ザ・グレート・展開予測ショー

静粛に!横島只今勉強中!その3


投稿者名:A.SE
投稿日時:(02/ 7/ 5)

「春…人生の春…テレビ…人類の英雄…モテモテ…。」
横島は緩みきったにやけ顔でぶつぶつつぶやいていた。目の焦点があっていない。度を越した期待感で思考が麻痺してトリップ状態に陥っている。はやい話がイッちゃってるのである。
「儲かるある、儲かるあるぞー!!明日には知り合いの特許事務所へ行って…日本以外にアメリカやEUの特許も必要あるな…。中国や東南アジア市場も見逃せんある。ビル・ゲイツなんかメじゃ無いある。世界の厄珍堂になるあるぞー!!」
「これでノーベル賞は間違い無いな…。ワシより全然たいしたことないやつが次々受賞しとったが、これでもらうべき者がもらう事になるわけじゃ…。賞金と儲けが入ったら自分で研究所をぶち上げよう。名前は『カオス万能魔法科学研究所』…。世界中の大学から講演依頼が殺到するじゃろうな。栄光じゃ…待ちに待った栄光の時代がやってくるんじゃ…!!」
 あとの二人もそれぞれ勝手に皮算用的夢想にひたっている。
 一人冷静なおキヌは、声のかけ様も無いまま何かの中毒患者のような3人を眺めているほかなかった。こうやって大喜びしてる時に限っていつもロクなことにならないのに…。
 ふとみると、床の上にピンク色の花びらが何枚か落ちていた。さっきまで無かったのに、お花なんて飾ったかしら、と思いながら、おキヌはそれを拾い上げてみた。するとその花びらは、おキヌの手の中で綿菓子か何かの様に縮んでゆき、最期には跡形もなく消えてしまったのである。
「まさか…これってもしかして…。」
 おキヌは反射的に横島のほうを見た。
 あいかわらず心ここに無い横島の頭のまわりに、何か靄のようなものが立ちこめている。靄は横島の頭頂あたりで渦を巻き、やがて急に収束してかすかに光を放ったあと、ピンク色の花びらとなって床へ舞い降りた。
「は…花びらのエクトプラズム…!?ちょっと、厄珍さんっ!」
「んー、なにあるかー?ワタシこれからの経営戦略練るのに忙しいあるよー。」
 なお注意が余所へ向いている厄珍の目の前に、おキヌは拾った花びらを突きつけた。
「これッ見てください!」
「んー…ありゃ、こりゃ珍しいもんあるな。器用なもんある。どうやって出したか?」
「私じゃなくて横島さんが出してるんですっ!ほら、頭のあたりから…。」
 横島の頭のまわりにかかる靄はますます濃くなり、つむじ風の様に渦を巻きながら収束して次々花びらになっていた。もう5秒に1枚位のペースである。
「ありゃりゃ、どこまでもめでたいボーズあるなあ。自分で花吹雪出してるある。きっとあいつの頭ん中は花が咲き乱れてるあるな、ハハハ…。」
「笑い事じゃないですよっ!横島さんは今まで自力でエクトプラズム出したことなんてないんですっ!副作用なんじゃ…!?」
「まあその可能性もあるかもしれないあるが…Drカオス、あれ見るあるよ。」
 カオスを自分の世界から引っぱり戻すあいだに、ますます花びらは量産されてゆく。
「おー、また面白い事になっとるのー。まあ確かに副作用なのかもしれんが、だからと言って困るほどのもんでもなかろう。エクトプラズムはしばらくすれば空気に溶けて無くなるからな。あの小僧の人間性をよくあらわしとって結構なんじゃないか?ワハハハ…。」
 二人ともモノを真剣に考える思考力が無くなっている。おキヌはバカ笑いしているおっさん二人とトリップ中の花吹雪男一人を前に、途方に暮れてしまった。
 ピンポーン
 唐突に呼び鈴が鳴った。美神が鳴らすはずはないから、来客である。いまこの場で出られる状態なのはおキヌしかいない。
「はい、どなたでしょう?」
「NHKの取材なんですけど、横島忠夫さんいらっしゃいますか?」
「!?」
「新発明のキカイの事で…。」
「!!!!」
 おっさん二人のバカ笑いがピタリ停止した。カオスと厄珍の目の色がとんでもなく真剣になる。
「まだ特許も出してないし、公表もしてないのに…どうしてマスコミが来るある?Drカオス、まさか金に困って誰かに情報売ったんじゃ…?」
「ワシがそんな事するか!貴様こそワシに隠れて生産する気なんじゃないのかっ?」
「ワタシそんな事しないあるよ!第一まだ霊化処理機が…あっ、もしかして令子ちゃんが・・?!」
「そ、それじゃっ!間違い無い!美神令子がもらしたんじゃっ!!」
「し、しまったあるー!!!」
「なんちゅうことじゃー!!!」
 再び二人は勝手に大騒ぎを始めた。おキヌがそれを放っておいてとにかくドアを開けてみると…
「なに…?これ…」
 そこには何やら人間の男女ような物体がたっていた。いや、明らかに人間なのだが、どう見ても生きたそれではない。なんだか蝋人形のように虚ろな感じなのである。二人ともどこかで見たような顔であった。
「も、もしかして…クボさんとクニイさん…?」
「わたしたち、人類の英雄の横島忠夫さんを取材にきたんですけど…」
 声がマイクを通したようにくぐもっている。明らかに言ってる事もおかしい。なぜ取材に司会のアナウンサーが?だいたいクボさんはもうあの番組に出てないはず…。
「ちょっと厄珍さんっ!なんか…本物の取材じゃないみたいですよ」
「令子ちゃんなんかに話すんじゃなかっ…?え、本物じゃない…?なんだ、じゃあ何かのイタズラあるか?ありゃ、こいつらドッペルゲンガー?…いや、違うあるな…まさか…?」
 厄珍がおキヌの横から手を伸ばして軽くクボさんに触れてみた。場所は厄珍らしくおシリ…。
「こ、これ、エクトプラズムある!?まさかボーズが…?」
「でも横島さんは部屋の中に居ますよ…?どうして外から?」
「たぶんあのエクトプラズムの花びらが空気に溶けて外へ出てからボーズの念波で再結晶したある…。それにしても言葉が話せるほど強力なエクトプラズムを出すとは・・・」
「これってやっぱり副作用なんじゃ…?」
「い、いやー、別に危ないものでもないあるし…。」
「どわーっ!!なんじゃああっ!?」
 突然、後ろでDrカオスの叫び声がした。
 二人が振り向くと…全面ピンク色。
 事務所の中はもはや花吹雪を通り越して花嵐が荒れ狂っていた。巻き込まれて体中花びらだらけのカオスが四つん這いで壁際へ逃げている。
「こ…これは結構危ない副作用かもしれないあるなあっ!?」
「結構じゃ無いでしょーっ!!!」

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