ザ・グレート・展開予測ショー

白い混濁と淡い気持ち10(終わり)


投稿者名:ヒロ
投稿日時:(03/11/ 6)



 横島はどこか決意めいた輝き・・・まるでそれがすることによって何かが変わるとでも言うかのように、輝きを持って目を光らせる。

 時間・・・短い時間ながらも、その命をいっぱいに使おうとした女性・・・

 救う・・・自分はその女性を救ってやることはできなかった。その代わりというわけではないが、せめてこの小さな命を本当の意味で救ってやることは、自分にも何か転機があるような気がする。

 横島は己の中で一つ一つ今回の出来事を反芻していき、最後に一つ頷いて見せた。
「どれだけ時間がかかるかわかりませんけど・・・必ず救って見せますよ」
 そういう横島を今まで黙って見ていた美神がにやりと見詰め、不意に彼を指差した。どこかその顔には期待のような色すら浮かんでいたが・・・
「なら救ってやりなさい。もし救うことができるのなら、この事務所の看板を『美神&横島除霊事務所』に変えてやらないこともないわよ?」
 冗談なのか本気なのかわからないような台詞を言った。
「ちょ、それ前にも言ったじゃないっすか!!」
「前はあんた首席合格じゃないからでしょ!これだけの事してやってるんだから、ちょっとは真面目にやんなさいよ!!」
 横島の叫びに、美神は強気な表情で返す。いつしか横島の暗い気持ちは吹き飛んでいた。

 事務所はいつもの通りで、いつもの如く・・・これの事務所の名前が変わるのはまだまだ遠い・・・
 いつもの如く、いつもの如し・・・この事務所には他愛のない笑いと必死さの伝わる叫びが木霊すだけであった。






「せんせーい!!散歩にいくでござるよ!!!」

 この日もまた、狭いアパートの廊下に無闇やたらと元気な声が響き渡った。
「う〜ねみぃ・・・・・・」
 横島はたるい頭をかきながら、その身を起こした・・・そして、廊下へと続くたった一枚の木の板・・・つまりドアであるが、それを見やる。
 当然の如く、そこには一人のシルエットが浮かび上がっていた。わざわざ確認するまでもない。シロである。
 横島はその影に向かって口を開いた。
「も〜ちょっと寝かせてくれ〜」
 自分のことながらあまりにも情けない声なのだが、眠いのだから仕方がない・・・
 ・・・だが、影が放った言葉の内容は少々意外なことであった。
「いいんでござるか?先生に会いたいという女子(おなご)がここにいるんでござるが・・・白くて小さい女の子が・・・」
 わざとらしく遠まわしに言うシロの言葉に横島は眠気も忘れていつの間にか微笑んでいた。
「早くしてよね」
 ここからは見えないが、どうやらタマモも一緒らしい・・・どういう心境の変化であろうか、珍しいこともあるものだ・・・
「しょうがねーなー・・・いってやるか」
 彼はそう言うと、近くにあったジャンパーを引っつかんだ・・・


 結局、その日は横島には珍しく走って40キロも散歩に付き合ったらしい。
 三人の影に付き合うようについて行く一匹の子犬はどこか嬉しそうであった・・・

 いつもの通りとは少し違うが、ただひたすらに広がる青空は、世界を纏めるかのようにただ広く・・・広がるばかりであった。
 
 

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