君がいるだけで(25)
投稿者名:JIANG
投稿日時:(02/ 2/19)
ここは、ナルニアの首都近郊にある国際空港である。
たった今、東京成田発の飛行機が到着したところで、大勢の荷物持った客たちがロビー
から空港の出口に向かって歩いていく。
その中に横島百合子の姿もあった。
百合子は長旅の疲れも見せずにきびきびとした様子でロビーを横切っていく。その後ろ
から大柄な空港職員たぶんポーターだろう……が大きな旅行カバン二つと大きな麻袋をキ
ャリアに乗せて着いていく。
一緒の飛行機に乗っていた客たちが百合子たちの方をチラチラと見たり、忍び笑いしな
がらひそひそ話をしている。
よく見ると一番上に乗っている麻袋がもぞもぞと動いているように見える。いやたしか
に動いている!
しかし、百合子もそれを運ぶポーターもそんな周りの目も、麻袋にも関心がないように
歩いていく。
やがて、百合子は大きな柱のところに目当ての人物を見つけ近寄っていった。
「あなた…!」
「わぁ…ゆ、百合子さん……。お、おかえり」
慌てた様子で振り返ったのは、彼女の不肖の夫である大樹であった。
彼はわざわざ妻が息子を連れて帰ってくるというのでわざわざ会社を一時抜けて迎えに
来たのだったが……。
「ただいま、あなた。私がいない間、おとなしくしていた……?と聞こうと思ったけど、
どうやら羽を伸ばしていたみたいね」
声をかけたときは柱の陰に隠れて見えなかった女性に気づき、百合子は溜息をついた。
もちろん大樹をにらみつけながら……。
「い、いや……。彼女はちがうんだ」
大樹はあせりながら説明する。
「ほ…ほら、この前、秘書の桜井君が結婚退職しただろう。彼女はその後任で新しい秘書
で春桐さんだ……!」
「この度、支社長の秘書を仰せつかりました春桐です。支社長の奥様ですね、よろしくお
願いします」
しどろもどろな大樹とは対照的に、秘書だという女性は落ち着いた様子で自己紹介をす
る。女性にしては背か高く、背筋が伸びていて姿勢が良く、スーツ姿がよく似合っていた。
挨拶のしかたも丁寧だが嫌みがなく、しかもなかなかの美人である。
「ふーん、桜井君やめちゃったの、残念だわねえ。あなたにはピッタリの美人秘書だった
のに……」
「い…いや、まあ……たしかに優秀な秘書だったが、俺は出来れば関わりたくなかった…
…」
「だから良かったのに……」
大樹は妙な冷や汗をかいている。
「たしか、結婚式はオランダで挙げると言っていたよ」
百合子はにっこり笑って、感想を言う。
「そうなの……? 確かにあそこならピッタリよね、彼なら……」
このやりとりの意味が分からない春桐は首を傾げるばかりであった。
それから、ポーターにチップを渡して荷物を受け取ると、大樹は思い出したように百合
子に問いかけた。
「ところで、一緒に連れてくるはずのバカ息子はどうした。やっぱり日本を離れるのが嫌
で来なかったのか?」
「いやねえ、さっきからそこにいるじゃない」
百合子は笑って、荷物の一番上にある大きな袋を指さした。
「なに……!?」
大樹が驚きの声を上げて、その袋を見ると自分の存在を示すかのようにもぞもぞと袋が
動き出した。春桐も目をむいて驚く。
「飛行機の中でシチュワーデスに声をかけまくったあげくセクハラまがいのことを何度も
するは、近くの席にいた可愛い女の子たちをナンパしまくるは、あんまりうるさいんで簀
巻きにしてこの中に放り込んでやったんだよ」
大樹が袋を開くと、ひもで全身をぐるぐる巻きにされた息子が現れた。しかもご丁寧に
騒ぐことができないように猿ぐつわまで噛まされていたのだった。
その姿を一目見た春桐はギョッとした顔になった。そしてさすがにいたたまれなくなっ
たのか、先に車を取ってきますと言ってその場を離れたのだった。
大樹の手で縄が解かれると、横島は早速母親に対して文句を言った。
「こ…このくそばばあ……! 何時間も袋詰めにしやがって……。美神さんでもこんな仕
打ちはせんぞ」
「わはははははっ。忠夫、意外と元気そうじゃないか。ちゃんと母さんの言うことを聞か
んからこんな目に遭うんだぞ」
「お、親父……! ということは、ここはナルニアか!? ちくしょう……! せっかく
の快適な空の旅が……!!」
「何が、快適な空の旅だい。あんなに大騒ぎして、こっちはいい迷惑だったよ。それにあ
なたも忠夫のことを笑っていられないじゃない。新婚旅行の時に忠夫とまったく同じ事を
したんだから……」
「わ…わははははははっ……」
まさに言われたとおりであり、大樹は笑ってごまかすしかなかった。
「お、親父……」
この百合子との新婚旅行で他の女性をナンパする度胸があった父親に絶句する横島だが、
彼も必ず同じ事をするのは間違いないだろう。
*** つづく ***
横島忠夫、袋詰めで再登場(笑)
今回、横島家一同が勢揃いです。
それから、秘書春桐も登場!! 彼女の正体は果たして!?(ばればれ(笑))
次回もお楽しみに……!!
今までの
コメント:
- 今回は(24)でした。
眠気があるときに投稿するとろくなことにならんな(苦笑) (JIANG)
- 桜井くんってひょっとして……いやいや、ご結婚おめでとうございます(笑)。
意外な処で父子の絆を確かめ合ったりして……子供は大きくなるとどんどん父親に似てくるなどと申しますが、正にそれなんでしょうなぁ。さて、春桐新秘書の貞操は……喩え油断していても、あのおかんもいるしな(笑)。
ちなみにC.S.ルーイス原作のナルニアの首都は、東に海を臨む王都ケア・パラヴェル(Cair Paravel)。 (Iholi)
- とうとう横島ファミリー、ナルニアにて全員集合!
それにしても、横島。ベスパ達があれほどシリアスをしている裏で・・・・・・オノレは何をやっとるんじゃー!!!(いや、知らないだけなんだけどね・・・) (黒犬)
- いやぁ〜。流石『極楽大作戦』の主人公。 (魚高)
- ↑ 続き(半泣)
アメリカンヒーロー以上の登場シーンでしたね。
それにしても、忠夫クンは新婚旅行に行くほど金が作れるんでしょうかね?(笑) (魚高@Enterキーにはやられましたよ)
- さすがの横島君の煩悩ぱわーも、グレートマザーの前では形無しですね♪ (猫姫)
- 横島の父は、よくナンパできるな〜。でも、ナンパした後百合子にボコされたのかな? (3A)
- 1から一気読みしてまいりました! キャラの発言・行動がいかにも原作そのもので読みやすいです。
展開も無理なく論理的ですね。続きが楽しみです。
…って! 今回の感想! 春桐さんは今回はいったいどんなテで…もとい、どんな経緯で秘書についたのでしょう。
戸籍の捏造や入社など色々めんどうだったでしょうが行動の速さはさすがです。 (斑駒)
- Iholiさん
特別出演の桜井君がオランダで結婚した意味解ってくれたかな?
この国は唯一同性同士の婚姻を法律で認めているんです(笑)←笑っていいのか!?
つまり……(滝汗) そう言うことなんです。
父子の絆>本人たちはこんな事で確認し合うのは不本意でしょうねえ(笑)
(JIANG)
- 黒犬さん
シリアスな展開になっていようが、恋人が出来ようが、横島の煩悩は永遠に不滅です!!(笑)
魚高さん
アメリカンヒーローとはまた懐かしい。
真っ赤なスーツになぜか胸には中マークの半熟スーパーマンですね(笑)
(JIANG)
- 猫姫さん
もちろんです。大樹も忠夫も百合子の掌(たなごころ)の中ですよ。
3Aさん
はじめまして、コメントありがとうございます。今後とともご贔屓に!
>横島の父は、よくナンパできるな〜。
大樹は元祖煩悩男ですから(笑)
もちろんその後は、息子同様簀巻きプラス袋詰めですよ(笑)
そのおかげで欲求不満で溜まりに溜まった大樹は旅先のホテルで百合子相手に(映倫)
そしてみごと生まれたハネムーンベイビーが忠夫だった……(爆)
(JIANG)
- 斑駒さん
はじめまして、コメントありがとうございます。
>どんな経緯で秘書についたのでしょう。
もちろん、大樹相手に色仕掛けで……というのが一番有りそうですかね(笑)
本当のところは、桜井君に同好の志をうまいことあてがって寿退社させ、本社からの後任人事に関する書類をちょこっといじって、新しい秘書になりすましたってとこです。
そして任務が完了したら書類に手違いがあり間違って秘書になったとか言って、日本に帰ればOK。あとは、本社でつじつまが合うように工作してさようならってとこです。 (JIANG)
- ↑×3 もちろん了解済みっスよ、 JIANG さん(笑)。
桜井(男)登場の嬉しさに、ついついどうともとれる不用意なコメントを発してしまった事にお許しを(笑)。 (Iholi@ 危険なロシアン・ルーレット)
- ↑×4 最近、オーストラリアでも認められたんですよね。
さて、春桐女史は何を企むか…… 横島の運命や如何に!? (ロックンロール@そーか……スケルトンも駄目だったか……)
- はぁ〜、春桐さんか
オリキャラですかね〜
まあ、彼女がどんなドジっ娘に成長してくれるか楽しみにしてます(ぷぷぷ)
でもそういうキャラじゃないんですよね
邪(横島)親父に期待大 (いたけす)
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