ザ・グレート・展開予測ショー

ルシオラの命日後編『花』


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 8/19)

タマモと、シロは愕然とした。
ちょっとした好奇心で、横島の後をつけただけなのだ。
すると、泣いていたのだ。
横島は、ひとりで。
人が、こんな風になくのかと思わせるほど、悲しげに。
顔を覆い、肩を震わせ、膝をつき、声を殺し、だけど抑えきれない嗚咽を漏らし
かすかに聞こえる声は、意味をなさない。
不謹慎かもしれないが、落ちていく太陽と、車の洪水を背に泣く姿はとても綺麗だ。
いつも笑っている顔(もしくは怒っている顔)しか知らない二人は、想像すらしなかった姿である。
「…せんせ…」
シロは、そんな風な横島をみていたくなくて、横島を呼ぶ。
こっそりついて来ているのに、見つかったらいけないというのに。
そんなことは知っているのに、それでも名前を呼ぶ。
ただ、そんな風に泣いて欲しくなくて。
その言葉はひどく力ないものだ。
いつものシロの、さわがしい、もとい元気な声とはかけ離れた、声で呼ぶ。
はっとタマモは、とがめるようにシロを見るが、それでも、もう仕方のないことだ。
「─っ」
はっと顔を上げ横島。
顔は涙で濡れており、目ははれてる、その上洟まですすってる
はっきし言って、かなり情けない顔だ。
「ちわ」
─と、片手を上げタマモ。
どうにもこうにも、気まずい。
「………せんせー」
だらだらと一緒に泣きながら、シロ。
「………………………見てた…のか?」
見てたに決まってるが、そんなことを言う。
二人にしても見てないと、言いたいところだが、そんな事間違っても在り無いことはわかるので─こくんっと頷いた。

しばらくお待ちください〜(横島がシロとタマモが来たということを飲み込むまで)

そうして十分後
さらに、横島の顔が情けなくなる。
「あああああああっ」
頭を抱え込み、横島。
恥ずかしいらしい。
そりゃそうだろう、男が女に涙を見せるなんぞ恥ずかしいにきまってる。
だが、女の人にそんな繊細(?)な男心は分からない。(特にこの二人には)
シロは、頭を抱え込んでいる横島に近づき、同じように、屈む。
ごしごしと服の袖で、横島の顔を拭く。
自分も、泣いているのに。
「泣かないで下さいっでござる」
そんなことを言う。
懸命に言い募るその姿に、胸が温かくなるのを感じる。
「─そんなに、恥ずかしがることないのに、綺麗だったわよ」
そして少し冷たい、冷静とすらいえる声音でタマモ。
そこに嘘は感じない。
「綺麗?」
自分とは最も縁遠い言葉を聞き首を傾げる横島。
「うん─ホントの気持ちを出してる人は、綺麗」
ひゅっとその言葉に、息を呑む。
「本当の、気持ちなんでしょ?」
「ああ」
ゆっくりと頷く。
「誰より大切な、女の特別な日なんだ」
自分の知るたった一つの彼女の日。
それは、命日というものだけど。
「なら、お祝いしなきゃでござるよ?」
涙で跡のあるまま、シロ。
特別な、日ならば喜ばないと。

横島は、何故か、その言葉に頷いた。
ひどく自然に。

文珠へ念を込める。
込めるべきものは、『花』
ぱあっと閃光が走った瞬間、


花が降って来た。
まるで雪のようにひらひらと
無数の色とりどりの花が、ゆっくりと降ってくる。
ひどく幻想的で、美しい光景。

「綺麗でござるなあ…」
「…うん」

綺麗なもんだなと横島は、いささか苦笑気味に、その光景を見る。
こんな光景も、彼女と見れればよかったな、と思う。
もっと、もっと─いっしょにいたかった。
それでも、いっしょにいたいとは思うけれども、
それは激しくて、息も出来ないくらい強い感情だけども
間に合ったのだ。
自分は、
─出会えたのだ。

「ほんとう」の気持ちで向き合えたのだ。



「さてと、帰るか」
気持ちの整理はまだ、ぜんぜんつかない。
それでも、いいと思える。
彼女への感情を簡単に整理しようとは思わない。
いつか、遠い未来にできればいいのだ、きっと。

「そーね、こんなとこずっと居ても、寒いだけだし」
ひょいっと肩をすくめタマモ。
確かに、高度数百メートルのタワーの外である。
一晩中問答無用で、冷たい風に吹かれるのは遠慮したい。
「帰るでござるっ」
その言葉に、寒さを自覚し、大急ぎで言うシロ。

「んじゃかえるぞー」
「はいっせんせー」
「はいはい」

そして三人は、其処をあとにした。

「またくるな、ルシオラ」
帰り際、もう、呼ぶことのでき無くなった人の名前を呟き、そして踵を返した


おわり

おまけ
「うわっそーいや俺文珠つかっちまったー」
「ええっ!!」
「どーやって降りるんでござるかっ?」
「私、シロくらいしか抱えきれないわよっ」
「なにー!!!!!」

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