ザ・グレート・展開予測ショー

悲劇に血塗られし魔王 23


投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/11/10)




「では、ズルベニアス殿も仮面の男を探していると?」

廃ビルの地下にある朽ち果てたバー。
中は清掃など勿論されている筈もなく、埃やカビがあちこちに見受けられる。
そんな薄汚いバーの奥まったところでシロとズルベニアスはあれからずっと会話していた。

「・・・・そうだ。我輩は奴を探し出さなければならんのだ」

ズルベニアスは空になったワインを継ぎ足す。
その様は意外と様になり、中々に渋い。
シロはズルベニアスの隣に座って、そんな彼を見ていた。

「その仮面の男は何者なのでござるか?」

「・・・・謎だ」

「はっ?」

「何も解らんのだ・・・・出生も強さも、そして奴の目的もな・・・・・」

ズルベニアスはそんな重大な事をサラリと言ってのける。
シロは唯一の手掛かりが空振りして、ちょっとショックが隠せない。

(・・・あ、でも)

シロはこれでも何だかんだでGS歴が長い。
この言葉の裏の意味を吟味する位の知識はあった。
シロは魔界の情勢について考えてみた。
以下はそのシロの考察である。

魔界は実力主義であるためそれに伴い、自然に情報の流通が発展したのでござったな。
魔王の動向を含め、少しでも強さがあればすぐに全土に渡って伝わるほどに情報が飛び交っていると聞いた事があるでござる。
そんな魔界で謎とされる仮面の魔族・・・・・・
物凄く弱いのか、強いのに力を隠しているのか、どちらかでござるな。
まあ、ズルベニアス殿が追っているほどでござる。
強いんでござろうな〜

そこまで考え、そういえばまだズルベニアスに聞いていなかった事があるのに気づいた。

「そういえば、ズルベニアス殿は何で仮面の魔族を追っているのでござる?」

「・・・・ん、ああ、我輩はこれでも一つの村を治める頭を務めていてな。魔界では珍しく盛況だったのだが、ある我輩が少し用事で出かけていた頃、奴が狙ったように旅人を装ってやって来たのだ。・・・・後は、悲惨なものだ。村人は何も出来ずただ虐殺されてしまったのだ・・・・」

そこまで言うと、ズルベニアスは悔しそうに唇を噛んだ。
シロはその彼の様に少なからず共感を覚えずにいられなかった。

彼もまた復讐のために彼を追っているのだ。

シロは彼の義侠心に感心し、一つの決心をする。
仮面の魔族は悔しいが自分の手に負えない可能性が高いだろう。
ならば、この屈強な男と手を組むのが利口ではないかと・・・・・

「ズルベニアス殿、拙者の話を聞いてくだされ。」


そしてシロは語る。
自分に良くしてくれた女性が仮面の魔族によって狂わされた事。
己が師と仰いでいる人がきっと、その魔族との戦闘で負けなければ狂わなかったのにと悔やんでいるだろう事。
そして、彼女を救うべく、師を安心させるべく、自分が立ち上がった事。


ズルベニアスはシロが切々と語るその姿を終始無言で、でもどこか温かい目で見ていた。

(・・・・やはり、似ているな)

そんな事を思っていると、いつの間にか彼女の語りは終わっていた。

「ズルベニアス殿!!拙者と共に仮面の魔族を追っては下さらぬか」

シロはまるで弟子入り志願のようにかなり勢い込んでズルベニアスに考えていた事を告げた。
それを聞いたズルベニアスは思わず苦笑してしまう。

(まさか本当にあやつの言ったとおりの反応とは・・・・)

ズルベニアスの言ってる事のほとんどは嘘だ。
それを本当のように語るのは案外と難しいし、何より心が痛む。
だが、これも全ては信用をシロから得るが為なのだ。

(・・・・悪く思うな)

ズルベニアスはシロの顔を見ずに、ボソッと呟くように答えた。


「足を引張りなどしないならな・・・・・・」







_____________________________________________________________






シロとズルベニアスが同盟を組んだその頃、ある小さな公園でも動きがあった。
入り口から向かって右端にあるジャングルジムの前で二人の女性が立っている。

「・・・・・で、一体何なのかしら」

一人はタマモで、

「あ、えっと、その・・・・・」

しどろもどろになっているもう一方は清楚な雰囲気が漂う、でも革ジャンの謎の女性だ。

二人はあの衝撃的出会いを果たしてからもうずっとこんな調子だった。
タマモは完全にとはいかなくても、冷静に話せるようにまで回復したものの、今度は女性の方が戸惑ってしまって会話が成立しないのだ。

(これじゃ、日が暮れるわ・・・・)

そう思ったタマモは落ち着かせる意味も込めて自己紹介を始めた。

「私はタマモって言うの。あなたは何ていうの?」

「えっ?」

「名前よ。な・ま・え」

タマモが自己紹介しろと言ってる事が解ると、女性は先程の調子はどこへやら、優雅に一礼をして自分の名前を述べた。

「申し遅れました。私、ナターシャと申します。以後お見知りおきを」

これが彼女の地なのだろうが、まるで西洋の貴族を思わせるその丁重な仕草は少しタマモをたじろがせた。
タマモは気後れしないように多少語尾を強めにして話を進めた。

「じゃあ、ナターシャさんって呼ぶわね」

「あら、そんなに他人行儀な呼び名では寂しいですわ」

「はあ?」

「どうかナッちゃんとお呼びください」

どっかの最高指導者が名づけそうなあだ名を自分から名乗り出る。
それを聞いたタマモは確信した。
人のペースを気にせず、自分のペースで話を進めるこの気質は間違いなく・・・

(この人、天然だ)

タマモの苦手なタイプだ。
だが、だからと話を終えて退散する事などできやしない。
なんとか自分のペースに持っていこうと試みる。

「・・・解ったわ。それでね・・・・」

「あ、あと、あなたの事はタマモンって呼びますね」

何の勝負か解らないが、この時タマモは「負けた」と思ったという。
だが、まだ負けられない勝負があった。

「・・・・お願いだからタマモンはやめて」

「ええ!?タマモンて可愛くないですか?」

心底意外だとナターシャは驚いていた。
タマモはそれに頭痛を覚えつつも、再度やめるよう申し出る。
ナターシャは渋々と、本当に渋々とそれをやめると、

「では、あなたの呼び名はタマちゃんです。」

と違う案をだしてきた。
しかも、今回はかなり強情で結局タマモは受け入れる事にした。

(どうせ、今日だけの付き合いだしね。・・・・・でも、猫みたいなあだ名だな〜)

兎にも角にもこれで話が進む。
タマモは今度こそという意気込みでナターシャに話しかけた」

「でね、ナターシャさん・・・・・」

「・・・・・・」

「ナターシャさん?」

その時、ついさっきの呼び名についてのやり取りが脳裏を横切る。

「ナッちゃん?」

「はい、何でしょう」

(この人との会話、疲れるわ・・・・・)

どっとタマモに疲労感が訪れるが、今は無視する。

「真面目な話なんだけどね。あなた、偶然ここを通りかかったんじゃなくて、本当のところ、私に会いに来たんでしょう」

彼女は、タマモが少々我を忘れていた頃にこう言った。


『どうしましょ・・・・やっぱりこれって、接触失敗よね。』


これは、彼女がタマモに会いに来た事を明確に示していた。
タマモの彼女を見る目が自然と鋭くなる。

「ええ、そうですわ」

かくして、彼女はごく平然とその事を肯定した。

(つまり、ばれる事はそれ程重要じゃないって事ね)

「何が目的なの?」

「私の友人?みたいな人に会って欲しくて」

友人のあたりが何故か疑問系なのが気にはなったがそれよりも・・・・

「何で、その人自ら会いにこないの?」

「・・・・・・」

しかし、彼女は答えない。
だが、その代わりにとばかりに彼女は目を覆った。

(何なの?)

だが、彼女が目から手を離したときすぐに答えが解った。
瞳の色が綺麗な黒から爛々と輝く赤へと変わっていて、それに加え・・・・・
ナターシャの身から紛れもない魔力が迸っていた。

「言い忘れてましたが、私魔族なんです」

(そういう事は早く言いなさいよ!!)

そう叫びたくなる衝動をグッとこらえ、タマモは警戒態勢に即座に入る。
だが、どうも敵意はないようだ。
では、どうして自分が魔族である事を明かしたのだろう。
考えるまでもなく、そのタマモに会いたいという人物に関係するのだろう。

(つまり、相手は魔族ね)

さて、自分に魔族の知り合い?
一人、心当たりがあるといえば有るかな・・・・・

「ねえ、その会いたい人って女の人?」

「いいえ、違います」

即座に否定されてしまった。
ワルキューレかと思ったが、どうも違うらしい。
じゃあ、誰か。
男の魔族?
・・・・
・・・・
・・・・
駄目だ、心当たりがない。

「あなたの事をよく知っているようですよ」

ナターシャはタマモが悩んでいるのを見て、助け舟を出す。
だが、タマモはそれでも解らない。

「こう言ったら解るかしら。その人は最近あなたの身近で起きた事件に関連してますよ」

最近起こった事件?
そんなものは一つしかない。
悲しいあの・・・・

(・・・・・あっ!!)

その時、タマモはその人が誰か解った。
皆が血眼になって探している人物・・・・・

「仮面の魔族・・・・・」

「その通りです。彼があなたに会いたがっているのです」

まさか、彼自身からコンタクトを受けるとは思わなかった。
だが、これは絶好の機会。
もしかしたら全ての謎が解けるかもしれない。


(・・・・・・・美智恵の話もあるしね)


タマモはナターシャにその話を受ける旨を伝えた。










今までの コメント:
[ 前の展開予想へ ] [ 次の展開予想へ ] [ 戻る ]
管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa