アシュタロス〜そのたどった道筋と末路(涙)〜おキヌ、無惨?(疑問系)後編
投稿者名:♪♪♪
投稿日時:(03/10/30)
純白の山肌、今すぐ吹雪き始めてもおかしくない標高にて。
雪を掻き分けず、にもかかわらず雪の中を進むという、常軌を逸した登山家が一人そこにはいた。
「むっすめさんっよっくきけよっやまおとこにゃほっれるなよ〜〜〜〜〜♪」
――中々良い声で歌いながら山を闊歩するのは、一人の幽霊。
登山スタイルと出現場所で、一発で遭難者の霊とわかる漢だ。ちなみに、明痔大学ワンダーホーゲル部員。
美神が呼ばれた第一原因にして、人骨温泉ホテルに出没する幽霊の正体である。自分の体を見つけてほしくて化けて出るのだが、その苦しさも山を歩いてれば紛れるらしい。
ホテル側がGSを呼んだところまでは上手くいった。後は、当人がホテルに到着するのを待つばかりだ。それまでの時間つぶしに、大好きな山を練り歩くことにしたのだが――
その後出会うことになる災厄を知っていれば、彼も出歩くなどしなかっただろう。
アシュタロス〜そのたどった道筋と末路(涙)〜おキヌ、無惨?(疑問系)後編
「――ん?」
一瞬、聴覚から変な情報を受け取って、ワンダーホーゲルは真横を見た。
悲鳴らしきものが聞こえた気がするのだが……
「助けてー!」
いや、確かに聞こえる。うら若き乙女の悲鳴が。
「っ!?」
元々正義感の強い彼である。その切羽詰った悲鳴を聞き逃せるはずも無く、声がする方向へ走り出した。
結果論から言うと、彼はこの時この悲鳴を無視するべきであった。
何故なら、彼は善意の行動が不幸を呼ぶという、究極の理不尽を体験する羽目になるのだ!
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ぱっかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!
「うぎゃぁっ!?」
出会い頭、巫女服姿の少女に力の限り撥ねられ。
「はははははははは! 恥ずかしがりやさんだなぁぁ!」
どぐしゃべきゃぁっ!!!!
「げぼぉっ!!」
着地したところを魔王クラスの魔族に轢逃げ。
「アシュタロス〜〜〜〜〜〜〜!! お前に消えられたらベスパに殺される〜〜〜〜〜!!」
キンッ!
「…………っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?」
追い討ちに、幽霊に激痛を与える特性シューズ(ルシオラ作)で股間を潰される。
一瞬にしてワンダーホーゲル、虫の息。あと少し刺激を与えたら強制的に成仏させられそうである。
女の子を下心なしで助けに行こうとして、なにゆえこんな目に会わなければならないのか。
究極の理不尽である。
「や、山が……山が自分を受け入れてくれてるッス」
ってか、幻覚見てるし。
その頃の東京。
ぽかぽかぽかぽか……
「平和でちゅねえ」
「平和よねぇ」
ずずずずずずずず。
縁側に座って、砂糖水をすするルシオラとパピリオ。
「へーわでちゅねえ」
「へーわねえ」
……ベスパはどうしたよ?
「お嬢さぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
追いかけっこが始まって約一時間が経過し……アシュタロスは、おキヌちゃんを補足しつつあった。
(逃げなきゃ駄目よ逃げなきゃ駄目よ逃げなきゃ駄目よ逃げなきゃ駄目よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ)
死ぬまで守り通してきた純潔を、幽霊になってから失うのでは笑い話にもならない。しかも相手は……
ちらりっ
「おぢょうすゎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!(濁声)」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ちらっとはいえ、背後を振り向いてしまったことを激しく後悔。
「ふあはははははははははっ! 清楚! 時代は清楚なのだ! ベスパには無いこんな感覚を私は待ち望んでいたのどわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
(誰か、誰か助けてくださぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!)
心の中で祈りったその時――
「おじょおさびばぶぐっ!?」
背後の気配が、消えた。
(えっ!?)
あわてて背後を振り返ると、そこには――
「――大丈夫ですか? お嬢さん」
肩で息をして、こちらに手を差し伸べるバンダナの青年が一人。
人間なのに、幽霊相手に真摯な対応をする人間――おキヌの胸は、不自然なほどに高鳴る。
(え? え? え?)
いや、先にネタばらししとくと、おキヌの胸の高鳴りはいわゆるつり橋効果という奴で。
運動による息切れを、精神的高揚と勘違いしているのだ。
そんな現代の理論を、300年前に死んだ少女が知るはずも無く……
「立てるかい?」
「あ、ありがとうございます……」
その胸の高鳴りを、ものの見事に恋心と勘違いし、顔を赤らめたのであった。
さて、皆さん。
この瞬間、一体何が起きたのかが気になっていることでしょう。
実は、こんな事が起きていたんです。
「ふあはははははははははっ! 清楚! 時代は清楚なのだ! ベスパには無いこんな感覚を私は待ち望んでいたのどわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
アシュ様がそう叫んだ瞬間。
キランッ☆
「ん?」
真昼だというのに、星が瞬くのを目の端で確認した横島は――凍りついた。
(べ、べすぱっ!?)
そう! 瞬いた星の正体は、さっき丸出しで高速飛来するアシュ様の恋人、ベスパその人だった。
額には青筋、手には折檻用の道具と完全武装。
恋人同士の絆とゆーやつで、嫌な予感を感じてすっ飛んできたのだ。
彼女は飛行の勢いをそのままに、無言でアシュ様に突進し――ラリアットをかました。
「おじょおさびばぶぐっ!?」
まったく気付いていなかったらしいアシュタロスは、そのラリアットの直撃を食らい、そのまま真横の茂みに突入。そのまま姿を見せない。
音が聞こえないところを見ると、結界でも張ったのだろう。視線だけ向けると、血の噴水が上がっているので何が行われているかは丸わかりだ。
(肉塊Xになっとるんやろーなー)
自分より十倍怖い恋人を持ってるくせに、自分よりも欲望に忠実な友人のために、一秒だけ黙祷をささげる忠夫君……と、そこで彼はある重大な事実に気がついた。
(こ、この血飛沫――この子に見せたらトラウマになる!?)
いかにも純真そうな巫女服姿の少女――ただでさえ、あんなの(アシュ様)に追いかけられて心に傷が出来かけているというのに。自分は慣れてるからともかく、毎晩夢に見るかもしれない。
根が優しい(女性限定)横島は、女の子の心にトラウマが残るのは看過できなかった。
(どうすればいい!? どうすれば――)
混乱しながらも、横島の頭脳はその答えをはじき出した!
――この場を離れるのが最優先!
「――大丈夫ですか? お嬢さん」
かくして。
横島は、無意識に一人の少女を落とした(核爆)
その後――
横島はおキヌをつれて人骨温泉まで避難(幸い、500メートルも離れていなかった)し、彼女から事情聴取。死に掛けてたワンダーホーゲルを使って、彼女を解き放つことに成功したのだが――
「日給三十円で雇ってあげる!」
との、美神のお言葉に、ルシオラ達を紹介しなかった自分の判断が正しかったのだと、心底ほっとした横島だった。
なお、アシュ様は横島の予想通り、肉塊Xとなって横島の肉体に帰還したことを記しておく。
あとがき
おキヌ辺完
結局アシュタロスはベスパと夫婦漫才するんだなぁと、しみじみ思いました。
今までの
コメント:
- なんなんだ。この魂に響くようなものは!!
どうも〜ヒロです〜
く、おもしろい!!すげー!!アシュがやられるとこを見て横島もルシオラにボコられることを期待した僕はすでに狂っているのか!!やはり僕にも悪魔が!!魔王クラスか!!
であであ〜これからも頑張って下さいませ〜 (ヒロ)
- べすぱ、こえぇぇ・・・・・(ガクガクガクガク)
でも面白いっす!意識せずに女1人落とした横島。
やばいぞぉ。ルシオラから肉塊Yになっちゃう折檻受けちゃうぞぃ!
今回のも堪能させて頂きました。ではっ!! (BOM)
- はじめまして、♪♪♪さん。
某所で壊れアシュSSは幾つか読んでいたのですが、ここまで壊れているのはもう見事としか
いいようがありません。(苦笑)
でも面白いです。続きをキボンヌ。
一つだけ気になったのは、文中のタイトルと本文の区別がわかりづらかったことですね。
罫線やかっこ記号でくくっておくと、よいかと思います。 (湖畔のスナフキン)
- ああ・・・毒牙に落ちた。
この作品の何が凄いのか分かってきました。
横島が押さえ役に回らなければいけない程に凄いんですよ。
そりゃあ誰も勝てません。
なんなんだ、この元魔王様は・・・・・・
本当、笑う。(▽) (KAZ23)
- 某所でもそうでしたが、やはり壊れアシュが絡むと横島クンはマトモ化の方向に進むのでしょうか?
……が、女性絡みで横島クンが抑え役に回るというのは初めて見ました。
こうなったらもうガンガン続けてください。 (U. Woodfield)
- 壊れアシュ、クセになってます。
でも「これから」みたいですね。ここで第一話ですから。
さらなる壊れっぷりを楽しみにしてます。 (フル・サークル)
- あ、べスパが来てる‥‥(汗)折檻はお家に帰ってからだと思っていたのに‥‥
横島とルシオラ・美神が夫婦漫才する風景はよく見かけるのですが、アシュとべスパが夫婦漫才(しかも横島以上のような気が)するお話はホント珍しくて、そしてパワフルです。
唯一の見せ場のはずのワンダーホーゲルが、究極の理不尽を体験する羽目に遭うのも、彼ならではですね。
そしておキヌ‥‥いきなり恋心が芽生えてしまい、このままではルシオラ黙ってませんよね?
パピリオじゃないけど『ちのあめ』がふりそうです。 (ヴァージニア)
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