決勝戦
投稿者名:Maria's Crisis
投稿日時:(02/11/ 1)
思えば・・・、「青春」って何なのだろう・・・?
決勝戦の相手は予想通り「1年B組」・・・。
「特にあの真ん中のコ注意して。入試で実技成績が私と同点首位だったわ」
私は仲間を振り返る。
「攻守ともに、スピードもパワーも十分だし・・・、他の人間にはやれない特技を持っている」
「強敵ね・・・」と、仲間の一人がつぶやく。
強敵・・・、たしかにね・・・。
この私が、初めて認めた相手ですもの・・・。
「先鋒、用意はよくて?」
「ええ!」
この試合で私の今までが試される・・・。
絶対に勝って、「あのコ」に私の強さを認めさせてやる!
試合が始まると、霊能力と共に、緊張感も再頂点まで高まる。
その高まりがなぜか、戦う仲間のことより、今までの自分のことが思考を支配し始めた。
この目覚めた霊能力で・・・、GSになって・・・、うんとお金を稼いで・・・。
私は常に一番でいなければならなかった・・・。
だから、私は努力した。この努力だけは誰にも譲れない・・・。
その甲斐があってか、私の周りには敵はいなかった。
やっと一番になれた、と思った。
でも、そんな時・・・、たしか中学生になった頃・・・。
「あのコ」の噂を耳にした・・・。
「格式高い家柄のお嬢様で、同年代で敵う相手はいない。恐らく将来は最高ランクの女性GSになるだろう」
私の心の中に生まれていた「自信過剰」という名の油断・・・。
私はまだ見ぬ「あのコ」をライバルとして、更に厳しい修行を重ねていった。
初めて「あのコ」と出会ったのは、偶然にもこの学校の実技試験の時だった。
この学校は入試で優秀な成績を取れば、授業料が全額免除され、奨学金ももらえる。
もちろん、超のつくほどの有名学校でもあったので、この学校への入学は私の一つの目標であった。
まさか、こんなに早く「あのコ」と勝負する時が来るとは思っていなかった。
私は全力で試験に挑んだ・・・。
逆に「あのコ」は余裕の笑みを浮かべながら、試験を受けていた・・・。
結果は同点首位で、引き分け・・・。
引き分け・・・、だとは思えなかった・・・。
絶望的な敗北感に身を包まれた・・・。
今度こそ・・・、今度こそ・・・。
私は、再び厳しい修行を重ねる。
そして・・・、その「今度」が今、訪れた・・・。
「何してんのよ、バカっ!!交代よっ!!」
私は結界に飛び込むと、先制攻撃を謀る。
さあ、勝負よ・・・、「弓かおり」!!
最初から全力で行く・・・、それが作戦。
あのコは劣勢になったら、必ず「水晶観音」を使う。
その時がチャンス・・・。
しかし・・・、結果はあっけなかった・・・。
作戦がものの見事に的中して、あの弓かおりに勝つことができた・・・。
たぶん・・・、あのコ・・・、怪我をしていたのね・・・。
なんだか、やりきれない空しさに浸っていると・・・。
どう見ても反則技を使って、相手チームの三人目のコが、交代のタッチをした・・・。
「な・・・!!ずるいっ!!」
私は抗議をするが、先生に認めてもらえず・・・。
仲間の一人と同じような巫女衣装をまとったコと、勝負することになった。
そう、これは団体戦。「弓かおり」に勝つことは、「弓かおりのチーム」に勝つこと。
私は開き直って、冷静さを取り戻したつもりだったが・・・。
一度切れた集中は、なかなか取り戻せないでいたままだったようだ・・・。
すばやく接近戦に持ち込めば、楽に勝てたはずなのに、巫女のコが笛を構えたのに慌てて、触手を接続させてしまった。
はっきり言って自殺行為だ・・・。
むきだしの触手から、彼女の「霊体コントロール波」をもろに浴びてしまう・・・。
精神力の勝負・・・、このコと私のどちらの精神力が上回っているのか・・・。
私は精神力を高める・・・。
そんな中、ふと幼い頃の自分が頭に浮かんだ。
いつの頃だったか・・・、物心がついた時には、すでに厳しい修行の毎日を送っていた。
ひょんなことで目覚めた、この霊能力・・・。それをただひたすら伸ばしたくて・・・。
私の家は貧しかった・・・。
お父さんは、多額の借金だけ残して、どこかへ逃げてしまった。
残された私と四人の弟と妹を、お母さんが一人で死ぬ思いで育ててくれた・・・。
そんなお母さんも、最近病気で倒れてしまった。
今度は私が家族を支える番・・・。
この目覚めた霊能力で・・・、GSになって・・・、うんとお金を稼いで・・・。
容赦なく襲ってくるあのコの霊体コントロール波・・・。
すでに、私の精神力も限界に近づいてきている・・・。
「く・・・、もう・・・!ダメか・・・!?」
遠のく意識の中、浮かんでくる光景・・・。
お母さんのやせ細った背中・・・。
お腹をすかして泣き続ける四人の弟と妹・・・。
奇麗な洋服も着れず、ろくにおしゃれなんかもしたことのない私・・・。
恋人なんて、いやしない。友達すらいないんだから・・・。
女の子らしいことはしなかった。
いつも、血と汗と涙にまみれていた・・・。
いつも、うつむいて歩いていた・・・。
「青春」なんて・・・、私には・・・。
だから・・・、だから・・・。
『あんた達、お嬢様なんかには、絶対に・・・、絶対に負けない!!』
私が心の中でそう叫ぶと、彼女が笛から口を離した。
「た・・・助かった!!ダウンしなさいっ!!」
私は最後の力を振り絞って、彼女をひっくり返す。
ワン!!
ツー!!
スリー!!
フォー!!
ファイヴ!!
ひどくスローモーションなカウントを聞いて・・・。
「カンカンカンカンッ」とゴングの鳴る音を耳にした・・・。
私はその瞬間、満面の笑みを浮かべ、高らかにこぶしを天にかざす。
勝った・・・。勝てた・・・。私達が優勝・・・。
・・・え?
・・・私達?
勝ったのは私でしょ・・・?
その時、仲間の二人が私の胸に飛び込んできた。
「やった・・・、私達、優勝できたのね・・・」
「うん、私達みんな・・・、がんばったもん・・・」
二人とも、涙を流して喜んでいる・・・。
「仲間」・・・、そう「仲間」と呼んできたこの二人。
クラスの代表のメンバーになれた後、休み時間にしてきた作戦会議を思い出す。
決勝戦で苦戦を強いられることを想定して、決勝まで私を温存しよう、という作戦。
その時は当然な作戦だと思っていた。
でも、そのために二人とも遅くまで、体育館の裏で秘密特訓をしてたんだっけ・・・。
そう・・・、そうよね?
考えてみれば、この決勝戦まで、私に負担をかけないように、二人だけで勝ち上がってきてくれたんだもんね?
だから、私はベスト・コンディションで戦えて、弓かおりとあの巫女のコに勝つことができた。
逆に言えば、もし私にダメージが残っていたら・・・。
きっと、私はあの二人には勝てなかったにちがいない・・・。
私一人では・・・、意地っ張りな私だけでは・・・。
私は二人を抱きしめる・・・。
なんだか、とても暖かい気持ちになれた。
「ありがとう・・・」
「あなたのおかげよ?」
二人がそう言って、涙でぐっしょりの顔を上げる・・・。
私は首を振って答える。
「いいえ・・・、この勝利は私達三人のものよ。だって・・・」
そこで、急に言葉が出なくなった・・・。
その時、ようやく気がついた。
私も涙を流していることに・・・。
「だって・・・、だって・・・、私達・・・、友達でしょ?」
私だけが特別だと思っていた。
私だけが努力していると思っていた。
でも、勝った喜びと、流した涙は、みんな同じだった・・・。
きっとみんな同じなのね・・・。
同じように、みんな努力して、がんばってきたのね。
私は振り返って、弓かおりの方を見た。
彼女は号泣する巫女のコを慰めていた・・・。
あんなにプライドが高かったのに・・・。
あんなに負けず嫌いだったのに・・・。
負けたはずの彼女なのに、満足気な笑顔を浮かべていた。
ひょっとしたら、あのコはもうとっくに、こういう気持ちを知っていたのかもしれない・・・。
勝った、負けた、なんてことは本当はどうでもいいことなのかもしれない。
そのことを、あの「プライドの高いお嬢様」の笑顔が教えてくれているようだった。
また一歩先に行かれちゃってたみたいね?
なんか、悔しいなぁ・・・。
思えば・・・、「青春」って何なのだろう・・・?
こういう気持ちがその答えなのかもしれない。
私は涙を拭くと、それを確かめるため、「あのコ」の元へ握手を求めに歩いた。
完
今までの
コメント:
- 七回目の投稿です。
りおんさんのリクエストにお応えした作品です。
お題は六女の「触手使い」と「オールラウンダー」を使って、
「青春」か「授業の一こま」あるいは「恋愛」を書くように、とのことでしたが・・・。
すみません、「オールラウンダー」のコは書けませんでした・・・。 (マリクラ)
- せ、青春よね!!(ありきたり愛子っぽい挨拶) 「触手使い」...言い得て妙なりという感じのネーミングですね(笑)。原作では殆ど、というよりは全く触れられていなかった彼女の生い立ちなどを、ここまで膨らませることが出来るのがさすがです。弓かおりがこの霊的格闘戦で得た「仲間」意識を似てはいますが別の角度から「触手使い」の子に得させたあたりも良かったと思います。投稿お疲れ様でした♪ (kitchensink)
- まずは感謝を。ありがとうございました(平伏)。え〜それでは、内容のほうへ。今回の「触手使い」の子。マイナーキャラですが、彼女の優勝したときのガッツポーズがとてもかっこよかったもので…。何て言うんでしょう…「青春」ですよね。kitchensinkさんの仰るとおり、愛子が聞いたら喜びそうなテーマですね(笑)。私の彼女に対するイメージは少々異なるものですが、これまたkitchensinkさんの仰るように、彼女が「仲間」を得たことが、とても私の心に残りました。原作でもかなり彼女に関する情報は少ない中で、ここまで書いてくださったこと、またその内容が素晴らしいものであったことをお伝えして締めとさせていただきます。お疲れ様でした。 (りおん)
- 色々と創案作業に追われて、すっかりレスを付けるのを忘れておりました(汗)
申し訳有りません・・・。
kitchensinkさんへ:言い得て妙なり・・・、まさしくおっしゃる通りのネーミングですね(笑)でも、わかりやすいですよね?(笑)原作でほとんど語られていないものを創作するのが、実は苦手でして・・・(汗)りおんさんのイメージとも離れていたらしく、これまた反省点の多い作品になってしまいました。コメントありがとうございました♪
りおんさんへ:はい、またなにかありましたら、いつでもお申しつけください♪ (マリクラ)
- 非情な実戦の場に措いては恐らく否定されるであろう、純粋な“競技”としての試合に向かう思い。でもだからこそ、まだ学生の身である彼女達には、こんな祝福があっても良いんじゃないか。そう思います。
そしてそれは、勝者にも敗者にも関係なく…。
青春って、良いもんですね! (黒犬)
- 黒犬さんへ:いつもコメントありがとうございます♪
あんなひどい仕打ちをしておいて、なんとご寛大な・・・。
きっと、とある方が続きを・・・(謎) (マリクラ)
- う〜む、同盟関係を結んだ組がもう一つ…(爆)。
「弓かおりに対抗意識を燃やしている」「仲間とおキヌちゃんの服装が同じ」これは原作中で当然分かってくるのですが、峰さん(?)の人生を対抗意識と結びつけることは大きくパターン分けするとそれほど多くもない気がします。結局は、『暗いそれまでの気持ち』から『仲間と共に喜びを分かち合う』という展開のギャップの感じが良いということなんですが(汗)。言う事があるとすれば、友人がいなくて意地っ張りで気の強そうな人に行き成り「友達でしょ?」なんて言われたら言われた方は驚きで固まるか「え?」とか言って一歩引きそうな気も…(爆)。それ以前に言うのかも良く分かりませんが(おい)。
ご無礼を御許しを(平伏)。 (マサ)
- マサさんへ:コメントありがとうございます♪そうですねえ、よくよく考えてみれば、たしかに、驚くか一歩くらい引きそうですよね(汗)うっかりしてました(苦笑)
う〜ん、なかなか見落としが減ってくれません。まだまだ修行が足りないようですね(苦笑) (マリクラ)
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