ザ・グレート・展開予測ショー

悲劇に血塗られし魔王 8-B


投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/10/26)


「悲運は悲劇を呼び込む。その特徴は魔族では褒められたものだが、それでも横島ほどの悲運はさすがに行きすぎだった。よく、これが魔族だったら偉い事だと冗談半分で言われたほどだった。」

そんな横島が魔族化する。
これは神魔共に由々しき事態となった。

「最初はすぐ抹殺すべきだと言う意見もありました。」

小竜姫が口をはさむ。

「しかし、彼はまだあくまで人間。またアシュタロス戦役時の功績もあります。その意見は取りやめられました。」

皆は黙っている。

「希望はあったのだ。人間の因子と魔族の因子が拮抗していたからな。上手くすればただの魔族因子を持つ人間で生涯を終えれたはずだった。しかし、それは結局甘い幻想というものだった。」

話が終わりに近くなるにつれ、その話もまたより悪い方向へと進んでいった。
皆もそれを感じているのか、もう聞きたくないと言うようなため息まで出てしまう。

「先程の話を思いだしてもらおう。「細胞停滞期」の話だ。この時期、人間の細胞は一見活動が停止したのかと錯覚する程ゆっくりになる。それは霊気にも関係し、その時極微細だが霊気の出力が悪くなるらしい。」

だから?という顔をする一同。

「分からないか?つまり、この時人間の因子もまた活動を弱めるのだ。」

その言葉は皆を凍りつかせた。

「横島がこの四年と八ヶ月、兆候が現れなかったのはその為だ。当たり前だ!!それまでは、魔族因子を保有したただの人間だったのだから!!」

ワルキューレの言に熱が帯び始める。

「細胞停滞期、横島にとって四年と八ヶ月後がそれにあたった。この時に均衡が崩れ、一気に、一気にだ!!魔族因子の活性化による人間の因子の破壊。それによる体の変調。・・・・・・細胞停滞期は横島にとって、魔族化を決定付ける日だったのだ。」

ワルキューレの口調の端々に悲しみが滲んでいたが、その表情はあくまで変わらず、態度もまた毅然としている様は人に、この人こそ軍人の鑑と印象付けさせるかもしれないが小竜姫はそれがなんだかとても悲しかった。

(あなたは、軍人である前に一人の女性でしょうに・・・・)

「・・・・どうしたの」

声は震え小さかったが、それは皆に伝わった。
搾り出すように声を出した女性は俯いている。
それは、恐怖から逃げるようでもあり、内に溢れる怒りを押し殺すかのようでもあった。

「横島さんをどうしたの!!」

おキヌであった。

「我々は、上層部に横島の観察を任じられた。横島の魔族化を未然に・・・・」

「前置きは良いでござる!!」

シロは、答えを遠ざけようとするワルキューレの態度に苛ついた。
だって、それではまるで・・・・・

「殺しました。」

それでは、まるで横島が死んだことを暗に示しているようだったから・・・・

「ひっ!!ああ、ああああぁぁぁ・・・・・」

「き、貴様らぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

おキヌは泣き伏せ、シロは小竜姫達に向かって駆ける。
一迅の突風の如く駆け霊波刀で切りかかるが、それをあっさり神剣で受け止められ返し手で吹き飛ばされる。
シロは立ち上がろうとするが、膝がガクンともつれ倒れてしまう。
一撃でのされてしまったようだ。

「・・・・!!」

言葉に表記できない無念の声をあげるシロ。
しかし、誰も声をかけようとしない。
できやしない。
美神は呆然と何かを呟く傍目から見て危険な状態だったし、おキヌは泣き崩れているし、美智恵はそんな彼女等から目を背けていた。
唯一、タマモだけはしっかりと小竜姫等を見ていた。

「あなた達からの非難、いくらでも受けましょう。今回の件について我々は何の弁解も致しませんし、しようとも思いません。非難、弾劾、大いに結構です。それで気がすむならいくらでもして下さい。喜んで付き合いますよ。あっ、でもまだやり残していることがあるので殺されてはあげられませんので、そのことは勘弁してくださいね。」

小竜姫らしからぬ嘲弄とした口調。
それは自分を悪役に貶める行為の何者でもなかった。
ただ、それで自分の罪を極微量でも軽減できたら・・・・
それ故に口からでる心にも無い言葉をつらつらと述べるその様は痛々しいことこの上なかった。

「まだ、隠していることがあるでしょ。」

美神が正気に返る。
おキヌの泣き声が止む。
シロと美智恵は意識をまた、二人に集中する。
タマモは話を続ける。

「私ねー。気になってしょうが無いことがあるの。横島の部屋から出て、すぐ問答無用で気絶させられる時ちらっと見えたのよね。あなた達の大仰な武器を・・・・」

タマモは自分の髪の毛をいじくり始める。

「横島を殺すだけなら、あんな大層な武器いらないわよね。そしてさっきの話では、なぜその武器を使用したか一切触れていない。・・・・・あなた達、横島に何をしたの?」

タマモの目が細く鋭くなる。
皆の視線が集まる中、小竜姫たちは沈黙する。
長い沈黙がおりた。
時間が経つにつれ、皆の猜疑心が強くなる。
一体、何をしたのか。
予想が予想を呼び、湧き上がる最悪な想像に身をもだえさせる。
沈黙を破ったのは、以外にも美神だった。

「・・・・・横島君に来世はあるの?」

二人は俯く。
美神は思わず二人に駆け寄る。

「ねえ、横島君に来世はあるの?」

返事は無い。
それは、もはや肯定でしかなかった。

「そ、そんな・・・・」

その場にペタリとへたりこむ。
美智恵はそんな話聞いていないと頭を抱え込む。

「・・・・・それじゃあ、魂を封印されてしまったのね。」

「・・・・・・・」

しかし、返ってくるのは沈黙のみ。
それは、余りにも残酷な答えだった。
美神は声もあげれず、そのまま昏倒した。

「なっ、ええ、どういうことでござるか!?」

美神が昏倒した訳もわからず、シロは周囲に問いかける。
誰も答えはしなかった。
おキヌは頭で理解はできたが感情が追いつかないと言った様子でしゃべる余裕など無く、タマモは自分の予想より遥かに悪い答えに蒼白の上、気分まで悪そうだった。
美智恵も似たり寄ったりだ。

「つまりだ、横島の魂はどこを探しても見つからないのだ・・・・」

「えっ?」

突然答えだしたワルキューレに思わず問い返してしまう。

「横島の魂は消去されたのだ。」

瞬間、シロの頭の中で何かがガラガラと崩れ落ちた。
呆けたようにその場に立ちつくす。
小竜姫とワルキューレはもはや、言うことはないと部屋を出ようとする。
と、ドアにさしかかる手前でワルキューレは思い出したように言う。

「申し訳ないが横島の遺体は魔族上層部が預かることになった。遺体すら目にできないこと、深くお詫びする。」

果たして、この言葉をちゃんと聴けた人はこの場にいただろうか・・・・・

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