ザ・グレート・展開予測ショー

残された物――後編――


投稿者名:マサ
投稿日時:(02/ 8/25)

「何か怪しいな〜、美神さん」
「……そうですね」(汗)
「え〜〜と〜、もーしーかーすーるーとーーーだ……」
そう言って横島は地面に這い蹲る。
美神親子が気を取られている間に暫く地面を探していると、墓石の裏の辺りで彼の手が止まった。
地面に生えているはずの草がそこだけ四角く無くなって窪んだ感じになっている。此れは明らかにおかしい。
よく見ると、それは金属の蓋になっており、それを開いて横島が見たものは…………
「お、押しボタン???」
「本当ですね〜」
横からおキヌがひょっこり顔を出す。
「押してみっか?」
「私に聞かれても………」
此れには明確な答えを出せずに苦笑するおキヌであった。ヘタをすると美神を不利にする事となるが、果たして隠してはいけない物かも知れないのにそれを放って置いて良いのだろうかと。
正にこの状況を『義理と人情の板ばさみ』と云うべきなのだろう。
「≪何なんだこれはっ!?怪しげに隠されたスイッチ……知りたい!俺の本能が叫んでいる!!≫…ええい、押しちゃるでー!!」
「あ、横島さん!?」
「ポチッとな」 カチッ
横島がスイッチを押した瞬間、何かが外れるような音と共に電子機械の作動音がどこからか聞こえてきた。

 ヴヴ――――ッ  ガゴゴゴゴゴォォォ……

石の擦れ合う音を発し乍ら墓石が左にスライドし、下から通路が現れ始める。
「ふぅ〜〜〜ん、そういう事だったの。れ〜こ〜、どういう事か説明して御覧なさい?」
「嫌よっ!そんなの嫌っ!!」
「れぇ〜い〜〜こ〜〜〜〜!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……




「僕からも話をさせてくれないか?」
離れて見ていた公彦が美智恵を制して口を開く。
この夫婦は案外亭主の出番も保障するらしい。(笑)
「令子、お父さんにはお前を叱る資格は無いのかも知れない。かなり長い間会っていなかったんだからね。だけど、お父さんだって怒る時はあるんだよ?」
その柔らかな声に縛りつけるような力を篭めて、ゆっくりと公彦は歩み寄ってくる。
次の瞬間、その場の全員が言葉を失った。
美智恵だけは夫の凛々しさにらしいが。(苦笑)
公彦は自分の顔を覆っていた拘束―いや、呪縛とでも言うべき鉛と神鉄で鋳造された特殊な仮面の額にある逆三角形になった部分に手を伸ばす。

 カシュッ...ガシャン!!

顔の部分と頭部を中心から二つに分けた形の部分との計三つに分かれた仮面が地面に落ちて乾いた音を発した。
そして令子を一瞥すると少々呆れ気味に口を開いた。
「…成る程ね、これは都内各所に隠した抜け道の一つというわけか…。あと……君。横島クンだったね」
「あ、は、はいぃっ!何でせう?!」
唖然とした(と言ったら公彦と美智恵以外全員だが)横島が驚き気味に返事を返した。
「石の中にも在るようだよ。裏の方に扉が在るだろう」
と溜め息を込めつつ公彦。
言われるがままに探してみると、確かに小さな扉が在り、中には非常食一式とダイナマイトが多数、ノートパソコンが一台入っていた。
「美神さんたら………」(滝汗)
「こりゃーまた、すげーな……」(苦笑)
呆然とする二人。
「令子〜!?つまり、証拠を隠滅ための時間が欲しかったのね?!(ぶちぶちぶちっ)」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ......

激しい怒りのオーラを漂わせながら美智恵は令子の耳を力を込めて引っ張る。
後の話だと、令子は『耳が引き千切れるかと思ったわよ!!』と言ったそうだ。
「痛い!痛いってば〜!許して〜〜〜!!」(半泣き)
「で、パパはこれからどうするの?」
此処まで来るとついでといった感じで美智恵が仮面を直していた公彦に問う。
「もう少し日本に居るつもりだよ」
「そう、じゃあ後でお茶でも飲んでいって。…それから、かっこ良かったわよ。あ・な・たっ」
「……////」
何時までも熱い夫婦であった。
「いきましょ、令子!」
気を取り直して一言。
「痛い〜〜〜!!」
美智恵に連れられ、令子は一体全体何処へ行くのやら…。
それを見ておキヌも後に続く。




男二人だけとなった所で、横島がやれやれと言った様子で一言。
「美神さんも、自業自得というか何と言うか……」(苦笑)
「…さっき心に感応して分かったんだが……いや、止めて置こう。…兎に角、横島クン、君は幸せ者だよ」
公彦は感慨深そうに言葉を押し止める。
「は?それって、どういう意味っスか?」
「…いずれ分かる時が来るさ」
仮面の下で見えにくいが、確かに公彦は微笑していた。
「≪何だか分からんが、気に入られたみたいだぞ!?これで野望に一歩前進じゃ〜!!≫」
勿論、これほど近距離ならば横島がこう考えたことは筒抜けなのだ。
それを見て、小首を傾げる公彦であった。




――その頃、唐巣の教会では――
「ふぎい、ほげあっ、ほああ ほああっ!」
「先生!どうすればいいんですか!?」
「私に聞かんでくれ!念力は封じれても、私に世話は無理だ!!」
「ほがあぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!!」
「ああ〜、泣かないでくれ〜〜。騒いだ私がいけなかった。神よ、何故に私にこのような仕打ちを……」(涙)
ひのめの世話を無理やり頼まれて困惑する唐巣とピートの姿があったりする。
おお神よ、哀れな子羊に合いの手を…!(おいおい)




――その後――
都庁地下・取調室では令子に激しく詰め寄る美智恵の姿があった。
「仮にも母親のお墓に細工をするなんて、どーゆー神経をしているのですか?!」
「だって、あそこなら都内が全焼しても火の手は回らなそうだし、避難場所としては……」
「そんな事を聞いてるんじゃありません!!お墓ですよ!お・は・か!!!」
「ママと一緒なら一人だけ生き延びても寂しくないじゃない!?」
とまあ、こんな感じで何日続くのか見当もつかない有様である。




一方、美神所霊事務所では公彦と事務所のメンバー四人で楽しげに会話中。
「僕が南米にいる間は令子の事は何時も美智恵さんが手紙で知らせてくれてね。今まで何通きたのか数え切れないよ」
「やっぱ、娘って可愛いもんなんスね」
「拙者も、長老に時々文(ふみ)を送るでござる!」
「それが〔愛〕なんでしょうね」
「あんな美神さんも、やっぱり子供の時は可愛いの?」
「あー。そりゃーもー」
「〔よこちまー〕って言ってましたね。…あー、か、かわいい…!」
『懐かしいですねー』
「ど、何処から声が…?」
「あー、こいつは此処の建物に憑いている人口幽霊一号っスよ」
留守番で空気の荒れていた二匹も、これで機嫌を直したようだ。

結局、令子が公彦とゆっくり会話を出来たかは謎である。




                 ―終―

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