ザ・グレート・展開予測ショー

友達と恋人の境界線


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 1/13)

 
 この距離感がもどかしい、そう思うようになったのはいつの頃からだろう。机に突っ伏しながら考える。実際の距離じゃない、精神的な意味の距離、俺と彼女の間の距離。席替えの結果決まった、俺の隣の席の彼女、窓際最後尾の俺の隣の席に座っている彼女、何となく見つめてみる。ただ、何となく。
 
 「・・・何よ?」

 「いや、別に・・・」

 そう答えると、窓の外に目をやる。無理矢理、視線をはがして。結構辛い、どうしても、目が彼女のほうに向く。
 彼女はド○えもんの四次元ポ○ットのような机の中から、次の授業の教科書とノートを取り出す。俺はただ、その動作をぼけー、と見ている。彼女とまた目が合う。

 「・・・何よ」

 「・・・次の授業、数Bじゃなかったか?」

 学校に来てはいないが、何故か科目表は覚えてる。

 「・・・変更になったのよ。黒板に書いてあったでしょ?」

 彼女は黒板を指差して言う。黒板の片隅に白いチョークで書かれた文字―――三時間目は数B→現国の字。

 「見てねえよ、そんなの・・・」

 「・・・宿題やった?」

 「やってない」

 「・・・怒られるわよ?」

 「別にいい・・・寝る」

 どうせ現国だし・・・、そう言うと頭をはたかれた。

 「GSの仕事忙しいの分かるけど・・・、真面目に授業受けてみなさいよっ!本気でやれば、きっと・・・面白いから」

 「・・・」

 彼女の顔がどこか、悲しげに見える、何故?

 「・・・一緒に、勉強しようよぉ」

 「・・・ああ」

 ねだるような口調、わざわざそんな声出さなくても、単位落としたら留年だしな。
先生に媚びを売っておくのも悪くない―――言い訳であると、自分の中の何かが言う、が無視する。体を起こして、背筋を伸ばす。骨のなる音が響き、何やら顔をしかめるクラスメートの皆さんが多数。何となく、やぶ睨みの視線。引き攣った笑みを浮かべ去り行く人々。哀愁。一人だけ、歳を取ってしまったような・・・浦島太郎状態・・・ここに、旧姓横島、浦島忠夫のできあがり。

 「・・・愛子」

 「何?」

 「宿題写させて」

 「だーめ。こう言うことは自分の力でやんなきゃ」

 「ケチ」

 「ケチで結構」

 「・・・」

 「何・・・よ?」

 「教科書・・・見せてくれねえ?」

 「・・・いいわよ」

 そう答えた彼女の頬は気のせいか赤らんでいる気がして、でも、気のせいかと思い直せば、そんな風には見えず。いや、確かに赤くなってるような気が・・・。

きーんこーんかーんこーん・・・きーんこーんかーんこーん

 がらがら、ぴしゃっ

 すたすたすたすたすた

 「起立」

 がたっ

 「礼」

 がたっ

 ばたん

「横島・・・立っとれ」

 がたっ

 すたすたすたすた
 
 がらっ、ぴしゃっ
 
 「では今日は百二十六ぺーじから・・・愛子君」

 「はい」





 きーんこーんかーんこーん・・・きーんこーんかーんこーん

 「起立」

 がたっ

 「礼」

 がたっ

 すたすたすたすた

 がららら

 ぱたん

 すたすたすた

 ぽかっ

 「痛っ!」

 すたすたすたすた

 がらっ、ぴしゃっ

 すたすたすたすた

 がたっ

 「普通、起立で立たなかったくらいで授業時間いっぱい廊下に立たせるか?どう思うよ、愛子」

 出席簿の角で殴るのは体罰じゃなかろうか?そんなことを思いながら、聞く。

 「・・・私はその原因はむしろ、廊下で寝ていたあなたにあると思うんだけど」

 反応は思いもよらず呆れ顔。何やってんだか、そんな顔で俺を見る愛子。

 「むぅ・・・、しかしだ。やはり、現国の授業は眠ってくれと言われているようなものだと思うぞ」

 下手な子守唄よりも全然強力だ。

 「・・・そう言う人もいるわね。私は結構好きなんだけど」

 「ふーん、好きなのかぁ・・・」

 「う、うん。好きなのよ」

 「ふーん、好きかぁ」

 「うん、・・・好き」

 「・・・好き、か」

 「うん・・・大好き・・・」


 

 「俺も、好きだぞ・・・」

 「へ?」

 間の抜けた声を出されても困る。顔をしかめつつ続ける。
 
 「眠れるからな」

 「そっちかいっ・・・」

 疲れたような声を漏らす。何か悪いことでも言ったのか?俺。
 愛子の顔はさっきよりもずっと赤くなっていた。



 「そう、好きだぞ・・・」

 たった一言、呟くだけでいい。きっと、彼女には届くだろう。こんなにも近くにいるのだから。それでも、その言葉は声にはならない。

 君を見つめる、君を思う。

 「何よ」

 「何でもねえよ」

 今はこれだけで充分、かな?
 そんなことを思う弱気な自分、きっと、不安なんだ。

 「次の授業は・・・体育・・・確か自習だったよな?よし、寝よう!!」

 「・・・なんで授業出てないのにそんなこと知ってんのよ?」

 「ピートから聞いた」

 「現国は?」

 「忘れてたっ!(キッパリ)」

 「・・・あのねぇ」

 「いいじゃねえか、どっちにしろずっと外で突っ立ってたんだし」

 「まあ、そうだけど・・・って、良くないっ!!」




 いつものように過ぎてゆく日常の中に君がいることが自然すぎるから。

 そのままの君がいなくなることへの不安。

 青春だわ、っとうまく誤魔化して欲しいと思う反面、

 真剣に考えて欲しいと思う俺がいる。

 どう転がっても、壊れちまう日常、それが惜しいから、

 君に伝えることが出来ない。

 もどかしくて、伝えたくて、しょうがないのに、

 伝えられない

 俺の思いを

 君に





















 「好きだ」が言えない。

今までの コメント:
[ 前の展開予想へ ] [ 次の展開予想へ ] [ 戻る ]
管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa