もう一つの物語(2)
投稿者名:hoge太郎
投稿日時:(02/ 8/25)
次の日。
「おはよーっす。」
美神が渋い顔で横島を見る。
「あんた暫く来なくていいっていったでしょ?」
横島はそれを無視して、もう一人を招き入れる。
「あれ?雪之丞じゃない。どうしたのよ。」
雪之丞が口を開く前に、横島が美神に訊ねた。
「それよりも、おキヌちゃんの様子はどうでしたか?」
「殆ど直ってるわよ。今日一日は病院で検査のために、休むけどね。」
横島は安堵したようによかった。と呟いた。
横島はすっと部屋を見渡した。
『そういえば、シロタマがいないな。
よかった。あいつらがいると、話がややこしくなるからな。』
と心の中で呟く。
「で、雪之丞は何しにきたの?」
雪之丞は、横島をチラッと見ると、口を開いた。
「横島がバイトを紹介してくれるってんで、ついてきたんだ。」
「はあ?」
美神はわけがわからないという感じで雪之丞を、そして横島を見る。
横島は、ちょっと緊張気味に、そして意を決したように美神に話し始める。
「美神さん。雪之丞を雇ってみませんか?俺なんかよりずっと役に立つっすよ。」
美神はジロッと横島を睨む。
「これ以上増やしてどーすんのよ。」
「ああ、それは大丈夫っす。俺、今日限りでここ辞めさせてもらいますから。」
「「は?」」
美神と雪之丞の声がはもる。
しばらく事務所の空気が固まったあと、雪之丞が慌てたように声を出す。
「ちょっと待て!そんな話は聞いてねーぞ!」
横島はその質問を予想していたかのように、雪之丞に話す。
「すまん。だますつもりはなかったんだ。だけど、もう決めたことなんだ。
俺が抜けるのはたいした事ないんだけど、それでも穴埋めが欲しかった。
それに、お前金に困ってただろ?俺の給料は酷かったけど、お前レベルとなれば、
それ相応の給料が出るさ。でしょ、美神さん。」
雪之丞が美神を見ると、思わずズサッと身を引いた。
凄まじい霊気が美神から噴き出している。
「・・・よく聞こえなかったわ、横島クン。もう一度言ってくれるかしら。」
顔は微笑んでいる。だが、霊気は衰える気配を見せない。
いつもの横島なら、ここで「仕方なかったんやあああぁぁぁ!堪忍やあああぁぁ!!」
と床に額を擦り付けているだろう。だが、今日の横島は全く様子が違っていた。
「んじゃもう一度言います。俺は今日限りで事務所を辞めさせてもらいます。
その穴埋めとして、雪之丞を雇って貰えませんか?」
横島の言葉が終わるかどうかの所で、美神が切れた。
「横島あああああああ!!!!!」
神通棍を握り締め、髪の毛が逆立つ。雪之丞はかなりビビッてさらに一歩下がった。
「なんすか?」
だが横島は全く動じる様子を見せない。じっと冷静に美神の目を見ている。
さすがに、美神も横島の様子が普段と違うことに気づく。
いつもなら、この時点で美神の勝利は決定していた。
美神は心を落ち着かせ、横島に訊ねる。それでもかなり息は荒かったが。
「どこに引き抜かれたのよ?」
美神は舌打ちしつつ、もうちょっと給料上げておけばよかったと考えていた。
横島本人は例のごとく朴念仁で、自分が世界でもトップレベルのGSであることに
気づいていない。横島を引き抜きたい除霊事務所は、世界中にある。
「は?どこにも引き抜かれてないっすよ。俺なんか引き抜いても仕方ないじゃないっすか。」
う〜む、と雪之丞が後ろで唸っている。
「それじゃこれからどうするつもりなの?」
美神は探りを入れる。だが、横島の答えは、探る間もない。
「それに答える必要は無いと思うっす。とにかく、俺自身辞める心は変わりません。
美神さんにはお世話になりました。おキヌちゃんには謝っておいてください。
シロタマには、よろしく言っておいてください。それじゃ、雪之丞。あとの交渉は任せるぞ。」
ポンと雪之丞の肩を叩き、すっとドアに向かう横島。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
あまりにも、淀みなく横島が話すため、思わずそのまま見逃すところだった。
横島はドアに手をかけたまま、振り返らずに言った。
「すんません。俺、これ以上ここにいても、迷惑になるだけだと思うんです。
いや、迷惑だけならまだしも、おキヌちゃんみたいに大怪我させることになるかもしれない。
あんときは大怪我ですんでいたけど、もしかしたら・・・。」
横島の肩が僅かに震えている。
「我侭言ってすんません。」
それだけ言うと、横島は事務所を出て行った。
・・・続く。
今までの
コメント:
- これからどうなるのか、予想のつかない展開に期待大ですね。 (柿の種)
- , (T.I)
- いざとなるとどんな困難にも立ち向かっていた横島クンでありますが、今度ばかりは「逃げ」を決め込むらしいですね(汗)。しかし、彼の落ち着いた素振りからして辞めることを決める前に、随分と考え抜いたみたいです。今後横島クンはどうするのか、雪之丞は事務所で生きていけるのか(爆)、そして令子他事務所のメンバーがどんな反応を示すのかが気になります。次回に移ります♪ (kitchensink)
- 柿の種さんへ
期待して頂き、ありがとうございます。
恐らく、中盤辺りから好き嫌いが出てくる展開になると思います。
ですが、自分の中では、こういう展開もありかな?という思いで書きました。
最後まで、どうか見捨てないで頂ければ、幸いです。 (hoge太郎)
- いつもの横島くんとは違ってましたね。(少し驚き)
シロの反応はどうなんでしょうか? (3A)
- いつもはギャグで逃げる横島なのに…。
今回はスィリアスに、劇画調に見えます。カッコマンです。
世間体では「逃げ」と捉えがちですが、美神もその辺は熟知しているようで。
それに、彼なりの決心でしょうからね。
どう考えてどう出るか、これからの展開に期待します。 (ギャグレキスト後藤)
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