ザ・グレート・展開予測ショー

呪われた少年の出会い―人身御供の少女―


投稿者名:3A
投稿日時:(03/10/19)

「う…」

少女はゆっくりと身体を動かした。頭がボーとしていた。寝ていたみたいだが寝た覚えはない。たしか自分は森へ行っていたはずだ。そしてたしか…

「気がついたか…?」

男の声が聞こえた。少女は目を擦りながら男のほうへ向いた。そこには自分と同じくらいの年齢の少年がいた。顔は整っているほうだが暗い感じがした。

「あなたは…?」

少女はまだ頭がボーとしているのを感じながら言った。

「どうでもいい…」

男はそう言い、枝を折り焚き火の中へ入れた。

「…は…はあ…」

少女は少し困惑した。

「お前は馬鹿なのか?」

男は少女に目を向けなかったがそう言った。

「は…はい?」

「真夜中に一人で森の中歩いて…暗くてほとんど見えない、足を滑らせて転げ落ちるのは当然だ。」

男はそういい始初めて少女の方に視線を向けた。

「…そ、そうですね…あははは…」

少女は苦笑しながら言った。そう、たしかに自分は森の中へ行ったのだ。そして足を滑らせ…

「あれ?」

少女は首を傾げた。たしか急な斜面で勢いよく転んだ。そしてなにか頭に衝撃がきて意識はそこで切れた。だが自分の頭を触ってみると傷がない。

「岩に頭をぶつけてたぞ…血がだらだら出てたな。」

男は淡々と言った。

「………へ?で、でも傷が…」

また自分の頭を触ってみたが傷などない。

「………気にするな。」

「???」

少女は訳が分からなかった。
男はそう言うと黙り込んだ。少女がなにを言っても反応しなかった。少女はする事もなかったので自分の状況を考えた。
まず自分がいる場所は洞窟のなからしい。多分自分がなんども遊んでいた場所だ。そして雨の音が聞こえてくる。
次に男を眺めた。髪は長いが、手入れはしていないだろう。ぼさぼさだ。見た目は若いがどこか老人のようにも感じる。
刀を二本持っているがどれもぼろぼろで汚い。刃が欠けているし一本はひびが入っている。
衣も汚くボロボロで血がついる。まるで百年ぐらい着ているように感じる。

「もう帰れ。」

男は少女を睨みながら言った。あまりご機嫌ではないらしい。

「え…で、でも…」

少女は不意をつかれ慌てた。

「あ…あの…お話しませんか…?」

少女はおろおろしながら言った。男は無表情だった。

「わ、私…もうすぐ死ぬんです…だ、だから死ぬ前に少しでも誰かといっぱい話したくて…」

「………なんでもうすぐ死ぬんだ?」

男は少し驚いたように言った。(無表情だが)
少女は話した。ここらを荒らしている妖怪、自分で進んで人身御供になることを。
男はなにも言わずに聞いていた。

「わからんな…」

男は少女の話が終わるとそう言った。

「なんで自分で進んだんだ…わざわざ?他の女がなったかもしれねえのに…?」

男はそう言いながら忌まわしい過去を思い出していた。
自分は助かる方法を選んだ。死ぬことが怖かった。生きるために化け物の血を飲んだのだ。それなのにこの少女は死を選んだ。助かる可能性が高いのに…男にとってその行動はまったく理解できなかった。

「え〜と……… でも誰かが悲しむのを終わらせたいんです・・・」

少女は気恥ずかしそうに言った。

「…みんなを守りたい…か…」

自分には守りたいものなど無かった。いや、あったのだが自分が認めなかった。認めるとつらいことになるから…自分にも相手にも…

「俺ももう死にたい…もう生き過ぎた…」

男は小さく呟いた。

「え?なにか言いました?」

「いや…なにも…」

男は消えそうな声でそう言った。
その後は少女の思い出話などを男は静かに聞いていた。

「あの…なにか聞かせてくれませんか…?」

少女は少々しゃべりすぎたと思いながら言った。

「………そうだな…」

男は少し考え込んで静かに語った。
自分が死ねない体質だということ。何百年といきていること。時々さっきまで生きていた生き物の血を吸わないと化け物になってしまうことなど。
少女は信じられないといった表情だったが…
男は少し悲しそうな表情(微妙だが)をしながら数十年まえの事を語った。
一人の少女に出会ったこと、その少女の前で化け物になってしまい殺しそうになってしまった事、少女とさよならと言わずに別れてしまったことを。

「守りたい者を俺は逆に殺すところだった…そんな自分が情けなくて…その娘は怯えた目で俺を見ていた。それに耐えられず俺はその娘の前から去った。」

男はふうーとため息をついた。
重苦しい雰囲気あたりを包んだ。

「そ…そうですか…」

少女は悲しそうな表情だった。
男はどうして少女が悲しい表情をしていたのか理解できなかったが。

「そういえばその娘以来だな…俺が誰かに自分のことを話すのは…」

男はそう言うと少女のほうにゆっくりを視線を向けた。その娘と同じ長髪で髪は綺麗だ。目も似ている。

「あんたは…その娘に似てるな…」

「…え?」

「いや…独り言だ…」

男はそういうと黙りこんだ。
すると少女が子守唄を歌いだした。なぜ歌うのか聞こうかと思ったが止めた。
昔、娘から同じ歌を聞いた。少し恥ずかしそうに歌っていた。そして自分に「どう?」と言ってきた。

よかったよ・・・

男は心の中でそう呟いた。そして自分の目から涙が出ているのに気がついた。

数年後、男はある村に訪れた。そして村人からこんな話を聞いた。
数年前にある少女が人身御供となり皆を救ったと―。

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