ザ・グレート・展開予測ショー

アシュタロス〜そのたどった道筋と末路(涙)〜おキヌ・ざ・すたんぴぃど・えんど


投稿者名:♪♪♪
投稿日時:(03/11/ 8)


「――!?」
 逃げて、逃げて。
 逃げて逃げて逃げ抜いて――おキヌちゃんがたどり着いたのは。
 神の悪戯かあるいは悪魔の導きか――都市計画の不備ゆえに出来た、袋小路。背中に背負った荷物ゆえに、壁抜けが出来ない彼女にとって、そこは窮地と呼ぶに足りる場所であった。
 あまりの状況に呆然とするおキヌ。


 ざっ!


 アスファルトの上に撒かれた砂を踏みしめる音が、彼女の意思を彼方から呼び戻した。
 恐る恐る振り返り――硬直する。


 ふしゅ〜〜〜〜〜〜〜っ……ふしゅしゅるるるるるるるるるるるるるる〜〜〜〜っ


 すっげー不気味な鼻息の音をさせ、鼻血と耳血、血の涙すら流して。
 広げた両手はわしわし蠢き、魔界のし最高指導者ですら裸足で逃げ出しそうな不気味な妖気を放つ。


「今! 私と! 夢と! 愛と! 肉欲と! 官能の世界への扉を! 共に!! 開こうではないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 変態魔王アシュタロスがそこにはいた!
 圧倒的な存在感! 圧倒的な恐怖感!


 おキヌの心を粉砕するような『それ』は、一歩一歩近づいてくる!


「さあ!」

 ざっ!


「さあ!」


 ざっ!


「さあさあさあさあさあ!!!!」


 何故か行っているボディビルのポージングが、恐怖心を更に煽る! 例えるならそう! 火の中にニトログリセリンを流し込むように!


 アシュタロスとおキヌちゃんの、彼我の距離が5メートルを切った瞬間。






 ぷっちんっ






 おキヌちゃんの中で、『何か』が切れた。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
 絶叫と行動は同時に行われる。おキヌは背中のリュックサックからそれを取り出すと、出力をMAXにしてアシュタロスにたたきつけた!


 ちょうど、両腕で力瘤を作るようなポーズをとっていたアシュタロスは、その一撃をもろに受けて――


 ぴばしぃっ!!!!!!!!!!!!


「ぶほふぁふぁげぶぁらべはげべひひゃふぉぉっ!?」


 感電した。
 いや、感電どころか、全身が炭化し始めている。
 魔人黒こげにするスタンガンって一体……? 美神令子よ、あんたはこんな物騒きわまるもの清廉潔白な乙女に持たせてどうする気だった。


 それはともかく。
 十八禁の展開を期待した人は、残念でした。(笑)


 スタンガンを押し付ける事数分。


 ぼてっ。


 もはや、完全に炭化物の固まりになってしまったアシュタロスが、大地に伏せるのとまったく同じタイミングで、横島たちが現場に到着した。


「さぁぁぁぁてアシュさま〜? 覚悟はいいですかぁ?」


 目にも留まらぬ速さでアシュタロスを回収し、いずこかへ去っていくベスパの姿は、おキヌの視界に移っていなかった。ボクサーや天才に遭遇しパニック状態の人間のように、横島しか見えていない。


 混乱と興奮の渦の中に、おキヌはいる。そんな彼女の自我は、いきなり表れた思い人の姿に、先ほどは息した良案を思いだしていた。




 そんでもって。






「あなたを殺して私も死ぬーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
「どあーーーーーーーーーーーっ!!!!?」
 即座に実行した。(爆)
















 非情にもとっとと帰宅したルシオラたちの下に横島が帰ってきたのは、おキヌちゃんが落ち着き、自体が沈静化してから三時間後の事だった。
 がちゃり。
「あ、タダちゃんお帰り〜」
「ただいま……」
 抱きついて貧相な胸(口に出して言ってはいけない)を摺り寄せてくるルシオラに、横島が返した返事はありとあらゆる意味で疲れきっていた。


「ポチ?」
「ど、どうしたんじゃ小僧」
「大丈夫・ですか?」


 ゾンビのような顔色の横島に、のんきにゲームに興じていたパピリオ、カオス、マリアの三人は気遣わしげな視線を投げた。投げられた方は、ルシオラに全体重を預けて、


「あ、あの後……一キロにわたって全力疾走させられた上、半狂乱のおキヌちゃんをごまかしたりは全部俺の担当……
 これが大変で大変で。アシュタロスに追いかけられてた恐怖で錯乱して、『あなたを殺して私も死ぬ〜』とか叫びだすし」


 勘の異常発達したルシオラは、それだけでおキヌがライバルだと認識したが、口には出さなかった。ただ、預けられた体重を利用してさらに貧乳(失敬)を押し付けただけである。


「アシュタロスのことは親戚のおじさんって事で納得してもらったけど、大変だったなー」


 が、疲れているのか横島はリアクションを起こさない。
(やっぱり、胸ほしいなあ)
 毎年七夕に『胸が大きくなりますように』と短冊に記す乙女、落胆。


「まったく、ポチのいうとおり大変だったよ」
 後から帰宅したベスパも、疲れを全身で表し、パピリオの横に腰を下ろした。何故か、赤ん坊が入りそうな大きさの漬物桶を背負ってたりするが。


「で? 肝心のアシュタロスは?」
 話題の人の姿を見つけられず、カオスが問う。
 その実門に対するベスパの反応は。


 ひょい。
 背負っていた漬物桶を前に出して、


「アシュ様クラスの魔人になってくると、生首にした位じゃ死なないのよね♪」


 しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく……


 その台詞に答えるように漬物桶の中から聞こえてくる泣き声。


『…………ええっと』
 なんとコメントしていいかわからない一堂に、
「このまま明日まで漬けとくから、あけたりしないでね。腐ったお味噌と漬けてあるから、あけたら臭いし」
 苛酷かつ無常な台詞を口にして、桶を台所まで運んで言った。


 直後『上に石を置いちゃいやー!』とか、『釘を入れるのは糠漬けの糠味噌だー!』とか出所不明の叫び声が聞こえてきたが、無視した。


 係わり合いになりたくなかったし、基本的には自業自得だし。
 まあ、一緒に暮らす者としては、畳の掃除の手間が省けただけよしとする。

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