続々々々・GS信長 極楽天下布武!!(4‐2)
投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 3/31)
ドゴォーン!
轟音を立てて,植椙屋敷の正門が吹き飛んだ。
「……ふっ」
「ふっ,てお前,自分家だろ……」
「今は,“敵”の巣窟に過ぎないわ」
「さいで……」
ぶちかましたのは,この屋敷の本来の主・植椙景勝。右手に霊波鎌『兼続』を発し,バリバリの戦闘モードに入っている。
屋敷は,今現在,先代の落とし種を名乗る者を擁する勢力に占拠されている。景勝等の目的は,それを打倒し,屋敷を取り戻す事だ。
「――て,たったの四人しか居ないんですけど」
その内の一人,豊臣秀吉こと木下藤吉郎(一々面倒臭い)が,景勝に問う。
「私が用があるのは,その猶子殿とやらと,義姉様だけだ。残りの雑魚なんて,知らないわ」
「……えっと,詰まり?」
「秀吉達は,雑魚の足止めをしててくれれば良いの。大丈夫,他家から援軍が来てたら如何だか分からないけど,家中の雑魚の相手なら,貴方達の実力なら充分過ぎる程よ」
「成程。量より質で攻めるって訳ね?」
「そう言う事」
酷い言いようであるが,景勝は植椙家に固執してはいるが,それそのものを余り高くは評価していない。では,なのに何故それに固執するかと言えば,そう言う育ち方をしてきたからとしか言いようがない。
ある意味哀しい話ではあるが,彼女にはそれ以外の生き方など思いもよらぬ事。それは今更,如何にも出来ない事だ。その中で,精一杯やりたい様にやるのが,彼女の人生の目標だった。
「有り難うね,みんな。私の為に」
そう言った彼女の言葉は,恐らく真実だったろう。
幼い頃から勢力争いの渦中に身を置いてきた景勝にとって,大して自分に益も無いのに,無条件で協力してくれる者達と言うのは,見も知らぬ人種だった。
それが今,自分の前にいる。
「何,言ってるの。困った時はお互い様だよ」
「景勝ねーちゃんの頼みとあっちゃ,断れないよね」
「そう言う事だ。楽な仕事なのだろう?余り深く考えるな」
“仲間”達は,そう言って微笑んでくれた。
「……っ!」
景勝は,敵陣の前で涙を堪えた。
「有り難う。じゃあ……」
景勝は,“仲間”達を見渡す。
豊臣秀吉,雨姫蛇秀家,猛吏輝元,そして自分。
戦力は四人。しかし,相手の質を考えれば,充分過ぎる程だ。
「行くわよ!」
そして四人は,植椙屋敷に足を踏み入れた。
「こっ,これは先代様!」
屋敷に入った四人を出迎えたのは,当然だが植椙家の家人達だった。
「先代……?何よ,それ」
平伏する彼等を見下ろし,景勝は高圧的に問う。
「い,いえ。それはその……」
家人達の先頭に跪く執事長が,目を逸らしながらしどろもどろに言葉を紡ぐ。抑も,普段,異常に無口な景勝が,これ程饒舌に喋っているのだ。戦闘時の景勝を知らない家人達には,それだけでも恐怖だ。彼等にとって,景勝は,何時も何を考えているか解らない,不気味な主なのだ。
「その,景虎様が……」
「義父上の落とし種とやらを連れてきたんでしょう?知ってるわ」
「は,はい。その通りで御座います」
「まあ,仮にその子が本当に義父上の落とし種だったとしようか。けど,私は未だその子に家督を渡してなんかいないわよ。“先代様”と言うのは,一寸おかしいんじゃないかしら」
「……は。しかしですね」
「しかし,何……?」
「その……」
普段とは全く違う目で抑圧してくる景勝に,執事長は思わず言葉を詰まらせた。
「……」
「……」
「……」
景勝の後ろでは,藤吉郎達が控えている。
重苦しい沈黙が辺りを支配した。
「……あの」
「なあに?」
「いえ……,その……」
執事長が何とか再び言葉を絞り出した時,彼等の後ろから良く通る声が聞こえてきた。
「元々植椙と殆ど何の関係も無い貴女には,抑も家督に関して口出し出来る謂われは無いと言う事ですよ,景勝様」
「お前は……」
そして,声と共に現れたのは,スーツ姿の長身の男であった。
「義晴か」
「お久し振り……でも,無いですね?」
「ふん……」
畠山義晴は,村上義清と同じ,先代・輝虎の客臣である。故に植椙への忠誠心も少なく,又た,自分達を重用しない景勝を恨んでもいた。
「まあ,そう言う訳です。もう,この植椙屋敷に貴女の居場所は無いのですよ」
「……それは随分,無礼な話じゃないかしら,義晴」
「はは,それは如何でしょう。貴女は,もう,我々の主ではないのですから」
「良く言うわね,義晴。貴男如きが」
「それは,如何言う意味ですか?」
「私の性格は知ってるでしょう?仮にその子が本当に義父様の子供だとしても,家督を譲る気なんて無いわ」
「今更,遅いのですよ」
「ならば,奪り還す迄よ……」
ヴン……!
景勝は,『兼続』を振るった。
「力尽くでね?」
「ふ……」
義晴の顔に浮かぶ微笑が,少し,曇った様な気がした。
「如何したの?恐かったら,逃げても良いのよ」
「馬鹿な……!誰が今更」
「なら,死ぬ事ね」
「くっ……!」
バシュウ!
義清も,右手に霊波刀を作り出した。
「へえ。私とやるって言うの」
軽蔑しきった目で,景勝は義晴を見据える。
実際,景勝は彼等――義晴や義清の様な客臣達を蔑視していた。あの気紛れな義父に,お世辞を並び立てる事でしか,自らを示す事の出来ない愚かで矮小な者共……。そう思ったからこそ,景勝は自分が家督を継いだ折り,彼等を一斉に排除した。こんな奴等に喰わせてやる金は無い。旧家と言えど,この不景気のご時世,金が余ると言う事はないのは勿論だが,自分の嫌うものを身近に置いておける程,景勝は老獪でもなければ優しくもなかった。
「面白い。面白過ぎるわよ,義晴。可笑し過ぎて,涙も出ないわ」
「ほざけぇっ!」
義晴が斬り掛かる。
バチィッ!
だがそれは,いとも簡単に受け止められる。
「ふふ……」
「くっ……!」
余裕の微笑を浮かべる景勝に,義晴は憤怒の表情を作った。
「お飾りの養女当主が,我々の邪魔をするなぁぁあっ!」
ゴッ!
義晴の右手の霊波刀が,その出力を増した。
バチバチ……ッ
「!」
僅かにだが,景勝が押され始めた。
「おおぉおぉっ!」
ゴッ!
全霊力を霊波刀に注ぎ込み,義晴は景勝を押した。
「……やるじゃない?一寸の虫にも五分の魂って所かしら……」
「ふざ……けるなあぁ!」
ゴオォッ!
景勝の小さな身体を切り裂くべく,義晴が更に霊力を高める。
その時。
フッ……
「!?」
景勝は,不意に『兼続』を解いた。
パシュ……
そして景勝は,前のめりになったまま,その勢いで義晴の横を擦り抜けていった。
「お,おおっ……!」
ドゴォン!
突然,標的を失った義晴の巨大な霊波刀は,その強大な出力を持て余し,そのまま床に叩き付けられ,暴発した。
「ぐわあっ!」
霊力を霊波刀に集中する余り,その他の部位の防御力が下がっていた義晴は,そのダメージをもろに喰らった。
「ぐ……は……」
「……」
大きな傷を負い,床に横たわる義晴の首に,景勝は『兼続』を掛けた。
「ぐ……!」
「何か,言い残す事が有れば,聞くわよ?」
「己……っ!貴様などに言い残す言葉など無いわッ!」
「そう……。だったら,貴方の奥さんや娘さんには,畠山義晴は貴方々の事など全く気に掛けずに死んでいきましたと伝えてあげるわ」
「なっ……!?ちょっ,待っ……」
「さようなら」
ザン!
景勝が少し腕を動かすと,畠山義晴の首は,それでいとも簡単に落ちた。
ブシャアア!
血飛沫が,檜の床を紅く染め上げていく。
平伏する家人達にも,義晴のどす黒い鮮血が,飛沫となって掛かる。
「……愚かな」
返り血を多分に浴びた景勝が,一瞬だけ無表情に戻って呟いた。
ジ……
植椙屋敷には,流石に金持ちなだけあって,監視カメラとか言うものが付いている。
そのモニター室。
「義晴が殺されたか……」
村上義清は,少しばかり震えつつ呟いた。
「此処は……,矢張りお頼み申す,六道さん」
監視カメラのモニターからの光に青く光る顔を更に青ざめ,義清は振り向いて背後の六道吉乃を見た。
「はい〜〜〜〜,分かったわ〜〜〜〜」
吉乃は,相も変わらず呑気に応えた。
「頼みますよ?」
「任せて下さい〜〜〜〜」
「……」
それを聞いて,義清が不安になったのは,無理からぬ事であったろう。
「じゃあ〜〜〜〜,行きましょうか〜〜〜〜,加江ちゃん〜〜〜〜」
「はいはい……」
鬼頭加江を伴い,吉乃はモニター室を出た。
「うぇ……」
足下に横たわる畠山義晴の死骸を見て,雨姫蛇秀家は口を押さえた。
「大丈夫か,秀家」
藤吉郎が,心配気に背をさする。
「ん……,何とか」
未だ少し青ざめた顔をしながらも,秀家は気丈に答えた。
ゴーストスイーパーと言う職種は,人の生き死にを扱う職業であるし,恐らくは兵士と医者と殺人科の刑事の次位には死体を見る機会の多い仕事ではあるが,それでも,自分の身近な人が,本当に人を殺す所を見るのは抵抗がある。生まれてこの方,殺人なんてした事のない秀家には,首狩りなんて言うスプラッタなシーンだけでも,少し過激だった。少しやさぐれてはいるが,基本的には人並みに優しい秀家には,人間の死体を見慣れるなどと言う事はないだろう。
「ねえ」
「はっ,はい!何でしょう」
呆然として平伏していた執事長に,景勝は声を掛けた。
「この死体,処理してくれる?殺されたってばれない様にね」
「は,はいっ!」
バッ!
直ぐさま義晴の死骸は持ち去られ,家人達は,皆,蜘蛛の子を散らす様に景勝達の視界から消えていった。
「随分,手早く消えるわね……。お家騒動に巻き込まれて,死にたくないって事かしら?まあ,賢明ね」
景勝が,自嘲気味に呟く。
「て言うか……,凄いね……」
秀家が,半分夢の中に居る様な表情で呟く。
「あら。こんなの,何処でもやってる事よ?」
だが,景勝はさらりと返してきた。
「景勝ねーちゃんの何処でもは,僕の認識の何処でもとは違うよね……」
「はは,そうかもね?でも,あの『魔流連』の戦いだって,人死には出たのよ?」
「うん……,それは分かってるけどね……」
そう言う問題なのだろうか。矢張り,金持ちの考える事は分からない。
「でも,分からんないなぁー」
「何が?」
「如何して其処迄して,当主の座とかに拘るの?他に居場所が見付かったんだし,そんなの捨てちゃえば良いじゃない。政宗にーちゃんみたいにさ」
秀家の質問に,景勝は苦笑を以て答える。
「私は……,あんな風には出来ないわ……。私は,色んなものを犠牲にして……いえ,させられて得た,植椙の惣領の座を,今更捨てられなんてしない。それに,政宗と私とじゃ状況が違うもの」
「如何言う事?」
「次善の策で実の弟さんに渡るのと,一度は負かした相手に,反則技で奪い取られるのとでは,訳が違うって事」
「……?」
「悔しいじゃない?それ以上の理由は無いわ」
それは,景勝の本心だった。
勿論,その言葉に辿り着く迄には,景勝が今の地位を得る迄に捨てさせられた様々なものとか,色々な要素が有るのだが,それ等を全て纏めて景勝の気持ちを一言で表すとするなら,これが最も適切だった。
「そう……なの?」
「そうなのよ」
「ふーん……」
秀家にも,それは分かった様だ。少なくとも,景勝が一時の感情で動いているのではないと言う事は。
「だべってる暇は無いぞ……?」
不意に,腕を組んで黙っていた輝元が口を開いた。
因みに,輝元が良く腕を組んでいるのは,別に胸が小さいのを誤魔化す為と言う訳ではない。……多分。
「え?」
「次の客が,来たようだぞ」
そう言って顎をしゃくった輝元に促され四人が廊下の向こうを見ると,確かに其処には二人の人影が見えた。
「あれは……」
景勝が呟く。
「六道の跡取り娘……?」
「吉乃様!加江様!」
同時に,藤吉郎が叫んだ。
「あら〜〜〜〜,豊臣君〜〜〜〜。久しぶりね〜〜〜〜」
四人の側迄来た六道吉乃は,相変わらずの桜の花の様にのほほんとした笑顔で笑い掛けてきた。
「お,お久し振りっす」
藤吉郎も,取り敢えず挨拶を返す。
「六道のお嬢さんが,我が家に何の用向きかしら?」
その二人の間に,『兼続』を持った景勝が割り込んだ。
「え〜〜〜〜。お母様が〜〜〜〜,貴女の排斥を手伝ってこいって言うの〜〜〜〜」
「……それで?」
余りに正直に答える吉乃に,薄ら寒いものを感じながらも,景勝は続きを促す。
「だから〜〜〜〜,此処で貴方達を足止めさせてもらうわ〜〜〜〜」
バヒュウ!
吉乃がその台詞を言い終わるか否かの間に,吉乃の影から十二の影が飛び出した。
「げっ……!天回の薬物強化人間!?」
藤吉郎が,久々のショックに驚愕した。
「え〜〜〜〜,何を言ってるの〜〜〜〜?この子達は〜〜〜〜,私の家の式神の『十二神将』よ〜〜〜〜?」
「あ,そうですか……」
そっくりさんなのね……。
「他家の揉め事に首突っ込むなんて,余っ程暇なのね。名門六道の跡取りともあろうお人が……」
苦々し気に顔を歪ませ,景勝が言う。
「仕方無いわよ〜〜〜〜。お母様の命令ですもの〜〜〜〜」
「ふん……」
相変わらずの笑顔のまま,剣呑な言葉を紡ぐ吉乃に,景勝は目を細めた。
「兎に角!私が用が有るのは景虎姉様と,その“落とし種”ちゃんとやらだけなの。分かったら,其処,どいてくれる?」
「うん〜〜〜〜,分かったわ〜〜〜〜。でも〜〜〜〜,私としては此処を通す訳にもいかないの〜〜〜〜」
「……その気持ちは良ーく分かるわ。けど,私もそれで,はい,そうですかと引き下がる訳にはいかないわ」
「じゃあ〜〜〜〜,如何するの〜〜〜〜?」
「貴女を倒していくしかないかしらね?貴女にとっては,他家の内紛に首を突っ込んで,挙げ句の果てに,六道の跡取りが植椙の当主に負けたって言う醜聞が付いちゃうけど」
「え〜〜〜〜?」
一触即発の気配が漂った時,藤吉郎が二人の間に割り込んだ。
「ま,まあまあ,落ち着いて!」
「秀吉」
「落ち着いてよ,景勝。景勝の相手は吉乃様じゃないでしょ?」
「……じゃあ,如何しろって言うの?」
「だから……」
バシュウ!
振り向きざま,藤吉郎は右手に霊波刀を作り出した。
同時に,秀家が猫又となる。
「此処は俺達に任せて,先に進みなよ」
「秀吉……」
絶句した景勝の手を,輝元が引っ張った。
「ほら。頬染めてる場合ではないだろう?」
「あ,ああ……」
ダン!
景勝と輝元は,廊下の手摺りを乗り越え,中庭を駆け抜けていった。
「あら〜〜〜〜,逃がしちゃったわね〜〜〜〜。如何しよう〜〜〜〜,加江ちゃん〜〜〜〜」
「如何しようと言われても……」
「仕方無いな〜〜〜〜。取り敢えず〜〜〜〜,豊臣君達と戦えば良いの〜〜〜〜?」
「いや,良いのとかって聞かれても……」
そう言いながら,加江は横目で藤吉郎を見た。
「……そうね。まあ,私も好い加減,彼に勝ちたいし……。それには,果たし合いよりも斯ういう真剣勝負の方が良いかもね。ねえ,五右衛門?」
自分の影から式神の石川五右衛門を取り出しながら,加江は言った。
「好きにしな」
「そうするわ」
シャキッ……
腰の霊刀『之綱』を抜く。加江も,戦闘態勢に入った。
「……マジですか。止めません?こんな意味の無い争い……」
無理そうだと当たりを付けつつも,一応,訊いてみる藤吉郎。
「そう言う訳にはいかないわ〜〜〜〜」
「さいで……」
「じゃあ,行くわよ〜〜〜〜」
吉乃の間延びした掛け声と共に,死闘は幕を上げたのだった。
「……で?我々は,何処に向かって居るのだ?」
檜の廊下を走り抜けながら,輝元は先を行く景勝に訊いた。
「さあ?」
「さあ,ってお前……」
「まあ,先ずは此処かしらね?」
そう言って,景勝は一つの扉の前で足を止めた。
「此処は……」
それに従い足を止めた輝元が,その扉を眺める。
純和風な屋敷の造りとは些か不釣り合いな,鉄製の白い扉だった。
「監視カメラのモニター室。如何にも誰か居るっぽいでしょ?」
「確かにな」
「じゃあ……」
ガチャ……
果たして扉を開けた二人の前には,一つの人影が現れた。
「――って,何だ,義清か」
「何だは酷いだろう……」
それは,植椙景虎ではなく,村上義清だったのだが。
「く……!」
身構える義清に,景勝が声を掛けた。
「ねえ,義清,義姉様は何処?」
「……奥座敷だ」
「あっ,そう。有り難う。行こ,輝元」
「ん?ああ……」
身を翻し,屋敷の奥へと向かう景勝と輝元。
「……」
額に脂汗を浮かべた義清は,一瞬躊躇する。
「……!」
だが,此処で退けば,自分に未来は無い。それに,人を嗾けて置いて自分だけ逃げるなど,不義理極まりない。
何より……,義清とて男なのだ。
「ま,待てっ!」
有らん限りの声を振り絞って,義清は景勝の背中に声を掛けた。
「……何?」
景勝が,静かに振り返った。
「……この先に進みたくば,私を斃してからにしろ!」
バシュウ!
義清が,霊力を高める。
「……」
景勝が,溜息をつく。
「貴方がなけなしの勇気を振り絞って示してくれる,その覚悟を汲んで相手してやりたい所だけどね。残念ながら,私にはそんな余裕は無いの」
「な,何を……!」
義清は,怒りと期待を含んだ目で,本の少しだけ震えながら,真っ直ぐ景勝を見据えている。
「ふふっ」
そんな義晴の様子を見て,景勝は少しばかり蔑みを含んだ微笑を浮かべた。
「そうね,じゃあ……如何しようか」
「……」
考え込む素振りを見せる景勝を,義晴は馬鹿正直に見つめている。勿論,戦っても勝ち目の薄い相手だ。しかも,ついさっき,畠山義晴が彼女によって殺されたのを,監視カメラ越しに見ている。戦わずに済むなら,義清にとって,それに越した事は無い。
「ふん……。じゃあ,輝元,頼める?」
意地の悪い小悪魔的な笑みを浮かべると,景勝は輝元を見た。
「良いのか?」
「平気よ。それに,義姉様とはサシでやりたいの」
「そうか。分かった,では,此処は引き受けよう」
パチン!
そう言って,輝元は扇子を開いた。
「……」
ゴッ!
輝元が腕を振るい,旋風が起こったと同時に,景勝は再び駆けだした。
奥座敷。
その中央に,一人の女性が正座していた。
「……」
植椙景虎である。
「来た様ね……」
分かる。景勝が近付いてくるのが。
幼い頃から,十数年の長きに渡って対峙してきた“敵”だ。彼女の霊力位,分からぬと言う事があろうか。
バタバタバタ……
廊下から,誰かが走ってくる足音が聞こえる。
「……」
閉じていた目を,ゆっくりと開ける。
ガラッ!
粗暴な音を立て,襖が開けられた。
「居たわね……!」
其処には,景虎の義妹・植椙景勝の姿が在った。
今までの
コメント:
- 後書き。
影のメインヒロイン(え!?),景勝編の中編です。
まあ,脇キャラをメインにってのが今シリーズのコンセプトなんで構わないんですが,藤吉郎がらしくない。仕方無いかなあ・・・。も,ちょい頑張って欲しい所。
しっかし,キャラ増やさないとか書いといて,結構ちまちまと神キャラ出してるなあ・・・。まあ,この後も話に絡んでくるのは,阿弥陀軍団(?)位ですが。ややとかは又た出しても良いかなあ・・・。阿弥陀軍団も,全員キャラが固まってる訳ではないんですが。
と言う訳で,景勝(と輝元)編。次回で終わるかなあ・・・。 (竹)
- あ,新キャラ,です。 (竹)
- 加江のチョークネタぁああああああ
っと深夜につき暴走気味の私です。
この作品って本当にキャラ多いですね〜。けど、ここまで多くなったキャラが
うまく動いてるところがこの作品の特に凄いところですね!(なんか偉そうな文になっちゃった)
ただ、順番に読んだからわかりますが続々々々からだったら混乱してたかも…。実際途中までは
前のところを見返しながら読んでたし。面白いから苦にはなりませんが。
ってことで次回も勉強も執筆も頑張って下さい! (ポトフ)
- 義清・・・(涙)あっさりやられてしまって・・合掌(爆)
景勝って影のメインヒロインだったのですか〜(笑
うんうん・・可愛いからオールO.K.〜
それぞれのキャラがバトルを開始して白熱してきましたね。
次回も・・・というかもうかなりの数のお話が溜まってるようですね・・(汗
申し訳ありません〜投稿お疲れ様でした。 (かぜあめ)
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