ザ・グレート・展開予測ショー

温かい想い(その13)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(02/11/18)








横島達の目の前に立つルシオラ・・・
ここまでの展開から言って、間違いなく残留思念・・思念体だろう・・・
だが、どうだ・・・その姿は今までの思念体と比べ物にならないほどリアルで、もう本物としか思えなかった。・・・ただ・・・
ただ一つ違ったもの・・・生前のルシオラと明らかに違うものがあった・・・それは・・・・・瞳

目の前にいるルシオラの瞳には光がなかった・・・まるで死んだように生気の感じられない眼光・・・

その瞳が唯一、ルシオラではないと否定しているようだった・・・・しかし

「・・・・ルシオラ」

しかし、それでも横島は・・・本人ではないルシオラから目が逸らせない。
まるで美しい宝石に魅入られたように視線を外せなかった・・・

そんな横島に向けてルシオラの思念体が掌(てのひら)をかざす、次の瞬間!
その掌から凄まじい霊波砲が放たれた。



「横島クン!!」




ドガアアアアアアアアアアアアアア!!!!!




直撃すると思った瞬間、
間一髪で動かない美神が横島に飛びつき霊波砲を回避する。


「何ボサっとしてるの!!?」
「え・・・・あ、はい・・・」

美神はグイっと横島の襟首を掴んで叫ぶが、当の横島は困惑の表情を浮かべるだけハッキリ返事すらしない

「戦う気がないなら、そこらへんに隠れてないさい!足でも引っ張られたらたまったもんじゃないわ!」

戦場では一瞬の油断が「死」を招く。しかも今の相手は残留思念とはいえルシオラ・・・
横島にとっては最も戦いにくい相手・・・美神のそんな横島を気遣ってのセリフだった。

「俺は・・・俺は・・・」

乗り越えたはずだった・・・悲しくないといえば嘘になる・・・でもルシオラが自分の子供に転生すると知ったとき、
別の形でも愛せると知ったとき、少し心が軽くなった・・・。ルシオラのことを忘れることなんて出来ない・・
・・・それでもこの悲しみを乗り越えていこうと・・・心に決めたはずだった・・・なのに

「・・なのに・・」

ルシオラの姿を見るだけで、心音が早くなる、走っているわけでもないのに呼吸が乱れ、心拍数が上がる
体中の血管が沸騰するように熱く感じるのに、不思議な寒さで体が震え、ガチガチと歯が鳴る。そして・・・
無意識に涙がスーと流れる・・・。例え目の前にいるのが本人じゃないと判っていても・・・

「あ、あれ・・・何で・・・?」

横島は自分の頬の涙に気付き不思議そうにそれを拭った。

「横島さん」

おキヌが心配という表情をあらわにしながら横島に話しかけた

「私と美神さんで頑張りますから・・・横島さんは休んでいて下さい」

「おキヌちゃん・・・」

おキヌは横島にニコっと笑顔を見せると、ネクロマンサーの笛を構えた。

だが



ズアアアアアアアアアアア!!!ドガアアアアアア!!!!




ルシオラがソウトの指示のもと霊波砲を連射し、笛を吹かせまいとする。

『ギギ・・・やっぱり、ここまで強力な思念だと少しタイムラグがあるギィ・・』

クイクイっと指を動かしながらソウトは言った。

「くっ!ちょっとルシオラ!少しは自我があるならソウトに抵抗してみなさいよ!」

霊波砲をよけながら叫ぶ美神。

『・・・・・・・・・・・・・』

美神の声に何にも反応しないルシオラ。相変わらず、暗い瞳で虚空を見つめるだけだった

『ギギギギ〜♪無駄だギィ〜、こいつの思念の感情は完全に封印してあるギィ〜♪』

返事をしないルシオラの代わりにソウトが嬉しそうな笑みを浮かべる。
そして、再びルシオラが霊波砲を撃とうとする・・・・が





ピリリィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!





どんな強力な思念体の動きも止めるネクロマンサーの笛の音が響いた。


『ギギギ〜、確かに思念体である以上、ネクトマンサーの笛には敵わないギィ・・・・でも』

ソウトの口元がいやらしく歪んだ瞬間・・・


「・・・?・・・ごほっ!?」

おキヌの口から鮮血がこぼれた!そのまま糸の切れた操り人形のように倒れていくおキヌ。

「「おキヌちゃん!!!!!」」

ソウトの存在など忘れたようにおキヌに走り寄る、美神と横島。

「おキヌちゃん!おキヌちゃん!!」

おキヌを抱きかかえ懸命に声をかける横島。
その声に反応しておキヌはゆっくり目を開けた

「ハァ・・・ハァ・・・あれ・・・?・・私・・・!ごほ、ごほ!」

さっきほどではないが、咳き込むたびにおキヌの口から血が溢れた。
純白の巫女装束が鮮血で紅く染まってゆく・・・

「しゃべらなくていいわ!ゆっくり息を整えて!」

「み、美神さん!おキヌちゃんは一体!」

「多分・・・」

『霊力が肉体の限界を超えてまで使用した結果だギィ・・・』

「なに!?」

『ネクロマンサーの笛はただでさえ、大量の霊力を消費するギィ・・・その上ボクの魔力を帯びた残留思念の動きを止め続ければ・・・』

ニヤっと笑いながらおキヌを指差す…

『当然そうなるギィ・・・』

「だ、大丈夫です・・・私・・・まだ戦え・・・ます」

おキヌは震える手で、地面に落ちてるネクロマンサーの笛を拾うとする
どうみても、やせ我慢だと分かるおキヌの力無き声・・・
それでも美神と横島を懸命に支えようとするおキヌに、二人は涙が溢れそうだった・・いや、溢れていた・・・

「おキヌちゃん・・・いいから休んでなさい」

「で、でも・・・」

「もう一度だけネクロマンサーの笛を使う機会がるはずよ!それまで霊力の回復に努めて!」

「はい・・・」

「横島クン・・・ここまで見せ付けられて、あなた何にもしないつもりじゃないわよね・・・」

美神が涙を拭いながら横島に声をかけた。
おキヌをそっと寝かせるとゆっくり横島は立ち上がる。

「・・・・大丈夫です。俺、戦えます!」

『ギギギギ〜♪本当に戦えるかギィ?』

「おキヌちゃんの心意気に応えれないようじゃ・・・」

横島はトンっと親指で自分の胸を指す。

「あいつに怒られちまうからな!」

ソウトに自分の中にこそルシオラはいると主張した。

ブンっと音を立て横島の右腕にハンズオブグローリーが現れる・・・が

「・・・あ、あれ?」

自分の霊波刀を見て素っ頓狂な声を出す横島。
なぜなら・・・その長さは従来の半分以下しかなかった・・・

「み、美神さん・・・これは一体・・・?」

「う〜ん、霊眠期でただでさえ、ない霊力振り絞って戦ってたから、
 今はそんなもんでしょ?・・・まぁ、足りない分は『愛と勇気』で埋めるとういことで頑張りなさい!」

「俺はアンパ●マンかい!?(泣)」

「まぁまぁ、フォローくらいはしてあげるわよ♪」

美神は軽くウインクするとカスタム霊体ボウガンをスチャッと構えた。

『ギギギギ〜♪そんな霊力でボクと戦う気かギィ?』

「うっせぇ!」

『ボクに逆らおうなんて・・・どいつもこいつも愚かギィ・・・小僧も、美神令子も、そこの女も・・・そしてこのルシオラとかいう女も』

「どういう意味だ・・・」

『ギギギ〜、こいつはトウキョウとかいう街のでっかい塔に張り付いてたギィ・・・残留思念は想いが強ければ強いほど使役するのは
 難しくなるギィ・・・・そこでコツがいるギィ・・・』

ルシオラの思念体を見ながらニタニタと笑みを浮かべるソウト。

『それは・・・残留思念の想いに同調してやることだギィ♪
 こいつは・・・・小僧・・・お前に会いたい会いたいと言っていたギィ・・・
 だからお前に会わせてやると念波を送ったら簡単に吸収できたギィ♪ギギギ〜♪』

何が面白いのか腹を抱えてソウトは大声で笑う。

『ギギギ〜、ボクが暴れる為だけに吸収されたと知った瞬間の・・・・
・・・・・こいつの泣き声と言ったらたまらんかったギィ〜♪ギギギギギギギぃ♪』








・・・・・・・・・・次の瞬間・・・・・・・・・・・・・横島は美神の隣から消えていた・・・・・・・・









「うあああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!」

獣のような咆哮が周りの木々を揺らす!風のような速さで横島がソウトに突進した!

『ギ!?』

ソウトはルシオラに自分を守らせようとするが・・・

「させないわよ!」


ズガズガズガズガ!!ドカカカアアアアア!!


美神の撃ったカズタム霊体ボウガンの矢がルシオラの足元に突き刺さり爆発を起こす。
直撃はしなくても、ルシオラのタイミングをズラすには十分だった




ガシシシイイイイイイイイイィィィっ!!!!!!!!!




ソウトの鉄杖と横島の霊波刀がぶつかり、スパークを起こす。
そのまま均衡を保つようにつばぜり合いになった。

『ギギギギ〜♪この程度の霊力で!この程度の力でボクを倒そうなんてやっぱりお前は愚かギィ!』

「黙れ!」

『お前達を殺したあとは、ルシオラの思念体を使ってここらへんの人間を皆殺しにしてやるギィ!!
 そのときのルシオラの心が叫びが楽しみだギィ!!』

「黙れ!黙れ!!お前がルシオラの名を呼ぶんじゃねえっ!!!」

『ギギギ〜、愚かな残留思念ルシオラはボクが有効活用してやるギィ〜!!!』

「お前に・・・」

『ギ!?』

ソウトは急に鉄杖にかかる重みが増したのに気付く。

(横島クン・・・霊力が・・・・)

「お前に!」

『ギギ!こいつ霊力が!』

横島を包む霊力が増大しているのは、もはや誰の目にも明らかだった。
そして、その霊力が横島の叫びと共に爆発する!


「お前にルシオラの何が分かるーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!」

『ギギギギギギギギギーーーーーーーーー!!!?』





ズゴゴゴゴゴゴアアアアアアアアアアアアアアアアっ!!!!!!!!!!!!!!!!!






急激に増大した霊力が横島の霊波刀にも伝わる!
そのまま、あっという間に均衡を破ると鉄杖ごと一気にソウトが左右対称に真っ二つとなった!
いや、急激に膨れ上がった霊波刀は勢いを緩めず、ソウトの後方にある木々をなぎ倒し続けた。

『ギギ・・・そん・・なバカな・・・こんな・・人間ごとき・・・に・・・』

消えゆく悪魔の声が深淵の森に消えていった・・・・・・・・・・・・・・・・・


















その14に続く




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