ザ・グレート・展開予測ショー

狐と少年と大人のお仕事。


投稿者名:NAVA
投稿日時:(03/ 1/10)





とある国。
とある土地。
とある時。

とある狐がおりました。
狐はとっても人が嫌い。
昔から人は狐を苛めていたのです。


ある日、狐は一人の少年に出会いしました。
そして狐は少年の姉になりました。
平穏な生活。
慕ってくれる弟。
優しい家族。
人間に心を開き出した狐。



だけど悪い大人達が狐を追い詰める。




今回はそんなお話。










あ、これは『狐と少年。』と『狐と少年の日常。』の続編なんで、そこんところヨロシク。











―――――――― 狐と少年と大人のお仕事。 ――――――――









キーンコーンカーンコーン…





放課後。
学校からの帰り道。
いわし雲の夕焼け空。
一緒に帰るいつのも面子。
交わされる他愛もない会話。





「それにしてもタマモちゃんって美人で頭が良くてええなー」


忠夫の幼馴染。
アタシが忠夫と仲良くしてると睨んでくる女の子。


「せやなー。
 前の学校でも成績良かったやろー?」


忠夫の親友。
クラスの女子からモテモテ。


「・・・・・・・・・・・・」


「どうしたん?」


横島忠夫。
変な奴。
でも優しい。
私の・・・・・・・大事な弟。


「何か見られてる気がする」


「え?」


キョロキョロする3人。


「怪しい奴なんておらへんで?」


ちょっと怯えてる女の子。
普通の女の子はこういう反応するのね。
覚えておこう。


「気のせいなら良いんだけどね」


忠夫が不安そうな表情を浮かべる。
忠夫だけは、私の正体を知ってる。
その不安そうな表情は、私を心配してるから。
だから私は手を繋ぐ。
ギュっと強く握り締める。
忠夫の不安を取り除くため。
私が私の身を守るため。

ごめんね忠夫。
お姉ちゃんは、アンタを利用してる。
人間は同族を庇うから。
アンタが一緒の時は襲ってこないの。
ごめんね忠夫。
お姉ちゃんは、そろそろ行かないといけない。

ごめんね・・・・・・・大好きな忠夫。















「こちら西条。
 やはり間違いありません。
 九尾の狐を発見しました」

「・・・どういう状況?」

「子供に取り憑いている気配はありません。
 実体を持って存在しています。
 しかし一緒にいる子供が操られているかどうかは確認出来ません」

「そう・・・しばらく尾行を続けてちょうだい。
 後で別の者をやるわ」

「了解。
 ところで令子ちゃんはどうしてます?」

「部下の報告ではまだ捜索段階よ」

「了解しました。
 ・・・妨害しますか?」

「貴方の判断に任せます。
 あの娘は政府の依頼を受けて動いてるから、下手に手出しは出来ません。
 臨機応変に対処なさい」

「了解」











狐は全てお見通し。
耳を澄ませば声が聞こえる。
大人達の声が聞こえる。










「はい。
 今日はタマモちゃんの好きな油揚げを使った肉詰めだよ♪」

「・・・ありがと」

「どうしたんだい?
 元気がないね?」

「何か心配事でもあるのか?
 お父さんに相談してみな?」


優しいお母さん。
優しいお父さん。
大事な優しい弟。

私・・・迷惑かけてる。
今この瞬間も監視されてる。
この会話も盗聴されてる。

「姉ちゃん?」


――――家族ごっこもここまでかな。


「・・・姉ちゃん?」

「あ、ごめん。
 何でもないの。
 ちょっと考え事してただけ」

「どんなこと考えてたんだい?」

「・・・今までこんな生活したことなかったなぁって。
 私、今幸せだなぁって」

にっこりと微笑む3人。
親子だなぁ。
ホントそっくり。
私も・・・こんな顔で笑えるようになりたかったな。

「タマモちゃん。
 俺達は正直、妖怪ってのがどんなのか分からん。
 でもなぁ。
 タマモちゃんは良い子だよ。
 大事な娘だ。
 だから何があっても守ってやるよ・・・っておい?」


ポロポロポロポロ。。。。。

ポロポロポロポロ。。。。。


目頭が熱い。
最後に泣いたのっていつだろう?
私・・・泣いてるんだ。
嬉しくって泣いてるんだ。



そして・・・別れが辛くて泣いてるんだ。















家中がシーンと静まり返る真夜中に。
狐はずっと起きている。
狐の五感は桁ハズれ。

お母さんは――――寝てる。
お父さんは――――イビキをかいて寝てる。
忠夫は――――クスッ

狐はそっと毛布をかける。
一緒に寝てる弟に。


スーッ


起こさないように。
引き止められたら。
泣かれたら。

私はきっと出て行けない。


だから・・・勝手に出て行く。
だから・・・黙って出て行く。


狐の荷物は多くない。
親がケチったわけじゃない。
モノがいらないわけじゃない。
いつか・・・出て行くその日のため。
さよならをする、その日のため。



あっという間だったな・・・。





優しかったよ。
楽しかったよ。
嬉しかったよ。
幸せだったよ。










「朝だよ!!
 起きなさい!!」


まずは忠夫を起こさなきゃ。
あの子は寝起きが悪いから。


「あれ?
 またタマモちゃんの部屋で寝てるのか。
 仕方の無い子だね〜」


父は娘がお気に入り。
母も娘がお気に入り。
女の子も欲しかったから。
忠夫も凄く喜んでたから。


「タマモちゃん?
 ごめんね〜?」


母は娘の部屋を見る。
娘と息子を起こすため。


「あれ?
 忠夫?
 お姉ちゃんは?」

「ん〜?」





横島一家は酷く悲しむ。

姉が、娘が、いなくなったから。











「ふ〜ん?
 オカルトGメンは一度発見するも、ロストしたわけだ・・・」

「あの・・・美神さん?」

「何?」

「本当に祓っちゃうんですか?
 他に方法無いんですか?
 あの子・・・凄く悲しそう・・・」


二人の女は車の中。

一人は美少女。
一人は美女。

「仕方ないじゃない。
 この仕事・・・失敗しようが、断ろうが違約金を取られちゃうんだからさ。
 そういう契約なのよ。
 しかも兆単位で」

「でも・・・でも・・・」

「とにかく。
 あの横島忠夫って子を尾けるわよ?
 行き先に心当たりがあるかも知れないし、九尾の狐の方から接触するかも知れない」











トボトボトボトボ歩く少年。

――――どうして、お姉ちゃんはいなくなったんだろう。
    ちゃんと、お風呂に入らなかったから?
    ちゃんと、宿題しなかったから?
    ちゃんと・・・ちゃんと・・・。


ゴシゴシッ

服の袖で涙を拭う少年。
姉が残した手紙は一言。


『ありがとうございました』


――――嫌いになっちゃったの?
    何でもするから・・・。
    これからはきちんと勉強するし、毎日自分でお風呂に入る!
    きちんと一人で寝るし、良い子にするから!!
    だから・・・だから、帰って来てよ!!!




少し離れた電柱の上。
一羽の烏がとまってる。
少年の様子をずっと・・・ずっと見つめてる。
悲しそうに見つめてる。
次第に少年の姿が見えなくなる。







そして烏は飛び立った。

何度も何度も振り返りながら。















・・・続くの確定w


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