ザ・グレート・展開予測ショー

不思議の国の横島 ―15後半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/10/28)


<前半からの続き>




ソファーに腰掛けていたのは理事長の他にあと3人…

「やあ、どうだい、最近の調子は?」
「はあ、ボチボチっす。」

1人は唐巣神父だ。この人は別にもうこっちでも知り合いだから良い。
問題は残りの2人の方である。あ、いやいや…問題だなんて程じゃないんだがね。

「はじめまして。私は美神美智恵、ICPO超常犯罪課日本支部の長官をしています。」

み、美智恵さんっ!
遂に登場した。と言っても、令子ちゃんと遭っていたからこれは想像していたとおりである。
今日ココでってのはともかく、いつか遭うだろうなぁ…と漠然と考えてた。

「はじめまして。横島忠夫です。」

美智恵さんが右手を差し出して来たので、俺も急いで右手を差し出し握手をした。
ああ、この美智恵さんはアレだな?ひのめちゃんを育ててるお母さんな美智恵さんよりも、非情になりきって仕事をこなしてた頃の美智恵さんに近いイメージがある。
握手の瞬間、美智恵さんは俺の事を油断無く観察していたようだ。
ってか、そんな風に思う俺も無意識に観察してるなぁ……

「なるほど、先生が推すだけは有りそうね?なかなか良い霊波してるわ。」
「そ、そうっすかね?」

美智恵さんはフフと笑って俺に語りかける。
自分ではいまいち分からないんだよね。自分の強さって。
と、最後の1人が俺の前に立つと、美智恵さんと同じように右手を差し出してきた。
この面子の中では、この人が一番俺のハートにドキュンバキュン!

「はじめまして。私は龍神族の者で小龍姫と言います。」

―― おおーーーーーーーーーぉぉぉぉっっ!!!!! ――

小龍姫様ぁっ!!変わらないそのお姿っ!!くぅーーーーーぅっ!!!

「あい……」

―― !? ――

ヤ、ヤバイ!?
俺は何も考えずに口にしようとしたその言葉を急いで飲み込んだ。

『あいかわらず、お美しい』

ココでは…俺は小龍姫様との面識が無いのである。つまり、相変わらずというのはおかしいのだ。
これはイカン!すかさず誤魔化さねば!!

「あい…あい………」

1.藍は藍より出でて藍より青し
2.アイスティーお好きですか?
3.アイルランド民謡

だ、駄目だ!?一向に良い考えが浮かんでこないっ!!
くそっ、そこまで考え込むものじゃ無いんだ!何でも良いんだ!
そう、そうさっ!!

「I love you from before all the time.(ずっと前から愛してましたーーーぁっっ!!!)」
「突然流暢な英語で口説くんじゃな〜〜〜いっ!!」
「横島ク〜〜〜ン!貴方って人は〜〜〜ぁっっ!!!」
「小龍姫様に無礼を働くんじゃありませんっ!!」

―― ドゴ、ボゴ、ドゲシ、ドゲシ、ガツン、ガツン!!! ――

どうやら俺は選択を誤ったようで………小龍姫様以外の皆さんにボコられました。
どうでもいいが、初対面なのに容赦無いですね美智恵さん?

「ええと……結局、今こちらの方は何と?」

小龍姫様には、俺の小粋なギャグは通じなかったらしい。
哀しいなぁ…
俺は薄れる意識の中、そんな事を思っていた。

………………










「コホン……さて、冗談はこれくらいにして、本題に入りましょう。」
「いや、俺は決して冗談のつもりは………いえ、本題に入りましょう。」

俺の意識が戻ると(1分くらいだったって)理事長が真面目な顔をして切り出した。
アレを冗談と言われるのは心外である。俺は抗議しようとした………が、身の危険を感じたので抗議は取り下げる事にした。

「これからの話はGS業界全体、ひいては人間社会全体ににかかわると言っても良い程の話です。このメンバー以外には他言無用でお願いしますね〜」

珍しく、理事長が大真面目だ。どうやら本当に大きな話らしい。
良いのか?そんな話に俺が加わっても?
なんとなく首を傾げる俺とは無関係に、話は続く。

「それでは小龍姫様お願いします〜」
「はい。さて、皆さん……」

と、話は小龍姫様に移る。

―― ん? ――

奇妙な違和感を覚える。なんだか、この展開に覚えがあるような気がした。
なんだろう?すごく………何処かで覚えが…
俺は昔の記憶を辿ってみる。
今目の前で行われている事に覚えがあるような気がしたからだ。

「天界が調査した所、今回のGS試験に魔族が関与して来るという情報が浮かび上がってきたんです。」
「あっ!?」

思い出したーーーーーっぁぁっ!!!

「なんですか?」
「あ、いえ!続けてください。」

これって、俺がGS免許取るきっかけになった事件とそっくりじゃねぇか?!
ってことは、敵はメドーサか?!
1つ思い出したことで、一気に過去の記憶が蘇えって来た。

「敵の首謀者の名はメドーサ。邪悪な龍族でも最悪の魔物です。どうやらGS業界をコントロールしようとしているらしいんです。」
「GS業界のコントロールですか?」

唐巣神父がメガネのズレをクイッと直して聞き返す。

「妖怪や悪魔にとって〜GSは邪魔な存在よ〜…でも、もしGSが裏で妖怪や悪魔と繋がったとしたらどうかしら〜?」
「なるほど…マフィアが警察と手を組むようなものね?」

唐巣神父の疑問に、理事長が疑問形の解答を述べる。それを聞き、最後に美智恵さんが結論を言った。

「情報では、とりあえず息の掛かった人間に資格を取らせるようです。でも、それが誰なのかはわかりません。」
「そこで横島さんの出番というわけです〜〜♪」
「は?」

あ、なんだか嫌な展開……

「GS試験に潜り込んで、受験生の中に怪しいのが居ないか見定めて欲しいの〜♪」

理事長の言い方は一応はお願いの形だが、それが決定事項であることは嫌というほどに分かっていた。

「あの〜……試験に潜り込むというと〜……具体的にはどのように〜?」
「変装してGS試験を受けるのよ〜♪」

やっぱり………

「ほんと、いきなりとんでもない話持ってきますね?嫌っすよ、俺!いいじゃないですか、ワザワザ試験受けなくたって!会場で見てれば怪しい奴なんて……」
「お願いします横島さん。メドーサの悪事を阻止する為に是非協力してください。」
「全てこの横島にお任せ下さい、小龍姫様!必ずやこの任務を成功させて見せましょう!」

やはり、メドーサを野放しにするわけにはいかないよな!
ここは正義の為に俺が一肌ぬがなければっ!!

「せ、先生……この男、本当に大丈夫なんですか?」
「腕は確かなのよ………それにこう言ってても、結構口だけなのよ?本音の部分では女性と深く関わるのを避けてる節があるの……」

メドーサか……って言う事は、もしかしてGS試験を受けに来る奴らってあいつらなんだろうか?
俺は、当時の記憶を掘り起こす。
俺の記憶にある事件。あのときGS試験に潜り込んできた3人を……
鎌田勘九郎、伊達雪之丞、………

―― あれ? ――

もう1人の名前ってなんだっけ?
……ネン、そう、なんとかネンだったよな?

「………………」

……チンネンだったかな?
微妙に違うような気もするが、まあいいや。たいした問題じゃないし。

「とにかくあと1週間だ。その間に出来るだけ情報を集めよう。」
「そうですね………ああ、ところで私は………この件にはあまり参加できないかも知れません。申し訳ありませんが……」

と、大体の話が終わったところで美智恵さんがそう言ってきた。済まなそうに謝罪する。

「ああ〜…美智恵ちゃんには怪盗捕まえるってお仕事もあるものね〜……」
「怪盗?いったいなんの話ですか?」

理事長が美智恵さんの言葉から事情を推測して理解を示すと、逆に小龍姫様はその意味が理解できずに疑問を口にした。

「怪盗ムーンレスナイト、いま日本で一番知名度の高い泥棒です。狙うのはオカルトアイテムのみで、未だにその姿すら捉えられていないとの事です。」
「狙いがオカルトアイテムって事で、ICPO超常犯罪課に捜査権が回って来たんです。初めは部下が事件に当たっていたんですが、一向に進展しなくて。私が日本に呼ばれたんですよ。」

唐巣神父と美智恵さんが小龍姫様に説明する。
流石に俺もその怪盗の話は知っていた。連日テレビを賑わせてるからな。

「もしかしたら、犯人は魔族かも知れない………私はそう考えているんです。」
「魔族?!ではメドーサと何か関係が?!」
「あ、いえ。まだ推論ですし……仮に当たっていてもメドーサと繋がりが有るかどうかまでは分からないですよ。」

魔族と聞いて、小龍姫様の眼がキツクなる。だが、美智恵さんは苦笑しつつやんわりと断りを入れた。

「まあ、そんな訳ですから。前日まではともかく、当日の協力は出来ないかもしれません。」
「いえ、事情がおありなら無理にお願いするわけにもいきませんし。大丈夫です。メドーサは私たちで必ず捕まえて見せます。」

小龍姫様は拳を握り締めて力強く言い切る。

「そうさ。この件は我々に任せて、君は君の職務をまっとうしたまえ。」

唐巣神父は優しい表情で美智恵さんに述べた。

「有難う、唐巣神父。」

美智恵さんはそれを受けて神父に微笑み返す。

「だから頑張ってね〜横島ク〜ン♪」

そして六道理事長は相変わらずの他力本願だった。

「………ま、なんとかやってみるっすよ。」

俺はそれだけ答える。
実際に俺の知ってる事と何が同じで何が違うのか…それが分からないのだから、迂闊な事は言わないほうが良いだろう。
さてさて……

「…………どうなるんだろね?」

周りに聞こえないように、俺はボソッと1つ呟いた。



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