ザ・グレート・展開予測ショー

交差じゅーさん


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/11/ 7)

力が、ないと虐げられる。
踏みにじられ、そして、自分の持っているものを、築いてきたものを奪われる。
だから、力が欲しいと思ったのだ。
奪われない力を。
守れる力を、悔しさに泣く事のないように。
歯を食いしばり、拳を握り締め、顔を上げて、前だけを向いて─。
だけど、そうして得た力、は異常ともいえるもので。
それこそ、普通のものではない。
藤吉郎は、ありえないものを見るようなシロとタマモの視線に、苦笑する。
これを、使うとみんな、普通ではなくなるのだ。
線を一本引くようになる。
あの、冷たく広い草原の地に住む人々も。
優しい、あたたかいスープをくれた、あのひとたちも、自分が力に、目覚めた時、顔は笑みのかたちを作りながらも、その瞳は怯えていた。
それまで確かに自分にくれた、あたたかいものは消えて代わりに与えられたのは、よそよそしい、いとわしいもの。

一方シロとタマモは今の数秒の出来事を反芻していた。
がこんっ
と車がつのめったと思った瞬間身体が飛ばされたのだ、三人とも。
タマモはちっと舌打ちをして体制を整えようとしたその瞬間、
前にあった藤吉郎の姿が消えたのだ。
瞬きすらする時間もなかった。
空気もなにも動かなかった。
まわりの『空間』ごと、消えたのだ。
瞬間移動とは違う、もっと異質なものである。
瞬間移動は、自分だけを移動させるものだ。
「ごめんっ」
そして、後ろから聞こえる、声。
あっと思う時間もなく、かかえられ空間ごと移動させられる。
更にシロをもかかえ、たんっとくるまの上に移動する。
一瞬の出来事である。
自分と同じくらいの少女をふたりかかえて、『空間を移動させる』のだ。
同じ空間の亀裂を一瞬にして、見つけ出しさらにはふたりをかかえて、移動させる。
言葉にすると簡単なのだが、とんでもないことである。
少なくとも、こんなことできるやつは二人の記憶にはいない。
下手をすると、時空のはざまに飲み込まれる。
「…なんか、ものすごい事体験したかも」
ぼそっとタマモ。
「で、ござるなー…」
こくこくとシロ。
「じぇっとこーすたーよりスリルあったっ!!!」
がばっと立ち上がり、タマモは笑う。
「すごいでござるなーっ拙者もそーゆうのしたいでござるっ」
きらきらと瞳を輝かせ。、シロ。

「え?」
てっきり、よそよそしい言葉が降ってくると覚悟していた藤吉郎は、思わず聞き返す。
「どーするんでござるかっ!?拙者にもできるでござるかっ?」
きらきらと瞳を輝かせ、尻尾を激しく左右に振りシロ。
「……わたしにはできないかなー」
できるんなら教えなさいという無言の圧力を込めタマモ。
「…えと、嫌じゃないか?こーゆう人と違うの?」
ぽりぽりと、頬をかき藤吉郎。
「んなの、ワタシ、狐だし」
「拙者、侍でござるし」
きっぱしと二人。
なによっあんた犬でしょーがっというシロに対するタマモのつっこみを聞き流しながら藤吉郎は笑った。
…というかここのメンバーにヒトと同じがいいだろうと言う意見を求める方が無理である。


そして、苦笑しながら藤吉郎がなにか言おうとした瞬間


きいいいいんっ

澄んだ、まるでガラスが砕け散るような音を響かせ、ヒカリにつつまれた。
つづく

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