ザ・グレート・展開予測ショー

アシュタロス〜そのたどった道筋と末路(涙)〜冥子とマー君・前編


投稿者名:♪♪♪
投稿日時:(03/10/31)



 この物語は、GS美神をテーマにしたIFです。
 アシュタロス以外にも本編とは著しく異なる点があるためその点はご了承ください。


 特に、六道冥子ファンの皆様、彼女と鬼道正樹のカップリングが嫌いな方――ごめんなさい、好きな人も読まないほうがいいかもしれないです(激汗)。






 それは、いつもの除霊のはずだった。
 共同作業という、一風変わった仕事ではあった。が、建築物に住み着いた悪霊退治というのは、アシュタロスがべスパに殴られるのと同じくらいの頻度で舞い込んでくる有り触れた仕事のはずだった。


(――ああ、成る程。最上階の天窓が鬼門とかさなっているんだな)


 横島の中にいるアシュタロスが状況を聞いただけで断言した。原因はわかっている。対処法もわかっている。
 至極、簡単な仕事のはずだった。


 ただひとつの不確定要素の進入で、『ありふれた』『簡単な』という装飾語は見事に爆砕された。


 その協力するGSが、美人だったのだ。
 しかも、ルシオラやべスパとは違うタイプの、のほほん美人。この人のどこに、令子が恐れおののく要素があるのか!


「ずっと前から愛してました〜!」
「あの〜? 確か、初対面だったと思ういますけど〜」
「時間は関係ありません! ぼかぁもう! ぼかぁもうぅぅぅぅぅっ!!」
(ああっ! ずるいぞタダオ! 私にもなにか言わせろ〜〜〜!)
 冥子の手を握る横島に文句たれるアシュタロス。多分、美神やおキヌが後ろにいなければ、問答無用で体から飛び出していただろう。


 世の中には、理不尽というものが無数に存在する。
 そう言って、『いつも通り』女性に飛びついただけなのに――何故、あんな目にあわなければならなかったのだろうか?


 きっかけは、冥子の助手らしき男の一言。


「……夜叉丸、十二神将、フクロにしたれっ!」


 げしっ! どがっ! かみっ! シビビビビビビッ!! ザクッ!


「どああああああああああああっ!? なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
(みぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? 式神となぁっ!?)


「世の中理不尽やぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 数匹のけだものと童子姿の式神に袋叩きにされながら、横島は自業自得の言葉の意味を無視するかのようにそう叫んだ。





『アシュタロス〜そのたどった道筋と末路(涙)〜冥子とマー君・前編』





「相変わらず過保護で容赦ないわねー」


 黒こげ肉と化し、おキヌに介抱される横島を大して気にせず、令子は指示を下した男に話しかけた。黒髪を総髪に結い上げた美男子――鬼道政樹は、ふんと鼻を鳴らして、


「当たり前です。冥子ちゃんの敵は僕の敵や」
「……初対面の頃のあんたにその台詞聞かせてやりたいわ」


 自分が巻き込まれたあの大騒動を思い出し、こめかみ引きつらせる令子。引きつったのは鬼道も同じことだった。こちらは図星を疲れた苦しみを表した引きつりだったが。


「そ、その事は言わんといてください。冥子ちゃん、その時の事思い出すと泣きよるんです」
「……ご愁傷様。ご香典は出さないわよ」
「死んだことにせんといてやっ! しかもけち臭いしっ!」


 ……何ゆえ、この時点で鬼道政樹が存在して、しかも冥子の助手に納まって、しかも恋人関係なのか。
 それについては、後々語られることになる。


「? まーくん、どうしたの?」
「あー、いや。冥子ちゃんは気にすることないで」
 疑問符を浮かべる冥子にぱたぱた手を振って応答する鬼道。
「ささ、ここは僕らに任せて、冥子ちゃんは美神はんと一緒に行ってきぃ」
「うん。わかった〜。
 それでね〜、まーくん」
「なんや?」
「上手くいったら〜……」
「わかったわかった。デートでも何でもしてあげるから、がんばりぃ」
「ありがと〜! 私、がんばるからね〜♪」
 嗚呼……この作品にして初めてもほのぼのバカップル……作者、書いててほのぼのしますよ。(じ〜ん)


 冥子と令子がマンションに突撃してから十分。
「ひ、膝枕――」
(もう、死んでもええ……)
「よ、よこしまさーーーーーんっ! しっかりーーーーーーーっ!」
 横島は、いい感じで死の淵を、正確にはそれに伴う膝枕という現実を堪能していた。幽霊だから感触はないが、してもらっているという現実だけでも堪能せねば。
(……横島さん、意外と体細い……死んでくれたら(え?)、手とかつなげるのかな?)
 意外と、おキヌのほうもこのシュチュエーションを堪能してたりしたが。



 その頃のルシオラ。
「…………」
「どうしたんでちゅか? 微妙な顔して」
 パピリオの言うとおり、ルシオラの顔は本当に微妙だった、怒ってるのか、驚いてるのか、あせっているのか……すべてごちゃ混ぜにしたようなそんな顔だ。
「ちょっとね……タダちゃんに危険が迫ってるような期がするんだけど自業自得とも言えるかもしれないし、ライバルが現れたみたいな感覚はあるんだけど、タダちゃんが不幸になるような気が……」
「それは……微妙でちね(汗)」
 あんな恋人を持ってしまったが故に、カンが異常に発達してしまったルシオラとべスパ。その勘は、TVで見たように正確なのだと、パピリオは知っていた。




「……しゃあないな」
 昇天しかける横島に、鬼道は背後を振り返って、背後に控えていた数匹の式神に口を開いた。
「ショウトラ。ちょっと直したってくれ」
 名前及ばれたその犬は、のそのそと横島に駆け寄り――


 かぷ。もふもふ。


 食いはじめた。
「ああーーーーーーっ!? 食べちゃだめーーーーーーーーーっ!!!!」
「こいつも、いい加減頭にきとったみたいやな(汗)」
 冥子の敵は十二神将の敵ということだろうか。


「そういえば……なんで、鬼道さんは冥子さんの式神に命令できるんですか?」
 横島のヒーリングが進む間、おキヌは鬼道と雑談して時間をつぶすことにした。鬼道も暇だったから、その意図を読み取って話に嬉々として応じる。


「ああ、それか。僕は冥子ちゃんの式神奪い取ったことがあるんや」
「へー」
「へーって……驚いてもらわな張り合いあらへんなあ。かなり特別なことなんやで?」
「そうなんですか?」
「ああ。式神使い同士の決闘……負けたら、式神を相手に譲るんやけど、それがなー」


 鬼道と冥子の決闘……原作『式神デスマッチ』の話の流れは、原作よりも速く、横島の就職前に行われていた。
 本編と違うのは話の開始位置だけではなく、その試合の経過もかなり変わっていた。
 鬼道が、夜叉丸が暴走する寸前に、吸収した十二神将を休眠状態にしたのだ。そうすることで、霊力の負荷を半分以下に押さえ込み、十二神将をい取り込んだ夜叉丸をなんとか制御しての桁のである。
 んがしかし。
 ここでいきなり冥子が泣き出したのだ。ワンワン泣くのではなく、かなり深刻に悲しみだしたのである。それも当たり前、冥子にとって式神は道具ではなく友達であり、加えて彼女はその特異性(後述)ゆえに友達が一人もいなかった。
 そんな彼女にとって、式神の消失は友達を奪われたのと同じ。泣かないわけがない。
 うろたえたのが鬼道である。親に言われるまま、復習の道具として育てられた彼は、普通の小学生並みの幸福を一切奪われた。
 それ故。
 女の子とまともにスキンシップを取ったこともなかったのだ!(爆)
 はじめてみる女性の泣き顔にたいし、無性に保護欲を書き立てられた鬼道は、復讐心と保護欲の狭間でパニックを起こし……結果、式神のコントロールを失い、見事に自爆した。
 文字通りの自爆。本当に爆発し、鬼道とその親父殿はぶっ飛ばされて重傷を負った。冥子のおふくろさんは娘連れてちゃっかり非難したため無傷だったが。
 これが、式神デスマッチ引き分けの真相である。
「その後はもう、ベタ惚れしてもうてなー」


 カッ!


 ……マンションの倒壊が始まったのは、その瞬間だった。

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