キスマーク(中編)
投稿者名:青い猫又
投稿日時:(04/ 2/13)
再び目を開くと美神にしばかれてぼろぼろになった横島が居た。
なぜ?
「大丈夫?気分が悪いとかそういったのは無いですか?」
どうも自分はソファーに横になっているらしく、
横を向いた正面で横島がしばかれているようだ。
声を掛けてきたおキヌが心配そうなそれでいてちょっと困ったような
表情で覗き込んでくる。
その横にいる馬鹿犬は敵対心むき出しだ。
「ええ、大丈夫よ」
とりあえず体を起こして周りを見渡す。
もう夜になっているようで窓の外は真っ暗になっていた。
事務所のメンバーは全部そろっているようで、いまだに横島をしばいている
美神がテーブルを挟んだ向こう側で暴れている。
タマモの近くには複雑な表情を浮かべたおキヌと敵対心むき出しでいるシロが
居る。
なんでシロが敵対心をだしているのかさっぱり分からない
「状況がよく分からないんだけど。」
「このばかがタマモに惚れ薬飲ませたのよ。」
美神が叫びながら神通根で横島を殴りつける。
「知らなかったんですってば〜そうじゃなきゃ自分まで飲まないでしょ〜」
「惚れ薬って?」
「それよそれ」
タマモが聞くと美神はテーブルの上にある小瓶を指差した。
・・・七味である・・・
「・・・・・それって惚れ薬だったの?」
「そうよ、昨日横島君に厄珍堂に道具取ってきてもらった時に紛れ込んでたの。
前に横島君が使ったような劇的な変化は無い代わりに、使ったのがばれにくいって
たちの悪い奴だから突っ返すために行ったのに、忘れるなんて私もどうかしていたわ」
美神はいまだに怒りが収まらないのか横島をぐりぐりと神通根でいたぶっている。
おキヌがまあまあと言いながら美神の怒りを静めていた。
記憶が途切れる前のことを思い出してみる。
だれも居なくて
お昼を食べようとしたら横島が帰ってきて
タマモのきつねうどんをくれというので七水のうどんで手を打って
七味が無いというので小瓶を渡して
・・・・・
ごみを捨てに行った横島が帰ってくるとタマモの横に座って
告白をされて
キスされる手前で記憶がなくなっている・・・
どう考えてもタマモが原因だった。
しまった怒られる。
美神のことだ1ヶ月お揚げ禁止とか言われるかもしれない、それだけは避けたい。
「あ、あのさ」
なけなしの気力を振り絞って美神に声を掛ける。
「なに!」
美神が怒りMAXと言った感じに凄まじい顔でこちらを見る。
「あ、いやその・・」
「しかたなかったんや〜 どう見たってただの調味料と思ったから七味だって
言ってタマモに渡したんだ〜 」
「えっ」
おもわず声が漏れる、七味と言って渡したのはタマモのはずである。
それなのになぜ横島は自分が渡したなどと言っているのであろうか。
「あんたタマモになにしたか分かってるの!」
バキ
「うぎゃ〜」
鈍い音が響き渡り横島が崩れ落ちる。
「み、美神さんやりすぎですよ。」
おキヌが心配そうに横島に駆け寄ると殴られた頭にヒーリングをかけ始める。
「そんくらいじゃ死にはしないわよ」
ふん、と言うと自分の席へと戻り腰掛ける。
「で、横島は私に何をしたの?キスをされそうなったのは覚えているけど」
一瞬美神の殺気が上がったような気がしたが気がつかなかった振りをする。
とりあえずどうなっているのか分かるまで、これ以上は黙っておいたほうが
身のためだろう。
「まだはっきりとは分からないわ。私たちが着いたときにはキスしながら
いちゃいちゃしてるあなたたちが居たわ。で横島をしばき倒した後に、
厄珍からもらった解毒薬を飲ませたのよ」
話の途中で美神の後ろに炎が見えた気がしたが、
タマモはなんとか意識の外に排除する
「でも見た目だけならシロ、タマモに鏡渡してちょうだい」
相変わらず敵意が見える視線をまっすぐこっちに向けている馬鹿犬が、
何も言わずに手鏡を渡してきた。
「首を見てみなさい」
渡された手鏡で自分の首を見ると真っ赤なキスマークが、見える範囲で4箇所ある。
「・・・」
おもわず息を呑むとそれ以外に無いか自分の体を確かめてみる。
一応上着をめくって覗き込んでみるが、無かったのでちょっとだけ安心する。
それでも首筋にこれだけはっきりとしたキスマークを付けられているので、
タマモとしては驚きを隠せない。
そしておキヌでさえさっきから、自分を見る目が複雑だった理由はこれだったのかと
確信する。
「タマモ、あなたどこまで記憶があるの?」
一通り体の確認がすむころに美神が聞いてくる。
タマモとしてはさっきの横島の発言がおかしい事や、御揚げ禁止が怖いので
どこまで喋れば良いのか迷うところである。
「え〜と、惚れ薬の入ったきつねうどんを食べて、横島が近寄ってきて
好きだよって言ってきて」
がたん
音のほうを振り返るとシロが泣きそうな顔でこちらをにらんできている。
とりあえず無視をする。
「なんだかボーとして私もうまく考えがまとまらなくて、そのなんて言うか
おもわず好きだって言っちゃって・・それで横島の顔が近づいてくるところまで
覚えているわ」
顔が熱くなるのを感じながらとりあえず要点と、誰が加害者か被害者か
分からないように言ってみる。
何とかして御揚げ禁止を回避できないかとがんばるのだ。
「横島君も似たり寄ったり事しか言わないし。ん〜人工幽霊1号」
「はい、美神オーナ」
「横島とタマモの記録あるわよね」
やばい、タマモは冷や汗が流れるのを自覚する。。
食べ始める前から記録を流されたら自分が悪い事がすぐばれる。
「はい、事務所内のことですので記録されています。」
「流してくれる。とりあえず問題が起きてないかは確認しないと。」
「どこから映しましょうか?開始の場所を教えてください。」
「あ、それなら俺が告白したあたりからで良いでしょ」
いつの間にか復活している横島がタマモの横に座りながら言ってくる。
ちなみに事務所のソファーは片側三人掛けでさっきまで、タマモとその正面に
シロが座っていた。
横島がタマモの横に座るとおキヌもシロの横に落ち着く。
「まあいいわ、じゃそこからおねがい」
美神がタマモの横に座る横島をにらみつつ人工幽霊1号に指示をだす。
タマモは助かったと思った。
またそれと同時に横島がなぜだか分からないが自分をかばっているように感じる。
「了解しました。それでは流します。」
みんなが正面のテレビに注目をする。
”「タマモ、俺お前の事が好きだ・・。見かけの年は合わないしタマモにとっては
迷惑かもしれないけど、この気持ちは抑えられないよ。好きだよタマモ」
”「私も好きよ横島・・」
いきなりディープキスだった・・
目の前のテレビに自分を瓜二つ・・まあ自分なのだが熱烈なキスを横島と
している場面が流されている。
タマモもドラマなどは見ているのでキスシーンなどは何度も見ているが、
それが自分の事となるとまた話は違ってくる。
顔が火照るのを感じる。
ごくぅ
誰かが息を飲む声が聞こえてくる。
”「タマモ、好きだ。誰よりも何よりも1番好きだ。」
”「うれしい、横島私だって好き、大好きよ」
違うこれは私じゃない絶対違う。
相変わらずディープキスをしながら愛を語る二人を見ながらタマモは、
床の上を転がるのやテレビを狐火で燃やしたい衝動を一生懸命我慢していた。
食い入るように画面を見ていたみんなだが、横島の言った次の一言で雰囲気が
がらりと変わってしまった。
”「タマモ、お前は絶対俺が守る。もう後悔なんてするものか死なせたりなんて
するものか、お前を奪う奴が居たら俺が絶対倒してやる。」
おかしなことを言うとタマモは思った。まるで前に好きな人を奪われたみたいだ。
周りを見ると連ドラの名場面を見ているようにしていたおキヌや美神は、突然画面から
目をそらしている。
横島ですら画面を見る目がさびしげに見える。
シロだけは相変わらず興奮しているようだが。
”「横島、私は誰かの代わりなの?」
画面の中のタマモが横島の首に手を回して頭を抱え込むようにキスをしている。
それを横島がそっと外しながらタマモの肩に手を置いている。
”「ばかな、そんな事なんてあるもんか! タマモ、俺はね前に好きだった子が
居たんだ。ほんとに好きだったでも俺馬鹿だったから、
ぜんぜん大切にしてやれなくて自分勝手だった。
今でも後悔をしている。でもねそいつとタマモを比べた事なんて
一度も無いよ。確かに俺の心からあいつは消えないかもしれないけど、今1番大切で
幸せにしたいのはタマモお前なんだよ。お前だけなんだ」
画面の中の自分がはらはらと涙を流している。
ちなみに横のシロも流している。絶対感情移入をしている。
美神は視線を天井に向けてるし、おキヌはなんともいえない表情で画面を見ている。
惚れ薬を飲んでる最中の出来事とはいえ、これは本当のことなんだろう。
自分の知らない横島が画面の中には居る。
なんだか複雑な気分だった。
普段決しても横島はこんな雰囲気を感じさせない。
馬鹿でスケベで考えも無く突っ走る、でも憎めないし良い奴というのがタマモの
今まで持っていた横島への感想だった。
それは変わらないがなんとなく今までのように、それだけって気持ちになれない。
ちょっとどきどきする。
惚れ薬の効果が残ってるのかも知れない。
喉が渇いたのでいつの間にかおキヌが用意していたお茶に口をつける。
”「いいよ横島好きにしても」
ぷっ〜〜〜〜
思いっきりお茶を噴出す。
げほ、げほ、げほ
横に居る横島が背中をたたいてくれる。
「あ、ありがと」
お礼を言って周りを見渡すとさっきまでの雰囲気なんて消し飛んでいて、
横島以外は殺気を出しながら画面をにらんでいる。
なんてことを言い出すのだろう。
自分の事ながら命は要らないのかと問詰めたい。
もはや一ヶ月御揚げ抜きなんてレベルでは済まずに、この後の展開次第ではタマモも
殺(や)られるかも知れない。
”「いや、タマモあせる必要なんて無いよ。今はこうしているだけで十分幸せだ。」
命は助かりそうだった。
横島はまったく気がついていないようだが、おキヌが心底ほっとしているのが見える。
”「でも私は横島のものだって証がほしい。」
・・・危機は去っていないようだった。
惚れ薬を飲んでいる最中の自分とはいえ、ここまで違うとは思っていなかった。
さっき美神が言っていた内容を思い返すが、どこがばれにくいんだろう。
ばれない方がおかしいって言うぐらいに違いすぎる。
”「タマモ・・なら証を付けてあげる。これが消えない間は俺のものだって証を、
消えないように毎日付けてあげるよ。」
画面の横島は言い終わるとゆっくりとタマモの首筋へと、口を持って行きひとつずつ
時間を掛けてキスマークを付けていく。
画面のタマモはうれしそうにしている。
見ている自分が恥ずかしくなるぐらいの表情だ。
当然周りを見渡すと横島以外は全員真っ赤だった。
横島はさっきからたいした表情も浮かべずに見ている。
その後は画面の二人はずっといちゃいちゃするだけで終わり、美神たちの乱入により
記録も終わった。
「で、まとめるわよ」
記録を見終わった後でおキヌがお茶をもう一度配り、全員に行き渡ったところで美神が
口を開く。
「今日、タマモが一人で留守番をしている時、昼過ぎに横島君が現れる。
タマモのカップうどんでお昼を済ませる事になり、横島君が私の忘れた惚れ薬を
七味と間違えてタマモならびに自分のうどんに入れてしまった。
で、先ほどの記録を見たように惚れ薬でおかしくなっている時にタマモの首に
ヨ・コ・シ・マ君がキ・ス・マークをつけたわけね。これであってるのね、横島君
にタマモ?」
要所要所で棘のある言い方で美神が確認をしてくる。
「はい、合ってますよ美神さん。」
ちがう、そうじゃないとタマモは言いたい。
七味と間違えたのは自分のはずである。横島が間違えたのではない、自分が横島に
渡したのだ。
なぜ、横島は自分をかばうのだろうか? たんなるやさしさだろうか?
でもここで自分の罪を言えば、あんな記録を見た後である。
御揚げ1ヶ月禁止ぐらいではすまないかもしれない。
タマモは事務所のみんなが横島の事を好きだという事は気づいている。
気づいていないのは横島だけかもしれない、それだけに横島がらみとなると
みんな気づいていないかもしれないけど目の色を変える。
あの美神でさえそうなのだ。
タマモの責任で横島を独り占めしたと分かった場合、あんなキスシーンまで見せたのだ
表立ってひどい事はされないが、裏でどうなるか想像もつかない。
ここは素直に横島のせいにしておいたほうが身のためかもしれない。
「・・・・そ、そうよ。横島のせいなんだから私は悪くないわ」
言ってしまった・・・
一瞬横島と目が合ったときに横島が笑ったような気がした。
タマモはもしかして自分はやってはいけないことをしたような気持ちになってきたが、
すでに戻れない場所まで来てしまっていた。
「こんの馬鹿横島!。タマモにきちんと謝っておきなさい。
タマモも好きにしていいわよ」
「あ、いや私は良いわ。まあお互い様だし、き、きつねうどん山ほど奢らせるから」
なんとなく声がどもってしまう。
美神は怒り足りないようだったが、タマモが良いと言ってしまった手前これ以上強く
言えないのか。ぶつぶつ言いながら奥に引っ込む。
「あ、じゃあ私そろそろ晩御飯の用意しますね。」
おキヌが場の雰囲気をなんとかしようと明るく言ってくる。
「そうでござるな。おキヌ殿拙者は肉が食べたいでござる。
タマモは何が食べたいでござるか?」
シロも一応は気を使っているのか明るくタマモに振ってくる。
「御揚げね」
とりあえず自分の意見を言いながら、タマモは横島になんで自分をかばったのかを聞くために、話すタイミングを取ろうと横島をちらちらと見る。
「横島さんも晩御飯食べていきますよね?」
「ん〜いや、さすがに今日はやめておくよ。問題起こしちゃったしね。
明日は遠慮しないで誘いに乗るから、また誘ってくれ。」
あははは、頭を掻きながら笑う。
「そうですか。別に気にしなくても思うけど横島さんがそういうなら
また明日誘いますね。」
「うん、ごめんね。じゃもう行くよ。美神さんにもよろしく言っておいて
みんなお疲れ様。」
「お疲れ様です。横島さん。」
「先生、お疲れ様でござる。」
「横島おつかれさん」
タマモは話すタイミングを逃して今日は聞けないと落胆していると、横島がタマモの
横を通り過ぎるときに、タマモにだけ聞こえる声で呟いてきた。
「安心してタマモ、ちゃんとタマモのこと愛してるよ。今晩俺のアパートで
まってるからね」
「えっ」
おもわずびっくりして声を上げる。
横島は平然となにも無かったように横を通り過ぎて出て行く。
「タマモどうしたでござる?」
「え、いやなんでもないわよ馬鹿犬」
「何度言えば分かるでござるか、拙者は狼でござる」
何時も道理の喧嘩を始めると頭の中ではさっきの横島の発言を思い出す。
・・・
どう考えても結論は一つである・・
惚れ薬切れてないじゃない!!
今までの
コメント:
- 中編になります。正直自分で好き勝手に書いているので
面白いか面白くないかは微妙ですが、
がんばって後編に続くのでよろしくお願いします (青い猫又)
- 誤字脱字が多いのはご勘弁を・・正直見落としが多すぎました。 (青い猫又)
- たくさん入れてましたからねえ、「七味」……。
何となく「素」でもタマモをかばうくらいはしそうな気もしますから、
もしかしたら「切れてない」とタマモが思っているだけ……(殴打)ぐふっ!! (林原 悠)
- 林原 悠さん前編、中編とありがとうございます(笑
近いうちに後編も出しますのでよろしく (青い猫又)
- 何かコメント自体、久々というか、レアキャラになりつつあるNAVAです。
ハジメマシテ。
いや、何となーく期待させられるというか、話の運びが上手いなぁと。話の区切りも良いところで切ってるし。
それで居て、何かこう・・・痒くなりそうな予感がするのだけれど、久々に続き予みたいお話だったんでコメントする次第。タマモスキーですし(ぇ
具体的に内容に触れてませんけど、要するに頑張って欲しいのですよ。上手い方には特に(ノД`) (NAVA)
- どうも〜ヒロです〜
か、痒ッ!!歯ががたがた浮く(失礼)!!いや〜熱いですね〜季節はすっかり冬!!それでもこの作品には真夏のような暑さを伴った春!!あ、一部冬、一部以上の割合で南極辺りで・・・
続きを期待しておりますです〜であであ〜これからも頑張って下さいませ〜 (ヒロ)
- 最後の一言でやはり嵐は過ぎ去っていない事が・・・!沢山入れてましたからね、横島君。
普段でも何かの薬が効いてそうな横島ですが、実際に惚れ薬が効いていても彼のシリアスな部分は独特のものを感じさせられます。
こんな状態でこんな台詞を吐かれたら怒り狂ってる面々でも黙らされてしまうものでしょう・・・。
下手にダイレクトな行為が映されるよりも首筋のキスに嬉しそうにしているタマモの映像は彼女達にさぞ刺激が強かったであろうと思われます(笑)。
では、後編へと・・・。 (フル・サークル)
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