ザ・グレート・展開予測ショー

僕らの日曜日_4(La Follia_8)


投稿者名:アシル
投稿日時:(03/ 1/10)


「よう、何やってんだ西条?」

 始めから喧嘩腰の横島である。
 それまでジッとビルの方を眺めていた西条がふと、振り向く。

「ん? なんだ、横島君か。そっちこそ、そんなにGSばかり揃って何をやってるんだ?」

「何って、あれだ。その……」

 答えようとして思い浮かばず、首を捻る。
 横を見ると、おキヌや他の面々もあれっ? という顔をしていた。

「あー、まあ。強いて言うなら、暇つぶしじゃな」

「――? そうか」

 カオスの答えに納得したのか、西条は頷く。

「その方の依頼で令子君が除霊をやっているんだが、どうも手間取っている様子でね。手助けに行こうか迷っていたところさ」

「その方?」

 ふっと、西条の横を向く。
 如何にも深窓の令嬢と言った感じの女性が、こちらを向いて深々とお辞儀してきた。

「初めましてっ、ボク横島忠夫といいますっ! ずっと前から愛していました!!」

「はっ?」

「いえ。なんでもないんです」

 笑って誤魔化すおキヌの後ろでは、雪之丞たちに引きずり倒されている横島が見えた。
 西条はこめかみを指で押さえながら、続けても良いかな? と訊ねた。

「あー。順番が前後したが、隊長の古い友人のご令嬢だそうだ。さっきのあれは横島君、さっきの美神令子君の荷物持ちをやっている」

「助手といえ!」

 不当な紹介に思わず叫ぶ。
 それを無視して、女性は西条に訊ねた。

「あのー、あの方達ももしかしてゴースト・スイーパーなんですか?」

「ええ。日本にいるGSの中でもトップクラスの連中ですよ。若干一名違うのも混じってますが……」

「こらっ、テメェ西条っ! 誰を見て言ってんだっ!!」

 先程よりもややボロボロになりながら、いきり立つ横島。
 だが、女性は完全に西条の話を信じたようで、一番話のしやすそうなおキヌとピートに向かって訊ねる。

「あの、すいません。突然こんなことを言って心苦しいのですが、皆さんにご依頼してもよろしいでしょうか?」

「依頼、ですか?」

「このビルに、悪霊が取り付いているようなので、それを除霊していただきたいのです」

 先程西条の眺めていた、背後の高層ビルを指さす。
 しかし、と訊ね返したのはピートだった。

「もう既に美神さんが行ったのでしょう? それなら心配ないと思いますけど」

「いや。確かにそうなのだが、如何せん霊の量が多すぎてね。おそらく彼女も手を焼いているだろう」

 沈痛そうに頭を振る。
 そんな西条の襟首を掴みあげ、先程までとは違う様子で声を張り上げる横島。

「なんでそれが分かってて、美神さんを一人で行かせたんだよ!」

「隊長の命令だったんだ。僕だって、行かせたくはなかった……」

「テメェは!」

 殴りかかろうとしたが、しかし、西条がジッと自分を見ていることに気がついて拳を止める。
 チッと舌打ちをして、横島はそのままビルに駆け出した。

「横島さん!」

「師匠!」

「ったく、あのバカ!」

「追いましょう! 幾ら彼でも装備も無くてはそう持ちはしない!」

「僕も行きます!」

「私も」

「私も行くわ〜」

 後を追うように、おキヌ、シロ、雪之丞、唐巣、ピート、魔鈴、冥子が飛び出す。
 西条は襟元を直ながらそれを眺め肩を竦めた。

「まったく、少しはこっちの事情も察して欲しいな……」

「良いんですか? あの人、弱いんでしょう?」

「……横島はバカでバカでバカでどうしようもないスケベだけど、弱くはないわ」

 女性の言葉に冷たい視線を送って、こちらも駆け出すタマモ。

「ホント。アイツが弱いって言うなら、ウチのタイガーなんて一生GSになるの諦めなきゃいけないワケ」

「なんじゃ。お主は行かんのか?」

「確かに令子に恩を着せるチャンスだけど、その前にちゃんと依頼料を決めるワケ」

「ま、当然じゃの」

 ニヤリッと邪悪に笑うエミとカオスに、西条はもう一度肩を竦め、女性はビクリと怯えたように一歩後ろに下がった。



「格好付けて走りだした割には、勢いに足りないんじゃないか? 横島君!」

 聖剣ジャスティスを振り回しながら、前を行く横島の背中に向けて皮肉る西条。
 横島は何も言わずに、文珠の『剣』でまとわりつく悪霊たちを薙ぎ払う。

「しかし、雑魚ばっかりとはいえこれじゃあ切りがないな!」

「確かにな! おい、横島! お前が飛び出したからこんなことになったんだ。お前がどうにかしろ!」

 西条の言葉を受けて叫んだのは、押さえた威力の霊波を四方八方に向かって撃ちまくっていた雪之丞。
 敵が弱いので魔装術を使うほどではないのだが、如何せん量が多すぎた。
 息が上がっている。

「おキヌちゃん! 笛はっ!?」

「持ってきてません!」

 元々は普通に街を出歩くだけの予定だったのだ。
 おキヌが死霊使いの笛を持って来ていなくても仕方がない。
 もちろん破魔札もなかったので、みんなの邪魔にならないように冥子と一緒にインダラの背に乗っている。
 冥子の式神バサラは、この階に来るまでに既に悪霊を吸い込みすぎてお腹一杯だ。

「こんな数相手に美神さんは無事でしょうか?」

「まあ、彼女がこのぐらいで根をあげるとは思えないが……」

「根本となる悪霊を叩かないと、切りがないですね」

 魔鈴の言葉に答える唐巣と、その言葉を継ぐピート。

「狐火!」

「これでも食らえ! でござる!」

「ったく、肉体労働は得意じゃないワケ!」

「ハハハハハッ! 行くのだマリア! この仕事を終えれば、半年分の家賃が払えるぞ!」

「イエス・ドクター・カオス。マリア・がんばり・ます!」

 みんなぶつくさと良いながらも、やはり何処か余裕がある。
 人数的なこともあって、気がつけばあっという間に最上階。

「あ〜、令子ちゃんだ〜〜」

「げっ、冥子!?」

「美神さん、大丈夫ですか!?」

 後ろからやって来た集団に、悪霊の親玉と今まさに対峙していた令子は顔を引きつらせた。
 構えていた神通棍を思わず下げて叫ぶ。

「なんでアンタ達がここに居るのよ!」

「なんでって、決まってるじゃないですか!」

 わらわらと群がってくる悪霊を蹴散らしながら叫び返す横島。
 その後をおキヌが引き継ぐ。

「美神さんを助けに来たんですよ!」

「あたしは、アンタに恩を売るために来たワケ」

「ワシは金の為じゃ」

「あっ、そう!」

 額に血管を浮き上がらせる。
 どうやらエミとカオスの言葉が癇に障ったらしい。

「でも、ま。どうやら無駄足踏ませちゃったみたいね! そこの悪霊! アンタに個人的な恨みはないけど、私の金の為に成仏しなさい!!」

 ビシッと指さして、なにやらとっても不条理なことを叫ぶ。

「このゴースト・スイーパー美神令子が! 極楽にっ、逝かせてあげるわっ!!」

 唸りをあげる神通棍。
 ――しかし、

『嫌ダァッ! 俺ハマダ死ニタクナイッ!!』

「えっ? あっ、こらちょっとっ!」

 令子の攻撃をするりと避けて、悪霊は一番与し易しと見たのか冥子に向かった。
 顔を引きつらせ凍り付くその場の全員。


 ……


「失敗を分かち合ってくれる仲間が多くって助かるわ〜〜!」

「「「「「「「「「「「「分かち合えるかっ!!」」」」」」」」」」」」


 瓦礫と化したビルの跡で、みんなの心が一つになった。
 

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