して目を回してしまった。飛び込んできたほうの横島はおきあがって向き直ると、再びおキヌに飛びつく態勢にはいっている。
「おっキヌちゃ…」
「アホか貴様―っ!!」
 今にもおキヌに襲いかかろうとしていた第二の横島に思いきり飛び蹴りをくらわせたのは…第三の横島である。
「お前はこの世から自分に好意もってくれる女を絶滅させるきぃかー!!」
「んな事言うたってこの状況でじっとしてられるかーっ!!」
「他の女ならともかくおキヌちゃん相手にんな事したら取り返しつかんようになってまうやろがー!!」
「そないなったらそないなったで別にええやんけー!!」
あっけにとられているおキヌの前で、二人の横島が殴り合いの喧嘩をはじめていた。
「おキヌちゃんっ、その二人のボーズはさっきここに居たエクトプラズムあるよっ!本物のボーズはほっといても大丈夫あるから早くこっちへ出てくるよろしっ!」
「あっおキヌちゃん、いずこへっ!?」
「待たんかこのアホ−ッ」
 おキヌが前のめりに走ってドアから飛び出したとき、事務所の中では降り積もった花びらが融合して粘土状になり、数十人のエクトプラズム横島が誕生していた。
「まずいっ、まずい事になっとるぞっ!!」
「一体どうなってるんですっ?どうしてあんな…」
「あのエクトプラズムはボーズの中の人格ある!ボーズの霊力源である煩悩とそれに関連のある精神構造が実体化して出てきてるあるよ!要するにスケベの軍団あるっ!」
「え…それって…!?」
 無数のエクトプラズム横島が出口の向こうにいるおキヌを見ながら口々につぶやいている。
「女…きれいなねーちゃん…」
「早くドアを閉めるあるーっ!」
「だーっ!!間に合わ―ん!!」
「きゃーっ!?」
 エクトプラズム横島が一斉に事務所からおキヌに向かって飛び出してきた。そのとき…
 おキヌの背後から飛んできた光る鞭が先頭の横島を跳ね飛ばした。
「エクトプラズムになってもセクハラしないとおれんのか、この色魔はっ!!」
「み、美神さーん!!」
 ほとんどスリップ衝突寸前でコブラを止めた美神は、すぐさま飛び降りておキヌを助け起こしながら言った。
「厄珍っ、カオスっ、そこに倒れてる横島ひろって!エクトプラズム成形機もって来てるからそれで色っぽいおキヌちゃんのダミーを作るのよっ!プログラムは入ってるわ!」
「色っぽい私って…それでどうするんです美神さん!?」
「こいつら全部とっ捕まえるのよ!こんなのほったらかしといたら蒸発する前に何しでかすかわかんないからね!」
「準備できたあるよっ令子ちゃん!」
「じゃダミーをこっちへ…」
 しかしダミーが美神の所へ行くまでも無く、「色っぽいおキヌ」のエクトプラズムには、エクトプラズム横島が殺到していた。
 ダミーおキヌに飛びついた横島たちは、エクトプラズム成形機の霊力場に捕らえられて次々と吸収されてゆく。しかしよく見ると何人かのエクトプラズム横島はダミーに飛びつかずに隠れたり逃げようとしたりしていた。
「やっぱりおキヌちゃんだと色気不足かっ…?!仕方ない…!」
 美神が成形機の操作盤に駆け寄って設定を変更すると、ダミーは瞬時に変形した。
 お色気ポーズの美神である。
「こっ、これは凄いある?!」
 厄珍が思わず感想を述べてしまった「色っぽい美神」に、さっきは逃げ腰だったエクトプラズムたちも一斉に飛びついてゆく。
「やっぱりなんか嫌だけど、とりあえずよしっ!」
「あっ、でも美神さん、一人だけ逃げて行きますよ!」
「くっ…!横島くんの中にもあたしの色気になびかない理性があるってわけ!?…こうなったらやっぱり彼女を使うほかないか…!」
 美神がもう一度操作盤で設定を変更した。
 逃げていた最期のエクトプラズムは、少しためらったあと戻ってきて一言つぶやき、ダミーに吸収された。
「ルシオラ…。」

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