ザ・グレート・展開予測ショー

交差そのご


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 4/26)

「てっ木下さんっ怪我してるじゃないですかっ!?」
とはメンバーを一喝した後、少年の手をみておきぬが慌てたように言う。
―少年の手の甲からは、だらだらと血が流れているのに気付いたのだ。
「いや…そんなたいした事はないスけど?」
手をぶらぶらと左右に振り少年。
流れ落ちる血に気にする様子もない。
それは、この程度の怪我は、この少年にとって日常茶飯事だと言う事だろう。
だが、それをおきぬが感受するわけもなく―ぐいっと服の袖を引っ張り座らせた
「え?」
突然の、行動にもちろん少年は驚く。
おきぬは、少年のそんな様子はきにも止めず腕を掴み―手のひらを傷口にかざす。
そして、手のひらから溢れる光―流れる力。
その光を、力をもし形容するとならば、暖かく、優しい、労わるような―と言えるだろう
「よかった―傷は、そんなに酷くないから私の力だけで大丈夫ね」
治ってゆく傷口をみながら、ほっとしたようにおきぬ。
治癒能力をもって薬も何も使わずに傷を治す。
その光景は、他のメンバーには当たり前の光景であったのだが、当の傷を負っている少年にとっては―当たり前の光景ではありえなかったのだ。
ぱくぱくと口を上下させ、目を見張りおきぬを見ている。
おきぬの治癒能力、ヒーリング等はこの世界では稀有なものであったとしても、『ありえない事』ではないのだ。
驚く事ではあっても―信じられないとおもうようなことではない。
だがこの少年の表情はまるで、『信じられない』とでも言うようなものであった。
「あ…あの」
こわごわと―自分の手の甲を見ながら少年。
「なに?まだ痛い?」
―治ってるはずだけどと首をかしげながらおきぬは言う。
少年はじっと手の甲を見ている。
さっきまでは一直線に入っていた傷がもうない。
―人間、見たこともないことや、『在り無い』ことに出会うとパニックに陥るはずなのだが、そこはそこ。
この少年もまた普通ではなかった。
数瞬―頭をめまぐるしく動かし―この相手は自分にとって害ではありないということを判断し―
「―いえ。有難う御座います」
ぺこっと頭を下げて少年は言った。
「はい。どういたしまして」
おきぬはにっこしと―晴れやかに笑った―。

そして、話は食事をしながらでも―ということになり、
小春日和の―絶好のピクニック日よりといえるこの陽気。
菜の花畑に広げられるレジャーシートにその上に並ぶいろとりどりの弁当箱。
そして騒がしい―食事の風景。
のはずだが今日は違った。
食事が人数分きちんとあるということもだが、この突然現れた少年に興味を引かれているからであろう。
―少年はこの世界―いや時代といえばいいのだろうか?
それを知りたがった。
どんなささいなことでも―知っているということが、知らないということがどれだけ大事かわかっているから。
「……………………魑魅魍魎が跋扈する時代なんですね…ここ」
そして聞いたあとの台詞がこれである。
額に、手をあてげっそりとしたように言う。
まあこう思うのも無理はないだろう。
―聞いた相手が悪かったといってしまえばそれまでなのだが。
おきぬあたりは、ふつーのごく一般的なのを教えているが、横島やシロなどは多少誇張しているわ、美神などもそれを止めない。
タマモに至っては、さらにおおきく話している始末である。
「まー嘘はいってないしなあ」
とは横島。
確かに、嘘はいってない―誇張しているだけで。
何も知らないひとをつかまえて、すこしばかり恐がらせようとしているのだ。
―すこしばかりの悪戯心である。
だが、少年は恐がる様子はなく―ただ深く安堵のため息をつき
「よかったああ…殿じゃなくて」
といった。
「へ?」
とは横島。
「いえ…なんかもー落ちたのがもし殿―って俺の主君なんですけど、―ほんっとこの世界にこなくてよかったなあと思って」
その様子には、どこにも自分が身代わりになれてよかった―という悲壮さただよう自己犠牲的感情らしきものは感じず、ただただやっかいごとをおこす子供を心配するかのよーなものを感じる。
「あの人なら、妖怪軍団でもつくりそうだったもので」
それがありえないといえないところが恐い。
「……おまえの主君って一体」
その真剣な様子にはあっとため息をつき横島。
「いや―もう横暴で、自分勝手で地で天上天下唯我独尊をいくよーなひとで」
ふっと顔をそむけるように少年。
「ああそれならわかるぞっ」
とぐっと横島が拳を握り締めた瞬間。
がこっと
レジャーシートの四隅に置いてある拳大の石が飛んできた。
もちろん投げたのはいわずもがなの美神である
「でそろそろ私も貴方に聞きたいことがあるんだけど―聞いていいかしら?」
美神は、ものいわぬ横島を無視し―有無をいわせない強さでいった
つづく

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