ザ・グレート・展開予測ショー

しょーと・しょーと [ある日どこかで編]


投稿者名:dry
投稿日時:(03/11/ 3)


註:この投稿は原作への依存度が高いので、できれば原作と併せて読むことをお勧めします。

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《プロフェッショナル》


 カオスらの訪問を受ける中、おキヌは美神の指示により、別室で除霊作業の準備をしていた。



『対地縛霊装備だから……破魔札を多めに用意して……』

 必要な物をリュックサックに手際良く詰めていく。

『……それと、予備の神通棍に、吸印護符に……』

 まだ詰めていく。

『……見鬼くんに、封魔札に、霊体ボーガンに……』

 さらに詰めていく。

『……呪縛ロープに、簡易結界に、霊視ゴーグルに、結界用のマーカーに……』

 どんどん詰めていく。

『……拳銃と銀の弾丸に、トランシーバーに、懐中電灯に、地図に、コンパスに、保存食に……』

 良く分からない物まで詰めていく。

『……寝袋に、防寒用の衣服に、ビニールシートっと!』

 限界まで膨れ上がったリュックサックを前に、一息つくおキヌ。
 普段の装備と大して差が無い感じがするのは、気のせいだろうか。

『あと、2番装備だからトランクに着替えを入れないと』

 これで終わりかと思いきや、まだ仕度が残っている様だ。
 彼女もこの重装備に疑問があるのか、手を動かしながら首をかしげる。

『美神さんは「プロはあらゆる事態を想定し、臨機応変に対処できないといけないのよ」って言ってたけど、本当にこんなに必要なのかなあ?』

「の゛わ゛―――っ!?」
「よ、横島クン!?」

『えっ、何!?』

 トランクを放り出し、おキヌは悲鳴の聞こえる方角へ慌てて飛んでいくのだった。



 美神のプロ意識のしわ寄せが荷物持ちの所へ来ているのは、ご存知の通り。哀れ、横島。






《芸》


 カオスが吸血鬼を退治しに地中海へ向かう前日、その昼下がり。彼はマリア姫の元を訪れた。



 城の中庭にてしばしの別れを惜しむ二人。少々ぎこちない雰囲気から、どうやらその関係はあまり進展していないらしい。

「そうそう、今日来たのは挨拶ついでに姫に献上する物があったからです」

 カオスの台詞に反応し、それまで彼の足元にうずくまっていた妙な物が身体を起こした。

「鉄で出来た犬の様だが……?」
「見ての通り、ただの犬ではありません。命令には忠実だし、かなりの戦闘能力も持っています」

 留守の間、自分の代わりと思って大事にしてくれ、とまでは流石に言えない。
 あくまでマリア姫の護衛代わりになるだろうと説明するカオス。

「実はこいつの名前はまだ決まってないのです。そこで姫に……」
「皆まで言わずとも良い。……そうだな、そなたの名は『バロン』じゃ!」

 カオスは早速その名を機械犬にインプットし、ついでに命令の優先順位の最上位をマリア姫に設定してある事を伝えた。

「良いのか?」
「献上すると言ったでしょう? それに、姫が名付け親ですからな」

 姫の方へバロンを軽く押しやるが、彼女は無意識の内に腰を引いてしまう。機械の犬では仕方あるまい。

「ああ、そんなに構えなくても。こいつには学習機能も備わってましてな。色々と芸を仕込む事もできますぞ?」

 いつもは豪胆な彼女の意外な一面に頬を緩ませながら、カオスは懐から取り出した骨を放り投げた。

「おおっ、見事なものだ! 動きも普通の犬と比べて遜色が無い! 私も試して良いか?」

 宙に跳びあがって骨をキャッチする機械犬の姿に、マリア姫は何度も歓声を上げる。
 すっかりバロンが気にいったその様子に、つい目尻が下がるカオスであった。



 ちなみに、この芸が原因でバロンはゲソバルスキーの技に敗れるのだが、それはまだ先の話。






《変化》


 ここ、ドクター・カオスの秘密研究所では、カオスによる時間移動能力の講義が終わろうとしていた。



「つまり、未来へ帰るにはマリアが必要なのね?」
「ん、まあ、そういう事だな。それでだ」

 対プロフェッサー・ヌルの作戦会議に話は移る。

「お前達が囮になってヌルを引き付け、その隙に私が空から城の内部に潜入しよう」

 城内にエネルギー源が存在する事を示唆し、それを抑えれば魔族相手とはいえこちらが有利になると説明するカオス。
 自分が作戦から外された事に、正義感の強いマリア姫は抗議した。

「カオス様、囮なら私の方が適任じゃ。それに、全てを他人に任せっきりにしては領主の娘として面目が立たぬ!」
「……分かりました。但し、貴方を危険な目の合わせる訳にはいきませんからな。私と一緒に行動するというのでどうです?」

 そう言いながら、棚から「変化」と書かれた札を取り出す。

「この変化の札を使えば誰でも姫に化けられます。横島と言ったな、ちょっと試してみてくれ」
「? こうか? ……おおっ!?」

 額に札を貼った横島が、マリア姫の姿を注視しながら精神集中すると、たちまちその姿は彼女と全く同じものへと変わった。

「……あの人形もそうだったが、自分そっくりなものを見るのは変な気分じゃな」
「服まで一緒に変わってるわね。もしかして幻術のたぐい?」
「その通りだ。激しい動きさえしなければ、そうそう効力が切れる事は無い」

 一方、三人の間で交わされる会話を余所に、横島は何故か身体をもぞもぞさせている。
 それを見咎めた美神が声を掛ける。

「横島クン。変化したままあとでこっそり服を脱ごうとしても、駄目よ?」
「イヤだなあ、ボクがそんなコトするハズがナいじゃないですか! ハ、ハハハ……!」



 残りの2人から鋭い視線を浴びせられ、冷や汗をかく横島。どうやら図星だった様だ。






《趣味》


 マリアの回収に成功し、さらに中庭にある秘密の通路から地下のモンスター工場へ向かうカオス一行。



「この地下通路……本来は緊急時の脱出用といった所か……」
「そう。普通なら、こういったものは城主やそれに近しい者しか知らぬはずじゃが……ヌルめ、おそらく父上から聞き出したのであろう」

 「カエルはいいな〜」状態の父の姿が脳裏に浮かんだマリア姫は、怒りと屈辱に肩を震わせる。

「何、奴さえ倒せばお父上も元に戻せよう。それまでの辛抱です……ん、この扉、ロックが掛かっているな? 念の為だ。M-666……こほん、マリア!」
「イエス! ドクター・カオス!」

 時間は惜しいし、通路はまだ先へと伸びている。
 しかし、カオスは直観的にこの扉の向こうの重要性を察知したのか、マリアにロックを破壊させた。
 扉を開き、中を覗きこむ。

「扉には『プロフェッサー・ヌル以外は立入禁止』とか書かれていたが……こ、これは!?」
「……!?!? カ、カオス様、見てはならん!!」

 マリア姫は何故か顔を真っ赤にし、力任せにカオスを部屋の外へ引っぱり出す。

「マ、マリア!! この部屋にある物全てを処分するのじゃ!!」
「イエス!!」

 彼女の感情が伝染したのか、やけに気合いの入った返事をするマリア。
 部屋の中からは破壊音が響き渡ってくる。

「……おのれ、ヌルの奴め……………………羨ましい」
「カオス様! 何か言ったか!?」
「い、いや! 私は何も言ってませんぞ!!」

 姫に後頭部を鷲掴みにされ、カオスは慌てて弁解した。



 その部屋には「マリア姫の恥ずかしい写真」やら何やらが、所狭しと陳列されていたそうな。






《リサイクル》


 無事、現代の事務所に帰還した美神・横島・マリア。美神はカオスに、道具をガメてきた事の正当性を主張していた。



「タコ退治のギャラを黙って貰ってきただけでしょ! 700年も昔の事だから時効よ!」
「ぬう……。まあ、あの時はお主らのおかげで姫を助けられたしのう。その代わり、マリアを貸すという話は無しじゃぞ?」
「OK、それでいいわ。……あとで返せと言われても返さないわよ?」

 少々子供っぽい念の押し方だが、絶頂期のカオスが作成したオカルトアイテムの価値を思えば無理もない。

「さっ、横島クン。これの仕分け、お願いね。おキヌちゃんはお茶を出してくれる?」
「了解っす」
『あ、はい!』

 横島は道具をその場で広げ始め、一方おキヌは給湯室へ飛んでいった。
 それらを見守りながら、テーブルにつく美神。
 カオスもちゃっかり椅子に座り、自分の分の茶をすすりながら羊羹を頬張る。

「そうそう。中世では聞きそびれちゃったんだけど、カオス・フライヤーの原理ってどうなってるの?」
「あー、それは確か、魔法の箒をじゃな……」

 美神は戦利品を有効活用する為の情報を、カオスから聞き出そうとする。
 しばらくして、横島が二人の会話に割り込んだ。

「ちょっと美神さん、いいっすか? この杖、なんか変なんすけど……」
「変化の杖がどうしかたの? ん……やけに重いし、何の力も感じられないわね……。まさか!?」

 中世でヌルの雷をかわすのに、杖の材質を鉄に変えた事を思い出す。

「回収したのあんたでしょ。何でその時に気付かなかったの!」
「んな事言ったって! 元々そんな重さだと思ってたし、ガメる時だってバタバタしてたし……」
「ああ、もう! せっかく持ってきたのに!!」
「……担いできたのは俺っすよ? 第一、これを鉄に変えたのって美神さんじゃ……ぐはぁっ!!」



 結局ただの鉄塊と化した変化の杖は、のちの「カオス・フライヤーII号」の装甲に再利用される事となる。





     END

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