ザ・グレート・展開予測ショー

水使い(〜暗殺戦之ニ〜)


投稿者名:AS
投稿日時:(02/ 6/18)




 ー水使いー



 
 車から転がるように降り、体勢を崩さず前を向く。
 眼前にひろがる光景の内、護衛を頼まれた依頼人の別荘が嫌でも目につく。ふと彼は、居住している下水のアジトの代わりにここを強奪してえなどという考えにとらわれそうになり、そこでかぶりを振った。
(正面・・・馬鹿か?)
 邪な考えを強制的に打ち切って、自分達の前で悠然とただ立っている呪術師を見る。
 若い。
 年の頃はまだ10代かそこらだろう。その黒衣と、まとわりついてる雰囲気はさすがに気押されるものがあるが、彼にしてみればとてもプロの暗殺者としては物足りないレベルだった。
 そもそもこんな広々と見晴らしの良い昼間に、自分の姿を見せつける形での待ち伏せ。プロ以前にもはや暗殺ですらない。
(だが・・・)
 呪術師の眼を見る。そこには知性と冷酷さ、それらが強く現れており、こうした眼差しをした者が、奇襲をせずとも軽はずみな行動に踏み切るとも思えない。
(奇襲をつかないのなら、自分をオトリに? いや・・・)
 陽動ではない。周辺に気配は皆無。呪術師にもそういった素振りはなく、瞳にも何かを計るような感情は見えない。

 呪力を嗅ぎつけたのは、助手席に乗る普通ならとっくにスクラップにしてる車が、何度目かのエンストを起こした時だった。
 それは紛れもなく殺意を伴う呪術に用いられる呪力。その呪力が派生すると同時に、無数の死霊達が呪力にひかれ集まって行く様を目にしながら、彼はそこから目的地に着くまでの間、感じ取った呪力を常に探り続けた。
 そうして最も呪力の強い場所と、携帯した地図とを照らし合わせたところ、そこは明らかに目的の別荘がある場所。先回りされてる事から、不意をつく待ち伏せに備えて、結界を依頼主をも含めた空間に張り巡らせていたが、結局目的地に向かい進む間も、着いた直後も、呪術を仕掛けてはこなかった。

 そして今。

「こちらの要求は一つ」

 呪術師が初めて口を開いてきた。

「そこの車ん中でうずくまってる奴。そいつを渡してほしいワケね。もし素直に引き渡してくれるなら、他の連中は10年くらい眠りこけるくらいにしたげるワケ」















「お前が一生寝ぼけてろ」







 ーーー途端。





 ため息をついた呪術師の足元から、黒い火柱が上がったーー




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