ザ・グレート・展開予測ショー

虹色の笛    〜〜〜〜(第十一声・後半・)〜〜〜〜


投稿者名:えび団子
投稿日時:(03/10/25)


「きっと成仏してないと思うんです、その赤ちゃん・・・。」


動きが停止している母親。


「こんなにお母さんが赤ちゃんのこと想っているんです、きっと赤ちゃんも同じくらい想っている筈なんです。なら・・・・」


親子の絆って、容易に断ち切れるものじゃない。


「どんなに微かな残留思念でもいいんです、少しでも手掛かりがあれば・・・」


「あの世から、連れてくることが出来る・・・のか?」


信じ難いことだった。成仏していないのなら可能かもしれないが仮にも、この世には存在しないものを引きずり出すのは人間技では不可能な域だ。


「はい・・・。」


ネクロマンサーの笛を取り出すおキヌ。


「けど、残留思念何て何処にあるっていうんだ!?」


おキヌの視線は後ろを振り返り『あの幽霊』母親の足元に佇んでいる・・・




――――乳母車――――





「そうかっ、あれになら!!」


横島にも合点がいったようだ、おキヌもゆっくりと静かに頷く。


「貴方の赤ちゃん、絶対連れてきてみせますから!」


おキヌが母親の霊に話しかける、言葉が通じているとかはともかく。
気持ちは心は通い合っている筈である。


『私の赤ちゃん?』


か細い声で聞き返してくる。


「そうですよ、貴方の可愛い赤ちゃんを連れて来てあげますから。ほんの少し待っててくださいね?」


すると母親の霊は霊圧を下げポルターガイストも次第に力を弱めていった。
静寂が暗闇に訪れた。おキヌは、ネクロマンサーの笛を瞳を閉じて深呼吸し、静かに綺麗に唇に当てると優雅に一声を吹き鳴らした。音色は店内全フロアに響き渡り幸福を聴いている全てのものに与えた。

・・・・。

横島は完全に聴き入っていた。何だか身体が軽くなりやけに楽しい。
ヒーリング効果もあるんだろうか?揺らいでいる空気が心地よい。

・・・・。

音でも声でも音色でもなく、それは呼びかけに近い。魂の根底から揺さぶられる感じがする。不思議な、癒されるそれは誰の耳にも入ったと思う。母親の幽霊は感慨な面持ちで上を見上げて、かつてそこに眠っていた自分の分身を思い出す。小さい手、小さい足、小さい身体、小さい心。とてもとても愛しくて、壊れちゃいそうな脆さを含んでいて。大切な、ワタシの・・・


『ああ・・・』


邪念が消えていく、清々しい気持ち。・・・こんなの久しぶり。


――――シュウウウウ・・・――――


霊体が天に召される。ようやく長かったけど理解出来た。
ワタシの赤ちゃんはもういない。だから、だから・・・


「あっ、おキヌちゃん!!」


横島が母親の幽霊が成仏していくのに気付き驚く。


『ありがとう、貴方たちのお陰ね』


本来この人が持つ、優しい瞳だ。


「いやあ、俺は何も・・・」


照れるというか申し訳なさそうな横島に対して、


――――――――待って、もう少しなんです!!もう少しで・・・――――――――


心から訴えるおキヌに感づき、彼女は・・・。


『その気持ちで十分よ、ワタシ分かっちゃったから』


作る笑顔に微塵の不満などなかった。


『じゃあ、逝くね・・・』


透明になっていく霊体に霊魂。天からの使いが迎えに来たのか、周り一体が輝き始める。真っ暗だったそのフロアはみるみる内に明かりが灯った。


――――シュウウウウ・・・――――


丸い球体の光の渦が彼女(母親の霊)を呑み込んでいく。光が消えれば成仏だ。


――――――――お願いっ・・・まだ・・・逝かないで!!――――――――


笛の音色が哀しく遠くに響き渡る。悲痛な願いは届かないのか?




――――ポウッ・・・――――




おキヌを中心に笛から何色と識別できない煌々たる霊波を放ちながら。
異空間に迷い込んだ暫しの時間。何処からともなく聴こえて来る謎のメッセージ。
真っ白の宇宙とでも言えば適当か。上か下かも区別出来ないそこは重力という荷物を捨てた場所。人が踏み込んではいけない、決して辿り着けない・・・神聖なる場所。




『神魂の案内室』




【お待ちしておりました、氷室キヌ様。さあ、こちらへ】




七つの力の一つが・・・




――――目覚めた――――












                   続く 

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