ザ・グレート・展開予測ショー

彼氏が彼女になったとき!?〜後編第一幕〜


投稿者名:ヨコシマン
投稿日時:(03/10/23)

―厄珍堂―
日本でも有数の霊的アイテム・呪術アイテム取扱店。一流、超一流のGSが、その品質と品揃えに多大な信頼を置いている。ここで手に入らないのなら、どこにいっても手に入らない、と言われるほど、この店の業界の人間に対する影響力は強い。
店主の名は厄珍。多少人格に問題はあるものの、その見識の広さは世界中のGSから一目置かれている。
そんな厄珍堂の店主、厄珍は今―――――――――


「イ、 イタタタタタ!く、苦しい、は、放すアルヨ!」
この業界でまったくのペーペーGS見習、横島忠夫(女)に胸倉を掴まれていた!

「コラ、ヒゲメガネ。テメエ、なんか俺に隠してることあるよな?」
「(ヒ、ヒゲメガネ?!)な、なんのことアルカ?さっぱり判らないアルヨ?」

ぴゅ〜♪、と口笛を吹いて目をそらす。なんとも古典的なとぼけ方だ。

「とぼけんじゃネェーー!お前、俺が店に入ってきたとき『おおおっ!大成功アル!!』とか言ってたじゃねえか!」
「そうだったアルか?」

ほ〜う、そう来るか、あくまでとぼけるつもりの厄珍を見て、横島は左手で厄珍を掴んだまま右手を厄珍の顔に近づけた。

「も、文殊なんか、ど、どうするアル?」

厄珍に突きつけられた物―――そう、文殊だ。横島はその文殊を指でつまむと、女性特有の凄みのある顔をしてみせた。文殊の中にゆっくりと浮かび上がる文字は、

「爆」

「ま、まさか?それをどうする気アルか?!!」
「クックック。こいつをテメエの口の中に入れたら、この店中に、さぞかし綺麗な赤い華が咲くだろうなぁ〜?まぁ、もっともテメエはそれを見る事は出来ねえだろうがなぁ!!ケッケッケ。」

『相手を脅迫するときは、殺すつもりでやる。』よく言われる言葉だ。
だが、横島が美神事務所で学んだこと、それは『相手を脅迫するときは、本気で殺す!』だ。横島の体にはこの美神イズムが徹底して叩き込まれていた。

「(コ、コイツ本気アル!)わ、ワカッタアル!話すからそれはやめるアルよ!」
「よ〜し」

死の一歩手前から何とか生還した厄珍は、安堵のため息をついた。と、同時に体の奥から湧き上がってくる一つの感情、それは・・・

「あああっ!女の子にこんなえげつない事言われて、何故かワタシコーフンしてきたアル!禁断の快感アルか!?ボウズ!ちょっともう一度言ってみるアルよ!!」
(難儀なオッサンやなー・・・)

もはや怒る気も失せていた。



横島の脅しに負けた厄珍が白状したことは以下の通りである。

1、 横島が飲んだ薬は体質改善薬ではなく、霊波変換式性別転換薬であること。つまり、霊能者の人より強い霊力を利用して、強引に性別を変える薬だ。
2、 動物実験はやったが臨床試験はまだであり、横島がその第1号であること。これはたった一晩で無理やり性転換することで生じる肉体的ダメージを測定するため、横島以外には頼めなかった。ただし、横島からの報告で、変身時の体にかかる負担は大した事が無いことが判明している。
3、 大手製薬会社というのは嘘ではないが、その会社の陰のオーナーは、世界に数あるオカルト犯罪組織のうちの一つであること。
4、 何故そんな薬を作ったのか?それは密入出国、検問の通過など、すでに当局にマークされている人物を安全に逃がす為。性別が違えばまず怪しまれる事は無い。
5、 薬の効力は24時間。これは変わらない。横島の変身が解けるのは本日PM6:35。


「・・・お前は人に犯罪の片棒を担がせたんかい!!!!!アホかぁ!西条に知れたら間違いなく俺を殺しに来るぞ!!」

すでに半狂乱になっている横島をなだめるように厄珍は肩をたたく。

「ボウズが言わなきゃ何の問題も無いアルよ。喋ってしまった以上、バイト料も50万にするアルから、割のいいバイトだと思って諦めるネ。」
「やだなー、僕はただまっとうな臨床試験のお手伝いをしてるだけっすよ!わははははは!」
「じゃあ、変身が解けて夜7時になったら、もう一度ここへ来るよろし。そのとき軽いアンケートをとって、終わったらバイト料を渡すアル。」
「オーケーオーケー!任せとけ!」

うひゃひゃひゃひゃ、わはははははは、厄珍堂に二人の笑い声が響き渡る。どこか乾いた虚ろな笑いが。



「おおおおおおっ!!キタキタァ!!これはかなりイケてるアルぞぉ!!」

厄珍は自分の店先で大声を上げていた。その訳は、厄珍の目の前に、たった今店内から出てきた可憐な女性がいたからだ。
ショートヘアを綺麗にセットし、襟が大きめの白いノースリーブのブラウス、膝下までのデニムパンツ、左腕にはシルバーのブレス。
足元はミュールではなく、動きやすいスニーカー。美神やおキヌとはまた違ったタイプの美人だ。
厄珍プロデュース、横島忠夫改造計画ここに完了。

「こ、これが俺か?」

横島は鏡を見ながら呟く。そういえば朝から鏡見てて思ってたけど・・・誰かに似てるんだよな〜。確かに会った事が・・・あるような・・・。

「はぁ〜。もしやとは思っていたアルが、ここまで化けるとはおもわなかったアルな〜。」

厄珍は非常にご満悦のようだ。
何故こんな事になったかと言えば、割り切ってアルバイトをする気になった横島に『それならちゃんと女の子の格好をしてみたらどうアル?』と厄珍が勧めたからだ。何故女物の服を厄珍が持っていたのかは誰にも解らないが。

「なんか悪いな〜。バイト代弾んでもらった上に服まで貸してもらって。」

横島が珍しく殊勝な事を言う。50万円の力は人間を変える。

「なーに、気にすること無いアル!ただちょっと、このカメラの前で服を脱いでくれればオールOKアルヨ!!!!」

馬のように鼻息を荒くして、ググッと横島に向かってカメラを突き出す。
しょーがねーオッサンだな・・・横島は呆れ顔で厄珍を見る、そしてゆっくりとブラウスの釦に手を掛けた。
一つ、二つ、三つ、釦が外されるたびに胸元が露になっていく。

「マ、マジアルかあぁ!?言ってみるもんアルな―――――!!!」

厄珍はサングラスの渕から涙を噴き出させながらシャッターチャンスに備えてカメラを構える。
四つ目の釦に手を掛けたところで、横島の動きは止まった。
どしたアル?!今更やめたなんていうんじゃないアルよ!と動揺する厄珍を横島はゆっくりと見つめ、近づいて厄珍の首に腕を回す。横島の顔にはゾクっとするほど妖艶な笑みが浮かんでいた。
(こ、これはもしかして?!少年誌の枠をはみ出るような事になってしまうアルかぁぁぁぁ!?)
横島は厄珍の耳元に顔を近づけ、艶かしく唇を動かした。



「いくら出す?ブラウスまでなら一枚3千円、ブラジャー取ったら5千円、ズボン脱いだら1万円、オールヌードは特別価格5万円だぜ。」

「あああああああっ!!!純真な乙女が穢れていく瞬間を垣間見てしまったアルぅぅぅぅ!!!!」

厄珍の精神構造がどのようになっているかは解らないが、精神的に大ダメージを受けてしまったのだろう。
サングラスの渕を涙で濡らし、厄珍は意味不明の言葉を叫びながら走り去った。

「ああっ!!待たんかい、コラァ!!金置いてかんかい、ボケェーーー!!」

可愛らしい容姿でとんでもない言葉を、横島は走り去る厄珍に向かって浴びせ続けた。

<第二幕へ>

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