ザ・グレート・展開予測ショー

いつかOXOXする日―ザ・ダブルブッキング(14)


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(03/11/ 5)

その、首から上が「馬」の男はメドーサを羽交い締めにした。

「なっ・・・何をするんだい!?ナイトメア!?」


「ば・・馬頭副センター長補佐!」


「な、何だってぇーーーっ!?」

「“他人の空似”なんじゃない?ブヒヒン!」



「他人の空似」と言われても、どう見ても「僧衣を着たナイトメア」以外の何者にも見えない。
・・・口調も同じだし。

「馬頭副センター長補佐!」 「副センター長補佐!」 「あっ、副センター長補佐さん!」

「ちょっと、ボクの役職フルで呼ばないでよ!何となくみっともないじゃない?ブヒッ。
・・・第一段階、やっておしまい!!」


馬頭副センター長補佐の号令と共に、上部スロープの非常口から大きな機械をいくつも運び込んで来ていたセキュリティやJナンバー職員たちが一斉に電源を入れる。
ドーム内を無数の小さな稲妻が走り、メドーサとルシオラとに集中した。メドーサの動きも、ルシオラのエネルギー放出も完全に封じられた。

「対象固定完了!!第一段階完了!!」

「第二段階移行!!異界反転モジュール、サポートデバイス、加速粒子照射器、コントロールボックス、搬入!!」

広場四方の職員用出入口から、大小様々の機械を手にし(ある者は数人がかりで持ち、あるいは車両に積んで)Jナンバー職員が多数入場してきた。先頭のJナンバーがルシオラに呼びかける。

「ルシオラさーん!!まだ、意識、ありますかぁーー!?」

「・・・ジ・・J・・255・・1A・・さん?」

「対象以外退避!!モジュールとボックスをメイン転送器へ3号接続!!
対象の位相に合わせ、三角形空間穿孔!!素子軽質化!!」

ルシオラとメドーサの近くにいたセキュリティが一斉に退避すると、彼女たちの足元に異界への穴が正三角形に展開され、二人は固定されたままの姿勢で宙に浮かぶ。
J−2251Aが声を張り上げる。

「静粛に!!静粛に!!馬頭副センター長補佐権限による特務の作業です!!
センター内不祥事により生じたダブルブッキングとそれに端を発した全ての異常事態hの収拾と状況修正を行います!!」

「穿孔、軽質化完了!!第二段階完了!!第三段階へ移行!!」

「転移素子流動化!!メイン転送器よりモジュールバッテリーへの出力供給!!」

二人の下の三角形から無数の光の粒が規則正しく上へ流れて行く。その中でメドーサは怒鳴った。


「何だ!?一体、何をするつもりだ!?」

「ブヒヒン・・慌てるんじゃないわよー?何をするかは、これからこのボクが読み上げるんじゃない?
――えーっ、当、退蔵界輪廻庁転生管理センターはこの度のマニュアル不備と職員の怠慢により生じたダブルブッキング・及び転生者の心情に対し著しく配慮を欠いた事後策により今回のトラブルを招いたものと考え、遺憾の意を示すと共に転生者No.           メドーサさん、No.          ルシオラさんに深くお詫び申し上げる次第であります。
つきましては、特例として、センター内規32505号に基づき非マニュアル収拾案を用意し、また、事態の悪化に伴う他転生者の権利が侵害される可能性を懸念して、速やかに収拾案の実行に取り掛かるものとなります。ヒヒン・・
収拾案内容は以下の通り―――。」

その後に続く「内容」が読み上げられた時、メドーサとルシオラは同時に叫んだ。


「何だってえ――!?」
「何ですってえ――!?」


「尚、緊急対処である為、この案件に関する異議・質問は一切受け付けない。
センター長の承認を得次第、即、実施するものである。」

「ちょっと待てえええ―――!!そこのウマヅラぁ!!」

今度は声を合わせて叫ぶ二人。
周囲の職員たちの間からもざわめきが起こった。


「“センター長の承認”・・だって?・・・呼ぶのかよ?センター長を?」
「確かに、これだけの事、センター長の許可は要るだろうさ。」
「やべー、心の準備できてねえよ・・でも俺らはまだいいさ。他のエリアの何も知らねえ奴等からしてみれば、いきなり・・・」

J−2251Aが突然、宙に浮いた。全身から緑色の光を放っている。
彼の背後の空間に半透明のディスプレイ画面が浮かび、文字が表示される。

<副センター長補佐権限にて、只今より、センター内規01022号に基づきセンター長を召喚し、その意思確認を行います。>

J−0392Cが、3419Kが、ドーム内全ての、否、センター内全ての何万人ものJナンバー職員が動きを止め、緑色に発光した。

「センター長召喚開始!!所要予定時間、7秒!!」
「バッテリー充電完了!!位相確認異常無し!!第四段階移行準備完了!!」


J−2251Aの背後には様々な標示がめまぐるしく浮かんでは消えた。


<当事者に関する全データ 送信率72・・84・・100% 配布率97・・100%>
<事態の流れに関する全データ 送信率93・・96・・99・・100% 配布率98・・99・・100%>
<担当職員・収拾案関係者全データ 送信率69・・81・・100% 配布率92・・100%>
<収拾案内容全データ 送信率93・・100% 配布率100%>
<全データ配布完了 3秒経過>

<全Jナンバー職員における収拾案の是非考察
適切10・・12・・13・・ 不適切・・7・・9・・11・・ 無関心・回答不能20・・31・・44・・
適切17% 不適切11% 無関心・回答不能72% 回答率28% センター長意思表示可能状態
4.5秒経過>

<センター長 召喚>

J−2251Aの緑色光が強くなり、ドーム中の、センター中のJナンバー職員が緑の光線で繋がった。
彼の背後のディスプレイが消失し、ぼやけた立体映像が出現する。瞬く間にそれは精度を増し、
巨大なJナンバー職員の姿・・・いや・・転生管理センター長、地蔵菩薩の姿となった。

「・・退蔵界輪廻庁転生管理センター長の権限で上記案件を承認する。」

それだけ言うと彼の姿は掻き消えた。
J−2251Aの背後に「7秒経過 TIME OUT」の表示。
同時にJナンバー職員を包み、繋いでいた緑の光も消え、J−2251Aは気を失った状態でそのまま床に落ちた。



「GO!!」  「GO!!」  「GO!!」  「GO!!」
ガシャッ    ガシャッ    ガシャッ    ガシャッ


スロープ上、広場で、ルシオラとメドーサを包囲していたJナンバー職員が一斉に機械のレバースイッチを重そうな音と共に入れる。
中央の円柱―転送器―に何本もの光の縦筋が伸び、同時にルシオラとメドーサの浮かぶ三角地帯に光の渦が発生する。二人の全身が発光し、その姿がぶれ始めた。

「―――――!!!」

「―――――!!!」


ルシオラは目を閉じている。何かを祈っているようにも見えた。

メドーサは最後に大声で悪態をついた。

「チキショウーッ!!絶対納得いかない!!
なんで生まれてもいない内からこうマヌケな事が続けて起きるんだよ!?」


次の瞬間、二人の身体は眩い白色光に包まれて分解した。
その中から激しい勢いで二つの小さな光の球が飛び出して来た。
球はそのままもつれ合いながら円柱を廻るようにしばらく上昇していたが、中空で姿を消してしまった。


「転送完了。周囲の空間変調なし。非正式機材による位相指定型臨時転送作業を終了する。」


床に倒れたままだったJ−2251Aは意識を戻して起き上がる。
周囲の様子から「全てが終わった」事を悟り、二人の去って行ったドームの上部に顔を向け、しばらくそうしていた。



(続く)
―――――――
何か最後に来て読み手任せな書き方になってるような・・・。
どこでルシオラとメドーサの関係が逆転しているのか分かりずらいかもしれないです。
それと、二本立てのつもりで書いてたら、長すぎエラーになったので強引に三本に分けました。
何はともあれ次からはエピローグです。
当然ながら「彼」は出てきます、彼以外にも色々と未来編で。
あと漫画史上に名を残す「特別ゲスト」がいたり。

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