ザ・グレート・展開予測ショー

白い混濁と淡い気持ち2


投稿者名:ヒロ
投稿日時:(03/10/29)

 横島がリヴィングへ足を運ばせると、三人分の影があった。
 大きな室内でソファーやテレビがその存在を頑なに主張しているにもかかわらず、それでいてまだまだ余裕のある室内。三人の影はその部屋の中央で先程まで何事かを話し合っていたようだ。
 というか何をやっていたか、すぐに分ることであった。
 
「こら、シロもタマモもまた喧嘩をしてただろ!ちったぁ、仲良くとは言わないけどまともに接することができないのか?」
 目つきのとがった2人を見つめて横島はそういうが、焼け石に水、無駄無駄無駄ぁ!!ッて奴である。
むしろ燃え盛る火炎にお徳用の油を入れてしまったようなもの。
「先生!先生はあの野良犬に騙されているのでござる!!このままあの犬をのさばらせておけばきっと後悔するでござる!!」
「ちょっとまて、別に散歩にいけないからってそこまで言うことはないんじゃぁないか?」
「散歩は関係ないでござろう」
 と、横島とシロが壮絶な舌戦を繰り返している中、タマモは横島のすぐ脇へと移動していき、クンクンと鼻を鳴らし始めた。
「どあ!!ってなにをやってる!」
 慌てた横島を彼女は無視し、半眼になって彼を見つめる。
「横島・・・犬臭い」
「いぬくさい?」
 おキヌとシロは目を合わせてからオウムのように返す。
「どんな臭いだよ、それ」
 ちなみに犬臭いとは、室内犬と二日三日ほど一緒にいると染み付いてしまう臭いで、もっさりした臭い(?)とでも言おうか・・・獣臭いとはほんのちょっと違う・・・
 この臭いをすぐに判別できたのはさすがに冷静なタマモといおうか・・・

 というわけでもなく・・・

「横島さん、懐が動いてますよ」
 と、さらに脇からおキヌの声が聞こえてきた。
「おキヌ殿、いくらなんでもそれは―――わああっ!!ッて動いているでござる!!」
 というように本当に横島の懐は動いていた。もそもそといったように・・・
「こ、これは横島先生に化けた物の怪の類でござるな!!」(だから散歩に・・・ぶつぶつ)
「横島さんを、『私の』横島さんを弄んで!!」(私の横島さんを・・・ぶつぶつ)
「まて!!これには深いわけがあって、シロ、その手のひらからでてるライトブレードの縮小版みたいなのをしまえ!!ああ、おキヌちゃん!笛を取り出さないで!!」
「問答無用!!!」
「話を聞けえぇぇぇ」




 ここはちょっと話の都合上少年たちには見せられない内容ですので、割愛させていただきます。皆様には申しわけございませんが、きれいな花などを見て気をまぎらわせてくださいませ・・・




 とまぁ、意味のまったく汲み取れないやり取りを尻目に、タマモはぼそり呟く。
「ッていうか、横島が例の犬を連れてきただけじゃないの?」

「「あ・・・」」

 シロとおキヌが顔を見合わせた。
「ッていうか気づけよ!!おキヌちゃんまでらしくないぞ」
 横島は怒鳴って2人を見て、もぞもぞと動く懐へと手を突っ込む。
 次に彼の手が現れたときには、その手には小さな子犬が握られており愛くるしいその表情を振りまいていた。
「つ、連れてきたんでござるかー!!」
「だって俺の部屋アパートだろ?飼えないんだよ。だから美神さんのとこで引取ってもらえないかなぁ・・・と」
 横島はすっごくまともな顔でそういうと、その小さな子犬をテーブルの上へと置いた。
 それを見ていたおキヌは安堵したような顔で手をぽんっと打つと、笑みを見せた。
「なんだぁ、よかった。横島さんの様子が変だってシロちゃんが言うから、私心配で・・・」
「え?・・・」
 横島は意味が分らないように聞き返し、不自然な雰囲気を出しているおキヌを見つめる。
「・・・おキヌちゃん・・・ひょっとして・・・」
「横島さん・・・」
 おキヌの顔がかぁっと熱くなる。

「熱でもあるの?」
「違うでしょう!!」
 横島の台詞を激しくおキヌはつっこんだ。

「・・・で、これ(子犬)、どうする気なの?横島は」
 タマモは話を促すように横島のほうへと視線をめぐらす。
「だからさっきも言ったとおり、この事務所で預かってもらえないかなと・・・」
 横島は何をいまさらとでも言ったような顔でタマモを見つめた。
「違うでしょ。私が言いたいのは横島自身、この子犬をどうしたいかよ」
 横島の視線から、やや顔を赤らめてふいっと視線をそらしたタマモは、ややぞんざいながら続ける。
「そ・・・そ〜うだなぁ・・・考えていないなぁ。別にこの子犬がかわいそうとかそれだけで連れてきただけだったしなぁ・・・」
 横島は困ったように後頭部をかくと、苦笑いのようなものを浮かべる。それを聞いたタマモはやや皮肉げに横島を笑った。
「だから言ったでしょ?人間は自分の都合のいいときにしか善人面しないって(コミックスの36巻参照)。この犬がいい例でしょ?人間の都合で安易にどこかのペットショップで買われて、人間の都合で捨てられて、でまた人間の安易な善意で拾われて・・・」
 普段は冷静を装っているが、結構タマモは激情な女性だ。しかも今は人間社会で生き残ることを名目に、この事務所にお世話になってはいるが、安直な人間の善意や自分勝手な立ち振る舞いを嫌っている。
 この犬を見て自分の境遇を思い出したのであろう、彼女はやや目つきが鋭くなっていた。
「そ、それはそうだけど・・・だからといってこのまま見捨てるのもいけないだろ?捨てるのが人間なら、やっぱり助けてやんなくっちゃだろ?そういう意味のわからないものが人間なんだよ。とりあえずわかっとけ」
「それじゃぁ何もわからないんじゃぁ・・・」
 おキヌが端でつっこむが、まぁいいだろう。
 そんなこんなしている中、ガチャッという音がして部屋へと一人の人物が侵入してきた。




「おはよー、どうしたのみんなして・・・」
 リヴィングから正面のドアから、ややだれたような美神がのたらのたらと出てきた。彼女は寝起きが弱いため、いまいちいつもの迫力に欠ける。が、これはこれである種の魅力かもしれない。
 ちなみに起こされたときの彼女は非常に不機嫌なため、なるベル皆が近づかないようにしていた。
「お早うございます、美神さん」
「おはようございます」
 それぞれが美神の登場を認知し、挨拶を返す。
 美神は部屋の中を・・・というか集まっている面子をことさら意識して見つめ、何かを感じ取ったような顔をする。
「どうしましたか・・・?」
 横島が声を上げた。
「横島君、あんた・・・なんか連れてきた?」
「ス、鋭い!!」
 というか何かをことさら意味もなく連れてくるのはシロと横島くらいしかいないのだが・・・
「じ、実は子犬を拾ってきちゃいまして・・・」
 横島がおずおずとそう言うと・・・
「だめに決まってるでしょ」
 表情を一変させた美神はそういうのであった。
「ま、まだ何も肝心なとこは言ってないでしょうが」
 横島はムキになったように声を張り上げて叫ぶが、当然美神にそんなものが通じるわけもなく、というかそんなもので動じるようならば彼は過去に苦労するわけもなし。
「言わなくったってわかるに決まってるでしょ?どーせ『美神さ〜ん。この子犬カワイソ〜だからうちにおいてやってもいいですか〜』て言うつもりだったんでしょーが」
「ぐはぁ」
 図星である。核心を突かれて血を吐くようにしてうめく横島。
 が、今回の彼はこんなのとでは引かない。挫けない、めげないがコンセプトである。
「で、でも子犬を外で放っとくってのは人道的な立場からしていけないことだと思いますよ」
「何小難しい理屈を並べ立ててんのよ。そんなこと関係ないに決まってるでしょ」
 横島の決死の理論を美神は一周する。
「犬ってのはね、室内犬にすると部屋が汚れるのよ!!」

 そうだ、そういえばこういう女だった。横島はうなだれるようにして美神を見つめるのであった。

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