July Morning 〜七月の朝〜
投稿者名:ヨハン・リーヴァ
投稿日時:(02/ 7/11)
「じゃ、横島さん呼んでくるっ!」
元気に部屋を飛び出していく小鳩を、母と貧乏神が微笑みながら見送る。ちゃぶ台の上には四人分の朝ごはん。
「横島さ〜ん、ご飯できましたよ!」
ノックする手が少し震えた。もう何度も起こしにきているのに、未だに緊張してしまう。
「ちょっと待って〜」
中からした何とも頼りなく、しかし安らげる声。
少しして戸が開き、夏服の制服を着た横島が出てきた。
「毎朝毎朝ごめんね。大変だろ?」
「いいえ、大丈夫ですよ。一人分増えるだけですし・・・さあさあ、行きましょ!」
小鳩の部屋に行くと、二人はちゃぶ台の前に座った。もちろん母と貧乏神も一緒である。
「いただきまーす!」
好きな人と「いただきます」がいえる幸せ。
「あの・・・横島さん、ちょっと味噌汁の味付け変えたんですけど、どうですか?」
「うん、とっても美味しいよ」
「そうですか?良かった〜」
「やっぱり小鳩ちゃんは料理上手だよな〜。こんな朝ごはん食べられて幸せだよ」
「え!?そ、そんな・・・」
小鳩の顔が赤くなった。
「ほんと美味しいよ。この漬物もお魚も」
「良かったなあ小鳩。朝五時に起きて作った甲斐があったやないか」
「ちょ、ちょっと貧ちゃん!?」
貧乏神の横槍で赤い小鳩の顔がまた赤くなる。
「そ、そんな事より横島さん!!出席日数は大丈夫ですか!?」
「うん、おかげさまで一学期はどうにかなりそう。ったくあのハゲ教頭、『朝八時までに学校に着いて掃除しないと出席は認めん』なんていいやがって。小鳩ちゃんが朝起こしてくれなかったら今頃どうなっていたか・・・」
「でも、そのおかげで・・・」
・・・こうして横島さんと朝ごはんが食べられる。
「そのおかげで、何?」
「い、いえ何でもないです!ご馳走様、洗い物してきます!」
洗い場に行こうとした小鳩の前に意味深な笑顔を浮かべた貧乏神が立ちふさがった。
「洗い物はワイとお母はんに任しとけ。お前は他に用事があるやろ?」
そういうと貧乏神は不器用にウインクした。
「最近小鳩ちゃんのごはん食べてるからなのか分からないけど、やたら調子いいんだよね」
「そうですか!?」
二人は並んで学校に向かっていた。
「うん、七月入ってから急に暑くなっただろ?それでさあ、うちの事務所の皆も結構夏バテになってるんだけど、俺とシロだけ妙に元気なんだよ」
夏バテでへろへろの美神さんやおキヌちゃんと必要以上に元気なシロを想像し、思わず小鳩は笑ってしまった。
「あ〜あ、どうせなら毎日作ってくんないかなあ」
「え、それって・・・」
「うん?」
「いえ、何でもないです!」
こーゆーときは鈍い横島は、自分の言葉がどのような意味を持っていたかよくわかっていないらしい。
「あ、いけね、もうこんな時間だ!ま、間に合うかな!?」
腕時計に目をやった横島の顔色が変わった。
「ほんとだ!横島さん、走りましょう!」
「お、おう!」
二人は駆け出した。
平和な平和な七月の朝。むくむくと張り出した入道雲が、本格的な夏の始まりを告げている。
今までの
コメント:
- kortさんの「マイ スウィート ホーム」に感動し、僕もあんな作品が書きたい!と思い書きました。その結果は・・・似ても似つかん物になってしまいました(爆)。とほほ・・・。 (ヨハン・リーヴァ)
- おお、正統派三角関係ですな。いや、美神もまだ予断を許さないか……楽しみ。 (Iholi)
- はぁ〜〜僕も小鳩ちゃんの朝飯を毎日食べたい。と思わせてしまうような、とてもさわやかな作品だと思いました。それにしても横島は天然すけこましですな。 (アフロマシーン)
- 日常ってス・テ・キ♪(挨拶) この何気ない日常の描写からほんわりと温かみが感じられるところがいいですね。いつまでたっても鈍感な横島クン、明るく健気な小鳩ちゃんがそれぞれに「らしい」です。貧ちゃんも福の神になったせいか、小鳩ちゃんも結構余裕が出てきたようですね;少なくとも「ひまわりさんに笑われちゃう!!」と言っている頃よりは(笑)。可愛い小鳩ちゃんに一票!!(爆) (kitchensink)
- コメント返し行きます!
Iholiさんへ
大先輩のあなたにコメントが頂けるとは!恐縮です(平伏)
これからもよろしくお願いします!
アフロマシーンさんへ
>とてもさわやかな作品だと思いました。
ありがとうございます!頑張った甲斐があったなあ(泣)
実は短い割にやたらと悩まされまして・・・。まだまだ未熟ですが、これからもよろしくお願いします!
kitchensinkさんへ
>小鳩ちゃんも余裕が出てきたようですね。
小鳩バーガーがありますからね(笑)暮し向きもだいぶ楽になったのではないかと(笑) (ヨハン・リーヴァ)
- 清々しい空気を感じさせる、爽やかな良いお話でした。文句無しの良作だと思います。 (ぱっとん)
- 小鳩ちゃんの見つけた小さな幸せに、読んだこちらにまで幸せを分けて貰った気分です♪
とっても素敵なお話でしたぁ♪ (猫姫)
- いいお話です…
小鳩ちゃんのがんばりや気持ちがうまく書かれていたと思います。 (3A)
- ぱっとんさんへ
コメントありがとうございました。これからも読んで頂けたら嬉しいです!
猫姫さんへ
小鳩ちゃんはすごく苦労してきたので、幸せになって欲しいんです。健気な子ですもん♪
3Aさんへ
ありがとうございます!初めは小鳩の視点で書こうと思ったのですが、どうしてもできずにこうなりました(爆) (ヨハン・リーヴァ)
- コメントが遅れて申し訳ありません。え〜とですね、小鳩ちゃんが主役の話ってとても良いです。私の場合、作品に対して悩まされる事が多すぎてなかなか筆が進まないのできっと私ってヨハンさんよりも未熟ですよ。うん。(自分で納得) (マサ)
- え、えーとえーとえーとっ、な、なんだか照れますね…恐れ多いというか。
すごく爽やかで、読後感のいい話です!小鳩ちゃんの描写が本当にいいですよね。 (kort)
- 良く考えてみると、毎日欠かさず食事を作って貰えるって事は、幸せな事なんですね。
俺もこれからは、もっと感謝の心を持って頂く事にします。 (黒犬)
- マサさんへ
>私の場合、作品に対して悩まされる事が多すぎてなかなか筆が進まない
うんうん、やっぱりそうですよね!煮詰まるのが自分だけじゃなくてほっとしました(笑)
kortさんへ
>な、なんだか照れますね…恐れ多いというか。
何をおっしゃいますやら(笑)あなたは僕の師匠です(笑)
>黒犬さんへ
そうですよね〜。僕は自宅から大学に通っているので毎日母に食事を作ってもらってるのですが、一人暮らししている連中を見ているとやっぱりこれってありがたいよな〜と思ったりしますし。 (ヨハン・リーヴァ)
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