ザ・グレート・展開予測ショー

悲劇に血塗られし魔王 8-A


投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/10/26)

屍の累々。まさにそう表現するのが的確だった。
場所は病院の数ある会議室の一つ。
そこでは青い顔をした一同が椅子に座り、いや倒れ付していた。
名前を列挙すれば、美神・おキヌ・シロ・タマモ・美智恵・・・・・そして小竜姫・ワルキューレ。
皆、気分が最悪には違いないようだがそれでは話が進展しない。

「・・・ふう、気分の悪い所わざわざ集まってもらって御免なさいね。」

そう言って話を切り出す美智恵。
なんとかいつものように振舞おうとしているが、どうも調子が出ないようだ・・・

「本当よ。夢見が悪くって最悪なのに、なんでそれから間もおかずこんなとこに呼び出し食らわなきゃなんないのよ。もう少し休ませて欲しいわ。」

美神がすかさず不満の声をあげるが、その声にいつもの元気はない。
他の皆(おキヌ・シロ・タマモ)も同じようで声にはださないが、目でそう訴える。

「御免なさいね。でも、時間が無いらしくて・・・」

「何でよ。仕事忙しいの?」

「今は休暇をとってるわ・・・とても仕事のできる精神状態じゃないのよね・・・・」

「えっ・・・」

美神は思いもよらぬ言葉に思わず聞き返してしまう。
美智恵は首を振りつつ、「なんでもない」と答える。

「とにかく、小竜姫様とワルキューレが急いでいるのよ。だから、すぐに用件の方にさっさと移るわね」

美智恵は小竜姫達に話を始めるよう目で合図する。

「・・・はい。今回、皆さんに集まっていただいたのは他でもありません。横島君の件です。」

皆に緊張が走る。
何の件か分かっていたけれど、それでも良くない話だとは分かってしまっていたため誰もが不安を隠し
きれない。

「本当は他の皆さんも集めたかったのですが、なにぶん時間が無く直接この件に関わってしまった皆さんにだけ先に報告いたします。」

そこで区切り、伏せていた目をあげ睨むかのごとく周囲を見る。

「薄々気づいているでしょう。あの横島さんの異変が何なのか。部屋に充満した瘴気。横島さんを包むように光る蒼い燐光。そして魔力。これらが指す答えは、・・・・横島さんの魔族化です!!」

最後の方に力がこもっていた為か、ビクッとまるで叱られたかのように震える美神一同。
それでも、それを認めるわけにはいかないというようにシロは小竜姫にくってかかる。

「ちょっ、ちょっと待つでござる。先生が魔族化!?そんなはず無いでござるよ。拙者、人が魔族になる際必ずその兆候が現れるという事を聞いたことがあるでござる。しかし、そんな兆候めいたもの・・・一度たりとも見たことはござらん!!」

「そ、そうよ。変よ。そこをどう説明するの!!」

シロの疑問に呼応して、美神も疑問を投げかける。
しかし、その質問は予測の範疇だったようだ。
小竜姫はあるグラフを皆に提示する。
しかし、それは一本の折れ線があり縦・横に何の記号かわからないものが記された謎のグラフだった。
皆、何これといった風情だ。

「皆さん、人間の全ての細胞は約5年周期で生まれ変わることを知っていますか?これは、それを表したグラフです。」

「そうなの?」

小竜姫の話に、それが今回のと何の関係があるのだろうと思いつつ、タマモは隣のおキヌに聞く。
しかし、そんな話等もちろん聞いたことの無いおキヌは「初耳です」と言って首を振る。
それを肯定したのは美智恵だった。

「本当よ。これは、もう結構前にドイツの医学者が発表したわ。」

「でも、それが何の関係があるのよ!!」

さっさと本題に入りなさいと言うように美神はせかす。
しかし小竜姫はそれをあくまで無視し、自分のペースで話を続ける。

「グラフを注意深く見れば気づくでしょう。ちなみに横軸は年単位の時間を示しますが、その五年、次の十年と、つまり細胞が生まれ変わる完了の時期ですが弱冠の変化が見られます。」

「本当だ。それまではなだらかな上がり直線が、その時に下にぶれてる」

律儀に反応したのは、タマモである。
シロはフンフンと頷いていたが、話についてこれてるのか甚だ疑問である。

「様々な呼び名が有りますが、分かりやすくこの時期を「細胞停滞期」と呼ぶことにします。」

そういって、もうこのグラフはいらないというように片付ける。

「話は変わりますが、横島さんはアシュタロス戦役時に死にかけたことを覚えていますか?」

その言葉にシロとタマモは驚いた顔をするが、美神・おキヌ・美智恵は苦い顔をするのみ。
小竜姫はあくまで淡々としていた。
顔に感情は浮かんでいない。
それに黙っているワルキューレもまた同じだった。
二人の態度は知らない人に接する態度そのものだった。

「そして、その時にルシオラさんから生きるためにと己を構築している霊気構造を与えられました。」

己を構築する、その言葉に美神とおキヌはピンと来た。
しかし、ルシオラを知らないシロとタマモにはそれで分かるには酷な話だろう。

「そうです。必然的といえますが、その時、一緒に魔族因子も横島さんの中に入ってしまったのです。」

「我々、魔族と神族はアシュタロス戦役が終わると同時にその事について議論を交わした」

ここで、黙っていたワルキューレが口を開く。
そして、小竜姫が黙る。
それはまるで打ち合わされたかのようだった。

「横島については、以前からやや問題視されている部分があった・・・・・・・・」

以前から、その言葉に反応しようとする美神を目で制する。

「軽薄な彼の態度からは考えもつかないことだが、彼は凶兆、その名の下に生まれてきたと言って良い程の悲運の持ち主だった。」

横島のこれまでの事を思い出す。
美神に惚れ込んでしまったこと、美神に奴隷の如く扱われる様、時には命に関わることも少なからずあったような・・・・、そしてスズメの涙程の給料。
・・・・
・・・・
・・・・・・ジトーと皆の視線が美神に刺さる。
美神は反論したかったが、でもそんな事になけなしの精神力を使いたくなくワルキューレに話を促す。

「お前達もあの蒼い燐光に包まれた横島の姿を見ただろう。」

その言葉におキヌとシロは顔を青ざめ、タマモも顔をしかめる。
美神は別段変化はない。

「勘の鋭い者、直に触れてしまったものは気づいただろうがあれは・・・・・想念だ。しかも最悪な。」

「魔族化した人間の例をとると、どれも例外なく魔族化完了最終段階にその者の魔族としての階級を示す色のある想念に包まれると言います。下から色の順位づけをするなら、赤・黄・緑・紫、そして黒。
蒼は確認されていませんが、おそらく最高位に位置するものと思われます。」

つまりあの時、それ程に最悪な想念に手を触れたおキヌは直接脳をその想念に刺激され、心神喪失状態になったということだ。
精神が壊れても仕方ないという程の衝撃を受け、それでも今のように復帰できたのはひとえに日頃の仕事でそれに近いものに触れ合っているからであろう。
またそれ程に強力な想念の為、ちょっと離れていてもそれに当てられ夢見が悪くなっても、それは仕方の無いことだ。

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