ザ・グレート・展開予測ショー

不思議の国の横島 ―13前半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/10/23)

俺には特別な人が2人いた。
別に、その他の人たちがどうでも良い存在って訳じゃない。特別な人って言い出せば、俺にとってはどいつもこいつも特別な人たちだってのは一緒だ。
でも…
それでもやはり、特別の中にも更に特別ってモンがある。
そして俺には、その特別の中の特別って人が2人いた。
「いた」って言い方を使うのは、今は特別じゃないっていう意味じゃない。
それは…今はもう、傍にいないって事……
1人はついこの間、俺の傍から離れた。もう1度会えるのかどうか分からない…言って見れば生き別れって状態だ。
そしてもう1人は………………

―― まぁ…な? ――

この、あっちの世界とは色々と違うようで、実は意外に共通点の多い不思議な世界。
俺はもう、何人もの向こうの知り合いと出会っている。そろそろ流石に慣れてきた。
よっぽど意外な出会いでもなければそんなに驚かないはずである。
でも…
この人だけは別だ。
ああ、特別なのはあっちの世界での話ってのは理解してる。それでも、それでもさ?
こうしてその人が目の前に現れたってのは凄い驚きで、とても俺は平静ではいられない。

―― 美神令子 ――

俺にとってこの人は、あまりにも特別すぎた。










―― パンッ! ――

「?!!」
「………………」

俺は今、何をした?

「ちょ!?何すんのよっ?!」
「馬鹿やろうっっ!!!」

俺は今、何を言おうとしている?

「そんな言葉、簡単に使うんじゃねえぇっ!!!!」
「!!」

おーーーい!俺はなんでこんな事を言ってるんだーーーぁっ!?
俺は自分の行動に唖然とする。だが、そんな俺とは無関係であるかのように「俺」はとてつもない事をしていた。
少しだけジンジンとする右の手の平。左の頬を押さえている美神さん……いや、令子ちゃんかな?
そして口をついて出てくる怒声。
俺はなんだって…

―― 頬を張って説教なんかしてるんだ?! ――

相手は、いくら高校生くらいとはいえアノ美神さん。
いったい全体、俺が何を説教してやると?!
いやいやいやいや!
今、目の前にいる娘は美神さんだけど美神さんじゃない。強いて言うなら令子ちゃんだ!
俺の方が年上で、この娘はまだ未成年だろ?
別に俺が説教くれたってそんなにおかしい話じゃ無いじゃんか?

―― 馬鹿野郎ぉっ!! ――

問題はそこじゃねぇっ!!
怖ぇえんだよっ!!?心の底から怖ぇえんだよ俺はっ!!!
美神さんの頬を平手打ち?

―― 命が終わるっ?!! ――

嫌だぁぁぁぁっっ!!!

「何よっ?!アンタにそんな事言われる筋合い無いじゃない!?」
「ふざけんなガキッ!!」

ふざけんな俺ーーーぇぇっ!!?
何でだ!?なんでこんな展開になっちまったんだよっ?!!
俺の思考と行動は、面白いくらい離反していた。
頭の中と体の動きがこんなにバラバラだなんて…

―― 俺って結構器用だな? ――

だから、そうじゃねぇだろーーーぉぉっ!!?
もう…滅茶苦茶やん?!

―― なんで?どうして? ――

俺はちょっと前の事を思い出してみる…

………………










「それにしても、横島さんって凄い霊力ね?どうやったらそんなに強くなれるの?」

俺は地べたにへたり込んでいる令子ちゃん(こう呼ぶ事にした)に手を差し伸べ、軽く引っ張って立たせてあげる。

「そ、そうか?いや…でも霊力の多さとGSとしての強さは比例しないんだぜ?」
「そうは言っても、やっぱり霊力高い方が有利じゃない?貴方の言いたい事は分かるけどさ…何だかんだ言っても、除霊するのに一番必要なのって霊力でしょ?」

令子ちゃんは、俺の言葉を肯定しつつもそう付け足して述べた。
でもって、確かにこの意見は正しい。
基本と言うなら、やはり霊力。
霊力ってのは電池のようなモノで、霊能力者のエネルギー源だ。瞬発力、持続力が高い方が何をするにしても有利なのである。
同じ技や道具を使ったとき、霊力が高い方が単純に大きな力を出せるのだ。

「まあ、その通りだけどな。こればっかりは生まれつきの部分も有るし……っても、君はその生まれつきの部分で他の奴よりも、数段有利な位置にいるって気が付いてる?」
「え?」

令子ちゃんの現時点での霊力は十分に高いと思う。
美神さんの家は美智恵さんをはじめ、代々優秀なGSを排出してるらしいから、これは生まれついた血の力ってやつだ。
俺の知る限りでは、その血の力ってのが一番霊力の高さに直結してるのは冥子ちゃんだろう。はっきり言ってあんな式神を12匹も扱える霊力の高さってのは恐ろしいものがある。
実は瞬発力でなら俺もかなりのモンだが、瞬間的な霊力の高さがどれだけ有っても式神は扱えない。大事なのは高出力を長時間安定させる持続力だからだ。
ま、冥子ちゃんはその「安定」ってのが上手く出来ないから、いっつも暴走させてんだけど……

「俺の見たところ、君の霊力はまだまだ伸びるよ。今でも霊力は結構高い方だけど…君はこれからきっと、もっと強くなる。少なくても俺くらいにはなれる。」
「え、え?」

これはちょっとだけ推測入れた話。でも、多分正解だろう。
なにしろ美神さんだからな。きちんと修行して伸びれば、あっちの美神さんと同じだけの強さにはなるはずだ。

「でも!私だってこれでもきちんと修行してるわよ?!そりゃあ、まだまだ強くなる余地はあると思うけど!それでも貴方と同じくらいだなんて?!ちょっと……信じられないわ………よ…」
「ん?なんだよ……随分弱気なんだな?らし……いや、もっと自身持っても大丈夫だぜ?」

危ない危ない、らしくないは駄目だろ。初対面なんだから。でも、なんとか気づかれずに済んだ様だ。
は、良いとして。何故か令子ちゃんは俺から視線を逸らしてうつむく。
なんだか、随分としおらしいな?この令子ちゃんは?
俺はてっきり「当然よ!私は負けっぱなしなんて絶対嫌なんだから!」とか言ってくるかと思ったのに。

「だって………私、ママに……」
「ママ?」

ママって事は、美智恵さんのことか?美智恵さんがどうしたんだ?

「私のママって、オカルトGメンの……この間、日本支部の長官ってのになったんだけど……」
「え!?」
「え?…な、何?!」
「あ、ごめん!何でも無いから!続けて続けて!」

この世界では美智恵さんは存命なんですか?いや、向こうでも結局は死んだ振りだったんだけど。
そうかぁ…じゃあ、この令子ちゃんってやっぱり美神さんとは違ってて当たり前なのか?
美神さんにとっては、美智恵さんが死んだ(と思っていた)のが凄く大きな出来事で、その後の人生に影響与えてたし。
なんだか、美神さんて美智恵さんに対しては甘ったれだった部分もあったしな。
ずっと美智恵さんと一緒に暮らしてた美神さんっていったいどうなるんだろう?

「ママはね、本当に凄いGSなの。私じゃあ……どうやってもママには敵わないわ。いつも近くで見てきたから分かる。でもね、ママも他の人も………」
「………………」

ああ、これはあれか?
身近に優秀な人間がいるとコンプレックスで自分が見えなくなってしまうってやつ。
令子ちゃんは両の拳を硬く握り、歯を食いしばるようにして言葉を搾り出す。

「…みんなさ……私に過剰な期待しすぎなのよ!私はねぇ!ママみたいにはなれないの!だって…」
「ちょ、ちょっと待ち!!」

令子ちゃんは話していくうちに感情の高ぶり画段々と押さえきれなくなったようだ。
俺はそれが爆発する前に令子ちゃんにストップをかける。

「ちょっと待って!随分根が深そうな話だけどさ…そんな話を俺にしても良いのか?!良く思い出してみ?俺達ってさっき会ったばっかだぞ?!」

俺の意見に、令子ちゃんは続けようとした言葉を飲み込むと…

「……ん、すぅー………はぁー…」

激昂した気持ちを抑えるように、大きく1つ深呼吸をした。



<後半に続く>

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