ザ・グレート・展開予測ショー

#挿絵企画SS『追跡』


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(04/ 2/19)

「で、ここに悪霊が逃げ込んだ学校なので御座るな?西条殿」
「うむ、そうなのだよ。シロ君」
春の足音がだんだんと大きくなるこの時期、春休みである。
市立中学校なので、やや大人の建物に比べればすべからく小型である感が否めないのはしょうがなかろうか。
「ICPOでも追っている奴だ。折角追い詰めたはいいが、姿をくらましてね」
どうも鬼見君の能力も場所柄あまり性能を発揮しない。
元来、
学校には良くも悪くも魑魅魍魎の類が少なくない。
子供が多いところに集まるのは洋の東西問わずなのだ。
「とはいえ、で御座るな、悪霊の匂いを知らぬと拙者もわからぬので御座るのだが」
それなのだがと西条、恥ずかしげにカバンから取り出すものがある。
「・・・・ブルマー。で御座るかぁ?」
脱力するシロである。
「しょうがないじゃないか!相手はこれを被っていたのだからぁ!」
「変態仮面で御座るな」
何故そんな昔の漫画を知っているかは別として一応は仕事である。
くんと匂いをかぐ。幸いあまり臭くないが、匂いは残る。
「こっちで御座る」
手を引っ張るようにして、匂いを辿る。
「判るのだがよつんばいにはならないで欲しいよなぁ」
匂いも強いところなら立ち姿でも問題ないのだが、狭い場所やら給食室の近くになると、
「地面から直接匂いを嗅がないと駄目で御座るゆえ・・って変な目で見るなで御座る!」
「まぁ、おとこは狼なのよと、歌にあるじゃないか・・」
言分けにもならぬ西条の言葉であるし、
「拙者は狼で御座る失礼なっ!」
と、立ち上がった瞬間、
「いたっ!見つけたで御座るっ!」
と、そこは狼、俊足を得意とするので、すぐさま追いかける。
「待ちたまえ、シロ君!」
と後をおう西条も年以上の走力を発揮するも引き離されるのがオチだ。
「この先は・・プールになってるのか」
この学校、一度も外に出ないでプールの更衣室に入れる創りになっている。
「シロ君はどっちに入ったんだ?」
おそらくは外に向かったであろう悪鬼である。
「なら関係有るまい」
と、男子更衣室に向かう西条であった。
これが、例の奴なら間違いなく逆方面にむかったであろう。
たとえここが中学校だとしても。
西条がプールに出た光景は・・
「ど、どうしたのかね?シロ君」
ずぶぬれ状態のシロがいるではないか。
「ぬ、ぬかったで御座るぞ。アイツを追い詰めたかと思ったら・・」
敵も然る者とやらで、一度手を掴んだはいいが、うまく体重を移動させてシロを水の中にやったというのだ。
比較的跳ね上がる感のある髪質もべっとりと、頭皮にまとわり付いていたが、
「あー。もう!」
と、体を振るわせると、大量の水しぶきが撥ね飛び少しはマシになったようだが。
「ふ、とはいえ、あやつは、かごの中の小鳥、あそこにいるで御座るよ!」
と、指差す先は女子更衣室。
「西条殿!先回りして向こうの出口の結界をするで御座るぞ!」
と、指示して、西条は真っ先にわかったと来た道を戻る。
さて、拙者の番だと足を運ぼうとするが、
「お、重い!」
そう。シロは普段からジーンズを好んで愛用する。このジーンズが結構曲者で、
給水率がかなりいいのだ。
「こんな物では追えん、どうしたら・・!」
と、プールサイドに落ちている物に目が入る。
「これで御座る!」
一度、影に入り、
「春の事ゆえ、よかろう」
と、重いズボンと一緒に下着を隠して、
「これはよい、温かいで御座るな、それに動きやすい!」
序にトレーナーの下にあるTシャツは幸い水気が少ない。
「いざ、参るぞっ!」
と、女子更衣室へと入る。
最前に行った西条の結界が物を言って悪鬼はこちら側に来ない。
「・・・・冷静な判断ではなかったな。ここで一発打てばおしまいだったのに」
と、後悔もある西条である。
しばらくして、
「えっ?」
あの、シロがブルマーにTシャツで現れたから驚きである。
「おいおい・・」
動揺をひとまず隠そうとする西条、タバコに火を付けた。
あきれた、とでも言おうか。
それもそう、例の姿でプロレスまがいの退治をしているのだ。
「そりゃ、霊的にや問題ないけどね。一体何処で着替えたのやら」
とはいえ、格闘のプロ顔負けのシロと悪霊で勝負の行方は知れた物。
「ま、彼女の忘れ物でも捜すかな?」
と、このときジーンズとトレーナーを拾っておこうと探しに向かう西条、
外からの物陰に捨ててある洋服がそれだと、すぐ判る。
「全く、女の子だというのに・・」
と、二つを手に取ろうとしたとき、
「ん?」
なにやらもう一つ。
「・・・・今の子は知らんのか?」
ブルマーの下にはちゃんと下着は履く物なのだが、である。
最も水にぬれたジーンズの下では予想以上に濡れたせいやもしらぬ。
「・・天然の狩人には負けるよ、全く」
誰かに伝えてやろうかとちらっとよぎる西条だが、黙ってやろうと思い、下着共々、
回収した、ということだ。
因みに。
最後蹴りで悪鬼を倒したシロなのだが、
「あっ、ちょっとブルマーずれたっ!」
あわてて直したシロであるが、誰も見てない。
誰も見てない。

FIN

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