ザ・グレート・展開予測ショー

Her SPIRIT LIVES ON


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(02/ 8/19)


消えては浮かぶアスファルトの逃げ水。
それはまるで果敢ない物をあざ笑うかのように。





女の子が一人。東京にある赤いタワーにいる。手にした籠には、蛍草。



―――――ルシネェ来たでちゅ。









                         Her SPIRIT LIVES ON








「お盆って、なんでちゅか?」

「お盆の間にはね、亡くなった人がこの世に帰ってくるのよ」

いつもの妙神山のいつもの会話。しかし、小竜姫の言葉はパピリオの胸に何か言いようのないつかえを残した。
天竜童子にそんなことも知らないのと冷やかされても、サル神にお盆には地縛霊や浮遊霊も活発になる時期だのうという説明も、パピリオには上の空だった。



ルシオラちゃんも、帰ってくるのでちょうか?



そして遂にいても立ってもいられなくなり、拝みこんで天竜童子からもらった小判を手に山を後にし、
慣れない「新幹線」に乗ってはるばる東京まででてきたのだった。

しかし、いざ東京タワーを前にすると、言いようのない空しさが湧き上がってきた。
そこにあったのは、けばけばしいまでの飾り照明と、人また人である
あの時の事実が嘘であったようである。
空しさを振り払うように、浜松町駅前の花屋で買った蛍草を供え、天竜童子が餞別にと持たせてくれた、茄子の飾りを道下に置く。
パピリオ、ぽつりと。



もう、会えないンでちゅよね?



久々の東京で過ごす一日は、それなりに楽しいものだった。
悶着はあったとは言え自分を知っている連中がいる。
夕食では決して妙神山では味わえないイタリアンを楽しんだ。
しかし、決定的に何かが足りない。
紆余曲折の末唐巣教会に泊まらせてもらえることになったが、パピリオは夜中を過ぎても眠れなかった。



ルシネェ・・もう一回だけでもぉ・・・



パピリオのほほを涙が伝う。
寂しさから目をそらすかのように、嗚咽を殺した涙。
その時だった。



「パピ〜」



えっ?ルシオラちゃんの声でちか?



聞こえてきたのは紛れもなく、懐かしい姉の声。強くて、それでいて果敢なかった姉の声。



「ちょっとは大きくなったかな?」



ルシネエ!!あたちは・・・



思いが涙となり、堰を切ったように溢れ出す。



「いい、パピリオ、みんなに迷惑かけちゃ駄目よ。ねえさん見張ってるから・・・」



ルシネェ、どこにいるでちゅか、でてきなちゃい!!



「貴方は生きて、パピリオ。私の分までも。そして、もういちど会いましょあいつの娘として」



優しい姉の声が遠ざかっていく。遠くへ――――手の届かないほど遠くへ。



おねーちゃーん――――!!






翌朝パピリオが目を覚ますと、そこに父の姿はなかった。



でも、でも・・・おねーちゃんは見守っていてくれるでござる!



姉の言葉が聞こえたと、ピートや唐巣に喜びながら報告して、それからゆっくりと帰っていった。今の居場所、妙神山へ。



「あいつは元気になったぜ。ルシオラ、へへちょいと見ない間に大きくなってさ、似てきたよお前に」






パピリオの背中を見つめ、横島が呟く。その表情は、ちょっと寂しい。






一段と強くなる日差し
それはまるで、短い夏を燃やし尽くすかのように。


ヨハン・リーヴァ氏 『MY SPIRIT LIVES ON』
オマージュ作品

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