ネクロマンサーとGS試験・6
投稿者名:kort
投稿日時:(02/ 7/11)
おキヌちゃんが受験して、でも落ちちゃったらどうなる?
美神の質問にその場は一瞬静かになり――――
「どうなるんスか…?」
「ど、どうなるでござるか?」
「あんた達、ちょっとは考えなさいよ!」
似たもの師弟に突っ込む美神。そうしてため息をついてみせた。
「だーもう、もう一度説明するわよ。
いい?
まず最初に、おキヌちゃんはネクロマンサーである。ネクロマンサーは、GS試験が免除されている。」
ぴっ、と指を一本立てる美神。
「次に、」
言うと同時に指をもう一本立てる。Vサインのような状態になった。
「ネクロマンサーは人相手にはとても弱、―――いえ、あまり力を発揮できない。
従って、GS試験では合格の確率が低い。これは、さっきの『免除』の理由でもあるわ。特殊な力
だけに能力者の人数がもともと限定されているのに、それを『試験に通らないから』なんて理由でまた
少なくするわけにはいかない。」
頷く一同。皆、食事の手は止まっている。美神は、もう一本指を立てた。
「第三に、受験するという行為は、資格が欲しいと表明し、また、受験するだけの実力があると
認められていることを示すものである。
そして第四。ネクロマンサーは師匠の認定があれば資格を取得できる。つまり、フツーだったら
師匠の認定、受験、資格取得。ってくるところを、受験を抜かすことができるわけ。」
「なんかそれ、一番最初の理由とかぶってないですか?」
突っ込む横島。
「ここで、三つ目と四つ目を重ねて考えてみて。」
無視する美神である。
「…え?ええと、受験っていうのは、資格が欲しくて、その実力もあるって…先生に認められている
ってことですよね?」
これがみっつめ、と、あごに指をあて、目線を少し上にして空中を見ながらおキヌが言う。
「それで、ネクロマンサーは…実力があるって先生に認められれば資格を―――あれ…っ?」
そこで言葉が止まる。なんだか……
「なんか……ヘンでござるよ。」
「受かれば全然変じゃないわ。」
お味噌汁のお代わりをふうふうしながら、タマモがシロの呟きに答える。
「……そうか、落ちたら…。」
タマモにつられて味噌汁を飲んでいた横島がその動きを止めた。
そう。もしも、試験免除者が敢えて受験し、落ちてしまったら。
資格取得の力が有ると同時に無い。という大変ねじれた立場に置かれることになるのである。
「……でもそれって、資格を取得しなきゃすむ話じゃないスか?」
その段階では辞退してしまえばいいじゃないですか、と続ける横島。
確かに、その立場で特例を利用して資格を取ってしまったら、他の受験者からクレームがきたりする
かもしれない。だが、取らなければ状態はそのままだ。
そうすれば、とりあえずのねじれはなくなる。問題は一応解決する。
横島の言葉におキヌも賛同した。
「そうですよ。辞退すれば…、」
しかし彼女の言葉を
「ちっちっちっ。」
人差し指を言葉に合わせて振りながら
「甘いわね。」
と美神は遮った。
「―――取らされるわよ。本人の意思に関係なくね。」
本人の意思に関係なく……?
「世界に数人しかいないネクロマンサーの、その中でもいっとう若い人材よ?」
その一方で、この世に在る年数はネクロマンサー全員の中で一番長いが。
「ネクロマンサーってのはね、その修行方法のせいで、一人前になるのにやたらと時間がかかる
のよ。」
死霊使いに必要なのは、才能と、霊に対する深い愛情。
才能はともかく、「霊に対する愛情」なるものを身につけるのは、並大抵のことではない。
生きている者にとっては未知の存在であり、本能的恐怖をおこさせる存在である霊を理解しなけ
ればならないのである。しかも、憎しみではなく愛情で。そのために、どれだけの年月、どれだ
けの霊たちに接さなければならないのか。
「だから、いわゆる「若い」ネクロマンサーマスターってのは史上数えるほどしかいないわ。
二十歳以下となると、多分今まで存在してないはずよ。」
全員が思わず、おキヌの方を見た。
彼女はすでにこの話を知っていたのだろう、驚いた顔はしていなかったが、面はゆい、といった
表情をしている。
「若いっていうのはそれだけで財産よ。体力も、免疫力も、耐久力も、老人とはケタ違いだものね。
多少危険な土地に派遣するのでも、協会やICPOの心理的負担はどっと減る。」
「――ってことは、仕事を依頼しやすい?」
「その通りよ。横島クン。」
しかし、意思に関係なくということは、つまり――
「それって無理矢理ってことではござらぬか!?」
「そうでもない。」
叫ぶシロに、タマモがまたも冷静に突っ込んだ。どーしてでござる!?と息巻くシロ。
「もうすでに、受験っていう行為を通して資格取得意思は示していることになってる。
だから、資格を与えるのは決して無理矢理とは言えない。」
――でしょ?とタマモは美神に確認した。
そのとーりよ。と頷く美神。
「でも…でもおかしいでござる!
おキヌちゃんは辞退するって言ってるでござるに!」
やっぱり無理矢理でござる!
シロはタマモにくってかかる。
「ま、まーまーシロちゃん、」
「シロ、食事中は静かにせんとっ」止めに入るおキヌと横島。
「相手が違うでしょ、バカ犬。」うるさそうにタマモ。
「あうっ!?」
「GS協会に言って。」
「うっ…!」
確かに。タマモに文句をつけても仕方がない。
引き下がりながらも、「おかしいでござる。」と言ってシロは美神を振り向いた。
その視線を受けて、美神は取ろうとしていた箸をまた置いた。冷めていく食事をちらりと見ながら
「よーするにさぁ、辞退するって言う前に資格を発行しちゃえばいいのよ。」
それは………。
「も、もっと無理矢理なのでは…っ?」
「超法規的手段ってやつじゃないスか…?」
「でなきゃ、説得して『辞退』を取り消させる。これなら、そう無理矢理でもないでしょ。」
「そりゃ、そーでござるが…。」
でもやっぱりなんだか無理矢理っぽい感じである。
「だいたい、なにもそこまでせんでも…。」
「さっきも言ったけど、まだ二十歳前なのに、一流のネクロマンサーなんだからね。協会だって必
死になるわよ。」
それはつまり、早く一人前という印を与えて、そしてネクロマンサーでしか解決できないいろんな
仕事をやってほしい、という意味なのだろうが、
「なんか、特別天然記念物の気分ですね………。」
思わず呟くおキヌである。
「まー…ちょっと近いかもな。めったにいないという意味では……。」
今までの
コメント:
- 長いっつの…!(汗)
前回、前々回コメントくださった方、ありがとうございました!
(マサさん、おっしゃるとおりです。「つぐ」じゃなくて「よそう」です。
ご指摘ありがとうございました。)
できれば反対票の方のコメントも読みたいのですが…今回もだめでしょうか。 (kort)
- まぁどの道、生半な気持ちで受験などするものでもありませんね。とにかくキヌ本人の気持ちが一番大事なのではないでしょうか? 議論の行く先、気に為ります。 (Iholi)
- 特別天然記念物というと、横島の「文殊」もそうなのでは? (ガーディアン)
- 確かに23巻で登場したネクロマンサーマスターはすんごいバアサンだったですし(失礼)、そう考えると(肉体)年齢が16歳でネクロマンサーになっているおキヌちゃんはスゴイですね。おキヌちゃんの考えも尊重したいところですが、事情が事情なだけにGS協会などがおいそれと応じてくれそうに無いですね(汗);美神除霊事務所には何か秘策みたいのは残っているのでしょうか? 次回以降の展開が楽しみです♪ (kitchensink)
- さすがおキヌちゃん!歴史に残るスーパー美少女だったわけだね!よっしゃー!(意味不明)
でもGS協会に「便利な飛び道具」として使われるというのが可哀相です。
一芸に秀でるのも大変なんですね・・・(芸のないやつ) (ヨハン・リーヴァ)
- 特例とは、それが必要であるからこその特例だ、と言う事ですね。
しかし、若いネクロマンサーは貴重って話ですが、よくよく考えてみるとこの事務所って、
令子⇒タイムリーパー
横島⇒文殊使い
おキヌちゃん⇒ネクロマンサー
シロ⇒人狼の女性
タマモ⇒九尾狐
と、超稀少存在の宝庫じゃないですか。
いつ丸ごと保護指定を受けても、全然不思議じゃないダス(笑) (ぱっとん)
- ↑よく考えたら、鈴女も稀少種(笑) (ぱっとん)
- おキヌちゃん凄かったんですね。
ネクロマンサーがそんなにも凄かったとは…
凄いというのは分かってましたが…そこまで… (3A)
- コメントありがとうございます!
たしかに、あの事務所は全員希少種ですよね。すごすぎる(笑)。
ネクロマンサーに関しては私が勝手に作ってしまった設定も混じってますので、
あんまり、その、なんというか、信用しないでください(汗)。
それではっ。 (kort)
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