ザ・グレート・展開予測ショー

不思議の国の横島 ―16後半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/10/30)


<前半からの続き>




更に西条の号令で、巨大二面結界が展開される。

「うそっ?レーダーには全然、気配すら映ってなかったのに?!」
「こっちだって、伊達に何べんも出し抜かれてきた訳じゃ無いのよ!そっちが使ってる技術やらのおおよそは推測済み。後はそれに併せて作戦を立てれば……」

美智恵は作戦が的中した事を確信していた。
今使用しているのは魔族用の結界である。この中では人間にはなんら影響は出ないが、魔族はその力を殺がれるのだ。

「貴女ならこの中でもそれ程苦も無く動けそうだけど、それでも若干は動きが落ちる!そして今は……」

目の前の魔族はかなり魔力が高いのだろう。それは先程までのやり取りで分かっていた。
だが、それでも少しは結界の影響は現れる。
美智恵が並みのGSならこの程度はハンデにもならないが、今は…

「それで十分よっ!」
「ちっ!」

初めて女魔族の顔から余裕の色が消えた。
今まではヒラリと舞うようにしてかわしていた神通棍を、ギリギリの紙一重で仰け反ってやり過ごす。

「なんてこと?ちょっと見くびってたわね!まさかこれほどヤルなんて?!」
「そう……お前の敗因は、人間を見くびったって事だわっ!!」

先程の一撃をかわした事で女魔族は大きく体勢を崩している。そこを目掛けて、美智恵は必中の一撃を繰り出した。

「でもね、それはちょっと違うわよ?」
「なんですって!?」

―― ドゴーン、ドゴゴーン ――

「うわっ!?」
「ひいっ!!」

勝ち誇る美智恵を前にして、まだ余裕を見せる女魔族。その口から放たれた言葉は次の瞬間現実の事になる。

「ふふっ!」

―― ブウゥンッ ――

「ああっ!?」

美智恵の繰り出した一撃は、確実に相手を捕らえるはずだった。だが、それはまたしても空しく宙を舞う。

「結界が消えた!?西条君、一体どうしたのっ!!?」

爆音と共にその場からは結界の効力が消え去った。
美智恵はすかさず状況を確認する。その眼に入って来た情報は、2つの結界柱が無残に爆発炎上している姿だった。

「なんだよ、危ない所だったじゃないか?」
「まったくでちゅ♪わたしたちが間に合わなかったらモロに喰らってたでちゅよ?」

2つの結界柱は共にど真ん中で真っ二つに折られている。
そして、もうもうと立ち上がる爆炎の中には、それぞれ1人づつのシルエットが見えた。

「馬鹿言わないで……ちゃんと貴女たちが近づいて来てるのが見えてたからよ。」
「なっ!?仲間がいたのっ?!!」

今の攻撃で、オカルトGメンの隊員達の大半が行動不能に陥っている。

「ぐっ、す…すみません指令……」

なんとか意識のある西条も、それ以上動けそうに無かった。

「怪盗ムーンレスナイトが1人……だなんて言った覚えは無くてよ?ふふふ……見くびってたのは貴女のほうだったみたいね♪」

一気に形勢逆転。3対1という不利な現状。
美智恵はそれでも次の手を考えるが……結界が破られた時点で既に有効な手立ては無い。

「それじゃあ、もう行くわね。結構楽しかったわ、美智恵さん♪」
「ま、待ちなさい!貴女たちの目的は何なのっ?!」

美智恵がもう何も出来ないだろうと判断したのか、女魔族たちはその場を立ち去ろうと宙を舞う。
その背中に美智恵が声を掛けた。

「目的?ん〜……………ひ・み・つ♪」
「なっ…」

美智恵の呼びかけに振り向き、女魔族はそう答える。
そうして美智恵に背を向け、再び飛び立った。それに併せて、爆炎の中の2人もスッとその影を隠す。
3人の魔族………怪盗ムーンレスナイトは、そのまま闇夜に溶けて消えた。

………………









そこは見覚えのある場所…
それは覚えのある場面…
俺の中にある温かい記憶…

「ちくしょー!!」

―― ガンガンガンガン ――

無骨なのに何処かぬくもりのある赤い鉄骨で出来た電波塔の上で……

「どーせ俺はそーゆーキャラなんだっ!!『ぐわー』とか迫って『いやー』とか言われて!!しょせんセクハラ男じゃーーーっ!!」

夕日を眺めていたアイツ……

―― ガンガンガンガン! ――

アイツは凄く優しくて……

「も〜…ばっかね〜〜〜!!」

俺は本当に好きだった……

―― ピト ――

それは温かい思い出……

「!!」
「いやなわけないでしょ、ぜんぜん♪」

それは泣きそうな思い出……

………………










「………………」

ああ………

「………夢か…」

久しぶりに見たな……

「…そっか………」

外はまだ暗い。俺は予定よりも、幾分か早く眼を覚ましたようだ。
多分、あんな事を考えてたからだな。

『この世界にもメドーサがいて、そしてまだ生きてるのなら……』

向こうの世界ではもう死んでしまった奴も、こちらの世界では生きている可能性がある。

―― なら ――

もしかして…

「お前もこの世界の何処かにいるのかな……」

俺は頬が濡れていた事に気付き、タオルでそれを拭った。
眼を閉じると、再び視界は黒く染まる。
そのまましばらく、俺は横になったまま……
何もせずにただじっと…俺は時間が流れている事を感じていた。

………………










現代社会の基盤はあくまでも科学である。
だが、幽霊や妖怪などは今の科学では定義する事がとても難しい。
そのため、そんななんだか分からないモノを退治するために、なんだか分からない力を持った人間が必要とされるのだ。
だからこそ本当に優れた能力を持つ人間にしかその資格は与えられない。

『対心霊現象特殊作業免許』

別名ゴーストスイーパー免許は、狭き門を潜り抜けたものだけが持つ事を許されるプラチナライセンスだ。
毎年数多くの霊能者がこの狭き門に挑む。

―― 平成15年度ゴーストスイーパー資格取得試験一次試験会場 ――

今年もまた、1000人以上の受験者が会場に集まっていた。
その中には、明らかにその筋(霊能者)と分かるモノもいれば、パッと見一般人にしか見えない奴、既に霊能なんだかなんなんだかな奴等、様々な人間が存在する。

―― ザワザワザワ ――

そのなかで、結構周囲の視線を集めるモノが1人……
奇異なものを見る独特の視線がその人物にチクチクと刺さっていた。

「ええと……お名前は島 陽光(しま ようこう)さんで宜しいですね?それではこちら、13番の番号札をお持ち下さい。」
「……かたじけない。」

受付で受験者番号の札を受け取るのは、袈裟をまとった坊さんらしき男。札の受け取り方もまるで托鉢のようだ。
袈裟をまとっているのに『坊さんらしい』と言うのには訳がある。

「あれって坊主………だよな?」
「なんで赤髪なのかしら?しかもフサフサの長髪って……」

坊主の(格好の)癖に、その男は真っ赤な髪を腰まで伸ばしていた。

「あのグラサン………ヤクザ者?」
「…………別に格好良いとか悪いとかは抜きにして…物凄く不気味よね…」

おまけに表情を隠すように掛けられたサングラス。
パーツのそれぞれは特別なんでもないのだが、それらが1つに総合されて、とても不気味な男が出来上がる。

「ふっ………南無阿弥陀仏…」

男は一言そう呟くと、脇に抱えていた深網み笠を被り受付を後にした。
この男が今年のGS試験の表と裏で大活躍する事を、今はまだこの場にいる誰もが知る由も無かった。



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