ザ・グレート・展開予測ショー

静粛に!横島只今勉強中!


投稿者名:A.S
投稿日時:(02/ 7/ 4)

「いーかげんもっと真面目に勉強しろ!さもなきゃ給料さげるからね!!」
美神から横島に、とうとう最後通牒がつきつけられた。
 最近仕事でへまをする事が増えていた。除霊に失敗する、と言うわけではないのだが、無駄な出費を重ねてしまったり、必要以上に時間がかかってしまったりするのである。
 理由は分かっていた。横島が間の抜けたミスをするせいだ。お札や除霊用具の使い方に関してはもうかなり経験を積んでいたが、妖怪や幽霊そのものに関して、横島は未だに全く素人である。GSなら常識とされるような事さえ知らず、考えられないような失敗をしてしまうのだ。以前まだ使いっ走りだった頃にはかえって無知なことが幸いしていた事も多かったが、GSの免許を取って実力を身につけるにつれ、下手に能力がある分知識が無いせいで厄介な結果を招く事がふえていた。
「あんたみたいに文珠投げるか霊波刀で切りつけるかお札貼るかしか能がないんじゃ、いくらパワーアップしたところでGSとしては役に立たないのよ!真面目に勉強しろっ!」
要するに、勉強しろというのは、GSとしての知識を身につけろと言う意味なのである。

「勉強しろって言われてもな・・・。俺、活字苦手なんだよな−。」
 そう言いつつ、横島は事務所の一室を占領している美神の蔵書の前にたっていた。前の事務所がぶっ飛んだ時や、自宅が倒壊した時にかなり灰になったにもかかわらず、祖父母や母親から譲りうけたものを含めると美神の持っている専門書は相当な数にのぼった。
「自分で本買う金なんか無いし、図書館行くのも面倒だから美神さんの本借りようと思ったけど・・・改めて見ると凄まじいな・・・。でもこのままだとほんとに給料カットされるかも知れないし・・・高校受験の時を思い出して一発勉強すっか・・・。」
 横島は適当に棚から一冊取り出してみた。いかにも高そうな装丁である。こんなの汚したりしたらまた更に給料減らされるかもな、と思いつつページを開いてみると
「う・・・日本語じゃない・・・。」
明らかに洋書である。
「しかも英語でさえない・・・。英語だったとしてもあんまり読めんけど。」
別の棚からもう一冊とりだしてみる。
「文字は違うけどやっぱり外国語・・・?こんなの読めねーよ・・・。」
しばし横島が引きつった顔で立ち尽くしていると、突然後ろから声がかかった。
「これ、アラビア語ですね。」
おキヌである。学校から帰ってきたところらしく、六道女学院の制服姿で立っている。
「こっちはラテン語ですね。横島さん読めるんですか?」
「読めるわけ無いだろ・・・。おキヌちゃんは読めるの?」
「アラビア語とかラテン語はダメですけど・・・こっちなら最近だいぶ読める様になったんですよ。」
そういいながら、おキヌは鞄から本を一冊取り出してみせた。漢字だらけ・・・と言うよりは漢字しか書かれていない。あきらかに中国語である。
「獣あり。その状羊の如く 尾九つ、耳四つ、目は背にあり。名はハクイ。佩びれば畏じず・・・。」
「何?学校で習ってんの?」
「うちは授業に専門的な本を読むための特別語学っていうのがあって、ラテン語、ギリシャ古典、アラビア古典、サンスクリット語、ヘブライ語、中国古典、日本古典の中から2つ選ばないといけないんです。私は能力が東洋系だから中国古典と日本古典をやってるんですけど・・・結構面白いですよ。」
「おキヌちゃんの行ってるとこはエリート学校だもんな・・・ううっ・・・馬鹿は俺だけ?」
「そ、そんな・・・。横島さんも勉強すればいいじゃないですか・・・。」
「・・・いや、案外美神さんもあんまり読めなかったりして。実はかざってあるだけとか。そういや美神さんがここの本読んでるの見た事な・・・」
 バキッ!!
いつのまにか後ろに美神が怒り笑いで立っていた。
「あんたと同じにするんじゃない!ここにある本には一通り全部目を通してるわよ!」
美神は横島から本をひったくって棚にしまいながら言った。
「オカルトに関する本はちょっとしたニュアンスの違いなんかで意味が変わっちゃうことがあるから翻訳しにくいのよ。文字そのものが意味をもってる場合もあるしね。だからハイレベルな専門書は出来るだけ原語で読まなきゃいけないの。冥子だって古文漢文ラテン語ギリシャ語はちゃんと読むし、厄珍やエミなんかは商売柄古代文字とか辺境離島の原始的な言葉まである程度使えるのよ。」
「GSって学歴のいらない商売なんじゃ・・・。」
「学歴がいらない事と勉強しなくていい事とは別問題なの!ちゃんと大学で勉強してるGSもいるけど、たいていは独学なのよ」
「じゃあ、俺も言葉から勉強しなくちゃならないんで・・・?そんなことしとったら知識がつくまえに飢え死にしてまう・・・。」
「大丈夫!」
 美神が突然満面の笑顔になった。横島もおキヌも美神がこの顔をしたときはロクなことにならないのを知っている。とっさに横島はあとずさろうとしたが、すでにしっかり腕をつかまれていた。
「あんた、このまま馬鹿のまんまじゃ一生うだつが上がらないわよ?一発どーんと頭よくなってみない?」
危険な状況に陥りつつある事を察知して横島はもう泣き声である。
「どーんとって、どーゆーどーんとなんですかあっ!?」
「こーゆーどーんとよ!」
美神が言うと同時にDrカオスと厄珍が入ってきた。後ろにはマリアも一緒である。
「横島クンの了解が得られたわよ!どうぞ連れてって頂戴!」
「いやー、ありがたいあるなー。ボーズ程の馬鹿なら実験結果もはっきり出るある。」
「これでやっとワシのカオス式知識記憶注入装置も日の目を見る事が出来るわい。」
二人とも上機嫌である。
「俺はなんにも了解なんかしてへんぞー!!」
「あんたウチの見習丁稚でしょ?丁稚をどう使うかは主人に権限があるのよ。ましてやあんたの馬鹿を部分的に直してやろうって言ってんだから、ありがたいと感謝して実験台になってらっしゃい!!」
「カオスと厄珍の共同制作の実験台になるんなんか自殺行為やー!!まだ死にたないー!!」
横島は美神の手を振り解いて逃げようとしたが、その時にはもうすでに片方の腕をマリアにガッシリ捕まれてしまっていた。
「ちょ、ちょっと美神さーん!!」
 何とかとりなそうとするおキヌの前から、なきわめく横島はあっという間に連れ去られてしまった。
「前のテレサの事もあるし、いくらなんでもあんまりなん・・・。」
「心配無いって。今度は危ないもの造ってるんじゃないんだし。最近あいつのおかげで稼ぎがけっこう目減りしてるからその分身体で稼いでもらわないとね。」
「い、いくらもらってるんです・・・?」
「実験がうまくいって市販できる様になったら利益を山分けする事になってんのよ。そうなりゃ横島クンも頭よくなって両得でしょ?もし失敗してもウチの損失は横島クンだけだしね。ま、あいつがあれより馬鹿になるとは考えにくいから、大丈夫でしょ。」
ほほほと笑いながら事務室に戻る美神を、おキヌは引きつった顔で見送りながら思うのだった。
 こ、この人って…。

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