ザ・グレート・展開予測ショー

悲劇に血塗られし魔王 12


投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/10/31)



ギィエアアアアアアアアアア

魔物の断末魔の咆哮が轟く。
俺はそれを背にその咆哮に誘われ、訪れる次の獲物を待つ。
それはすぐにきた。

「ゴオオオオオオオオオオ!!」

獲物は鋭利な角と牙を持つ「ヴェガン」と呼ばれるものの亜種だった。
獲物は俺を認めるや否や角を振るって凄まじい勢いで襲い掛かってくる。
避ける事もできたがあえて手に持つ槍で迎え撃つ。

「おりゃあああああ!!」

敵の持つ角を柄で受け流し、獲物に肉迫する。
獲物の顔が俺の目前に現れる。

「ふっ!!」

その横面を思いっきり・・・
蹴る!!
獲物は驚声を上げながら、地面に勢いよく倒れる。
脳を揺さぶられなかなか立ち上がれないようだ。
俺は槍を上段に構えたまま、獲物に走りより縦に一閃。

「ゴオアアアアアアアアア!!」

悲鳴を上げ、そして死ぬ。
俺はもう獲物が来ないことを確認すると辺りを見回した。
あちこちに散らばる屍の数々、そして各々から流れ出る血はある所でぶつかり合いより大きな流れとなる。
「血で血を洗う世界」まさにそれを絵にしたような光景だった。
俺はもはや見慣れたその光景にペコッとお辞儀しその場を後にした。



魔王就任から一年の歳月が流れた。
俺はその期間を己を高める修行に費やすことにした。
そして修行地として選んだのはこの地。
「ダルヤナス高原」
知性が低いが、その力・俊敏性に長ける魔物が多いこの地は魔界でも修行の場として有名だ。
実際、ここは修行地としては最高だった。
敵とみなすと問答無用で襲い掛かってくるその野生・ふざけるなってくらいの腕力と瞬発力・そして魔物の生息する種類と数。
種類と数が多い事はとてもうれしかった。
種類によって攻撃の仕方は千差万別。
また、同じ種類でも微妙に攻撃の仕方に差がある。
退屈するなどありはしなかった。
最初など結構苦戦の連続だったし、慣れてきてもそれでも苦労した。
そんなこんなで一年がたつ。
俺は強くなった。
もう、この場の魔物では話にならないだろう。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・足りない。
・・・・・・まだ、これでも駄目だ。
・・・・・・これでは「あいつ」に勝てない。
・・・・・・勝つこと事態、無理なのかも知れないがそれでも・・・・・


もう時間が無い。


・・・・・行動を始める時期だ。



俺は城に戻ると、ある一室に入った。
そこは書斎だったようだが、主がいなくなり荒れ放題である。
本棚にあっただろう本はそのほとんどを床にぶちまけていたし、また掃除など何年もされていない為、あちこちに埃が積もっている。
これも一つの「腐海の森」というやつか・・・・・
そんなことを思いつつ書斎にある机に近づき、引き出しを開ける。
確か、「情報」によれば・・・・・・・・

「おっ、あった、あった。」

そこには丸まった紙が入っている。
俺はそれを広げる。
それは魔界の地図だったが、普通の魔界の地図ではない。
地域・地域に何か文字が書かれている。
これはどこに何の部族が住んでいるかを示す地図である。
と、それはともかく俺はある場所を探した。
それは地図上でも目立ち、ここより北北東に位置していた。
そこは魔界一高いとされる山。
一般には「ラ・ヴァ・ラレア山」と呼称されている。
ちなみに、ほとんど知られていないらしいが「ラ・ヴァ・ラレア」とは昔の言葉で「天に通じる道」と言う意味だ。
その「ラ・ヴァ・ラレア山」の麓にある部族の名前が記されていた。
思わず、たは〜っと額に手をのせ呻いてしまった。

(・・・事はそんなに上手くいかないか・・・)

この部族の事を「情報」から引き出し、少し考える。
俺は一人うなずき、そしてもう一度その場所を確認すると書斎を後にしようとする。
ふと、壁にかけてある仮面のコレクションが目に付いた。

「・・・・・」

それのうちの一つを手にする。

「さあ、狩りの時間だ」

________________________________________________________________________________________

「賊が進入したぞーーーー!!」

ここは、天界の中央管理局のとある場所。
そこで、騒ぎが起こった。

「何、宝物庫に入られた!?見張りはどうした!!」

上の者らしき人物が早足で移動しながら隣を追従する部下に聞く。

「はっ。清掃用具の入っているロッカーの中で縄でしばられ猿轡を噛まされた状態で発見。発見した用務員のおばちゃんの談「なんていうプレイだい、これは。」我々はそれに対し・・・・」

「・・・・もう、いい。」

こめかみを押さえながら部下が余計な事を言うのを止めさせる。

「それで、犯人は誰だ?」

「・・・・・」

その言葉に部下が言いよどんでしまう。
上官は「今は緊急事態なんだぞ、早く言え!!」と言いたい気持ちを抑える。
・・・・誇り高き神族はあくまで紳士に、かつジェントルマンに・・・・
それがこの男のモットーである。
誰もが「意味が同じやないか、このおんボケーーーー!!」とつっこみを入れたくなるモットーであったがこの際、無視。
そんな上官は部下に穏やかに、でも急かすよう話しかけた。

「どうした?」

「いえ、それが・・・・」



その頃、

「これでもない。んんっと、これでもない。」

ガサゴソガサゴソと探し回るいかにも挙動不審な女性がいた。
小竜姫である。
宝物殿に進入した賊とは彼女の事だった。
彼女は横島暗殺の功でめでたく中央に転属となった。
彼女はそこで一生懸命働いた。
信用を得る為に・・・
彼女は横島を暗殺させた上層部に反感を持っていやしないかと危惧された。
だから中央とはいっても末端に近い所に配属されたのだが、元々有能な小竜姫。
すぐにめざましい活躍が上層部に伝えられる。
そして小竜姫が中央に配属され一年が過ぎようとしたとき、小竜姫は中枢にあたる中央管理局へと転属した。
小竜姫は喜んだ。
(これでやっと実行に移せる。)

「あっと、見つけた!!」

それは、翡翠のような石に紐を通したネックレスだった。
お目当てのものを手にし、中を有る程度物色しめぼしい物を3つ程手に入れる。
その中には地図と記された巻き物もあった。

「さてと・・・」

先程から何人もの気配を感じていた。
小竜姫は近くの窓を体当たりで割るとすぐ懐にあった札を投げる。
パンッと手を打ちそれから複雑な印を作る。

「破っ!!」

札はいつの間にか小竜姫その人になった。
このときの為に父の書棚から一枚盗んできたのだ。
それもその中でも良いものを選んできたのだ。
そうそう偽者だとばれる事は無いだろう。

「いたぞっ、あそこだーー!!」

果たして、意図したとおり事はすすんだ。
皆、一様に偽小竜姫を追う。
小竜姫は内心で謝ると、目的の場所へと移動した。



何事も無く無事に目的地に着く。
そこは「ゲート」と呼ばれる魔法陣のある一室。
気絶した見張りを静かに横に寝かせて、魔方陣の中央へ足を運び開放の呪文を紡ぐ。

「父上、母上、姉上、これからかかるでしょう迷惑をお許しください。」

(それでも、私は・・・・・・・・許せそうにないんです。)

「っ!!」

背後に気配がし、慌てて振り返る。

「ヒャクメ・・・・」

そこには自分にとって無二の親友が立っていた。
小竜姫は今回の事をヒャクメに話していた。
誰にも話さずにここから離れるのは辛かった。
憶測が憶測を呼び、あげく家族に迷惑をかけてしまうのが怖かった。
でも、誰に話せばよいのか・・・・
家族は無理にでも止めてくるだろう。
斉天大聖もだめだ。
立場があるし、恩もある。
なにより目上の人だ。
小竜姫は迷いに迷いヒャクメに言う事にした。
彼女は驚き、止めようと説得したが小竜姫のある一言に結局折れる事になった。
その言葉とは・・・・・・

「私には、やるべき事があるのです」

その言葉が、上層部が信じられないとか自分が嫌になったとかだったらヒャクメは説得をし続けただろう。
目的の無い行動は身を破滅させる、と言って。
でも、小竜姫には目的がある。
そんな彼女に上手く説得する言葉などヒャクメには持ち合わせていなかった。

「ヒャクメ、止めに来たのですか?」

ヒャクメがもし、ここで応援を呼ばれたらゲート開放に間に合わないだろう。
でも、彼女はしない。
できない。
友を売る事など彼女ができないことは知っている。
だから小竜姫の声は穏やかだった。

「小竜姫はずるいのね〜」

ヒャクメは小竜姫の心中など察しているというふうに首を振る。

「ヒャクメ、いままで有難うございました」

小竜姫は様々な思いを込め、礼を言う。
ヒャクメは笑う。

「まるで、最後のお別れみたいなのね〜」

事実、これは最後のお別れであった。
このゲートは一方通行。
あちらに行ってしまっては会う事など無いだろう。
あっても、それは当分先。
しかも場合によっては敵同士というおまけまでついてくる。
だから二人の雰囲気は暗い。
そしてついに魔方陣が光り始める。
ゲートが開放された。
小竜姫はゲート中央に歩く。
ゆっくりと。
・・・・・この世界に別れを告げるかのように。

「あっちに行っても頑張るのね〜。」

「ヒャクメもね。」

光が強くなり、やがて目を開けてられないほどになる。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
光が弱まり目を開ける。
そこには誰もいなかった。

「結局、さよならをいわなかったのね〜」

このゲートは天界で重い罪を犯した者にのみ使われるゲート。

「小竜姫。必ずまた、会おうなのね〜」

故にこのゲートはこう呼ばれる。

『堕天のゲート』






・・・・この出来事を知ったある竜王の嫡男は悲しい余り、暴れ狂ったと言う。









「小竜姫ーーー!!なぜ余をおいていったーーーー!!」

「で、殿下〜、殿中でござる〜。」

「ええい、黙れーーー!!」

ドカッバキッ。

「・・・・・」

「許さんぞー。小竜姫!!」

「なぜ余をそんな面白そうな事につれていかなかったんだーーーー!!!」

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