ザ・グレート・展開予測ショー

悲劇に血塗られし魔王 18


投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/11/ 5)


タマモはただ愕然とし、シロは驚喜の余り咆哮をあげていた。
ここは美神の事務所。
二人は修行を終え、美神の元に帰ると、そこには当然のように一人の男が居座っていたのだ。





・・・・・横島だった。


「せっ、先生。帰ってきたのでござるか!!」

「おお、シロ。久しぶりだな」

シロは飛び込むように横島に駆け寄り、久々の再会を喜び合う。
それを微笑ましげに見る美神とおキヌ。
タマモはその二人に「これはどういう事?」と近寄って小声で聞く。

「どういう事も何も、彼は死んでいなかったっていうことよ」

「おかしいって思ってたんですよ。それまでは普通だったのに、いきなり魔族化したっていうんですから・・・・・」

二人は笑って答える。

「何でもね。修行をどうしても長期間したかったらしくて・・・・・・でもそんなこと言ったら私に怒られると思ったんですって。」

「それで小竜姫様達と一計を案じたとそういうことらしいです。」

「それを聞いた時は、ぶん殴ってやったわ」

笑う二人を呆然と見るタマモ。
ここにいる皆はこれが変だと気づいていない。
横島が、そんな大それた嘘をつく筈が無いことに気づいていない。
タマモはシロとじゃれ合っている横島に目線を変えた。

(いつもの横島だ・・・・)

スケベそうにちょっと緩んだ目つき、馬鹿っぽい仕草、そして・・・・・・人を和ますあの笑顔・・・・・・・
彼が横島ではない証拠の代わりに、これでもかこれでもかっとばかりに出てくるのは彼が横島当人である証拠の数々。

(でも、こいつは横島じゃない)

九尾の狐としての勘がそうタマモに訴える。
横島が死んだとされるあの日、彼から感じたのは霊気ではなく魔力・・・・・
でも今のこいつは霊気を感じる。
これはどう説明できよう?
それを聞こうとしたタマモに、遮るようにして横島が話しかけてきた。

「タマモも、久しぶりだな。元気にしてたか?」

その言葉にタマモは不覚にもクラッときて、ついには「クゥ〜ン」と甘い鳴き声をもらしそうにしまった。
もう会えないと思っていた人間の中でも特に気に入っていた男の声。
否が応でも内から歓喜が覗いてしまう。
それを表情に出さず、冷静さを装って、でも横島から視線を反らして再度、美神に聞いた。

「皆には、この事を話したの?」

美神は「勿論」と答え、皆の反応を事細かに話してくれた。
美智恵はかなり訝しげな様子だったが、横島の姿を見せ幾らか話した後、ようやく納得して帰ったようだ。(納得した代わりにかなりご立腹のようらしいが・・・)
唐巣神父は「神よ、あなたに感謝します」とハレルヤを歌いだしたそうだ。
他の皆は、一度集めてからあれは嘘だという前置きの上、一から説明したそうだ。(←荒れに荒れた模様)
それと小竜姫やワルキューレに文句を言ってやろうとしたのだが、生憎と連絡が取れないらしい。(妙神山には誰一人としていなかったとの事だ)


それを聞いてタマモは、

(美智恵が納得したならいいか・・・・・)

そう思った。
何より、シロの危うい精神状態をこれで無かった事にできるのではないか、と思い安堵の溜息をつく。
それから、シロとじゃれながら微笑む横島をキッと睨む。

「横島、あんたには言いたい事がたくさんあるんだから覚悟しなさいよ!!」


・・・・・・・・・タマモの先程感じていた疑問はもはや消えうせていた。




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ある次元層の中で、いつもとは違う異様な雰囲気の漂わせる会話を交わす二人がいた。


「動き出してきおったな・・・・・・」


「そうですね、何年ぶりになるのでしょうか・・・・・「あれ」が動くのは・・・・・・」


「覚えてるわけないやろ、そんなの。」


「そうですね。かなり昔の話ですから・・・・・」


「わてら、どないすればよかかな〜」


「何もできませんよ。所詮私たちも、「あれ」の一部なのですから」


「そうは言ってもな〜。ほんま、不憫やで。あの、娘っ子等は・・・・・」


「確かにそうですね。・・・・・でも、もはや仕方の無い事です」


「・・・・・・・」


「まあ、最悪な事態は免れるでしょう・・・・・」


「・・・・・・・あいつか」


「ええ。彼がなんとかしてくれるでしょう。」


「初めてやな。おまいはんが、他人まかせにするのなんて・・・・・」


「私は彼が気に入っていますから。」


「矛盾してるぞ、自分。あの時、おまいはんはあいつを「危険」いうたやないか。」


「「危険」ですが、気に入っているというだけのことです」


「・・・・?まあ、よう解らへんが、わてはあいつが怖いで。なんだって「あれ」に歯向かってしまうんや?」


「それが彼の望みを叶える過程だからでしょう。」


「それの意味するところが何か解ってもか?」


「・・・・・」


「どないしたん?」


「・・・・『ウィニケト写本』」


「・・・・・」


「彼は必ずそれを手に入れようとするでしょう」


「・・・・・」


「手に入れ、『答え』を導き出すでしょう」


「・・・・・わてらの動く時はその時ってことやな・・・・・」


「ええ」


「わてらは所詮『観察者』」


「ただ状況に流されるしかありません」


「全てはあいつのだす『答え』にあるっちゅうことか」


「・・・・・」


「どっちにしろ戦争が免れないなら、せめて上手く事が運んで欲しいわ」


「そうですね。・・・・・・これ以上の悲劇はもうたくさんです」


「・・・・・」


「・・・・・」


「横島に・・・・・・」


「・・・・・・・悲劇の中の幸福を」





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