ザ・グレート・展開予測ショー

知ってるようで知らない世界―4―


投稿者名:誠
投稿日時:(03/11/ 5)



退院までの二週間。その間に記憶がないことに慣れたのか横島は我々から見た横島らしい行動をやっと見せ始めた。



「看護婦さん、あなたがそばにいないと胸が痛いんです。胸の傷ではなく胸の奥が・・・。」

看護婦の手を握りながら真顔で言った。

「よ、横島さん・・・。」

次の瞬間横島は真顔を崩すと、

「あなたの愛で、愛の治療でこの心の傷を癒してください〜〜〜!」

と叫びながら看護婦さんに飛び掛った。

「キャーーーーー!!!」

叫び声を上げる看護婦さん。

「何しとるかあんたは〜〜〜!」

横島の看護婦さんへのダイブを阻止したのは美神令子だった。

神通棍で迎撃すると続けてしばき始める。

最近すっかりおなじみになってきた光景をおキヌはため息をつきながら見ていた。

しかし令子もおキヌも横島が自分を止めてくれる人がいないときはそんなことをしないことは知っていた。

多少は素なのだろうがその行動は人と必要以上に親しくならないようにしているようにも見えた。

なぜかはわからないのだが彼の過去になにか関係があるのだろうか?




退院のときは院長に、もうくるなといわれ看護婦さんたちは横島の退院の喜びのあまり涙まで流した。

「ようやく普通の生活が戻ってくるのね・・・。」

「一時期はこの病院辞めようかと・・・。」

「いやだな〜、ボクは愛情表現をしただけなのに・・・。」

―――バキッ―――

横島はなにやら理不尽なことをつぶやくが美神により沈黙させられる。

そして沈黙した横島は美神とおキヌによって妙神山へと連行されていった。







鬼の顔のついた馬鹿でかい門が目の前にある。その鬼たちと親しそうに語り合う令子とおキヌ。
横島はというと山道で転んださいにわざとか偶然かはわからないが令子に抱きついてぼろぼろにされて転がっている。

―ギーーーーー ―

重い音とともに門が開き竜神、小竜姫が現れた。

「あら美神さんいらっしゃい。」

「ずっと前から愛してましたーーー。」

令子が返事をする前にいつのまにか復活した横島が小竜姫の手を握って叫んだ。

「あ、あの美神さんこの方は?」

冷や汗を流しながらたずねる小竜姫。

「今日はこいつのことで来たんですよ。」

横島をしばきながら答える美神。
おろおろしているおキヌ。

「とりあえず中で話しを聞かせてください。」

とりあえず横島をひきずって中に入っていった。

後には結局セリフのなかった鬼門が互いに慰めあっていた。





「ということなのよ。」

美神の話しを聞いて小竜姫は横島がだした碧色の玉をながめた。

「私にはわかりません・・・。老師は知ってらっしゃいますか?」

一緒に聞いていた斉天大聖が答える。

「これは文珠じゃな。おぬしも聞いたことがあるじゃろう?もっとも人間で使えるやつなど聞いたこともない。神、魔族ともに使えるやつなどまれじゃろう。」

「文珠!美神さんこれはすごいことですよ。文珠というのは霊力を凝縮してすごい威力を発揮するものです。しかし本当にすごいのは状況に応じて使い分けれるということです。話しに聞いた霊を倒したときは爆発だったようですが転移したり結界をはったりといった様々なことに使えるはずです。使いようによってはどんな敵でも倒せる武器になるし様々な攻撃から身を守ることもできる最強のアイテムですよ!」

「ちょっとまってなんか話しがすごすぎてわからなかったんだけど簡単にいうとこれからは元手0で除霊ができるっていうこと!?」

美神はかなり興奮しているようだ。

「横島さんの記憶の話しはどうなったんですか?」

おキヌがおずおずと訴える。

「あ、そうでしたね。それはヒャクメに任せましょう。ヒャクメ!どうせ覗いてるんでしょ!でてきなさい。」

「まっていましたなのね〜」

本当に覗いていたようだ。

「やあ、ぼくは横島って言います。あなたのようなすばらしい胸・・・じゃなかった女性に出会えるなんてしあわせっす!」

間延びした声で話す変なスーツを着た女性が現れた。しかし横島はまったく動じずにナンパをはじめた。

「横島さんね〜よろしくなのね〜。早速私があなたの過去を探らせてもらうのね〜。」

横島の額になにやら吸盤を取り付けるとヒャクメは機械をいじりだした。

・・・一分経過・・・二分経過・・・三分経過

「だめなのね〜強力なプロテクトがかかっていて記憶が除けないのね〜」

ヒャクメは自分の能力が完璧にブロックされたことに戸惑いを隠せない。

「役立たず。」

美神がぼそりとひどいことをつぶやく。

「ひどいのね〜。こんな強力なプロテクト破れないのね〜〜〜。」

涙を流しながらヒャクメはうったえる。

「誰が、何のために、どのような記憶にプロテクトをかけたのかが気になりますね。」

小竜姫はあごに手をやり考え込む。

「ヒャクメの霊視でも不可能となると今は他に方法はないじゃろう。これでもヒャクメは優秀な文官なのじゃからな。」

「老師、これでもは余計なのね〜〜〜。」

「でもそのヒャクメ様が見れないとなるとプロテクトをかけたのはヒャクメ様よりも高位の神族、または魔族って事ですか?」

おキヌの言葉にヒャクメは首を振る。

「自分自身が無意識にかけたものだとしてもそう簡単には破れないのね〜。むしろそっちの方が破るのは難しいのね〜。でも、強力な誰かがかけた可能性も捨てきれないのね〜。」

「なによ、結局なにもわかってないって事じゃない!」

令子がフンッと言い放つ。

「そんなこといわれても私も万能じゃないのね〜。」

落ち込むヒャクメをみて横島が手を握り微笑む。

「そんなことはないさ、君は一生懸命やってくれたよ!ということで僕のこの体でその気持ちにお返しを〜〜〜!!」

「あんたはまたそれかーーー!」

令子の厳しい突っ込みをみぞおちにうけて横島は崩れ落ちた。



結局、横島が霊力をコントロールできるようになるための自己鍛錬プログラムを小竜姫に作ってもらい三人は妙神山を後にした。








 その日横島が帰った後、事務所を美智恵が訪れた。

「そう、やっぱり文珠だったのね。文献でよんだことがあったのよ。人間が手に入れることができる最強のオカルトアイテムと書かれていたわ。あんな少年にそんなすばらしい能力があるなんて・・・。」

美智恵はさらに言った。

「令子、あんな優秀な人材を手放したらだめよ。」

「わかってるわよ。あいつ除霊に元手が要らないじゃない!ぼろもうけよ!」

目を輝かせて強調する令子の姿に美智恵は頭を抱えた。

「本当にあんたは・・・。まあいいわ。二人とも横島君はすごい能力を持っているわ。でも今まで何があったか、それから彼が何者かそれもわからないのよその辺を肝に銘じておいて頂戴。」

美智恵はそういうと事務所を後にした。

「ママも心配性ね、あんまり気にしすぎてるとしわが増えるっていうのに。」

「でも美智恵さんも私達の事を考えてくれているんですよ。」

「そりゃそうだけどね。」

令子は窓の外を見てこれからの横島の使い方について考えを巡らせはじめた。







美智恵は横島忠夫のことを考えていた。

彼が持つ人界最強の能力文珠。
すばらしい、しかし恐ろしい力だ。単純に考えると彼が『死』をイメージして念をこめた文珠を使うだけで霊的耐久力のない者は瞬時に、証拠も残らず死んでしまうだろう。

「危険ね・・・。」

美智恵はつぶやいた。

横島が危険だとは思わない。近くで見ていて彼がやさしく、そしてなかなか頼れる男だとわかった。

しかし、危険だと思うのは彼が利用されたとき、文珠の力があればそれだけで権力者にとっては使う側にとっては頼もしく、そして使われる側にとっては危険なものとなる・・・。

「考えても、仕方ないか・・・。」

美智恵は夕焼けを見上げると能力がばれた後に横島にふりかかるであろう裏からの謀略、誘いの数々を頭から振り払った。







横島忠夫は夕焼けを見上げていた。

ひどく胸の奥、体の奥底が痛む。

何を忘れているのか?

大切な記憶だったと思う・・・。

しかし思い出せない。

誰かが頭の中で叫んでいるような気がする。

(忘れないで!)

心を襲う罪悪感。自分に対する怒りが込み上げてくる。

自分がひどく薄情な人間に思えて、いつのまにか涙を流していた。

その少年の姿は儚げで、今にも消えてしまいそうで。

いつもの軽口をたたいてる彼ではなかった。

その姿は美しくさえあった・・・。




―――ザッ―――

そのとき、なにかが目の前に降り立った。

「おまえは・・・?」

横島は急いで涙をぬぐうとたずねた。

「自分を・・・知りたいか?」

黒い影は言った。

「ああ・・・。知りたい。」

横島は答える。

「おまえは・・・必然。」

「必然?なんだってんだ!」

「おまえの存在は・・・世界の必然。」

「だからなんなんだよ!」

「神であって魔でもあるものを倒せ。その時おまえはすべてを知る権利を手に入れる・・・。」

ゆっくりと影が消えていくのをみて横島は慌てて叫んだ。

「まて、おまえは・・・おまえはなんなんだ!」

「私は・・・・・・・・。」

夕焼けに溶け込むように・・・影は消えていった。

「なんなんだよ・・・。本当に・・・。」

横島は影が言った言葉を思い出しつぶやいた。

「『私は意思の使者』・・・か。」

横島はつぶやくともう一度夕焼けを見上げた。

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