ザ・グレート・展開予測ショー

GOOD BYE MY MOTHER


投稿者名:浪速のペガサス
投稿日時:(04/ 3/14)





「ごめんね雪クン…、もう、ママダメみたい……。
ママ、貴方を残していっちゃってゴメンね。
ゴメンね…、ゴメンね……。」



「ママ!ママ!!」



「良い、雪クン?
貴方は体が弱いから、ちゃんと食べて風邪をひかないようにね…。
雪クン、ピーマン嫌いだけど、それじゃあダメ、好き嫌いしちゃダメよ…?
体を動かして強くなってね、ママ、強い子が好きだから…。」



「うん!うん!!」



「何かをする時はいつも一生懸命に、全力でね…?
ママ、卑怯なことをする子って大っ嫌い…。
それと、いつも言ってる事だけれど、友達よく選んでね?
貴方は人付き合いが悪いけどいい子だから、いつかきっといい友達が必ずできるわ…。
良い友達はいつか貴方が困った時、いつでも助けて、貴方を強くしてくれるから…。」



「ウン!僕ママの言ったこと守るよ!だからママ……!!ママッ!!!」



「雪クン……泣かないで…、ママも、辛いの、悲しいの……。」



「ママ!嫌だよ!僕をおいてくなんてヤだよ!!
一緒にいてよ!ずっと、ずっっと!一緒にいるって言ってたじゃないか!?
僕いつかママの事お嫁さんにしたかったのに!!!」



「雪クン…、ママに甘えちゃダメよ…。
とっても哀しいけど、ママはもう雪クンの傍に入れないんだから…。」



「僕好き嫌いしない!
強くなる!
一生懸命になる!!
友達大事にする!!!
だから……!!だからぁ!!!」



「雪ク…ン……。ゴメ………ン…………ね……………。」



「ママ…?ママ!?ママ!!ママァ!!!ママァーーーーー!!!!!」



「………………………」








「ママアアアアァァァーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」


















―――――――――GOOD BYE MY MOTHER――――――――


















「雪之丞〜!まだなのかぁ〜!?もう車に乗って二時間だぜ。」


「横島さん、貴方少しお黙りになったら?
ですけど雪之丞、確かに私もいささか飽きてきましたわ。」


俺の運転する車の中、男女がそれぞれ一人ずつ後部座席に座っている。

一人は普段何をしてもダメそうで煩悩の塊、だけどどこか俺に似ていて最大にして最高のライバル、そして親友の横島忠夫。
本人はテレてんのか否定してるがな。
もう一人は高慢ちきで可愛いとこが少ない、けれど実は優しくて俺の事をママみたいに温かくしてくれて、以外に頼りになる俺の彼女弓かおり。
可愛いとこ本当に少ないが。



















今俺たち三人は香港にいる。
横島は飯をおごるって約束、弓は海外デートって名目で。
実際こいつらを連れて来ることはなかなかに大変なことだった。


横島は相変わらず女女うるせぇから、飯をおごってやるって事でなんとか納得してもらい散財する羽目になるし。
弓は弓で相変わらず可愛くねぇ態度ばっかし取りやがるから精神的に疲れたし。
それでも何とか説得して二人を連れて空港に来ると、今度は弓が横島が一緒ならば嫌だなんてぬかしやがった。


それも当然だったんだがな、だって弓への名目は海外でデートってだったんだし。
可愛くねぇこいつが、珍しく結構綺麗な格好までしてきたんだからな。
おまけに横島は空港で所構わずナンパしまくるしよ、ホント、当然と言えば当然か。


しかたねぇから俺は、こうなることを予測して美神の旦那を通して頂戴した文珠で横島を眠らせて、弓を説得した。
お前が欲しがってたもん買うし、買い物も文句言わないで付き合うって条件で結局弓は折れた。
お陰で予定の時間より一時間も遅れちまったがな、今日ばっかりは三人で一緒に行かなければいけなかったから、安いもんだ。
正直、美神の旦那への貸しは返すのが恐ろしいのもあるんだけどな。
まぁ、それはいい。んでもって空港で香港まで飛び、レンタカーを借りてはや二時間、今に至るわけだ。


















「もう少しだ。だからもうちょっと待ってくれや。」


「お前…、さっきもそのせりふ聞いたぞ?一体何時になったら…。」


「今度こそホントだ。でも、その前にちょっと野暮用に付き合ってくれ。」


ホントはそっちのほうがお前らをつれてくる本当の理由なんだがな。
だからそんな不貞腐れたような顔するなって、俺にとっては大事なことなんだから。


「野暮用って、その助手席にあるものが関係してるんですの?」


弓が横島と入れ替わりで会話に入ってきて、恨めしそうにしながら助手席のものを眺めた。
後部座席から身を乗り出してまで見るそれ、実は赤いバラだったりする。
まぁ弓はこの花の花言葉を知っているからこそそう言う風な態度を取るのだろう。
俺はそっと顔を奴らに見られないように外のほうに向けて答えた。


「………あぁ。」


そういえばそろそろ海が見えるな、ふと俺はそんなことを思った。
きっとあいつらはこっち側から見る海は見たことが無いからな、驚くだろう。

























「ところで雪之丞、前から聞きたかったんだが、お前っていくつなんだ?
俺と同い年に見えるけど、だとしたらなんで車なんか……?」


「………聞くな……。」
























あぁ、海が見えてきた、「俺たち」の大好きな海が見えてきた。


「うぉ…。海だ。俺こっちからの海なんて初めてだぜ。」


「綺麗……。」


思った通り、結構いいこと言ってくれるじゃねぇか二人とも。
綺麗だ?当然だろ「俺たち」が好きな海、好きだった海なんだからよ?


「「「………」」」


暫らく俺たち三人はその海に見惚れていた、そうなっちまえば自然言葉はなくなってしまう。



















どのくらい黙ったかな?何時の間にやら目的地についちまった。
車をとめるか。
横島たちはキョロキョロしてやがる、思わず笑っちまいそうだ。
でもそれもそうか、当然だよな。だってここは墓地なんだからよ。
さて、行くか。
俺は何も言わずに歩みだした。
助手席にあった真っ赤なバラを持って。
奴らは……、ついてきたな。


「ちょ!?雪之丞!」


「お待ちなさい雪之丞!!」


鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔してやがるな二人とも。
だけどそんなこと気にしねぇ、ついてくればお前らも分かるんだからよ。
俺はづかづかと歩きつづけた。目的地は、ただ一つ。























「おい雪之丞!止まれって!一体なんなんだってんだ!?ってホントに止まったぁ!?」


「まさか横島さんの言葉を素直に聞くなんて…。貴方横島さんの下僕にでもなったので!?」


馬鹿言ってんじゃねぇ、目的の場所についたからに決まってんだろ。
誰が何時こいつの下僕になった?俺は下僕じゃなくてライバルだ。
俺の目的の場所、それはこの墓なんだからよ。
………って、おい!お前ら二人!フリーズしてんじゃねぇ。





















とにかく、気を取り直して俺は墓を見据える。
潮風がふいてきたな、心地いい。
暫らく俺はその心地好さに身を任せた。
……やっとフリーズが解けやがったか、ほら、こっちこいよ。


「二人とも、こっち、来てくれねぇか…?」


そう言って俺は弓と横島を俺の脇に立たせた。
二人とも、何か変な顔をしてたが、墓碑を見ると、俺のほうを見やがった。
よせよ、そんな目で見るなって。
ほら、弓、泣きそうになるなって、俺は大丈夫なんだから。
おい、横島、いつもみたいに笑えよ、っつーか笑ってくれ。
だってその為にお前ら呼んだんだからよ。


「雪之丞…。ここってもしかして?」


「あぁ……。俺のママの墓だ。野暮用ってのは、この事だ。」


「貴方、どうして私たちをココに…。」


ンな事聞くなよ弓。
俺、お前らだから連れてきたんだぜ?


























寂しい事を寂しいと感じないで。
苦しい事を苦しいと感じないで。
悲しい事を悲しいと感じないで。
ただ強さを求めたのは何時からだったろう?
そう、ママがいなくなってからだ。
ママの言った事を守ろうとして、ママの理想の男になりたくて。
そして何よりもママを亡くした寂しさ、苦しさ、悲しさを埋めたかったから。
だから、実は墓参りは今日が初めてなんだ。
そんな姿を見てきっとママ、空の上で心底心配してただろ?
だって俺、間違った道に進みそうになっちまったから。





















俺は二人を肩からがっしりと捕まえた。


「ちょ!?雪之丞!!」


「なんなんだぁ!?」


ママ、今までここにくる勇気がなかったんだ。
ゴメン。
でも、見てくれママ。
俺を変えてくれた最高で大切なダチと、最高で大切な女だ。
他にもまだいっぱいいるんだが、そいつらはまた後でな。
ママの命日にこいつ等を紹介したくて今日は来たんだ。
初めての墓参りにこいつ等を紹介したかったんだ。
だからもう心配しなくても良いんだ、もう道を間違えることも無いから。
だからママ。
笑ってくれ、涙を流さないで、笑っていてくれ。


「ママ、紹介するよ。俺のダチと、恋人だ!」


























それから花を供えて、暫らく俺は立ち尽くした。
あいつらも何も言わずにいてくれて。
横島なんかはわざわざ文珠で「花」なんてしてくれてよ、思わず泣きそうになりやがったぜ。
どのくらい時間が経ったのかな?五分、それとも十分か?


「あぁ〜!俺車にいるから、なるべく早くこいよ!早く飯!」


「私も行きますわ横島さん。
雪之丞、しっかり挨拶してくるのよ。」


あいつら…、味なことしてくれるな。
手をふったり会釈したり、ありがとよ。

















この一年でホントに色々なことがあってな、ママとの約束果たせそうだよ。
俺、ピーマン食えるようになったんだぜ。
実を言うと最近まで食えなくてさ、まだチビなんだ俺。

強くなったんだ俺。
体ばっかりじゃない、心も強くなれたんだ、あいつらのお陰で。

一生懸命にもなれた。
というか、マジで一生懸命が俺の生きがいになっちまうくらいまで。

友達は、少ないけど出来たし、大事にしてる。
ホントに、いい友達ってのは自分を助けてくれるんだな。
友達どころか恋人も出来て。






















他にも色々、本当に色々あるんだけど、それはまた今度な。
あいつら待たしちゃ悪いから。
久しぶりのママとの対面に俺の最高のダチと最高の女を紹介したかったんだ。
祝福してくれ、ママ。
じゃ、また来年くるから。
さて、行くかな?
俺は墓に背を向けた。






【雪クン…】


「ママ!?」



刹那、ママに呼ばれたような気がして俺は振り返った。
でも、振り返った先にはママの墓だけ。
でも十分だ、だって俺には「見えた」から。
ママが、俺に向けて笑顔を向けてくれたのが見えたから。
















ありがとう、ママ。

















………さて、あんまり待たすのもアレだし、行くか。
ママ、もっと大勢つれて、来年、絶対にまたくるから……!
さようなら、ママ。




今までの コメント:
[ 前の展開予想へ ] [ 次の展開予想へ ] [ 戻る ]

管理運営:GTY有志
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa