ザ・グレート・展開予測ショー

日差し。(月夜裏側)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 5/ 3)

『ひのひかりが―似合うひと』
ゆっくりと―意識が浮上するのと同時に瞼の裏側を差すような光を感じる
―朝か。
そう考えながら横島は瞼を開けた。
目がまるで鉛かなにか仕込んだように重く、目を開けるということがひどく重労働のように感じる―昨日までのあの気だるい感覚は無い。
頭のほうもすっきりしている。
1週間ぶりの睡眠のおかげだろう。
部屋の中は既にかなり明るく空はもう真上に近い。
さんさんとふりそそぐ光が眩しい。
身体をおこそうとすると、ぎしぎしと全身の筋肉が軋んでいた。
どうやら肉体のほうも過重労働に悲鳴をあげていたらしい。
―するとぱさりとなにかが体の上から落ちた。
毛布である。
それが誰の手によってもたらせたものなのか―わかりすぎるくらいわかって―。
横島はそっとその毛布の端を握った。
その表情は―ひどく優しげで、いとおしげで―。
この男にしては、めったに見れることのない柔らかい表情。
次いでその表情は自嘲するかのようなものへと変わる。

駄目だ―と思う。
この気遣いはみんなに平等に与えられたものなのに誤解してしまいそうになる。
自分は―彼女に特別に思われているのではないだろうか?と
そんなことはありえないのに。
―第一こんな自分に―そんな感情などもたれるわけもない。
まだ、忘れきれないひとがいるというのに。
―いや、忘れる事はもう一生できないであろう。
それについては後悔などないし―もうこの感情は、自分の中の一部なのだ。
やっとそう思えるようになってきた。
眠れない夜を重ねて―眠ったとしても何度も何度も繰り返し同じ―『あの時』の夢にうなされ、涙を流し、―そんな時間を重ねてやっと。
区切りがついたと言うべきなんだろうか?
そして気付いた。
自分が誰を好きになっていたのか―。
思えば眠れないで仕事場にいったときに、そっと珈琲をいれてくれた。
夢見が悪い時には―大丈夫ですよっと言った。
何も聞かず―なんにも気付かない振りをして―仲間として、の境界線ぎりぎりで気遣ってくれた。
多分―訳知り顔で言われでもしたらきっともっと傷ついていただろう
こんな風に思うこともなかっただろう。
だけどおきぬは自分が―誰の手もかりたくないことをしって―そのぎりぎりのところにいつでもいてくれた。
『仲間』として。
―ずきんとしんぞうが痛んだ。
まるで、鋭い刃物で切りつけられたかのように。
仲間―それは、きっと自分とおきぬにとって最良の距離である。
だけど、もっと傍にきてほしいと思ってしまった。
傍にきて話して―その存在を確かめたいと―。
これはいままで誰にも感じたことの無い感情。
―そうしておきぬだけに感じるこころ。
でも、駄目だろうな―と思う。
彼女の態度は、信頼する仲間に対するものである。
それに、こんなこころに別のひとを残したままで、―そんな都合のいい事を言えるわけも無い。
新しい太陽のひかりを浴びることが似合うひとに、こんな曲がったこころは伝えきれない
きっと―彼女ならば、彼女だけにこころをむけれるひとを見つけられるのだから
―否。伝えてはいけない。

横島はそっとその毛布をつかみ頬にひきよせ声を震わせそして
全ての感情をこめて
「有難う」
とつぶやいた。

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