TIME SLIPPING BEAUTY―7歳の少女―
投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(03/10/26)
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※原作を未読の方はご注意ください ネタバレ要素を含みます
先に原作を読まれてから こちらを読むことをオススメします
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【7月24日 11:00PM】
車のトランクの中・・・
少女はくらやみの中 口にはガムテープを貼られ 両腕を後ろで縛られた上 両足もロープで縛られている
どれだけの時間が経ったのだろう?
少女の目には 枯れるほどの涙をながした跡が残っていた―――
( おかあさん おとうさん・・・ )
【7月24日 3:10AM】
「 ばいばーい 」
友達と別れ ランドセルを背負って家へと帰る少女
その後ろから1台の車が後を追う
そして人通りが少ない 工事現場の横を通った時―――
「 おじょうちゃん 」
「 え? 」
ばっ!「 !! 」
呼び止められた少女は、いきなり口元をタオルでおさえられると
「 静かにしろ 殺すぞ 」
その男の冷たい言葉に 少女はかってない恐怖を感じた
7歳の子供の力で 大の大人にかなうはずもなく 少女は車に押し込められたのである
――――――そして8時間後――――――
【7月24日 11:05PM】
( イヤだ・・・ こんなとこいやだ・・・! )
「 ン〜〜〜 ン〜〜〜 」
少女は必死に口を動かして ガムテープをはがそうとしていた
しかしガムテープの粘着力は強く なかなかはがれない
がさっ がたっ どたがたっ!
少女は焦りだしジタバタしだすと
どがんっ!!!!!
びくっ!「 !! 」
車のトランクをたたく音に少女は凍りつく
「 ・・・うるさい 死にたいのか 」
男の冷たい言葉が 少女を更なる恐怖におとしいれる―――
少女は小刻みに震えていた
( だれか・・・ だれかたすけて・・・! )
・
・
・
!
バチバチッ!
「 ぐあっ! 」
( !? )
「 なんだてめえ!? 」
「 ハアッ! 」
バキッ!
バチバチッ ズザッ ドッ ズサッ
トランクの外から 自分を誘拐した男と 誰かが争う音が聞こえてきた―――
( だれかいる・・・? )
バチバチバチッ どさっ
「 このッ・・・・・・!! 」
( おんなの人の声・・・!? )
「 ン〜〜〜 ン〜〜〜! 」
必死にもがく少女
すると 少女の口のガムテープが少しだけはがれて―――
「 たすけ・・ たすけて・・・・! 」
再び涙をながしながら かすれた声で必死に助けを求めた すると
「 待ってて・・・・!! 今 出してあげるから―――――― 」
「 うおああああ―――ッ!! 」
自分を誘拐した男の 怒りの叫びが聞こえてくる・・・
「 やめろ―――!! 何やってんだお前・・・・・・ 」
そしてまた別の男の声が―――
( もうイヤ!
たすけて・・・ここから出して・・・
おとおさん おかあさん ・・・・・・ゼロ―――! )
・
・
・
やがて外で争う声が聞こえ 誘拐犯の叫び声も 女の人の声も 途中から聞こえた男の人の声も聞こえなくなった
そしてしばらく静寂が続いたあと パトカーや救急車の音が近づき―――
がたっ がたがた・・・ がちゃっ・・・
車のトランクが開けられて 少女に白光の強い光が差しこんだ
少女は眩しさのあまり 目を開けられないでいる
「 千鶴っ!! 」
「 お・・・おかあさん・・・ 」
次の瞬間 母親は少女を強く抱きしめた―――
【7月27日 2:30PM】
―――講談大学付属病院―――
病室にて 千鶴(ちづる)と千鶴の母親 医者と看護婦がおり
千鶴たちの前には 金髪の今風の青年がベットで寝ている
彼は口にマスクをあてたまま うっすらと目を開けていた―――
「 まだ意識が戻って間もないですので 挨拶程度でお願いします 」
「 はい 」
医師の言葉に千鶴の母がうなづく
「 千鶴 このお兄さんがあなたを助けてくれたのよ 」
「 ・・・・・・ 」
「 どうしたの千鶴? お兄さんにありがとうは? 」
千鶴はとことこと青年に近づき 寝たままの青年に近づくと
「 ―――ありがとう 」
「 ・・・ああ 」
「 はやく元気になってね おにいちゃん 」
「 ・・・ああ 」
かすれた声で返事をし 首を少し動かしてうなづく青年
「 ・・・・・・ 」
「 ・・・・・・ 」
千鶴の母は 千鶴の様子が少しおかしいことに気がついた
千鶴だけではない
青年も怪我のせいもあるのだが どこかすっきりしない表情であった
そして千鶴は―――
「 おにいちゃん 」
「 ・・・なんだ? 」
「 助けてくれたの ほんとうにおにいちゃんだけなの? 」
「 !? 」
( ・・・そうだこの子は現場にいたんだ! だったら彼女のこと――― )
「 おいっ 嬢ちゃん―・・・!! 」ズキッ!
おもわず起き上がった青年は 腹部に急激な痛みを感じた
彼は3日前のその事件で腹部を刺され 重症の身なのである―――
「 い、いかん! すぐに止血剤を! 」
「 おにいちゃん! 」
「 今日の面会はこれでー まだ彼 安静にしておかないといけませんから! 」
千鶴たちは病室の外へと出された
そして残った青年は・・・
( やっぱりマボロシなんかじゃない・・・ あの消えた女の子は 確かにあの場所にいたんだ・・・! )
青年は再び眠りについた―――
――――――それから約10年後――――――
【7月10日 7:30AM 赤城家】
高校生の千鶴と母親が 朝食をとっていた―――
「 え? お父さん帰ってこれないの? 」
「 そうなの 海外赴任かなり長引きそうになるからって 」
「 そうなんだー 」
「 それでねー お父さんとも相談したんだけど 番犬でも飼おうかって思うんだけどー 」
ぴくっ・・
千鶴の動きが一瞬止まる
「 ・・・犬を? 」
「 そう 私たちだけじゃ不用心だし いつなにがおこるかわからないじゃない・・・ 」
「 う うん 」
「 それに千鶴 犬好きでしょ? 」
「 そうだけど・・・ 」
「 今日学校の帰りにでも ペットショップで見てきたらどうかしら? 」
「 そうね・・・うん そうする! 」
母の気持ちを察し 笑顔で答える千鶴
“いつ なにが”
・・・それが10年前 幼き日のあの事件のことを指してることを 千鶴は瞬時に理解した
「 じゃ いってきまーす! 」
「 車に気をつけてねー 」
元気よく家を飛びだす千鶴 娘を見送る母
( 10年前のあの日 私はあの場所にいた・・・ 恐怖と戦い続けたあの1日―――
今でも思いだす 誘拐犯の言葉 そしてあの女の人の言葉
××××××「 待ってて・・・・!! 今 出してあげるから―――――― 」××××××
いまでも鮮明に記憶してるその人の声 ・・・あれは本当にマボロシ? 恐怖による幻聴なの?
あの暗闇の中で聞こえた声 私の命を救ってくれた人の声―――
・・・
・・・
・・・ま いっか
あんなことは2度とないだろうし 今は犬のことを考えよう
今度は失敗しないように 慎重に選ばないと! ぐーたらなバカ犬を選ばないように! )ぐっ
コブシを握る千鶴
そんな千鶴の後ろで 彼女を見送る20代後半のカップルがいた―――
「 ほら 元気にやってるじゃないあの娘 」
「 そーみてーだな トラウマ負ってる感じもないみたいだし 」
「 彼女はきっと普通の人生を歩んでくれるはずよ 」
「 ああ 」
「 じゃいきましょ悟郎 早く帰らないと おばあちゃんにまた怒られるんだから 」
「 ま、まてよコヨミ! 」
コヨミと悟郎は知らない
この日から千鶴のもとに フツーでないものが帰って来ることを―――
2つの物語は続く―――
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あとがき
最近すっかり短編の短編作家になりつつあるヴァージニアです
( 〜ぐーたらなバカ犬を選ばないように! )
ぐらいで終わっとけばいいものを コヨミと悟郎(生存)のその後を少し書いてしまいました
前編では悟郎の生死はあやふやのままでしたが まだ完全には死んでないようですし
あくまで予測ですので「違う」と思う方は反対意見をお願いします
なにはともあれ 後編次第ですね
千鶴について
トップの感想掲示板にも書きましたが 千鶴ちゃん(7)は声のみの出演で同一人物かどうかは不明です
ですが線路下の空き地のカットも全く同じものが使われてますし この繋がりアリかなあ〜と思いました
あとお気づきの人いるでしょうが 「、」と「。」は今回雑誌に合わせて使いませんでした
やっぱり雰囲気変わりますね(゚冖゚)ゞ
今までの
コメント:
- 最初のほうの【7月24日 3:10AM】はAMでなくPMです。 失礼致しました。 (ヴァージニア)
- まだどうなるか分からないアレの続きを予測されて、いち早くSSにされたヴァージニア様に脱帽です。
しかも意外なクロスオーバーで且つこの上手な展開。
良かったです〜♪ (KAZ23)
- この手のスター・スィステムなネタ、大好きです。ちょっと『スリーピング・ビューティー!!』編(題名繋がり)も入っているように見えるのも嬉しい所。次はMHKも絡めてみよう!(おい)
あとバカ犬と謂えば、狼気取りのアレにも気をつけるんだゾ、千鶴! (Iholi)
- ↑狼気取り…で、バカ犬?……あ、中島君のことか(酷)
短編に散りばめられた細かいネタまで見逃さずに受け取り、しかも展開予想する。
ヴァージニアさんは本当に椎名先生の作品を愛しているのだと感じます。
誘拐・監禁されるという体験をしながらも、フツーに元気に生きる少女。それらのいきさつは非常に淡々と平凡に描かれているけれども、だからこそそれを守ったコヨミの感慨が窺い知れるような気がします。
もしもこの後この少女に、多少フツーじゃないことが降りかかったとしても、結局は元気にたくましく乗り切って行くからオッケー……かな(汗) (斑駒)
- こういうその後もいいですね。何となく『カナタ』の天沼ゆかりのエピソードを連想しました。
千鶴の視点から見たコヨミの存在感の淡さを、句読点が無い事(現実味の欠如?)でより強く感じた所為かしら?
でも、「悟郎は幽霊のまま時輪家に居候し、おキヌの様に成仏目指してコヨミを手伝う事になる」と思うので反対(笑)。
投稿お疲れ様でした。 (dry)
- 二つの世界の繋がりが見えるって、どうしてこんなにも微笑ましい気持ちになるのでしょうか(^^)
それもこれもヴァージニアさんの上手な展開の作り方のお陰だなぁと思います。
千鶴の方のこの後起き、続いていくであろう奇妙な運命を私たちは知りうるわけで、それもまたお話の想像を広げてくれて良い物でした。
最後のコヨミと悟郎のやり取りにも少なくとも二人が不幸を感じてはいなさそうで、後編への淡い期待も高まります(^^)
ホントに素晴らしい展開予想でしたー。 (志狗)
- ああ、なんだかすごい好印象のようで嬉しく思います♪ それでは以下、コメント返しです。
◇KAZ23さんへ
脱帽!?Σ(゚ロ゚)
そんな・・・帽子を取らないでください!(オロオロ)
このクロスオーバー、快くうけとってくれたようでよかったです〜
◇Iholiさんへ
はじめまして、そしてありがとうございます。
タイトルが似ていることは私も感じましたよ♪
MHKは…絡めるのムズカシイですよ〜(汗) …ただ、狼気取りのアレのお話はひとつ
ほぼできているのがありますので、そのうち投稿させて頂きたいと思っております。 (ヴァージニア)
- ◇斑駒さんへ
もしGS美神がなかったら、C−WWWがなかったら、GTYがなかったら、
ここまで椎名先生の作品にはまることは無かったであろうと思う今日この頃です。
こんな素敵な場をサポートしていただいてる斑駒さんに、多大なる感謝を。
◇dryさんへ
句読点の有無の重要性には、今回改めて知ることができました。
私は今回お話本編には深く関わりませんでしたが、dryさんの鋭い予想には頷けることばかりでしたよ。
悟郎は幽霊のままのほうが可能性高そうだと、今更ながらに思う所ですし…(汗)
反対意見の賛成票、ありがとうございました。m(_ _)m (ヴァージニア)
- ◇志狗さんへ
私も『タイム・スリッピング・ビューティー』を読むまで、平凡な生活を送ってきたであろう(ときには悲しい事故もあった)千鶴に、まさかこんな過去があるとは知りませんでした。(笑)
彼女はこれからも元気にやっていけるものだと思います。 後編、楽しみですね! (ヴァージニア)
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