ザ・グレート・展開予測ショー

彼女との関係・後編……の前編


投稿者名:稀有
投稿日時:(03/ 1/19)



 泣いて笑って、そして時に怒って。
 彼女は呆れるくらい、元気に成長していった。







  『彼女との関係・後編……の前編』







  −Good evening , let's play together with me !−


 そう時間もかけずに、デジャヴーランドに着いたひのめと横島。
 昼も過ぎて、遊べる時間はそれほど長くないのだが、ひのめは気にしていなかった。

「お兄ちゃん、早くー!」

 待ちきれないように、横島を急かすひのめ。
 二人分のパスポートを買っていた横島は苦笑してひのめの元に向かう。

「はいはい。今日は姫の望み通りにしますよ」

 そうして、二人は自然に手を繋ぎ、アトラクションを回り始めた。



「きゃー!」

「おわー!!」

 手始めに、とひのめが選んだのは、ジェットコースターだった。
 横島は「そんなハードなものから乗らなくても……」とひのめに進言したのだが、「えー」というひのめの不満げな一言により決定。
 平日のためか、二人はほとんど並ぶこともなく、乗ることとなった。

 ひのめはきゃーきゃー騒ぎながらも楽しそうだ。
 始めは「怖いよぉ、お兄ちゃん……」などと、しおらしく横島の手をぎゅっ、と握っていたのだが、いざコースターが落ち始めると喜色満面の笑みで騒いでいた。
 一方、横島の方は始めこそ、ひのめを安心させようと「大丈夫だよ」などと言葉をかけていたのだが、その後はひのめとは対照的に、みっともなく騒ぐ羽目になっていた。

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「ん……ちょっとダメかも……」

 ジェットコースターから降りた二人は、近くのベンチで休憩をとっていた。
 ふらふらな横島を心配するように、ひのめは水に濡らしたハンカチを横島の額に当てている。

「ゴメンね……お兄ちゃんに無理やりつき合わせちゃって……」

 泣きそうな顔で横島に謝るひのめ。
 姉とは違い、本当に感情表現がストレートだ。
 それを見た横島はもたれかかっていた身体を起こして、ベンチに寝転がる。

「きゃっ!」

「しばらく、こうしていてくれないかな?
 きっと、すぐに良くなると思うから」

 横島が頭を乗せたのは、ひのめの太ももだった。
 肉付きの薄い、まだ子供らしい小さな太ももだったが、横島には関係ない。

「う、うん……」

「ありがと。やっぱ、ひのめちゃんは優しいな」

 ニコリ。
 巧みな横島の話術プラス笑顔により、ひのめは顔を真っ赤にして陥落した。
 それを見て、横島は「ひのめちゃんが悲しまなくなって良かった」などと、暢気に考えていた。

 うららかな午後の、そんな一時。





 そんな二人を見ていた、謎の集団。

「アイツ、本当にロリコンだったんだな……」

「よっ、横島さん……」

「うおーん! 横島さん、その関係は不潔じゃー!!」

 男連中は普段見せない、横島の態度に驚きを隠せない。
 ちなみに、上のコメントから順に、雪之丞・ピート・タイガーだ。

「あ、あいつ……」

「うらやましい……」

「せんせー! 『膝枕』など、拙者がいくらでもするでござるよー!」

「うるさい、このバカ犬!(不機嫌そうに)」

「横島さん……もしかして、そういう人だったんですか……」

 女性陣は泣きそうな者、怒り狂っている者、うらやましがっている者など、多彩なリアクションだ。
 コメントした者たちは順に、美神・おキヌ・シロ・タマモ・小龍姫である。
 ちなみに、美神はシロ・タマモ・小龍姫を「横島が危ないから、すぐに来て!」と妙神山から騙して呼び寄せていたりする。

 その他、美智恵や西条(無理やり、連れて来られた)・ワルキューレ・ヒャクメ・パピリオと、強力すぎる布陣であった。
 総勢、十二名の団体が物陰からこっそりと(彼女たちの主観によれば、だが)、横島とひのめの様子を覗いていた。

「良くやったわ、ひのめ」

 ぐっ、と拳を握る美智恵。
 どうやら、いつまで経っても素直になれない長女に見切りをつけて、ひのめを応援することにしているようだ。

「…………(ひのめちゃんを横島クンが「落とした」ら、僕は彼に「義兄さん」と呼ばれるのだろうか)」

 まだ、確定してもいない未来のことを真剣に悩む、西条。

「私はアイツを戦士だと認めていたが……やはり、アイツは違う!」

 思わず、ライフルで横島を撃ちたくなっているのはワルキューレだ。

「うわー、横島クンってあんなに大胆なのねー」

 割と純情なところがあるヒャクメは顔を真っ赤にしながら、興味津々で覗いている。

「うう、私もヨコシマに遊んでもらいたいでちゅ」

 パピリオはすぐにでも横島に構ってもらいたいのか、うずうずしている。


 そんな、傍から見れば怪しすぎる一行は、とりあえず横島たちの行動を覗くだけに留めたようだ。
 もっとも、横島がなんらかの不届きな行動を取った瞬間には、ここにいる全員で全力攻撃をすることは決定しているのだが。

「でも、どーすんだ、美神の旦那?
 いつまでも、こうしているわけには行かないだろ?」

 雪之丞の提案に美神は意外な事に、悩むそぶりを見せた。

「……ひのめ、初デートなのよ」

「…………」

 思わず、ここまで暴走してしまったが、考えてみればひのめの初恋なのだ。
 まぁ、いろいろと問題が――何故か、アイツがひのめを構うのがムカつくが――ひのめが幸せなら今日ぐらいは横島を貸してやってもいいかもしれない。

「まぁ、今回ぐらいは――」

 少し不満げだが、納得した美神。
 だが、そんな彼女の声を遮るようにして、シロが叫ぶ。

「先生が、ひのめ殿の毒牙にかかるなんて、黙って見ていられるはずがござらーん!」

「落ち着いてー!」

 ぶんぶんと顔を横に振って、暴れるシロ。
 おキヌとタマモが懸命に取り抑えている。

「…………」

「どうした、旦那?」

 毒牙。
 ということは、横島とひのめが――

 そして、さらには。

「ひのめ、横島クンを『ゲッチュ!』よ」

 あからさまな、美智恵の一言。
 それが引鉄となって、美神は宣言した。

「――アイツを殺すわ」

 底冷えのする声。
 ピタリ、と止まる他の人間。

「ククク……やるからには徹底的にやるわよ。
 ――最近はアイツもヘマやらないし」

「で、でもさすがに殺すのはマズイだろ……」

 ギロリ。
 美神の視線が雪之丞を射抜く。

「――先に、アンタを殺しましょうか?」

「い、いや……やっぱ何でもねぇ」

 もうすでに彼女に反論できる人間はいなかった。
 唯一止められそうな美智恵も、「ようやく重い腰を上げたわね」と嬉しそうに静観しているだけである。

「さあ、覚悟はいいわよね?」

 かくして、『横島暗殺――殺す、というのは『半殺し』という意味だよ♪(仮)――大作戦』が静かに始動した。
 なお、『半殺し』に(仮)がついているのはマズイだろ、という意見は誰からもでることはなかったりする。




 ぞわり――

「うお!?」

「どーしたの、お兄ちゃん?」

 その頃、横島は自らに向けられる怨念じみた殺気に悪寒を感じていた。

「いや、何でもないよ……」

 気のせいだろ、と横島は思うことにした。
 今は、ひのめとのデートを楽しむ時なのだ。

「ふーん……変なお兄ちゃん」

「さ、次に行こうか」

「うん!」

 そして、二人が向かう次のアトラクションは――お化け屋敷「マジカル・ミステリー・ツアー」。



 最悪の展開が待っているとも知らず、横島とひのめはアイスクリームを片手に、楽しそうにデートを満喫していた。



  −To be continued !−

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