ザ・グレート・展開予測ショー

白い混濁と淡い気持ち8


投稿者名:ヒロ
投稿日時:(03/11/ 6)

 これは今からたった2分ほど前のことであった・・・・・・


「みえたでござる!!」
 シロが思いっきり叫んだ。
 彼女は屋根の上へと登っていて、ずっと先を見つめていた。人間では確認できないほどのずぅっと遠くに・・・彼女はそれを確認することができた。
「シロ!!本当にこの方角でいいのね!!」
 シロの目線の下、道端で美神は叫んだ。シロに見下ろされていることにやや憮然としているようだが、どうやら自体はそれどころではないのだろう。シロの言う話を総合するに、なかなか事態は緊迫しているようだ。というのも、シロは先ほどから何度か叫び、何かと交信を交わしているからであった。
「拙者を信じるでござる!!けっして、外しはしない!!」
 美神はシロの言葉を聞いて・・・シロの表情を見てニッと笑顔を作る。
 そして美神は・・・右腕を伸ばし、左腕をたわめ、瞳を目指すべき高みへと向けて・・・弓を射るようなポーズを作った。その口の中ではぶつぶつと何事かの呪印が吐き出されてゆく。
 次第にたわめた腕から切っ先のごとくでている右手へと向かって光が伸びてゆく。その右指の先には先ほど彼女が握っていた札の存在があった。
「美神さん!!いつでも打てます!!」
 美神の後方にいるおキヌが叫んだ。彼女はその細い腕の先から霊波を放出し、美神へと送っていた。 
 シロは目標へ向けて狙いを定める美神に大量の霊波を送りながら、にっと笑った。
「お前のこと、悪く言って悪かったでござる・・・」
 倒れそうになるほどの脱力感・・・しかし、それでも意地と根性で歯を食いしばって堪えた。

「今度あうときは・・・・・・」
 シロの目が光を宿す・・・

「変な能力抜きにして先生をかけて勝負をするでござるよ!!」
 それが彼女の根っからの本心であったのかもしれない・・・

 とにもかくにも・・・
「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」
 美神の叫びとともに、光があたりを照らした。

 光り輝く矢となった一枚の札は、瞬間的に短距離とはいえ数百メートルを飛んでいき・・・





「遅い・・・けど、確かに受け取ったわよ・・・」
 タマモはにっと笑ってその札を手の中へと納めた。





 雨はすでに上がり、薄いながらも晴間がさしてきた。

 公園のベンチは相変わらずぬれており、そこに座っている青年、横島は悲惨なほどぬれまくっていた。とはいっても彼の意識はないらしく、こうなったら濡れていようがいまいがすでにどうでもいい。
「あんたが何でそんなことしようとしているのかは知らないけど、あたしはまだあんたには死んで欲しくはない」
 いつになく感情的にそうタマモは続けた。いや、そういいながら彼女自身が一番驚いているのであろう。
 いくらこの子犬と自分とを重ね合わせているからといって、ここまで感情的になれたのは・・・

 ・・・ひとえに美神の《悪》影響であろう・・・

 彼女の手の中には一枚の札が見える。美神が先ほどまで手にしていた札である。
 シロの霊力、おキヌのサポート、そして美神の術法によって急速に飛行したその札は、今はタマモの手の中に納められていた。ちなみに今彼女たちは霊力の消費が激しいらしく、どこかで休んでるらしい・・・
 ふいに横島の目が見開かれた。子犬が横島に何かを代弁させるつもりなのであろう。

「頼む、タマモ。もうこの子を楽にさせてやってくれ」
 横島はどこか疲れたような響きを持って、タマモを迎える。
「できないに決まってるでしょ?少なくともあたしは・・・あんたはそんなことを望んでいない・・・」
 タマモは瞳に強い輝きを宿して、一歩、また一歩と歩みを進めてゆく。

「もうこのこはこの力がいやになったんだよ・・・わかるかい?異端という事を自覚してしまったものの辛さが・・・みんながみんな自分の思うように動くけど・・・それに比例してみんながみんな辛くなっていく・・・」

「だから!それを救ってやるんでしょ!!『私たち』が!!」
 タマモは珍しく声を張って横島のほうへと足を運んでいく。だが、その足取りは気持ちとは裏腹に、ゆっくりと進めていくことしかできない。子犬を刺激してしまえば、いつ自爆されるかわからないから。

「もう・・・だめなんだよ・・・これ以上生きていても、きっと同じ様なことがおきる・・・」
 横島は文殊を握る腕に力を込めて、それを思いっきり子犬へと叩きつけようとし・・・
「あんたはそれでいいの!?横島!!!」
 タマモの言葉は横島の耳朶を思いっきり叩いた。




 ―――それを横島は逆らっていた・・・小さな違和感・混同される記憶・そして・・・
 
 彼の脳裏には白い子犬が移っていた。白い・・・だが所々に茶色いまだらが存在し、まさに混濁とも言える。
 彼女・・・そう彼女だ・・・彼女の瞳はどこか虚ろで、淋しそうで、そして弱弱しかった。
 常に孤独としていることが当然であるような・・・そんな瞳をしていた。

 なぜだ?彼は自らに課したのではないのか?そうさせないようにすると・・・仮にそれがまがいの物であろうとも、己にそうさせないようにと課したのではないのか?

 だから・・・彼は逆らっていた・・・




「させないっていってるでしょ!!」

 タマモは手に握る札をかざしながら、横島へと突っ込んでいった。
 だが、このままでは当然間に合わない。明らかに横島の腕の方が子犬に近い。

 だが・・・
「俺は!!もうさせないって誓ったんだよ!!!」
 不意に横島の目が大きく開かれ、先ほどの彼とは違った雰囲気を放つ。
 いや、あるいは彼は子犬の術中に完璧にはまっていたのかもしれない・・・だからより一層、子犬を守ろうと動こうとしたのかもしれない。
 横島は振り下ろそうとする腕を、無理やり押さえ込もうとし・・・

「いまだ!!タマモ!!!」

 彼はタマモへ向かって叫んだ。タマモはその隙を逃しはしない。すぐさま札を子犬へ向けて突撃を再開するのであった。
 横島の腕が振り下ろされたのもまた同時・・・

 凄まじい光が炸裂し、世界はいっぺんに色を変える。閃光が、衝撃がありとあらゆるものを包み込む。
 
 横島とタマモとの間に凄まじいエネルギーの奔流が巻き起こり・・・・・・

 タマモは気を失った。

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