ザ・グレート・展開予測ショー

〜『キツネと姉妹と約束と 第2話』〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 2/18)


    
   
  〜『キツネと姉妹と約束と その2』〜




「妖狐の・・子供?」


簡素すぎず、さりとて豪奢すぎず・・いかにも公務員然とした部屋構え。
・・Gメンの応接室で、美神、おキヌ、シロはそれぞれ顔を見合わせる。

室内の中央には心労のためか、幾分顔色の悪い隊長・・・もとい美神 美智恵が腰掛けていて・・

「あなたたちには伏せておいたんだけど・・実はGメンが所在を確認している妖狐は2体いるの。」

神妙な顔でそんなことを口にする。

・・・・。
・・・で、次の瞬間・・・

「ちょ・・・待ってよママ!!うちにはもうこれ以上は無理よ!!」

「そんなことありませんよ美神さん!大勢いたほうが楽しいじゃないですか。」

「・・妖狐の子供でござるかぁ〜タマモみたいに根性がひん曲がってないといいでござるなぁ・・。」

・・なんて、すでに事務所でその妖狐を預かることを前提にした会話が目の前で展開されて・・・

「ストップ!!ストーーーップ!!」
それに、美智恵は頭を抱えながら待ったをかける。


「・・もう・・。こうなると思ったから伏せておいたの・・。
 その子を預かれ、なんて一言も言ってないでしょ?」

「・・そ・・そうなの?」

放っておけば、部屋の割り振りをこの場で話し合いかねない勢いに、頭を痛め・・
・・しかし、予想通りといえばあまりに予想通りの反応に・・彼女は少しだけ苦笑する。

「・・そう。・・というよりはむしろその逆。
 その妖狐が外部と接触するのを、どうしても避けたい・・特にタマモちゃんとは」


美智恵の脳裏に浮かんだのは・・
囚人服に身を包み、いつも牢獄の中で姉の名を呼び続けていた一人の少女。
なにも知らない・・まだ本当に小さな・・・・

少しだけ影を落とす美智恵の顔を見つめながら、おキヌが不思議そうに首をかしげ・・、

「・・タマモちゃんと・・?え・・でもそれじゃあ・・・」

「・・それがあなたたちだけを呼んだ理由。
 対象が・・あの子が事務所に近づく前に・・なんとか捕獲してほしいの。」

                       
                    
                      ◇



ちなみに・・この世には『手遅れ』なんて言葉があったりする。


「・・ねーさま!!」

事務所のドアが開くなり、スズノは凄まじい勢いで跳躍した。
その軌道の先は当然ながら・・・おやつを片付けようとしていたキツネの少女。

「・・・はい?」

間の抜けた声を上げるのも一瞬。
気づけば、自分よりも二まわりは小さいであろう銀髪の少女が胸に飛び込んできて・・

・・・ガバッ!!!

・・そのまま腕いっぱいに背中へとしがみつく。
愛しそうに・・確かめるように・・決してその手を離そうとはしない。


(・・?・・・この子・・妖狐・・?)

自分と同質の霊波を感じ取り、彼女は一瞬、眉をひそめて・・・
・・がそれは本当にわずかな時間。さらに衝撃的な発言に、タマモはわが耳を疑った。

「・・タマモねーさま・・・。」

「・・ね・・姉さま?」

目をウルウルさせられても・・・
その・・いつから自分は姉になったのだろうか?
・・というよりなんで自分は心の中でこんなシドロモドロになっているのか・・

困惑しながら・・かといって、いたいけな少女を振り払うわけにもいかず・・・
タマモは呆然としたまま固まって・・・・


「おお〜・・仲良くやってるみたいだな。」

少し遅れて、横島がヒョコヒョコと部屋に入ってくる。


「よ・・横島?Gメンに呼ばれたはずじゃ・・・って、それよりこれはどういうこと?一体何がなんだか・・・・」

戸惑うような声に横島は・・


「・・ん?やっぱ記憶にはないか・・。スズノ、人違いじゃねぇんだよな?」

「うむ。タマモねーさまに間違いない。」

「・・だってさ。よかったなタマモ、妹ができて」

・・こんな一方的なやりとりで返してきて・・・・・

・・・・・。
・・・。

・・よかった・・?・・まぁ、そこはかとなく・・よかったという気がしなくもないが・・
美神たちには黙っていたが、実は妹が一人ぐらい居てもいいかなぁとは思っていたし、
これはこれで・・・・

・・・・・。

・・・・・・・。

「・・って全然よくないでしょーがっ!!」

思いっきり流されかけていたような気もするが・・
地を取り戻したように、タマモは思いっきり声を張り上げる。

(・・落ち着きなさい・・私・・。わめいても事態は進展しない・・・。ここは冷静に・・)


「よし。じゃあ姉妹そろったところでパァっと歓迎会でも開くかぁ・・。 
 つまみ買ってこようぜスズノ。」

・・前言撤回。事態は進展する・・ただし悪いほうにだが。
唯一、好転したことといえば、スズノがようやく離れてくれたことぐらい・・

「お〜・・太っ腹だな。横島」

(・・れ・・冷静に・・・)

・・・・。

「・・できるわけないでしょ!!」

耐え切れず自分につっこんだ後、タマモはため息をつきながら横島へと歩み寄って・・・・

(「・・・横島。九尾の狐に血縁なんていないわ。あんただって知ってるでしょ?」)

(「・・わかってるけど・・放っておけなかっただよ・・。お前だって記憶が確かなわけじゃないだろ?」)

(「・・それは・・そうだけど・・」)

小声でしゃべりながらタマモはスズノへと目を向けて・・・・
・・そして視線が重なる。

スズノの瞳はどう見ても自分を欺いているようには見えなかった。
浮かんでいるのは、自分に寄せる絶対の信頼と・・・再会による喜びだけ。


「・・・・・。」

かける言葉が見つからない。 
本当にあり得ないのか?と念を押され、タマモは少し、唇に手をやった。
考えられるあらゆる可能性を模索して・・一つ手繰り寄せてはまた捨てる・・そんな作業を繰り返す。

・・。

・・やがて・・

「・・思い当たる節が・・無いでもないわ。・・それでも本当の姉妹ってわけにはいかないけど。」

ポツリとそうつぶやいて・・見上げるように横島へと振り向いた。
わざと無表情を装って・・
この少女がこういった仕草をするときは・・・

「・・・O.K.ってことだな。・・サンキュー、タマモ・・。」

「・・別に。・・あの子・・可愛いしね・・・。」

言って・・タマモは、恥ずかしそうに視線をそらした。


・・・・・。

・・・・・・・・・。




・・・さて。

二人が立て込んだ話をしている間、隅のほうで白くなっている男がもう一人。
彼は、あらかじめ渡されていたターゲットの写真を握り締め・・・・

(・・な・・なんてことだ・・あれだけタマモ君と引き合わせないよう先生に言われていたのに・・
 ・・・謹慎か・・・・謹慎処分なのかっ・・・・!!!?)

・・まぁ、言うまでもなく西条なのだが・・・・
事情を唯一知っている彼にいたっては、もう本当に気が気ではない。
ほとんど最悪と言ってもいいこの状況・・・・。

(・・ま・・待てよ・・。あきらめるのはまだ早い・・ここにターゲットがいるんだから捕縛すれば・・)

・・なんて黒い考えに取りつかれ、西条がフラフラと動き出す。

・・スズノは横島とタマモの様子を眺めながら、退屈そうにドアによりかかり・・・

・・。

「・・・・?」

しばらくして、西条の存在に気づくと、トテトテと近づいてきた。

「・・・。」

「・・やぁ。スズノちゃん・・僕の名前は西条輝彦。タマモくんの友人で横島君の宿敵だよ。」

汗をかきながら、引きつった笑みを浮かべる彼は・・傍から見れば、完全に変態お兄さんなのだが・・
とりあえず話の本筋とは関係ないので置いておくことにする。

「・・友人で宿敵・・仲がいいのか?それとも悪いのか?」

「・・・なんとも言えないのがつらいところだね・・・。」

「・・そーなのか・・。」

・・・。

・・会話終了。

・・・・。
(・・って・・何を話してるんだ僕は!!!そんなことはどうでもいいだろ!!
 ・・そうだ・・とりあえずGメンの話題でも振ってみれば・・)

・・いや、捕まえるんだからさっさと強攻策に出ればいいような気もするが・・
そこはそれ、西条である。いまいちそこまで思い切ることができない。

「ハハッ・・。スズノちゃんはここに来る前、どこにいたんだい?皆、心配してるんじゃ・・」

無難な切りだし方だった。
普通なら当たり障りの無い・・・。・・・しかしそれにスズノは俯いて・・・

「ずっと一人だったから・・。いたのは・・暗くて・・・とても寒いところだ・・。」

・・・。

「・・・あ・・そうなんだ。じゃあ、その・・もう一度そこに戻ることになったら・・」

「絶対・・・いやだ・・!・・私は横島とねーさまの所がいい・・!」

・・『戻る』という単語を聞いた途端、スズノは首をふりながら、声をしぼり出す。
本当に嫌なのか・・目に涙まで溜めながら・・・・・

「・・・・?」

西条は瞬時に呆気にとられて・・・

「・・あ・・いや・・・スズノちゃん・・?」

また・・震える少女に何か声をかけようとして・・・

・・そこで・・横島たちの会話が耳にする。



「・・そういえば、まだ美神さんたちは帰ってこないのか?話ってなんなんだろ?」

「・・・その発言から察するに・・もうGメンに向かう気はゼロなわけね。」



・・・・。

――・・思い出した・・。


・・たしか美智恵の用意した手はずでは、
Gメンへ向かった3人(本当は4人のはずだったが)もスズノの捕獲に参加することになっているのだ。

つまり・・美神たちが戻ってくれば・・必然的にスズノの逃げ場は無くなる・・ということになり・・

(・・ならば、今無理をして刺激する必要もない・・か。)

距離を取りながら、西条はもう一度震える少女を一瞥した。


「・・・。」

西条は軽く自らの顎に手を当てた。一つのことを本気で黙考するときの・・彼の癖だ。

・・・。
今、自分は任務とこの少女を天秤にかけようとしている。
・・・そして・・その天秤は大きく前者へと傾いていて・・・・

(・・何を迷っている・・仕事だ、仕事・・。)

彼は大きくかぶりを振った。

そう・・仕事。・・・小事を捨て大事をとる・・仕事。
私情をはさむ必要は・・・・・


(あの子がGメンに幽閉されていたことは聞いているが・・大体、その管轄は何をしていたんだ・・?
 あんなに小さいんだから・・寂しい思いをさせないよう努力するぐらい・・・・・・・)

・・・・・。

(・・・・・いかん。気づくと私情に流されている。)

西条が2度目のかぶりを振る。


――・・悩むな・・。どの道何をしようとこの少女に逃げ場は・・・・
  ・・?いや、待て・・僕が手を貸せばあるいは・・・・・って何を考えている僕は・・。


・・・重ね重ね言うが、
一人で首を振ったり、頭を抱えたり、ため息をついたりしている彼は、本当にただの変人に見えたりして・・


「・・・ど・・どうしたのだ?西条・・どこか具合でも悪いのか?」

覗き込むスズノと思いっきり目が合ってしまう。

・・・・。


・・・・・・。


・・・・・・・・。


(ええい!!ままよっ!!!!)

その瞬間、西条の中で、何かがキレた。





「・・・・・3人とも・・・・」

「?いたのか・・西条・・どうした・・?なんか様子が・・」

目をパチクリさせる横島に西条は、

「・・・・外食に・・・・いくぞ・・。」

「へ?」

「外食にいくぞ。もちろんスズノちゃんも連れて・・歓迎会なんだろ?派手にいこうじゃないか。」

にこやかに笑う西条の顔は当然ながら引きつっていて・・・

「お・・おい。だってもうすぐ美神さんたちが・・」

「外食にいくぞ!!!さぁ・・僕の車に乗りたまえ!!さぁ、乗りたまえ!!」

「ちょ・・ちょっと西条さん・・一体どういう・・」

「先ほどから様子がおかしいのだ・・西条、やはり少し休んだほうが・・」

「・・ふふっ。Gメンか・・短くも楽しい夢だった・・。」

もう、悟りきった目でそんなことを言う。

・・実は、彼の受難はまだまだ始まったばかりなのだが・・それはまた別の話。


〜続きます〜




『あとがき』

ち・・ちがうんです!西条がただ優しいだけで・・ロリコンじゃないんです(爆)
自分としては・・彼には、最終的に美神さんとくっついて欲しいんですが・・・あ・・でも最後までフリーってのカッコいいですね〜
・・どうしようか・・・

希望があれば調節できると思うので意見をお聞かせください〜

・・というわけで今回は掛け合いだけで終わってしまいましたね(汗)
現在、5話目を執筆中なんですが・・今回は前回の2倍ぐらいの長さになるかもしれません。
第2話の時点でまだなにも始まってない状態ですし・・

次回はファミレスが舞台です。
敵が出てきたり、横タマのラブコメがあったりで大変なことになるかも・・

それではまた次回もよろしくお願いします。

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