ザ・グレート・展開予測ショー

黒夜。


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(02/ 5/ 3)

―『ほしのひかりにてらされている、ひと』
その日はほしの綺麗な夜だった―。
新月でたろりなげな、星々のすがたで―だけど、爛々と輝く夜。
仮眠所にあてたソファーで疲れ果てたのか、身じろぎもせずに昏々と深雪之丞が眠っている。
それもそうだろう、今日は1週間かけて大きなしごとをやっとの事で片付けたのだ。
メンバー、若手GS達が、しかもほとんど不眠不休と言っても過言でもない極限状態でなんとか終えたのだ。
雪之丞も自分のアパートまで帰る気力はなく、仮眠所につくなりソファーに倒れこんだ。そう、ゆみかおりただひとりを除いて。
かおりは疲れが残る身体をひきずって、皆が寝ている場所ひとつひとつをわたりあるいいつもよりも、無防備な顔にそっとほほえみ
「おつかれさまでしたわ」
と言って廻る。
一文字もピートも、隣の部屋の入口付近で倒れこんでいる。
それらもひとりづつ柔らかい場所まで運びそして―毛布をかぶせた。
疲れきった―だけどあどけない寝顔にくすりと微笑し―
「頑張ってくださったのですね」
といいそしてとなりの部屋をあとにする。

そして、毛布をもってかおりはソファーのある仮眠所へと向った。
ぎぃっと
音をたててドアを開く
事務所は電気もつけていないのに明るかった。
もちろんそれは、人工的なものではない。
窓からのぞく美しい―爛々と光る星々のためだ。
そして、星に照らされた部屋で、微動だにせず眠る雪之丞。
かおりは近づき、そっと毛布をかける。
その寝顔は濃い疲労に彩られている。そして静かだ
あまりの静かさに眠っているのか息をしているのかわからなくなるほどに―
―ふとその頬に手を触れてみたいという思いにかられる。
このひとの辛さもなにも、一緒にしたい―と。
無意識のうちに伸びていた腕を戻し、ぐっと手のひらを握る。
ただの若手GSの一人でしかない自分が何を言うんだろうと―自嘲する。
いや、GS同士だからこそだろうか?
とくん、と音をたてて胸が軋む。
いっそのこと目の前のひとを結婚対象としてのみ好意をもっていたらと思う。
だが違う。
自分は、この目の前で眠るひとを結婚対象の前に『同士』として『女』として好きなのだ。
そしてこのひとがいま私を含める誰にも癒されることを望んでないことも知っている
―そしてその彼女がどこにもいないことも。
だから、今このひとは誰にも癒される事を否定しているのだ。
治るのならば自分の力で―疲れ、傷つきそれでも、誰の手もかりずに―立ち上がろうとしている。

それを『同士』としてならば見守る事しかできない。
大丈夫なんとかなると―信じて。
だが、同士には自分はなりきれていないのだ。
(―ですけど―)
こんなに好きなのだ。
こころがあふれそうなほど。
それが全部恋愛感情だとは言う事はできない。
だけど同士としてだけの感情でもない。
複雑怪奇なこころ。

―だけど、ただひとつ間違え様もないことがあるのだ
自分はこの目の前にいるひとがとても、他の同士より大切だということ。
早く傷から立ち直ってほしいと思うこと。
雪之丞はただ昏々と眠っている。
弓かおりはくっと唇をかみ締め―音をたてずに軋む胸の痛みに耐えそして
「―頑張ってくださいね。」
そう呟き―ふわりと笑った。
そして祈った。
この新月の星々の煌きが少しでも―癒してくれるように、と。
おわり

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