ある初夏の話 後編
投稿者名:スイカ
投稿日時:(02/ 4/30)
ある初夏の昼下がり。
大通りの脇にある喫茶店。
店内は静寂に包まれている。
外の喧騒とは別世界のように思える。
客は二人だけのようだ。
お互いにどこを見るともなく、ただ居た。
「うれしいか?」
雪之丞が口を開いた。
「なにが?」
横島はミルクティーを見ている。
「美女達に囲まれてさ。うれしいか?」
「・・・・んー、うれしいかな」
横島は少し考えるように言った。
「へぇ、お前らしくないな」
「もちろん!とでも答えると思ってたか?」
「いや、確信してた」
「コノヤロウ・・」
言葉とは裏腹に怒っているようには見えない。
「でも、実際うれしいよ」
「そりゃそうだ。男の理想とも言う」
雪之丞を見る限り、理想と感じてないだろう。
「そこまで楽園でもないさ」
横島は苦笑した。
「それに、代償は払ってるつもりだけど?」
「くっくっく・・・はははは」
雪之丞は笑いを堪えきれないといった感じだ。
「そこまで笑うか?」
横島は雪之丞を軽くにらんだ。
「見てる立場としては笑える」
「少しは同情かなにかしてくれ」
「ちゃんと利益はあるんだろう?」
「毎日赤字」
横島は即答した。
「・・・不況か」
二人はお互いうつむいた。
「だれかに決めるってのはないのか?」
雪之丞はチラッと腕時計を見た。
「だれがいいかな?」
横島はふざけ半分で言った。
「ご自由にお選び下さい」
「迷うなぁ」
「あ〜、オススメ商品といたしましては・・・」
雪之丞は目を閉じた。
「美神、おキヌ、シロ、小鳩、小竜姫となっております」
「なんかヒドイな、おれたち・・」
横島はミルクティーを一口。
「気にするな。だれも聞いちゃいない」
「ん〜、じゃあ美神さんなんてどうだろう?」
「世界屈指のGS、スタイル抜群、たまにかわいい」
横島はその人を思い浮かべていた。
「守銭奴でございます」
雪之丞はゆったりとした言葉で言った。
「・・・・」
横島は一瞬うなずきかけた。
「おキヌちゃんは? 優しいし、料理スゴイうまいし、生き返ったし」
「天然入っております」
「・・・・」
「シロもいいな。おれを慕ってくれてる。散歩は結構ツライけど、妹みたいだ」
「ロリータ趣味をお持ちで?」
「・・・・」
「小鳩ちゃんかなぁ・・今まで苦労してたけど、これからは幸せそうだな。よかった」
「コブ付きでございます」
「・・・・」
「小竜姫さま。大人だし、美人、でもかわいいとこもあるよな」
「下手に抱くと、竜です」
「・・・・」
横島は頬杖をつき、外を見た。
雪之丞はゆっくり目を開いた。
「今まで・・」
「ん?」
横島は外を見ながら言った。
「今まであんま意識してなかったけど、ずいぶん個性的な人達が集まってるな」
「だからこそ、魅力的なんだろうよ」
雪之丞は横島に笑みを向けた。
「そうだな・・うん、確かにそうだ」
「そろそろ時間だ」
雪之丞が腕時計を見ながら立ち上がった。
「おう、そうか。またな」
「ああ、またな」
雪之丞は伝票を持っていった。
「お、おい・・いいのか?」
「たまには。どうせまたお前んちでメシたかるしな」
「なんか・・ありがとうな」
横島は片手を上げた。
「どういたしまして」
雪之丞は勘定をすませると、振り返らず店を出ていった。
「くくく・・」
一人になった横島に笑いが込み上げてきた。
店内には外の喧騒が響いている。
まだまだ暑くなりそうだ。
〜おわり〜
今までの
コメント:
- どうにも前編のほうが書き易かったです。
前編の雰囲気が崩れてしまいましたし。
でも、書きたかったことはほぼ書けたと思います。
また書きたいことがあったら書いてみようと思います。 (スイカ)
- 各女性キャラに対する雪の丞のコメントを聞いた後に無言になってるところに、横島クンの心情が良く表れてますね(笑)。最後まで兄貴(っぽい)相手役に徹した雪の丞に一票です♪ (kitchensink)
- 愛子、愛子ォオオォォオオォオォオオッ!!
……
いえ、なんでもありません。
これで良いんです、これで……(泣) (魚高)
- いや文句なしです。男二人でここまで話をだらけさせずに続けられるとは。まったりした雰囲気が最後まで壊れなかったのも○です。 (ロックンロール)
- あっ! ゆっきーが誤作動起こしてるッ!(御挨拶)
失礼しました。しかし、おどけて丁寧語(というか事務口調)でしゃべる雪之条は、ちょっと違和感ありすぎ(汗)
ただでさえ男性キャラの少ない『極楽』で『こんな話』ができるのは彼くらいしかいなさそうではありますが……。
まあ、ゆっきーも彼女ができて少しは丸くなったと。でも、口の悪さは相変わらずであると。そーゆーコトで。
ところで横島くん、バンダナに盗聴器が……(笑) (斑駒)
- なんだかオトナ〜な会話ですね。どこがどう、と言われると困ってしまうんですが。余裕があるって言うか?
この二人のコンビって、いつもバカやってるか戦ってるかの印象が強いので(笑)余計にそう思うんでしょうか。
オトナ〜な二人なので、雪の丞の口調がかなり新鮮でした。横島君も。なんかこういう二人も大好きだなあ♪ (けい)
- コメントどうもありがとうございます。
魚高さん。愛子、ルシオラやその他いろいろ候補があったのですが
増やすと文章としてダラダラなので、この5人に絞ってみました。 (スイカ)
- 何やら、さらりとリアリティがありますね。
現実に彼らが存在しているとしたら、こんな会話をしていたのではないか。そう思えてしまいました。
紙面には出てこなかった、影の生活の一幕と云う所でしょうか。 (黒犬)
- 横島君と雪之丞君が、普通の友達って感じで面白いですね♪
そーなんだー。男の人って、男同士だとこんなコト言ってるんだー。 (猫姫)
- いいぞぉッッ!!前作も良かったですけど今回の作品も良いですねッッ!!!
…しかし雪之丞…その会話誰かに聞かれてたらどーするんですかああッッ!!?(笑)
命はもっと大切にするもんです!!(誤爆笑) (みっちー)
- ものすごくいい話ですね!雪之丞がとてもいいです。 (3A)
- Playboy? (T.I)
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