ザ・グレート・展開予測ショー

UNOPENED 〜最終話〜


投稿者名:ヨハン・リーヴァ
投稿日時:(02/ 7/ 8)

当たりだった。夢にまで見たおキヌちゃんが、目の前で巫女さん姿で座っている。
(ど、どどどどどどうしよう!?)
聡の頭は完全に真っ白になってしまった。実は、もし出会ったらどういう風に話を持っていくか20通りほどシュミレーションしていたのだが、ただの一つも思い出せない。
「『ようこそ、おキヌの水晶占いへ・・・って、あれ?」
向こうもこっちを覚えているらしい。
「確かいつもバスに乗っている・・・?」
(ちょっと、氷室さん!?段取りが違いますわよ!?)
(練習しただろ、セリフセリフ!)
両側からひそひそ声が聞こえてきた。どうやら別の占いの担当者が言ったらしい。
「はっ!?そうだったわ。・・・えーと、『ようこそおキヌの水晶占いへ。さあ、そちらの椅子にお座り下さい』」
「え!?あ、はい」
聡はひとまずそこにあった椅子に座った。
「んーと、『まずはあなたのお名前を占って差し上げましょう』」
そういうとおキヌは水晶に手をかざした。
「『見えてきました・・・あなたのお名前は・・・って、あれ?」
水晶がいきなり消火器のような煙を噴き出した。
「え!?え!?どうしよう!?」
慌てるおキヌと呆気にとられている聡の前で、水晶が爆発した。
「きゃー!?」
「うわー!?」
物凄い爆音がし、教室の外でぼんやりしていた筑紫は驚いて中に飛び込んだ。
「な、なんじゃこりゃ!?」
教室の中はさながら台風が直撃した後の民家のようだった。張り巡らされていた暗幕は至る所ではがれ、窓ガラスは残らず砕け散り、机は廃墟の瓦礫よろしく散乱し積み重なっていた。聡はと言えば、片方が外れて斜めになった黒板にもたれるようにして倒れている。どうやら気絶しているようだ。
「氷室さん!?あなた一体なにをなさったの!?」
怒鳴り声とともに、机の山から一人の女の子が顔を出した。頭巾をかぶり、大きな数珠のような物を首から下げるという変わった格好をしているが、大変な美人である。
「すみません弓さん、ちょっと霊力をこめすぎたみたいで」
少し離れた所からおキヌちゃんが顔を出した。すまなさそうな顔をしてうつむいている。
「すみませんじゃすみませんわよ!?せっかく準備したのが台無しではありませんか!!」
「本当に、ごめんなさい・・・」
「まあ、いいじゃねえか。誰にだって失敗はあるさ」
今度は奥の方から声がした。顔を出したのは鮮やかな金髪のいかにも不良な女の子である。胸にさらしを巻き特攻服みたいな服を着ていて、町で見かけたらまず目をそらしてしまうような凄みを発散している。
「一文字さんはお黙りになって!!そもそもその格好は何ですの!?ほかの学校に殴り込みに行くわけではありませんのよ!?」
「あああ、弓さん落ち着いてください・・・」
「おめーが一番得意な霊衣でやれっていったからしてるんだよ。それにおめーだって比叡山の僧兵みたいな格好してるじゃねえか」
「なっ!?これは闘龍寺に代々伝わる由緒正しき霊衣ですのよ!?街のチンピラの服と一緒にして頂きたくないですわね!!」
「はあ?チンピラとはどういう了見だよ!?」
「あうあう、一文字さぁん・・・」
「チンピラにチンピラといって何が悪いのですか?まったく、あなたはサイコロ占いより賭場で壺を振ってるほうがお似合いですわね」
「あぁ?やる気かコラ?」
「二人ともやめて下さいぃ〜・・・」
二人の喧嘩が白熱してきた所で聡が目を覚ました。
「うーん、あいてて」
「大丈夫ですか!?」
「おお、生きとったか」
喧嘩の板挟みになっておろおろしていたおキヌと、どっちが可愛いか品定めしていた筑紫が聡に駆け寄った。
「怪我はありませんか?」
おキヌが聡の横に座って聞いた。
「え!?あいや別に全然平気ですよ!」
「そう、よかった・・・あ!血が出てる」
「えっ?」
見てみると、聡の手から血が出ている。どこかですりむいたらしい。
「大丈夫ですよ、これぐらい!」
「駄目ですよ、きちんと治療しないと。今ヒーリングしてあげますからね」
そういうと、おキヌは聡の手を取った。
「わわっ!?」
「大丈夫、痛くないですから・・・」
傷口におキヌが手を当てた途端、何か暖かいものが聡に流れ込んできた。
「・・・はい、もう治りましたよ」
驚いて聡が手を見ると、血は止まり傷口はほとんどふさがっている。
「へえ〜、メッチャ凄いなあ!本物のヒーリングなんか初めて見た!」
筑紫はヒーリングに対してやたらと感心しているが、聡にとってそれ自体はたいしたことではなかった。
(手・・・手を握られた・・・あ、暖かくて柔らかくて・・・あああああ)
「じゃあ、お片付けしないといけないので・・・」
最早飛んでしまっている聡に声をかけ、おキヌは立ち上がった。そして彼女が向こうに行ったのを見計らって、筑紫が聡の隣に座ってきた。
「おい、狙いの子は今の子か?」
「うん、そう・・・」
「そうやろなー、ワシもそうとちゃうかと思ってたんや!他の二人もべっぴんやけどどうもきつくてイカン」
「そうだな・・・」
「おーい、聞いてるかー、・・・アカン、手え握られたショックで放心しとる」
その時、頭にバンダナを巻いた一人の男が入ってきた。
「しっつれいしまーす。おキヌちゃんいる?・・・って、何だこの部屋は?」
荒れた教室に驚いているらしい男におキヌちゃんが駆け寄った。
「横島さん!!遅いじゃないですか〜」
(え、あれ?)
聡に話す時と雰囲気が全く違う。
「ずっと待ってたんですよ〜?」
(ず、ずっと待ってた?)
聡の頭がだんだん混乱してくる。
「ごめんごめん。学校に入った途端手当たり次第にナンパしまくって遅れたわけじゃ全然ないよ?」
「・・・横島さん!?」
「はっ、しまったつい本当のことを・・・しかたないんやあ〜!初めはちゃんと来るつもりやったんやあ〜!この女子高という場所が俺の理性をー!」
男は壁に連続で頭突きをした。
「もう、仕方ないなあ・・・ま、ちゃんと来てくれたから許してあ・げ・る」
(ゆ、許してあ・げ・る!!??)
「ところで、この部屋どうしたの?なんか随分荒れてるけど・・・」
「あ・・・これはその・・・」
「わかった。おキヌちゃんがなんか失敗したんだろ?」
「・・・そうなんです。うっかりしちゃって・・・」
「うーん・・・ま、気にしないでよ。別にいつでも占ってもらえるし」
(い、いつでも占ってもらえる!!!???)
「相変わらず仲がいいですわね〜」
「全くだなあ」
「あ、あのう・・・」
筑紫は見るに見かねて、いつのまにか喧嘩をやめていた二人に聞いた。
「あの二人は・・・その、つきあってるんでっか?」
「うーん、どうでしょう?」
「友達以上恋人未満ってとこじゃねえの?」
「いえ、もう少し近いのではありませんか?特に氷室さんはかなり入れ込んでいらっしゃるようですし・・・。それはそうと、D組の松田さんが、先週の日曜あなたとタイガーさんが商店街で買い物をしていたのを見たとおっしゃていたのですが、本当なんですの?」
「へ!?さ、さあどうだろうねえ!?そういうお前こそおととい雪之丞とマックで飯食ってたそうじゃねえか」
「な、なにを根拠にそのような事をおっしゃるのかしら!?」
「友達以上恋人未満・・・よりも近くて・・・しかもあの子のほうが入れ込んでる・・・こりゃマズイな・・・」
筑紫はおそるおそる横を見た。しかしそこに聡はいなかった。そこにいたのは虚ろな目をした抜け殻だった。



夕暮れの道を聡は独りとぼとぼと歩いていた。あの後無理に気を遣っているのがみえみえの筑紫に連れられ、あちこち学園祭を回ったのだが何がどうだったか全く覚えていない。
筑紫の気遣いは嬉しかったが、それ以上にショックが大きかった。
(そうだよなあ・・・あんなに可愛いんだから彼氏ぐらいいるよなあ・・・)
正確には彼氏ではないらしいが、そういっても差し障りがないぐらい二人の仲は良かった。
いつのまにか聡は川のほとりに来ていた。何をするでもなしに土手に腰を下ろす。
舗装された河原でジョギングしているお爺さんや犬を散歩させている小学生を眺めながら、聡は懐から便箋を取り出した。切ない思いが一杯に詰まった手紙。そして、遂に開けられる事のなかった手紙。
しばらく眺めてから、聡は決心したように便箋を二つに破った。さらに半分に破り、ばらばらの紙切れになるまで破った。
急に風が吹き、聡の手からばらばらの手紙を奪った。
飛び散っていく手紙を見ている聡の頬を、涙が伝った。


                                     
                                 



今までの コメント:
[ 前の展開予想へ ] [ 次の展開予想へ ] [ 戻る ]

管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa