学校へ行こう!(La Follia_9)
投稿者名:アシル
投稿日時:(03/ 1/11)
あれから数日後。
冥子はビルを壊したことが母親に知られてしまい、半ば強制的に事務所を閉めることになった。まだ家にも帰れないので、おキヌ、シロ、タマモらと共に令子のところで住み込みで働くことになった。彼女もそれなりに思うところがあったようで、今のところ暴走は自制している。
令子はもちろん、冥子が事務所に来ることを断固拒否したのだが、六道、美神両夫人がどうやら裏で手を組んでいたらしく、結局は折れるしかなかった。儲け話をフイにしたこともあって、しばらくは周囲(特に横島)に当たり散らしていたが、それも治まりつつある。
いつものように食事をたかりに事務所に来た横島に、彼女はふと思い出したように告げた。
「横島くん。あなた最近毎日ウチに来てるけど、学校は行ってんの?」
「あ」
……
「最近全然来ないと思ってたら、本当に忘れてたんですか……」
「流石横島さんじゃのー。ワシらとは桁が違うわ」
心底呆れた感じなピートと、呆れを通り越して尊敬すら抱くタイガーである。
当の横島は、ふてくされて机に伏していた。
「うるせーな。最近、いろいろ忙しかったんだよ……」
「仕事がどれだけ忙しかったって、出席日数はそんな言い訳聞いてくれないわよ? 分かってるの、横島君」
「いや。机にだって妖怪が宿るんだ。出席日数にだって弁解の余地は有るかも知れん」
「ないわよ」
冷たく突き放すのは机妖怪の愛子。当てつけられたのが不満なのか、少し頬を膨らませている。
「それより、こんなに休んでて横島君ちゃんと卒業できるんでしょうね?」
「分からん。家庭科とか芸術とか、単位数の少ない教科さえなんとか誤魔化せば、或いはなんとかなるかも知れないが……」
「それってもう絶望的なんじゃないの?」
横島は、立場上は未だ見習いでも現役のゴースト・スイーパーである。残りの日数にしたってすべて来られるわけではない。家計が苦しいから令子のところ以外のバイトもあるし、正直どう足掻いても今年の卒業はお見送りだった。
「まぁ、来年頑張れば良いじゃないですか。ね?」
「そうよ。なんなら、もう一度私も付き合ってあげるわよ」
「そんなことしたって来年卒業できるって保証はないだろ。それに愛子。そもそも学校の備品であるお前が卒業できるのか?」
「ええ。校長先生が卒業後の就職先も斡旋してくれるって」
「へぇ、良かったじゃないですか」
「めでたいのー」
素直に喜ぶピートとタイガー。彼等ももちろん、卒業後の分類は就職組である。ピートは横島と同じくGS免許を持っているし、タイガーも次の受験ではほぼ確実に受かるだろう。横島たちの代が激戦区だっただけで、タイガーの実力は充分一流のゴースト・スイーパーのレベルに達している。
横島だけはブツブツと、未だに出席日数を如何にして誤魔化すか、出来もしない策略を練っていた。
「おーい。横島、ちょっと来い」
「あ、はい。なんすか?」
担任教師の声にハッと我に返る。
「良いから来い。校長室だ」
「校長室?」
不審そうに立ち上がる横島に、周囲から憐憫の視線が寄せられる。
出席日数や成績の話ならば普通は職員室なのだが、クラスメイトは既に彼は留年だと決めつけているようだ。
「来年も頑張ってね」
「いいじゃねえか。お前大学行かないんだろ? 1年ぐらいどうってことないだろ」
「まだ留年って決まったわけじゃねえ!」
心ない野次に怒鳴り返しながら、横島は教室を後にした。
……
「横島君。私は長い話が嫌いだ。端的に言おう」
「はぁ」
両手を口元の前で組んだ校長は、眼鏡越しに上目遣いでこちらを見た。
中間管理職10年というその雰囲気に思わず気圧されて、思わずじわりと横島の額に汗が滲む。
「このままでは、まずキミは留年する。分かるな?」
「嫌だぁ! 留年何かしたらお袋に殺されるっ!!」
「黙って聞け。何も留年が嫌なのはキミだけではない。私達教職員だってキミみたいな駄目学生に何年も神聖なる学舎を汚されたくはないのだよ」
「な、何を……」
校長の意図が分からず狼狽える横島に、彼はニヤリと笑って見せた。
「取引だよ横島君。なんでもキミは、あの日本一のゴースト・スイーパーの助手であるそうではないか」
「また除霊させるつもりですか?」
「物分かりが良いのは美徳だな。キミにとっても悪い話じゃないだろう」
乗り気でない横島を見て、それに、と続ける。
「キミも聞いたことがあるだろう? トイレの花子さんという奴だ。彼女が出るのは、……女子トイレだそうだな」
「不肖、この横島! 全力を持って悪霊駆除に当たらせて頂きます!!」
瞬時に直立不動の体勢になる横島。
誘導されているとは分かっていても、つい反応してしまう自分が少しだけ哀しくなった。
今までの
コメント:
- 先生の誘導に気づいただけでも大した進歩ですね(笑)。嫌いな学校のことをキレイに忘れているあたりが何とも横島クン「らしい」です。そんな横島クンを留年決定と決め付けるクラスメートたちの様子も「らしい」感じでした。果てさて、トイレの花子さんは簡単に除霊できるのでしょうか?(メゾピアノみたく厄介なヤツかもしれませんね) そして横島クンは女子トイレに変態扱いされずに侵入することが出来るのでしょうか?(爆) 次回も楽しみにしております♪ (kitchensink)
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