〜 『影とキツネと聖痕と 4 後編』 〜
投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(03/12/13)
◇
―――・・・・。
「・・・さて・・僕を信じてくれるなら、これから君の向かうべき場所はたった一つだ。」
ニコリと少年が微笑んで、塞いでいた道を横島に譲る。
それに・・・横島は軽くうなづいた。
話し込んだ分、迷っているヒマなどありはしない。
この少年が何者なのかは気になるが・・今、優先すべきことは他にある。
「・・わかった。信じるよ。・・タマモはどこにいるんだ?」
「・・・君にとっての・・思い出の場所さ・・・。」
声には、少しだけ悲しげな響きが含まれていた。
横島の心中を思いやるような・・・・優しい声音。
癖なのか、少年は再び目を閉じ、言葉を紡ぐ。
「・・それと・・移動に超加速を使うのはやめた方がいい・・。
文殊は温存しておかないと・・・・・?」
・・・。
・・・・・。
木々がユラユラと揺れている。
気が付けば、横島の姿は、すでにそこには無かった。
・・わずかばかり感じ取れる文殊の力の残り香・・・・。
「・・クス。止めても無駄・・か。よほど大事なんだね・・彼女のことが・・。」
少年は穏やかにつぶやいた。
〜appendix.6 「影とキツネと聖痕と」 〜
・・・思い出の場所。
聞いた瞬間、ここのことしか思い浮かばなかった。
ルシオラと夕陽をみた・・・・そして彼女を失ってしまったこの場所。
「・・そういえば、タマモもここの景色が好きだって言ってたな・・。」
東京タワーを見上げながら、横島はポツリと声をもらす。
・・・。
・・冗談ではない。
また同じ場所で・・同じように大切な者を失ってたまるものか・・。
バンダナを額に巻き直し、横島は階段をかけ上がる。
「・・・助けてみせる・・・必ず・・。」
◇
雪がちらついていた。
黒く沈んだ街の景色は、いつか見た夢の世界に瓜二つだ。
起き上がる気力もなく、少女は一人うずくまっている。
鉄塔のひんやりとした感触が心地よかった。
「・・・もう・・観念するしかない・・か・・。」
自分の言葉すら、ずっと遠くに感じられる。
金色の髪に少しだけ積もった雪。
それをすくいながら、タマモは力なく笑みを浮かべた。
(・・横島・・何してるかな・・?)
彼と、あんな化け物を闘わせるのだけは避けたかった。
大丈夫だろうか?
また、自分を助けるために、無茶をしていないだろうか?
・・・・。
・・おかしい・・。なぜかアイツの顔ばかりが目に浮かぶ・・。
「・・・横島・・・。」
無意識に、彼女は愛しい青年の名を口にして・・・・
・・・・そこで気付く。
同時に自分の耳を疑った。
ドタドタとした・・あわただしい音が聞こえてくる。
誰かが階段を上っているのだ。
・・・誰?・・・悪魔・・?・・いや、違う。この足音にはどこか聞き覚えがある。
・・この・・落ち着きがなく騒がしい足音は・・・
・・・・。
・・・・・・。
・・・・・やがて、荒い息遣いとともに、人影が自分の前に立ち止まって・・・・
「・・タマモ・・。」
「・・・よこ・・しま・・?」
声を聞いた瞬間、泣きそうになった。
来てくれた・・・どうして・・?
「・・なん・・で・・」
「心配だからに決まってんだろ!待ってろ・・今手当てを・・」
タマモを腕に抱えると、横島はふところの文殊に手を伸ばして・・・
・・・。
「・・タマモ・・?」
それを押しとどめる腕に、戸惑ったような表情を浮かべる。
「・・・もう・・いいから。それより・・聞いてほしいことがあるの・・。」
消え入りそうな声とは逆に、彼女は優しく微笑んで・・、
「・・お前・・何を言って・・。」
横島の肩は震えていた。
「・・お願い・・。・・いま言えなかったら・・私・・」
苦しそうに息をしながら、タマモはすがるように横島を見つめる。
「・・タマ・・・モ・・?」
「・・私・・横島のこと・・・・・・・・。」
・・・・。
・・・・・・。
瞬間だった。
巨大な爆発とともに響く轟音。・・辺りを覆う静けさが霧散する。
凶悪な光は渦を巻いた。
「!?」
「・・見つけたゾ・・九尾の狐・・・・。」
闇を這うように・・・紋様の悪魔が姿を現す。
その体は力の暴発により、じょじょに、じょじょに・・崩れ始めていた。
大分、理性が戻ったのだろう。
魔族・・スティグマーターはその唇をつり上げる。
・・・・。
「・・・・お前か・・。」
「・・なニ?」
「お前がタマモを・・こんな目に合わせたのか!!」
「横島・・・だめ・・!!」
横島の腕から、文殊の光が溢れ出す。
数秒後、彼の体は驚異的な速さで加速していた。
「!?」
一瞬だけ見せる驚愕の表情。
しかし、スティグマーターに反応は早かった。
動きを見切るように重心低く、身構えて・・・
「人間ガッ!!!ボクを倒せるとでも思ったカ!!!」
余裕の言葉とともに迫る拳を受け止める。
笑う仮面。
この世の全てを侮蔑するかのように・・・ニヤニヤと・・嬉しげに・・。
・・・・。
・・刹那、青年はもう片方の拳を振り上げる。
「・・・ナッ!?」
悪魔は今度こそ狼狽した。
反応も出来ぬまま、強く強く・・鉄の床へと叩き伏せられ・・・
・・ダメージは無かった。
・・・だが・・コイツは・・・
「タマモの力を解放して・・さっさと失せろ!!さもなければ・・」
・・・コイツは・・・むかつく・・・・!!
「人間ガァァァァァァ!!!!!」
咆哮とともに、2つの影が交錯した。
〜続きます〜
『あとがき』
うあ・・なんなんだこの救えなすぎる敵キャラは・・・(笑
タマモのせっかくの告白を・・・ばっちり邪魔してますこの悪魔は(爆
次回、ボッコボコになるので、ご安心ください〜
というわけで、ストーリーも佳境です。
相も変わらず暗いですが、『appendix.6 影とキツネと聖痕と』に関しては一生懸命書きました。
いかがでしたでしょうか(汗
やっぱりタマモの告白は雪の中・・というのが作者のイメージで・・
(誠さんや逢川さんはどんな風な告白が理想ですか?(笑))
次回は一応、最終話でしょうか?エピローグもつけるので実質、あと2話ということになります。
それでは〜
今までの
コメント:
- >反応も出来ぬまま、強く強く・・鉄の床へと叩き伏せられ・・・
・・・キレテナーイ。ナルホド、深剃りなんですね?
どうも〜ヒロでございます〜
まるで天下一武闘会の頂上対決のような雰囲気で戦い始める横島とスティグマーター、というかムカつき魔族。そして次回に持ち越された告白シーン(涙)どうなるか楽しみです。
依頼人のイカシタおっちゃんの思惑もどこに?もうみんなボッコンボッコンだぜ!
でぁでぁ〜これからも頑張って下さいませ〜 (ヒロ)
- 前回仰っていたように、ラブですね。タマモの告白が良いです。こーゆー告白は好きです!雪の中での告白・・・いいなぁ(遠い目)
>次回、ボッコボコになるので〜
・・・ありがとうございます(笑)あまりにもコイツがムカつくんで次回、やっちゃって下さい(爆)もちろん、依頼人のおっちゃんはヒロさんの仰るようにボッコンボッコンになることを期待してます(笑)ではっ! (BOM)
- つーか横島、予想どうりカッコ良い登場の仕方してくれますね!!でも今回の右ストレートを受け止められた後の左ストレートはカナリ決まってました!横島は今回も霊波刀を使った戦い方をするのかと思っていた矢先に、この展開だから正直、驚きました。この後も横島の肉弾戦を見れると良いな!!なんて期待したしまいます! (GTY)
- くっそーーーーーー!!!いいところを邪魔するとは!お約束というかなんというか・・・ショックだ・・・(涙)
横島が格好いいですね〜本当に。
そして、告白の理想ですか?雪の中での告白・・・素晴らしいと思います。
わたしとしては夜、星空の下川沿いに二人で並んで座って・・・そして、そして〜〜〜!!
ってのがいいです(笑)。(実体験ですがなかなかいい雰囲気でした(笑))
この話し完結しちゃったら楽しみが一つ減っちゃうな〜と思った今日この頃です。
では、次も頑張って下さい。 (誠)
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