アシュタロス〜そのたどった道筋と末路(涙)〜おキヌ・ざ・すたんぴぃど4
投稿者名:♪♪♪
投稿日時:(03/11/ 6)
「ふえぇぇぇぇぇぇぇぇん……横島さんに何かあったら、私生きていけませ〜〜〜〜〜ん!」
大げさな事を言って泣き叫ぶのはおキヌちゃん。もう死んでるじゃん、という極々まともな突っ込みは無視の方向で。
――横島捜索開始から6時間が経過し、一同の捜査は完全な袋小路に迷い込んでいた。電話をかけてみてもつながらない(電話止められたらしい)、霊的な捜査をしようにも反応が無いなど、聞き込み以外のありとあらゆる手段において空振り。
これ以上手のうちようが無いという状況ゆえにあげた悲鳴である。生きていけない云々はともかく、生きず待った事に対する認識は、一同が同じものを共有していた。
「横島さん、何処にいるのかな〜?」
「ったく! あのクソ丁稚……今度会ったら見てなさいよ!」
「横島さんはくそでっちじゃないです!」
八つ当たり、訂正とそれぞれ異なる理由で声を荒げる令子とおキヌ。おキヌのクソ丁稚云々の発音がよろしくなかったのは、言い馴れない言葉だったからだろう。
「横島さんは優しいし、私の事助けてくれたし、かっこいいし……」
優しい云々はともかく、かっこいいという装飾後に頷けるはずも無く、
『かっこいい??』
一同が首を傾げてしまったのは当然の流れである。
恐らく、おキヌのこの言葉に納得出来るのは、人界魔界神界探し回っても、どこぞの蛍娘ただ一人であろう。
さて、その肝心の蛍娘はといえば。
「ありがとうございました〜〜〜〜〜〜……」
目線の虚ろな焼肉屋店員に見送られ、
「いや〜食った食った」
「パピリオ! お主が店員に嗅がせた妖毒、後でサンプルにくれぬか? 量産してみたいんじゃが」
「うん! いいでちゅよ!」
「しかし、毒で催眠状態にしてタダにするとは考えたなベスパ」
「アシュ様にはたっぷり栄養つけて元気でいてほしいので……その体力、浮気につかったら承知しませんよ?(いい笑顔)」
「は、ハッハッハッハッハッ。ボクガウワキナンテスルハズガナイヂャナイカべすぱ」
死ぬほど罪の意識の無いのーてんきな会話を耳にしながら、
「ねえマリア……」
「なんでしょう・ミス・ルシオラ」
「――これって、食い逃げって言う立派な犯罪よね」
「……イエス・ミス・ルシオラ。
警察に・見つかったら・捕まります……」
「マリア、悲しい?」
「ノー・情けないです」
「私もよ……」
ただ一人、正確には一体の仲間つきで罪の意識にさいなまれていた。
「あ、そうだ! 冥子さん、式神で何とかなりませんか!?」
「あいにくと、冥子ちゃんの式神で横島探す奴はおらんよ」
おキヌのアイデアに駄目出しをする鬼道。自販機で買ったジュースを冥子に手渡し、自分もコーヒーを飲み下す。
「こいつら横島の事嫌いやから。初対面でいきなりナンパした――」
親指で冥子の影を指差す鬼道だったが――その直後に違和感に襲われた。
地面から足が離れた。
ぷっつんに百回近く巻き込まれたせいで一張羅になってしまったスーツの胸部分が上に引っ張られている。
しかも、そこを視点にぶらぶら揺れてる感じ。
(え?)
一瞬、何が起こったか理解できずに、鬼道は横にいる恋人に視線を送った。
泣きそうだった。
それも、鬼道が好きな、いぢめ(虐めではない、ちょっとしたこだわり)られた時に浮かべるあの涙ではなく、おびえを含んだ涙。
逆側の美神を見てみる。
こちらにいたっては恐れおののいていた。
(えっと……僕……ひょっとして)
恐る恐る、視点を正面に流せば――
(おキヌちゃんに胸倉つかまれとる!!!!?)
物凄いプレッシャーをまとったやしゃが一人。
漢字の夜叉で無いのは、おキヌちゃんのイメージを損なわないための非常措置であって、雰囲気は美神令子のそれに近い。
いや、それすらをもはるかに上回るぷれっしゃぁが、おキヌの内側には存在していた。
正直に記そう!
鬼道はたいそうビビッた! 浮気の現場をベスパに発見されたアシュタロスよりもびびった!
六道母など目ではない! 絶頂期のアシュタロスだって撤退を決意するぞ!
(な、な、なんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? こ、このぷれっしゃぁわぁっ!)
「そん――に」
ぽつり、とつぶやかれる言葉。普段は鈴のなるような軽やかで可憐な声な、ご近所のかたがたに『天使の声』と言われる声も、ヤクザの恫喝と間違えかねないくらい荒んでいた。
「そんなに――いんですか?」
その場にいた一同は戦慄した。
下手に答えたら――殺られる!!!!
「え、あ、いや、あの……」
あたふたと言葉を取り繕おうとする鬼道。恋人の危機に涙ぐむ冥子。慌てふためいて闘争を試みるも、腰が抜けて立てない美神。
誰も明確な言語が発せないその状況で、おキヌは力いっぱい叫んだ!!
「そんなに! ナンパされるのが! 嫌なんですか!?」
『はへ?』
あまりに想像からかけ離れたおキヌの言い分に、間抜けな声を発する一同。そんな相手の反応に気付かず、おキヌは言い募る。
「いいですよねっ! 初対面でナンパされた人は! 私なんて、私なんて一度だって横島さんにナンパされた事なんて無いのにっ……私だって、遊びに誘われたり、甘い言葉でっ……ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ……」
終いにゃ、泣き出しましたよ。
そんなおキヌのぶちきれ理由に、プレッシャーがなくなっていないにもかかわらず、一同が和んでいたのは予断である。
「横島さんの馬鹿――――――――――――――――――――っ!!!!」
鬼道を投げ捨て、いわゆる『漫画泣き』をかましながら走り去るおキヌちゃんであった。
今までの
コメント:
- 「やしゃ」になってるおキヌちゃんも可愛いです。
そっか、彼女はナンパされたかったのか。
最後にきっちり鬼道を投げ捨てているところがいいですね。
ところでちょっと気になったのですが、
>ぷっつんに百回近く巻き込まれたせいで一張羅になってしまったスーツ
「一張羅」っていう単語の使い所が違います。 (U. Woodfield)
- どうも〜ヒロです〜
とりあえず、本当によくアイディアが浮かびますね〜すごいですよ。
ぼくぁもーぼかぁもー・・・・・・!!
僕は悲しみにくれるルシとマリアがよかったっす!!
であであ〜これからも期待してますよ〜 (ヒロ)
- ホントによくこの設定を生かして…毎回感心します。安易に原作準拠な展開にしないところがポイント高め。
しかし、ここだけは…>『“生きず待った”事に対する認識は、一同が同じものを共有していた。』……行き詰まった、ひらがなだと「いきづまった」です。 (MAGIふぁ)
- ども、BOMです〜〜!
やしゃのおキヌちゃん、怖いなぁ・・・夜出てきたらどうしよう・・・?
なんてことを考えていた自分はヤバイのでしょうか?
ビビっているみんなが面白かったですな。ではっ! (BOM)
- だんだんと、タイトルに近づいてきた!w
このおキヌちゃん、面白いですよ。
幽霊時代初期のおキヌちゃんって、一歩間違えばこんなキャラになってたかも?なんて思えてきました。(え?)
とりあえず、鬼道に天誅くれてやってくれませんかね?
次回も楽しみです。 (KAZ23)
- 一瞬、伝説の『黒キヌ』復活かと思わせる言動がありましたが、どうやらギリギリ大丈夫のようですね。
一方で集団食い逃げ犯と化した横島たち。
罪の意識をもっているのがたった2人という所も、ある意味すごいです。
このお話の中では唯一まともだと思えたパピリオまでも‥‥
いい笑顔のべスパに、カタカナセリフのアシュタロスも横島っぽくていいですね。 (ヴァージニア)
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