ザ・グレート・展開予測ショー

不思議の国の横島 ―13後半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/10/23)


<前半からの続き>




「ごめんなさい。ちょっと………熱くなっちゃったわ。」
「ああ、いや…平気平気。」

しかし珍しいな。コンプレックス持ちの美神さんか……
なんだか調子狂うな。あの人はとにかく自信とプライドの塊で、天上天下唯我独尊を地で行く人だったからなぁ。
ま、そんな割りにたまには可愛い所も見せてくれたけどさ。

「たしかに、良く知りもしない人間にする話じゃ無かったわね。私もどうかしてたわ…」

だいぶ落ち着いたのか、令子ちゃんは今度はクールに話してくる。

「今日はありがとう。助かったわ。」
「いやいや、お互いGS同士…困ったときは助け合おうぜ?」
「え?」

と、そこで令子ちゃんが「は?」という感じの、鳩が豆鉄砲食らったようなとか…そんな間抜けな顔を見せる。
なんだか、とても意外なことを言われたって風だな?

「どした?」
「え?いや、あはははは……な、なんでも無い!そうよね?お互い現役ゴーストスイーパー同士なんだもの!困ったときは助け合わなくちゃね?あは、あはははは!」

怪しい……
令子ちゃんは何か隠してる。しかもあからさまに。
何だ?ヒントは俺の言葉にあるはず。

―― いやいや、お互いGS同士…困ったときは助け合おうぜ? ――

お互い……GS同士……困ったときは……助け合おうぜ……
この中で言われて「え?」って答えてしまう部分はどれだ?

「………………」
「………な、何?」

令子ちゃんは冷や汗を流して俺の様子を伺っている。
ちょっと待てよ?令子ちゃんの台詞……

―― お互い現役ゴーストスイーパー同士なんだもの ――

GS?……現役GS?ん?

「あ!?」
「ビクッ?!」

答えが分かりました。
俺はそれを確認すべく、令子ちゃんをジ〜っと睨みつけてみる。
令子ちゃんはいたずらが見つかった子供が、なんとか誤魔化そうと考えてるようなアセアセとした表情を浮かべていた。
あ〜…この表情だけでも状況証拠には十分だな。

「ねえ、令子ちゃんって………」
「な、何かしら?」

俺は思い至った言葉を口にする。

「GS免許持ってるの?」
「うっ!?そ、それは………も、もち、勿論…あははは!やだなあ、無免許での除霊は犯罪よ?そんな事する、するわけななな…無いじゃないの!」
「つまり、犯罪だって事まで知りつつ除霊してたのか?」
「うきゅ!?」

なんてこったい?!

「だ、だってしょうがないのよっ!唐巣神父……ああ、この間から研修してる私の師匠なんだけど、神父ってば全然生活力無くって、除霊しても殆どお金取らないし!私の他にも弟子が2人いるんだけど、こっちも金銭感覚まるで無いお坊ちゃんお嬢ちゃんで!私がしっかりしないと稼ぎが無いのよーーーぉぉっ!!!私は、みんなの為に…神父の教会の為に………本当はやりたく無いんだけど仕方なく、ううっ!」

美神さんはウルウルした目を見せて俺に迫ってくる。
つまり泣き落としだ。
泣き落としなんだが…

「で、稼いだ金はどうすんの?」
「そりゃあ勿論自分で稼いだ分は自分の懐に…はっ!?」

美神さんなんで当然そうだよなぁ。
さっきまでは違う部分ばかり目に付いたけど、やっぱりこの娘は間違いなく美神さんだわ。
でもそうか、あの後で唐巣のおっさんの所に弟子入りしたのか。
でもって、結局の所こうなるわけだ。まあ、当然かもな?美神さんと神父じゃあ「金」に対する態度が180度反対だし…

「お、お願い!見逃して!私今度のGS試験受けて免許取る予定なのよ!ここでこんなのがばれたら試験受けられなくなっちゃう!!」
「ああ…落ち着け落ち着け。別に誰かに言ったりしねぇから。」

なんていうか、コレくらい美神さんにしたら当たり前?

「ほ、ほんと!?」
「ただし、今後は禁止だ。どのみち免許の取得まであとちょっとだろ?おとなしくしてな。

「う………わ、分かったわ。免許取得するまでは我慢する。それで良い?」

ほー…結構素直じゃねーか?
関心関心。

「ん、それで良い。素質はあるけど、君はやっぱりGSとしてはまだ未熟だ。きちんと師匠の言う事は聞いとけよ?」
「あ〜はい。御免なさ〜い。もうしませ〜ん。」

あ、素直なのは言葉だけかも?
令子ちゃんの返事は、なんだか凄くおざなりだ。この場を切り抜ける為だけの形だけの返事だな?

「本当に分かってるのか?除霊作業ってのは危険な仕事なんだ。いつ何があるかも分かんねぇんだぞ?!」
「む!分かってるわよ、それくらい!GSが命がけの仕事だってことはちゃんと知ってるもの!何よ、偉ぶって説教しないでよね!だいたい…」

そうだ、この辺から俺は歯止めが効かなくなっていったんだっけ……

「失敗したら死ぬ!それくらい分かってるもの!私はいつでも死ぬ覚悟くらい出来てるわ!!?」
「……なんだと?」

―― 死ぬ ――

この単語が決定打だった。
俺はアレ以来、この単語には少し敏感になっていて……
そしてこの台詞を使ったのが令子ちゃんだったこともあり……
更に言えば、その言葉とは裏腹に、令子ちゃんはそれがどう言う事か分かっていないように感じて……

―― パンッ! ――

本当に、無意識に体が動いてしまったんだ。

………………










「こちら、美神。西条君、そっちはどうなってるの!?」
「し、指令…やられました。警備の人間は全て眠らされてます。」

こちらは金成木財閥当主、金成木三郎の私邸。
時刻はPM11:04と、11時を回ったばかり。
普段は閑静なこの大邸宅だが、本日は様子が違っていた。

「なんですって?!いったい貴方は何をやっていたの西条君!?」
「す、済みません指令!」

大邸宅の広大な敷地をぐるりと取り囲む人の山。
それらは警察と私設警備隊と…そしてICPO超常犯罪科、通称オカルトGメンの合同警備チームである。

「それで犯人は!?」
「す…既に逃走したものと思われます…」
「この役立たずーーーっっ!!!」

オカルトGメン指令美神美智恵は、彼の部下にしてオカG実働部隊の隊長である西条輝彦に激烈な言葉を投げつけて無線機を叩き付けた。

「なんてこと!?これだけの警備相手に、姿さえ見せずに盗み出すですって?!」

美智恵は焦る。
そして自分の認識が甘かった事を恥じた。
テーブルに置いてあった黒いカードを手に取り、それに書いてある文面に目を通す。

―― 今夜23:00丁度 ――

とはいえ、それは今まで何度も何度も読んでいるので、今更新しい何かが見つかるわけでもない。

―― ユニコーンの角をいただきに参ります ――

だから、何度読んでも不甲斐ない自分への怒りしか浮かんでこないわけで……
美智恵は叫びたくなる気持ちを落ち着け、椅子から立ち上がると駆け足で現場に向かった。
誰も居なくなった本部。そこには残る黒いカード。
その最後に綴られた1行は……

―― 怪盗ムーンレスナイト ――

今晩は……
まさにその名に相応しい……
全く月の光の届かない……
完全なる闇夜だった……



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