ザ・グレート・展開予測ショー

八年後物語


投稿者名:NGK
投稿日時:(02/ 3/ 1)

第七話:それぞれの決意

「どうする・・・?俺・・・」
横島は自分の部屋でうずくまっていた。
自分は令子のことを好きだと言うのはわかっている。
しかし、ルシオラのことを整理できていない。
「ルシオラ・・・俺はどうしたらいいんだ・・・?」
うつろな目をして横島は呟いた。
馬鹿バカしい。
彼女がここにいたとしても答えてはくれないだろう。
こんこん がちゃ
「!!!」
そこにいたのは令子だった。
「へへへ・・・来ちゃった・・・」
両手には買い物袋がある。
ここには・・・いられない。
「横島・・・くん?」
令子はさすがに横島の表情に気づいた。
横島の顔にあるのは・・・・・・!?
「横島君・・・まさか・・・?」
「・・・美神さん・・・スイマセン!」
横島は部屋を飛び出していった。
横島が”彼女”のことを忘れたわけでも昇華したわけでもなかったのだ。
それなのに私は・・・
「横島君・・・帰ってきてよ・・・ねぇ・・・」

「あのねぇ・・・全部食べてどうするのよ!!」
せっかく料理本を見ながら作ったタマモ特製のいなり寿司が・・・
「んー意外とおいしかったでござるよ」
「あ・ん・た・・・ねぇ・・・!」
やっぱりこの馬鹿を心配することは無かった・・・
タマモがそう思ったとき、
「タマモちゃん・・・?どうしたの・・・?」
「あ、おキヌちゃん!」
おキヌが上から降りて来た。
「あれ・・・?どこかに行くの?」
おキヌの格好が先ほどとは違っている。
「うん・・・ちょっと、横島さんのところへ・・・」
「じゃ、拙者も行く!!」
「止めなさい!!あんたは私といるのよ・・・」
タマモはシロの腕をつかんだ。
「な!なんで・・・」
タマモの目が怖い・・・
「これから、たーぷりとお仕置きをしなきゃあねぇ・・・」
「あ、あの・・・タマモちゃん・・・?あんまり手荒なことは・・・」
「いいからおキヌちゃんは出かけてきなよ。この馬鹿犬は抑えているから・・・」
「そ、そうなの・・・」
シロは必死にもがいている。
「は、放せー先生のところに行きたいー」
それを心配そうに見ながらおキヌは出て行く。
「シロちゃん、ごめんね。おみあげ買ってくるから・・・」
この後事務所は大乱闘の現場となるのだが、この話には関係の無いことだった。

「あ!横島さん!?」
おキヌは横島のアパートから横島が走って出てくるところに出くわした。
「おキヌちゃん・・・」
横島の顔は青く汗がびっしょりである。
「(なにか・・・あったのかな?)横島さん・・・よかったら、相談に乗りますよ?」
おキヌは横島に向かって笑いかけた。
「ああ・・・」
横島はおキヌの笑顔を見て何か救われるような思いであった。

「・・・というわけなんだ・・・」
・・・横島はルシオラと令子への想いでゆれている。
「なぁ・・・おキヌちゃん・・・どうしたら・・・」
「あまったれないで!!」
ばしっーん!!
平手打ち。
「・・・・・・!?」
横島はぐらついた。
「私は・・・美神さんは・・・」
おキヌの瞳から涙が・・・散る。
「人に・・・私に・・・甘えないでください!!」
自分でも何を言っているのかわからなかった。
ここに来たのは横島への自分の気持ちを整理することだったはずなのに・・・
「私の・・・」
おキヌは言いかけて、止めた。
代わりに別のことを言う。
「横島さんは・・・ずるいです!」
「え!?」
「横島さんは美神さんのことが好きなのに
ルシオラさんのことを忘れられないって言うのは・・・」
おキヌは唇をかみ締めた。
「卑怯じゃないですか!!」
ぴくっ
「なにが・・・ずるい・・・だよ・・・
みんなルシオラのこと無かったようにしているじゃないか・・・
俺ぐらい・・・俺だけでも、覚えてやらないと・・・どうするんだよ・・・」
あの事件のあと、皆は何も無かったように生活をしていた。
ともすればルシオラなんてヒトは始めからいなかったかのように・・・
それが横島にはたまらなく怖かった。
おキヌは横島を見た。
ずるいのは横島さんじゃない・・・私のほう・・・
今も横島に対する想いを隠している。
彼には立ち直ってほしい。
この八年間、横島が時折見せた”影”。
これを取り払ってあげたい。
それによって横島が苦しみを抱くのなら・・・
それが私の・・・横島さんに対する想いの集大成だ。
想いを封印するのではなく、ただ、横島さんが幸せになるように・・・
それが私の願いだから・・・
「・・・そうだな・・・俺はずるかったかもしれないな・・・」
おキヌは横島を黙って見つめている。
「俺は・・・結局・・・逃げていたんだ・・・自分の気持ちから・・・」
私も・・・その言葉をおキヌは飲み込んだ。
「ありがとう、おキヌちゃん。おかげで気持ちに整理がついたよ」
「そう・・・よかった・・・横島さんが苦しむところ見たくないですから」
おキヌは笑った。
それは横島のみならず見るものすべてが安心できる笑顔だった。

横島が去った後・・・
おキヌは一人で座っていた。
「結局、言えなかった・・・」
好きだって言う告白が。
だけど、それ以外のことは言えたような気がする。
今までたまっていたものがである。
とりあえず横島の恋を応援していこう。
横島の笑顔が見たいから。
だけど・・・
「もし、美神さんが横島さんを幸せにできないときは・・・」
おキヌの目が怪しく光る。
そのときは・・・横島にすべてを伝えて思いを・・・遂げる。
「・・・なんてね・・・」
ふぅ・・・
「ぜったいに幸せになってくださいね・・・」

横島の部屋
令子は横島の部屋にあった一枚の写真を見ていた。
それは南極から帰ったときに写したもの。
横島とルシオラが腕組みしているものだ。
「あいつ・・・まだ残していたんだ・・・」
八年前・・・アシュタロス事件が終わった直後の事・・・
どんどん
「横島君!?」
部屋の窓から煙が出ていた。
カギが開かない。
ばしゅーん
銃でカギを壊し中に入る。
そこには、皿の上に何枚もの写真を焼いている横島の姿があった。
「な、何しているのよ・・・」
横島の目は一応正気の目をしているが何処かうつろだ。
窓は開いているから中毒になっているわけでもなさそうだが・・・
「写真を・・・燃やしていたんです・・・」
横島は ぼそっ と言った。
「写真?」
令子が皿の中を覗き込むとうっすらとその写真がルシオラを写したものだと分かった。
横島がさらに呟く。
「美神さん・・・言いましたよね・・・ルシオラは俺の子供として、
転生するって・・・なら・・・ルシオラの写真は燃やしておこうと思って・・・
そうでないと・・・娘が出来たとき、その娘がルシオラに似てきたとき、
俺は娘として見れるのか、
ルシオラとして見てしまうんじゃないか・・・って思うから・・・
だから・・・焼こうと・・・」
令子が黙っていると横島は、
「転生って言ってもルシオラじゃないんですよね・・・?魂が同じだけで・・・」
横島の気持ちを考えると そうだ とは令子は言えなかった。
でもその通りである。
令子自身、メフィストと美神令子は違うと断言できるから・・・
「できれは・・・俺の娘にはルシオラの記憶はよみがえらせたくないんスよ」
だから・・・燃やした。
その翌日、横島はいつもの横島に戻っていた。
だけど・・・
令子は横島と目を合わせることは出来なかった。

「・・・でも、ルシオラ・・・私もあなたと同じくらい
横島君のことが好きなのよ・・・」
美神は写真を元の場所に置いた。
「私はあなたを超えることは今、出来ないかもしれない。
だけど、私は私のやり方で横島君を完全に振り向かせて見せる・・・」
そして、電話を取った。

横島は家に帰ってきた。
「あ・・・れ・・・?」
ドアの前に張り紙が張られている。


「「横島君へ
        あんたの荷物はすべて私の部屋に移動してあります。
        これからは私の部屋ですむこと!!                         以上 」」


横島は自分の部屋の前で立ち尽くしていた。
張り紙を握り締めて・・・


次回予告
「君が・・・横島君か・・・?」
突然現れた鉄仮面の男。
「パパー」
ひのめはそう言って横島の胸に飛び込んだ。
次回 「八年後物語」 第八話:父と娘
お楽しみに!!

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