僕らの日曜日(La Follia_5)
投稿者名:アシル
投稿日時:(03/ 1/ 9)
「知ってる天井だ……」
見慣れた我が家のそれを見て、横島はほうっと安堵の溜息を吐いた。
昨夜、あのまま冥子と連れだって令子の事務所に謝りに言った。――酷い目にあった。
令子曰く、自殺する前に私が殺すわ、とのことだったが、本当に死にかけた。
我ながらよく生きているものだと感心する。
今日は日曜。
とりあえず、冷蔵庫を確かめる。
烏龍茶しか入っていないことに軽い絶望を覚えたが、いつものことなので立ち直りも速かった。
「仕方ない。少し早いけど美神さんとこに行くか……」
毎度毎度酷い目に遭わされて(大半は自業自得であっても)それでもしつこく令子のところに入り浸る自分が、少しだけ哀しかった。
「ちわー、タダ飯くらいに来ましたぁ……」
「冗談じゃないわよ! わたしは嫌だからね!!」
「え゛」
ドアを開けたまま固まる横島。
昨日殴られた分だけでは許して貰えなかったのだろうか。
しかし、流石に昨日の今日でまたボコボコにされるのは、如何に横島と言えども勘弁して欲しかった。
必死と言うには及び腰すぎる抵抗を試みる。
「そ、そんなこと言われても、俺今日の朝飯抜くと連続4食抜くことになるんすけど……」
「アンタになんか言ってないわよ!」
「なんだ。それなら先に言って下さいよ」
助かった、と頭を掻く。
令子はなにやら電話の相手に怒っているようだった。
昨日から泊まっているのだろう冥子は、椅子に座ってのほほんとお茶を飲んでいる。
「おキヌちゃん、ご飯有る?」
「おにぎりで良ければ」
「ごめん。頼むよ」
冥子の横に腰かけて、横島はふと辺りを見回した。
「あれ? そう言えば、シロとタマモは?」
「二人とも出掛けましたよ? 散歩とか言ってましたけど……」
大きめの皿に山盛りのおにぎりを運んできながら、おキヌが答える。
横島が来ることを見越して多めに作っていたのだろう。――些か張り切りすぎだが。
「そっか。あいつらがいないと静かでいいなぁ」
「もう。そんなこと言って、ホントは二人がいなくて寂しいんじゃないんですか? 横島さん」
「まさか! シロが居たら散歩に連れてけって煩いし、タマモが居ると昼は毎日キツネうどんだし」
身振り手振りも交えて熱弁する横島に取り合わず、おキヌはクスクスと笑っている。
ふと、それまで黙っていた冥子がポンッと手を打った。
「そうだわ〜。仕事もないみたいだし〜、私達も〜おでかけしましょうか〜〜?」
「あ、良いですね。たまにはみんなででかけましょう」
「構いませんけど、お昼は冥子さん奢ってくれます?」
「良いですよ〜」
ちゃっかりお昼の約束を取り付けた横島はガッツポーズである。
盛り上がる三人に、しかし、美神はあっさりと首を振った。
「私はパスね」
「え〜、なんで〜〜?」
途端に涙ぐむ冥子に、慌ててその場を離れる横島とおキヌ。
令子は心持ち警戒しながら答えた。
「仕事よ。ゴースト・スイーパーに休みはないわ」
言っていることは格好いいのだが、実は単純に休みの日の方が儲けが良いからである。
横島は、入って来たときから疑問に思っていたことを口にした。
「何処に電話してたんですか?」
「母さん――オカルトGメンよ。何か仕事のことで話が有るって呼び出し喰らっちゃったから、三人で行ってらっしゃい」
「良いんですか?」
思わず聞き返すおキヌ。
「ええ。簡単な話みたいだし、みんなでノコノコ行ってもね?」
「……美神さんがそんな優しいこと言うなんて夢みたいだ」
「うるさい」
バキッとやばそうな音をたてて床に沈む横島である。
(まあ、ホントはアンタ達まで断ると冥子が泣きだしちゃうからなんだけど)
(やっぱり……)
(ならなんで殴るんですか)
令子、おキヌ、横島の三人で顔を寄せ合い、小声で喋る。
意味もなく殴られた横島のやるせない訴えは、当然の如く無視された。
「なに喋ってるの〜?」
「な、なな、なんでもないのよ! ほら、アンタ達さっさと出掛けてらっしゃい。時間なくなっちゃうわよ」
「それもそうね〜。令子ちゃんが行けないのは哀しいけど〜、そろそろ行きましょうか〜〜?」
「あ、はい」
慌てて頷くおキヌ。
冥子はもう行く気満々だ。
横島は、テーブルの上の皿に気がつき慌てて二人を止めた。
「ちょ、ちょっと俺まだおにぎり食べてないんすけど」
「レッツゴー〜」
もちろん冥子は聞いていない。
何故か横島の襟首を掴んで、普段ではとても信じられない力で引っ張っていく。
引きずられながら、せめて一個でもと必死に手を伸ばす。
「ああ…、俺の、おにぎり……」
ガチャン!! (ドアの閉まる音)
……四食抜き、決定。
今までの
コメント:
- しまったぁ!? 連載が続いている!(挨拶) 前回コメントで勝手に連載が終わったと勘違いして色々と書いてしまいました(汗);大変に申し訳ありません(ダメ)。今回はまたしても冥子のマイペースぶりに誰も歯止めがかけられませんでしたね(笑)。すぐに泣き出しそうになる冥子、そしてとことんに自分のペースで物事を進めようとする辺りが「らしい」です。さて、一方の令子は美智恵ママから呼び出しを食らったそうですが、果たしてどんな内容なのでしょうか? 次回も楽しみにしております♪(連載、続きますよね?←爆) (kitchensink)
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