ザ・グレート・展開予測ショー

livelymotion【プログラム:2「生きる定義(?)と想い定義」】


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(02/ 7/11)

「はっはっは!ここんところほったらかしで、かなり劣化が進んだじゃろう。
二束三文で買い叩かれるのがおちじゃ」
ここで万が一、マリアに『怒り』などというプログラムがあったなら、
彼女は凄まじい力で自身の奥歯を噛み合わせたことだろう。
「バカだな。コンボイかなんかでひき潰して屑鉄として引き取ってもらうんだよ」
前略、きっと今夜、都内にあるすべてのコンボイがオシャカになっていたことだろう。
――無論、あればの話であるが。彼女の感情と、コンボイとが――。
「もぉいーです。
女性の姿でコンボイにひき潰される画を想像したらヤになってきました」
懇願されていたスーツの男が弱々しく負けを認めた。
『なに!どーいう意味だ(じゃ)!?』
二人の声が見事にハモる。
「お二人とも除霊なさってください。勿論、相場どおりの報酬をお約束します。
ただし、こちらの貯えもそうそう無駄に使えるほどではないのもまた事実。
ゆえに、除霊に一番貢献した一組様のみに報酬をお払いいたします」
「なるほど。報酬争奪レースってわけか。嫌いじゃあないぜ。そういうゲームは」
言ってニマリ、と笑う。
「ふん!迂闊じゃのぉ。タダ働きになるような条件を飲むとは」
こちらも、不敵な笑いを浮かべる。
「ジーさんは降りるのかよ?」
「おぬしが、そうすべきじゃろ?この天才を相手取るのは無謀じゃよ、若造」
二人とも、目がちっとも笑ってない笑顔を張り付かせたままにらみ合う。
「そうは思わねぇな。若さは力だぜ。
ジーさんこそ、ロボットねーちゃんの修理費で大赤字になるんじゃねーか?」
「おぬしには葬儀代が高くつくじゃろうのぉ?くっくっく……」
「へっへっへ……怖いねぇ。
まるで事故に見せかけて抹殺、なんてことを起こしそうな科白じゃねーか」
「そっくりそのまま返しただけなんじゃが、なるほど事故は起こりそうじゃな」
「まぁ安心しなって。200sだっけ?
持ち運びが楽なようにバラバラになってるだろうからよ」
「ボーズの葬式には今回の報酬から香典出してやるぞ。泣いて喜べ」
なおも空気がぎすぎすと軋むような会話を繰り返す二人。
「あの……お二人とも友人同士、でしたよねぇ?」
スーツの男が、唯一まともそうなマリアに視線を送って尋ねる。
「イエス。雪之丞サン・トモダチ……けど・今回は・敵」
「ちょっと待ったァッ!」
ここで横島のちょっと待ったコール!昔懐かしいね○とん紅鯨団を髣髴とさせる。
「な…横島!?この場所を嗅ぎつけるとは厄介な…」
「美神令子のトコの小僧……よもやあの女が近くにいるとは言うまいな?」
「ふっふっふ…どうやらメンツで察するに正規の依頼とは別件のようであるし…」
「うぅ?鋭い!」
横島の推理にうめき声をもらすスーツ姿。
「ここは鬼のいぬまに小遣い稼ぎといきましょーか。
幸い雪之丞はピン。カオス戦力外でマリアもピン同然。で、こっちはペアだし」
「汚ーぞ!」
「誰が戦力外じゃクソガキッ!」
「鬼って……やめときましょうよ。私達っていつもいつもいつも失敗してるし…」
「えー!?やろうよー。ここで臨時収入が入ったら久しぶりに遊ぶ余裕が出る!
スパイダーマン観よっかな!メシだって奢るからさー」
ピク
映画と、外食。
――ソレッテでーとッテイイマセンカ?
「コラー!こっちゃ今晩喰うアテもねーんだぞ?そんな不純な動機で参戦するなぁ!!」
「貴様ァ!タダで済むとは思っていまいな?ワシの代わりに薙刀でぶたれろアホー!!」
彼らは叫んだ。彼女の耳に届くように。
同情を受けるのは本来好ましくないが、これは敵の弱点を的確に攻撃しているだけだ。
羞恥心は、とうに捨てた!
そして――
「え?お前参戦する?なんでなんでなんで?」
弱く首肯され、雪之丞は頭を抱えてうずくまった。なぜこんなことになるのだろう?
「この小娘ぇぇぇ!さては変装した美神令子か!!」
カオスは憤慨した。目の前の少女が言葉すくなに頭を下げるのも、すでに見えていない。
「まぁ、僕の方としては断る理由もありません。それでは三組のみなさんに説明します」
スーツの男に言われ、四人はそれぞれに視線で促す。男はそれを受けて満足そうに頷く。
「このお寺の裏手に、改築前、墓地だった場所があるんです。
ちゃんとお墓で供養された霊がひっそりと暮らしていたんですけど、
居心地のいいお墓に、浮遊霊が集まってきて、霊障連発。
普通、お寺にはそれを未然に防ぐ結界があるんですが、
素人住職だった兄さんはそれを知らなかったんです。
まぁ僕も後で勉強して知ったことですし、お墓の有無でしか神社と区別できませんけど。
とにかく、お寺を改築したので今日スイーパーさんを呼んで結界張ってもらえるんです」
「なるほど」
横島が相槌打った。それがつまり、美神が受けた依頼に違いない。
「で、改築前の旧墓地なんですが、ここの浮遊霊退治を公に頼むと…」
「あんたの兄貴の醜聞だもんな。こっそり始末しちまいたい、ってわけだ」
今度は雪之丞が言う。モグリ稼業はそろそろ長い。そこまで聞けば察しがつく。
「そのとおりです。ただ、改築したての寺が目と鼻の先です。
飛び火だけはないように保険をかけたいので、2〜3人ばかりガードに残ってもらい…」
「ふむ…そういうことなら、その役はより信頼できる若者達こそ適任じゃな」
カオスが断定的に言った。
「いや、そういうのに向いてるのは白兵戦が得意なマリアと雪之丞だろ。
おキヌちゃんはネクロマンサーだぜ?今回の事例なら前衛に据えなきゃな」
横島が異を唱える。するとさらに雪之丞までが
「待てよ。信頼云々で言うなら機械が一番安定した成果を期待できるし
死霊使いってんならなおのこと重要な防衛線だぜ。
そんで横島も、当然女を守りたいよな?前衛は俺とジーさんで行くぜ」
三人の異様な空気を見、キヌが胸中でうめく。
――みんな……手柄が少なそうなガード役を押しつけあってる…!
それも特に手強そうな相手に、だ。とんでもない連中である。
生きるって事は奇麗事ではないのだ。
「前衛はワシとマリアじゃよ。ワシらの力はいささか派手じゃ。寺の近くでは戦えん」
「前衛は俺とおキヌちゃん!そのほうがあっさりカタがつくって」
「くどいなテメーら…俺は守るってガラじゃねーだろが?」
そのまま睨み合いになる三人。
「まぁまぁ。ここは一つ公平にですね…」
スーツの男が仲裁に入る。が。聞いちゃいねー。
「ならばマリアの意見を聞くぞ!
当然マリアが『誰か』に賛成したなら、多数決によってその案に決定じゃ」
「ふざけんな!アンドロイドなんかの意見より先におキヌちゃんの意見聞け!!」
「テメーら揃いも揃って汚ーぞ!!」
「みなさん、依頼を達成すること優先に考えてくださいよー!」
キヌの悲鳴じみた言葉が、白熱した三人に届くかどうか、かなりあやうい。
「ほぉれ!小娘だって寺の保護を考えるように言うとるわ。退け、ガキども!」
「バカヤロー!依頼は雑魚霊退治のほうなんだよ。おキヌちゃんは前衛志望なんだ」
「どっちにしろ、アイツは横島の連れなんだから横島とセットで一人分の意見だぜ」
奇跡的に届いたらしい。奇跡に対する冒涜でしかないような気がするが。
がっくり落ちたキヌの肩に、モーターの熱と振動を秘めた左手が乗る。
「ありがとう…ありがとう、マリア……」
特になにか助かったわけではないが、なんにせよ無性に感謝する。心の底から。
「…最も・公平な・裁定に・必要なのは」
マリアが、いつもの抑揚の無い口調で、しかしどこか通る声音で、言う。
「第三者の・意見です。クライアントが・編成を・決定するのも・自然です」
『……………………』
四人が、声も出せずに硬直してしまった。四者四様の理由で。
――そういう的を得た発言を先にされるとワシの知的なイメージが崩れる!
――サイテーとかヘンセーとか機械のくせに小難しい言葉を!C言語でも喋ってろ!
――五分の条件だと仲間がいない俺が不利だから黙ってたのに…ちくしょうめ。
――思いつかなかったぁ…。マリアって賢い…バカな子だと思われたかしら?
「…コホン。それじゃあ、彼女の提案にそって、僕が決定します……
と、カッコつけたところで、僕は貴方がたの具体的なちからを知りません。
ですが、だからといってここで、僕には決められない、などと言えば、
また不毛な言い合いが延々続くでしょう。
その結果決まったチームもベストかどうか疑わしいです。
それもこれもチーム決めが報酬獲得に大きなハンディになるから。
ならば、ここは公平に、前衛には一組一名づつ。
これならば、三組五人から、お二人のガードが出ますね」
言い合っていた三人はしぶしぶ頷く。
「まぁ、小僧の言うように、戦力外、などということはないまでも、
戦闘力という側面からのみでアプローチすれば、
ワシの能力がマリアや小僧どものそれを大きく下回っているのは確か。
ワシが後衛でもさしたる影響はあるまい」
「マリアや雪之丞は確かにとんでもなく強いけど、一匹づつ潰すしかできない。
おキヌちゃんさえ前衛なら負けないだろう。俺も楽して儲かるし」
「そもそも、俺はこのチーム決めで圧倒的不利な立場だったんだよな。
それが今は、一応対等な条件までこぎつけた。
それにいざ実戦がはじまれば誰にも負ける気はねーし。不服はねェよ」
「結構です。それではガードはドクターカオス、横島さんの二名、
除霊に向かっていただけるのは氷室さん、伊達さん、マリアさんということで」
いよいよ危険すぎるサバイバルレースが幕を開ける。

つづく

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