ザ・グレート・展開予測ショー

悲劇に血塗られし魔王 7-タマモ編


投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/10/25)

〈タマモ編〉

目の前に一人の男が立っている。

彼は私に向かってにこにこと笑っていた。

それを見ているといつも思うのだ。

どうしてこいつはいつも笑っているのだろうか・・・・

私が彼の持つ絶望に気づかないとでも思っているのだろうか・・・・

私はそこまで鈍くない。

なにがあったか知らないけど、でもふとしたときに見せるこいつの表情は私の心を締め付けるのだ。

絶望、後悔、悲しみ、怒り、それらがないまぜになった表情。

そんな顔を浮かばせるやつなんて、知らない。

きっと、前世の私だって知らないだろう・・・

私は彼に興味を持つまでにさして時間はかからなかった。

そして、彼を観察してもうどれだけの月日がたっただろうか。

でも、その甲斐あって分かったことがあるわ。

こいつは、想いを忘れない奴なんだって・・・・

彼は、ひとときもその絶望を忘れはしなかった。

薄れることさえなかった。

皆に気づかせまいとしている振舞っているから他の皆は気づいていないみたいだけど、私には無理だっ
た見たい。

だって私は九尾を持つ妖狐。

化かし合いは私の方が数段上よ。

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・

人は忘れることで生き続けることができる。

でも、彼にはそれができない。

忘れることができない。

それは、生き続けることを拒む行為に等しい。

彼はその事に気づいているのだろうか。

・・・・・おそらく、気づいているのだろう。

でなければ、これほどの歳月を耐え抜くことはできない。

気づいていなければ、もうとっくに・・・・・

・・・私は、思うのだ。

その想いに耐えられなくなる日はもう近いんじゃないのか。

耐えられなくなったら、こいつはどうするんだろう・・・・

突然、暗かった視界が開けた。

そこは、どこか知らないところの草原だった。

でも、目の前には彼が変わらずいる。

こいつがいれば何故か不安だった気持ちも消えていく。

安心できる。

彼も、私と同じ気持ちでいてくれているだろうか・・・・

そうだと良いな・・・・・

・・・・?

あれ。

いつのまにマントなんか着ちゃったの?

いつのまに仮面なんかつけたの?

いつのまにそんな槍を持ったの?

ねえ、なんでそんな怖い笑みを浮かべてるの?

ねえ、ねえ、ねえ。

でも、彼は答えてくれない。

代わりに私に背を向けた。

いつの間に、本当にいつの間にだろう。

彼の相対する先には、大勢の人々がたむろっていた。

いや、人だけではない。

神族も魔族もいる。

そして、皆例外なく武器を携えていた。

皆例外なく、敵意を彼に向けていた。

最前列には見慣れた顔ぶれがいるのに気づく。

美神・美智恵・おキヌ・シロ・・・・・・・・・・・

・・・・?

あと、誰だったっけ?

まあ、いいか。

それよりも・・・・・

なぜ皆、彼に向けて殺気立ってるの?

私は、ついさっき考えていたことに思い当たる。

もしかして、これは想いが弾けた結果なのだろうか?

「横島・・・・」

私の呟きが聞こえたのだろうか?

彼は神・人・魔の軍勢に向かって突き進む。

それを迎え撃つ神・人・魔の軍勢・・・・

繰り広げられる惨劇。

一人、また一人と倒れていく。

その様を傍観する私。

どうして彼がこんなに強いのかという思いよりも、それよりも思うことがあった。

ああ、あの時、彼の絶望に気づいたあの時、観察なんかするよりもその絶望をせめて軽くすべきだった!!!

こうなる前に・・・・

視界が暗くなる。

薄らいでゆく意識の中、私は呟いた。

「御免ね、横島。」




意識が覚醒する。

目を開けると、見慣れぬ天井が移った。

ふと腕を見ると点滴に用いる小さな針が刺さっていた。

「・・・・ここは、病院」

ならば、あれは夢?

・・・・そうよね、夢に決まっているわ。

なんで、横島があんな軍勢と戦わなくちゃならないのよ。

ああもう、馬鹿馬鹿しい。

馬鹿馬鹿しすぎて笑っちゃうわ・・・・

ふと、草原の中で笑う横島の顔を思い出す。

ゾゾゾッと悪寒が走る。

一体、何なの。

あれは、単なる夢よ。

なんで夢ごときに悪寒を走らせなくちゃならないのよ・・・・

・・・・全く。

「早く、横島に会いたいな」

会って、あの笑顔を見たい。

あの人を楽しくさせる笑顔が見たい。

笑わせてほしい。

呆れさせて欲しい。

「・・・・無理だって事は分かってるけどね」

タマモの頬に一筋に涙が流れた。

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