ザ・グレート・展開予測ショー

#GS美神 告白大作戦!「トワイライト≫パラドックス」


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(03/10/ 8)

 『逢魔が時』:1.夕刻、黄昏。2.人(昼の民)と魔(夜の民)が出会う時。


 さて、この話は横島忠夫の体験である。あまりどうということもない、他愛ない話。
 今日も今日とて、彼はナンパをしていた。極論すればそれだけの、事件性は皆無の話。
 そうはいっても特別性があったからこの場で語ることとなるのだが、それは不自然で
不自然すぎて、本当にあったことなのかどうか。それは、あなたの判断に委ねたい。
 前置きが長くなったことを不愉快に思うのならば、それは釈明のしようがない。
 前置きが長くなったことを不安に思うのならば、心配は要らない。
 前述したように、その出来事は実に日常的な、極些細な、事故ですらない事象。
 だから、詳細な記述を必要とはしないだろうし、無理に語れば陳腐になる。
 つまり、語り始めれば、一瞬で終わる。なので、軽い気持ちでお付き合い願いたい。

 本題に入ろう。その日、仕事がオフだった横島は放課後いっぱいナンパしていたのだ。
 そろそろ日も傾き始めた午後5時27分。その日823人目の標的を選別していた。
 そして彼女を選んだのだが、実に軽い気持ちだった。
 今日だけで822人にフラレているのだ。いまさら選り好みしろというのが無理である。
 単純に、822人目にウルトラアルゼンチンバックブリーカーを極められ
失神から回復した時に最初に目に入ったと、それだけの、脊髄反射に近い理由。
 桜色のワンピースに、朱色のケープの、柔らかそうな、ショートヘアーの細身の女性。
 彼は自分の気持ちを女性に告げた。ウソ偽りなく。
「ずっと前から、愛してましたァァァァーッ!!」
 一目見たその日から、過去のすべてを彼女のために過ごして来れるのが彼の才能だ。
 なんという酷薄な告白。なんの覚悟も熱情も必要としない、脆弱な表明。
 彼女は、真っ赤な夕日に向けた顔を真後ろの横島に向け、影に包まれながら笑う。
 横島には、墨汁でも落としたように、完全に彼女の表情が見えなかったのに、判る。
 確かに彼女は、優しく微笑み、告げたのだ。
「ずうっと前から



                    ウソでも構わない、その言葉、待ってたわ」
 それだけを、彼女の声が、想像以上に柔らかく告げる。
 同時に、オレンジ色が支配した単色の世界を、群青色の闇が塗り潰していく。
「あれ?」
 横島の胸に去来する、小さな穴、虚無。心が、欠け落ちたような。
 夜の訪れを、安堵するような、空しく思うような。
 昼日中に、なんがしかの未練があっただろうか。
 自分の身体を思わず見下ろし、しかして何一つ欠けることない自身を確かに認め
もう一度彼女を見返した時、そこには、容があると言える何者も残らず、唯一
――ひとすじの、淡く、瞬く、人の夢と書くような、ひかり...
 横島自身は、この時すでに、この出会いを忘れていた。


 『逢魔が時』:『大禍時』とも。


     1.夕刻、黄昏。







                    2.人と魔を
                            接なぐ時間。


 これで、この話は一応の終了を見る。
 とても短く、そして不自然すぎる話。あなたの心の慰めになれただろうか。
 最初に予告した通りであると自負している。
 この話は、いびつで、つたなく、あまつさえパラドックスしている。
 その手で消し去った者に、安易な償いが可能だなどと、夢物語もいいところ。
 しかし、この世に生きる惰弱な人類に、魂の慰めが必要という、世界そのものが
パラドックスを起こしていると考えれば、こんなくだらない物語も、多少は救われる。

今までの コメント:
[ 前の展開予想へ ] [ 次の展開予想へ ] [ 戻る ]

管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa