ザ・グレート・展開予測ショー

好きだから(後)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/11/ 8)





「ふふ、あのねぇ・・・彼と西条さんなら私は当然西条さんと付き合うわよ」

美神さんは笑顔でそう言い放った・・・





・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだよな・・・

当たり前だよな・・・

西条のほうがずっと大人だし・・

金持ってるし・・・

格好いいし・・・

頭もよくて、学歴もいいし・・・

美神さんが選ぶの当たり前じゃねーか。

でも・・・


「くそおぉ──っ!!!」

ガタンっ!


「横島クン!?」

「えっ!?」

西条の声につられて美神さんが俺に気付いた。
その表情は聞かれてマズいという感じか・・・でも、俺はそんな悠長に美神さんを見てることが出来なかった。

「待って!横島クン!!」

美神さんの声が背に投げかけられる。
待てるわけねーじゃねぇか!
俺は逃げるようにエレベーターに乗り込むと急いで『閉』のボタンを押した。

「うっ・・ぐっ・・・くそぉ・・・うああぁ」

上りのとき動揺にエレベーターの壁にもたれかかる。
思考がまとまらない、涙が止まらない・・・フラれた男ってのはホント情けねえよな。

チンっ!

エレベーターが開くと同時にダッシュで駆ける俺。
だがその直後。

チンっ

「横島クン!待ってって!」

隣のエレベーターから飛び出してきたのは美神さんだった!
でも・・・今はとても顔を合わせられない。
俺は走って駆けて逃げて・・・そして極楽ホテルの目の前にある公園、
そうあの日俺が美神さんに告白した公園まで逃げていた。

「あっ!」

俺はその短い声と共に石に蹴躓いて転んでしまう。
いてぇ・・・けど・・・今は心のほうがもっといてぇよ・・・・そのとき・・・

「はぁはぁ・・・よ、横島クン・・・」

俺の背後から聞こえる美神さんの息切れした呼吸と声。
何で追いかけてくるんだよぉ・・・
そんなに俺を惨めにしたのかよ・・・分かったよ・・・だったら・・・

「西条と付き合えばいいじゃないですか・・・」

「は?何言ってんのよ?」

美神さんのトボけたその声に俺の中で何かが切れた。
そして俺は立ち上がって・・・叫んだ!

「いいじゃないですか!西条と付き合えば!
 俺なんかより顔も金も将来もいいし仕事も出来る!どうせ俺なんか遊びだったんでしょ!?
 そりゃそうですよね・・・美神さんに俺なんか釣り合うわけないですし!
 すいませんね、今までしつこく迷惑かけ・・・・」

最後まで言い切ろうとしたときだった・・・


パァンっ!!!

深夜の公園に響く乾いた音。
俺の左頬に走る熱い痛み・・・そして・・・俺の目に映るのは涙を浮かべながら睨みつけてくる美神さんだった。

「金?顔?仕事?・・・横島クン・・・あなた私をそんな目で見てたの?」

静かな怒り・・・そう表現するのがぴったりハマる美神さんのオーラ。
なんだよ、何で美神さんのほうが怒るんだよ!

「だって・・・さっき・・・仕事上の付き合いだって、しつこいって、・・・・それに2週間前に告白されたって」

「はぁ・・・全くベタな勘違いしてぇ、それは金成木三郎さんのことよ!」

「か、金成木三郎!?って・・・・・・・GS美神極楽大作戦第4巻第一話に出てきたあの金成気財閥の当主の!?」

「せ、説明的ねぇ・・・まぁつまり」

仕事上の付き合い→あの件以来コンスタントに高額の仕事をくれる。
しつこい→何かと言って誘ってくる。
2週間前に告白→横島が告白する1日前に金成木から56回目のプロポーズをされた。

「あ・・・そ、そういうこと・・・だ、だって美神さん驚いた顔してたし、西条とこんな時間にあんなところにいるから」

「そりゃいきなりあんたが現れたら普通に驚くでしょ!
 西条さんに会ってたのは言いたいことがたあったよ、
 でも明日から西条さん1か月ヨーロッパに行くらしいからこの時間しか空いてなくて・・・」

「言いたいこと?」

俺が不思議そうな表情で聞くと美神さんは顔を赤くしながら腕を組んで言った。

「あ、あんたと私が付き合ってるってことをよ!
 西条さんは私の『お兄ちゃん』なんだから私の口から言っておきたかったのよ!」

「え・・・」

つまり美神さんは周囲に俺との仲を公認させるために。

「ったく!あんた様子がおかしいと思ったら・・・
 しかも『釣り合う、合わない』とか・・・何なのよ一体?」

美神さんがジロっと俺を睨みつける。
情けない・・・勝手に勘違いして、一人で暴走して・・・

「俺・・・恐いんです・・・美神さんと付き合うようになって、
 自分自身や俺の『世界観』がガキっぽくて美神さんに比べたら何の価値もないんじゃないかって・・・
 どうしよもなく不安で、本当に美神さんは本当に俺といて楽しいんだろうかって」

言った・・・。
俺は胸に込めていた全ての不安をブチまけてみた。
そして美神さんの返答は・・・・いたってシンプルだった。

「あんたバっカじゃないの!!?」

「・・・・すいません」

「謝るな!・・・・いい?あんたと私の世界観が違うなんて当たり前でしょ!?
 全く同じ人生歩んだわけでもない、生まれも育ちも違う二人なんだから一緒になってるほうがおかしいわよ!
 私には私の世界に価値がある、横島クンには横島クンの世界に価値がある、
 だから・・・横島クンの世界に価値がないなんてこと絶対ないのよ」

「美神さん」

「そ、それにね・・・わ、私はあんたの・・・
 ・・・・・そ、そういう所もふ、含めて・・・す、す、すすす」

耳まで真っ赤にして何かを言おうとする美神さん。
もしかして・・・言おうとしている言葉は・・・
俺が一番・・・待ってた・・・





「好きなのよ!全部!何よ文句あんの!?ないわよね!つーか文句なんて許さないわよ!」

そのままそっぽを向いてしまう。
そうだよ・・・俺は・・・だって美神さんのこういうところだって含めて好きになったんだよ。
不安だった・・・恐かった・・・

でも・・・それが美神さんの口から一番聞きたかった言葉だったんだ・・・。

「よ、横島クンだって悪いんだからね!
 デートするときはいつも私まかせだし、これでいいの?って聞いても『うん』しか言わないし!
 告白だって酔いまかせみたいだったし!私だって色々不安だったんだから!」

冷静になっていく俺とは対照的に今度は美神さんがテンパってきた。
いつもはクールな美神さん・・・そんな彼女のこんな一面を知ってるのは俺以外に何人いるかな。
俺だけがいいな、そう思う俺はやっぱり独占欲が強いんだろう・・・そう思い少しだけ笑ってしまった。

「何笑ってんのよ!」

「い、いえ何でも・・・・そうっすよね、二人の世界が違っても仕方が無い・・・でも」

「でも?」

「これから・・・少しずつ一緒の世界を作っていくのも悪くないかなって・・・」

「ふふ、その意見には賛成してあげる」

美神さんはそう言って頬を緩ませて微笑んでくれる。
独占したい笑顔・・・美神さんと目を合わせながらそう思う。
そして・・・俺はそっと美神さんの両腕に手を添えて、美神さんは目を閉じて・・・





















「おほんっ!」

「「!?」」

その咳き込みに俺と美神さんはバっと距離をとった。
誰だぁ!いいチャンスを潰した奴はぁ・・・って一人しかいねーよな

「コラァ!西条いつからいやがったぁ!」

「そう怒鳴るな、フラれたライバルの最期の抵抗さ」

くっ!その割には余裕あるところがイラつく!

「あ、あの西条さん・・・」

「気にしないでくれ・・・出来れば僕の人生のパトーナーになって欲しかったが・・・
 いや、これ以上は敗者の遠吠えだな・・・しかし!」

西条は霊剣ジャスティスを抜くとその切っ先を俺の喉元に当てた。
一体今どこから出しやがった!

「もし令子ちゃんを泣かすようなことがあったら容赦なく斬り捨てるから覚えておきたまえ」

「て、てめぇ・・・」

「それだけだ・・・。じゃあ邪魔者は去るとしよう・・・
 あ、令子ちゃん!横島クンを見限ったらいつでも僕のところに来てくれよ」

「未練タラタラじゃねーか!」

「クス、ええ、そうするわ」

「うえぇぇえ!!」

西条は捨てゼリフを吐いて公園を去っていく。
ったく、最後までキザな奴だ!

「俺が美神さんを泣かせるわけねーだろぉ!」

西条の背に向けて叫んだ言葉、それに美神さんが反応する。

「本当に?」

「本当っすよ!」

「でもおキヌちゃん達と浮気したら私・・・」

「そんなことするわけ・・・」

「泣くだけじゃすまさないからね♪」

うっ!満面の笑顔なのにモノ凄いプレッシャーを感じるのはなぜでせう。
ヘビに睨まれた蛙・・・巨象を目の前にした蟻のような気分や!
でも、俺は・・・

「絶対しませんから」

「あっ」

不意をついた口付け・・・そいや、よく考えたら付き合って初めてキスしたな。


「ちょ、いきなり・・・」

「いいじゃないですか俺たち付き合ってんですから」

「急にベタベタしちゃって・・・・・まぁこういうのも悪くないわね」

美神さんは顔を少しだけ赤くして俺の右手に腕を絡んでくる。
そうだよ、泣かせるわけねーだろう・・・。

「いつも泣かせられるの俺のほうだし」

「何だとコラァ!」

ズガンっ!

テンプルに美神さんの右ストレートを喰らいながら思う・・・

今は男としても人間としてもまだ美神さんには相応しくないかもしれない・・・


それでも確かに彼女は俺を受け入れてくれるけど・・・


もっと努力しよう、俺のままで俺らしさを残しつつも・・・


成長していこう・・・


それはとてつもなく難しいことかもしれない、苦しいかもしれない・・・


でも大丈夫・・・


だって・・・














────────俺は美神さんが好きだから。











                                  fin






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