ザ・グレート・展開予測ショー

魔女の過去\


投稿者名:NGK
投稿日時:(02/11/ 9)

黒い十字架―――魔女の十字架。
そう呼ばれている十字架を青い爪の魔女はゆっくりと見上げた。
その手には書物が握られている。
ブックカバーは、黒く変色した血で染められている。
装飾が禍々しくとてもこの世のものと思えないものである。
街中には青白い光が溢れかえっている。
「祭りが・・・始まる・・・・・・!!」
青い爪の魔女を禍々しい光が包んでいる。
そして、青い爪の魔女の姿がその場からきえた。



――――――”一刻前”――――――

バート・メルゲントハイムの町郊外の山:アルカオベルク
「・・・・・・」
闇の中から妖艶な美しき魔女―――青い爪の魔女が黒き十字架に降り立った。
「もうすぐ・・・もうすぐで・・・私の望む世の中になる」
地面に降り立ち、十字架を舐めるように手で撫でる。
「そこまでよ・・・青い爪の魔女」
十字架を囲むように存在する茂みから魔女協会から派遣された魔女が15、6人現れる。
「おや?何のよう?祭りを見学に来たの?」
青い爪の魔女は魔女達の中心に立つ女性に語りかけた。
「・・・・・・」
女性は何も答えない。
「・・・幻影か・・・」
青い爪の魔女はつまらなそうにあたりを見渡した。
どうせどこかに隠れており隙を突く作戦なのだろう。
そう思った次の瞬間だった――――――。


ヴゥン!
西条の霊剣が”魔鈴”の身体を切り―――”魔鈴”は消えた。
「ふふふふ・・・」
3人の”魔鈴”が西条を嘲笑した。
そして一瞬の後にまた4人になる。
「(・・・キリがないな)」
常に全力で切りかかる西条は、わずか5分で息切れを起こしていた。
西条の持つ霊剣は彼の筋力が扱うにはやや荷が重かった。
美智恵は修行の意味をこめて半年前に西条にこの霊剣を授けた。
その時から比べれば、確実に扱えているのだが・・・
・・・いかんせよ攻撃が当たらないのでは精神的な疲労と相まって大きく消耗する。
「・・・そろそろ・・・ね」
魔鈴は、ゆっくりと魔力を収束させていく。
「(・・・どいつだ・・・?どいつが本物だ・・・?)」
それを見極めない限り、敗北が待っている。
剣術の達人であれば”心眼”と呼ばれる心の目でもって相手を切ることも出来るだろう。
しかし西条のレベルは、そこまで達してはいない。
「(・・・考えろ・・・考えろ・・・)」
物の怪が真っ向から勝負しないのは接近戦を嫌ったからであろう。
しかし、4人の物の怪はどれも西条との距離が近い。
いくら4分の1とは言え、危険すぎではないか。
「(どこかに本物がいるはずだ)」
先程、魔鈴が入口で西条に気づく前に歩いていた付近の左右に二本の柱が建っている。
そして、何者かの気配が感じられた。
「(・・・問題は、どの柱か・・・ということだ)」
右か左かどちらか。
「(・・・よし!右だ!!!)」
幻影をつきぬけ西条は右の柱を真一文字に切る。
一瞬だけ、物の怪の姿が見え・・・そして掻き消えた。
「!?」「残念」
西条が柱を切り落としたことに少々驚いたものの魔鈴は余裕の表情を見せた。
西条が振り向くと魔鈴は裏口のすぐ側に立っていた。
「これで・・・御終い」
魔鈴は収束した魔力を西条に向けて――――――撃った。


ドォォォォォアァァァァァァァァン!!!!!!!!!
大爆発と共にアルカオベルク山は消滅した。
「・・・これで全て終わり―――か」
隊長格の魔女が呟いた。
いかなる精鋭の魔女でも青い爪の魔女の前ではまったく刺客として意味をなさない。
そこで魔女協会が執った作戦が山ごと青い爪の魔女を爆破するというものだった。
―――山は見る影もない。
「いかに青い爪の魔女と言えど防げぬものがあったな」
「た、隊長・・・!!」
部下の一人が叫んだ。
「・・・まさか・・・!」
「ふぅ・・・まさか、いくらなんでも爆弾を使うとは思わなかったわ・・・」
「・・・馬鹿な」
あれだけの大爆発で生きている―――というのも驚きなのだがさらに五体満足とは・・・
「さすがに、痛かったわ・・・少しダメージを受けすぎたし・・・」
青い爪の魔女はそう言い終わるとあたりの魔女たちの意識は身体とともに塵と化した。
「・・・少々予定が狂ったけど」
青い爪の魔女は呟くと十字架に印を描いた。



同時刻:警察署内
ドォォォォォアァァァァァァァァン!!!!!!!!!
「!?」「?!」
突如起こった振動に魔鈴は体勢を崩し在らぬ方向に魔法を撃ってしまう。
もっとも西条も体勢を崩している為、隙を突くことが出来ない。
「地震・・・?いや・・・なんだろう?」
魔鈴はそう言うと裏口から外に出て行った。
「ま、待て・・・」
西条もそれに続こうとしたが男二人に身体をつかまれる。
「「はやく!はやく逃げろ!!!」」「離せー!!」
そんな声がした。


「・・・たしかこの辺だと思うけど・・・」
魔鈴は町の郊外へと向かっていた。
「魔力が漏れている・・・」
その場所が郊外らしい、ということだ。
「山が・・・消えている・・・!?」
何日か前まで確かにあった山がなくなっていた。奇麗に・・・ではなく。
ビュン ビュン ビュン
魔鈴の横を幾多の青白い光が通り過ぎて行く。
しかし、そんなことよりも、もっと何か別の何かが・・・
魔力だろうか・・・それとも何か別の・・・・・・
「なんだろう・・・嫌な予感がする・・・」


「まぁ、写真を見せなかった私が悪いけど・・・」
「うぅぅ・・・だって、僕は知らなかったんですよぉ・・・」
走っている美智恵に対して同じく走っている西条は丁寧に頭を下げた。
器用なものである。
「それにしても・・・なにかしら・・・この嫌な感じは・・・」
「・・・例の亡霊事件でしょうか?」
西条は首をかしげた。
念のため言っておくが走ったままである。
・・・ほら、コケ・・・なかった。
つくづく器用な男である。
「うーん・・・なんというか・・・ただの勘なんだけど・・・」
美智恵は言葉を濁した。
「ただの勘だけど・・・なんです?」
「普通は第六感だとか霊能力者の勘とか言うものだけど・・・西条君は何も感じなかった?」
西条は困ったような顔をして、
「は、はい・・・」
とうつむいた。
「まぁ私も、気のせいかな?って思うぐらいだけだったから」
なにも二人は、闇雲に走っているわけではない。
署長から魔女狩りゆかりの場所を聞き、そこに走っているのだ。
・・・徒歩で。
「・・・協力してくれって頼むならもう少し融通きかせてもいいのに・・・」
美智恵は、そうぼやきつつも、むしろ徒歩で向かっているのが良いと思っているようだった。
「(とりあえず調査するだけだし・・・)」
このあたりの地図を頭に描いておいたほうが良かろう。
そう考えていた。
―――その時は。




――――――続く――――――

今までの コメント:
[ 前の展開予想へ ] [ 次の展開予想へ ] [ 戻る ]

管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa