ザ・グレート・展開予測ショー

横島物語。【4】


投稿者名:香夜月 蕗
投稿日時:(03/11/ 7)

第四章 昔の話。





時は昔。
広大な野原にある大きな榎の木の下で
二人の女性が仲良く語らってる。

一人は、横島家の当主の妻。
もう一人は、美神家の当主の妻。

二人はとても仲が良かった。
いつもこうして、二人で日々の話を語らっている。

今日もそう。
日頃の日常であった話をお互いで話していた。

そして、これが…
最後の二人の語らいでもあった。

外は、雲が怪しくなり
嵐でも来る気配だった。
そして、二人は別れた。



――横島家では。


大きくて広いともいえないが、決して小さくも狭くもない家に
横島家の当主の妻は住んでいた。
周りには小さな幼子が一人と自分の夫でもあるこの家の当主。
この家に住んでいるのはその3人。

しかし、横島は身体が弱かった。
病気がちな身体である。
その妻の友達があの美神家の当主の妻。
彼女もまた、あまり身体の強い方ではなかった。
本当は、外にも出してはいけないほどに
横島は身体が弱かった。
だがそれも、友達である美神に会う為に…

それが仇とでもなって返ってきたのか…

床に伏せるように倒れた横島。
妻が倒れた時、夫は即座に駆け寄ったが身体は熱い。
熱く、汗をかいている妻の姿を

幼子は、ただ呆然と見ている。
泣きもせずに呆然と。
夫も焦ってはいる。

が、どうにもならない。

近くには医者はいない。
此処は、都会から離れている。

その理由は、妻の療養を兼ねた気分転換とでもいおうか。
今から急いででも連れて行きたい。
しかし、手段がなかった。

外は嵐。

何も使えない。
下手に外に出したら
病気は悪化するのみ。

「…っ!!」

夫は、目から涙を零していた。
妻を抱きしめながら。
もう、助からないと悟った。
諦めたわけではなかった。
諦めずに近くの人々にも嵐の中助けを求めた。

しかし、どうにもならない。

妻の顔は青ざめていた。
血の気が引いた色。
息ももう虫の息。

最後に妻は一言、最後の力を振り絞って言った。


「……誰か…を恨むの…も妬む…のも全て…止めて下さいね。
 …あと、美神さんに…すみ…ませんでしたと…謝ってくださると嬉し…いです。」


妻の顔は笑っていた。
そしてその顔は、泣いているようにも見えた。

「―――あぁ。」

夫のその顔はもう…
泣いてはいなかった。
もう全てから解放された顔。

もしかしたら
妻が死んで重荷が無くなったと思っているのかもしれない。


「だがな…私は美神家を恨むよ。」


天井を見上げ、夫は呟いた。
妻の願いは、絶たれた。
最後の願いも、絶たれてしまった。
苦い思いで天へと昇っていったかもしれない。

それは、妻だけが知っている末路。



―――美神家では。


「…横島さんが、亡くなった!?」

家の者から伝言を耳にする美神家の当主の妻。
横島さん―――美神は横島家の当主の妻を呼んでいた。
そして、美神は目を丸くした。
以前から病気が悪化してきたのは本人から聞いてはいた。
自分も身体が弱いから、ここらにいる誰よりも自分が一番
横島の身体の状態については分かっている気だった。

しかし、それは大きな勘違いだった。

横島の状態は見る限り元気だったあの姿とは裏腹に深刻な状態だったのだ。
だが、それを知らずに美神家の当主の妻はいつも別れ際こう言っていた。

『また、明日。』

何も知らずにいつも言っていた言葉。
横島は、これを守っていたのだ。
いつまでも、病気が悪化しても…。

「ごめんなさい…もう貴女に謝ることはできないけれど、謝らせて…
 ごめんなさい……貴女を殺したのは私も同然です…。」

本人がいない部屋で
美神はいつまでも謝った。
丁寧に激しく、そして強く―――謝った。謝り続けた。

「謝るから…謝るから…私は償いとして死にます。
 きっと、貴女は納得いかない事でしょう。
 しかし、私はそれしか出来ません。
 いえ、それしかしたくはありません。
 我侭です。我侭ですけれど、そうさせてください…。」

夫がいない間に
美神は、近くに流れる川へと向かった。
そして…身投げした。

横島が悲しむことを知っていて。
夫が悲しむことを知っていて。
納得いかないことを知っていて。
それで償っていいものでもないことを知っていて。

川から見つかった美神。
そして、美神は引き上げられた。

美神の夫は泣き崩れていた。
妻の顔は、笑顔そのもの。
夫はそのまま重い身体を抱いていた。

「妻が死んだのは…全て…横島家せいだ…。」

夫は、涙を拭いながら呟いた。
手に荒くつく涙は
濁った白く…赤色をしていた。


全ては…
あの家のせいだ…


両家の当主は
妻の身体を抱きながら
そう心に決めていた。


妻達の想いを無にして。




―――幾年後。

何も知らずに戦いは繰り広げられつつある。

真実はまだ、隠されたまま。

誰も言わず。

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