ザ・グレート・展開予測ショー

パラレル大作戦!! 誰が為に鐘は鳴る!1


投稿者名:★
投稿日時:(03/10/23)

「起きんか横島――ッ!」

スコーン!!

「!!」

 裂帛の気合と共に投げられたチョークが、居眠りをしていた不埒な生徒の頭に直撃する。

「わっ…、わあゅ!?」

 見ていた夢の内容のこともあり、思わず机ごとひっくり返る横島忠夫16歳。

「あ…なんだ、夢か…!?」

 寝ボケ眼で頭を振る横島に隣の席の机妖怪・愛子が少しあきれたような表情で話しかける。

『呼んでも起きないんだもん。また…』

「ヨコシマ、大丈夫?」

 その愛子の言葉を遮って、反対の席に座っていた芦蛍がかいがいしく横島を助け起こす。
 その様子を見てだんだんと表情が険しくなる愛子。
 また、そんな二人をタイガーは羨ましそうに、女子生徒たちはまた始まったと呆れたように見つめ、他の男子生徒は殺気をこめて横島を睨みつける。

「お、おう……」

 一方、こういった事態に全くなれていない横島はいつものような行動を取れず、結果として蛍と見詰め合うような体勢になってしまう。

「……ポッ」

 横島のりりしい顔(蛍ビジョン)に見つめられ、思わず頬を染める蛍。授業中だというのに、いい雰囲気になってしまう。
 何故かクラス全員がいるのにエッチな雰囲気の音楽が流れる。
 そして見詰め合う二人の視線が近づき、唇と唇が……。

プチッ!

『ちょっと、二人とも?今は授業中よ!真昼間からそんなことっ!不潔よ!不潔だわ!』

ドカッ!!

「ぐはぁっ!?」

「ヨ、ヨコシマっ!?何よ!邪魔する気?」

 何かが切れた愛子が横島に机を振り下ろす。
 折角のチャンス(?)を不意にされた蛍もむっとした表情で立ち上がる。
 すわ争奪戦か?といわんばかりの二人のやり取りに、皆に正気が戻る。

 ガンパレード状態になった。

「授業中に居眠りした上、教師に見せつける気か貴様!?この俺が独身と知っての狼藉かー!!」

「だめじゃないか!ヨコシマァァァ!!」

「百舌鳥の一刺し、受けてみるか!?」

「その言葉、宣戦布告と判断する!当方に迎撃の用意あり!」

「タイガー!生活指導室に連行しろ!」

「ううう…友達なのにスマンですノー!」

「お…おまえなんか友達やないわい!」

「バカばっか…」

 この混乱は放課後まで続き、結局、この日の午後は授業にならなかった。



 あの日以来、横島と蛍は二人一緒に事務所に通うようになった。
 とは言え、蛍の住むマンションは横島のアパートとは反対方向なので、横島が私服なのに対し彼女は制服のままである。

「GSかあ…」

「どうしたの?ヨコシマ」

 不意に生徒指導室でのやりとりを思い出し、思わず呟いた横島に蛍が前を歩いていた振り向く。

「ん〜、そーいやピートがそろそろ資格試験を受けるって言ってたな〜と」

「そういえばそんな時期よね、もう…。ヨコシマはうけないの?資格試験」

 他人事のように話す横島。
 だが横島も蛍も業界トップといわれる美神除霊事務所の人間である。
 そんなに無関心なことでいいのだろうか?そう思って訊ねる蛍であったが、

「ピートみたいのがうようよいるんだろ?その試験。俺には関係のない話だよ…」

 と、まるっきり関心がない。

「そうかしら?」

「そうそう。……ん?」

 そんなやりとりをしているうちに事務所が見えてくる。
 その事務所の前に、普段見慣れぬ高級車が止まっており、そのそばには黒服が二人、暇そうにしている。

「あッ!鬼門じゃねーか!」

『おお、横島…!』

「誰?ヨコシマの知り合い?」

『実は…』

「小竜姫さまああああああっ!!」

 蛍の問いかけと鬼門を無視し、神速の速さで事務所に駆け込む横島。

『あ〜、お嬢さん。へい…ヒィッ!!』

 無視された形になり、ぽつんとたたずむ蛍に鬼門が声をかけようとするが、彼女から溢れる殺気をもろに受け悲鳴を上げた。

「…ヨコシマ、小竜姫さまって誰?」

 魔族すら裸足で逃げ出しそうな(鬼は恐怖のあまり腰を抜かした)壮絶な笑みを浮かべ、蛍は事務所の中に入っていった。



「あら、横島さん!こんにちわ!」

 横島が応接間に駆け込むと、予想通り小竜姫がいた。
 妙神山での衣装ではなく、いつぞやの服装をしいるが、その格好でも妙に貫禄があるから不思議である。

「おおっ…!あいかわらずお美しいっ…!!またお会いできて光栄っス…!!」

「ありがとう」

 感極まったように小竜姫のことを褒め称える横島。
 対する小竜姫もまんざらではなさそうに微笑む。

「ぼかあも――!!かっ!?………」

 いつものように飛びかかろうとした横島が突然硬直する。
 そして、なぜか聞こえるゴジラのテーマ。

「ヨコシマ?ぼかあも〜、何?」

 聞きなれた声に横島がおそるおそる後ろを振り返ると、部屋の入り口には絶対零度の微笑を貼り付けた蛍が立っている。
 はじめて見る少女の登場に今ひとつ状況がつかめない小竜姫であったが、美神たちがとくに慌てた様子もないのでとりあえず状況を静観する。
 顔は笑っているが、眼は全然笑っていない蛍に睨まれ、横島は何ぞの蛙の如くだらだらと汗を流す。

「え、っと、これはですね蛍さん。溢れんばかりのリビドーの暴走というか、いわいる一つのコミュニケーションの形といいますか、とにかく悪気はないんでございましての候ですのよ?」

 しどろもどろになりながらも必死の弁明をおこなう横島。もはや文法というか、微妙に日本語になっていない。
 いつもであれば、この後デコピン一発で許してもらえる筈であった。
 普段は横島が他の女性に目移りしてもあまり怒らない(ヨコシマだからしかたないじゃない…とのこと)蛍であるが、自分のことを完全に無視されたことで本気で怒っていた。
 とてもデコピン一発ですむようには見えなかった。
 それを直感で感じている横島、キレた蛍を見るのはこれが初めてとなるが、令子の折檻と同等かそれ以上の危機を感じている。

「ウフフ、一応言い訳は聞いてあげるわ。死なない程度に手加減はしてあげる♪」

 蛍の方もJ○J○ばりの効果音を背景に、蛇に睨まれた蛙状態の横島の耳を抓り上げる。

「ああ、ごめんなさい!ごめんなさい!まだ死にたくな〜い!!」

 言い訳も空しく耳を引っ張られ、ドナドナのテーマと共に部屋から連れ出される横島。
 二人が部屋から出て、ドアが閉まった途端、

どかっ!ぎしっ!ぐしゃ!べこっ!がりがりっ!きゅい〜ん!ずががっ!

 部屋の外から横島の悲鳴と共に、いったい何をすればそんな音が出るのか?と言いたくなる様な破壊音が響く。

 おキヌは心配そうな顔で、さすがに令子も乾いた笑みを浮かべている。
 が、二人とも部屋を動かないところを見ると、小竜姫を前にした横島の態度に思うところがあったのだろう。
 騒ぎの原因たる小竜姫は少しばかり横島が憐れにも思えたが、間違いなく自業自得っぽいので早々にこの件に関する考察をやめ、出されたお茶を飲むことにした。

 曰く、夫婦喧嘩は犬も食わない。

 その後一分ほどで音は止み、ドアから返り血もさわやかに蛍が現れたときはさすがに三人とも引いたが、ドアの向こうのピクピクと蠢く肉塊も含めて、とりあえず無視することにした。




【あとがき】

 実に9ヶ月ぶりかな?PCも新たに復活の★です。
 前の話を覚えている人はいるのだろうか…いないだろうな…。

 まあ、覚えておられる方はお久しぶり、初めての方にははじめまして。
 ルシオラ至上主義者の★、ただいま帰還いたしました。

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