ちから。
投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 6/21)
この身にある―こころとちから
新月の夜
月によってもたらせる光はなく部屋のなかは闇であふれている。
空にある無数の星が空を彩っているが―それでも光は、中まではとどかない。
雪之丞は古びたベットに腰をかけ―じっと手をみていた。
そしてぐっと手を握り締めそして目を閉じる
ゆらりと、陽炎のようなもやがたった瞬間ただのなんの変哲も無い手にまるで甲冑のようなものが手のひらを覆っていた。
―それをみつめながら想う
人は、どんな風に力をほしいと願うのだろうか?
と。
たとえば―
何か大切なものを守るために力が欲しいと
生きるためのちからをほしい―と。
奪うために―ちからをほしいと?
強くなりたいというがためにちからがほしいと
―自分はそのどれにも当てはまらなかった。
大切なものは、失い、守るべきものをもってなかった。
第一護るという概念はその時もってなかったのだから
生きるために―そんなことはちからを欲しいと想ったときには考えもつかなかった。
何を奪いたいとも想わなかった。
ただ失ったものの大きさ自覚するので精一杯だったのだから。
強くなりたい―そんなことはどうでもよかった。
ただ、奪われたくなかったのだ。
何よりも大切な―母親を。
だけど、自分に力がないために奪われた。
永久に、奪い返すことなどできない。
生きることも死ぬ事も大切だといわれることも、ちからすらどうでもよかった。
ただ傍にいてほしかったのだ。
―たったひとりのひとに―。
だが、もうそのひとはいない。
喉がかれるほど名前を呼び、何度も何度も拳を打ちつけ、涙を流し―叫び、そして思い知った事実。
ちからがないと全てを『奪われる』ということ。
初めて―その時初めてちからがほしいと想った―。
奪うでもない、守るでもない―いつかなにか『大切』なものが出来た時に『奪われない』ちからが欲しいと―
―そして今
自分はここでこうしてちからを得ている。
それは、決して綺麗だといえるたぐいのものではない。
だけども―地べたにはいつくばってのたうちまわり死に物ぐるいで―力を得たのだ。
もう両手は汚れているし―触るのはまだ恐ろしい
それでも
今度こそは、奪われないだろうか?と想う。
奪われないだけの、力はあるだろうか?と。
雪之丞は、くっと口元を笑みの形につくり―そしていくぶん自嘲気味の声音で
「ま、でなきゃ救われねーよ」
とつぶやいた。
おわり
今までの
コメント:
- 両手にコメントくださった方と賛成票くださったみなさま―心からのお礼のかわりにおくらせていただきます♪だってだってすっごく嬉しかったんですもん(スランプ中やし)
いらないとは想いますけどもらってくださいね(強制 (hazuki)
- ↑ありがたく頂戴致しまするっ!(平伏)。雪の丞の中で只の飽くなき「力」の追求が何時しか何かを守るための「力」の追求に発展したのですね。「何も守れなかった」とネガティヴになるのではなく、そこから新たに守るものを見つけようとする姿勢が強い雪の丞らしいです。もう「マザコン」と簡単に呼ぶことは出来ないですね(笑)。hazukiさんならではの作品でした;面白かったです♪ (kitchensink)
- う〜ん、スランプ気味だと仰りながらこれだけの表現力…(ずっと同じ子と言ってるかも)。なんだか、雪之丞が力を欲しがっていた理由が分かった気がするお話でした。私も、ありがたく頂戴いたす次第でございまする(誰?)。 (マサ)
- 弓はきっとこういう雪之丞を知っているから彼の前で気丈に振舞っている・・・と妄想してみたり。
雪之丞に無用に心配をかけたくないから・・・なんてね。 (NGK)
- 『いらないとは想いますけどもらってくださいね(強制』
………えッッ!!?(喜)くれるんですか!!?もらっていいんですかッッ!!?
(と言いながらhazukiさんを抱きかかえる←違)
…うわあああいッッ!!もらっちゃったああああ!!!(抱きかかえたまま逃亡←いっぺん死んでこい(笑)
というか今回もまた綺麗な作品ですね!!これでスランプなんですかと疑問が沸く次第であります!!(笑)
雪之丞の心意気に賛成票です!! (みっちー)
- これまで只ひたすらに力を求めてきた雪之丞ですが、それでも自分の力に疑念を抱いてしまうという事。そして、結局は信じるしか無いのだと納得する事。いずれも納得させられるところでした。
この作品、みんなで山分けしていただくのなら、私は『ま、でなきゃ救われねーよ』が欲しいなぁ(爆) (斑駒)
- しまった、一番ほしいと思ったところがもう斑駒さんの手に…!(笑)
前回、そして今回と、雪之丞というキャラクターの核、というか、本当、というか、そんなものを見せてもらった気がします。 (kort)
- ↑このお話で唯一のセリフは、ショートケーキの上に載ったイチゴのようなものですからね。
当然早い者勝ち……もとい、みんなの目と心を潤してくれるアクセントとして平等に享受するべきでしょう。
ってゆーか、山分けのためにバラバラにしちゃったらお話じゃなくなっちゃいますし。
……私もたいがい困った子ですね(笑) (斑駒)
- たとえ泥に塗れていようとも。
たとえその両手が血に染まっていたとしても。
「奪われたくない」と思えるだけのものを、その両腕に抱く事の出来た彼は、幸せな人間だと思います。――俺的に。 (黒犬@共感)
- 霊の存在する世界に積極的に関わっている彼らは、
あるていど現実離れした『ちから』を必要としているのですね。
ちからを持ったからこの世界に入らざるをえなかった者たち。
世界に入るためにちからを欲した者たち。
どちらが幸せなのでしょうかね?
答えがないとわかった時点で彼の復讐は終わったのではないのでしょうか。
いいなぁ〜〜。ゆっきーがバカしてない話って、ウン。 (魚高)
- すごいというか…とてもすばらしくてコメントが浮かびません。
とてもいい話でした。 (3A)
[ 前の展開予想へ ] [ 次の展開予想へ ]
[ 戻る ]
管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa