空白の約五年間(ほのぼのしてます) おキヌ編
投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/10/28)
注意----------------この題にある五年間とは、我が駄作「悲劇に血塗られし魔王」の謎とされたアシュタロス戦役後から横島、魔族化までの五年間を指します。ですが、ただそれだけです。あくまで連動しているのは題名だけですので、「悲劇に血塗られし魔王」を読んで無くても大丈夫です。お気軽にお読みください。
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約束の日。
おキヌは公園のベンチに腰かけ、横島が来るのを待っていた。
約束の時間までまだ間がある。
ちょっと、到着がはやすぎたようだ。
空はあいにく、厚い灰色の雲で覆われている。
でも、そんな空模様とは反対におキヌの顔は晴れやかだった。
・・・・・もうすぐ横島さんがくる。
・・・・・それから二人でお店に行って、横島さんにセーター買ってもらうんだ。
それは冬が近づいてきた事を思わせる昨日の寒い夜、いつもなら仕事が終わって横島が帰る時刻の頃の事だった。
「おキヌちゃん、明日は暇?」
突然、横島がおキヌに切り出した。
おキヌはどうしたんだろうと思いながら「ないですよ」と答えた。
「じゃあさ、明日一緒にセーター買いに行かない?」
「っ!!いいですよ。」
おキヌは満面の笑顔で答えた。
その提案はまさにデートに他ならず、おキヌは一瞬にしてランラン気分へとはや変わり。
時間・場所を決めている間、おキヌはずっと笑顔だった。
そして予定を決め終えると、横島はそれから、と付け加えた。
「おキヌちゃんは、お金は持ってこなくていいよ。」
「?どうしてですか。」
「俺がおキヌちゃんのぶんも払うからだよ」
「・・・・」
一瞬、その意味が分からなかった。
でも理解した瞬間、「そんなの悪いですよ」と反論するよりも先に感情が高まってしまう。
心臓の動悸が早くなる。
顔がこれでもかってくらい赤くなる事を自覚する。
やっと、動悸がおさまった頃には横島は帰った後だった。
(ああっ、横島さん。早く来てください)
おキヌは自分が横島にセーターを買ってもらう姿を想像するたびに、思わずにやけてしまうのだ。
こんなに待つのが楽しいと感じたのはひさしぶりだった。
おキヌは横島の到来を、今か今かと待っていた。
・・・・・・結局、横島が来たのは約束の時間ぎりぎりだった。
「もしかして、待たせちゃったかな?」
「いいえ、今来たばかりですよ!!」
お決まりの台詞を力強く言い切るおキヌ。
一時間も待ったことは公然の秘密だ。
横島は「それならいいんだけど・・・」と言ってから・・・・
「じゃあ、行こっか」
「はいっ」
二人は仲良く並んで歩いていった。
「これなんかどう、おキヌちゃん。」
「うーん・・・・」
もう何着めになるだろう。
おキヌはなかなか本命を決めれず、思いのほか時間がかかりそうだった。
横島が渡した白いセーターを、何度も何度もなぜてはうめき、それから鏡の前で身体に当ててみたり、広げて全体をじっくりと観察したりと、せわしない動きで吟味している。
横島はそんなおキヌの様子に思わず・・・・
「おキヌちゃん、なんなら二着選んでもいいんだよ」
と言うが、おキヌはそれを一蹴する。
「駄目です。一着がいいんです!!」
(一着のほうがプレゼントされる側にとって思いいれが強くなるものなんです!!)
横島はそんなおキヌの気持ちを知ってか知らないでか、ただおキヌの様子をじっと見詰める。
おキヌは横島が選んだセーターをかなり悩んでから、結局諦めた。
もう一度ざっと店内を見渡す。
やや乱雑に陳列された商品に、ほの暗い照明。
さほど広くない店内は、やる気のなさそうな雰囲気を醸し出していた。
おキヌの睨むような視線が店の隅のほうにある無造作に積み上げられたセーターの山をとらえた。
おキヌはそこへ移動すると早速、手近にあるものから物色していった。
横島もそのセーターの山を見る。
そして、これまた白いセーターを手に取ると、
「おキヌちゃんには、やっぱり白が似合うよ」
そう言っておキヌに渡す。
おキヌはその言葉に赤くなりつつ、そのセーターを吟味する。
ふわふわと柔らかくてとても着心地が良さそうだ。
しかもハイネック・・・・・・・・
「サイズはどう?」
横島に促され、軽く身体に当ててみる。
ぴったしだ。
考えに考えてからおキヌはこれに決めた。
そしてレジで会計を済ませると、それをおキヌに渡す。
「はい、おキヌちゃん。」
横島はセーターの入った袋をおキヌに渡すと、「有難うございます」と言ってぎゅっとそれを抱きしめる。
(でも、なんで急にプレゼントしてくれたんだろう)
おキヌは横島に尋ねた。
横島は頭をかき照れくさそうに、
「いままでお世話になった礼、だな。あっ、それと」
ふわっと首に柔らかい感触が巻きつく。
それはクリーム色のマフラーだった。
「これは、これからもよろしくっていう意味ね。」
実は横島はさっきの店で一緒にマフラーも買っていたのだ。
その事に気づかなかったおキヌはポオッと笑っている横島を見つめる。
言いようのない気持ち。
とても「嬉しい」なんて一言では言い表せない、奇妙な浮遊感。
喜んでいいやら照れくさいやら、様々な感情が織り交ざってくすぐったかった。
「なんだか胸がきゅっとしちゃいました。横島さん、本当に有難うございます。これは一生の宝物にしますね。」
おキヌの心からのお礼に「大げさだな」とそっけなく横島は言うがその頬に赤みが差していたのをおキヌは見逃さなかった。
(横島さんはもう、照れやさんですね・・・・・・・でも、そんな横島さんが私は大好きですよ)
雲間から覗く夕日を見つめながらおキヌは決意する。
(いつか絶対、横島さんに告白しよう。・・・・・・待っててくださいね、未来の旦那様・・・・・・)
今までの
コメント:
- ・『悲劇に血塗られし魔王』を読んでくださっている方々へ・・・・・
予告しておいて申し訳ないのですが、空白の五年間について述べれるかどうか非常に怪しいのでこうして別口に書くことにしました。
申し訳ありません。あっ、それと今日は『悲劇に血塗られし魔王』をお休みします。
・俺の作品、初めて読んだという方々へ・・・・・
初めまして、DIVINITYと申します。まだこのサイトに来て一ヶ月たっていない新参者ですが、よろしければ応援の方、よろしくお願いします。 (DIVINITY)
- 改めて、こんにちは。DIVINITYです。いつも暗い話を書いている為、思わず「明るい話もいれてーーーーーーーーー!!」と叫びたくなる衝動は一度や二度ではありません。でも、自分の処女作「悲劇に血塗られし魔王」にはかなり力を入れてますから止めたいとは思いませんけどね・・・・・
さてさてこんな自分ですが、ほのぼのは勿論初挑戦。上手くいったか非常に不安です。大体、題名が「空白の約五年間」と言いつつ、五年どころか正味たった二日間の話。これは一体どういうことだろう?自分で疑問に思ってしまいましたが、まあ、{その五年間の中でも特に横島にその話のヒロインが傾倒した日}であるとご理解してくださると幸いです。
今回のこの作品は自分の衝動(明るい話が書きてーーーーーといった)に押されて書いたものなので、次作を書くのはいつかまだ未定です。 (DIVINITY)
- こ、これは悲劇に血塗られし魔王―というよりは告白大作戦!!
く、斑駒さん、これはどうなんでしょう?
どうも〜ヒロです〜
純粋にこれはアナザーストーリーとして暖かいものがありますよ〜。ウ〜ン、おキヌちゃんは人気あるなぁ〜。こういうのも思い描けるDIVINITYさんもいいなぁ。ほんと、ユタさんじゃないけど最近の新人さんはみんなうまいなぁ。ッて僕も結構(ッてかかなり)新人?ちくしょー!!いーなぁ。
でわでわ、これからも頑張ってくださいませ〜 (ヒロ)
- う〜んと、どんなもんでしょうか?(^^;
「悲劇に血塗られし魔王」の横島、魔族化までの五年間の話ということですが、
こういうのって、裏設定であるべきであんまり表に出さなくてもいいんじゃないか?とも思います。もちろん裏設定はあったほうがいいし、話に深みは出ると思いますが、やたらに表に持ってくるものでもないかと。本編が終了してから「外伝」という位置づけで始めても、なんら遜色はないと思いますし。
それに明るいのが書きたいのであれば、全く連載とは無関係な短編を投稿するのもいいかもしれません。ベテランの皆さんも、連載が疲れると、たまに息抜きで毛色の違う短編を書きますし、無理に連載にリンクさせる必要も無いと思いますよ(^^; (ライス)
- とは言っても、一つの単独作品としてみれば、
いい感じにほのぼのしてると思います。妙に横島が伊達男な気もしますけど。人間的に成長したからでしょうか?(笑)一緒に買い物するよこしまとおキヌちゃんが微笑ましくて、いい感じでした。
というわけで、本来でしたら、賛成票だと思いますが、上記の理由から差し引きゼロということでココは中立です。できれば、連載とはまた別のテーマの短編を読んでみたいです。DIVINITYさん、文章は上手なんですし(^^;
P.S 「おキヌ編」ってことは続くのですか?(汗)あと、ヒロさん、あなたも新人さんですよ、それもかなり新米の。気にしなくとも新人さんです。心配なさらないように。(笑) (ライス)
- >ヒロさん
どうも有難うございます。新人同士、お互い頑張っていきましょう。
>ライスさん
実は他のキャラも書こうかなーと思っているのですが・・・・・
やめたほうがよろしいでしょうか?
う〜ん、どうしよう。書いてしまったら御免なさい。 (DIVINITY)
- 純粋にこの作品単体にコメントさせていただきますね。
バッチリ最高です。
甘々なおキヌと横島に賛成です。
原作よりも一歩も二歩も進んで横島に好意を示すおキヌの思いが素敵でした。 (KAZ23)
- ではわたしも純粋に(笑)
中身的にも充分微笑ましくて、ほんわかしていていいと思いました。
確かにヒロさんの言われるとおり、どちらかと言うと『告白大作戦』寄りのお話でしたね。
「悲劇に〜」の8・9話を続けて読んだせいか、おキヌにとって幸せだった今回のお話を見ると、なんともいえない気分になる所なのですが・・・でもやっぱり、幸せそうなおキヌはいいですね♪ (ヴァージニア)
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