ザ・グレート・展開予測ショー

いつかOXOXする日―ザ・ダブルブッキング(6)


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(03/10/23)



ここは、どこかしら。私・・どうしたんだろう。
・・・・あいつは、どこへ行ったの?

ルシオラは倒れ伏したまま顔を上げた。
辺りには白いもやが立ち込めていて、暗い。
床にはよく分からない材質の大小さまざまな破片が散乱していた。
身体を起こす。予想した以上に暗く、数メートル策はまったく見えない。
暗視と霊派の測定を兼ねてバイザーを目に当てる。何も写らず、乱れた砂嵐が飛ぶばかりだった。
故障ではない。この世界の法則の違いが、バイザーには影響したのだ。ルシオラはバイザーを上げた。

右手をかざし、周囲を見回すだけの光の玉を出現させる。
その場所の荒れ方は凄まじいものだった。至る所で柱や壁が倒壊している。
この破壊は自分がここに飛ばされて来ての事だと言うのは分かっていた。
ただ、一人で飛ばされたのか、二人でだったのか、思い出せない。



+ + + + + +



「メドーサァァァ!!」

「小娘ぇぇ!!」

通路が爆発した。その光と破片の中からルシオラとメドーサが組み合ったまま飛び出してきた。
両手から霊力を放出してメドーサに当てようとしているルシオラ。それを二又槍で防ぎながら押されているメドーサ。
二人は様々な色の光と火花とを放ちながら、クリーム色の空間の中を、更なる加速で飛行している。

突然、見えない壁に衝突した。先程、認証を受け通過した結界まで来ていたのだ。
二人の勢いは止まる事なく、そのまま結界内壁を摩擦による炎と衝撃波を散らしながら滑って行った。
その外側にも波動は響き、空間内の次元をずらして作ってある“部屋”も二人の通過ルートに接していた所は机や職員が弾き飛ばされたりしていた。

「いつまでも・・・・お前に力で押されるあたしだと思ってんじゃないよ!!」

メドーサは一瞬、二又槍を手前に引き寄せたかと思うと、その切っ先を上へ跳ね上げた。
その勢いで上に舞い上げられるルシオラ。だが、そのまま身体をひねりながらメドーサの背後へ回り込んだ。
メドーサが振り返ると、そこには何も無い。不意に両脇に気配を感じた。
メドーサの左右、斜め上下に合計4人のルシオラが立ち、同じ動作で構えている。
その手のひらからいっせいにメドーサめがけて雷撃が放たれた。
霊力のシールドで防御するメドーサ。

「えーい、超ウザい!!」

シールドをそのまま衝撃波にして広げる。四隅にいたルシオラの姿は無い。
目の前の光が揺らぎ、ルシオラの姿が現れる。薄笑いを浮かべていた。構えを直そうとするメドーサ。

「・・遅い。」

ルシオラはメドーサの首筋に手をかざす。電流のような光がメドーサの前身を走った。

「・・・がっ!!」

苦し紛れに横へ払った二又槍を余裕でかわして退がるルシオラ。

「麻酔よ・・。いくらあんたでも、ずいぶん、動きずらくなったようね・・。」

「おのれ・・・!」

「ヨコシマの子供への転生、今回は辞退してもらうわよ・・今回だけじゃなく、この先ずっとね・・・。」

「くっ・・・お前の・・指図なんて・・・受けるかぁぁぁ!!」

「!」

震える身体で渾身の一突きを繰り出すメドーサ。予想以上のパワーだった。
両腕で受けたルシオラをそのまま押し出して行く。
再び逆方向へ飛行を始める二人。
滅茶苦茶な勢いで槍を繰り出し続けるメドーサ。

おかしい。・・・いくらメドーサでも、力任せすぎるわ。

既に二人の速度は先程の2〜3倍にまでなっていた。
背中には青白く光る作業エリア。ルシオラはメドーサの意図に気づいた。

「フフフ・・このまま、あそこに叩き付けて深く埋め込んでやる。その上で串刺しだ。なーに、殺しはしないよ。
ここのルールはうるさいからねえ。当分、動けなくするだけさ。」

最早、作業エリア外壁はすぐそこまで迫っていた。
そのまま二人は突入する・・・かに見えた。
突如、ルシオラが突きを払ったタイミングでメドーサの腕を押さえる。
次に彼女の腹の上に左足を乗せると、そのまま後方へ倒れ込んだ。

「うまく行くかどうか分からないけど・・・・!えいっ!!」

初めてにしてはずいぶん見事な「巴投げ」が決まった。

メドーサはそのままの勢いで頭から外壁に激突した。
外壁を貫通したメドーサは多彩な破壊音と叫び声とを立てながら奥深くへ消えて行く。
次の瞬間、ある程度勢いを削いだとは言え、止まる事は出来なかったルシオラも少し離れた外壁に激突し、
貫通して奥の方へ転がって行った。



+ + + + + +



そうよ。メドーサはこの近くにいるわ。
あれぐらいで参るとは、とても思えない。


麻酔が解け、体勢を立て直したメドーサは、自分の担当と合流して転送ルームへ向おうとするだろうか、それともルシオラを先に片付けようとして探し回るだろうか。
ルシオラはしばらく考え、前者だと結論付けた。メドーサは余計なリスクを避ける目的優先主義者だ。
彼女は自分の入ってきた側ではなく、より奥へ進む事にした。
この場所は元々、天井裏・フロア間の空白部らしいが、どこかしら廊下や部屋に出られる所があるだろう。

メドーサを先に転送ルームへ行かせてはならない。
確かに、彼女が転生したところで、本当にヨコシマを手にかける可能性なんて極僅かなのだろう。
彼女が前世のままで現れたとしても、メドーサなんかに負ける「彼ら」ではない。


・・・・・だけど、「子供」、なのよ?
あのヨコシマが、自分と愛する人との間に生まれて来た子供がメドーサで、最初から自分の命を狙いに来ただけの者だとしたら・・・悲しむよね、とても。
そして、今度こそ、お前は非情になれず、倒せないかもしれない・・自分がそれで死ぬ事になっても。

胸が痛んだ。

そんな事にはさせない・・・「殆どない」じゃなく、絶対にさせない。


まずはこの場所から離脱しなければならない。まもなくここへ職員たちもやって来るだろう。
ここのルールは分からない事が多いが、拘束を受けることは十分ありうる。
ルシオラは破片の少なくなっていく方向を歩き始めた。


(続く)

――――――――
(言い訳)
ここでのルシオラ分身の術は、「幻」のつもりです。
職員さんのやヨコシマ君が昔やったのとは違います。

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