ザ・グレート・展開予測ショー

推定無罪!その 3


投稿者名:A.SE
投稿日時:(02/ 7/ 9)

「休学…うーん、確かに君が面倒を見てもらってる美神事務所があの状態なんじゃ、しゃあないのかもしれへんが…」
 おキヌの担任、鬼道が困った顔で腕を組む。
「この時期に休学するとまず間違いなく留年せなあかんようになるからなあ。できる事なら多少無理してでも出てきたほうがええんやけど…どっか他に下宿するようなわけにはいかへんのか?」
「実家に帰りなさいって言われてるんです。だから…。」
「それにしてもなぁ…。氷室自身どうなんや?休学してもええんか?」
 おキヌはうつむいたまま消え入りそうな声でで言う。
「いえ…。」
「…よし、ほんならとにかく今から校長に相談してみよう。」
 熱血、と言うほどではないにせよ、鬼道は熱心な教師である。それが今のおキヌにとってはかえって負担だった。どっちにしろ無理なのなら「そうか」と一言ですませてもらったほうがどれだけ楽かわからない。親友二人にも休学のことは言っていなかった。引き止められたくなかったのだ。
 浮かない顔のおキヌを連れて、鬼道が校長室の扉をノックする。
「失礼します、鬼道です。」
 しかしそこに校長はおらず、かわりにふたりは緊張感に欠ける女性の声で迎えられた。
「あらー、政樹くんにおキヌちゃんじゃないー」
「あっ、理事長、おはようございます…校長は?」
「校長先生ねーいま資料取りに職員室行っちゃったのよー。しばらくしたら戻ってくるわー。あらーどうしたのおキヌちゃんー浮かない顔してー。」
「彼女、休学すると言ってるんです…なんせ下宿先があの美神事務所ですから…。」
「あらそうー令子ちゃん今大変な事になってるものねー。でもだからってーおキヌちゃんが休学する事はないんじゃないー?」
「僕もそう思うんで校長に相談しに来たんですが…。」
 鬼道の後ろから、おキヌが小さく言った。
「あの…唐巣神父が実家に帰りなさいって…」
「なんだー唐巣君がそう言ったのー。それなら大丈夫よー。私が何とかしてあげるわー。」
「えっ…?でも…」
「あのねー唐巣君が言ったのはたぶんー女の子のおキヌちゃんには保護者が必要だけどーみんな今余裕が無くてー面倒みられないって意味なのよー。そうだわーいっそのことおキヌちゃんうちへ来なさいよー。部屋なら一杯余ってるわー。お食事もちゃんとさせてあげられるしー冥子もお話の相手が出来て喜ぶわー。」
「え、ほ、ほんとですか?…いいんですか?」
 おキヌの表情がぱっと明るくなる。
「もちろんよー。うちはこれでもー親戚に政治家やお役人がたくさん居るからーちょっとやそっとの事じゃ動じないわー。だから大船に乗った気持ちでいなさいー。まったく唐巣君たらーはじめから私に相談してくれればいいのにー」
「よかったやないか!氷室!」
 鬼道がおキヌの肩をぽんとたたく。
「はいっ!ありがとうございます…!」
 かおりと魔理に何もいわないでおいてよかった…!そう思いながら、おキヌはしばらくぶりの笑顔で二人に頭を下げた。

「令子ちゃんとこと同じ時給でなら雇ってやっても良いあるよ。」
 カウンターの上に置いたやたらでかい水晶玉を馬鹿丁寧にみがきながら、厄珍が言った。
「荷はこびやら配達やら、仕事はけっこうきついあるよ?それでもいいか?」
「いいっ!どうせ美神さんとこでも肉体労働させられてたんだからっ!」
「勝手にウチの商品持ち出したりしたら承知しないあるよ?」
「わかってるよ!そのかわり俺を実験台にすんのもなしだぞ。あと日給なっ!」
「それはわかったある。じゃあ、今日はもう閉めるから、明日から働くよろし。必ず午後4時までにくるあるよ。」
「わかった。じゃあ明日っ!」
 横島は、、軽い足取りで厄珍堂を出る。
「まったく…唐巣のおっさん、GSと全然カンケーないバイト紹介しやがって…。いくらなんでもそりゃねーだろ。おれだってGSの端くれなんだぞ。せめてそういう話の入ってくるところに居なきゃ…。とりあえず厄珍が雇ってくれて良かった。」
「先生っ!!新しい就職先が決まって良かったでござるなっ!」
 ぶつぶつ独り言を言う横島の後ろから元気のいい声が響いた。
「シロ…お前本気で俺のアパートに居候するつもりなのか?」
「勿論でござる!」
 シロは拳を作って見せながら強い口調で言う。
「このまま仲間を見捨てて里へかえったりすれば拙者いい恥さらしでござる。あの剣豪犬塚の子が尻尾を巻いて逃げてきたなどと言われるわけには断じていまいらん!!」
「それにしたって別に俺のとこに来る必要ねーだろ!おキヌちゃんは冥子ちゃんとこで世話になるんだから、お前もそっちに行けばいいじゃねーか。」
「嫌でござる!拙者横島先生の弟子でござるぞ!弟子は師匠の所に住み込んで当たり前!!昔から決まっておるでしょう?…あ、それとも、拙者が女だからでござるか?いつも先生が言う理性を失うとかいうやつ…。別に拙者構わないでござるぞ!心の準備はしておくでござる!」
 横島もいいかげん腹を立て、立ち止まって怒鳴る。
「そんなこと言ってんじゃねえ!!いくら俺だってお前みたいなガキを襲うほどケダモノやないわい!メシだよメシ!俺一人の食費だけでもぎりぎりなんだぞ!!このうえ大食いのお前が肉食わせろなんて言い出した日にゃ飢え死にしてまうわ!!」
「なんだ、そんな事でござるか。」
 シロは一向にひるむ様子がない。
「拙者も働くでござる!あのシンブンハイタツとか言うのをやって。拙者、朝の早さも体力もスピードも方向感覚も全部自信があるから、自分の食費ぐらい十分稼いだ上にまだお釣りをとってみせるでござる!」
「俺の部屋は狭いぞ!!」
「知ってるでござる。」
「俺の部屋は臭いぞ!!」
「分かってるでござる。」
「俺の部屋は汚いぞ!!」
「経験済みでござる。」
「勝手にしろっ!」
「やったーっ!!」
 シロが横島の後ろから思いきり抱きつく。
 横島は苦笑いしながらバンダナをなおし、シロを引きずって歩きはじめた。

 深夜の公園。
 その公園で一番大きなケヤキの枝の間から、月明かりに照らされた金色の毛皮がのぞいている。狐の姿に戻ったタマモである。
「あーッ腹立つ!!オオミエきって出てきちゃったけど、やっぱり人間て理解できない!なんなの?どーしてこんな真夜中の公園にゾロゾロ人が集まるわけ?なぜわざわざ木立の入り組んだ暗いところ選んで二人ずつ入ってくるの?おかげで私は狸みたいに木の上にいなきゃならないじゃない!」
 両後足の間から前へもってきた9本の尾を前足でまとめ、爪で梳き、舌で抜けた毛を舐めとりながら、タマモはつぶやく。
「一度は逃げても、狐は巣を荒らされた恨みを忘れないのよ。これさえやっとけば最悪の事態は避けられる。みてらっしゃい…!!」

 こうして4人は、まさしく美神事務所のスタッフにふさわしく、唐巣神父の賢明な忠告を揃って無視してしまったのである。

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