ザ・グレート・展開予測ショー

悲劇に血塗られし魔王 19-A


投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/11/ 6)


「あれ、横島さん。もう来てたんですか」

サァーサァーと雨の降る日。
横島はグレイの傘を差して公園の噴水広場の前に立っていた。

「ああ、おキヌちゃん。早いんだね」

「いえ、私は待つのが好きですから・・・・・横島さんは?」

約束の時間までまだ一時間ある。
本来の横島は、約束の時間より一時間も早く来るような男ではない。
というか、時間ギリギリに来るタイプの男だ。
まして・・・・

「おキヌちゃんに早く会いたかったからからね・・・・・」

こんな台詞を臆面もなく言える伊達男では決して無いはずだ。
でも、おキヌは気づかない。
そもそも人を疑う事を余り知らない彼女の事だ。
額面どおり受け取ってしまい、赤面してしまう。
そんな彼女の様子に気づいているのかいないのか横島はそこに触れることなく、

「じゃあ、行こうか」

彼女の手をごく自然に握り、率先して歩き出した。


それは、自然に見えてどこか不自然な光景・・・・・・







実は横島は生きていた。
それを知った美神の目からつーっと涙が一筋流れ、おキヌは外聞もなく横島に泣きついた。
そして、ようやく落ち着いてから二人は横島に今までの事情を聞きただす。
話が進むうちに、美神は疑問よりも怒りが先にたち、気づけばおキヌの静止を振り切り横島を殴り蹴りしばき倒していた。
「堪忍や〜」と横島がひたすら謝り、許しを美神に乞う姿はもはや失われたはずの光景・・・・・

(ああ、あの日常が戻ってきたんですね・・・・・)

この光景が、初めておキヌに実感を湧かせた。
涙など止まるはずも無かった。
それに気づいた横島がおキヌに済まなそうに一度謝り、それからある提案をだした。


「時間の空いた日で良いからさ、買い物に一緒に出かけないかい」


あれから、皆(シロ・タマモを含む)に横島が帰ってきたことを話し、そして美神に腹いせとばかりに、過労死するという程の仕事を押し付けられた。
横島はそれを泣き言もいわず黙々とこなし、ようやく解放された二日後に約束を果たすべくおキヌに再度お出かけの事について申し出た。
おキヌは喜んで了解し、美神もそれを許してから三日後、約束の日が予定通り訪れた。






公園で予定より早く出会った二人は商店街の中を買い物もせず、会話もせず、ただぶらぶらと眺め歩いていた。
でも、おキヌは十分に満ち足りた気分だった。
きっと彼が死んだと思い、沈んだ気持ちのまま日々を送った反動なのだろう・・・・
今の彼女には、横島がとても大切で限りなく愛しい存在に思えてならない。

歩いていると、ある一つの店を通りがかった。

そこは、少し薄汚れたこじんまりとしたお店。
服等を取り扱っているそのお店はおキヌにとってかけがいの無い思い出の一つ。

「横島さん、このお店の事を覚えていますか?」

「んっ?」

立ち止まり、その店を眺める事しばし・・・・・

「あ、ああ」

言いよどむ彼におキヌはちょっと猜疑心を覚えてしまう。

「あの時は有難う御座いました」

「いやいや・・・・」

「私、嬉しかったです。買ってもらった赤いセーターとクリーム色のマフラーは今でも私の宝物です」

「ははは、嬉しいな。プレゼントした甲斐があるってもんだ」

そう言って照れる横島の横顔をおキヌは悲しげにみつめる。

(あの日の事、忘れちゃったんだ・・・・・)

自分にとっては貴重な思い出でも、彼にとってはあの日の事などそれ程大切ではなかったという事なのだろう。

(白が似合うって言ってくれたのは横島さんなのに・・・・・)

思わずがっかりしてしまうが、それでも前向きに今は横島といる事を楽しもうと心掛ける。
そのとてもいじらしく、好感の持てる健気な姿勢はやはりおキヌの生来の優しい気性ゆえであろう。

「横島さん。」

おキヌは近くにあった可愛らしいファンシーグッズのお店を指さした。

「んっ?」

横島もその店を見る。
そしておキヌを見、彼女の言わんとすることを悟る。

「じゃあ、あのお店に入ってみよっか。」









その店は意外と奥行きがあり、想像より広い。
コーナーごとに区画分けされていて、どのコーナーも様々なキャラクターで犇めき合っている。
おキヌはその中でアクセサリーとお人形のコーナーを重点に行ったり来たりしていた。
横島もそれに付き合い、時には自分の意見も述べたりしている。
その仲睦まじく話し合う光景は誰がどう見ても恋人同士のそれであった。
そしてある程度の時間が流れ、横島の持つ買い物籠がある程度溜まってきた時におキヌが、

「これ、可愛いですね」

そう言って動物系のお人形が綺麗に陳列されている棚のある一点を指した。
結構高いところにあるため、横島は近くにあった台を使ってそれを手に取り、観察する。
それは、別段変わったところの無い普通のある動物を模した人形だった。
横島は「何とコメントすれば良いかわからない」といった感じに困りげな顔でおキヌを見るが、キラキラとしたおキヌの目を見ると横島は
「まあ、いっか」と苦笑してしまう。

「おキヌちゃん、このお人形を俺にプレゼントさせてよ」

「ええっ、そんな、悪いですよ」

「いいから、いいから。さっ、レジに行こう」

半ば強引にレジへ行かされ、そこで一旦別れた。
そして別々に会計を済ませてから、再び合流すると横島は持っている袋をおキヌに渡す。



それはあの時と全く同じ仕草・・・・・・



おキヌは喜んで礼をいい、袋を開ける。
中にはもちろんあの人形が入っていた。

















可愛らしい真っ白い兎の人形が・・・・・・・・・・













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