ザ・グレート・展開予測ショー

けして消えない思いと共に6(完)


投稿者名:ヒロ
投稿日時:(03/10/19)


「・・・で、瀬戸さん。あなたはこれからどうするつもりなんですか?」
 そう声をかけてきたのは、地方公務員の真下。
「あぁ、どうしようかね。もうトレジャーヒッターは辞めちまったしなぁ」
 瀬戸は不意にかけられた声にも動じずに、ぽりぽりと頭をかいた。
「なら医者を目指してみたらいかがです?ちょうどこの町にも医師の方が不足していまして」
「ははは、俺の力を生かしてってか?そいつはいい冗談だ」
 瀬戸は天に向かうように大きく笑った。その頬には行き場を求めるように雫が流れていた。




「ぢょっどぉぉぉびがびざんんん」
 とかまぁ、いつものごとく声を上げたのは、やはりいつものごとく横島であった。
「しゃべってると舌噛むわよ!!」
 とか叫びながら、プロのレーサー顔負けのハンドルテクニックで公道を突っ走っているのは、やはり美神である。
「美神さぁぁん、私、病人んん」
 やや苦しそうに、だがどこか楽しそうに叫ぶのは、先程まで寝込んでいたおキヌ。
 ひたすら並いる車たちを追い抜いていくその派手な車の先には、一つの天にまで向かわんと聳え立つ塔があった。
 薄暗く染まりつつある世界を照らすかのごとく光り輝く建造物。

 ―東京タワー―

「まだまだ、暗くなるには時間がある!!」
 ひたすらに速度を上げて、後ろから『ファンファンファンファン』とか聞こえるような気すらしつつ、美神はうっすらと笑みを浮かべた。

 そして・・・

「ってわけで、さっさと降りろヤドロク!!」
 凄まじい速度で一気にタワーへ近づいていったその車(コブラ)から、横島は蹴り足でもって、一気に叩き落された。
「こんなときくらいやさしくおろせんのかー」
「こっちはあんたのおかげでいろいろ大変なんだから我慢しろー」
 とか叫びながら、美神は思いっきり横島へ一輪の花を投げつけた。
「これは・・・?」
 美神は悲しそうな笑みを浮かべながら答える。
「それはまんじゅしゃげ・・・ヒガン花とも呼ばれてる花よ・・・見た目はあれだけどいまのあんたにはぴったりでしょ?」
「まぁ、見た目はあれですけど・・・どうしてこれを?」
 横島は見た目があれな花を見て、訊ねる。
「瀬戸がね、墓の前に咲いていたそれを見てさ、理沙はあんたにこの花を渡すために咲かせたんじゃないかってさ・・・」

 悲願花・・・田舎に行けば、よく墓の前に咲くという。握りこぶしと同じくらいの赤い花・・・

 その花言葉は・・・


 ファンファンファンファン・・・・・・

「やばい!!もう追いついてきたじゃぁがんばんなさいよ明日まだずっと今日みたいな調子だったら給料から差っ引くからねぇぇぇぇぇぇ・・・・・・!!」
 猛スピードで美神は車を走らせ、それを大量のパトカーが追いかけていった。

 横島はそんな様子を汗をかきつつ見ながら、黙って手の中に納まっている花を握った。

「瀬戸・・・あなたの思いは、伝わったよ・・・」
 
 彼は一言そういってから、タワーの中へと入っていった。



 
「あぁ、もうしつこいわねー!!」
 美神はいらいらしたような気持ちでハンドルを握っていた。
「で、でもスピードの出しすぎじゃぁ・・・」
 おキヌは大きな汗を流しつつ、でもやはりどこか楽しそうに言う。
「こうなったらどこか適当なとこでとまって、悪霊のせいにでもしておけば・・・」
 とか何とか言いながら、美神はいつぞやの銀行襲撃のときに使った低級霊入りの鉄砲を取り出す。
「は、犯罪ですよそれ」
「なにが?証拠なんか残さないし、そもそもわたしじゃなくて霊の仕業でしょ」
 いつか呪われるぞ?

「・・・でも、まんじゅしゃげなんて、どこか皮肉ですね」
 おキヌは悲しそうに目を細めた。
 横島の手へと渡ったその花を思い浮かべたのだろう・
「そうね・・・瀬戸の恋人の墓に咲いていたっていうんだから・・・」
 美神も悲しそうに虚空を仰ぐ。
「横島さん、あれの花言葉、わかっているんでしょうか?」
「さぁね、まぁあいつのことだからわかるわけはないと思うけど、なんとなく感覚的には理解できたんじゃないの?」
 美神はそういいながら、肩をすくめた。
 おキヌもそれを見て、クスリと笑みを漏らす。


 まんじゅしゃげ、ヒガン花とも呼ばれるそれの花言葉・・・

 悲しき思い出、陽気な気分、そして・・・再会・・・

 理沙の墓から生まれ、瀬戸を介し、横島へと渡っていったそれは、いまは東京タワーの一角でゆらゆらとゆれていた・・・


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