僕らの日曜日_2(La Follia_6)
投稿者名:アシル
投稿日時:(03/ 1/ 9)
「何処に行きましょ〜か〜〜?」
「あっちの方で、素敵なお洋服が売ってましたよ」
和気藹々と話に花を咲かせるおキヌと冥子だが、その額に汗が浮かんでいるのは何故だろう。
「おじょーさん、ボクと一緒に遊びませんか!」
「い、いえ。結構です……」
「あっ、ねえキミ! 可愛いね、ちょっとボクとお話ししない?」
「ちょっと時間がないんで……」
「おやっ、そっちのお姉さんも!!」
……
人通りの多い街並みを縦横無尽に駆け回りながら、年頃の女性と見れば誰彼構わず話し掛ける男が一匹。
無論、言わずもがな横島である。
連れであるおキヌと冥子ならずとも、その場にいる全員が彼の奇行に引いている。
始めは冥子と一緒に他人の振りをしていたおキヌだったが、気の長い彼女も頭に来た。
連れの自分たちがいるのに、堂々とナンパするのは流石に目に余る。
何しろ、横島は自分が彼に抱いている思いを知っているのだ。
「横島さん! 何やってるんですか!!」
「え、あ。なに、おキヌちゃん?」
「何じゃないですよ! お腹が減ってるとかなんとか言っといて、全然元気じゃないですか!」
「いやぁ、ごめん。なんか女の子を見てると急に力が湧いてきて……」
自分でも悪いと思っていたのか、割と素直に謝る。
冥子はそんな二人のやり取りを微笑みながら見ていたが、ふと何かに気がついて声をあげた。
「あら〜、あれってカオスさんとマリアさんじゃな〜い〜〜?」
「「え?」」
揃って振り向く横島とおキヌ。
道の向こうから歩いてくる老人と若い女性の二人組。
それは確かに『ヨーロッパの魔王』ことドクター・カオスと、彼の最高傑作高性能アンドロイドのマリアであった。
「ん? なんじゃ。珍しい組合せじゃのう」
「イエス・ドクター・カオス。ミス・おキヌ・ミス・六道・プラス横島さん・の組合せ・該当確率0%」
「まあ、言われてみれば確かに」
本当は何度か一緒に行動したことがあるのだが、そのときはカオスもマリアもその場にいなかった。
知らないのも無理はない。
「カオスさんたちは、何処に行くつもりだったんですか?」
「うむ。実にいい天気なのでな。つい出歩きたくなった」
「マリア・ドクター・カオスの・付き添い」
「ホントーに〜、いい天気よね〜〜」
頷き、空を見上げる冥子。
横島たちもそれに倣った。
雲一つない青空が広がっている。
「あー、確かに」
「見てると、思わず吸い込まれちゃいそうですよね」
「うむ。どれだけ時が過ぎても、この空だけは永遠に変わらんよ……」
「「「「……」」」」
実感のこもったカオスの言葉に、一同思わず声を失う。
「さて、そろそろ昼飯でも食うか。お前らもどうじゃ?」
「ご一緒してもよろしいんですか?」
「金は無いがな」
ニヤリと笑うカオスに、ズルッと転けたのは横島とおキヌ。
冥子は今一分かっていないようで、マリアはいつもの無表情だった。
「そういうのは金の有る奴が誘うんだよ!」
「むっ、しかしな小僧。金がなければ昼飯は食えん。そして、お前はともかく残りの二人は金があるのだろう?」
「お前はともかくって言うな!」
「本当の事じゃろうが。それにな、金は有る奴が払うのが普通だろう。無いモノを支払うことは出来まい?」
「う゛っ。やっていることは明らかにたかりなのに、何故か正論を言っているように聞こえるのは何故だっ!?」
こと食事のこととなると途端に頭の回転が往年の輝きを取り戻す、困ったさんな推定年齢1200才――ドクター・カオス。
彼の理論のすり替えなどと言う高等話術の前に、横島の稚拙な脳味噌はオーバーヒート寸前である。
「別に〜、良いですよ〜〜。大勢で食べた方が〜、お昼ご飯も美味しいと思いますし〜〜」
「おおっ、素晴らしいぞ六道冥子! 礼と言ってはなんだが、今度わしの作った全自動顔拭きタオルをくれてやろう」
「何だか分からないけど〜、それはいらないわ〜〜」
「む、そうか……」
なんだかちょっぴり寂しそうなカオスだった。
今までの
コメント:
- さすがドクター・カオス、彼のまさに年の功が光った1編でしたね(確か彼の正確な年齢は1051歳だった気がします←間違ってたらスイマセン)。誰彼構わず、ところ構わずナンパをする横島クン、そしてその彼をついつい怒ってしまうおキヌちゃんが共に「らしい」気がしました。カオスの図々しさもあいかわらずのようですね。一番のツボはラストの冥子「それはいらないわ〜〜」と言うセリフです;彼女の正直な気持ちである分、カオスへのダメージも大きかったのではないでしょうか?(笑) 次回も楽しみにしております♪ (kitchensink)
- むぅ・・・、復活してますね、横島くん。正直、あの一話目のシリアス(っていうかダーク?)は何だったんだ!?と思ってしまいましたが・・・、やっぱほっとしました。が、おキヌちゃんの思いを知っているにもかかわらずナンパするとは、男の風上にも置けん奴です。
カオスの言っていること、明らかに滅茶苦茶ですが・・・。理論武装ではない、ある意味投げやりな感が見受けられますが。っていうか、たかりって事がわかるんだったら、それで終わらせてしまえばいいと思うが・・・。深く考えんでも、たかりはたかりなんだから。 (veld)
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