ザ・グレート・展開予測ショー

交差そのじゅーいち


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 8/20)

飛び出すと同時に、懐からくないを取り出す。
それは、使い古された、だが、念入りに手入れをしている事がわかる刃物。
ぐいっと車の窓枠に片手で掴まり、片手の力だけで身体を引き上げる。
それと、同時に目に入るシロとタマモ。
二人とも、難なく衝撃をこなしてる。
二人は、一定の方向からしか『衝撃』がこないと思っている。
いや、事実そうなのだ。
最初に、受けてからこれまでの時間、ずっと同じ方向からしかこない。
─もちろん、他の方向からくるかもしれない。と予測していることは当たり前だろう。
けれども、更に増えるとしたら?
衝撃が、他の方向からくるのではなく、同じ方向に、その上に増えるとしたら?
そして、藤吉郎はそれがわかっていたのだ。
それが、もうくるということも。
(車酔いでしゃべれなかっただけで)
なぜならば、見えるのだから。
その『裂け目』が。
「って、木下殿???」
唐突に、車の上に現れた人間に驚きシロ。
「なんでいるの?」
同じくタマモ。
ちなみに、ただ今時速100キロ以上である。
妖怪でもない普通の人間が、そんな車の上で立っていること事態おかしいのだ。(しかもこの車は、トラックでもなんでもない、ただのワゴンなのに)
藤吉郎は、それには答えず、肩で息をしたまま─
ばしいいいいいいいいっ
くないを振るった。
それはあまりにも見当違いの方向である。
「…何をしているでござるか?」
シロがこういいたくなるのも仕方ないだろう。
けれども、藤吉郎は何も言わず、ただ目だけをきょろきょろっと動かし、そしてまた、くないを振るう。
(─ここっとあとここ!!!)
何も無い空間を引き裂くように、振るう。
傍からみたら、滑稽としか言い様の無い光景だ。


無数の亀裂がこの空間には入っている。
それは、亀裂でありながら、なにかを通す道となっているのだ。
ならば、できるはずだと。
「自分」が振るうことで、その亀裂をふさぐ事が。


『流石だね』


また、声が聞こえた。
よく通る美しいとすらいえる声。

「なにがだっ!!!!」
我知らず、叫ぶ。

『純粋な、同胞ではないのにね』

悲しげな声。

『ひとりなら、逃げれたのに、なんで、守るのかな?』

そして嬉しげな声。

『それとも、待ってるのかな?』

何を─
と、問い掛ける前に、車が、がこんっと
音をたてて止まった。


つづく

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