ザ・グレート・展開予測ショー

知ってるようで知らない世界―1―


投稿者名:誠
投稿日時:(03/11/ 2)

雨が地面を強くたたく。見たところ20歳になるかならないかというくらいの顔立ちをした少年が倒れている。Gジャンを着て額にはバンダナが巻いてあるようだ。

−キーーーーーーー−

甲高いブレーキ音がして少年の横に赤い車が止まった。

「大丈夫ですか?」

巫女服をきた少女が彼に話し掛ける。しかし彼は動かない。

「おキヌちゃん、風邪ひいちゃうわよ。」

「でも美神さんこの人こんなところで倒れてたら風邪ひいちゃいますよ。」

美神と呼ばれた女性は整った顔を少しゆがめて考えると軽くため息をはいてつぶやいた。

「わかったわ。じゃあとりあえず事務所に運びましょう。」

おキヌと呼ばれた巫女服の女性はうれしそうに笑うと美神に手伝ってもらいすぐそこにある美神除霊事務所と書かれた看板のある古い洋館へと少年を運び込んだ。



「ただいまー」

美神は奥に向かって帰ったことを知らせた。するとパタパタと歩く音がして美しい女性とめがねをかけた髪の毛が後退している男性、そして整った顔をした金髪の少年がやってきた。

「遅かったわね令子。そんなに強い相手だったの?」

「数が多かったのよママ。おキヌちゃんのネクロマンサーの笛のききが悪いのが何体かい
たから時間がかかったのよ。」

女性は母親らしく、どこか二人はにている。

「しかし令子君。君は道具使いだけど女の子二人では道具もあまり持ち歩けないし大変じゃないかね?」

「そうなのよ神父。やっぱ新しいバイト探すかな〜。そうだ!ピートあんたここで働かない?」

「い、いや、遠慮しときますよ。僕は先生のもとでまだまだ教わらないといけないことがありますから。そういえばおキヌちゃんはどこにいったんですか?」

冷や汗を流して勧誘を断るとうまく話題を変えることに成功する。

「おキヌちゃんなら今そこの部屋で拾い物をみてるわ。」

「拾い物ですか?」

ピートという名前らしい少年はいぶかしげな顔をする。

「まあそろそろ行かないといけないわね。」

令子はそうつぶやくとドアを開け部屋に入っていく。部屋はまだ起きない少年とおキヌがいた。

「美神さんぜんぜんおきないんですけど。」

おキヌは心配そうにいう。

「令子君!拾い物って人じゃないか!」

神父はそう叫ぶと神に自分の教えは間違っていたなどと懺悔をはじめる。

「とりあえずぬれているようなので風呂に入れて暖めないと風邪を引きますよ。」

ピートはそういうと少年を持ち上げ神父とともに風呂場へむかった。



「おキヌちゃん、なんで上着を脱がして体をふく事ぐらいしなかったの?あれじゃ本当に風邪引いちゃうわよ。」

「美智恵さん、それが・・(うわーーーーーーーー。)

おキヌが何かいおうとすると風呂のほうからピートのものと思われる叫び声が聞こえてきた。三人は風呂に行くと息をのんだ。まだおきていないが上半身裸になっている少年がいた。その体は筋肉質とはいえないが無駄な脂肪はなく引き締まった戦うための肉体といえた。しかし、皆が驚いたのは体中いたるところにある大小様々な傷だった。体を覆い尽くすようにある傷は傷を見慣れている5人を驚かせた。特に胸の中心にある傷は体を貫いたのではないかというほど痛々しくなぜ死んでいないのか不思議なくらいのものだった。

「すいません。とりみだしました。」

ピートはうつむき、恥じ入るように言うと神父とともに作業を再開した。



女三人は部屋に戻ると考え込んだ。
美智恵は男の危険性を、令子はどのようなことをしたらあんなに傷だらけになるのかを、そしておキヌはあまりの痛々しさにショックをうけた。三者三様に少年の今までの人生について考えをめぐらせていたが美智恵が突然口を開いた。

「令子、あの子どう思う?」

「どうって・・・。やくざには見えないわねあの若さじゃ。」

「あの傷、全部かどうかは分からないけどほとんどが霊障だと思うわ。」

「なんですって!」

令子が顔色を変える。

「ということは同業者ってことですか?」

おキヌがたずねる。

「一概には決めつけられないけどその可能性は高いわね。ママ、あの子をどうする気?」

「とりあえず起きたら話を聞いてみるしかないでしょう。」

すると少年を伴って神父とピートがやってきた。少年はバスローブを羽織っている。

「すいませんお世話になりました。」

「そんなことよりあんたは何者なの?それにその傷はなに?」

令子が立て続けに質問をする。

「えーっとそれが俺にもわからないんです。」

「えっ記憶喪失なの?」

少年の言葉に美智恵がショックを受ける。少年はそのセリフを聞いてすいませんとつぶやいた。

「名前くらいはわからないんですか?」

「あ、それは服に書いてありました。横島忠夫っていうみたいです・・・え〜っと」

少年が考え込んでいるのを見てみんな自己紹介がまだだということに気づく。

「わたしはキヌ。氷室キヌです。おキヌってよんでください。」

「私は美神令子よ。この事務所の所長をやってるわ。おキヌちゃんはここで働いているわ。」

「私は美神美智恵、令子の母よ。」

ここで少年は驚いた。

「どうしたの?」

「いや、まだ20代くらいに見えるのに母親なんていわれたのでびっくりしたんです。」

それを聞いて美智恵の顔が目に見えて上機嫌になる。しかし、

「もう40になるくせに・・・。」

令子がボソッとつぶやいた言葉に反応した美智恵は令子を引っ張り部屋の外へ連れて行く。そして残された4人の耳に断末魔の声が聞こえてきた。

「わ、私は唐巣といいます。みんなには神父とよばれているよ。よろしく。」

「は、はい、よろしくお願いします。」

とりあえず聞こえてきた親子喧嘩の声は聞こえなかったことにしたようだ。

「ぼくはピエトロ・ド・ブラドー、ピートと呼んでください。」

とりあえず全員自己紹介が終わったとき美神親子が戻ってきた。

「で、何であんな雨の中倒れていたのか思い出せないというわけね。」

「今西条君が調べているはずだから明日には結果が出ると思うわ。」

美智恵が残業を任せている部下の名前を挙げた。

「これからどうするのかね。良かったら今夜は私の教会に泊まるといい。明日には調査報告が出るんだろう?」

「いいんですか?よろしくお願いします。」

「そうね。その辺が妥当なとこかしら。明日の昼には調査報告が出ると思うからまた明日つれてきて頂戴ね。あ、そうだついでに食事くらいみんなで食べましょうよ。今日は私が作るわおキヌちゃん。」

どうやら美智恵は横島を気に入ったらしく食事の用意を始めた。



食事の席では最初この事務所の仕事、除霊について話していたが。途中からおキヌが通っている学校の話、美智恵の仕事の愚痴、そして食事にくわわった美智恵の娘、ひのめを自慢しはじめた。それはもう延々と・・・。





食事も終わり、ピート、神父、横島は教会にかえってきた。横島はなにやら考え事をしていたが急に話しだした。

「俺皆さんと初めてあったはずなのになんか懐かしく思えるんです。はじめて会った気がしないんです。」

神父は少し驚いたがやさしい声で横島に語りかけた。

「昔どこか出会っているのかもしれないし違うかもしれない。でもそんなに焦って思い出すことはないよ。」

神父のやさしい言葉に少し落ち着いた横島はおやすみなさいといってあてがわれた部屋へと入っていった。

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