ザ・グレート・展開予測ショー

横島物語。【3】


投稿者名:香夜月 蕗
投稿日時:(03/11/ 3)

第三章 令子と美智恵。





『お前の定め、覚えているな?』




また、夢の中で誰かが言う。
前見た夢より微かに低い声だ。

周囲は前の夢と同じく暗闇。
光を照らさない空間。

暗闇には何もない。
目が慣れてきても
何も見えない。

横島の思考は、横島にない気分だった。
何か考えているが
何を考えているか全く分からない。

この声を聞いても
横島は自分が何を考えていたのか
分からなかった。

「定めって…俺の家と美神さんの家が敵同士ってことっすよね?」

自分は何も考えていない筈なのに
横島の口は動いていた。
何故そう言ったのかも
その時何を考えていたかも
何故か横島には分からなかった。

『そうだ。』

唸るような声。
何かを訴えているような声。
声は、続けて言った。

『お前は、何をしている。
早く、あの美神家を滅ぼせ…。
あの家の者等は皆邪悪なる心を持ち合わせている…。』

その声に身体が震えた横島。
寒気も襲い
早くここから立ち去りたくなった。

しかし、ここは夢の中。
立ち去ることが出来ない。
逃れることの出来ない世界。


殺気が横島を襲う。


横島は、震えたまま立ち尽くした。
何かを言おうにも
震えて声が出せないまま。
声は、暗闇の何処から殺気を漂わせていた。


『殺せ、美神家を。滅ぼせ、美神家を。』


呪文を唱えるように声が言う。
それこそ、殺気と邪悪なる気が混じっているような
恐ろしい気が襲う。

因縁を感じる気。

やっと、落ち着いたのか
横島の身体の震えが止まった。
殺気も先程より落ち着いたようだ。

「美神さんは、そんな悪い人じゃないっすよ!!
何度も俺を助けてくれましたしね!!」

さっきの震えていたのが嘘みたいに
堂々たる態度で横島が大声で暗闇に向かって言う。


『それは、表の姿だ。裏は違う。お前が思っているような生易しいものではない。
お前は、定めに従えば良いんだ。』


声は、言う。
暗闇全体に響く
大きい声でもない
全てを支配したような声で。

横島もビクッと一瞬その声に蹴倒されそうになった。
それと同時に色々な思いが暗闇の何処からか
横島に戻ってきた気がした。
何だか、『自分』というものを
やっと取り戻したような気持ちになった。

「で、でもですね。美神さんは悪い人じゃないんですっ!!!」

自分を取り戻した横島は、美神を庇う。
美神さんは、悪い人ではない。
その思いで横島は今
声に反論していた。


『……そうか、ならばこれから美神家の者が何をしでかすが
お前自身で体感してくれば良い。
さすればお前は、美神家を滅ぼそうと心底思うことだろう…。』


諦めが混じった声で声は告げた。
先程より、何故だか力がないような
気がするような声。
弱弱しい声だった。
横島は、額から冷や汗を流しつつも


「絶対思わないですから。」


横島が言ったその時
声の存在が消えたようだった。

暗闇は静寂だった。
物音一つしない。
微かな空気の擦れる音さえしない気がした。


自分さえ存在していないような…
そんな風にさえ思う暗闇の中で
横島は、呆然と立ち尽くしていた。



―――――――――



「しっかし、何であの夢覚えてるんだろうなぁ。」

普通、夢ってすぐ忘れるだろ。
とかと夢から覚めた横島は呟く。

先程まで見ていた夢を全て覚えている横島。

(あれは、夢だ。美神さんだって違うって言ってたじゃないかっ!!
美神さんを信じるんだ、横島っ!!
美神さんを信じたからこそ
あの声の言ったことに反論したんだ。
しっかりするんだ、俺っ!!)

パンと一発自分の頬を叩いて
気合を入れた。

(仕事が休み…これもあり得ないよなー。)

横島は、外の蒼い空を仰いで心中で呟いた。



―――――――――



「令子、それは本当なの?」

美智恵が聞く。

「本当よ。だって、横島クンが自分で言っていたのよ?」

美神は、深くため息をついた。

「誰がそんな事を?」

美智恵は、不思議そうに美神に向けると

「知らないわよ。まぁきっと、あっち側の家の誰かが言ったんじゃないの?」

美神は、頬杖をついて答えた。

「そう考えるのが普通だけど、何だか納得いかないのよ…。」

美智恵は、に目を向けた。

「…どういう事?」

眉を潜めて美神が聞く。

「だって…。」

美智恵が、美神の耳元で囁いた。


「え?」


美神は、その言葉に驚愕した。
そして…

「やはり、今のちに滅ぼすべきね。」

目が、何処かを向いて睨む。

「でも、令子…。」

美智恵は、戸惑っていた。

「…これも定めなんじゃない。」

そう言って悲しげに美神は微笑んだ。

「……そう、分かったわ。」

美智恵も真剣な顔で頷いた。

「やっぱり、戦うしかないんだよね。」

その令子の顔は、泣いているようにも見えた顔だった。

「……令子。」

不意に美智恵が令子の名前を呼ぶ。

「何?ママ。」

少し目に涙が溜まっている顔で令子が振り向く。

「他の皆には、連絡した?」

美智恵の問いに令子は首を振る。

「なら、私達だけで横島クンをまず……倒しましょう。」

美智恵が何を言っているのか
最初聞いた時は分からなかった令子だが
少し間があいてから令子は力強く頷いた。


「横島クン。」


本人がいるわけでもないこの空間で
美神は、何故だか横島を呼びたくなった。

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