ザ・グレート・展開予測ショー

彼女との関係・前編


投稿者名:稀有
投稿日時:(03/ 1/17)



 泣いて笑って、そして時に怒って。
 彼女は呆れるくらい、元気に成長していった。







  『彼女との関係・前編』







  −Good morning , my sweet darling ?−


「おはよーっす」

 いつもの通り、事務所のドアを元気良く開ける音がした。
 西暦も二十一世紀を迎えて、早数年。相も変らぬ、その風景である。

「おはようございます、横島さん」

 そう言って、パタパタとやってきたのは巫女服姿のおキヌ。
 数年前は女子高生(さらにその前は――これは長くなるので、割愛しておく)だった彼女も、今では立派なGSである。特に希少とされるネクロマンサーである彼女は、その真面目な性格も手伝って、かなりの実力を有するに至っていた。

「おはよう、おキヌちゃん」

 機嫌良さそうに――今日が給料日だからであろうか?――笑って挨拶を返す男。
 横島忠夫、という名を持つその男は、すでに二十台も半ばにさしかかっている年齢である。
 数年前までは煩悩全開男だったが、最近では妙に落ち着いており、上司である美神令子なんかには胡散臭い目で見られていたりする。

「あれ……美神さんは?」

 事務所にはおキヌしかいない。
 妙神山に修行へ行っている、シロとタマモは取りあえずとして、この事務所の持ち主である美神がいないことなど滅多にない。
 少しの外出ですら面倒くさがる(無論、仕事の時は別だが)彼女が外に出ていることは非常に珍しいことだ。

 考えられることといえば――母親の所か、厄介事を引き込んでくるか。

 横島がそこまで考えた、その時。
 バンッ! という音がしたかと思うと、小さい人影が扉を開けて事務所に飛び込んできた。

「おっ、にいちゃーん!!」

 猪突猛進。
 そんな言葉が似合うような勢いで、その小さな人影――少女――は横島に抱きついた。
 ぐりぐりと頭を擦りつけるように抱きつく姿は、愛らしい容貌と相成って、微笑ましい。

「っと……朝から元気だね、ひのめちゃん」

 ふらつきはしたものの、しっかりと少女――美神ひのめ、六歳――の身体を抱き止めて、笑いかける。
 もっとも、その笑顔は若干、苦笑めいていたが。

「うん! おはよう、お兄ちゃん」

 にへへー、と笑う少女は愛らしい。
 横島は、くしゃり、と頭を撫でてやり、椅子へと座らせた。

 ちょうどその時、開けっ放しのドアから事務所の主が姿を現した。

「ひのめーっ! あれほどドアは静かに開けなさい、って言ったでしょうがー!」

 ……どうやら、オカンムリのようである。
 ぶつぶつと「ドアが壊れたら、ママに請求しよう」とか、「幾らにしようかしら?」などと呟いているその姿はまさしく――守銭奴。
 横島も「まぁまぁ」などと言うこともできず(言った瞬間に殴り飛ばされるか、じゃあ、アンタが金払えと脅されるかのどちらかのため)、おキヌちゃんはすでにキッチンへと退散している。
 だが、彼女と二十歳違いである妹は気にも留めていない。
 ペロ、と可愛らしく舌を出して素直に謝る。

「ごめんなさい。お兄ちゃんに久しぶりに会えると思ったから……ちょっとはしゃいじゃった」

 その後、かしこまってペコリ、と頭を下げられたら美神の負けである。
 ふう、とため息を吐いて、マホガニーの一枚板でできたデスクに就いた。

 横島は、ひのめが怒られないことに安堵した。
 チラリとこちらを向いて、無邪気に笑うひのめに「よかったね」という視線を投げかける。

 だが、美神令子がやられっ放しで終わるはずもない。
 書類に目を通す前に、ひのめの方を向き、一言。

「ひのめ」

「なに、お姉ちゃん?」

「今日のオヤツは無しよ」

「えーっ!」

 子供相手までに、キッチリしている――いや、それはそれで子供に自覚を促しているのかもしれないが――流石は、美神令子である。





 まぁ、そんな感じで今日も彼女は『ここ』に刺激をトッピングしてくれるのだ。


 これは、そんな彼女と、彼女の大好きな青年が主役のお話。
 はてさて、紡ぎ出される物語は――
 少なくとも、小さな幸せの日々であることは間違いないだろう。



  −To be continued !−

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