ザ・グレート・展開予測ショー

アシュタロス〜そのたどった道筋と末路(涙)〜おキヌ・ざ・すたんぴぃど6


投稿者名:♪♪♪
投稿日時:(03/11/ 8)




「お、おキヌちゃん……もう見えへん」
「なんであんなに早いの〜?」
「――恋って偉大なのね」


 インダラを疾走させながら、鬼道、冥子、令子の三人は言葉をつむぐ。十二神将最速の式神が、一幽霊にまかれるなどありえていい話ではない
 基本的に一人乗りのインダラに、三人も乗ればマックススピードが出ないのは当たり前。当たり前なのだが……それでも、並みの車など比べ物にならない速度が出せるのだ。
 何の変哲もない(物に触れる時点で、十分普通じゃないが)幽霊がそれ程の速度を叩きだせるのは、最早異常以外の何者でもない。


 まさに、令子の言うとおり、恋は偉大である。『愛』よりも。愛は恋の進化系であり、恋には未熟ゆえの危険性が内包されている。
 読者諸氏が普段口にしている梅干も、熟す前――青梅の時は、青酸カリを内包した毒物なのだ。同じように、恋には危険な精神効用作用がある。
 古今東西どのようなギャグ漫画であっても、コイスルヲトメは無敵で過激なのだ。


「しかし、こう言ったら何やけど……横島のどこがいいんや?」
「さあ〜? 冥子わかんな〜い」
「多分、永遠にわからないでしょうね」
 ……なんか、皆さん手ひどい事を口にしまくった上、誰一人として横島をフォローしようとしない。
 言われる内容の大半が的を射ているのがいと悲し。




「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 悲鳴を上げながら逃げるおキヌちゃんと三人がすれ違ったのは、丁度その時だった。おキヌが横島に惚れる理由という、一件簡単に見えて奥が深すぎる議題を真剣に考えてしまった為、思考の泥沼に陥っていた三人は、すれ違うまでおキヌの存在に気付けなかった。


「お、おキヌちゃん!?」


 その反射神経と動体視力ゆえに、すぐさま背後に向き直る鬼道。
 それがいけなかった。
 反応できずに、おキヌちゃんが来た方向を向いたままの令子達との差が、命運を分ける。
 その差異とは――





















「巫女さんと一緒にランデヴー!! うちの大家さんちょいデブー!!」




























 こ の 変 態 に 気 付 け る か ど う か ! ! ! !


『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
 乙女の本能で、不気味な歌を口ずさみながら爆走してくるマッチョメンに無尽蔵の恐怖を感じ、とっさに真横に飛ぶ二人。この怪奇生命体を認識したくないあまり、二人は相手の情報を徹底的にシャットアウトし、相手が放つ魔力にまったく気付かなかった。


 二人はよけた。
 ならば、あさっての方向を向いていた鬼道は?


 鬼道が、禍々しい気配を悟って振り向いたとき。
 視界を埋め尽くしたのは、アシュタロスが放つ無数のこぶしだった。




「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ぶべらぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?」


 魔神のパワーで轢逃げどころか、とんでもない速度で嵐の如きラッシュを叩き込んだ!


「我が清楚への道を妨害するのなら容赦はしない!!!!」
 暴走アシュ様……男に容赦無し!!


 きらきら光る液体を撒き散らしながら、きりもみ回転などしつつ大きく弧を描いて落下していく鬼道。
 われに返った令子たちが見たものは、無様に着地し、ぴくぴく痙攣する鬼道の姿だった。


「い、いや〜〜〜〜〜〜〜〜! マーく〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!?」
「い、犬神家の人々……!」


 そういう感じに頭からマンホールの中へ。蓋は、アシュ様によってぶち抜かれたらしい。


 美神令子という女性に降りかかる不幸は、これで打ち止めになる。
 それが幸運か否かは、誰にもわからないのだが。


「ふぇ……」
「あ゛!?」
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ! まぁく〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!」


 ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!!!!


 冥子の内側にある感情の堰が粉砕されると同時に、影に封印された式神達の堰すら粉砕されて、一気に暴走へ突入した!


 巻き添えで吹っ飛ばされる令子。崩壊するあたりの建造物。鬼道だけが攻撃されなかったのは、ご愛嬌という奴である。
 重ねて言おう。
 彼女に降りかかる不幸は、これが最後である。
 え? 意味がわからない? じゃあ、言い方を変えましょう。






 美神令子の『おキヌ・ざ・すたんぴぃど』における出番はこれで終わりである。






「アシュタロス〜! 大家さんの事はもう言ってやるな〜〜〜〜〜!!」
「ウフフフフフフフ♪ どうしてやろうかしらあの馬鹿♪」


 遠ざかる意識の中。
 令子は、横島の必死の叫びと、ベスパの恐ろしいささやきを聞いていた。

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