ザ・グレート・展開予測ショー

悲劇に血塗られし魔王 13


投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/11/ 1)

ここは魔界の「ラ・ヴァ・ラレア山」の麓にある村。
魔王の支配下に置かれていない数ある村の一つで、「コレイル」と呼ばれる耳が赤褐色の亜人種が統括している。
「コレイル」は普段は大人しいが一度火がつくとその猛々しいまでの気性には手がつけられない。
特に武器を持った時の「コレイル」は非常に危険だ。
「コレイル」はそもそも魔力の低い部族である。
低級といって差し支えない。
それ故昔は虐待の日々を送っていたという話だが、もう今ではそんな話は一つも無い。
それどころか、媚びへつらう魔族も多く現れている始末だ。
なぜそこまでになったか・・・・
それは、大きく二つの理由があげられる。
一つは「魔力付与」の力が元より備わっていること。
それも、付与する対象は人ではなく物質にである。
これは数ある魔族の中でも「コレイル」のみに与えられた特性だ。
この特性を使うと物質に魔力を与える事でその物質に属性を帯びさせたり、硬質化させたり、鋭利化させたり、と様々な事が可能になる。
もう一つは前述にもあるが「コレイル」は一度切れると人が変わったように獰猛になるということ。
その時、体が変性し戦闘に特化した身体つきになるのだ。
筋肉増大による攻撃力の飛躍的アップ。
敏捷性の飛躍的アップ。
防御力の飛躍的アップ。
何もかも飛躍的である。
昔はただそれだけに留まったが、「魔力付与」の有効な利用法に気づいたその時この部族は生まれ変わったのだ。
弱者から強者へと。
虐げられるものから、虐げるものへと。




ズッシャーーーーーーーー!!

「ぐうっ!!」

余りの攻撃力に防御してもそのまま後方へ吹き飛ばされる。
予想以上だった。
これなら多くの魔王があえてこの部族に手を出さなかったのも頷けるというものだ。
「コレイル」は強い。

「これが新しき魔王の力か。ふん、片腹痛いわ。」

目の前に立ち俺を悠然と見下しているのは、この村の長であり「コレイル」の頭領。
2メートルあろうかという巨躯。
見事にテカッた頭。
ギラリと鋭い眼差し。
荘厳な雰囲気。
そのどれもが頭領にふさわしい。
確か名前はズルベニアスとかいったか・・・・・

「所詮、ただ魔王の力を得て浮かれておる小僧ということか」

ズルベニアスは嘲笑する。
豪奢で煌びやかな戦斧を振り回して自分の力を誇示しつつ・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・
ふっ、仕方あるまい。
これは使いたくなかったのだがな・・・・・


・・・・ふぅっ、思い出すぜ。

人間だった頃に何度こんな目にあった事か・・・・


だがしかし!!
その時の経験が今こそ物を言う!!
やあってやるぜ!!
うおりゃああああああああああ!!!





俺は全速力で相手に近寄ると、











がばあっ!!


「へへへっ、旦那には敵いませんぜ。いやっもう、旦那はお強い!!不肖この私、旦那の強さにノックダウンっでありんすよ」





・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・媚びへつらった。
この時、手をもみもみするのは重要なポイントだ。

・・・・・
・・・・・
・・・・・
はあ〜、俺ってつくづくお笑い系だな〜
なんでこんな俺が「悲劇」なんだろな〜
そんな事を内心で愚痴る。
敵であるズルベニアスは俺のいきなりの態度変えに思わずタジタジである。

「・・・・・・魔王が媚を売るなんて初めて見たぞ」

そりゃ、そうだろうな〜。
でもこれは俺が長年培った習性みたいなもんやし・・・・

「仮にもお前は魔王であろうが!!誇りはないのか、誇りは!!」

「旦那の強さの前にわての誇りなんてごみくずでっせ〜」

徹底的に何故か関西弁で媚びりに媚びる!!
初志貫徹、これ大事!!

(っと、しまったーーーー!!)

俺はその時、初めて気づいた。
今の俺は仮面をつけている。
仮面をつけたまま、媚びへつらう様は・・・・・・
・・・・まぬけすぎる。
俺はその様を想像して思わずくる笑いの衝動を我慢しつつも、手のもみもみは忘れなかった。

・・・・・・・負け犬根性はどこまでも染み付いていた。

ズルベニアスは肩をフルフルと震わせる。
あっ・・・・・怒ったかな?

「うお〜〜〜。悲しい、悲しいぞ!!こんなのが魔王だなんて・・・・・魔界に明日はないのかーーー!!」

ズルベニアスは男泣きをした。
・・・・・今がチャンスかな?
え〜い♪

ガシッ!!

鋭く突き出した拳をいともあっさりと掴まれる。

「えっ」

頬に冷たい汗が流れる。
もしかしてばれてた?

「とことんまでに腐ったその根性、我輩が直してくれるわーーーーー!!」

違ったみたいだ。
なのに、かなり本気で突いた拳をあっさり受け止められたことはかなりショック・・・・

「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ、旦那!!」

俺は慌てて掴まれた腕を振り解く。

「旦那にこのどうしようもない根性を直してもらえるのは嬉しいんすけど・・・・・・・その前に見てもらいたいもんがあるんすよ」

ズルベニアスは高まる激情を抑えながら辛抱強く「なんだ、それは。」と俺の話を聞く姿勢を作ってくれる。

「へへ、それはっすね・・・・・」

(・・・・仕方ないよな、こいつが強いからいけないんだ)

俺の脳の中である物にアクセスする。
と同時に・・・・

「ぐっぐうううう、ああああああああああああああ!!!」

物凄い痛みが頭を刺激する。
頭を手で抑え、痛みを振り払おうと頭を振るう。

「おっ、おい、どうしたの・・・・・なっ!!!」

突然の俺の豹変に戸惑いを隠せないようだったが、それも言い終わらぬうちにある変化に気がつく。
俺の目の前の空間が歪んでいる。
いや、空間が収縮していると言った方が正しいか・・・・・
そこからズズッと棒状の何かがゆっくりと出てくる。
それに伴い、頭の痛みも引いていく。
俺はそれを手にする。

「さあ、第二ラウンドだ!!」

それは一本の長槍。
美しくもどこか儚さを感じさせる一本の細長い槍。
刃が蒼く鋭く光る。
そして蒼い刃の先端の空間がボンヤリと揺らめく。
それは、内に潜む魔力の漏れ。
それは、敵を哀れむように蔑むように・・・・・・
そして、これから起こる相手の悲劇を悲しむように・・・・・・
ただ、ただ、ボンヤリと揺らめいていた。





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小竜姫は困っていた。
天界から魔界に降りて一日が過ぎたが、一向に誰にも会わない。
会えれば、それが自分より弱いのなら実力で脅すなりなんなりできたのだが・・・・・・・・

「どうしましょう。」

手元にある唯一の手がかりである魔界の地図を眺める。
この地図も誰かの地図と同じく、場所場所に部族の名前が記されたものだった。
今歩いているところは、地図によれば「ムルック」という小部族が治める村があるはずだった。
でも、ここは・・・・・

「なんで何もない、ただの荒野が広がっているのですか!!」

むきだしの地面、そして岩壁。
とても誰かが住んでいるとは思えない。
そう、その魔界の地図は一世代前の地図だったのだ。
小竜姫は自分のミスを嘆く。
魔界は争いの世界。
部族はその為に頻繁に場所を変える。
変えない部族は勢力のある部族か魔王の支配下にあるかのどちらかである。
とすれば、この地図はほとんど役に立たない。
でも、それでも小竜姫はそれに縋る。
地図無しに魔界を探索するのはあまりに無謀だから・・・・・・

「ええっと、ここから近い村は・・・・・・ここね。」

ここからそれ程離れていない所に結構大きな村がある。

「さあ、急ぎましょう」

その村はある山の麓にあった。
その山は天界でも有名な山で小竜姫も耳にした事がある。
その山の名は・・・・・・・・


「ラ・ヴァ・ラレア山」


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様々な運命が思惑が織り重なり、一つのハーモニーを奏でる。
でも、それを奏でるには奏者が必要だということを最初に気づくのは誰であろう。
「偶然」など有りはしない。


あるのは・・・・




「必然」だけである。













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