ザ・グレート・展開予測ショー

不思議の国の横島 ―18中半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/11/ 5)


<前半からの続き>




エミは哀しそうだ。だが、俺は反論したい。

「ま、待て!味方とかそういう話じゃないんだ!俺はただ…」

これ以上冥子ちゃんの暴走に巻き込まれたくないだけなんだーーーーーーーぁぁっ!!!

「横島さん〜〜〜私嬉しい〜〜〜♪」

―― ピト♪ ――

冥子ちゃんもこれ以上話をややこしくしないでーーーーーーーーーーーーぇぇっ!!!

「うう……うわぁあああぁぁっっ!!!」

―― ドカ!ボコ!ボカ!バキ! ――

エミは泣きながら滅茶苦茶に両手を振り回す。狙いなんてまったく付けていないみたいなのに、何故か全てが正確に人体の急所を的確に捉えていた。
ここで人体ってのは当然俺の体です。

「ちょっと!私の事無視しないでよねっ!?」

今度は、このやり取りに置いて行かれた格好になった令子ちゃんが文句を言う。

「そっちの事情なんか知った事じゃないけど、とにかく私のコレ!コレやった奴は誰っ?!!」

令子ちゃんは額のタンコブを指差して俺達に詰め寄った。

「え、えと…ソレってどうしたの……かな?俺達と何か関係が?」
「石が飛んできたのよ、石がっ!この辺で何かしてたのってアンタ達なんでしょっ!?」

ああ、なるほど。飛んできた石に当たってタンコブが出来て、令子ちゃんはそれで怒っているんだね。
エミの方とは違って、こっちは状況が飲み込めた。さっきの冥子ちゃんの暴走が原因だな。

「私の顔に傷をつけるなんて…覚悟は出来てるんでしょうねっ!?」

状況が飲み込めたからどうだ?って言われてもどうしようもないけどさ。

「うるさいわねっ!!そんなのツバでも付けときなさいよ!こっちはそれ所じゃないのっ!!」
「なんですって〜〜ぇぇっ?!!」
「あ〜〜〜ん〜みんな怒ってばっかり〜〜」

これは……なんだか収集がつかなくなってきているような?

「本当にムカつくわねこの黒バカッ!」
「黒バカ言うな!この茶クソッ!!」
「あ〜〜ん〜〜喧嘩嫌い〜〜〜」

エミと令子ちゃんは、額をぶつけ合う程の距離でガンのくれ合い飛ばしあい。
火花飛ぶ飛ぶ……
そして冥子ちゃんは2人の迫力についていけずにオロオロ、ワタワタとして…

―― あっ! ――

冥子ちゃんの目じりがジンワリとしてきた。これは非常にまずい兆候です。
これをほおって置いたら、先程までの俺の苦労は水の泡になってしまう。
でも……

「喧嘩しちゃ駄目〜〜〜〜〜ぇっ!!!」

―― ドゴーン!ドガガーン!ドドドッ!ドゴゴゴーーーーンッ! ――

もう手遅れでした。

「うわああっ!?うぎゃ!な、何コレッ?!!イダッ!?」
「ちょっ?!これって式神っ?!アダッ!!これってこの娘のっ?ちょっと待っ…ギャウッ!!」

先程までの剣幕もなんのその。エミも令子ちゃんも今は式神から逃げる事に精一杯だ。
まあ、このプッツンから逃げ切れるわけも無く…

「うわ〜〜〜〜〜ああぁぁんっっ!!!」
「きゃーーーーぁっっ!!!」
「死ぬっ!?死ぬーーーぅっ!!!」

3人の悲鳴が見事に重なる。本当は俺の悲鳴も重なって然るべきところではあったが…

―― ハグハグハグハグ ――

「(おーい、ビカラ〜…俺は美味いか〜?)」

イノシシの式神ビカラが俺をお食事中だったので、悲鳴を出す事も出来なかった。
GS試験、中止にならないと良いなぁ…
などと思いつつ、俺の意識は薄れていく。

………………










「…という訳さ。ど、どうかな?みんな分かってくれたかな?」

あれから、何とか皆を……というか冥子ちゃんを落ち着けさせて俺は3人に色々と事情を説明した。
冥子ちゃんが俺の弟子だって言う事やら、エミが俺の被保護者だって事や、令子ちゃんと知りあいだって事を、なるべく客観的に説明する。
エミと令子ちゃんは説明してる間もずっと物凄い視線を叩きつけてきたり、お互いの視線がぶつかるとプイッて横を向いたりしていたが、それでもなんとか最後まで話を聞いてくれた。
冥子ちゃんはこの2人の剣幕が怖いらしい。ずーっと俺の影に隠れていた。
時々そーっとと2人の方を覗き込むのだが、その度に2人の視線が突き刺さり、ビクッとして又俺の背中に隠れる。
エミと令子ちゃんにしてみたら冥子ちゃんのプッツンの方が怖いって言いたいだろうけど…

「まあ……だいたいの話は分かったワケ。この女は気にいらないけど。」
「それはこっちの台詞よ。ま、とにかくみんな横島……さん絡みなのね…」

不精不精というのが思いっきり伝わってくるが、とにかくなんとか落ち着いてよかった。

「と、とりあえずみんなこれから一次試験だろ?!もう少しではじまるし、ひとまずこの辺にしてさ?準備とかしたほうが良いと思うんだよ。」
「あっ!そうだった!?受付行かなきゃっ!!」

俺はなんとか話題を変えようと必死になる。
本当にこれ以上は勘弁して欲しい。切にそう願った。
その願いが届いたのかどうか、令子ちゃんがハッとして立ち上がる。

「まあ、今はこれでいいわ!でも……後でそこのバカ黒女とは絶対決着付けるからっ!!」
「なっ?!このっ…」

令子ちゃんはそんな捨て台詞を落として走り去っていく。
エミが何か反論しようとしたが、既に令子ちゃんは大講堂の中に消えていた。

「ま、まあまあ。エミも落ち着いて……な?」
「分かったわよ。私もこんな事でコンセントレーション乱したくないし……でも!」
「ビクッ!?」

エミは冥子ちゃんに向かってビッと指を差す。その迫力で、冥子ちゃんはビクッとした。いや、ビクッと言った。

「あんたにも負けないわ!」
「え、え、え〜〜?」
「それだけは覚えておくワケ!じゃあ二次試験で会いましょう。」

エミはそれだけ言うと、クルリと俺達に背を向けゆっくりと会場に向かって歩き出した。

「横島さ〜ん〜私〜〜何かしたのかしら〜〜〜?」
「いや、あれだけやれば十分なんじゃないのかな?」

あれだけ暴走させておいて、自分が悪い事をしたって思ってない冥子ちゃんに逆に感心してしまう。

「え〜〜?なんの事〜〜?」
「いや、分からないのなら……まあそれは良いことにしておこう。それより、そろそろ冥子ちゃんも会場に入って準備しなきゃ。」

俺はそう冥子ちゃんを促した。言っておくが、決して話題を逸らそうとした訳じゃないぞ。

「うん〜〜それじゃあ行って来ます〜〜…横島さんはどうするの〜〜?」
「俺?ああ…俺はこれからスタッフとしての雑用があるから……どのみち一次試験は見学できないし。ここで一旦お別れだな。」

俺もこれから一次試験受けなきゃいけないしね。

「昼食の時間になったらまたこの辺で落ち合うって事でどう?」
「分かった〜〜それじゃあ後でね〜〜♪」

冥子ちゃんはニコニコと手を振って会場に向かった。
俺も冥子ちゃんが見えなくなるまで手を振る。

―― ニコニコ ――

勿論しっかりとニコニコ笑顔でだ。
そして、冥子ちゃんの姿が建物の中に消えた。

「だーーーーーーーーーーーぁぁっっ!!!たまらんっ!?このプレッシャーはたまらんっ!!」

ようやく3人から解放された俺。
疲れが一気に全身を駆け巡り、俺はその場にへたり込んだ。

―― この3人の相手するくらいなら、メドーサとサシでやり合うほうがマシかも知れん! ――

半ば本気でそう思う。
まだ試験も始まっていないのに、こんな所でこれほど消耗してしまうとは……
何もかも忘れて、このままここで昼寝したら良い気分だろうな。
そう思わんでもなかったが、流石にそれもまずい。
ボチボチ俺も行かないと、試験に遅れちまう。

「しょうがねぇ……行くか。」

俺はよっこらしょと立ち上がり、みんなの向かった方向とは若干違うく、保健管理センターの方に向かって歩き出した。

………………




<後半に続く>

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