ザ・グレート・展開予測ショー

南極物語(4) 


投稿者名:志狗
投稿日時:(02/11/ 7)


「先生っ!」

シロの叫び声と共に押し倒された横島は、シロと共に冷たい雪の上に倒れこんだ、

「っ!!」
何が起きたのか分からずにとりあえず起き上がろうとする横島。その脇腹に鋭い痛みが走った。
嫌な予感が走る。
恐る恐る手を当てると、べちゃりと濡れた感触が手に付く。
予感が当たった事を恨めしく思いながら顔を向けると、脇腹から飛び散り流れ出した血が服と雪を真紅に染めていた。

一方シロは自分のとっさにした行動に戸惑いながらも、すぐに横島の怪我に気付く。
「先生っ!傷を見せてっ!」
状況は全く分からないが、のんびりとしていられないのは確かだ。シロは横島に近づき傷を確かめる。

流れ出る血を拭いながら傷を探すと、横島の脇腹に小さな穴が開いていた。
(貫通しているし、内臓は無事・・・でも早く血を止めないと・・・・・)
さらに傷を調べるうちにシロの手に何か硬い物が触れる。
それは横島の体と服の間の挟まっており、血がこびり付いていた。どうやらそれが横島の脇腹に穴を穿ったらしいが。
「ただの・・・石?」
それを指でつまみ出したシロは、意外さからか一瞬放心する。
「シロっ!」

バチィ!
急に起き上がった横島が、シロの後ろから高速で迫っていた物をサイキックソーサーではじく。
勢いを失い地面に落ちたそれもまた、ただの小石であった。
「シロっ!少しの間周りを警戒して、飛んでくるのを叩き落してくれ!」
そう言って横島はバンダナを解くと、傷の上から腹に巻き応急の止血を始める。
シロは言葉にすばやく反応し立ち上がると、その手に霊波刀を生み出す。
するとそれを待っていたかのように、少しはなれた所にある小石が数個浮き上がったかと思うと、弾丸のようにこちらに向かってくる。
「はっ!」
気合一閃、シロはその全てを叩き落す。
しかし間をおかず今度はさらに多くの小石が向かってくる。
シロは向かってくる全てを叩き落していたが、数が多くなってくるにつれて次第に押されてくる。

「一旦この場を離れるぞっ!」
止血を終えた横島がシロに呼びかける。
「でも先生の怪我がっ!」
「そんなの後でいいっ!とりあえず安全確保が先だ!一番近いクレーターまで走るぞ!先に行けっ!」
シロは一瞬戸惑うが、ここで口論している暇はない。すぐさま走り出す。
横島はシロが走り出すと、再度サイキックソーサーを作り出し地面にたたきつける。

ゴガァ!!
小さな爆発と共に土煙が立ち、即席の目晦ましが作り出される。
そして横島もすぐにシロの後を追い始めるが、脇腹の痛みのためか走るスピードが遅い。

(いてえ〜!やせ我慢も限界だ!早くなんとかせんと痛みで死ぬ!)
心の中でこっそり弱音を吐くと、文珠を作り出し『痺』と込め、傷口に使う。
すると少しの痺れと共に傷の辺りの神経が麻痺し、痛みを感じなくなる。
強引な手段だが、これだけの怪我だと癒すには時間がかかりすぎてしまう。
痛みをすぐに消す、文珠を無駄使いしない、これを考えての事だ。

痛みが消え、煙幕も張っている事からとほっと息をつく横島だが・・・・

ひゅんひゅんひゅんひゅん!
土煙の中から次々と飛礫が飛んでくる。しかも正確に横島を狙って。

「だーーーーっ!なんでだーーーー!」
どかどかどかどかっ!
飛礫は運良くも、悲鳴を上げる横島の背負う荷物に当たる。
しかしただの石とはいえスピードが銃弾並だ、当たり所が悪ければ即死だろう。

やっとの事でシロの待つクレーターまでたどり着いた横島だったが、そこに待っていたのは飛礫を必死に防いでいるシロの姿だった。
「先生っ!ここもだめでござるっ!」
「何でこんなに正確に俺たちを狙ってこれるんだ!?目晦ましも効かないし・・・しょうがない!」
横島はすぐさま文珠を作り出すと、『護』と込め発動させる。

ガガガガガガッ!
文珠によって作り出された横島とシロを囲む小規模の結界に飛礫が阻まれる。
「かなり小さめの結界だし、竜気もあるからこれでしばらくはもつだろう・・・。シロ、敵がどこにいるかニオイを探れないか?」
「それが・・・拙者たちに対する悪意みたいのはそこら中に渦巻いているんでござるが、悪霊や魔物の気配は全く無いんでござるよ。」
「気配を消してるのか?」
「そうじゃないんでござる。気配を消していても集中して探れば、どこにいるかは分からなくても少しは何かを感じるのでござるが、
今はそれさえも無いんでござる。こんな事初めてで、何がなんだか・・・・・」
「・・・・・俺たちじゃ判断がつかないな、美神さん達に連絡しよう。」

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〜美神除霊事務所〜

「横島達が襲撃を受けている!」
横島からの連絡を受けたワルキューレの言葉に、事務所の中に緊張が走る。

「横島君達は無事なのっ!?」
「落ち着け。横島が負傷したらしいが命に別状は無いそうだ。だが、敵の位置も正体も全くつかめず手詰まりのようだ。」
ワルキューレの言葉にほっと息をつく美神。それに間をおかず小竜姫が尋ねる。
「反デタント派の魔族ではないのですか?」
「横島の連れの人狼の娘によると『悪意が周りに満ちているが、気配が全くしない』そうだ。”悪意”だ、殺気ではなくな。
魔族なら悪意だけで殺気が出ないのもおかしい、魔族は基本的に破壊衝動が強いし、悪意を感じさせているのならば殺気を隠す必要などないからな。」

「魔族じゃないとしたら、やっぱり魔物や悪霊じゃないんですか?シロちゃんに気配を感じさせないぐらいの・・・」
「多分それはない。あのバカ犬、頭は悪いけど気配察知能力は高いわ。悪霊じゃ誤魔化せない。
あいつに気付かれない位の魔物はいない訳じゃないだろうけど、かなり高位の魔物よ。
そんなのが南極の異界空間なんかにいて、しかもいきなり襲ってくるなんて考えにくいわ。」
つい先ほど帰宅したおキヌの疑問を一蹴したのはタマモである。
少々悪口がまざっているが、判断としては的確なものだ。
 
「横島君、怪我したんでしょ。敵の攻撃手段は何だったの?そこから何かつかめるかも・・・」
美神の問いにワルキューレは珍しく言いよどむ。
「それが・・・・ただの石らしいのだ。」
「石ぃ?」
「ああ、霊波砲などでなく石などの周りにあるものが次々に銃弾並の速度で飛んでくるらしい、今は結界で防いでいるらしいが・・・」
「じゃあ、テレキネシスが使える人間・・・・は無理か、あんな放射能だらけのところで生きられる人間なんているわけないし、
シロのハナを誤魔化すのも不可能ね。」
「確かに・・・、煙幕を張っても正確に攻撃してきたらしいが、
遠視能力との併用というのを考慮に入れても、人間の可能性はほぼ無いな。」

「ダメもとで聞くけど・・・神族の可能性は?」
「神族としては横島さん達を襲う理由がありませんし・・・現在、神魔族共に動きはありません。」
「神魔族、魔物、悪霊、人間、・・・どの可能性もほぼ無し・・・・か。」
美神の呟きに、その場の空気が重くなる。
誰も諦めたわけではないが、打つ手が見つからないのはやはり気が重くなる。

「ヒャクメ、横島君達の周りに何か変わった事はない?」
ヒャクメが先ほどから喋らないのは有力な情報が得られないからだと言う事に気付きながらも試みに問う美神。
「放射能や地脈エネルギーの濃度が通常より格段に多い事ぐらいで、
それも核ミサイルの爆心地で地球のチャクラだっていう点から見れば何の不思議も無い事だし・・・・・」

がたんっ!
突然弾かれるようにして椅子から立ち上がった美神にヒャクメは言葉を途切れさせ、他の者は何事かと視線を向ける。
「ヒャクメ・・・・今、何て言ったの?」
「え?・・・・地脈エネルギーの濃度が濃いって事?でもそれは地球のチャクラなんだから当たり前・・・・・」
「もしかして!」
自分で聞いておきながらヒャクメの言葉を途中から無視する。
美神は叫ぶなりワルキューレに向かって行くと、その迫力にたじろぐワルキューレの手から通信鬼を奪い取る。

「横島君!聞こえる!?」
『あっ!美神さん!どーしたらいいんすか!もう周りは石の嵐みたいになってて・・・』
「質問するから答えて!石は結界に防がれても、攻め方を変えずに飛んでくるだけ!?」
『えっ?あっ、はい。弾かれても何度もぶつかって来てます。』
少しパニックに陥っていた声の横島だったが、意図のつかめない美神の問いにかえって落ち着きを取り戻せたようだ。
「それから!あんた達の足元の地面には変化は無い!?」
『あっ!そーいえば、無いです。』
美神の言葉にはっとする横島。考えてみれば変だ、足下にも石はあるのにそれらは動かない。

足下にある石を動かして攻撃すれば不意をつけるのだが・・・。事実、初め横島に傷を負わせた石は足下付近から飛んできた物だった。
なのに今、結界内の石はぴくりとも動かない。
横島の張った結界は、せいぜい外からの攻撃の防御と、結界内を悪霊などが入り込めないような浄化された空間にするぐらいだ。
テレキネシスなどであれば、結界の外からでも結界内にある石を動かす事はできる。

皆、美神の真意が分からず困惑するが、一方の美神は自分の予想どうりの展開に笑みを浮かべる。
「じゃあこれで最後よ!結界の外に自然物でない人工物をなんでもいいから投げ出してみて!」
『寝袋か何かでいいですか?』
「いいから!さっさとやる!」
『は、はいっ!』
美神の怒声に怯えながらの指示に従ったらしい横島。
「どう!?寝袋が攻撃されたり、寝袋自体が飛んできたりした!?」
『いいえ。こっちに飛んでくる石にかすめられたりはしましたけど、変化なしです。』

美神は横島の答えに満足そうな笑みを浮かべると、再び通信鬼に向かって叫ぶ。

「敵の正体がわかったわよ!」

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