ザ・グレート・展開予測ショー

彼氏が彼女になったとき!?〜後編第二幕〜


投稿者名:ヨコシマン
投稿日時:(03/10/25)

厄珍に逃げられ、時間を持て余して街中をぶらついていた横島は、その間ずっと考えていた。女に変身したこの姿、誰かに似ている。ずっと前に見たことがある。そんな思考が頭の中をグルグルと廻り、ようやく辿り着いた答え。それは・・・

「お袋だ!昔アルバムで見た高校生の頃の!」

もともと大樹と百合子の遺伝子を半分づつ持っているのだ。性別転換時に百合子の遺伝子が強く現れたとしてもおかしくは無い。大樹の遺伝子の影響だろうか、百合子ほど切れ長の目ではなく、やや丸みを帯びた可愛らしい目になってはいたが。

横島は公園にある男子トイレの鏡の前で、そんなことを考えていた。お袋も若いときは可愛かったんやなー。
いろんな角度から顔をチェックしていたそのとき、異変に気づいた。トイレに入ってきた男たちが妙な反応をするのだ。びっくりしたり、ジロジロ見たり。
あー、そーか。今は女だから女子トイレに・・・

「あ!ああっ!し、しまった―――――――――!!」

横島の体を電撃が貫いた。
今は女だ!生理学上間違いなく、誰がどう見ても女なんだ!

「男子禁制の花園に、入り放題じゃねーかぁー!アホかおれはぁ―――――!」

慌てて時計を見る。PM3:50。変身解除まで約2時間と40分。充分だ。まだ間に合う。
信じられない速度で横島はアパートに戻り、ドアを開ける。何かを探していたのだろうか、あったー!と叫んで部屋から飛び出してきた。

Seny製デジタルビデオカメラ 『サバイバーショット』
地球上のあらゆる所で撮影を可能にするタフな男のタフなカメラ。例えカメラマンが死んでも映像だけは生き残る、とんでもないカメラだ!

「いつかこんな時が来るんじゃないかと、爪に火をともすような生活にも耐え、手に入れたこのカメラ!ついに日の目を見るときがきたんじゃぁー!!」

横島は走った。タイムリミットまであと2時間。ターゲットは最近出来たばかりの大型温泉レジャー施設『小江戸温泉』。若い女性に大人気のスポットだ。
今から急げば30分程度で着く。1時間も有れば充分にクオリティの高い“作品”が作れる自信がある。
おらおらおら!どかんかいバカップル!!
ジジイ!道の端を歩いとけやぁ!
道行く人々を蹴散らしながら爆走を続ける横島の視界に、見慣れたシルエットが飛び込んできた。

「あれ?ピートじゃねーか。なにやってんだ?」

20mほど前方に、地面に片膝をついて苦しそうに口を拭うピートの姿。顔をしかめて見つめるその先には、除霊中なのだろうか、3体の悪霊がピートをあざ笑いながら飛び交っていた。

「へー、ピートのヤツ、だいぶ苦戦してんなー。ま、『苦労するのも修行のうち』ってね。せいぜい頑張れよ、ピート。」

親友の大苦戦をサラッと見捨てて、ピートの脇を通り抜けようと、さらに加速していく横島。ピートと悪霊たちの間を通り抜けたその瞬間、ピートが叫んだ。

「危ない!!」
「へ?」

突然のピートの声に思わず振り向くと、3体の悪霊のうちの1体が横島にむかって飛び掛ってきていた。

『オ、オ、オ、オンナァ―――――!!ウギャアッハッハッハッハッハァー』

すでに人間だった頃の知性など失われてしまっているのだろう、支離滅裂な叫びをあげる。
ゲッ!しまった!こっち来た!?意表を突かれた横島は思わず立ちすくむ。避けられない!そう思った次の瞬間、何かが覆いかぶさってきた。
景色が回って青空が視界に入る。横島は仰向けに倒され、その上を悪霊が通り過ぎた。とっさにピートがかばってくれたのだ。

「わ、悪い、助かったぜピート。」




(!?何故僕の名前を?)
ピートは助けた女性の顔を見直した。知らない人だ。とりあえず手を差し出して彼女を起こす。君は誰だ・・・と尋ねようと口を開く前に、彼女の方から質問が飛んだ。

「なにやってんだよ。体調でも悪いのか?お前ならこんな程度のヤツ楽勝だろ?」
「い、いや、実はもう一ヶ月ほどろくに食べてなくて・・・。さすがに霊力が・・・。」

初めて会ったのに、まるでずっと昔から知ってるような、そんな錯覚。思わず知り合いに話しかけるように話してしまった。

「ったく、しょーがねーな、唐巣のオッサンも。相変わらず金もらってないのか。まぁ、助けてもらったからには助太刀するよ。」

彼女はピートに微笑んだ。
なんて笑顔をするんだろう。ピートは思った。言葉遣いは男勝りなのに、その笑顔は可憐な少女のようだ。そのギャップがピートにはとても魅力的に感じられた。

「じゃあ、俺があいつらの動きを抑えるから、フォロー頼む。」

そう言うと、その女性は3体の悪霊に前に立ちふさがった。右手には霊波で作られたレイピア。
(GSだったのか!だとすると唐巣先生のお知り合いの方か。)
恐らくそうだ。ピートはそう納得して、彼女のフォローの準備を始める。

勝負は一瞬だった。霊波レイピアは凄まじい速さで悪霊を切り刻む。その姿はまるで、ただ一人舞を舞っているかの様に美しい。
そして3体の動きが止まった。

「今だ!やれ!ピート!」
「はい!!ダンピールフラッシュ!!!!」






「ちょ、ちょっと待ってくれませんか!あの・・・、お名前を・・・聞いてもいいですか?」

何とか除霊に成功し、急いでるから、と立ち去ろうとする彼女に向かってピートは思わず声をかけた。

「え!?な、名前?・・・百合子、・・・百合、・・・ユリ!ユリでいいや!」
「ユリさん・・・ですか。」
「そーそー、ユリ!じゃ、急いでるんで。またな!ピート。」

そう言うとユリは走り出した。夕日に向かって遠ざかって行く彼女の背中をいつまでも見送りながら、ピートは呟く。

「『またな』か・・・、また・・・、会えるだろうか・・・。」

ピートの心臓は、いつのまにか心地よいビートを刻んでいた。

<最終幕へ>

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