ザ・グレート・展開予測ショー

虹色の笛    〜〜〜〜(第十一声・前半・)〜〜〜〜


投稿者名:えび団子
投稿日時:(03/10/25)


――――想い―――― それは人が持つ唯一の宝物。
決して色褪せることのない、永遠をも想像させる産物。
故に消えること知らず彷徨い続けることがある。たとえ・・・叶わぬ願いだとしても、それが――――想い――――であるならば思念となり漂うことになりうる。




         お願いっ・・・まだ・・・逝かないで!!




ここは、多少は有名なチェーン店で階段などでは、とてもじゃないけど最上階まで行くことは無理な程、都市の一部となっていた。毎日、大抵どんな時間も他人がいて、絶えることなく物品の供給や消費が繰り広げられている場所。様々な人種もいるし思想を持った人達が共存している場でもある、だからこそだが問題が生じるなんて日常茶飯事。どちらに非がある云々はともかく、うやむやになって終わるってことも・・・









「えっ、けど赤ちゃん何て・・・」


横島がおキヌの発言に対し明らかに否定の言葉を返す。


「きっと、あの人・・・赤ちゃんに逢いたいんですよ・・・」


哀しげな、うっすらとだけど瞳が潤んでいたおキヌちゃん。
しかし、分かっているとは思うが『あの幽霊』の赤ちゃんは、おそらく・・・
もうこの世にはいない。それは彼女も分かっている筈だ、伊達にGS見習いをやっていないんだから。それでも、そう言うのか?

横島は自分で考えられる限りでは、この手の霊は話し合いどうのこうのでは解決出来ないことを今までの経験で知っている。幾つもの悪霊を美神さんたちと一緒になって見てきたし己の手で除霊もしてきた。だから辛いのだ。可愛い大切な存在を失ったことを受け入れることは思ったほど簡単でないことを彼は自らの身で体験済みだった。

俺は・・・

下すしかない決断を。確かに相手の霊はとんでもない美人である。
肉体がないことが非常に残念ではあるが、生きてる人に迷惑は掛けてはならない。
それはこちらの一方的な都合かもしれないけど、それでも。GSって時点で仕方が無いことだ。


「おキヌちゃん、悪いけど俺が『あの幽霊』を極楽に逝かせてやるよ。」


普通に聞けば残酷なのかもしれない。霊にだって権利はあるだろ?
未練があるから、成仏した方がずっと楽なのに現世に留まっているんだろ?
それを踏まえた上で強引に除霊するんだから後味はかなり悪い、そして、哀しい。
正直こればっかりは何度立ち会っても慣れないし、慣れてしまったら終わりだ。




「俺が、完全に葬ってやる。もう絶対現世に戻って来れないように・・・」


顔を伏せて影を作り、右手に力一杯霊力を込める。


「待ってくださいっ!それじゃあ『あの人』は満足して成仏できませんよ!!」


おキヌが横島の腕の服を引っ張って作業を止める。


「けど・・・無理だってことは分かるだろ?」


「・・・・」


何も言葉が出ない、おキヌは己の無力さを呪った。今、自分の目の前で苦しんでいる霊がいるのに・・・それなのに何の手助けも出来ない。成仏って簡単に口にするがそれほど簡単なものじゃない。満足出来ずに成仏してまったら、後悔の念に駆られる。永遠の時の中に取り残された感覚、それは決して耐え切れる代物ではない。




『いやああああああぁぁあああぁあああっ!!!!』




霊圧が倍加し身体が後ろに反り身になり数歩後退する。




『返してえええぇぇえええぇっっ!!!!!!!!』




眼前に迫り来る歪んだ空間。両手で庇うが重力に似たものに吹き飛ばされそうになるのを全身で感じる。既に電撃のような霊波が具現化され肉眼ではっきりとそれが認識出来る。ポルターガイストの力も徐々にだが威力を増してきて建物自体が振動し始めた。




――――――――ガタガタガタガタガタガタッ!!――――――――




「分かるだろっ!?これ以上はレッドゾーン何だっ!」


足元がふらつきバランスを一定に保つのが困難な状況で横島は再び右手に霊波刀を出現させる。左足を前に出し膝をクンと落として体勢を作る。


「私は、私は・・・」


「俺だって辛い、けど『あの人』が現世に留まって・・・戻ってこない人を待ってて、ずっと苦しんで。その結果少なくとも俺は幸せになれるとは思わないんだ。」


何も、方法がないの・・・?


横島の右足がじりじりと後ろに下がる。床と靴の摩擦で高い音が響いた。


「あの世に逝って楽しくやってくれ、もしも次に転生してきたら・・・」


本当に何も、方法がないの・・・?


「絶対、口説くからさ。・・・可愛い子に生まれ変わってな。」


もしも、赤ちゃんを連れて来られたら・・・


左手に文珠が輝き出す。指の間から漏れる光は辺りを一瞬明るくし、
『速』という文字を刻みこむと光は手の中に静かに収まっていった。


――――?!――――


「さよなら・・・何て言わない。また、次にあんたと逢うんだからな!」


文珠の効果が発動し中級程度の霊なら見切ることすら、捉えることの出来ない速さで一直線に突っ込んでいく横島のその右手にはしっかりと鋭い刀が放射されていた。


『私のおおおぉぉおおおぉぉぉおおおおっっ!!!!』


両腕をばっと開けて突進する横島を迎え撃つ『あの人』白い清潔な服も見る影もなく薄汚れていて、手などもほっそりとし皮と骨。長い髪が宙に舞い乱れ、それでも瞳は子を想う優しい・・・優しい母親のものだった。


「待ってください、横島さんっ!!」


横島と母親の幽霊の間に立つおキヌ。彼の方に向き両腕を守るように広げた。


「・・・っ!!?おキヌちゃんっっ!!!!」


急の事で驚く横島。スピードが十分に乗っていて自力で止まるのは不可能と判断し瞬時に『止』の文珠を創り出す。




――――――――キイイイイィィィッ!!!!――――――――




火花を飛ばしながら寸前のところでストップする横島。


「どうしたんだよっ!!?この人をこれ以上苦しませない為にも、酷いようだけど方法はこれしかないんだっっ!!!!」


哀しみを押し殺した怒りの交じった声でおキヌに怒鳴る横島。


「方法はありますっ!!」


――――!!――――


横島は唖然とした表情でそれを聞いた。そして・・・














                 後半に続く    

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