ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その38(B))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/10/10)




────────幸恵の抜刀が煌いた。





ザジュドシュハシュバシュザンシュンガシュガシュガシュ!!!!!!!

悪霊たちはおそらく自分が滅ぼされていることにすら気づいていないだろう。
容赦なく振り下ろされる霊刀・介錯丸はまるでこのときを待っていたかのように斬れ味を増していく・・・まるで主の強さのように。

ザシュ!!

『タスケ・・・ウギィ!』

シュバッ!

『ワタシハタダぁ・・・ウゲェ!』

ガシュ!

『ハナシヲ・・・ゲオォ!』

正確無比の霊剣技は悪霊達に断末魔すら許さない・・・そして最後の一匹を切り裂いたと思った瞬間!

バキィっ!!

森の木を押し倒し幸恵の背後突如巨大な熊型の妖怪が現れる。
熊型の妖怪は幸恵の背を切り裂こうと腕をふりあげた!


ゴシュ・・・

鈍い肉を貫く音・・・

ブシュゥ────────っ!!

鮮血が吹き出る音・・・それを奏でたのは・・・・・

熊型妖怪の方だった・・・・

幸恵は振り向きもせずのバックステップで相手の懐に飛び込むと、
そのまま刀を逆手に持ち妖怪のチャクラに介錯丸を突き刺したのだ・・・

ズズゥン・・・

ゆっくりと地面に倒れこむとまるで硫酸をかけられたように溶解消滅していく妖怪。
それをただただ冷酷な視線で見下す幸恵だった。
冷徹なる剣士は介錯丸を二度ほど地面に向かって振り血のりを飛ばすとゆっくりと鞘に収める。
そして、剣を収めながらこう言った。

「私の体と魂が欲しいなら・・・・・・今の十倍の速さで襲ってこい・・・・・・」  と。

チンっ・・・

そんな幸恵の姿に『あちゃー』と額に手を当てるひのめ、そしてポツリと呟く。

「六道女学院霊能科校則第6条・・・『除霊は愛と思いやりを忘れずに』・・・」
『見事に霞んで聞こえるわさ・・・』

ひのめは心眼の相槌に『やっぱり?』と苦笑いを浮かべながら幸恵の背後からゆっくりと声をかける・・・そして振り向いた幸恵は・・・

「あーーー!!怖かった!!凄い怖かった!
 もうビックリしたぁ!急に現れるんだもん!ねぇ、ひーちゃん私上手くやれてた!!?」

「・・・・ええ、上手く『殺』れてたわよ、はい・・・返り血拭きな」

と、乾笑いで幸恵の頬に付いた血を拭うひのめ。
この二重人格的変化は演技ではなく素でやっているからタチが悪いなぁと思うのだが口に出せなかった。
そして「誰?今の誰なの?幻覚?え?」と困惑する光と久美・・・、
顔に縦線を走らせる京華・・・・そして


木陰でガクガクブルブルと震えるかすみだった(←トラウマ)。








AM2:39

横島の血で汚れた床を掃除し終わった本部では生徒達の様子の変化も事故もなく少しだけ余裕が出てきた雰囲気だった。
終了予定時刻はAM4:00、まだ1時間半も残っているので油断は出来ないがおそらく予定通りにスケジュールは動くだろう。
そんな雰囲気の中、令子は一つ動いてない霊子レーダーがあることに気付く。

「ねぇ?こっちのは何で使わないの?」

「ん?ああ、これは結構広範囲の霊波を探知するんやけど何ぶん旧式やからなぁ・・・
 正確さに欠けるっちゅーか、まあ予備で一応設置してるだけやけど・・・何か?」

「いや、もし使ってないなら使わせてくんない?
 あさってには隣山のN山調査だから大雑把でもいいからこの時間帯の霊気の動きを見たいのよ」

「うう〜ん、まあそれくらいならええけど・・・。使い方は」

「前にこの型使ったことあるから大丈夫大丈夫」

令子は鬼道に手をひらひらと振ると霊子レーダーのスイッチを入れ、手際よく起動させていく。
カタカタと最低限のデータを打ち込むと円形上のディスプレイに何百モノの光点が映し出された。

「え〜と、これはレベル3以上の霊能力者用か・・・ふ〜ん、旧式ってわりには結構いい代物ね」

今映っているのはM山に散らばる霊能科の生徒達の反応。
その中で一際大きいのが生徒達の面倒を現場で見てるエミとピートだろうなぁと思いながらダイヤルを回していく。

「え〜と、範囲指定をMAXにして・・・まずは霊気の動きを・・・。おっと」

右腕の裾がスイッチに引っかかり『結界探知モード』となってしまう。
いや、別にそんなことは大したことではない、しかし令子の視線はそのディスプレイに釘付けになったまま動かない。

「ちょっと・・・この数値と位置・・・もし、これが本当なら・・・」


ゴーストスイーパー『美神』の霊感が何かを感じ取った・・・・







「はい、というわけでやってきました!ひのめちゃんの活躍シーン!!」

拳を高々と突き上げるひのめ。(こんな表情で→(>▽<))
第一波の悪霊団除霊は京華、かすみ、光、久美の四人が、
第二波の悪霊団除霊は幸恵(裏)が全て片付けてしまったせいで出番なしだったひのめだが、
やっと第三波の霊団の到来に元気いっぱいな様子。

「ひーちゃぁん!気をつけてよ〜!」

そんなひのめを少し離れたところで応援する幸恵、そして同じく見学する他の四人。
ひのめが『ここはまかせない!』と5人を休ませているわけだがもちろん全員気を抜いているわではない、
ちゃんともしものときのために常に気を張っている。

「よぉし!来たわねぇ」

『ひのめ、数はそんなに多くないけど油断するんじゃないわさ』

「分かってるわよ」

保護者役の心眼である心眼の小言にうるさいなぁと顔をしかめつつ今後の戦術を思案してみる。

(・・・・まずは4体に分身してそこから各自撃破、とどめはひのめ火球乱れ撃ち・・・くくく、みんなびっくりするわねぇ♪)

自分の強さの変わり様を見たときの班仲間の驚いた様子を思い浮かべ不気味に肩を揺らすひのめ。
実際のところは『何を笑っているんだろう・・・不気味だ』という視線を現在は飛ばされているのだが。

「よぉし!かかってきなさい!」

ひのめの言葉が合図となり無数の悪霊がひのめに向かってくる。
こんなもの楽勝、まずは分身と思った・・・・・・・・・・・・・・が・・・

「あ、あれ!?分身しない!?・・・ぶげっ!」

分身して避けるどころがカウンター気味にひのめの顔面に悪霊がぶつかってくる。

「このぉ!なら発火能力でぇぇ!!ってひのめ火球も使えない?・・・・どわぁ!!」

右手に霊力を集中しても特殊能力が発動しないひのめの足を悪霊がひっかけ転ばせると、
まるで雨のようにひのめに悪霊達が落ちてくる。どうだろうその結果はちょっとした山になってひのめが見えないくらいだ。

「ひ、ひーちゃん!!」

その様子を見かねた幸恵が介錯丸の柄を握る。
しかし、それを見た京華がその肩をグっと押さえスっと悪霊の山を指差した。
幸恵がその指につられ見てみると無数の悪霊で出来た小山はいまにも噴火しそうに膨れ上がってくる・・・
そして・・・

「痛いっつってんでしょぉぉ────────っっ!!!!」

ドガアァァ────────────ッ!!!!!

悪霊の小山を弾き飛ばし左手を突き上げて現れたのひのめに幸恵はホっと安堵の息をもらす。

「心眼!!ちゃんとフォローしなさいよぉぉ!!」

『何勝手言ってんのーー!!相談もなしに分身や発火能力使おうとして!!!』

「いいじゃない!使いこなせるようになったもの使って何がいけないのよ!」

『この間のは全くの偶然でしょうが・・・ギリギリ追い込まれてたまに発動するのを『使いこなしてる』とは言わんわさ』

「・・・・・うっ」

『はい、じゃあ基礎の基礎・・・・霊力を均一に体全体にまわして』

「はいはい、分かりましたよぉ〜だ」

勢い余ってこっちに飛んできた悪霊を片手で払いながらその光景に苦笑いする幸恵。
ただ光と久美は心眼の存在を聞いていなかったので『何でリストバンドに話しかけてる』のだろういう視線を向けている。
一方、京華とかすみだけは真剣な眼差しでひのめの戦闘力を測ろうとしてた。

(・・・霊力を全体に均一に・・・チャクラの回転率を徐々に上昇・・・)

ハァと息を吐き深呼吸に似た呼吸法で集中するひのめ。
するとどうだろう、さっきまで落ち着きのなかった霊気が明らかにまとまり、強くなっていく。

(あとはインパクトの瞬間にその部位に霊力を集中させて・・・・)

瞑っていた目を静かに開ける・・・
仕切りなおした悪霊はもう目の前だ、再びぶつかると思った瞬間。


パァン!!

甲高い音ともに30cmほどの悪霊がひのめの右拳と触れた瞬間に弾けて消滅する。

「次、左足を軸に・・・腰の回転をのせて・・・」

ひのめの左足から発生した回転が腰を伝わり右足に向かうとその蹴りに触れた二体の悪霊が昇天していく。

「右、右・・・左、よけて・・・踏み込み、ガード・・・二連打・・・」

その口から出る呟きが増えるたびにひのめの動きと霊力の回転率が上がっていく。
元々空手を習っているため動きは断然にいい、そして霊力の制御もこの一週間ほどで心眼の助けもあり順調に上昇している。
そう、今ひのめのその才能の片鱗をいかんなく発揮しはじめたのだ・・・。

そんなひのめに幸恵は喜び、光と久美は感心し、かすみは驚き京華は挑戦的な笑みを浮かべるのだった。

そして・・・・心眼は・・・


────この子は・・・・いずれ母や姉を越すGSになるかもしれない・・・・


────多少素直じゃないところはあるけど、真っ直ぐで努力家・・・ライバルも親友もいる・・・


────そして、あたしの役目はこの子の成長を促すことと守護・・・・


────なら、























────この子が真に成長したとき・・・・あたしは・・・・











いや、道具である自分が何を考えているのだろう・・・
心眼は自嘲気味にその眼を細めるのだった────────





                                      その39に続く

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