ザ・グレート・展開予測ショー

La Follia


投稿者名:アシル
投稿日時:(03/ 1/ 6)


 生きている。
 生きている以上、死んでいるヒトと会うことは出来ない。
 ルシオラに会えない。
 ルシオラに会いたい。
 事件から数ヶ月、欲求は募るばかりだ。

 だったらいっそ死んでみようか。
 死んだらアイツに会えるだろうか。
 試しに右手を切ってみる。
 血がもの凄い勢いで噴き出した。
 すぐに気が遠くなる。

「アンタ、何やってるの!」

 美神さんに止められた。
 おまけに殴られた。
 なんでこれで死ねないのか不思議で仕方がない。
 おキヌちゃんが慌てて治療してくれた。

「ありがとう」

 素直に謝る。
 死ぬのは良いが痛いのは嫌だった。
 おキヌちゃんやシロ、タマモもみんな泣きそうな顔をしていた。
 みんなが悲しむのは嫌だったから、もうやらないと言った。
 信じて貰えなかった。
 日頃の行いが悪かったせいだろうか。
 頭に来たので事務所を飛び出した。
 美神さんがどんな顔をしていたのかは、恐くて見れなかった。

 しばらく歩いて立ち止まる。
 いつの間にか頭は冷えていた。
 みんなが俺のことを心配してくれていることは分かる。
 分かって居るつもりだった。
 それでも会いたい気持ちは消えない。
 消えそうにない。
 
 空が赤かった。
 もうそんな時間だったのか、と一人空を見上げる。
 夕陽が見えた。
 綺麗だった。
 さっき見た血の色だった。
 街を行く人々は、誰一人として空を見上げては居ない。
 彼等はきっと、本当に美しいモノを知らないのだろう。
 勿体ないと思った。
 こんな連中がひしめいている世の中の何処にルシオラと比べるだけの価値があるのか。
 アシュタロスも案外見る目がない。
 ルシオラを見捨てこんなクズな世界を選んだ俺はもっと最低だ。
 吐き気がした。
 なんで俺みたいな奴が生き残って、ルシオラが死ななければならなかったのか。
 不公平な世の中だ。
 アシュタロスでなくても死にたくなるのは無理はない。
 アイツもきっと、こんな風に世界に絶望していたに違いない。

 掌を沈む太陽に翳す。

『ハンズ・オブ・グローリー』

 グシャリと何かを握りつぶすのと同時、日が沈んだ。
 自分の中で何かが壊れた気がした。

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