ザ・グレート・展開予測ショー

彼女との関係・中編


投稿者名:稀有
投稿日時:(03/ 1/17)



 泣いて笑って、そして時に怒って。
 彼女は呆れるくらい、元気に成長していった。







  『彼女との関係・中編』







  −Good afternoon , please date with me !−


「ねぇ、お兄ちゃん?」

 なんだかんだ言って――オヤツの時間。
 美味しそうにシュークリームを頬張るひのめ。
 壮絶な交渉――横島曰く、「あれが美神の血なんだな」とのこと――の結果、『おやつ抜き』という(ひのめ曰く)凄惨な罰を回避することができた。
 ……なんだかんだ言って、妹には甘いのだ、彼女は(その辺りを突っ込むと、顔を真っ赤にして否定するが)。

 というわけで、平和な一時を過ごしていた。
 そんな中での、ひのめの一言。

「んー?」

 いい大人になっても、貴重な栄養源には違いないのか、ひのめ以上に子供らしくシュークリームを頬張っている横島。
 某高級洋菓子店のシュークリームなのだが、そんなことはお構いなしに食べている。
 この辺りに歳相応の落ち着きが出れば、かなりイイ男になるのではないか……そう、周りの人間は思わなくもない。

「お願いがあるんだけどぉ、良いかなぁ?」

 ちょっぴりの上目遣いに、小首を傾げる動作。
 実はこっそり、彼女の母親が教え込んだテクニックを効果的に使うひのめ。
 当然、子供好きの横島は笑顔になって、頷く。

「うん。別にひのめちゃんのお願いなら喜んで。
 何か、欲しい物でもあるの?」

 薄給のくせに、横島がひのめに買い与えたオモチャは数十点に及ぶ。
 おままごとセットから自転車まで、誕生日や桃の節句など、事ある毎に「お兄ちゃんからのプレゼント」と言って渡していたのだ。
 それは、美智恵が思わず「そんな、無理しなくていいのよ?」と言うほどであったから、横島の溺愛ぶりは分かるだろう。
 最近はひのめも横島の経済状況を理解するようになって、時折お気に入りのお菓子をねだる程度になったが、そのときは必ずこんな風におねだりをしていた。

「ううん。今は何もいらないんだけど……」

 言いにくそうに押し黙るひのめ。
 横島はそれを見て、優しい声色で促す。

「俺は、カワイイひのめちゃんのお願いなら、何でも聞いちゃうんだけどな。
 だから、言ってみて?」

 これは余談だが、いつものメンバーから見た子供相手の横島の評価は、押し並べて「No.1ホスト」ということで落ち着いている。
 確かに「どんな小さい変化でも気付き」、「好奇心旺盛な子供を飽きさせないことができて」、さらには「その子が欲しがる一番のモノを正確に理解している」など、普通の大人では無理だ。
 美神は「精神年齢が一緒だからでしょ」と一笑しているが、逆に母親である美智恵などは「彼をモノにするなら、できちゃった結婚が一番ね。子供ができたら、もう離れられないでしょうから」と言っているほどだ。
 一部の女性(といっても、かなりの数がいるのだが)は真剣にそれを聞いて、検討したわけだが――

 何はともあれ、ひのめも横島の言葉を受けて微かに頬を染め、口を開いた。

「えっとね、ひのめと一緒に「デート」して欲しい、んだけど……
 ――駄目かなぁ?」

 不安げに横島を見上げるひのめ。
 しっとりとしたロングヘアーの切っ先が彼女の心情を表すように、頼りなく揺れる。

「ふふっ……」

 ひのめを見て、可笑しそうに笑う横島。
 そっ、と彼女の手を取り、目線を合わせる。

「そんなことなら、いくらでも。
 それよりも、ひのめちゃんは俺なんかでいいの?」

 「俺は金なんか全然持ってないし」と笑う横島。
 だが、ひのめはすでに横島のそんな言葉を聞いていなかった。

 ぶんぶん! という音が聞こえるほど首を激しく縦に振って、肯定の返事をする。

「お兄ちゃんがいいの!
 ――だって、ひのめの『将来のダンナ様』だから!」

 ピキ――

 その言葉に、今まで黙って聞いていた二人の動作が止まる。
 両方とも、殺気を放ちかねないほどの怖い視線で横島を見る。

「ははっ。ひのめちゃんのダンナ様かー。
 じゃあ、ひのめちゃんが大人になったら真剣にお付き合いしてもらおうかな?」

 横島が子供の相手する際、唯一の欠点がある。
 自分に純粋な好意を向けられた時、素直に受け取らない、ということだ。
 ひのめなりの、真剣な告白も横島は「遊んでもらっているお兄ちゃんのことが気に入っているんだよ」程度にしか考えていない。
 もっとも、それは大抵の女性に当てはまることなのだが。
 如何ともし難い、その欠点は当分治ることはなさそうだ、というのが横島の男友達の中での共通見解だったりする。

「うん! ひのめ、早く大人になるから、待っててね!」

 嬉しそうに頷くひのめ。
 横島とのデートもできるし、彼女の幸せは今、頂点にあった。

「うん、じゃあひのめちゃんも早く大人にならなきゃね」

 ニッコリ笑う横島。
 そして、続ける。

「――じゃあ、まずは行き先を決めなきゃな。
 さて、お姫様。どこに参りましょうか?」

 気取った仕草でひのめに行き先を尋ねる横島。
 変な下心がないから、怖いくらいに似合っているのだが、本人は冗談半分でしか使っていない。
 その動作は、思わずおキヌが「うらやましい……」と思うほどなのであったが、無論横島が気付くことなどない。

「え、えっとね……ひのめ、遊園地行きたい!
 一緒にお兄ちゃんと観覧車に乗りたいな!」

 小学校低学年にしては聡明なひのめだが、やはりそこは子供。
 大人っぽいデートコースなど考えず、素直に行きたい場所を告げた。

 横島はそれを聞いて、笑顔で頷いた。

「はい、かしこまりました。
 では、僭越ながら私が貴女を護る騎士となりましょう」

 真面目な顔でそうひのめに宣言して、手に取ったひのめの手の甲に軽く口付けをする。

「お、お兄ちゃん……」

 真っ赤な顔を隠すこともできず、俯くひのめ。
 こんなことをサラリとできる横島は大して気にしていないのか、すぐ立ち上がり、美神の方を向いた。

「じゃ、これからひのめちゃんとデートに行ってきますんで。
 万が一、臨時で仕事が入ったらケータイに連絡くださいね」

 そう言って、さっさとひのめの手を引いて事務所を後にする横島。



 後には、何も言えないで取り残された二人の女性がいるだけだった。

「――あんの馬鹿、帰ってきたら折檻よ!」

「横島さんの馬鹿っ……」

 そして、二人は同時に顔を見合わせる。

「……おキヌちゃん」

「はい! すぐに皆さんへ連絡を入れます」

 とどめに二人は同じ口調で右手を掲げて、一言。

「「敵は『デジャヴーランド』にありっ!」」

 そんなこんなで、一波乱起きそうな雰囲気の事務所であった――



 可憐なお姫様は、一人の騎士を連れて、夢の楽園へ。
 果たして、彼女たちは幸せの一瞬(ひととき)が過ごせるのであろうか?
 ――もっとも、何も起こらないで済むはずがないのは決まっているのだが。



  −To be continued !−

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