ザ・グレート・展開予測ショー

悲劇に血塗られし魔王 17


投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/11/ 4)


誓い。

ルシオラが死んだと知ったその日、涙を流しながら俺は誓った。

すなわち・・・・・



『俺の周りに居る人達を俺は守ってみせる』


半端な誓いではない。
呪いと言っても良かった。
なぜなら人間でなくなった今の俺の行動理念もまた全てこの誓いから来ているのだ。
俺がもたらすものは悲劇のみ?
おおいに結構だ。
「魂の覚醒」時に俺が自分は何者か知ったときにこう言った。


「俺は、悲劇の中に安息と幸福を求めし者。」


これも俺の中にある誓いからきた言葉。


これの意味するところは・・・・・・


[俺は悲劇の中でハッピーエンドを見つけてやる!!]


誓いは今も生きていて、それが俺を突き動かしているんだ。





「・・・・ルシオラ」

急速に意識が覚醒する。
徐々にはっきりしてくる意識の中、俺の心にはまだ誰かの言葉が響いている。

「あの時の誓いを忘れたの・・・・・」

忘れるわけが無い。
俺がこの誓いに秘める思いはそのままルシオラへの愛となるんだから・・・・
その為なら、どこまでも残虐になろう、どこまでも卑怯者になろう。
・・・・それで誓いが果たせるなら軽いものさ。


・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

自分の世界に浸るのはこれぐらいにしよう。
今は目の前の状況をなんとかすべきだ。
俺は本来あるはずの無い記憶を頼りにこの最悪と言っていい状況を把握する。
だが把握するにつれ、眩暈にも似た気分を覚えてしまった。
予定外、などという言葉では済まされない。
ズルベニアスは生きている。
小竜姫やワルキューレが何故かここにいる。
しかも、しかもだ。
俺の顔まで見られてしまった・・・・
ああ、こんな時の為の仮面だったのに。


・・・・・・・・どうすればいい・・・・・・・・



俺は考える。
良い案なんて浮かぶはずも無いのに・・・・・

(仕方ない)

俺は少し遠くに落ちている仮面を取りに行く。
皆は俺の一挙一動に注目している。



どうしたというのだろう?
敵だぞ、俺は・・・・




何の妨害も無く仮面を拾うと再びつける。
俺は仕方ないから・・・・




「ふはーはっはっはっは、俺に臆したか!!ズルベニアス、小竜姫様、ワルキューレ」





仕切りなおす事にしたんだけど・・・・・












「あっ・・・・」











・・・・・小竜姫様達の名前も呼んじゃった。











「「「「「・・・・・・」」」」」











沈黙が辺りを支配する。

まずい。
まずすぎる。
こんな状況、美神さんのお風呂場を覗いて現行犯で捕まった、とかいうレベルの比ではない。

Oh,My Goddess!! [ああ、俺の女神ちゃん(←注,ルシオラを指します)]

女神ちゃん、どうしてこんなことになっちゃったの?




〜〜〜〜〜〜それは、あなたがおまぬけだからよ〜〜〜〜〜〜



・・・・・
・・・・・
・・・・・
御免なさいでした。
その通りっす。
俺が馬鹿だからです。
全て俺が悪いんです。

でも、だからって・・・・・・・・



・・・・・・そんなにはっきり言わなくたっていいじゃないか、俺の女神ちゃん・・・・・・





「横島さん・・・・ですよね」

大ポカをかました余り、少々壊れモード突入中だった俺に小竜姫様は恐る恐るといった感じで話しかけてきた。
俺は小竜姫様に目を向ける。
彼女の目はユラユラと揺れていた。
隣にいるワルキューレも同様だ。



(ああっもう、そないな目で俺をみんといてーーーーー!!)




・・・・・その目に耐え切れなくなり、仕方なくそれに答える事にした。




「久しぶりっすね。小竜姫様、ワルキューレ」








・・・・・・・俺達は運命に操られるかのごとく再会を果たしたのだった・・・・・・・・・














そして、物事はトントン拍子に進む。
まず小竜姫様とワルキューレのここに至るまでの経緯。
その時に解ったのだが、二人はあくまで別々にここに来たのであって、元より打ち合わせなどしていなかったということだ。
これは偶然などではない。
何らかの意思が介在していると睨んで間違いない。
二人もそう思っているが、それが何か解らないようだ。
俺は・・・・見当はついている。
後は、実はこの二人が俺を殺したのだとか、そのせいで自分が所属していたところを抜けたとか、確かに驚きの連続だったがもうどうしよ
うもない事だったので、ここでは取り立てて問題にしなかった。
少し問題になったのは、小竜姫様の事だった。
神族の筈なのに魔界にいてなんでこんなにも違和感無く存在できるのか、という事である。
そう、小竜姫様はこの魔界の中にいても全く浮ついた存在に感じられなかったのだ。
彼女は本格的に堕天したわけではない。
つまり、ちゃんと小竜姫様の持つ神々しいまでの「竜気」が感じられるのだ・・・・・
不思議に思って聞くと彼女は服の内から一つのペンダントを取り出した。
これは、彼女の説明によると「ニルヴァーナの涙」といい、神気・霊気・魔力、問わずその空間に『馴染ませる』ことができる代物だという。

「この存在がなければ、魔界に来なかったかもしれませんね」

そう言って、小竜姫様は苦笑していた。


・・・・・彼女達の話が終わり、今度は俺の経緯を説明する番になった。

彼女達の目が余りにも真剣だったから、ある程度の真実を話す事にした。
話は以下のとおりだ。

「気づいたら魔王になってたんですよ。もう俺、驚いちゃって。細かいところは省きますが、それから一年。俺ずっと修行してたんすよ。なった当時は力に振り回されていましたから、こりゃやばいって事で。んで、一年修行してなんとか使えるようになったから、そろそろ行動を起こそうかなっと・・・・・」


「えっ、領地拡大を狙ってこの村を狙ったのかって?違いますよ。俺、別に領地なんて興味ないし・・・・・」


「細かいことは言えませんがね、俺は村のすぐ側にある「ラ・ヴァ・ラレア山」の所有権?みたいなものが欲しかったんすよ」


「それはこの村を滅ぼすに値する意味があるのかですか?・・・・・・なきゃ、しませんよ。」


「その理由?言えないって言ったじゃないですか。・・・でも、これだけはいえます。この行動が間違っているなんて事は絶対ないって・・・・」


「戦っている時のあの無邪気な少年の仕草はなんだったんだ?・・・・・俺、そんな風になってたんすか。あの時の俺ってただ『見てる』だけだからなー。・・・・・・ああいや、こっちの事です。・・・・説明でしたね。・・・・・あれは、『囁き』です。」


「意味がわからない?う〜ん、じゃあ、こう言い換えましょう。あれは俺が振舞うべき魔王としての仕草です。」


「こういっても解らない?でも、俺にはこうとしか言えないっすね〜。・・・・とにかく、これが俺の経緯です。」



ちなみにこれはズルベニアス夫妻も入れての密会である。
彼等は驚き、少々怒りもしていたが、あくまでオブザーバーに徹していた。
俺は密会の最後にその二人に提案した。


「決して悪いようにしない。この村を俺の領地下に置いてはくれないだろうか?」


この提案は始め、ズルベニアスと戦う前にも提示していた。
最初は新米の魔王がただ息巻いて領地拡大に奔走しているように映ったのだろう。
だが、今は違う。
俺の欲しいもの、強大な力、そして何よりそれを何が何でも手に入れてやるという姿勢を彼等は知っている。
だから二人は少し迷っていたが、結局提案は受け入れてくれた。



長い一日が終わった。
結果は意外だったが、良いほうで意外だったことが今は嬉しい。
あれから結局、小竜姫様とワルキューレは俺の所に身を寄せた。
彼女達は「これは罪滅ぼしだ」と言っていたが、本当のところはどうだろうか?



まあ、気にしてもしょうがないけどさ・・・・・



・・・・・・・とにかく、これで計画は次のステップを踏める。




・・・・・・・神・人・魔全てを巻き込んだ戦争のお膳たてを始めるか・・・・・・・

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