ザ・グレート・展開予測ショー

アシュタロス〜そのたどった道筋と末路(涙)〜おキヌ・ざ・すたんぴぃど5


投稿者名:♪♪♪
投稿日時:(03/11/ 7)





 夕焼け色に侵されつつある町並みを、駆け抜けていく幽体一つ。


 GS美神前半期の男性人気において、完全に主役の美神を食ったと言われている、元祖巫女服乙女のおキヌちゃんである。やけくそダッシュするそのスピードは、新幹線でも追い抜けそうな迫力があった。
 泣きながら走り回り、えぐえぐ嗚咽する姿にちょっと萌え。


「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!」


「――は、はやいわ〜〜〜」
「おキヌちゃんて、あんな早かったんか!?」
 美神達も、その後を追っているが――十二神将のインダラにまたがっての事だった。普通に走っていたら到底追いつけない速度ゆえの処置だったのだが……


「ちょっ!? 鬼道くん! お尻触らないでよ!」
「誤解や! 僕は冥子ちゃんお尻以外興味はあらへん!」
「れ、令子ちゃん〜、服つかまないで〜」
 ……窮屈なせいで中々愉快な事になっているようだった。




(私なんて、私なんて、一度もナンパはされないし、初対面のときは変態に追いかけられるし、何のとりえも無いし……)


 人間には『自己評価』という観点で分けるなら、二種類の人種がいる。
 自分を美化しようとするものと、自分の欠点ばかりに目が行くもの。おキヌは明らかに後者だった。それ故、『自分が横島にナンパされない理由』を考え出したら、ダース単位で思い当たってしまう。
 そして、思考の方程式は闇に染まってネガティブな結果しか吐き出さない。


 堂々巡りとはこのことか。平面に書かれた○のように、同じ起動を辿って同じ結果を――自分は魅力がないという黒斑にたどり着く思考。皮肉な事に、おキヌちゃん自身がおキヌちゃんファンから刺されそうなドギツイ文句を自分自身に浴びせているのだ。


 そして、黒い感情に塗れた思考はそのまま精神の清流に汚濁を垂れ流す。


(横島さん……こうなったら、あなたを殺して――)


 思考は――危険な方向へと流されていき――


(二人でらぶらぶ幽霊ライフを!!!!)


 えらくお間抜けな結果に到達した。(爆)
 彼女にとって、幽霊になる事を前提とした死はさほどタブーではないらしい。というか、美神さんのナイスバディーや冥子の穏やかさに対してコンプレックスを抱いている身では、そのように考えても無理は無かった。


 なにせ、幽霊になったらスキンシップできるのはおキヌちゃんだけ! これは大きなアドバンテージだ!
 横島なら、幽霊にされても美女さえあてがえば万事オッケー!


(それなら横島さんは私だけのもの――ってだめよ! そんな事したら嫌われちゃう!)


 間一髪で理性が暴走を食い止めるも、一度浮かんだ良案は中々消え去らない。


(いざという時には――うううううっ、いっその事、素直に告白した方がいいのかなぁ?)


 その素直さゆえに、立ち止まって頭を抱えるおキヌ。
 涙を限界までためたまぶたで、辺りの世界を見回し――




「同じ手で松坂牛も食えんか!?」
「牛でちゅか! いいでちゅねー」
「ちょ、一寸ドクター! 持ち上げないでよ! 犯罪なのよ犯罪!」
「ドクター・カオス。これ以上・罪を重ねないでください」
「人聞きの悪い言い方やなー」
「ルシオラ。硬い事言わないの」
「ベスパ〜……元はと言えばあんたが――」


 真っ暗だった視界に、光が差し込むような感覚を彼女は味わった。
 正面を横切った集団。老人と若い女性複数と、そして――


(あ――!)
「横島さーーーー……」


 横島忠夫。
 彼女が探していた最愛の人がそこにいた。
 喜びで鬱屈な気分は全て発布され、おキヌは声帯を震わせかけ。





「お嬢さん。お暇なら、私と一緒に愛と官能のでぃんぢゃらすな楽園へと旅立ちませんか?」




 気がつけば。




 目の前に、変態(おキヌ視点)がいた。




 ――さて、変態アシュタロスの名誉(んなもんは既に無いという意見が圧倒的説得力を有するが)のためにフォローしておくと、彼がおキヌを即ナンパしたのも無理なからぬ事。
 何せ彼、ここ二週間ほど、横島の体から出た事が一度もないのである。それゆえに、その体で女性とスキンシップを取った事もない。ベスパとも、仕事帰りの疲れから手も握っていない。それもあって、ベスパはアシュタロスに栄養をつけてもらいたかったのだが。
 意外な事に、アシュタロスのような魔族には人間界の牛肉が栄養剤代わりに役立ったりする。魔界では人間界の牛の油がフォアグラかキャビアの如く貴重品扱いされているのだ。


 そんなこんなで体力が有り余っているときに、視界に前々から狙っていたおキヌちゃんが現れた。
 欲望も滾ろうというものである。




 さて、一歩おキヌの視点では。


 横島に声をかけようとしたら、いきなり現れたスーツの男。


 見覚えがある。物凄く見覚えがある。


 忘れもしない、あの人骨温泉での一件で自分を追い掛け回した完全無欠の変態野郎だ。


 横島との出会いを徹底的に美化したように、おキヌの中で、アシュタロスに受けた精神的トラウマは、徹底的に強化され、かなりえげつのない記憶になっていた。


 そんな奴が、前回の台詞をさらにパワーアップさせてまた言い寄ってくる。しかも、息はにんにく臭く、目は血走り、鼻息荒く――なんだか、不気味な欲望すら伺える。


 こんな奴を目の前にして、か弱い乙女がどんな行動を取るか。


 すなわち。















「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
 Uターンのちにげるっ!!!!











 アシュタロスのはんのーわ!
「お待ちになってお嬢さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」
 追跡開始! 暴走アシュ様さらにご乱心!!!!


「あの馬鹿……! また500メートルの法則忘れてやがる!!」
「あぁしゅぅさぁまぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」
 苦労人横島と正真正銘の夜叉ベスパも、当然の如く後を追う!


 そう! この一連のデッドヒートこそが!


 おキヌ・ざ・すたんぴぃど事件の名の由来なのだ!!


 逃げろおキヌ! 頑張れ横島頑張れベスパ!
 展開予測ショーの平和を守るため!
 追いつくなアシュタロス!






 ここは十八禁は禁止されているぞ!(爆)



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