推定無罪! その5
投稿者名:A.SE
投稿日時:(02/ 7/11)
「しっかしなー美神事務所の次は六道家に住みこみかよ…。小笠原さんとかオカルトGメンの捜査官とも知り合いなんだろ?なんか住んでる世界が凄すぎてこっちの気がひけるよなー」
「そんな…偶然とか、いろいろあってそうなってるだけで別に…。」
「ま、確かに、ある意味氷室さんが特別な存在なのは確かかもしれませんわね。300年も霊魂と肉体が分離していたあと、転生ではなく再び元の人間として復活したなんて記録は世界のオカルト史にも例をみませんもの。」
「え、だって、わたし、そんな…」
「あ、わ、悪いほうにとるなよ、そんなおキヌちゃんと友達だなんてすごいよなーと思ってるだけなんだからっ!!」
「そ、そうですわよ、特別な方とお友達なのはそれだけですばらしい事ですわ!!」
些細な事で気持ちが急降下しそうになるおキヌを、魔理とかおりは必死にフォローする。
「この部屋すごいよなっ、まるで高級ホテルみたいでさっ!」
「そうですわねっ、さすがは六道家のゲストルームですわっ!窓から見えるお庭も英国風だから、なんだか3人でヨーロッパ旅行にきたみたい!!」
「今夜は遊ぼうぜっ!ゲームとか色々持ってきてんだっ!」
「ほらっ、氷室さんが読みたがってらした本、持ってきましたわよ!」
あせってフォローすればするほど的が外れて行くところに、かえって二人の真心がうかがえておキヌは嬉しかった。基本的に能天気で立ち直りの早い横島と違って、おキヌは休学せずにすんだ後も精神的には落ち込んでいた。そんなおキヌを見かねて、弓かおりと一文字魔理が六道家まで泊りがけで励ましにきてくれたのである。
「ありがとう、二人とも…そうだ、夕食も終わったし、少し早いけどお風呂にしませんか?ここのお部屋、大きなお風呂がついてて3人一緒にはいれますよ。」
「あ、いいね、あたし大きい風呂大好き!」
「じゃあ、このリモコンのお湯張りボタンを押して…これで20分位したらはいれますよ。」
「へえ、そんなボタン一つでお湯入るの?溢れたりしないわけ?」
「こういうタイプのお風呂は自動的に一定量入ると止まるものなんですわ。」
「ふーん、そうなんだ。あたしん家はじーさんが頑固でさ、未だに30年前の湯沸し使ってるから、水道で水入れてると忘れて時々溢れたりするんだよなー。」
「そういえばうちの祖父も未だに薪のお風呂のほうがいいと言って時々無理に炊かせるから困りますわ。お年寄りってそういうものなのかも知れませんわね。」
「でも薪でたくのって大変ですよね、実家で一度温泉が使えなくなって…」
いつもならもう少し険悪な方向へ傾きそうな会話だが、今日はおキヌに気をつかって微妙に和やかである。かおりも魔理も、おキヌに意識を向けることで自然にとげとげしい言葉が抑制されていた。
さて、そろそろお湯も入ろうかという頃、部屋のドアをノックする音がした。
「はい、どうぞ…あ、おばさま…」
「おキヌちゃんたちー今からお風呂入るのー?」
「はい、そうしようと思ってますけど…。」
「その前にーおばさんのお願い聞いてくれないー?」
「何でしょう…?」
「うちに今―お客様がみえてるんだけどー霊能科の生徒が泊まりに来てるっていったらーお話してみたいっておっしゃるのよー。そんなに時間はとらせないからーちょっと会って差し上げてくれないー?」
かおりと魔理がうなずいたのを見ておキヌが了解の返事をする。
「よかったー。それじゃ3人ともーその格好のままでいいからー一緒にきてくれるー?」
3人が六道家の屋敷を貫通するだだっ広い廊下を案内されて着いたところは、これまただだっ広い上異常に豪華な応接間である。そこで待っていたのは恰幅がよく少し脂ぎった感じのする中年男だった。
「おお、これはまた可愛らしいお嬢さんたちだ。ささ、こっちに来て話を聞かせてください。」
3人が勧められた席につくと、理事長がそれぞれの名前を紹介する。
「弓さんというと叡山の?おお、座主の姪御さんか。では闘龍寺の跡取りですな。」
「学校は楽しいですか?」
「どういうきっかけでGSをめざそうと?」
「悪霊と闘うのは怖くありませんか?」
「式神というと六道のお嬢さんが使うような?ほう、専用の紙を使って?」
「なるほど模擬実戦…。すると格闘技のような…?ふむ物理攻撃の使えない結界を…」
3人は男から30分ほど学校生活や霊能の訓練などについて色々と訊ねられた。
「なるほど、大変なものなんですなあ。これからも頑張って勉強して立派なGSになって下さい。いやいや、こんなおやじのくだらない疑問につきあってくださって本当にありがとう。お礼といっちゃなんだが、これはおこづかいです。」
そういいながら男は分厚い財布をとり出すと、無造作に一人5万円ずつ手渡した。
「え、でもこんなに…」
「いいのよー頂いておきなさいー。」
「あの、確かにお顔に見覚えがあるんですけれど、テレビか何かに…?」
「おお、こりゃまったく失礼、あなた方に質問ばかり浴びせて自己紹介をしとりませんでしたな。私、こういう人間です。」
男が今度は名刺をとりだして3人に見せた。
民主連合党 党首
代議士 鴫ノ池 麟太郎
「あ、え、民連党の鴫ノ池さんって…次の首相の!?」
「ハハハ、いや、それはまだちょっと気が早いですな。次の選挙でうちと社会自由党が併せて過半数をとれば、の話ですよ。そのために頑張ってはいますがね。」
「鴫ノ池先生はねー六道家の遠い分家筋にあたるのよー。だからうちの主人がー先生の後援会長をやってるのー。」
「ま、あなた方に清き一票をと頼む訳にはいかないが、もし私が総理大臣になれた暁には祝杯の一つも上げてやってください。あ、祝杯と言ってもお酒はだめですぞ、ハハハ…」
中途半端な冗談で悦に入っている中年男を見ながら、かおりと魔理はどう反応していいの分からず、だからといって気抜けすることも出来ずに固まってしまっている。
一方おキヌは別の意味で固まっていた。目の前にいるのは、次の首相になるかもしれない政治家で、しかも民連党ということはGSの味方なのだ。この人なら、この人ならなんとかしてくれるかもしれない…。
「あっ、あのっ!」
「ん?えーと、氷室さんだったね。なにかな?」
「み、美神さんを助けてもらえませんかっ!!」
おキヌは自分でも驚いてしまうような大声で言った。
「ちょ、ちょっとーおキヌちゃんーいくらなんでもそれはー…」
「美神さんと言うと美神令子のことかね?君はその関係者かなにかかい?」
「そうだ、そうなんですっ!おキヌちゃんは美神事務所のスタッフで、それに美神さんはおキヌちゃんの命の恩人でもあるんですっ!」
「美神さんは素晴らしいGSで、霊能科の生徒なら誰もが尊敬している人なんです。私たちからもお願いします!鴫ノ池先生、美神さんをどうか助けてあげてください!」
3人が揃って膝に額がつくまで頭を下げる。
「ちょとー弓さんや一文字さんまでー困るわよー!」
「いや、六道さん、構いませんよ。3人とも頭を上げてください。そうか…美神令子の…。直接面識はないが、不動産関係の仕事を部下が依頼したら実に手際よく済ませてくれたと言っとった。彼女の事は私もなんとかしなきゃならんと思ってはいたんだが、なにせ選挙が近いから積極的には動きにくくてね…。しかしお嬢さんたちがそこまで言うのなら、この鴫ノ池、うまくいくかどうかは分からんが、とにかく一肌脱いでみようじゃないか。」
「ほ、ほんとですか!?ありがとうございます!!」
3人は思わず笑顔でもう一度頭を下げる。
「うむ、まかせておきなさい。どころでお嬢さんたち、その代わりと言っちゃ何なんだが、…」
中年大物政治家は口の端で妙な笑い方をしながら言った。
「私の頼みも一つ聞いてくれないかね?」
今までの
コメント:
- 六道家はやはり昔から続く名家なせいか、色々なしがらみも多いみたいですね。次期当主
が冥子で大丈夫なのでしょうか?(笑)
どうも胡散臭い政治家の登場で、ますます話が面白くなってきました。次回に期待です! (ヨハン・リーヴァ)
- ご、ごまんえんっ!?羨ましい…っ(どこに反応しているのか)
1から全部読みました。政治とからめて、難なく話を進めていけるというのはすごいです。
それにしてもこの政治家さんは…どうなんだろう、怪しげですね(笑)。次回楽しみにしてます! (kort)
- ↑×2、↑五万円もおキヌちゃんたちにくれるような政治家さんだから、てっきりいい人かと思ってしまった私って一体...(挨拶)。精神的に不安定なおキヌちゃんを弓と一文字がそれぞれのキャラに合った言い方で励まそうとしているところが微笑ましかったです。さて、やはりそうなると気になるのは政治家の鴨ノ池の「頼み」の内容ですね。その内容が何なのか、そしてそれに対しておキヌちゃんたちはどう反応するのか、楽しみです♪ (kitchensink)
- 六道母の腹が読めないところに、どす黒い感じの政治家。
とっても良い感じです。次回が楽しみ。 (居辺)
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