ザ・グレート・展開予測ショー

動揺そのに


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 2/22)

「なに、そんなに肩震わせてんの?」
くすくすと笑いながら美神が近づいてくる。
アンタの事考えてましたとは言えない横島は、あいまいに苦笑して席を譲った。
今日の美神は、白いざっくりと胸元のあいたセーターに黒のズボンといういささか露出の少ない、シンプルな格好である。
髪は一まとめに結んでおり歩くたびにゆらりと揺れる。
「もう、四月かあ…早いわねー」
直ぐ傍にまで近づき美神。
横島といっしょに窓を眺めながらぼそりと言う。
その顔は、ひどく穏やかだ。
一方横島は、激しい心臓の音を自覚しつつ横に並んだ美神の姿をみる。
今日『も』ほれぼれするくらいいい女だ。
艶ややかな髪も、そのきめ細かい肌もすい込まれそうな瞳も、この女性を構成する全てが綺麗に見える。
―まあ惚れた欲目という声もあるが。
手を伸ばせば直ぐ触れれる位置にいるのに―。
横島は、ううっと内心悲鳴をあげつつ行き場の無い手を宙にさまよわせる。
本当は肩に手をやるなりそうなりしたいのにできない。
何故だかわからないが出来ないのだ。
前は、そんな事日常茶飯事だったのに。
―それは、大事すぎて些細なことだとしても、拒否されたり嫌がられるのが怖いのだ。
前は、そんな事を考えなかった。
自分の感情だけで手一杯でそこまで考える余裕がなかった。
っだが、今は美神は横島を好きだと言ってくれる。
元々コンプレックスの塊のようなオトコだ…自分がどこが好かれているのかわからないのだ(いや美神にも分からないだろうが)。
つい最近までは、それにすら、美神が自分のことを本当に好きなのかどうかわからなかった…いや自信がなかった。
だがホワイトデー以来、確実に好かれているという実感は持てたのだ。
好かれているのは分かるが、どこがすきなのか分からない。
そして自分の些細な行動が、きっかけで嫌われる事だってあるかもしれないのだ。
だから手が出せない。
もしかして今自分が触ったりしたら、拒否されたりしたら、嫌われたりするんじゃなかろうかと思うと―怖くなるのだ。
無論これは横島が無意識のうちに思っていることなので、はっきりと自覚はできていないのだ。
横島が自覚できるのは、何故か『触れない』ということだけだ。

「ところで横島くん?」
と窓に向けていた視線を横島に向け美神。
その瞳に宿る光は相変わらず強く綺麗だ。
「は、はい?」
どくんとうるさい心臓の音を自覚しつつ横島。
顔に血が上るのは勘弁して欲しい。
この四月からの正社員への昇格についての話だろうか?と思い返事をする。
が、美神の口から零れた言葉は
「なんでそんなよそよそしいの?」
である。
言葉だけきくと弱弱しいように感じるがとんでもない。
その口調は強く責める響きさえ感じる。
「なんか、ずっと最近ワタシのこと避けてるでしょ?なんか悪さでもしたの?」
まるで亭主が浮気した時に責められる口調だが横島はそれには気付かずかあああっと顔を赤く染めていた。
思わず片手で顔を覆う。
「……よそよそしいっすか?」
か細い、声だ。
「そりゃもーこれでもかってくらい」
きっぱしと美神。
「いや……わかんないんすけど」
尚もまっかなまま横島。
「自覚症状もないの?」
完璧に呆れた口調で美神。

「なんか最近変なんですよね…」
うーっとうなりつつ横島
すると美神は
「違うでしょ?いつもより更に輪をかけて変なんでしょーが」
と宣言した

つづく

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