ザ・グレート・展開予測ショー

悲劇に血塗られし魔王 11


投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/10/30)

「ちょっと、どこに行くのよ!!」

「着けば分かるでござる!!」

「着けばって・・・・ん、もう」

人間界、あれから・・・・・横島が死んでから一年がたった。
その間に起きた事は小さいようで大きな出来事の数々だった。
美神令子は昔ほどお金お金と言わなくなり周囲を大層驚かせた。
氷室キヌは昔と変わらずの笑顔を浮かべているが時々物憂げな表情を浮かべるようになった。
美神美智恵はGS協会の何度もの説得を拒否し「娘の育児に専念したい」という理由で退職をした。
唐巣神父は美神美智恵から横島の死を伝えられてからというもの、教会で必ず冥福を祈るようになった。
他の西条・雪之丞・ピート・タイガー・エミ・冥子は相談の結果、横島は両親と共に海外に住むことになったという設定の下、皆に伝えられた。
もちろん、様々な不平(特に雪之丞・ピート・タイガー、ちなみに西条は「これで令子ちゃんは俺の物だ」と高笑いしていた)がでたが、あくまで不平が出たで留まった。
では、シロとタマモはというと・・・・



「ねえ、なんで修行なんてやんなくちゃならないの?」

美神の事務所を飛び出し、修行に出ていた。
飛び出す間際美神に見つかってしまうが、美神はあえてそれを止めようともせず一言「いつでも帰ってきなさいよ」と言って逆に送り出してくれた。

「強くなる為でござる。っと、着いた。」

シロは駅からずーっと目的地まで走り通しだったが息は乱れていなかったが、タマモは少々息があがっている。
タマモは息を整えると、シロが目的地と称する場所を眺めた。
湖があり、その湖畔には花が所々で咲いている。
また日光の良くあたる場所という事でそれを反射してキラキラ光る湖の水面は中々に綺麗であり、バックにある山は良い感じで光景の良さを盛り立てる。
シロとタマモはその様が良く見えるそれ程離れていない何も無いただ少々草の丈が長い平原にいた。

「良い所じゃない」

シロが決めた修行地なだけに不安は尽きなかったが、着いてみれば結構良いところなのでタマモは内心安堵する。

「そうでござろう。幼い頃に何度か来た事があったのでござるが、この景色の良さは忘れられなかったでござる。」

エヘンと胸を反らすシロ。
そんな普段どおりのシロの態度にやはりタマモは疑問を抱かずにはいられない。
普通なのだ。
横島が死んでから5日程自室に閉じこもっていたが、いざ出てきて蒼白な顔をしているかと思えば「お腹が減ったでござる〜」とただ余りの腹の減りように気分を悪くした普通のシロがそこにいたのであった。
皆は山場を乗り越えたと一安心していたし、タマモもその時は安心した。
それからの日々、シロは横島がいた頃のように元気に行動していた。
皆、そんなシロの元気な様に助けられていたので事務所の暗い雰囲気も幾分和らいだのだが、それでも暗くなるときがありそんなある時に、

「どうして皆、暗いのでござるか」

シロがそんな事を言った。
それに皆がびっくりしたのはいうまでもない。

「どうしてって、なんでそんな事聞くの?」

美神は、そんな事聞かなくても分かるでしょと言外に言う。
しかし、シロは?と首を傾げる。
そんなシロの様子に皆は初めてシロの様子が変なのに気づいた。
シロがこの重い雰囲気の原因に気づいていない。
それは有りえてはならないことだった。

「シロ。あなた、横島君の事覚えてる?」

シロは実は横島への思いが断ち切ったのではなく、ショックの余り横島を忘れてしまったのではないか?
そんな事が美神の頭をよぎった。

「なんで、拙者が先生の事を忘れるのでござる」

シロの言葉に幾分気が楽になる。

「じゃあ、・・・・・」

言いかける美神に、シロはようやく合点がいったという感じで言葉を遮る。

「ああっ、先生のことで暗くなったのでござるか」

それならそうと言って下され、とシロは笑う。
なんだ、覚えていたのか。
皆の安堵のため息が漏れる。
・・・・・タマモを除いて。

「ねえシロ、なんで修行なんかするの?」

タマモは再度シロに問いかける。
シロはポケッとした顔で、

「強くなる為と言ったでござろう?」

耳でも遠くなったかとシロは笑う。
でも、タマモは真剣だった。

「じゃあ、言い方を変えるわ。なんで、強くなる必要があるの?」

シロは何でそんな事を聞くのかと言う感じでタマモを見つめるが、タマモの真剣な表情に変化はない。
シロはふぅーと溜息をつく。

「タマモは強くなりたくないのでござるか?」

「強くなりたいわ。」

「じゃあ、修行するのが一番ではござらんか。」

全く的外れの答えを返すシロに内心苛立ちを感じながらもそれでも辛抱強く問いかける。

「わたしが聞きたいのは、その動機よ」

「動機でござるか?」

「そうよ。」

「うーん、拙者等が強くなれば美神殿達への負担が減るからでござるかな?」

何故か疑問口調になるシロ。
それをタマモは見逃すわけも無かった。

「嘘」

「うっ」

「本当のことを言いなさいよ。」

問い詰めるように一歩また一歩とシロににじる寄る。
シロは気圧される様に後ずさる。
それがしばらく続いたそんな時、

「うわっ!!」

大きめな石に足がぶつかりバランスを崩してシロが倒れる。
決定的チャンス。
タマモはもう一度聞く。

「あなたの修行の動機は何?」

シロは転んで、それでも後ずさりながら

「なんでそんな事を聞くでござる」

と聞く。
その問いにタマモはらしくなく動揺する。
あなたの様子が変なのがきになるから。
そんな事を本人に言えるわけが無い。

「き、気になっただけよ」

思わずつっかえてしまう。
タマモのどもってしまった様子に興味を持ったのかシロは突っ込んで聞いてくる。

「本当に気になっただけでござるか?」

「あっ、あなたが後ずさりまでして逃げるから気になったってだけよ。」

言ってからその答えでは言外に言いたくないならいわなくてもいいわよと受け取られてしまうことに気づきタマモは少し焦る。
この問いには答えてもらわなくてはならないのだ・・・・・
そんなタマモの気持ちをシロは気づく事は無くただ、

(タマモがあせるなんて珍しいでござるな〜)

程度にしか思っていなかった。
シロは首を振り振り仕方ないでござるなと言う感じで・・・・・
でも、少し頬を赤く染めて・・・・・

「誰にも言わない事を誓うでござるか?」

「ええ。」

(その答えによってはね)

と内心付け加える。

「いいでござるか。一度しか言わないでござるよ。」

「分かったわ」

随分もったいぶらせるな、と思いつつもそれを顔に出さない。
シロはす〜は〜す〜は〜と深呼吸をすると、周りを確認する。
・・・・誰もいないっていうのに。
そしてタマモの耳に口を持っていき小声で言う。

「・・・・・・強くなって先生を驚かせるのでござる」

えっ、と問い返すがそこには既にシロの姿はない。
恥ずかしいあまり、辺りを爆走している。
その様子をただ呆然と見ているタマモ。





(シロ、あんた・・・・)






「先生、シロは頑張るでござるよ〜。先生も修行頑張ってくだされ〜」






・・・・・・・・シロの大きな声が辺りをこだました。



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