ザ・グレート・展開予測ショー

アシュタロス〜そのたどった道筋と末路(涙)〜おキヌ・ざ・すたんぴぃど3


投稿者名:♪♪♪
投稿日時:(03/11/ 4)



「ここで横島がカオスに撃たれよったんです」
 背後で興味深々にメモをとっているおキヌに、つぶさに実況見分してのけたのは――鬼道だった。背後では、成り行きで巻き込まれてつまらなそうな美神と、『サインくれるかなー』と現状を理解いしてないとしか思えない発言をしてのける冥子がいたが……はっきり行ってあてになりそうに無いので、鬼道一人が説明役を押し付けられる形になる。


 ――道に迷うといけないのと、常識に疎いところがあるおキヌを放置して置けないのと。特に後者が致命的だった。


 初めて街に出てきたとき、田舎もの通り越して昔の人な反応を示したおキヌちゃんの事。我を忘れた瞬間銃器を乱射し始めるに決まっている。
 そう説明する美神に六道カップル(と、表現して差し支えなかろう)は首を傾げて意味を問うたが、はぐらかされた。


 知らないというのはいい事だ。


「すいません。こういう人知りませんか?
 あ、そうですか、すいません……」
 呼び止めた相手に色のいい返事をもらえなかったにもかかわらず、深く頭を下げるおキヌ。ここら辺はさすがに純真だと和んだのは鬼道だ。
 彼の中でのおキヌの格付けが上がった。が、それでも冥子の方が圧倒的に上位なのはバカップルのお約束である。
 空港を皮切りに、一同はカオス探索を開始したが、いい結果は得られなかった。科学者という特徴を考慮に入れて、秋葉原の電気街まで足を伸ばしたものの、ドクターカオスらしい人物の目撃談は得られなかった。


「いい!? おキヌちゃん。絶対に銃だけは持っちゃ駄目だからね!」
「は、はあ」


 カオスを探しながら、念を押す美神。さすがに、その辺の常識は心得て――


「銃刀法違反のもみ消しは大変なんだから。十歩譲って致死性のスタンガン使いなさい!」


 無かった。聞き耳を立てていた鬼道は問答無用でこける。
 致死性のスタンガンってなんだ!? 何ボルトだ! ……ってか、この完全無欠法律嘲笑女に常識的観点による状況判断を求める方が間違っているぞきどー。




 その頃の横島。
 ジュ〜〜〜〜〜〜ッ!
「なあ、ここの代金……」
「大丈夫ですよアシュ様」
「われにひさくありでちよ〜」
「……なんか嫌な予感がする」
「お! 焼けたぞ!」
「あ! ドクターそれタダちゃんの!」
「イエス・ドクターカオス」
 まったく関係の無い場所で焼肉をつついていた。(笑)




「――こら、美神はんは置いてきた方が正解やったかなー」
 その後も、『ナイフで狙うなら首筋よ』だの『ブーメランはこうやって投げるの』だの危険な支持で純白のおキヌを黒く染め続ける令子。その姿を見た鬼道のコメントは、多分読者の大半が抱いていた感情の代弁であっただろう。


 ――自他悪化させて引っ掻き回しそうな気がするなー。
 この集団唯一の良心としての自負を持つ鬼道は、気を引き締めて恋人のいる方向に視線を流し――とてもではないが看過できない光景にぶち当たる。


「ねえねえ、君、今暇?」
「え、え〜〜っと〜〜〜〜〜〜」
「暇? 暇なんでしょ? 俺さぁ、いいカジノ知ってんだけど――」
 そこにあったのは、冥子がどこぞのチンピラに絡まれている光景。


 同じタイミングで、美神とおキヌも冥子が陥っている事態に気付き――キュピーンとどす黒い殺意で光った鬼道の瞳におびえ、ダッシュでその場を逃げ出した。


 鬼道は無言でスーツの上着を脱ぎ、夜叉丸に渡す。
「冥子ちゃーん」
 声をかけた次の瞬間――冥子が振り向きだすと同時に駆けた。


 父親に、無茶な訓練で与えられた筋肉が限界までしなる。
 旋風を起こしながら冥子の元へ駆けていく鬼道。彼女の視界に入らないように、尋常ならざる速度で彼女に接近する。ただでさえ鈍いところのある冥子をごまかす事自体は難しい事ではない。問題は、接近し終わって以降だ。


 冥子の視界が自分の移動ラインが交わる瞬間、鬼道は全力でもって地を蹴った! 反動で爆ぜる道路を冥子に対する囮として、絡んでいたチンピラに肉薄する。


 チンピラが何か言葉を音にする前にその脇をすり抜け、すれ違いざま顔面に掌底。そのまま腕を振り切るように後頭部を地面に叩きつけた!


 どんっ!!!!
 盛大な音を立てて、チンピラの後頭部がアスファルトを砕く。手のひらに伝わってくる十数の軽い手ごたえは、歯がへし折れる感触。この分では、前歯は全滅だろう。


「あら〜?」
 冥子からすれば、恋人の声に呼ばれて振り向いたら、真横で盛大な音がしたのだ。とまどった冥子が音源――鬼道の方を振り向こうとした瞬間には、次の行動が始まっていた。


 男の襟首をつかみあげると同時に、冥子の首の動きを上回り、かつ視界に入らないように場所を移動。冥子の後頭部にいるように心がけた、といえばわかりやすいだろう。
 そうして完全に視界に入った瞬間。




 どげしっ!!!!




 鬼道の長い足が、チンピラの体を蹴り飛ばしていた。図ったように――実際計ったのだが――そこにあった裏路地へ飛び込んでいくチンピラの体。着地音を聞く前に、鬼道は取り出したハンカチで手に付着した返り血をぬぐっていた。
 見捨てられて以来、軽蔑の対象にまで成り下がった父が唯一鬼道に残してくれたもの――それが、この人間離れして魔族とでもタイマンはれそうな肉体能力である。
 この間、僅か三秒。こうして、鬼道は自分の恋人についた悪い虫を問答無用で駆除してのけたのだった。
「こっちや冥子ちゃん」
「きゃっ!? まーくん……脅かさないで〜」
 人間離れしすぎの肉体能力やら、ナンパしただけでそこまでする常識観念やら、それだけの運動しといて息すら乱してない肺活量やら、それだけの事をしでかしながら、カップルでいちゃつく神経やら……どこから突っ込めばいーのやら。


 とりあえず、遠くからそれを見ていた美神は、隣で呆然としているおキヌに対し、チンピラが吹き飛ばされた裏路地を指差す。
 ――ちょうど、その裏路地に、冥子の式神が入っていくところだった。
 その横顔の翻訳なんぞ出来ゃしないのだが、放っている空気でその意思はわかった。


 あえて文章にするならこんな感じ。
 『さあ。楽しい裁きの時間だぜ!!』


 ぐちゃぱりげしぼきげしざくみきゃべりぐちゃべちゃぁっ!!


 生々しい、生々しすぎる追い討ちの効果音が裏路地から聞こえてくると同時に、おキヌは意識を手放した。創造するに耐えなかったらしい。冥子に気付かせないのは、鬼道の手馴れた話術によるところが大きいだろう。
 そんなおキヌを見てため息をつき、令子は携帯電話を取り出す。
「――あ、もしもし。秋葉原の路地裏に、半死半生の男が倒れてるんですけど。場所は……」


 ちなみに、全治三ヶ月の軽症だったらしい。
 あれだけやって軽症ってあたりに、『殺』りなれている感があってなんかイヤダ。




















 この一軒で地獄の一丁目を見たチンピラが、すっかり心を改めてキリシタンになり、とある貧乏GS神父の元に弟子入りするのだが、それはそれ。別の話。



今までの コメント:
[ 前の展開予想へ ] [ 次の展開予想へ ] [ 戻る ]
管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa