ザ・グレート・展開予測ショー

推定無罪!その2


投稿者名:A.SE
投稿日時:(02/ 7/ 8)

金でもコネでも解決できないって…それは何か取り返しのつかないよーな事をしたのがバレたってことっスか?」
「いや、そういう意味ではないんだが…。」
 唐巣は部屋に居る横島、おキヌ、シロ、タマモを順に見てから言った。
「どうなってるか様子を見て、君たちにはこれからどうすべきか話すだけのつもりだったんだが…。やはり君たちにも美神君やGS業界の関係者としてどういう事が起こってるのか教えておいた方がいいかもしれないな…。」
 神父は4人の前に椅子を持ってきて座った。
「…君たち、半年後に衆議院の総選挙があるのは知ってるね?」
「拙者知らないでござる。」
「わたしも知らない。」
「…」
「こ、こいつらには後で説明しときますから、どうぞ続けてください…」
 一応フォローしつつ、実は自分も知らなかった横島である。
「この半年後の選挙では、現在の与党である国自党と、野党第一党の民連党がかなり激しく競り合うと予想されている。結果によっては国自党が与党から滑り落ちて、数十年ぶりに民連党が政権の座に返り咲くかもしれない。どちらの党にとってもここが正念場になる重要な選挙なんだ。」
「せーけんこーたいが起こるかもしれないから、お互いににらみ合ってピリピリしてるんですよね、ワイドショーで言ってました…。」
「でもそれと美神さんの事となんか関係あるんスか?」
「大きな政党というのはね、必ず資金を出してくれる職業団体をいくつかバックに持ってるものなんだ。与党国自党の後ろ盾は、医者の団体、日本医師連盟。そして野党民連党を支援してるのはGSの団体、日本GS協会なんだよ。」
「そうか、それでここの事務所の壁にも民連党のポスターが貼ってあるんスね。」
「そういうことだね。で、当然後援してくれる団体の評判は選挙にも大きく影響するわけだけど、最近医療ミス隠しのニュースをよく聞くだろう?あれのせいで今みんな医師連盟に良いイメージをもってないんだよ。党そのものが医師の不起訴処分にかかわった噂もあるしね。このままじゃ次の選挙は国自党に不利だ。そこで国自党は対抗する民連党の後援団体であるGS協会からも検挙者やスキャンダルを出して、評判を落とそうとしてるんだよ。」
「な、なるほど…それで美神さんが槍玉に上がったわけか…。」
「彼女は有名だし、かなり荒っぽい仕事もしてるからね…。」
「そんな…そんな事のために美神さんは捕まったんですか!?ひどい…」
 おキヌは顔をこわばらせてうつむいてしまった。
「確かに『そんな事』ではあるけど、これはとても重要なんだ。たとえば、最近突然日本にオカルトGメンができたろう?あれも民連党の力をそぐために前の内閣がやった事なんだよ。」
「あっ、そういや西条の奴、美神さんがこんな事になってんのに何にも言ってきやがらねーで…」
「彼も今、苦しい立場なんだよ。西条君はあれで自分が正しいと思う事に忠実なタイプだからね。やり方の違いでしょっちゅう公安部ともめてる様だし、民間GSと馴れ合ってると非難されてもいる。今回検察が手を回してオカルトGメンも公務員監査の対象になってるから、下手に動くと彼自身手が後ろに回りかねないんだ。」
「ちっ、あいつこそ捕まっちまえばいいのに…。しかし…政治なんてGSの仕事とはかかわり無いと思ってたのになあ…。」
「本来はそうあるべきなんだよ、医師も、GSも、他のほとんどの職業もね。でも社会がお金を動かしていて、お金が政治を動かしていて、政治が社会を動かしている以上、無関係ではいられないんだ。」
「いつも金で動いてた美神さんが、同じ金で動く政治のいざこざに巻き込まれたってわけか…。いみじくもって感じやなあ…。」
「とにかく今回ばかりは検察もそう簡単に美神君の釈放には応じないだろう。それどころか何とかして立件起訴まで持っていこうとする可能性が高い。だから君たちにもある程度覚悟をしてもらわなきゃならないんだ。」
「覚悟って…美神さんが帰ってこないってことですか!?」
「それに関してはGS協会もこれから努力してみるからまだなんとも言えないが、問題は君たち自身だよ。状況はまだまだ悪化する可能性がある。みんな今は未成年だから逮捕されはしないだろうが、これ以上この件にかかわり続けると将来に影響するような事になりかねない。」
「え、じゃあ、…」
「とりあえず一時的にでもこの事務所は引き払った方がいいだろう。タマモちゃんはうちで引き取ろう。シロ君は人狼の里へ、おキヌちゃんは一時休学してN県の実家へ帰りなさい。横島君には、新しいアルバイト先を紹介しよう。なにかあったときにはこちらから連絡するよ。」
「そ、そんな…」
 今度は、横島も含め、全員が顔色を失った。

 唐巣神父が帰った後、おキヌはショックで黙り込んでしまっていた。
 横島も冷静にものを考えられる状態では無かったが、とりあえずシロとタマモに出来る範囲で状況を説明した。話しが終わると、みんな黙っている中シロが一人大声で政治をののしり始める。
 しかしやがて、今までじっと考え込んでいたタマモがシロを遮っていった。
「だいたい状況はわかったわ。でもわたしは、神父の言う通りにするつもりはない。」
「何を勝手な事を言ってるでござる!!それなら拙者だってこのままおめおめと…」
「わたしはあんたみたいな喧嘩腰の意味で言ってるんじゃないの。はっきりとはわからないけど、その美神さんが捕まった理由の中の、コーブンショギゾーとコッカハイニンていうの、わたしを見逃した事を言ってるのかもしれない。それでもし、わたしが神父の所で世話になっててケンサツに九尾の狐だとばれたらどうなる?神父まで捕まっちゃうかうもしれないのよ。だからわたしは誰の世話にもなるわけにはいかない。これからは一人で生きていく。」
「な、なにいってんだ、まだ…」
 タマモは立ちあがり、少し笑った。
「…人間界の事はもう一通り覚えたわ。いままで楽しかった。じゃあね!」
言うが早いか、開いていた窓から一ッ跳びで夜の街に身を躍らせる。
「あっ?!タマモ…!」
 三人が窓辺に駆け寄ったとき、彼女の姿はもうどこにもなかった。
 

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