悲劇に血塗られし魔王 14-B
投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/11/ 2)
牢獄を抜け出してから三日がたつ。
(そろそろ目的地に着く頃だ。)
謎の男に気絶させられてから幾ばくも経たずに、ワルキューレは目覚めた。
その証拠に、男が置いていった食事はまだ生ぬるかった。
ワルキューレは毒が入っていないかよく検分してからそれを食べる。
あの男は何者なのか?
食事の間ずっとそれだけを考えていた。
しかし答えなど出るはずも無くそのまま食事を終える。
ワルキューレは他にあの男は何かしたのではないかと色々調べ始めた。
やはり、していた。
牢獄の鍵は開けられたままだった。
そしてワルキューレに近い壁の隅には没収されたはずの愛用の銃があった。
それに、路銀と保存食の入った袋も置いてある。
有り難いことこの上なかったが、それが逆に不信感を否応も無く持ってしまう。
結局、男は何がしたかったのか?
敵なのか、味方なのか?
(いくら考えても分かりはしなかったがな・・・・・)
ワルキューレは旅の間も考え、幾つか答えを出してみたがどれも違うだろう。
その中には、
「あの男は、実は私の狂想的ファン!!」
というのもあり結構、納得してしまうワルキューレ・・・・・・
まあ、兎にも角にも色々な事があったがワルキューレは無事軍を抜け、目的地へと足を運んだ。
なぜそこに行かなくてはならないのか、ワルキューレは覚えていない。
ただ、行かなくてはならないというある種の強迫観念に駆られただけの事。
横島を殺した罪を償いたいというだけで他に何も考えていなかったワルキューレはその事に疑問ももたず、ちょうど良いという風にそこに行く事に決める。
そして三日。
やっと、目的地が見えた。
ワルキューレは駆け出す。
何日もまともに話をしていなかった反動か、ワルキューレはただ人と会話がしたかったのだ。
人間は何日も会話をしないと狂ってしまうという。
それは魔族も同じことなのであった。
村に着いた。
ワルキューレはすぐに村の異常さに気づいた。
村全体が驚異的な魔力で覆われているのだ。
(・・・ッ!!なんだ、これは)
背筋が凍る。
幾度となく戦地を駆け抜けたワルキューレは畏怖する。
(この魔力、アシュタロス並か・・・・)
アシュタロスの名を出したが為に、かの大戦を思い出してしまう。
そして、それにはやはり横島がいる。
やりきれない思いを胸にワルキューレはその発生源へと慎重に歩いていった。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
そこには、たくさんの人で溢れかえっていた。
そして、
(何で小竜姫がここにいるのだ!!)
塀の上には誰あろう小竜姫がいた。
小竜姫は何か鬼気迫る形相で何かを見ている。
はじめて見た、とワルキューレは思う。
彼女とはなんだかんだで付き合いが長い。
それでも、あんな表情は見た事が無かった。
ワルキューレは気づかれぬように静かに空に飛びあがると小竜姫が見ているものを見た。
二人が対峙している。
一人はビクビクと、一人は笑いながら。
(なんだ、これは?)
ワルキューレは思案する。
・・・・・おそらく、戦っているのだろう。
しかし、戦っている二人の表情は戦士としてのそれでは到底有り得ない。
それは、あえて表現するなら「虐め」。
ピッタリな表現だ。
とはいえど・・・・・
(逆なら分かるのだがな・・・・)
二人の体格は大きく異なっている。
巨岩のように大きな男とひょろひょろの仮面をした優男。
その内、巨岩と評した男は有名だ。
「コレイル」の頭領、ズルベニアス。
魔王の一人、「暴虐の英雄」と称されるドルガーとの一騎打ちは魔族内でも伝説に成りつつある。
そんな魔族の中でも屈強とされる男がどうだ。
優男に対し怯えてしまっているではないか。
(・・・・・見るに耐えんな)
魔王に対し一歩も引かなかったという男の見る影もない姿に落胆の色を隠せない。
ワルキューレは優男に視点を変えた。
・・・・すごい魔力だ。
この村を包む魔力は彼が原因だな。
おそらく、彼が以前聞いた新しき魔王なのだろう。
(分からないな・・・・・)
以前偶然にも魔王の戦う姿を見た事があった。
その時の魔力と何ら遜色ない魔力を彼は放っているが、それだけだ。
ドルガーと戦った事のあるズルベニアスなら別にこれに怯える必要はないのではないだろうか?
(ドルガーだってこれ位の魔力は放っていただろうに・・・・・・)
これが、時の流れというものなのだろうか?
老いがズルベニアスに恐怖心を与えたと言うのか・・・・
ふと小竜姫を見る。
表情は変わっていない。
神剣を抜きかけ、いつでも飛び出せる準備が出来ている。
彼女も魔王の魔力に危険を感じたのか?
(・・・・・いや、恐らくちがうな。)
それだけで、あの小竜姫がここまで苛烈な表情を見せない。
では、何だ?
ワルキューレは別の観点からアプローチを試みる。
優男の仮面の下が遠くからでも良く見えるように場所を変えた。
瞬間、魔王の仮面の下から覗く目が目に入った。
ワルキューレは動いた。
その時、意識はなかったのかもしれない。
ただ、本能が叫びそれに反応しただけのこと・・・・・・
すなわち・・・・・・
「あいつをのさばらしては、世界が破滅する!!」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
小竜姫もまた、魔王に向かって駆けていた。
・・・・・・・己が命を賭けてでも殲滅しなければならない敵が目の前にいるから。
運命は回る。
クルクルと・・・・・・
今までの
コメント:
- ということで、14話です。
本来ならこれを一つに納められるはずでしたが・・・・・無理でした。
原因はワルキューレの文が思いのほか長くなったことです。
できれば、皆さんには二つに分けず一つのまま読んで欲しかったですが、どうでしたでしょうか。
次に来てようやく戦闘シーン。戦闘を文字で表現するって難しいらしいっすね。・・・・不安だ。
まあ、頑張りますです。
次回は「魔王の脅威」っす。横島の人格が・・・・・・・・
ちなみにこの「悲劇に血塗られし魔王」は四部構成になっております。(一応)
「序章(10話まで)」「魔界編(17話まで)」「地上編」「????」こんな感じです。
40話以内で終わるつもりですが、どうなることやら・・・・・・・ (DIVINITY)
- どうも〜ヒロです〜
ズルベニアス・・・ヤラレ一号と聞こえるのは気のせいか・・・?
横島クンを強く書くのは大変気持ちのいいことなんですが、主人公最強説に入りすぎると後は敵の強さがド○○ン・○ー○算式的な強さになってしまいますので注意が必要です。最初のうちはアシュよりも明らかに弱い・・・の設定のほうが後々になって楽かもしれません。まぁ、いいですけど。
でもあの槍は何なんですかねぇ、なんか特殊な力を持っているみたいですけど・・・とりあえず幸せになれ!!ということで・・・
ではでは〜頑張って下さいませ〜 (ヒロ)
- ども、BOMです〜。
横島の人格が変わったように思えるのは気のせいでしょうか?あとはワルキューレのいつにない考えがウケました。
>「あの男は、実は私の狂想的ファン!!」
・・・納得してまうんかい!?ってな感じで。それにしても横島強えっすな。ではっ! (BOM)
- コメント、早!!
ヒロさん、相変わらずですね。投稿して15分経ちましたかね〜。
それでっと・・・・
う〜ん、横島が最強?
決してそんなつもりはないのですが・・・・
まあ、槍の力を含め後々に期待してください。 (DIVINITY)
- BOMさんも早いっす。
有難うございます。
ええっと、横島の人格が変わっているかどうかはこれから解りますです。
短いですが、これで・・・・ (DIVINITY)
- 蕗ですー。
横島強いなぁ。
うーん、横島の
人格もそうだけど性格ってもんも
違う気がする…。
これからも頑張ってくださいな。 (香夜月 蕗)
- ワルキューレと小竜姫の行動がさらなる悲劇をもたらすのか?
いきなりワルキューレにとって運命の分岐点なのか? (TF)
- 横島が魔王になる話しは完結まで行かないものとかが多かったのでとても楽しみにしています。
どんな悲劇が起きるのか楽しみですが個人的には多少は横島にいいことあってほしいです。では、次も楽しみにしています。 (誠)
- 今回は小竜姫とワルキューレの視点で進んだ話ですね。
なるほど、悲劇を求めし者ですか・・・・・・
彼が求めるのは本当に悲劇なのか?良い感じで謎が残ります。
さて、実は今回の話には性急だったかな?と思う部分も有りました。
横島の方はまあ生まれ変わったと言う事でアレですが、小竜姫とワルキューレはどうでしょう?
謎の魔王(横島)は危険・・・この表現が弱く感じました。
何かワンクッション、若しくはオドロオドロシイまでの表現なんかが有ったら良かったかも知れません。 (KAZ23)
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