ザ・グレート・展開予測ショー

知ってるようで知らない世界―3―


投稿者名:誠
投稿日時:(03/11/ 4)

 美智恵は病院に着くと娘から伝えられた事実に思いを巡らせる。

横島君が令子とおキヌちゃんを助けてくれたらしい。
彼が使ったのは素人が使うことなどできるはずのないサイキックソーサーと霊波刀らしきもの。そしてすさまじい霊力を放つ玉・・・。

まったく信じられない!どれもかなりの才能、修行が必要なものだろう。それを使いおキ
ヌを守り、世界最高のGSといわれている令子が疲れがあったとしても吹っ飛ばされたほどの悪霊を倒すなんて簡単にできるものではない。
確かにあれだけの傷を見ると彼がいままでかなりの修羅場を潜り抜けてきたのではないかと容易に考えることができる。
しかし、一番の問題は最後に使ったと思われる玉・・・。
自分が想像したとおりのものであるとしたらGS業界で今までにない能力をもつ横島忠夫という男の争奪戦がはじまるだろう。
そしてもしかすると神界、魔界も関ってくるのではないか・・・。
いや、人界に戸籍がないということはもしや最初から・・・?
いや、しかし彼は霊力を発している。体の作りも人間のものだ。

彼の謎は消えず、さらに深まる。そして増えていく。
謎が謎を呼ぶ、しかし彼に対しての警戒心はまったくなくなっていた。過去に何があろうと彼が悪人だなどと考えることもできなくなっていた。



美智恵は『横島忠夫』と書いてある病室の前まできたので思考を停止すると少し深呼吸をしてから病室のドアを開けた。

――ガチャッ――

「横島君怪我は・・・。」

美智恵はあまりのことに言葉を続けられなかった。その目に思いもしない光景が飛び込んできたからだ。

「すまん!許してくれ!やめんかこら!」

はりつけにされて電流を流されて叫び声をあげているのはヨーロッパの魔王ドクター・カオス。

「あんたが悪いんでしょ!おとなしくしろ!」

それを鞭でたたくのはなぜかこげている娘の令子。

「ドクター・カオス・がんばって・下さい」

まわりでおろおろしているがカオスを応援しているカオスが作ったロボットのマリア。

「横島さん、そんなに痛いんですか?しっかりしてください。」

ベッドの横でこれまたおろおろしているおキヌ。

「・・・・・・・・・・・・・。」

そしてベッドの上には頭に妙な機械をつけて口から泡をふいている白目の横島がいた。
一瞬何があったのかわからず一言も発することができず口をパクパクさせていた美智恵だったが、気を取り直して叫んだ。

「なにやってんのあんた達は〜〜〜〜〜〜〜〜!」

病院に美智恵の怒声が響いた・・・。





時は少しさかのぼる。

横島を病院に運び込んだ令子とおキヌは医者から命に別状はないので心配要らないとの言葉を聞きほっと胸をなでおろした。

しかしあれはなんだったのかとおキヌは令子にたずねた。

「わからないわ。でも体が覚えてたって感じの動きだったわね。あの防御も、最後わざと
後ろに飛んで衝撃を受け流しながら行った攻撃もね。たぶん記憶を失ってもなお体が反応するくらいの過酷な訓練をして数々の修羅場を潜り抜けてきたんだと思うわ。」

令子は先ほどの横島の動きを思い出しながら言った。

「えっ最後の爆発あれ横島さんがやったんですか?」

おキヌの位置からでは熊霊が邪魔で見えなかったようなので令子は説明をはじめた。

「横島君の手からなんか碧色の玉みたいなのを出てそれが爆発したのよ。」

二人はまた考え込んだ。

謎に満ちている男。
しかし目の前の危険が迫っている人を助けるために躊躇なく文字通り自分を盾としたやさしい男。
最高のGSといわれる美神令子が吹っ飛ばされたほどの悪霊を一撃で倒した強い男。
本当に何者なのだろうか・・・。しかし、たぶん失われた記憶を持っていたとしても横島は悪い人間ではないだろう。私利私欲で動く人間にはとっさに他人をかばうことなんてできっこない。

しかし廊下の端に知り合いの姿を見つけると二人は思考をストップさせてそちらを見る。

「おーーーい、きてやったぞーーー。」

「あ、カオス遅かったわねもっと早くきなさいよ!」

「そんな無茶を言うなわしも年なんじゃしかたなかろう。」

この老人はドクターカオス。永遠の命を手に入れた天才錬金術師。しかし現在1000歳を越えてボケ気味になっている。本当にすごいのかすごくないのかよく分からんじいさんだ。

「ドクター・カオスは・早食いに・挑戦していました。制限時間・オーバーし・お金・払わされました。」

律儀にそしてありのままを話すのはカオスの作ったアンドロイド、マリアだ。

「なんでカオスさんを呼んだんですか?」

「このじいさんなら記憶喪失直せるかもしれないでしょ。」

寄り道していたのがばれたカオスをしばきながら令子は答えた。その時、

「あの男性ですが意識が戻りました。面会しても大丈夫ですがあまり疲れさせないようにしてください。」

ぼろぼろになっているカオスを見つつ何事もなかったように医者は横島の回復を伝える。

「行くわよあんた達!」

――ガチャッ――

令子達は病室に入っていき一斉に横島に話し掛けた。

「あんたいったい何者なの?」

「ごめんなさい横島さん私のせいで。」

「わしはヨーロッパの魔王ドクター・カオスじゃ!」

「マリア・です。」

いきなりの問いかけに驚いた横島だが一人一人に言葉を返していく。

「おれにもさっぱりわかりません。」

「おキヌちゃんのせいじゃないよ。」

「はじめまして。」

「よろしく」

よくわからない会話になってしまい美神、おキヌは沈黙しマリアは演算処理をはじめる。
しかしこの男は違った。

「さあ小僧これをかぶりそしてこの薬を飲むがよい。おぬしはすべてを思い出すことじゃろう!」

怪しげな機械を横島の頭に取り付け薬を飲ませる・・・。

―ゴーーーーーーーーウ―

横島は火をふいた。美神に500のダメージ!美神の反撃。急所にあたった。痛恨の一撃!横島に男にしか分からないダメージ!横島は力尽きた。





そして令子によるカオスへのお仕置きが始まり今に至るのである。

「事情は分かったわ。」

疲れた顔でこめかみをおさえながら美智恵はつぶやいた。

「うーーーん」

「横島さん大丈夫ですか?」

おキヌが心配そうにたずねる。

「危うく三途の川を渡ってしまうところだったよ・・・。」

横島は何とか復活したようだ。

「ところで横島君、右手に力を集中してみて。」

美智恵に言われた通りやってみる横島。すると六角形の盾のようなものが現れる。

「もっとよ。」

美智恵が催促する。横島の手には鉤爪のようなものが指についている霊波の手甲のようなものができる。それは横島の望む形になり、刀のようにもなった。
横島はそれをみるとなにやら懐かしい思いが胸に満ちてくるのを感じた。

「栄光の手(ハンズ・オブ・グローリー)」

横島がつぶやいた。

「なにそれ?」

「いや、これの名前ですよ。これがあれば荷物持ちなんかじゃなく美神さんやおキヌちゃんと一緒に戦えるじゃないですか。俺も美神さん達と戦える栄光をつかめた。そういう意味の名前です。」

「そっそんなこといっても時給は上げないからね!」

美神は横島の言葉に赤くなり、赤くなった顔を見られないように横を向く。

「令子、横島君話しは後よ。もう少しやってみてくれる。」

美智恵にいわれさらに力を集中する。ハンズ・オブ・グローリーが消えて碧色の玉が横島の手の上に出現した。

「これよ!爆発した玉!」

「これは、やはり・・・。横島君、これあずかってもいいかしら?」

「はい、別にかまいませんけど。」

「令子、横島君が退院したら妙神山につれて行きなさい!」

「そうか、小竜姫とヒャクメなら何かわかるかも、わかったわ。」

碧の玉をみつめなにやら考えている美智恵、妙神山について横島に説明する美神とおキヌ。そして

「わしらは忘れられているの〜マリア。」

「イエス・とりあえず・出番・これだけ。」

忘れさられた二人だった。




みんなが帰った後の病室で横島は一人考え込む。
栄光の手と名づけた手甲を出してみる。

なぜこんなものを自分が出せるのか?

自分は何者なのか?

おキヌちゃんがやられそうになったときなぜ自分は大切な人達を二度と死なせないなどと思ったのだろうか?

二度とという事は前にも俺は大切な人を・・・?

しかしそれならなぜそんな大事なことを俺は思い出せないんだ?

横島の自分自身に対する疑問はつきなかった・・・。



今までの コメント:
[ 前の展開予想へ ] [ 次の展開予想へ ] [ 戻る ]
管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa