アシュタロス〜そのたどった道筋と末路(涙)〜おキヌ、無惨?(疑問系)前編
投稿者名:♪♪♪
投稿日時:(03/10/30)
標高の高い山の上をらせん状に走る道路。排気ガスを押しのけるほどの緑に囲まれた道を、横島とその雇用主、美神令子は歩いていた。
「あー。空気がおいしいわね」
……無論、美神は手ぶらであり、すべての荷物は横島の背中と両手。
ずーるずーる。
荷物を引き摺るとはこの事だろうか? 横島は、明らかに個人の限界を超えた質量のお荷物を背負わされていた。それでも押しつぶされずに直立歩行する彼の根性に拍手。
ってか、アシュは実際に横島の内部で拍手してたし。
(頑張れタダオ! 負けるなタダオ! 巨乳の美神がお前を待っているぞ!)
無責任きわまる上あまり感情のこもっていない応援に、横島は何も言い返さなかった。言い返す気力すら、横島は持ち合わせていなかったのである。
アシュタロス〜そのたどった道筋と末路(涙)〜おキヌ、無惨?(疑問系)前編
「しゅ、就職先まちがえたかなー??」
百人に聞けば、五十人が全力で肯定し、一寸気が利いた奴なら無言で就職情報雑誌を提示するであろう当たり前すぎる疑問ですら、横島にとっては疑問系であった。
「い、いいや! あのちちしりふとももをたっぷり堪能するためや! 決して間違ってはいない!!!!」
酸欠で死に掛けていたところへ、『先行ってるわねー♪』などとのたまわれたばかりだというのに、堂々と言い切る助平魔人ここにあり。
「あの、ルシオラには望むべくも無い胸が……ぐふふふふふふ」
ルシオラに聞かれたら全力パンチが飛んでくる(断言)台詞すらのたもうた。
めでたく美神除霊事務所に就職した横島。毎日が天国(恋人との甘いひと時、美神に対するセクハラ)と地獄(恋人や美神からの折檻)の間を忙しく飛び回る生活を送っている。金銭的なことを除けば、非常に充実した毎日といえるだろう。
彼が抱いている無数の隠し事が、ストレスとなってその生活を阻害してはいたが。
まず、隠し事その一、体内に寄生したアシュタロスの存在。
『俺、実は体内に魔王クラスの魔族飼ってるですよー、あははははー♪』なんぞと正直に明かそうものなら、正気を疑われるか問答無用で火あぶりにされるかのどちらかである。自己防衛としては当然の帰結であろう。
隠し事その二、ルシオラ達魔族三姉妹の存在。
アシュタロスと同じような理由ではあるのだが、こちらはより深刻であった。美神ではなく、別の義理人情のあるGSなら素直に打ち明けてもいいのだろうが――
美神が彼女たちの存在を知ったら、日給30円あたりで雇って金づるにしてしまいそうだ。あれはそういう(鬼)女だと、短い付き合いながら横島は理解していた。
アシュタロス曰く『魂すら骨までしゃぶって自分の益にする、魔族以上の極悪女』
その後、『その代わりスタイルは抜群』と余計な事を口にしたため、ベスパから厳しい折檻を受けることとなるのだが、この場は割愛する。
元魔王のアシュタロスに『極悪』印の太鼓判を押されるゴーストスイーパーって一体……?
「あしゅ〜〜〜〜〜! 美神さんいなくなったんだからお前も持て! 荷物!」
「……仕方が無い奴だな」
やれやれと肩をすくめながら、アシュタロスのごついからだが横島から生えた。そう表現するのがぴったりだろう、この出現の仕方は。
人が見ていない居場所では、こうして負担を二人で分担することで、効率よく働くことを心がけているのである。
何故かリクルートのスーツ姿に、尾骶骨から魂の尾が横島の胸につながっているアシュタロス。魂の尾さえ気にしなければ、町を歩いても違和感は無い。
――顔色がそのマンマだから堅気の職業にはどうやっても見えないけど。
一番重いリュックを横島から取り上げて、背負う。アシュタロスの行動を確認して歩き出した。
「あ! 正面に可憐な半透明のお嬢さんを発見!!」
「なんと!? 幽霊なのにええ乳しとるやないかーっ!」
『話を聞い――』
「タニマーーーーーーっ!!」
「谷間ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
『――ってイヤァァァァアァァァァァァアッ!!』
……すぐさま、いつもどおりの暴走に切り替わったわけだが。
その頃の東京。
どんっ!
「…………」
どんどんどんどんどんっ!
「る、ルシオラちゃん……野菜はまな板ごと切っちゃだめでちゅよぉ」
パピリオの儚い訴えも、鬼氣振りまくルシオラには届かない。
ごおおおおおおおおおっ!
「…………」
ごごおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!
「ベスパちゃぁん……霊力で火力調節したら、炎が……お鍋が真っ赤になってるでち。中身がもう炭でち」
パピリオの涙声は、ベスパの意識を刺激することなく空気を振るわせるだけで終わった。
今日『も』まともな昼食は望むべくも無いようだ。横島とアシュタロスがバイトを始めてから、一度もまともな昼食を口にしていないパピリオだった。
「……ひん(涙)」
「くそっ! 見失ったか!?」
「いくら私たちが嫌だからって、何も成仏せんでもええやろ!」
追いかけているうちに対象であるナイスバディの幽霊を見失い、憤慨する二人。パピリオの窮地なんぞ露ほども知らない。
そんな二人を、木陰から除きこむ少女がいた。
時代はずれの古風な巫女服姿と背後に背負った人魂が、彼女がこの世のものではないことを証明していた。
『あの人……あの人がいいわ』
その少女は、横島のお人よしそうな、女好きっぽい顔を見て即座に判断を下すと、木陰から飛び出した。
出来るならこの時、目標の横にいるアシュタロスの耳がピクリと反応したことに気付いてほしかった。そうすれば、今回の騒ぎの大半はここで終わらせることが出来たのである。
説明しよう! 斉天大聖との戦闘で損傷したアシュタロスの肉体は、現在大半が強化再生されており、特に五感は『女性限定』でヒャクメ達情報調査専門神魔族すらぶっちぎる高性能を示す! 声だけで3サイズ体重すら判別可能なのだ!
……無駄に使えねえ。
そんなわけだから、少女がえいっ、と気合を入れて横島に体当たりを慣行した瞬間には。
「可憐な幽霊のお嬢さん。お暇なら私とめくるめく愛と官能の世界に旅立ちませんか!?」
アシュタロスは、いきなりその正面に現れて口説く事が出来たのである。
いつの間に横島の元から離れたのか。
固まる、否、凍りつく少女。
と、言うのも、気障ったらしい台詞を吐いたアシュタロスは、目を血走らせ(オイ)鼻息荒く(コラ!)下心丸見えで(マテ!)……かなり高位の妖怪ですら、びびって逃げ出すような凄まじい形相をしていた。
原因は――アシュタロスの頭の中身を覗けば自ずとわかる。
(ふ、ふふふふふふはははははははははは! なんと! 清楚な美少女巫女とは私は運がいいぞ! ベスパの大人の色気は確かに愛しいが、こういう初心な純白もまた捨てがたい!
辛いものを食べ続ければ舌が甘いものをもとめるように! 今の私は清楚を求めているのどわぁぁぁぁぁぁっ!!)
素敵に最低野郎である。ベスパさん、このおっさんのどこに惚れる要素があったのだろうか。
その頃の東京。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴごごっ!!!!
「ふ、ふふふふふふふふ。なんか、無性にアシュ様を殴り飛ばしたい気分だわ」
(あ、アシュ様一体なにやらかしたんでちゅか〜!?(泣))
(タダちゃぁん。怖いよぉ(泣))
ガクガクブルブル……
先ほどまで加害者であったルシオラですらびびらせる殺気が、ベスパから放たれていた。
とりあえずアシュ様。帰還後即惨殺決定(爆)
そんな欲望で動く未確認生物もどきに接触した、純真な少女の反応はいかなるものか!
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
当然の如く、逃げる!
そして、逃げられたアシュタロスの反応わ!
「お嬢さ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん! お待ちになって〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
当然の如く、追う!
「一寸待てあしゅぅぅぅぅぅぅっ! 500めーとる! 500メートルの法則を忘れてないかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
しかも横島も一緒にだ!
幽霊の少女――おキヌちゃんは、果たして猛獣の飢えた牙から逃れることが出来るのか!?
次回を待て!(むちゃくちゃ無責任)
今までの
コメント:
- 何が凄いって、この設定でお話を続けてる所が凄いよ… (MAGIふぁ)
- 何がすごいかと・・・それでも賛成票を入れさせてくださる内容を書いているところがすごい・・・ぐ、僕は、僕は・・・
どうも〜ヒロッす〜
前文でもう言いたいことは言い切った!!ようは面白いと!!
ではでは、これからも頑張って下さいませ〜 (ヒロ)
- あぁ・・・おキヌちゃんまでターゲットに・・
次は冥子ちゃんだな。うん。
ども、BOMっす。いやいや、面白かったっす!次回を期待しつつ、ではっ!! (BOM)
- >声だけで3サイズ体重すら判別可能なのだ!
>
>
> ……無駄に使えねえ。
…………………………馬鹿者。
貴方は何て事を言いますか?
『こんな素晴らしい能力に向かって』
いやはや、あしゅがこんなに凄いよ。(遠い眼)
おキヌちゃんもそら逃げるってなも。w (KAZ23)
- >『あの人……あの人がいいわ』
この設定でその判断は激しく間違っています、おキヌちゃん……。 (U. Woodfield)
- ええと‥‥なにからつっこんでいいものやら。(笑)
微妙に逆行物かなと思う以前に、面白さが全面に溢れてますね。
おキヌを口説いたり追いかけたりするアシュ様ははじめて見ましたよ〜
べスパの折檻も愛情の裏返し?
それより早く帰ってあげないとパピリオ可哀想‥‥(哀)
こうなると美神にどういった形でルシオラたちの存在が知られてしまうのか、という所も楽しみですね。 (ヴァージニア)
[ 前の展開予想へ ]
[ 戻る ]
管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa