ザ・グレート・展開予測ショー

追うもの×追われるもの=?


投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/10/30)


月明りが俺を突き刺していた。
すっかり冷たくなった風が容赦なく吹きつけ、ごうごうと唸っている。
背筋が震え上がるような感覚を覚えて地面を蹴った。
必死に駆ける。

「はあっ、はあっ」

息が切れる。
だが、構うものか。

それよりもあいつに見つかりでもしたら・・・・

石と石を打ちつけたような音が、一瞬遅れて背後で響いた。
曲がり角を曲がる寸前で振り返り、ぞくりとした。
あいつの影がちらりと見えたのだ。
目を奪われている余裕なんてなかった。
一瞬の判断で次の曲がり角までの距離を目測する。
脊髄反射の勢いで地面を蹴る。

・・・・・何度同じ事を繰り返しただろうか?
・・・・・なんで逃げているのだろうか?

悪夢のような出来事が始まってから、既にどれくらいが経ったろう。
日が落ちると同時に彼女は現れた。
そして恐ろしい事を俺に言った。
俺が覚えているのはただそれだけだ。

気がつけば追いかけっこが始まっていた。
追いかけっこ、だなんて生易しいものじゃないのかもしれない。
負ければ彼女の報復が待っている。

俺はとにかく逃げた。
俺の持つ身体能力を限界まで駆使しても、彼女はいともあっさりと付いてきた。
彼女はこういう事に明らかに手馴れていた。
なにより、眩しいくらい生き生きとした今日の満月は、俺の姿をくっきりと映し出す。

唐突に気配が消えた。

撒けたか、と思って足を止めた。
そんな事が有り得ない事を俺はよく理解していたのにも関わらず・・・・

・・・・・どうして思い直さなかったのだろうか・・・・・

頭上でがさりと音がした。
俺は顔を上げて、あまりの眩しさに思わず目を細めた。
月を背負った彼女が、目の前の電柱の上に立っていた。

やばいっ!!

一瞬、彼女の鋭利な瞳が俺を支配する。
俺はそれを気合で振り払う。
そして俺は・・・・・
視界に映る月光から逃げるように、闇を求めて再び走った。




路地裏は袋小路になっていた。暗いアスファルトの道を駆け抜け、その空間に飛び込んだ瞬間・・・・

俺の視界は奪われた。

一瞬、刑事ドラマなんかで犯人を包囲するときに使っている照明機に晒されたのかと思った。
なんてことはない。
ただ頭上にぽっかりと空いた隙間から月の光が射し込んでいて、辺りを陽だまりのように浮かび上がらせていただけだ。
俺はゆっくりと目を開いてから、ぼんやりと頭上を眺めていた。
今まで避け続けていたものは、不思議な色や形をして俺の体に沁みこむ。

彼女の思惑通りに誘い込まれていたということはすぐに理解できた。
理解できたからとて、もうどうしようもなかったが・・・・・
四方は硬い壁に囲まれ、一箇所だけ入場門が開かれている。
俺は気づくことなくここをくぐり、自らこの地に足を踏み入れてしまったのだ。



背後で足音が聞こえる。



俺は振り返らずそれを思いのほか冷静に聞いた。



足音が近づいてくる。



・・・・・・・処刑台に立つ心境とはこれと似ているかもしれないな。



ふうっと、溜息をつき気持ちを切り替える。





がばあっと俺に彼女が抱きついてきた。






「やっと、捕まえたでござるよ〜。さあ、拙者を散歩に連れてってくだされ!!」







「やっかましい!!なんで夜に、んなことしなくちゃならんのだー!!」






「昨日も、一昨日もしてくれなかったではござらんか〜」






「といってもなぁ〜。見ろ、このだくだくと流れ出る汗を・・・・・俺もう体力残ってないぞ。」





「そ、そんな〜」






「今日の散歩は、趣向を変えて鬼ごっこだったということで諦めな。」






「嫌でござる!!拙者と普通の散歩をしてくだされーーー!!」










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