ザ・グレート・展開予測ショー

通販生活


投稿者名:赤蛇
投稿日時:(03/11/ 8)

とある夜――――


体は疲れているのに眠りにもつけず、さりとて何かをする気にもなれず、ただ苦痛な時間を無為に過ごしている。
この前買った本を開いてもみるが、目は同じ行をなぞるばかりで一文字たりとも頭に入りゃしない。
音楽も聞きたい曲を考えるのもおっくうだし、ゲームもいまいちする気にならない。
ネットでも繋ごうかと思うが、立ちあがるまでの事を考えるとうんざりする。どうせ今日なんかチャットに人がいるはずもないし。

(早く眠らねぇとなぁ)

何度思ったかわからない愚考を繰り返しつつテレビをつけてみるが、こんな時間におもしろいものがあるはずもない。
「つまらんなぁ。。。」
誰もいない部屋で無益な愚痴をこぼしながら次々とチャンネルを変えていくと、とある通販番組が目に入った。
別に何か買おうというつもりはないが、何故かその番組に興味をそそられてしまった。

国内の通販会社の番組だった。
安っぽいCG使いまくり、社名連呼で何も考えてなさそうなオープニングテーマからして、全身の倦怠感を加速させる。
どちらかというとアメリカのヤツの、妙に大掛かりでバカバカしいほうが好きなのだが。
(そういえば、誰かが前に『アブなんとか』を買ったとか言ってたな)
ふとそんなことが頭に浮かんだ。

画面には見覚えの無い―――――片方は今時ボディコンを着た金髪の、もう片方は和服というか巫女服で黒髪のロングヘアーをした2人の美人がいた。
この手の番組には懐かしい芸能人がよく出てくるもんだが、その2人は芸能人にも局アナにも見えなかった。
しかし、「10年ぐらい前にこんな女ぎょうさんおったなー」と思わせる金髪と、「初詣のバイトにこんなんいそうだなー」と思わせる黒髪を見ると、たぶんマイナーなその手のたぐいなんだろうと思う。

「さて、本日ご紹介する商品はこちら」

金髪がテーブルの下を指し示す。
そこには包装紙に包まれたハンバーガーが大皿に盛ってあった。

「おかげさまでご好評を頂いております大ヒット商品『チーズあんシメサババーガー』!」

俺はコケた。
ベッドの上で横になりながら器用にコケた。
なんじゃそらっ!!
そんなん買う物好きがおるんかいっ!!
しかも大ヒット商品やて!? なんぼなんでもウソやろーー

「それが今回パワーアップして新登場! 従来のチーズに変えて、ブルーチーズをプラス!」
「うわぁ、スゴイですね―――」

そう言いながらプルーチーズ(どう見ても、腐らせたヨーグルトにしか見えんが)をトッピングする金髪。
黒髪はいかにも台本読んでますって感じで合いの手を入れるが、目がまったく笑っていない。

「今までのものに比べて、幽体離脱時間がなんと1.5倍に!」
「うわぁ、スゴイですね―――」

ハンバーガー食べて幽体離脱!?
なんなんだ、いったい??

「そして、なんと今ならこの商品がもうひとつ! もちろん計算はかわりません!」
「うわぁ、スゴイですね―――」
台本どおりに大げさに驚いてみせる黒髪。
アンタ、それしか言わないつもりなんだろ?

「金利・手数料は、もちろんジャパネットミカミが」

金髪はここでいったん言葉を切り、背筋に震えが来るような笑顔でにっこりと笑って言った。


「負担しません!!」


「さあっ、今すぐお電話を!!」

誰が買うかアホーーーーーーーーッ!!!
俺は真夜中に絶叫しながらテレビにつっこんだ。

・・・バカバカしい。
さっさと消して寝よう。
俺はリモコンの電源ボタンを押して、少しでも眠るためにふとんに潜り込むことに決めた。


・・・あれ?

おかしいな、切れないぞ。
リモコンのボタンを何回か押してみるが、画面は一向に消えない。
電池が切れたかな、と思って左手を見ると。。。

そこにあるのはテレビのリモコンではなく、携帯電話だった。
知らないうちに左手の親指がゆっくりと、しかし確実にキーを押していく。

「・・・お、おい、ちょっとまて」

あわてて電話を離そうとするが、左手はまったく俺の意思を無視している。まるで別人の手のようだ。

「・・・じょ、冗談だろ、おい」

得体の知れない恐怖感に囚われ、俺は指一本動かすことが出来ない。左手以外は。
そして親指が通話ボタンを押した。


『―――はい、こちらはジャパネットミカミ・コールセンターです―――』

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